特許 5861202 サッシ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】5861202

(24)【登録日】2016年1月8日

(45)【発行日】2016年2月16日

(54)【発明の名称】サッシ

(51)【国際特許分類】

   E06B 5/16 20060101AFI20160202BHJP

【ＦＩ】

   E06B5/16

【請求項の数】7

【全頁数】13

(21)【出願番号】特願2011-262783(P2011-262783)

(22)【出願日】2011年11月30日

(65)【公開番号】特開2013-113065(P2013-113065A)

(43)【公開日】2013年6月10日

【審査請求日】2014年7月25日

(73)【特許権者】

【識別番号】302045705

【氏名又は名称】株式会社ＬＩＸＩＬ

(74)【代理人】

【識別番号】100123663

【弁理士】

【氏名又は名称】広川 浩司

(72)【発明者】

【氏名】山下 富広

(72)【発明者】

【氏名】小田 朋典

(72)【発明者】

【氏名】伊坂 友和

【審査官】 川島 陵司

(56)【参考文献】

【文献】 特開２０１２−１４４８６６（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｅ０６Ｂ ５／１６

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

上下枠と左右の縦枠を枠組みしてなる枠体に、上下框と縦框及び召合わせ框を框組みしてなる框体を有する内障子と外障子を納めてなるサッシにおいて、
前記障子の下端コーナー部には樹脂製のコーナー部品が設けられ、該コーナー部品は支持部を有して該支持部の上方に加熱発泡剤が配置され、前記コーナー部品の前記加熱発泡剤の下方には空間部が形成され、前記支持部は前記加熱発泡剤の下面と前記空間部とを連通させるように貫通した部分を有すると共に、前記加熱発泡剤の上面側は被覆金属部で覆われてなることを特徴とするサッシ。

【請求項2】

前記縦框には前記コーナー部品として下端部に樹脂製の縦框下振止部品が取付けられ、該縦框下振止部品には前記下枠に形成されるレール部を跨いで摺接する摺接部が１組対向状に設けられ、該摺接部間に前記支持部が形成され、該支持部には前記加熱発泡剤が載置され、
前記縦框下振止部品の上面を覆うように縦框下端金属部品が設けられ、該縦框下端金属部品は前記加熱発泡剤の上面側を覆う前記被覆金属部を備えてなることを特徴とする請求項１記載のサッシ。

【請求項3】

前記縦框下端金属部品は前記被覆金属部から立ち上がる垂直面部を有し、該垂直面部には、少なくとも前記縦框の側面に形成される戸車調整用孔まで発泡する位置に加熱発泡剤が取付けられることを特徴とする請求項２記載のサッシ。

【請求項4】

前記召合わせ框には前記コーナー部品として下端部に樹脂製の召合わせ下振止部品が取付けられ、該召合わせ下振止部品はブロック状の本体部を有し、該本体部の下面側には前記下枠に形成されるレール部を跨いで摺接する摺接部が形成され、前記本体部の上面は前記支持部であって前記加熱発泡剤が載置され、
前記本体部には上面から下面または前記摺接部まで貫通する前記空間部が形成され、前記加熱発泡剤の上面側には前記被覆金属部を備えた召合わせ下端金属部品が設けられることを特徴とする請求項１記載のサッシ。

【請求項5】

前記空間部は前記本体部の上面に複数開口することを特徴とする請求項４記載のサッシ。

【請求項6】

前記召合わせ下端金属部品は前記被覆金属部から立ち上がる垂直面部を有し、該垂直面部は、前記召合わせ框の側面に形成される戸車調整用孔よりも上方まで伸びると共に、該戸車調整用孔側の面に加熱発泡剤が取付けられることを特徴とする請求項４または５記載のサッシ。

【請求項7】

前記召合わせ下振止部品には、対向する召合わせ框に対して当接するヒレ状部が設けられ、前記本体部の前記ヒレ状部が形成された側面に加熱発泡剤を設けてなることを特徴とする請求項４〜６のいずれか１項に記載のサッシ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、建物開口部に設けられる枠体内に内外障子を納めたサッシに関し、特に火災発生時に高温に晒されても枠体と障子の隙間を発泡部材で塞ぐことのできるサッシに関する。

