特許第5861188号(P5861188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5861188
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】二酸化炭素を生成する組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20160202BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20160202BHJP
   A61K 8/72 20060101ALI20160202BHJP
   A61K 33/00 20060101ALN20160202BHJP
   A61K 33/10 20060101ALN20160202BHJP
   A61K 47/30 20060101ALN20160202BHJP
   A61P 17/00 20060101ALN20160202BHJP
【FI】
   A61K8/19
   A61Q19/00
   A61K8/72
   !A61K33/00
   !A61K33/10
   !A61K47/30
   !A61P17/00
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-522389(P2013-522389)
(86)(22)【出願日】2011年6月28日
(86)【国際出願番号】JP2011064803
(87)【国際公開番号】WO2013001605
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2014年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】511023761
【氏名又は名称】エヴァテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150142
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 礼路
(72)【発明者】
【氏名】寺田 稔
【審査官】 井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−138424(JP,A)
【文献】 特開平02−020270(JP,A)
【文献】 特開2000−319187(JP,A)
【文献】 特表2010−521440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61K31/00−33/44
A61K47/00−47/48
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弱酸性陽イオン交換体を含有する酸性化組成物と、
炭酸塩および/または炭酸水素塩を含有する二酸化炭素源組成物と、
を含み、
前記酸性化組成物および前記二酸化炭素源組成物の一方または両方が水を含み、
前記酸性化組成物と前記二酸化炭素源組成物とが、使用時まで実質的に接触しない状態で提供される、二酸化炭素を生成する化粧品
【請求項2】
前記弱酸性陽イオン交換体が弱酸性陽イオン交換樹脂である、請求項1に記載の二酸化炭素を生成する化粧品
【請求項3】
前記炭酸塩および/または炭酸水素塩が炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムである、請求項1または2に記載の二酸化炭素を生成する化粧品
【請求項4】
前記弱酸性陽イオン交換体が粉末である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の二酸化炭素を生成する化粧品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を生成する組成物に関する。より詳細には、本発明は、外用剤として使用することができる化粧品および医薬品のための、二酸化炭素を生成する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素は、経皮経粘膜吸収させると、皮膚および皮下組織の血行を促進すること、新陳代謝を活発化することなどの効果を有することが知られている。このため、従来、医療分野において二酸化炭素による治療などが行われていたが、美容分野においても上記のような二酸化炭素の優れた効果に注目し、二酸化炭素外用剤の開発が盛んに行われるようになっている。
【0003】
