【実施例1】
【0035】
第1 構成
本発明に係る被服部材の一実施例である茶木を被覆する被覆ネット100について
図1を用いて説明する。被覆ネット100は、茶葉による光合成を適度に抑制し、うまみ成分であるアミノ酸がカテキン、ビタミン類等の苦味渋味成分に変化することを抑制するために使用される。茶葉による光合成を適度に抑制することによって、うま味と苦味渋味とのバランスがとれた茶葉を作ることが可能となる。
【0036】
被覆ネット100は、ネット部101、チューブ挿入部103、及びチューブ105を有している。
【0037】
ネット部101は、遮光ネットにより構成されている。適切な透過率を有する遮光ネットを使用することによって、適切に茶葉の光合成を抑制することができる。また、遮光ネットを使用することによって、防霜対策、防風対策、防寒対策をも施すことができる。なお、遮光ネットについては、一般に使用されているものを使用すればよい。
【0038】
チューブ挿入部103は、チューブ挿入部103L及びチューブ挿入部103Rによって構成されている。チューブ挿入部103L、103Rは、ネット部101において対抗して位置する側縁S1、S3に、それぞれ形成されている。チューブ挿入部103L、103Rをネット部101の両側縁S1、S3にそれぞれ形成することによって、チューブ挿入部103内に配置するチューブ105に水を満たすことによって、左右から均等な力でネット部101を引っ張ることができる。したがって、茶木を被覆した被覆ネット100が所定の位置からずれることを防止することができる。
【0039】
また、チューブ挿入部103L、103Rは、ネット部101の側縁S1、S3の全体にわたって形成されている。したがって、チューブ挿入部103L、103Rにそれぞれチューブ105L、105R(後述)を挿入した場合、チューブ105L、105Rは、側縁S1、S3の全体にわたって被覆される。これにより、太陽光等、劣化の原因要素からチューブ105L、150Rを保護することができる。
【0040】
なお、被覆ネット100では、チューブ挿入部103L、103Rは、それぞれ遮光ネットの長軸方向の端部を中心軸方向に折り返し、内側の所定の位置で遮光ネットと接合することによって、形成される。したがって、遮光ネットの長軸方向の端部と内側の遮光ネットとの接合部分によって側縁S1、S3が形成される。
【0041】
このとき、ネット部101の側縁S1から側縁S3までの距離Wは、茶木の天面の幅WTより左右に所定の長さLだけ長い長さとしている。このように、距離Wを茶木の天面の幅WTより長くすることによって、ネット部101を容易に左右に引っ張ることができる。
【0042】
また、遮光ネットの長軸方向の端部を中心軸方向に折り返し、内側の遮光ネットと接合することから、チューブ挿入部103L、103Rは、環状構造を有することになる。
【0043】
チューブ105は、チューブ105L、チューブ105Rにより構成されている。チューブ5L、チューブ105Rは、内部に水を留保しないときは平面状となり、内部に水を貯留するときには断面円形状の環状構造を有している。
【0044】
また、チューブ105Lは、開放されている左右両端部T1L、T3Lを有している。端部T1L、T3Lは、ともに所定の留め具によって水の流通を止めることができる。チューブ105Lの内部に水を溜めることによって、チューブ105Lの内部の水がおもりとなり、被覆ネット100を固定することができる。つまり、ネット部101をピンチ等によって固定する場合に比して、作業量が激減し、容易にネット部101を固定することができる。また、ネット部101を容易に左右均等に引っ張ることができる。
【0045】
なお、チューブ105Lの内径については、被覆ネット100を所定の位置に保持するために必要となる重量に基づき、適切に決定すればよい。以上は、チューブ105Rについても同様である。
【0046】
チューブ105L、105Rは、内部に水が存在するときには膨らんで環状となる一方、内部に水が存在しないときには平面状になる。このため、収納の際に、被覆ネット100を環状に巻き取って収納する場合であっても、チューブ105L、105Rがかさばらないので、被覆ネット100をコンパクトに収納することができる。
【0047】
第2 使用方法
つぎに、被覆ネット100の使用方法について
図2〜
図5を用いて説明する。
【0048】
