(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハウジングを形成する工程において、前記ハウジングは、前記端子の先端を超えた位置まで一体成形されることを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタの製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機、デジタルカメラ、PDA等の分野において、機器の小型化が急速に進んでいる。これに伴い、これらの機器に使用される電気コネクタの小型化の要求も一層増している。そのため、電気コネクタの低背化や内部に並列に配置された端子(コンタクト)の狭ピッチ化が進んでいる。
【0003】
相手側コネクタの端子と一点でのみ接触するいわゆる一点接触型の電気コネクタの技術として、例えば、特許文献1(特開2008−218144号公報)に記載された技術などが挙げられる。特許文献1記載の電気コネクタは、電気絶縁性のプラスチックからなるハウジング、金属製のコンタクト(端子)、金属製のシェルなどから構成され、ハウジングはコンタクトが挿入される挿入孔を有し、その挿入孔にコンタクトを圧入し、ハウジングをシェルで覆うことで製造される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載された電気コネクタの場合、ハウジングに対する端子の保持が圧入構造からなっているため、必要な保持力を得るためには端子の圧入部の幅(圧入代)を大きくせざるを得ず、その結果、端子の圧入部の対向面積が大きくなってしまい、電気コンタクトの小型化が困難であるという問題があった。また、部品点数や組み立て工数が多くなってしまうという欠点があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、弾性変位可能な部分を有する複数の端子を備えた電気コネクタにおいて、電気コネクタの小型化を図り、製造工数及び製造コストの削減をすることができる技術を提供することにある。
【0007】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0009】
すなわち、本発明による電気コネクタの製造方法は、弾性変位可能な可動部と固定部とを含む端子と、前記端子の前記固定部を保持するハウジングとを有する電気コネクタを製造する方法である。そして、その製造方法は、第1の金型及び第2の金型を前記端子を上下から挟み込む位置に、第3の金型を、前記第1の金型と前記第2の金型との間であって前記端子の前記可動部を保持する位置に、それぞれ設置する工程と、前記第1の金型と前記第2の金型との間に絶縁材料を注入し、前記端子とともに一体成形することにより前記ハウジングを形成する工程と、を有するものである。
【0010】
前記電気コネクタの製造方法において、前記ハウジングを形成する工程において、前記ハウジングは、前記端子の先端を超えた位置まで一体成形されることが好ましい。
【0011】
本発明による電気コネクタは、弾性変位可能な可動部と固定部とを含む端子と、前記端子の前記固定部を保持するハウジングと、を有するものである。そして、前記ハウジングは、絶縁材料により前記端子とともに一体成形されたものであり、かつ前記ハウジングは、前記端子の先端を超えた位置まで一体成形されたものである。そして、前記端子の前記可動部と前記ハウジングの内壁面との間に、前記可動部が弾性変位可能な空間を有するものである。
【0012】
前記電気コネクタにおいて、前記ハウジングの一体成形時に、前記端子の前記可動部と前記ハウジングの前記内壁面との間の前記空間に金型が挿入され、前記可動部が固定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
(1)端子とハウジングを一体成形することにより、端子の圧入代が不要となり、電気コネクタの小型化が図れる。
(2)端子とハウジングを一体成形することにより、部品点数が削減される。
(3)端子とハウジングを一体成形することにより、製造工数が削減される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態による電気コネクタの構成を示す上側斜視図である。
【
図2】本発明の一実施の形態による電気コネクタの端子の構成を示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態による電気コネクタの一体成形後の構成を示す上側斜視図である。
【
図4】本発明の一実施の形態による電気コネクタの一体成形後の構成を示す正面図である。
【
図5】本発明の一実施の形態による電気コネクタの一体成形後の構成を示す平面図である。
【
図7】本発明の一実施の形態による電気コネクタの一体成形後の構成を示す底面図である。
【
図8】本発明の一実施の形態による電気コネクタのロック部材取り付け後の構成を示す上側斜視図である。
【
図9】本発明の一実施の形態による電気コネクタのケーブル結線後の構成を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