【背景技術】

【0002】

建物開口部に設けられるサッシにおいて、枠体内に内外障子を引き違い状に納めてなる引き違いサッシが広く用いられている。引き違いサッシを含むサッシには、火災が発生した場合にも、一定時間以上、閉塞状態を維持する防火性能が求められる。防火性能を十分に確保するためには、サッシが高温に晒されたとしても、サッシを構成する枠体と障子との間に隙間を生じさせないようにすることが重要である。

【0003】

サッシには、樹脂製のサッシはもちろんのこと、金属製のサッシにおいても、樹脂部材が各所に用いられている。このような樹脂部材は、火災時の高温に晒されると溶融するから、樹脂部材が溶融しても枠体と障子の位置関係が保たれるようにする必要がある。樹脂サッシにおいては、例えば枠体側と障子側にそれぞれ金属製の部品を設け、火災発生時にはそれらが掛かり合うようにすることで、障子の脱落を防ぐようにしたものが知られている。このようなサッシとしては、例えば特許文献１に挙げるようなものがある。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０１０−２６５６４６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

金属製のサッシにおいては、火災時に高温に晒されることで熱膨張が生じ、枠体を構成する枠材や障子を構成する框材が大きく伸びる現象が発生する。枠材や框材の端部に隙間がある場合には、これらの部材は長手方向に伸びていくが、隙間がない場合には、それ以上伸びることができないため、反りが発生して部材が屈曲する。このような屈曲が発生すると、枠体と障子の間には隙間が生じるから、その隙間から火炎が侵入し、防火性能を十分に確保することができない。

【0006】

障子の上下辺及び縦辺においては、框体を構成する框材を枠体側に引き寄せるような構造を設けることにより、隙間を生じないようにして防火性能を確保することもできる。一方、枠体や框体のコーナー部分には、樹脂製のコーナー部品が設けられていて、障子の振れを防止したり、あるいは障子の金属部分が枠体の金属部分に直接当たらないようにしているが、火災時にこれらが溶融して溶け落ちると、コーナー部分に大きな空間が生じる。したがって、防火性能確保のためには、この空間を何らかの手段で塞ぐ必要がある。

【0007】

このようなコーナー部分における隙間を塞ぐため、枠体や框体には適宜、加熱発泡剤を設けていた。加熱発泡剤は、高温に晒されることにより発泡して体積が数十倍程度に増加するものであり、これによって空間を塞ぐことが図られている。しかし、サッシが高温に晒された際に加熱発泡剤が所定位置から脱落したり移動したりすると、これを十分に機能させて空間を塞ぐことができない。

【0008】

本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、火災時に高温に晒された際に加熱発泡剤により確実にコーナー部分を塞ぐことのできるサッシを提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0009】

前記課題を解決するため、本発明に係るサッシは、上下枠と左右の縦枠を枠組みしてなる枠体に、上下框と縦框及び召合わせ框を框組みしてなる框体を有する内障子と外障子を納めてなるサッシにおいて、
前記障子の下端コーナー部には樹脂製のコーナー部品が設けられ、該コーナー部品は支持部を有して該支持部の上方に加熱発泡剤が配置され、前記コーナー部品の前記加熱発泡剤の下方には空間部が形成され、前記支持部は前記加熱発泡剤の下面と前記空間部とを連通させるように貫通した部分を有すると共に、前記加熱発泡剤の上面側は被覆金属部で覆われてなることを特徴として構成されている。

【0010】

また、本発明に係るサッシは、前記縦框には前記コーナー部品として下端部に樹脂製の縦框下振止部品が取付けられ、該縦框下振止部品には前記下枠に形成されるレール部を跨いで摺接する摺接部が１組対向状に設けられ、該摺接部間に前記支持部が形成され、該支持部には前記加熱発泡剤が載置され、
前記縦框下振止部品の上面を覆うように縦框下端金属部品が設けられ、該縦框下端金属部品は前記加熱発泡剤の上面側を覆う前記被覆金属部を備えてなることを特徴として構成されている。