外用によって二酸化炭素の美容的および治療的効果を簡便に得るために、二酸化炭素を配合した二酸化炭素外用剤が開発されている。たとえば、特許文献1には、二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を気密性容器に充填してなる外用剤が提案されている。また、用時調製により二酸化炭素を発生させる外用剤も提案されている。
【0004】
たとえば、特許文献2には、二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物製造キットが提案されている。また、特許文献3には、水溶性酸、増粘剤、この増粘剤とは別の物質である水溶性分散剤を必須成分とし、増粘剤が水溶性酸および水溶性分散剤と混合されている粒状物と、炭酸塩、水、増粘剤を必須成分とし、使用時に前記粒状物と混合する粘性組成物とを含む、二酸化炭素外用剤調製用組成物が開示されている。
【0005】
たとえば、具体的な製品として、顆粒剤とジェルベース剤を混ぜたときに、ジェルの水に溶解した二酸化炭素の約半分が分子状で存在する酸性度となる製品が開発されている。適切な酸性度は、pH5〜6程度であると考えられている。pH8のアルカリ性では、溶解した二酸化炭素のほとんどが解離してイオンとなり、一方、pHが低くなって4以下になると、逆に二酸化炭素が分子状で溶解できなくなる。したがって、用時調整の際に、容易に適切なpHに調整することができる製品が望まれている。
【0006】
しかし、上記のような二酸化炭素外用組成物は、用時調製の際に炭酸塩などの二酸化炭素源と酸を混合することにより二酸化炭素を発生させるため、混合された組成物のpHが一時的に低くなってしまうという問題があった。皮膚は、一般に弱酸性に維持されることが望ましいため、たとえ一時的であっても。組成物のpHが低下して酸性が強くなってしまうと、皮膚に強い刺激を与えてしまう。
【0007】
また、用時調製により二酸化炭素を発生させる外用剤は、組成物を混合して二酸化炭素を発生させる際に適切な量を混合しないと、混合後のpHが変化してしまう。さらに、混合が不十分であると、混合物において各成分が不均一に存在し、適切な反応を生じさせることができない。このため、使用者が組成物を混合する際に、皮膚に刺激を与えないようなpHに調整するためには、慎重に用量を計測必要がある。上記のような酸と炭酸塩を混合する外用剤の場合も、pHが低くなりすぎてしまうと、酸性の強い炭酸水として皮膚に悪影響を与えてしまう。
【0008】
さらに、上記のような二酸化炭素外用組成物は、二酸化炭素を長期にわたって生成させようとして、二酸化炭素源の量を増加しても、酸との混合時に直ちに全ての二酸化炭素源が酸と反応してしまい、長期間にわたって徐々に二酸化炭素を生成させることができない。
【0009】
したがって、用時調製により二酸化炭素を発生させる外用剤において、pHの変動が少なく、皮膚に刺激を与えないpHに維持することが容易であり、かつ簡便に使用することができる製品が望まれている。
【0010】
また、用時調製により一過性に二酸化炭素を生成するのではなく、長期にわたって二酸化炭素を生成させることができる製品が望まれている。
【0011】
また、従来の外用剤は、混合後の反応の進行に応じて混合物のpHが変動してしまう可能性もある。さらに、皮膚外用剤などを皮膚に適用後に、皮膚からの成分によって組成物のpHが変動してしまう可能性もある。したがって、組成物のpHを一定に、特に弱酸性に維持することができる製品が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000-319187号公報
【特許文献2】特開2007-262083号公報
【特許文献3】特開2004-307513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、二酸化炭素を生成する製剤において、弱酸性以下にpHを下げることなく二酸化炭素を生成することができる組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、二酸化炭素を生成する製剤において、長期間にわたって二酸化炭素を生成することができる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記問題を解決するために、弱酸性陽イオン交換体を使用することに想到し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明は、弱酸性陽イオン交換体を含有する酸性化組成物と、炭酸塩および/または炭酸水素塩を含有する二酸化炭素源組成物とを含む、二酸化炭素を生成する組成物を提供する。
【0016】