図2に示すように、被覆ネット100を使用しようとする使用者は、茶木の天面上に環状にまとめられた被覆ネット100を配置する。
【0049】
図3に示すように、使用者は、被覆ネット100を茶木に沿って矢印a1方向へ広げる。
【0050】
図4に示すように、使用者は、被覆ネット100を広げ終えると、被覆ネット100の左右の側縁S1、S3に沿って配置されているチューブ105L、105Rのそれぞれの端部T1L、T1Rに水を注入するためのホースをセットする。そして、チューブ105L、105Rへの水の注入を開始する。
【0051】
注入された水がチューブ105L、105Rのそれぞれの端部T3L、T3Rから流れ出てきたところで、
図5に示すように、端部T3L、T3Rを所定の留め具107で封止する。このように、チューブ105L、105Rのそれぞれの端部T3L、T3Rから水が流れ出てきたところで、端部T3L、T3Rを封止することによって、容易にチューブ105L、105Rの全体に容易に液体を満たすことができる。
【0052】
留め具107は、チューブ105L、105Rを左右から挟み込み、チューブ105L、105Rの断面を圧縮し、断面の圧縮状態を維持する。これにより、チューブ105L、105R内の水の流れを遮断し、端部T3L、T3Rからの水の流出を防止する。
【0053】
さらに、水の注入を続け、使用者は、端部T1L、T1Rから水があふれ出る等、所定量の水がチューブ105内に注入されたと判断すると、水の注入を中止し、端部T1L、T1Rを所定の留め具107を用いて封止する。これにより、チューブ105内に水を溜めることができる。また、左右から均等にネット部101を引っ張ることができる。
【0054】
このように、被覆ネット100は、簡単な作業で、茶木を左右均等な力で被覆することができる。よって、少ない人員で被覆作業を行うことができる。したがって、
【0055】
また、被覆ネット100を収納しようとする使用者は、チューブ105L、105Rのそれぞれの端部T1L、T3L、T1R、T3Rを封止している留め具107を取り外す。これにより、チューブ105L、105R内の水を排出する。
【0056】
チューブ105L、105Rからある程度水が流れ出たところで、被覆ネット100を環状に巻き取っていく。これにより、容易に被覆ネット100を回収することができるとともに、コンパクトな状態で被覆ネットを回収することができる。
【実施例2】
【0057】
前述の実施例1における被覆ネット100は、ネット部101の両側縁S1、S3にそれぞれ形成されたチューブ挿入部103L、103Rにチューブ105を挿入し、チューブ105の内部に水を溜めることによって、チューブ105の内部の水をおもりとすることによって固定するものであった。本実施例に係る被覆ネット200は、水に変えて金属をおもりとして用いるものである。
【0058】
本発明に係る被服部材の一実施例である茶木を被覆する被覆ネット200について
図10を用いて説明する。なお、被覆ネット200を茶木に使用する目的については、被覆ネット100と同様、うまみ成分が苦味渋味成分へ変化することを抑制することにある。
【0059】
被覆ネット200は、ネット部201及び重量性横糸203を有している。ネット部201は、縦糸、横糸が織られた織物によって構成されている。また、ネット部201は、遮光ネットにより構成されている。適切な透過率を有する遮光ネットを使用することによって、適切に茶葉の光合成を抑制することができる。さらに、遮光ネットを使用することによって、防霜対策、防風対策、防寒対策をも施すことができる。なお、遮光ネットについては、一般に使用されているものを使用すればよい。なお、遮光ネットにおける透過率は、縦糸、横糸の配置及びその量によって決定すればよい。
【0060】
ネット部201は、対抗して位置する側縁S21、S23に沿って形成される被覆状態維持部A21、A23を有している。ネット部201における被覆状態維持部A21の一部の拡大図を
図11に示す。被覆状態維持部A21には、側縁S21に沿って3本の重量性横糸203が平行に配置されている。重量性横糸203は、ネット部201を形成する横糸の一部として配置される。したがって、重量性横糸203をネット部201に配置するにあたっては、通常の横糸に換えて重量性横糸203を用いるようにすればよい。
【0061】