【0011】

さらに、本発明に係るサッシは、前記縦框下端金属部品は前記被覆金属部から立ち上がる垂直面部を有し、該垂直面部には、少なくとも前記縦框の側面に形成される戸車調整用孔まで発泡する位置に加熱発泡剤が取付けられることを特徴として構成されている。

【0012】

さらにまた、本発明に係るサッシは、前記召合わせ框には前記コーナー部品として下端部に樹脂製の召合わせ下振止部品が取付けられ、該召合わせ下振止部品はブロック状の本体部を有し、該本体部の下面側には前記下枠に形成されるレール部を跨いで摺接する摺接部が形成され、前記本体部の上面は前記支持部であって前記加熱発泡剤が載置され、
前記本体部には上面から下面または前記摺接部まで貫通する前記空間部が形成され、前記加熱発泡剤の上面側には前記被覆金属部を備えた召合わせ下端金属部品が設けられることを特徴として構成されている。

【0013】

そして、本発明に係るサッシは、前記空間部は前記本体部の上面に複数開口することを特徴として構成されている。

【0014】

また、本発明に係るサッシは、前記召合わせ下端金属部品は前記被覆金属部から立ち上がる垂直面部を有し、該垂直面部は、前記召合わせ框の側面に形成される戸車調整用孔よりも上方まで伸びると共に、該戸車調整用孔側の面に加熱発泡剤が取付けられることを特徴として構成されている。

【0015】

さらに、本発明に係るサッシは、前記召合わせ下振止部品には、対向する召合わせ框に対して当接するヒレ状部が設けられ、前記本体部の前記ヒレ状部が形成された側面に加熱発泡剤を設けてなることを特徴として構成されている。

【発明の効果】

【0016】

本発明に係るサッシによれば、障子の下端コーナー部のコーナー部品は、支持部を有して該支持部の上方に加熱発泡剤が配置され、コーナー部品の加熱発泡剤の下方には空間部が形成されると共に、加熱発泡剤の上面側は被覆金属部で覆われてなることにより、火災が発生してサッシが高温に晒されると、支持部に載置された加熱発泡剤は下方の空間部に向かって発泡するので、コーナー部品の溶融前から発泡させることができ、より確実に下端コーナー部に生じる隙間を塞ぐことができる。

【0017】

また、本発明に係るサッシによれば、縦框下端部の縦框下振止部品には、下枠に形成されるレール部を跨いで摺接する摺接部が１組対向状に設けられ、摺接部間に支持部が形成され、支持部には加熱発泡剤が載置され、縦框下振止部品の上面を覆うように縦框下端金属部品が設けられ、縦框下端金属部品は加熱発泡剤の上面側を覆う被覆金属部を備えてなることにより、縦框下端部のコーナー部において、加熱発泡剤を確実に下方の空間部に向かって発泡させることができ、火災発生時に生じる隙間を確実に塞ぐことができる。

【0018】

さらに、本発明に係るサッシによれば、縦框下端金属部品は被覆金属部から立ち上がる垂直面部を有し、垂直面部には、少なくとも縦框の側面に形成される戸車調整用孔まで発泡する位置に加熱発泡剤が取付けられることにより、火災発生時に戸車調整用孔を加熱発泡剤で塞ぐことができ、戸車が溶融した樹脂が流出して引火することを防止することができる。

【0019】

さらにまた、本発明に係るサッシによれば、召合わせ框下端部の召合わせ下振止部品は、ブロック状の本体部を有し、本体部の下面側には下枠に形成されるレール部を跨いで摺接する摺接部が形成され、本体部の上面は支持部であって加熱発泡剤が載置され、本体部には上面から下面または摺接部まで貫通する空間部が形成され、加熱発泡剤の上面側には被覆金属部を備えた召合わせ下端金属部品が設けられることにより、召合わせ下端部のコーナー部において、加熱発泡剤を確実に下方の空間部に向かって発泡させることができ、火災発生時に生じる隙間を確実に塞ぐことができる。

