【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するため、圧電振動回路として、インバーターの入出力間にコンデンサーと圧電振動子を並列接続した回路と、第1のコイル、第2のコイルを直列接続した回路を備え、第1のコイル、第2のコイルの接続点と回路の接地点間にパスコンデンサーを備え、接続点と接地点間を交流に対して短絡させ、さらに電源と接地間にはコンデンサーを挿入し、交流に対して短絡させ、前記インバーターの電源端子と接地端子間に電圧を印加し、発振回路として構成することを特徴とする。
【0018】
またインバーターの入出力間のコンデンサーは、同調キャパシターまたは電圧制御可変容量ダイオードであることを特徴とする。
このとき、インバーターを構成する半導体は、FET、またはバイポーラトランジスタであることを特徴とする。
【0019】
また圧電振動子は、水晶の結晶体、またはセラミックの焼結体である。
図6に本発明のうちインバーターの入出力間のコンデンサーは、同調キャパシターとした発振回路を示す。インバーターの入出力間に圧電振動子を挿入し、さらに同インバーターの入力にインダクタンス、同じく同インバーターの出力にインダクタンスを接続し、インダクタンス同士を接続する中点と回路の接地の間にキャパシタンスを接続し発振回路を構成する。また、インバーターの電源端子と接地端子間に直流電圧、および交流電圧に対し短絡とする十分大きなキャパシタンスを挿入する。発明になる回路は回路に付加したC
XまたはC
4とL
2、 L
3によるLC共振状態と、水晶振動子の共振状態の結合よりなる2重共振型回路を構成する。2重共振型発振回路の負性抵抗の最大値R
CCimaxは10 MHzにおいて近似的に-7 kΩに等しい。さらに、共鳴周波数の近傍において狭い周波数領域において急激な変化を示す。等価抵抗はインダクタンスの特性を示し高周波領域において、容量性の特性を示す。
図7、8、9に本発明回路の等価回路を示す。本発明回路では、特許文献1ならびに特許文献2で示された回路と同等あるいは同等以上の機能をより少ない部品で実現している。同図の抵抗はインダクタンスL
2および L
3のQ値(=ωL/R)を与える抵抗である。各電流源からの電流と電位差により式(数7)が得られる。定電流源のコンダクタンスを合成すると式(数9)の総合コンダクタンスが得られる。
【0020】
【数7】
【0021】
【数8】
【0022】
【数9】
【0023】
キルヒホフの電圧則・電流則を適用し、基礎方程式をなす同次1次方程式を得る。
【0024】
【数10】
【0025】
【数11】
【0026】
同式の解が恒常的に0でない条件により特性方程式(数12)が得られる。
【0027】
【数12】
【0028】
次式に示すインピダンスを規定して代入し、等価的抵抗と等価的インダクタンスを求める。
式(数13)はQ値の定義である。
【0029】
【数13】
【0030】
各インピダンスを内部抵抗とリアクタンス分に分解して、式(数14)を得る。
【0031】
【数14】
【0032】
定常発振回路の等価回路から次の式を得る。
【0033】
【数15】
【0034】
【数16】
【0035】
【数17】
【0036】
等価回路-3においてZ
xtは水晶振動子の等価的インピダンスである。C
0を含めて合成してC
x、ドライバー回路のインピダンスR
c、L
cを含めて合成された等価的抵抗とインダクタンスにすることで、R
CCi、 L
CCiを発見する。角周波数ωを用いて、インダクタンスL
cは
キャパシタンスC
cに変換できる。同様にL
CCiをC
CCiに変換できる。回路側に並列容量を含めて合成された合成等価抵抗R
CCiと合成等価キャパシタンスC
CCiの定義は以下の式(数19)、 (数20)に与えられている。モーションアームからみた合成等価抵抗R
CCiと、合成等価キャパシタンスC
C、 C
CCiと合成等価インダクタンスL
C、 L
CCiの関係を以下の式(数18)に示す。
【0037】
【数18】
【0038】
合成等価抵抗および合成等価キャパシタンスを示す。
【0039】
【数19】
【0040】
【数20】
【0041】
図10に本発明のうちインバーターの入出力間のコンデンサーを、単一の可変容量ダイオード周波数制御方式での構成とした発振回路を示す。以下、この回路方式を単一ダイオード周波数制御とする。単一ダイオード周波数制御方式は構成する部品点数が少ない特徴があるが、制御電圧の増加する側の変化と減少する側の変化の場合電圧に対する静電容量の変化の様子が異なる。従って、周波数制御において制御電圧勾配の上昇あるいは下降部分の片側だけを常に用いて周波数成御を行う。
【0042】
この問題点を解決するために、2個の可変容量ダイオードを逆極性に接続して制御バイアスを加える方式を2重可変容量ダイオード周波数制御方式での構成とした発振回路を
図11に示す。本回路図ではBack-to-Backでの接続としたが、Head-to-Headの接続として制御電圧は逆極性とした構成としてもよい。
【0043】
図10の電圧制御水晶発振回路を用いて試験を行った。回路の回路定数は以下のとおりである。回路定数:パスキャパシターC
2 = 10 μF、 C
3、 C
4、 C
8、 C
9、 C
10= 1000 pF、 C
6 = 10 pF、 C
7 = 0.1 μF;可変容量ダイオードC
x1、 C
x2: 1SV149B、CMOS インバーター IC
1: TC7SHU04; L