図1は本発明の一実施の形態による電気コネクタ100を斜め上側から示した斜視図である。まず、
図1により、本発明の一実施の形態による電気コネクタの構成の一例を説明する。本実施形態の電気コネクタ100は、例えば、金属製の複数の端子101と、樹脂等の絶縁材料により複数の端子101とともに一体成形(インサート成形)されたハウジング102と、嵌合時に相手側コネクタ(図示せず)をロックするための上下方向に弾性変位可能なロック片103と、ハウジング102を覆う金属製のシールド104などから構成される。電気コネクタ100の正面部(
図1の左側)には、相手側コネクタと嵌合するための開口105が設けられている。
【0017】
図2は、電気コネクタ100に含まれる複数の端子101の構成を示す平面図であり、相手側コネクタの端子との接触面側から見た図である。
図2に示すように、複数の端子101は、並列に配置されている。また、複数の端子の各端子101は、上下方向(
図2の紙面垂直方向)に弾性変位可能な可動部(自由端)201と、一体成形によりハウジング102に固定されて保持される固定部202と、電気ケーブルの芯線(
図9参照)に接続するための結線部203などから構成される。また、可動部201は、その先端部付近に相手側コネクタの端子と接触するための凸状に湾曲した接触部204を有する。この接触部204は、1つの端子について1つ設けられており、端子101は、いわゆる一点接触端子として機能する。端子101は、平らな金属板を打ち抜き、折り曲げ加工することにより形成されており、平らな金属面(いわゆるロール面)が相手側端子(図示せず)と接触するようになっている。
【0018】
なお、本実施形態では、一例として端子101の数が5本の場合を示しているが、これに限定されるものではなく、端子の数はいくつであってもよい。また、本実施形態では、外側の両側の端子の長さが内側の端子より少し長くなっているが、これは、外側の端子が電源・接地用端子であり、内側が信号線用端子であるからである。しかし、この配置に限定されるものではなく、端子の配列を適宜変更することが可能である。
【0019】
図3〜
図7は、電気コネクタ100の製造過程において、一体成形(インサート成形)後の構成を示す図であり、
図3は上側斜視図、
図4は正面図、
図5は平面図、
図6は
図5のB−B線断面図、
図7は底面図である。ハウジング102は、複数の端子101を金型内に配置して、その金型に樹脂等の絶縁材料を注入して複数の端子101とともに一体成形することにより形成される。
【0020】
図3に示すように、端子101の可動部201はハウジング102から露出しており、端子101の接触部204の下側とハウジング102の下側内壁面310との間に、端子101の可動部201が弾性変位可能なように、端子101の可動領域として略台形状の空間301が設けられている。また、ハウジング102は、端子101の先端311を超えた位置まで一体成形(インサート成形)されている。すなわち、ハウジング102は、端子101の可動部201の先端311が、ハウジング102の開口側の端部312よりハウジングの内側に位置するように一体成形されている。
【0021】
ハウジング102は、端子の固定部202と結線部203に一体成形される固定部313と、固定部313から端子101の先端311を越えて延びる下延部314および側部315を有する。ハウジング102は、端子101の下側の部分だけが固定部313から端子101の先端311を越えて延び、下延部314を形成している。ハウジング102の上面側において、固定部313では端子101がハウジングの樹脂によって隠れているが、下延部314では端子101が露出している。端子101の露出部分すなわち可動部201は、開口105を形成する下延部314および側部315によって囲まれ、上側は開放となっている(上側の開放部分は、後にシールド104によって覆われる。)。
【0022】
また、ハウジング102は、その上部に、ロック片103が上下方向に弾性変位可能となるためのロック片用の溝302及び貫通孔307、ロック片103と一体構成されたロック部材を取り付けるためのロック部材取付け部303、ロック部材の位置決め部304、ロック部材の固定孔305などを有する。
【0023】
図4に示すように、隣り合う各端子101の可動領域の空間301の間には、それぞれ、端子間を区切る仕切り壁306があり、端子間の接触を防止する構造となっている。また、
図5に示すように、ロック片用の溝302の先端部には、ロック片103の先端が弾性変位可能な可動領域としての貫通孔307が設けられている。
【0024】
図7に示すように、ハウジング102の底面側では、端子101の結線部203が露出し、一体成形時に金型によって形成された金型孔308,309が存在し、それらの孔を通して端子101の一部が見えている。端子101の先端側に位置する金型孔308は各端子101に対応するように一つずつ形成され、端子101の固定部202側に位置する金型孔309は、端子101の配列方向に複数の端子にまたがって形成されている。