このように、通常の横糸に換えて重量性横糸203を用いることによって、被覆ネット200を製造するにあたって、新しい製造装置を容易にする必要がない。よって、被覆ネット200の製造コストを低く抑えることができる。また、製造方法を変更する必要がないので、容易に被覆ネット200を製造することができる。
【0062】
重量性横糸203の内部構造を
図12に示す。重量性横糸203は、金属チェーン203a及び被覆部203bを有している。金属チェーン203aは、繊維状の紐状物R203に、複数の金属の塊状物B203が連続して直線状に配置されている。繊維状の紐状物R203に塊状物B203として形成された金属を連続して配置するにあたっては、例えば、ボールチェーンの製造方法を用いればよい。このように、紐状物にR203に塊状物B203を配置することによって、重量性横糸203の屈曲性を担保することができる。したがって、ネット部201に重量性横糸203を配置しても、被覆ネット200の使用・収納の際に必要となる柔軟性を維持することができる。
【0063】
被覆部203bは、金属チェーン203aの周囲を被覆する。このように、金属チェーン203aを被覆することによって、摩擦抵抗を軽減することによって、容易に重量性横糸203aを配置することができる。
【0064】
組紐の技術を用いて金属チェーン203aを被覆するように所定の糸を組み上げたもの被覆部203bとして用いている。これにより、重量性横糸203を配置する際の抵抗を低減することが可能となる。
【0065】
このように、重量性横糸203を側縁S21、S23に沿って配置することによって、使用の際にその重みによりネット部201を固定することができる。よって、被覆ネットピンチ等によって固定する場合に比して、作業量が激減し、容易に被覆部を固定することができる。また、屈曲性、柔軟性を有する重量性横糸203を配置することによって、被覆ネット200を収納する際に、従来の被覆ネットと同様に、ロール状に巻き取ることが可能となる。よって、従来の被覆ネットと比しても、被覆ネット200は、コンパクトに収納できるという収納性を損なうことがない。
【0066】
被覆ネット200の使用方法については、実施例1における被覆ネット100と同様である。
図13に、被覆ネット200を茶木に沿って矢印a1方向へ広げている状態を示す。
【0067】
[その他の実施例]
(1)チューブ105内の水 : 前述の実施例1においては、チューブ105内に水を満たすとしたが、チューブ105内を流通するものであれば例示のものに限定されない。例えば、水以外の液体であってもよい。また、液体以外の流通性のある物質であってもよい。
【0068】
(2)遮光ネット : 前述の実施例1においては、被覆部101を遮光ネットにより構成するとしたが、遮光以外の機能を有するものであってもよい。
【0069】
(3)チューブ挿入部103 : 前述の実施例1においては、チューブ挿入部103を側縁S1、S3の全体にわたって形成するとしたが、チューブ105を保持できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、
図6に示すように、所定の間隔をおいて環状のチューブ挿入部113を複数設けるようにしてもよい。
【0070】
また、前述の実施例1においては、チューブ挿入部103は、ネット部101を構成する遮光ネットの端部を中心軸方向に折り返し、遮光ネット自身と接合することによって形成するとしたが、ネット部101の側縁に形成されるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、遮光ネットとは異なる材質によってチューブ挿入部103を形成し、両者を接合するようにしてもよい。この場合、
図7に示すように、チューブ挿入部123を樹脂等により形成し、所定の間隔でネット部101の側縁S1、S3に接合し、配置するようにしてもよい。
【0071】
さらに、チューブ挿入部103を側縁S1、S3に沿って形成するとしたが、ネット部101の周縁全体に沿って形成するようにしてもよい。
【0072】
(4)チューブ105 : 前述の実施例1においては、チューブ105は、内部に水を貯留している状態と貯留していない状態で形状が異なるものとしたが、樹脂パイプのように、常に固定した断面形状を有するもの、いわゆる水道ホースのように通常は固定した断面形状を有し、外部から圧力があれば断面形状がり変形するもの等としてもよい。
【0073】