【0020】

そして、本発明に係るサッシによれば、空間部は本体部の上面に複数開口することにより、空間部を大きくして、加熱発泡剤が発泡するスペースを十分に確保することができる。

【0021】

また、本発明に係るサッシによれば、召合わせ下端金属部品は被覆金属部から立ち上がる垂直面部を有し、垂直面部は、召合わせ框の側面に形成される戸車調整用孔よりも上方まで伸びると共に、戸車調整用孔側の面に加熱発泡剤が取付けられることにより、火災発生時に戸車調整用孔を加熱発泡剤で塞ぐことができ、戸車が溶融した樹脂が流出して引火することを防止することができる。

【0022】

さらに、本発明に係るサッシによれば、召合わせ下振止部品は本体部のヒレ状部が形成された側面に加熱発泡剤が設けられてなることにより、内外障子間の隙間についても加熱発泡剤で塞いで、より確実に隙間を塞ぐことができる。

【図面の簡単な説明】

【0023】

【図1】本実施形態のサッシの縦断面図である。

【図2】本実施形態のサッシの横断面図である。

【図3】縦框の平面図である。

【図4】下枠付近の拡大縦断面図である。

【図5】縦框下振止部品の斜視図である。

【図6】縦框下端金属部品の斜視図である。

【図7】内障子の召合わせ框の平面図である。

【図8】召合わせ下振止部品である。

【図9】召合わせ下端金属部品を取付けた召合わせ下振止部品の斜視図である。

【図10】召合わせ框の側面図である。

【発明を実施するための形態】

【0024】

本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図１には本実施形態のサッシの縦断面図を、図２には本実施形態のサッシの横断面図を、それぞれ示している。これら各図に示すように、本実施形態のサッシは、建物開口部に取付けられる枠体１内に、内障子２と外障子３を引き違い状に納めてなる引き違いサッシである。

【0025】

枠体１は、いずれも金属材からなる上枠１０と下枠１１及び左右の縦枠１２、１２を方形状に枠組みして構成されている。内障子２と外障子３は、それぞれいずれも金属材からなる上框２０と下框２１、縦框２２及び召合わせ框２３を方形状に框組みしてなる框体４内に、ガラス板からなるパネル体５を納めて構成されている。

【0026】

枠体１を構成する上枠１０は、内周面１０ａの室内外端部からそれぞれ垂直方向に伸びる室内側面１０ｂと室外側面１０ｃを備え、これら室内側面１０ｂと室外側面１０ｃの間には、内障子２の上辺を長手方向に案内する内上レール部１０ｄと、外障子３の上辺を長手方向に案内する外上レール部１０ｅとが、それぞれ内周面１０ａから突出状に形成されている。

【0027】

枠体１を構成する下枠１１は、内周面１１ａが室内外方向に段差を有するように形成されており、室内側が高く、室外側が低くなっている。この内周面１１ａのうち高い側の室内側には、内障子２の下辺を長手方向に案内する内レール部１１ｂが、内周面１１ａのうち低い側の室外側には、外障子３の下辺を長手方向に案内する外レール部１１ｃが、それぞれ突出状に形成されている。

【0028】

下枠１１の室内側面には、内障子２を構成する下框２１の室内側面と対向する内障子対向部１１ｄが形成され、その先端部には気密材１１ｆが設けられて、この気密材１１ｆが内障子２の室内側面に当接することで、内障子２下辺の気密性を確保している。また、下枠１１には、内レール部１１ｂの下部から室外側に突出し外障子３を構成する下框２１の室内側面と対向する外障子対向部１１ｅが形成され、その先端部には気密材１１ｆが設けられて、この気密材１１ｆが外障子３の室内側面に当接することで、外障子３下辺の気密性を確保している。