【0025】
図8は、電気コネクタ100の製造過程において、ロック部材取り付け後の構成を示す上側斜視図である。
図8に示すように、一体成形の後、
図3に示したロック部材取付け部303上に、ロック片103と一体となったロック部材801が取り付けられる。その際、
図3に示したロック部材の位置決め部304で位置決めされ、ロック部材の固定孔305でロック部材801が固定される。このような構成により、ロック片103は、貫通孔307を通して上下方向に弾性変位可能となり、相手側コネクタが嵌合されたときに、ロック片103によりロックされ嵌合が強化される。
【0026】
本実施形態におけるロック部材801は、
図8に示す通り、平らな金属板を打ち抜き、折り曲げ加工することによって形成されており、平らな金属面(いわゆるロール面)が相手コネクタと接触することでロックする。また、ロック部材801は、一体の部材からなり、一対のロック片103と、位置決め部304に嵌り合う孔802と、固定孔305に嵌り合う圧入部803を有している。
【0027】
図9は、電気コネクタ100のケーブル結線後の構成を示す底面図である。
図9に示すように、電気コネクタ100の使用に際して、複数の端子101の各結線部203に、電気ケーブル901の芯線902が接続される。
【0028】
次に、
図1〜
図8により、電気コネクタ100の製造方法を説明する。まず、
図2に示すような複数の端子101を上下方向から挟み込むようにして第1の金型(上側)及び第2の金型(下側)を設置する。このとき、複数の端子101は、第1の金型及び第2の金型によって位置決めされ、保持される。続いて、各端子101の可動部201と第2の金型(下側)との間(一体成形後の空間301に対応)に第3の金型を挿入して可動部201を固定する。なお、第1、第2及び第3の金型の形状は特に図示していないが、これらの形状は電気コネクタ100及びハウジング102の形状から容易に想像可能である。例えば、第3の金型は、複数の端子101を保持するように、端子101の下側、複数の端子101の端子間、端子101と側部315との間等を埋めるように作られている。また、一体成形により金型孔308,309ができるように、第1、第2及び第3の金型は作られている。
【0029】
続いて、第1の金型と第2の金型との間に樹脂等の絶縁材料を注入してハウジング102を形成する。これにより、ハウジング102は、複数の端子101とともに一体成形(インサート成形)されて形成される。このとき、ハウジング102は、端子101の先端を超えた位置まで一体成形される。従来の一体成形では、端子101の可動領域としての空間301を形成しつつ、凸状に湾曲した接触部204を有する端子101の先端を超えた位置までハウジングを一体成形することは不可能であったが、本発明の実施の形態による電気コネクタの製造方法では、空間301を形成するために、第1の金型と第2の金型の間に第3の金型を前方(開口側)から挿入しているため、端子101の先端を超えた位置まで一体成形することが可能になる。この一体成形後の状態が、
図3〜
図7に示されている。
【0030】
次に、ハウジング102の上面のロック部材取付け部303にロック部材801を取り付ける。その際、位置決め部304でロック部材801を位置決めし、固定孔305でロック部材801を固定する。このロック部材801を取り付けた後の状態が
図8に示されている。
【0031】
次に、ハウジング102の周囲を金属製のシールド104で覆い、
図1に示すような電気コネクタ100となる。シールド104は、1枚の薄い金属板を打ち抜き、折り曲げ加工することにより形成できる。
【0032】
なお、前記の第1、第2及び第3の金型を設置する順序は、前記の順序に限定されず、種々変更可能である。例えば、最初に第3の金型で複数の端子101を保持し、続いて、第3の金型及び複数の端子101を上下から挟み込むように第1の金型と第2の金型とで保持するようにしてもよい。また、複数の端子101を保持するようにして、第1、第2及び第3の金型を同時に設置してもよい。
【0033】
したがって、本実施の形態による電気コネクタ及びその製造方法によれば、弾性変位可能な部分を有する複数の端子を備えた電気コネクタにおいて、複数の端子とともに一体成形(インサート成形)によりハウジングを形成しているので、端子の圧入代が不要になり、電気コネクタの小型化が可能になり、部品点数が少なくなり、製造における工数が少なくなる。また、端子の先端の可動領域に第3の金型を挿入して一体成形するので、端子の先端を超えた位置までハウジングを一体成形することが可能になる。また、端子の先端がハウジングの開口側の端部より内側に位置するように一体成形されるので、追加の部品や工数が不要となり、製造コストの削減が可能になる。
【0034】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、第1の金型と第2の金型の上下を入れ替えてもよい。また、端子101の接触部204の凸部の位置の上下を入れ替えてもよい。