また、前述の実施例1においては、チューブ105の内部に水を貯留するものとしたが、内部に液体を収納できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、
図8に示すように、遮光ネットの端部S11から、端部S11を矢印a8方向へ折り返し遮光ネット自身に接合した際に側縁となる側縁S1までの間の領域A1に防水加工を施し、端部S11と遮光ネット自身とを圧着することによって接合して液体収納部を形成する等、チューブ105を用いずに液体収納部を形成するようにしてもよい。
【0074】
(5)端部T1L、T1R、T3L、T3R : 前述の実施例1では、端部T1L、T1Rから水を注入し、端部T1L、T1R、T3L、T3Rから排出するとしたが、いずれか一方の端部からのみ注入し、他方の端部からのみ排出するようにしてもよい。
【0075】
また、端部T3L、T3Rから、チューブ105の内部に存在する気体を排出するとしたが、端部T1L、T1R、T3L、T3Rとはことなる位置に別途、気体排出弁等の気体排出部を設けるようにしてもよい。
【0076】
(6)留め具107 : 前述の実施例1では、留め具107は、チューブ105L、105Rを左右から挟み込み、チューブ105L、105Rの断面を圧縮し、断面の圧縮状態を維持する留め具10を用いて、チューブ105の内部に水を封止することとしたが、チューブ105の内部に水を封止できるものであれば、例示のものに限定されない。また、留め具107等の道具を用いずとも、チューブ105を所定の位置で結ぶ等によって水を封止するようにしてもよい。
【0077】
(7)被覆ネット100の使用対象 : 前述の実施例1では、被覆ネット100を茶木に使用するとしたが、被覆が必要なものであれば例示のものに限定されない。紫外線、ホコリ等からの保護が必要なもの、例えば、土木工事に使用する資材、工場における機械部品等であってもよい。
【0078】
(8)重量性横糸203の配置数 : 前述の実施例2においては、ネット部201における被覆状態維持部A21の側縁S21に沿って3本の重量性横糸203を配置するとしたが、1本、2本、又は4本以上の重量性横糸203を配置するようにしてもよい。重量性横糸203の数は、茶木が配置されている環境における風の強さ等を勘案し、適当に決めればよい。
【0079】
また、前述の実施例2においては、3本の重量性横糸203を平行に配置するとしたが、例示のものに限定されない。例えば、
図14に示すように、3本の重量性横糸203を一つにまとめ、3本まとめて被覆部材によって被覆した統合重量性横糸303を用いるようにしてもよい。この場合、3本の重量性横糸203を一つにまとめるにあたっては、例えば、3本の重量性横糸203を包含する被覆部303bを用いる。また、所定の位置にバンド等を用いて、3本の重量性横糸203を一つにまとめるようにしてもよい。
【0080】
さらに、
図15に示すように、1本の統合重量性横糸303を側縁S21、S23のそれぞれ沿って配置するようにすればよい。さらに、複数の統合重量性横糸303を側縁S21、S23のそれぞれ沿って配置するようにしてもよい。
【0081】
(9)重量性横糸203の配置位置 : 前述の実施例2においては、ネット部201では、重量性横糸203を側縁S21、S23全体に沿って配置したが、各側縁S21、S23の一部に配置するようにしてもよい。また、各側縁S21、S23の一部に断続的に、複数配置するようにしてもよい。
【0082】
(10)ネット部201 : 前述の実施例1においては、ネット部201は織物からなるとしたが、不織布等、織物でないものであってもよい。この場合、重量性横糸203を配置するには、例えば接着剤を用いて側縁S21、S23に沿って固定するようにすればよい。また、2枚の不織布等によって重量性横糸203を挟み込むようにして、重量性横糸203を所定の位置に固定するようにしてもよい。
【0083】
(11)重量性横糸203の配置方法 : 前述の実施例2においては、重量性横糸203を織物の横糸として配置するとしたが、縦糸として配置するようにしてもよい。
【0084】
(12)重量性横糸203の構成 : 前述の実施例2においては、複数の塊状の金属を連続的に直線状に配置することによって重量性横糸203を生成するとしたが、所定の重量を有し、屈曲性を有するものであれば例示のものに限定されない。例えば、屈曲性を有するチューブに砂や金属粉を充填することによって、重量性横糸203を生成するようにしてもよい。