【0029】

枠体１を構成する縦枠１２は、内周面１２ａの室内外端部からそれぞれ垂直方向に伸びる室内側面１２ｂと室外側面１２ｃを備えている。縦枠１２のうち、閉じた状態の内障子２が配置される側の内周面１２ａには、内障子２の外周面に向かって突出する中間フィン部１２ｄが形成されている。また、室内側面１２ｂを構成する面のうち内周面１２ａより見付方向内側に突出する部分は、内障子２を構成する縦框２２の室内側面と対向する室内フィン部１２ｆとなっている。室内フィン部１２ｆの先端部には、気密材１２ｇが設けられて内障子２の室内側面に当接し、内障子２縦辺の気密性を確保している。

【0030】

縦枠１２のうち、閉じた状態の外障子３が配置される側の内周面１２ａには、外障子３の外周面に向かって突出する中間フィン部１２ｄが形成されている。また、中間フィン部１２ｄより室内側の内周面１２ａからは、外障子３を構成する縦框２２の室内側面と対向する室内フィン部１２ｆが突出しており、その先端部には気密材１２ｇが設けられて外障子３の室内側面に当接し、外障子３縦辺の気密性を確保している。

【0031】

框体４を構成する上框２０は、内周側にはパネル体５の端部を納めるパネル飲込部２０ａを有し、外周側には上枠１０の内上レール部１０ｄまたは外上レール部１０ｅを飲み込んで案内されるレール案内部２０ｂを有している。レール案内部２０ｂは断面凹状となっており、その開口付近には室内外にそれぞれ気密材２０ｃが設けられていて、これらが内上レール部１０ｄまたは外上レール部１０ｅに当接することで、内障子２及び外障子３上辺の気密性を確保している。

【0032】

框体４を構成する下框２１は、内周側にパネル体５の端部を納めるパネル飲込部２１ａを有している。下框２１の外周側、すなわち下端部には戸車２１ｄが設けられており、戸車２１ｄが下枠１１の内レール部１１ｂまたは外レール部１１ｃに載置されることにより、内障子２や外障子３を移動自在としている。

【0033】

下框２１の室内側面には、下端部が下方に延出された室内面延出部２１ｂが形成されている。内障子２の室内面延出部２１ｂは下枠１１の内障子対向部１１ｄと対向し、外障子３の室内面延出部２１ｂは下枠１１の外障子対向部１１ｅと対向して、気密材１１ｆに当接する。下框２１の室外側面にも、下端部が下方に延出された室外面延出部２１ｃが形成されている。室外面延出部２１ｃは、内レール部１１ｂまたは外レール部１１ｃの上端より下方まで延出されており、風雨の室内側への吹き込みを防止している。

【0034】

框体４を構成する縦框２２は、内周側にパネル体５の端部を納めるパネル飲込部２２ａを有している。縦框２２の外周側には縦枠１２の中間フィン部１２ｄを飲み込む凹状のフィン飲込部２２ｂが形成されている。フィン飲込部２２ｂを構成する室内側面は、縦枠１２の室内フィン部１２ｆに設けられる気密材１２ｇに対して当接し、これによって内障子２及び外障子３縦辺の気密性を確保している。

【0035】

縦框２２のパネル飲込部２２ａには、長手方向中間位置の室内側部分に、樹脂製のピース状からなる縦引き寄せ部材２５が設けられている。縦引き寄せ部材２５は、内障子２または外障子３が閉じた状態で、パネル飲込部２２ａの室内側面と縦枠１２の中間フィン部１２ｄとに挟まれる形状を有しており、内障子２または外障子３を閉じた際に、縦框２２が室内外方向に振れないようにすると共に、内障子２または外障子３を室内側に引き寄せて、縦框２２が確実に縦枠１２の気密材１２ｇに当接するようにしている。