2、 L
3= 2.7 μH; R
f4、 R
f5 = 100 Ω; R
6、 R
7、 R
8 = 1 MΩ とした。
【0044】
図12は、単一可変容量ダイオード周波数制御による周波数可変の様子である。可変容量ダイオード電圧制御発振回路における観測された周波数ジャンプと周波数偏差の絶対値 ■:バイアス電圧上昇時の周波数偏差f
vd1(↑)、□:バイアス電圧下降時の周波数偏差f
vd1(↓)、●:周波数偏差f
vd1(↑)の正規化|Δf
vd1(↑)/f
1|、○:周波数偏差f
vd1(↓)の正規化|Δf
vd1(↓)/f
1|、回路定数:L
2、L
3= 2.7 μH、Q
2、Q
3 = 100、C
o=10 pF、G
M = 10 mA/V。 水晶共振器の等価回路定数: C
0 = 5.122 pF、L
1 = 12.71 mH、C
1= 24.61 pF、R
1 = 24.15Ω、 f
1 = 8.9989 MHzとした。
【0045】
図13は理論計算による負性抵抗と周波数可変の変位率を示す。C
xの関数としてバイアス電圧下降時の発振周波数と正規化された周波数偏差、等価負性抵抗である。静電容量C
xに対する負性抵抗の依存性について、バイアス電圧上昇時において、負性抵抗が最大値36Ωに達する前に発振周波数はロックされる。バイアス電圧下降時において負性抵抗R
dciの最大値10kΩにおいて水晶共振が起こる。同じ値R
dciが水晶共振の周波数f
xtがLC共振の周波数に等しいときに同じ値が観測された。バイアス電圧上昇中と降下中において、LC共振から水晶共振へのモード遷移が同じ周波数で観測された。
【0046】
図14は、2重可変容量ダイオード周波数制御方式の周波数制御特性を示す。水晶共振状態がより小さいキャパシタンス値において起き、周波数の偏差が10
1 ppmの急峻な変化を示すまで連続的に発振が起きる。
【0047】
図15は理論解析を示す。C
xが約56 pFにおいて水晶共振が観測された。ここで、2重共振はより広いキャパシタンスの範囲で現れる。この点において、R
dciの絶対値は約10 kΩである。このときに水晶共振のモーションアームは共振状態から離れ、発振モードはLC発振に遷移する。
【0048】
図16、17では、可変容量ダイオード制御回路において周波数の差の制御電圧に対する依存性の直線性の検討結果を示す。単一可変容量ダイオード制御回路では水晶共振とLC共振の不一致を示しているが、2重可変容量ダイオード制御回路でLC共振がロックする発振周波数と水晶共振周波数が一致する。さらに、本発明の2重共振水晶発振回路は、制御電圧が3から7V の範囲で比例係数が約1の線形性を示す。
【0049】
単一可変容量ダイオード制御においてはバイアスの増減において示す周波数変移が異なるのに対して2重可変容量ダイオード制御においては全く同じ周波数変位を示す。
電圧制御発振回路において周波数の安定性は重要である。センサーの駆動回路においては測定の分解能や再現性に関わり、通信用途においては隣接する周波数バンド間の分離に関わる。水晶発振周波数から離れた周波数におけるLC発振と水晶発振周波数近傍の周波数ロック状態における短期安定性の指標としてアラン分散を示す。ここで、アラン分散は式(数21)のように定義される。2重共振のアラン分散は10
-10の大きさを示した。この測定において、環境ドリフトはシールドケースによって減少された。この結果は標準的な水晶発振回路と比較して合理的な値を示している。
【0050】
図18、19はバイアス電圧降下時のアラン分散σを示している。有限長のサンプルに対するアラン分散は式(数21)で定義される。回路の発振周波数f
τnはカウンターによって指示された周波数である。τはゲート時間、nは順序を表す番号である。発振周波数の偏差は共振周波数f
0と偏差Δf
τnである。正規化された周波数変移はy
τnのように無次元量で定義される。
【0051】
【数21】
【0052】
正規化されて無次元化された周波数変位が y
τn である。
【0053】
【数22】
【0054】
【数23】
【0055】
単一可変容量ダイオード制御の場合の短期安定度を示す。水晶発振周波数にロックされているときアラン分散は一般に10
−9〜10
−8台の大きさ、ゲート時間の範囲によっては10
-10を示す。次に、2重可変容量ダイオード制御の短期安定度を示す。おなじく、アラン分散は一般に10
−9〜10
−8台の大きさを示す。
【0056】
水中に振動子を浸漬した場合のモデル化について、説明する。水晶振動子が液体中に浸漬された場合、リーク電流の増大や並列容量の増大、粘性によるエネルギーの散逸その他が生じ、誘電率の増大により電極間の並列容量C
0の増大が生じる。この静電容量の増大はC
0Wと記述される。リーク電流は抵抗R
Wで記述される。液体中における粘性の増大は等価的抵抗の増大を生じる。増大した等価抵抗はR
1Wで記述される。2重共振型発振回路は液体中の水晶振動子に接続されている。C
0Wと C
0 をR
CとL
Cに導入等価的抵抗をR
1CCi、等価的キャパシタンスを C
1CCiと記述すると、L
1CCi は C
1CCiと共振角周波数 ωの項によって表される。R
W を R
1CCi と C
1CCiに含めて合成して R
WCCi と C
WCCiが求められる。
【0057】
【数24】
【0058】
【数25】
【0059】
【数26】
【0060】
【数27】
【0061】
【数28】
【0062】
【数29】