また、本発明は、弱酸性陽イオン交換体が弱酸性陽イオン交換樹脂である、上記二酸化炭素を生成する組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、炭酸塩および/または炭酸水素塩が炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムである、上記二酸化炭素を生成する組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、弱酸性陽イオン交換体が粉末である、上記二酸化炭素を生成する組成物を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、二酸化炭素を生成する製剤において、弱酸性以下にpHを下げることなく、二酸化炭素を生成することができる組成物を提供することができる。また、本発明によれば、二酸化炭素を生成する製剤において、長期間にわたって二酸化炭素を生成することができる組成物を提供することができる。また、本発明によれば、医薬品および化粧品において、長期間にわたってそのpHを一定に維持することができる組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の二酸化炭素を生成する組成物は、化学反応を利用して、二酸化炭素を生成させる。本発明の組成物は、酸として作用する組成物と二酸化炭素源として機能する組成物との2種の組成物で構成され、これらの2種の組成物を混合することにより、二酸化炭素を生成させることができる組成物である。具体的には、本発明の二酸化炭素を生成する組成物は、弱酸性陽イオン交換体を含有する酸性化組成物と、炭酸塩および/または炭酸水素塩を含有する二酸化炭素源組成物とを含む。
【0021】
本発明の組成物のうち、酸性化組成物は、弱酸性のpH以上で緩衝作用を持つ弱酸性陽イオン交換体を含む。弱酸性陽イオン交換体は、たとえばカルボン酸基(-COOH)を交換基として持つイオン交換体であることができる。また、弱酸性陽イオン交換体は、NaOHなどの塩基およびNaHCO3のような弱酸の塩を交換することができる。本発明の方法において、弱酸性陽イオン交換体は、当業者に公知の任意の弱酸性陽イオン交換体を使用することができる。弱酸性陽イオン交換体は、たとえばアンバーライトIRC-76(オルガノ株式会社)などの当業者に公知の弱酸性陽イオン樹脂であることができる。たとえば、メタクリル酸系およびアクリル酸系の弱酸性陽イオン樹脂を使用することができる。また、弱酸性陽イオン樹脂の他にも、セラミックおよび天然の鉱石など、イオン交換作用を有する任意の材料を弱酸性陽イオン交換体使用することができる。
【0022】
また、本発明の酸性化組成物において、弱酸性陽イオン交換体は、任意の形状のものを使用することができる。たとえば、弱酸性陽イオン交換体は、粉末および粒状物であることができるが、粉末が好ましい。たとえば、イオン交換体を任意の方法で微細に粉砕された粉末を使用することができる。本発明に使用される微細に粉砕されたイオン交換体は、たとえば、1nm〜5mm、10nm〜1mmおよび100nm〜100μmの粒径に粉砕されたイオン交換体であることができる。
【0023】
また、一般に、弱酸性陽イオン交換体は、たとえば弱酸性〜中性の範囲、約4〜7.5のpH値の範囲、特に5.3〜6.5のpH値の範囲で緩衝作用を持つ。したがって、本発明の組成物を混合した場合、弱酸性陽イオン交換体を含む組成物との混合物のpHは、弱酸性pH以上のpH、たとえばpH4.0〜7.5の範囲になる。本発明の二酸化炭素を生成する組成物は、過剰に使用したとしてもpHが弱酸性よりも低下するおそれがない。また、このような緩衝作用を持つイオン交換体は、過剰な水素イオンを吸着する際に、吸着したナトリウムイオンやカルシウムイオンを放出しながら吸着するために、反応の際に部分的にも弱酸性pHよりも低く下がることがない。そして、二酸化炭素源と緩衝作用を持つイオン交換体との反応において、pHを下げる効果は、このイオン交換体が担っている。したがって、本発明に使用される弱酸性陽イオン交換体は、二酸化炭素源と反応して二酸化炭素を放出する際に、弱酸性pHよりも低下することが一時的にも、部分的にもない。
【0024】
従来のこのような外用剤に使用されているように、水溶性酸などの酸を使用して二酸化炭素源と反応させる場合、弱酸性pH以下の酸と二酸化炭素源とを混合するため、混合過程において一時的または局所的に溶液のpHが弱酸性pH以下にまで低下してしまうと考えられる。しかし、本発明のように弱酸性陽イオン交換体を使用することにより、弱酸性pHよりも低下してしまうことはない。また、本発明に使用される弱酸性陽イオン交換体は、中性塩には影響を及ぼさないであろう。