【0036】

框体４を構成する召合わせ框２３は、内周側にパネル体５の端部を納めるパネル飲込部２３ａを有している。また、外障子３を構成する召合わせ框２３の室内側壁部２３ｂと、内障子２を構成する召合わせ框２３の室外側壁部２３ｃには、それぞれ略Ｌ字状に形成され内障子２と外障子３が閉じた状態で互いに噛み合う煙返し部２３ｇが形成されている。また、内障子２を構成する召合わせ框２３の室外側壁部２３ｃには、気密材２３ｈが設けられている。煙返し部２３ｇによって、内障子２と外障子３の召合わせ部分における隙間が塞がれ、さらに気密材２３ｈによって召合わせ辺の気密性を確保している。

【0037】

次に、枠体１または框体４のコーナー部分において火災発生時に生じる隙間を塞ぐ手段について詳細に説明する。火災が発生してサッシが高温に晒されると、枠体１や框体４のコーナー部分に設けられる樹脂製のコーナー部品が溶融して溶け落ち、隙間を生じるから、防火性能を低下させる。そこで、本実施形態では、コーナー部品が溶け落ちても加熱発泡剤によって隙間を埋めることで、防火性能を確保しようとしている。

【0038】

図３には、外障子３を構成する召合わせ框２３の平面図を示している。この図では、召合わせ框２３の上端部に設けられる部品は省略している。召合わせ框２３の下端部には、コーナー部品として樹脂からなる縦框下振止部品３０が設けられる。縦框下振止部品３０の上部には、金属からなる縦框下端金属部品３１が設けられている。なお、ここでは外障子３の召合わせ框２３についての構造を説明するが、内障子２及び外障子３の縦框２２についても、同様の構造とすることができる。

【0039】

図４には、下枠１１付近の拡大縦断面図を示している。この図では、外障子３の下框２１を破線で示し、召合わせ框２３と縦框下振止部品３０及び縦框下端金属部品３１を実線で示している。召合わせ框２３の側面には、下框２１に設けられる戸車２１ｄを調整するための戸車調整用孔２３ｉが形成されている。縦框下振止部品３０は、下枠１１の外レール部１１ｃを跨ぐ摺接部３０ａを下面側に有している。摺接部３０ａは、外レール部１１ｃに対して摺接し、外障子３を外レール部１１ｃに沿って円滑に案内する。

【0040】

縦框下振止部品３０には、２つの加熱発泡剤３２、３３が載置されており、これらの加熱発泡剤３２、３３の上面側を覆う被覆金属部３１ａを有する縦框下端金属部品３１がさらに設けられている。縦框下端金属部品３１は、被覆金属部３１ａから上方に向かって伸びる垂直面部３１ｂを有しており、垂直面部３１ｂの戸車調整用孔２３ｉ側を向く面にも加熱発泡剤３４が設けられる。加熱発泡剤３２、３３、３４は、所定温度以上になると発泡して体積が数十倍に増加するものであり、火災発生時にサッシが高温に晒されるのに伴い、発泡して縦框下振止部品３０が設けられる領域を塞ぐ。

【0041】

図５には、縦框下振止部品３０の斜視図を示している。縦框下振止部品３０には、両端部に１組の摺接部３０ａ、３０ａが対向状に形成されており、それらの間には、加熱発泡剤３２、３３を載置する支持部３０ｂ、３０ｃが形成されている。一方の支持部３０ｂは、摺接部３０ａ、３０ａの内面及びそれらを繋ぐ部分にそれぞれ形成された突起状の面によって構成され、他方の支持部３０ｃは、縦框下振止部品３０の上面を構成する部分で構成されている。

【0042】

縦框下振止部品３０においては、支持部３０ｂ、３０ｃにそれぞれ加熱発泡剤３２、３３を載置できると共に、支持部３０ｂ、３０ｃの下方領域は、それぞれ空間部３０ｄ、３０ｅとなっている。すなわち、加熱発泡剤３２、３３の下方に空間部３０ｄ、３０ｅが形成されるので、加熱発泡剤３２、３３がそれぞれ下方に向かって発泡することができる。なお、図５では、支持部３０ｂ、３０ｃにそれぞれ載置される加熱発泡剤３２、３３を破線で表している。