【0025】
また、本発明の組成物において、弱酸性陽イオン交換体は、任意の量で使用することができる。当業者であれば、使用する二酸化炭素源の濃度および量などに応じて、弱酸性陽イオン交換体の量を調節することができるであろう。
【0026】
本発明の方法は、たとえ過剰量の弱酸性陽イオン交換体を二酸化炭素源と混合して、二酸化炭素源が消費されたとしても、混合物のpHが弱酸性よりも低くなりすぎることはないため、非常に安全である。
【0027】
また、弱酸性陽イオン交換体と二酸化炭素源の反応速度は、弱酸性陽イオン交換体の量に依存する。したがって、二酸化炭素源の量を増大したときに、その全量が一度に反応するのではなく、弱酸性陽イオン交換体の量に応じて、反応速度は一定のまま、長期間にわたって二酸化炭素を生成させることができる。さらに、本発明の二酸化炭素を生成する組成物は、弱酸性陽イオン交換体を含有する酸性化組成物と二酸化炭素源組成物を混合することによって二酸化炭素源が消費され、一旦反応が終了した後であっても、さらに二酸化炭素源組成物を追加して混合することにより、さらに二酸化炭素を生成させることができる。
【0028】
一方、本発明の組成物のうち、二酸化炭素源組成物には、炭酸塩または炭酸水素塩を含む。炭酸塩は、弱酸性陽イオン交換体と反応して二酸化炭素を発生する炭酸塩であれば、特に限定されず、たとえば炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、セスキ炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、セスキ炭酸リチウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、セスキ炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグ
ネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水酸化マグネシウム、炭酸バリウムなどを使用することができる。これらの中で、炭酸水素ナトリウムや炭酸ナトリウムなどの水溶性炭酸塩が好ましい。また、炭酸水素塩は、弱酸性陽イオン交換体と反応して二酸化炭素を発生する炭酸水素塩であれば、特に限定されず、たとえば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素カリウムおよび炭酸水素アンモニウムを使用することができる。
【0029】
本発明の組成物において、酸性化組成物および二酸化炭素源組成物は、それぞれ弱酸性陽イオン交換体および酸化炭素に加えて、担体、賦形剤、増粘剤および分散剤などの任意の成分を含有することができる。
【0030】
たとえば、本発明の組成物に使用する担体および賦形剤の例には、乳糖、ブドウ糖、白糖、マンニトール、馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムおよび結晶セルロースなどを含む。
【0031】
たとえば、本発明の組成物に使用する増粘剤は、天然高分子、半合成高分子、合成高分子および無機物などを使用できる。天然高分子としては、たとえばアラビアゴム、カラギーナン、ガラクタン、寒天、クインスシード、グアガム、トラガントガム、ペクチン、マンナン、ローカストビーンガム、米デンプン、小麦粉デンプン、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプンなどの植物系高分子、カードラン、キサンタンガム、サクシノグルカン、デキストラン、ヒアルロン酸およびプルランなどの微生物系高分子、並びにアルブミン、カゼイン、コラーゲン、ゼラチンおよびフィブロインなどのタンパク質系高分子であることができる。半合成高分子は、たとえばエチルセルロース、加工デンプン、カルボキシメチルセルロースおよびその塩類、カルボキシメチルエチルセルロースおよびその塩類、カルボキシメチルスターチおよびその塩類、クロスカルメロースおよびその塩類、結晶セルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、粉末セルロース、メチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系高分子、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、カルボキシメチルデンプン、デキストリン、メチルデンプンなどのデンプン系高分子、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどのアルギン酸系高分子、並びにコンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムなどのその他の多糖類系高分子などを使用することができる。