【0043】

図６には、縦框下端金属部品３１の斜視図を示している。この図に示すように、縦框下端金属部品３１は、縦框下振止部品３０の支持部３０ｂ、３０ｃに載置された加熱発泡剤３２、３３を上方から覆う被覆金属部３１ａと、被覆金属部３１ａから上方に向かって伸びる垂直面部３１ｂと、垂直面部３１ｂから側方に向かって伸びる側面部３１ｃとを有して構成されている。

【0044】

縦框下端金属部品３１の被覆金属部３１ａは、縦框下振止部品３０において加熱発泡剤３２、３３が載置される位置に合わせて、段差を有するように形成されている。垂直面部３１ｂから伸びる側面部３１ｃには、孔部３１ｄが形成されており、召合わせ框２３に形成される戸車調整用孔２３ｉと連通するように配置されている。

【0045】

縦框下振止部品３０の支持部３０ｂ、３０ｃに載置された加熱発泡剤３２、３３は、上面側が金属からなる被覆金属部３１ａによって覆われ、下面側には空間部３０ｄ、３０ｅが形成されているから、火災発生時にサッシが高温に晒されると、下方の空間部３０ｄ、３０ｅに向かって発泡し、框体４のコーナー部分において、召合わせ框２３と下枠１１の間の隙間を塞ぐことができる。

【0046】

特に、サッシが高温に晒されることにより、樹脂からなる縦框下振止部品３０は溶融するが、縦框下振止部品３０が溶融する前から、加熱発泡剤３２、３３の下方には空間部３０ｄ、３０ｅが確保されているから、確実に隙間を埋めるように発泡させることができる。

【0047】

また、火災発生時には、垂直面部３１ｂの加熱発泡剤３４も発泡する。垂直面部３１ｂは召合わせ框２３の戸車調整用孔２３ｉの位置よりも上方まで伸び、加熱発泡剤３４も垂直面部３１ｂの上端付近まで設けられているから、発泡によって召合わせ框２３の戸車調整用孔２３ｉを含む領域を塞ぐことができる。ただし、加熱発泡剤３４の配置はこれに限られず、少なくとも召合わせ框２３の戸車調整用孔２３ｉまで発泡する位置に設けられていればよい。

【0048】

下框２１の戸車２１ｄは融点の低い樹脂材によって形成されており、火災の際には溶融し、さらにガス化して戸車調整用孔２３ｉから漏れ、引火する可能性があるが、本実施形態のように、垂直面部３１ｂの加熱発泡剤３４によって戸車調整用孔２３ｉ付近を塞ぐことにより、戸車２１ｄの樹脂に引火しないようにすることができる。

【0049】

図７には、内障子２の召合わせ框２３の平面図を示している。この図では、召合わせ框２３の上端部に設けられる部品は省略している。召合わせ框２３の下端部には、コーナー部品として樹脂からなる召合わせ下振止部品４０が設けられる。召合わせ下振止部品４０の上部には、金属からなる召合わせ下端金属部品４１が設けられる。なお、ここでは内障子２の召合わせ框２３下端の構成について説明するが、外障子３の召合わせ框２３下端についても同様の構造とすることができる。

【0050】

図８には、召合わせ下振止部品４０の斜視図を示している。召合わせ下振止部品４０は、ブロック状に形成されてなる本体部４０ａを有し、本体部４０ａの下面側にはアーチ状の摺接部４０ｂが形成されている。摺接部４０ｂは、下枠１１の内レール部１１ｂを跨ぎ、これに摺接して内障子２を内レール部１１ｂに沿って円滑に案内する。

【0051】

本体部４０ａの側面及び下面には、Ｌ字状に連続する側面ヒレ状部４０ｄと下面ヒレ状部４０ｅとが形成されている。これらは、軟質のヒレ部分を有しており、下枠１１及び外障子３の框体４に対して当接することで、召合わせ部における気密性の確保を図ることができる。

【0052】

本体部４０ａの上面は、平面状となっており、加熱発泡剤４２を載置可能な支持部４０ｃとなっている。支持部４０ｃには、複数の開口部４０ｆが形成されており、この開口部４０ｆは、それぞれ本体部４０ａの下面または摺接部４０ｂまで貫通した空間部４０ｇを形成している。したがって、支持部４０ｃに載置される加熱発泡剤４２の下方には、複数の空間部４０ｇが配置されることとなる。

【0053】

図９には、召合わせ下端金属部品４１を取付けた召合わせ下振止部品４０の斜視図を示している。この図に示すように、召合わせ下振止部品４０の上面に載置された加熱発泡剤４２の上面側は、召合わせ下端金属部品４１の被覆金属部４１ａによって覆われる。したがって、火災発生時にサッシが高温に晒されると、加熱発泡剤４２は下方の空間部４０ｇに向かって発泡し、召合わせ下振止部品４０が溶融するのに伴い、その領域を塞ぐことができる。また、縦框下振止部品３０の場合と同様、召合わせ下振止部品４０の溶融前から加熱発泡剤４２を下方の空間部４０ｇに向かって発泡させることができるので、より確実に隙間を塞ぐことができる。

【0054】

召合わせ下端金属部品４１は、被覆金属部４１ａから上方に伸びる垂直面部４１ｂをさらに備え、垂直面部４１ｂには孔部４１ｃが形成されている。この孔部４１ｃは、召合わせ框２３に形成される戸車調整用孔２３ｉと連通する位置に配置されている。

【0055】

図１０には、召合わせ框２３の側面図を示している。なお、この図でハッチングされているのは、孔が開いている部分である。この図に示すように、召合わせ下端金属部品４１の孔部４１ｃは、召合わせ框２３の戸車調整用孔２３ｉと向かい合うように配置される。また、召合わせ下端金属部品４１の垂直面部４１ｂには、加熱発泡剤４３が設けられ、火災発生時には、この加熱発泡剤４３も発泡する。垂直面部４１ｂは召合わせ框２３の戸車調整用孔２３ｉの位置よりも上方まで伸び、加熱発泡剤４３も垂直面部４１ｂの上端付近まで設けられているから、発泡によって召合わせ框２３の戸車調整用孔２３ｉを含む領域を塞ぐことができる。

【0056】

さらに、本体部４０ａの側面ヒレ状部４０ｄが設けられる側面には、側面ヒレ状部４０ｄの根元部分に加熱発泡剤４４が設けられる。この加熱発泡剤４４も火災発生時には発泡して、内障子２と外障子３の間の領域を塞ぐことができる。それによって、召合わせ部分の隙間をより確実に塞いで、防火性能を高くすることができる。

【0057】

以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。例えば、本実施形態では内外障子２、３が枠体１内に引き違い状に納められるものとしたが、内外障子２、３のいずれかが枠体１に固定された片引きサッシであっても、同様に本発明を適用できる。

【符号の説明】

【0058】

１ 枠体
２ 内障子
３ 外障子
４ 框体
５ パネル体
１０ 上枠
１１ 下枠
１２ 縦枠
２０ 上框
２１ 下框
２２ 縦框
２３ 召合わせ框
３０ 縦框下振止部品
３０ａ 摺接部
３０ｂ 支持部
３０ｃ 支持部
３０ｄ 空間部
３０ｅ 空間部
３１ 縦框下端金属部品
３１ａ 被覆金属部
３１ｂ 垂直面部
３１ｃ 側面部
３１ｄ 孔部
３２ 加熱発泡剤
３３ 加熱発泡剤
３４ 加熱発泡剤
４０ 召合わせ下振止部品
４０ａ 本体部
４０ｂ 摺接部
４０ｃ 支持部
４０ｄ 側面ヒレ状部
４０ｅ 下面ヒレ状部
４０ｆ 開口部
４０ｇ 空間部
４１ 召合わせ下端金属部品
４１ａ 被覆金属部
４１ｂ 垂直面部
４１ｃ 孔部
４２ 加熱発泡剤
４３ 加熱発泡剤
４４ 加熱発泡剤

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】