合成高分子は、たとえばカルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メタアクリル酸−アクリル酸エチルコポリマー、メタアクリル酸-メタアクリル酸エチルコポリマー、メタアクリル酸エチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマー、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル・メタアクリル酸メチルコポリマーなどを使用することができる。
【0032】
本発明の組成物に使用する分散剤は、特に制限されないが、たとえばアルファー化デンプン、α-シクロデキストリンなどのデンプン誘導体、白糖、ブドウ糖、果糖、蔗糖、乳糖、キシリトール、D-ソルビトール、D-マンニトールなどの糖類、プルランおよびキサンタンガムなどの多糖類、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウムなどのセルロース誘導体およびその塩類、ポリビニルピロリドンなどの合成高分子、並びに尿素などを使用することができる。これらの中で、糖類および尿素が好ましく、キシリトール、D-ソルビトール、ブドウ糖、D-マンニトール、果糖、蔗糖、乳糖、白糖および尿素がさらに好ましい。
【0033】
また、外用剤に多価アルコールを添加することにより、混合により得られる二酸化炭素を生成する組成物の皮膚粘膜への粘着性と延びを改善することができる。したがって、本発明の組成物は、多価アルコールを含んでいてもよい。多価アルコールの配合量としては、粘性組成の1〜15重量%、たとえば3〜10重量%であることができる。
【0034】
多価アルコールは、特に制限されず、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、スピログリコールなどのグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどのグリセロール類、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオールなどのジオール類を使用することができる。
【0035】
本発明の組成物には、上記成分の他に、通常の外用剤や化粧料に用いられる原料を含んでいてもよい。たとえば、香料、色素、界面活性剤、油分、保湿剤、アルコール類、防腐剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、着色防止剤、紫外線吸収・散乱剤、ビタミン類、アミノ酸類、アルブチン、コウジ酸、栄養剤、抗炎症剤、血管拡張剤、ホルモン剤、収斂剤、抗ヒスタミン剤、殺菌剤、皮脂抑制剤、角質剥離剤、溶解剤、抗脂漏剤および鎮痒剤などを配合することができる。
【0036】
本発明の二酸化炭素を生成する組成物は、各成分を医薬品および化粧品の製造において通常使用される混合機で混合することにより混合粉末とすることができる。また、各成分を通常医薬品および化粧品の製造において通常使用される造粒方法によって細粒剤や顆粒剤とすることができる。たとえば、圧縮成形法、押出し造粒法、転動造粒法、噴霧造粒法、および攪拌造粒法などを使用して造粒することができる。また、本発明の二酸化炭素を生成する組成物は、通常医薬品および化粧品の製造において通常使用される乳化機などを使用して、増粘剤、水およびその他の成分を溶解し、または均一に分散させることにより製造することができる。
【0037】
その他、本発明の二酸化炭素を生成する組成物は、任意の形態で提供することができる。たとえば、本発明の二酸化炭素を生成する組成物は、使用時に二酸化炭素を生成させるために、酸性化組成物と二酸化炭素源組成物とを混合することができるような形態で提供される。たとえば、粉末、カプセル、液体、ゲル、シロップ剤、エリキシル、スラリー、懸濁液および錠剤などとして提供することができる。また、本発明の二酸化炭素を生成する組成物は、創傷、熱傷の治療材またはパック化粧料として提供することもできる。
【0038】
また、本発明の二酸化炭素を生成する組成物は、酸性化組成物と二酸化炭素源組成物とが、使用時まで実質的に接触しない状態で提供される。たとえば、酸性化組成物および二酸化炭素源組成物が密封状態で保存される。本発明の二酸化炭素を生成する組成物は、たとえば任意用容器内に封入された形態で提供される。容器は、任意の材質および形状であることができる。また、容器材質は、プラスチック、ガラス、アルミニウム、紙、各種ポリマーおよびこれらの材料の複合体などであることができる。また、形状は、カップ、チューブ、バッグ、ビン、スティックおよびポンプなどであることができる。さらに、本発明の二酸化炭素を生成する組成物は、酸性化組成物と二酸化炭素源組成物とをそれぞれ一回の使用に適した用量で個別に提供することができる。
【0039】
また、本発明の二酸化炭素を生成する組成物は、酸性化組成物と二酸化炭素源組成物との配合比率は、全ての成分を混合して得られる二酸化炭素を生成する組成物が二酸化炭素を持続的に発生するような配合比率を適宜選択することができる。たとえば、発生する二酸化炭素の重量比は、組成物の全量に対して60ppm以上となるように配合することができる。また、使用する弱酸性陽イオン交換体、炭酸塩または炭酸水素塩およびその他の成分の種類に応じて、弱酸性陽イオン交換体の当量と、炭酸塩または炭酸水素塩の当量との比を適宜選択することができるが、本発明の組成物は、弱酸性イオン交換体が大過剰であってもよい。さらに、二酸化炭素を生成する時間および量に応じて、弱酸性イオン交換体および炭酸塩または炭酸水素塩の量を調整することができる。
【0040】
また、本発明の二酸化炭素を生成する組成物は、弱酸性陽イオン交換体を含有する酸性化組成物と、炭酸塩および/または炭酸水素塩を含有する二酸化炭素源組成物とを一緒に提供することができる。
【0041】
また、本発明の二酸化炭素を生成する組成物は、弱酸性陽イオン交換体を含有する酸性化組成物と、炭酸塩および/または炭酸水素塩を含有する二酸化炭素源組成物とを別々に提供することもできる。たとえば、本発明の二酸化炭素を生成する組成物を使用する際に、二酸化炭素源組成物をより多く使用するほど、より多くの二酸化炭素を生成させることができる。このような場合、酸性化組成物よりも二酸化炭素源組成物を多く消費してしまう。しかし、酸性化組成物および二酸化炭素源組成物を別々に提供することにより、必要に応じて、酸性化組成物および二酸化炭素源組成物のうちの追加したい組成物のみを入手することができる。
【0042】
本発明の二酸化炭素を生成する組成物は、使用時に酸性化組成物と二酸化炭素源組成物とを混合することにより、適宜二酸化炭素を生成させることができる。混合は、ガラスおよびプラスチックなどの適当な容器において混合してもよい。また、手のひら、皮膚および粘膜の上で混合してもよい。混合後、適切な部位に適用して、二酸化炭素の効果を得ることができる。
【実施例】
【0043】
1.材料および方法
特に明記しない限り、実験には以下の材料を使用した。弱酸性陽イオン交換体は、メタクリル系の弱酸性陽イオン交換樹脂であるダイヤイオン(登録商標)WK-10(三菱化学株式会社)を使用した。ダイヤイオン(登録商標)WK-10は、50℃で乾燥させて、常温を維持しつつ100メッシュ以下に微粉末化したものを使用した。増粘剤として、カラギナンゲルとして、マリン菜パウダーS-200(マリン・サイエンス株式会社)を使用した。マリン菜パウダーS-200を99mLの精製水に1gを溶解して、60℃まで加熱することによってカラギナンゲルとした。また、二酸化炭素源として炭酸水素ナトリウム(食品添加物)(高杉製薬株式会社)を使用した。
【0044】
溶液pHは、ポータブルpH計HM-30P(東亜DKK株式会社)またはpH試験紙を使用して測定した。
【0045】
2.弱酸性陽イオン交換体と二酸化炭素源としての炭酸水素ナトリウムとの混合実験
本実験では、弱酸性陽イオン交換体と炭酸水素ナトリウムとを混合することにより、二酸化炭素を生成すること、および混合物のpHが弱酸性pH以下にならないことを確認した。
【0046】
上記のように調整したマリン菜パウダーS-200のカラギナンゲルに、10gのダイヤイオン(登録商標)WK-10を添加して均一に混合した。次いで、この混合物に、二酸化炭素源として5gの炭酸水素ナトリウムを添加して、均一に混合した。
【0047】
混合物からは、多量の炭酸ガスの発生を発生して泡が出ていることが観察された。また、混合物のpHは、常にpH5〜pH6の範囲に維持されていることが確認された。
【0048】
この混合物を片方の手の甲に塗布した。塗布後30分以内に、塗布した側の手が暖く感じられた。また、混合物を塗布した手では、血行が良くなることにより、塗布しない手と比較して赤みを増した。
【0049】
また、混合物は、泡が出なくなった後のpHもpH5〜pH6であり、弱酸性以下にはならなかった。大過剰の弱酸性陽イオン交換体を二酸化炭素源としての炭酸ナトリウムと反応させても、pHは、強酸性にはならないことが確認された。