特許第5861287号(P5861287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5861287-ターボチャージャ 図000002
  • 特許5861287-ターボチャージャ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5861287
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】ターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20160202BHJP
【FI】
   F02B39/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-150128(P2011-150128)
(22)【出願日】2011年7月6日
(65)【公開番号】特開2013-15120(P2013-15120A)
(43)【公開日】2013年1月24日
【審査請求日】2014年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】石井 幹人
【審査官】 寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−144546(JP,A)
【文献】 特開昭61−085503(JP,A)
【文献】 特開平11−229887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/00 − 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクロール流路と連通するインペラ収容空間にてインペラを収容すると共に当該インペラに軸方向から接続されるシャフトを収容するハウジングと、
前記インペラ周りに固定配置される複数の固定翼と、前記軸方向を向く表面側に前記固定翼が設置されると共に前記軸方向に移動可能とされたノズルプレートと、
前記ノズルプレートを前記固定翼側に押圧する押圧手段と、
を有し、
前記ノズルプレートの裏面側に前記スクロール流路と前記インペラ収容空間とを接続する漏れ流路を有するターボチャージャであって、
前記ノズルプレートと前記ハウジングとを前記インペラの径方向において位置決めするインロー部を前記漏れ流路内部に有し、
前記ハウジングが前記インペラを収容するインペラハウジングと、前記シャフトを収容する軸部ハウジングとを有し、
前記インロー部として、前記ノズルプレートと前記軸部ハウジングとを位置決めする第1インロー部を備える
ことを特徴とするターボチャージャ。
【請求項2】
前記インロー部として、前記ノズルプレートと前記インペラハウジングとを位置決めする第2インロー部をさらに備える
ことを特徴とする請求項記載のターボチャージャ。
【請求項3】
前記第1インロー部は、前記押圧手段よりも前記漏れ流路における流れの上流側に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載のターボチャージャ。
【請求項4】
前記ノズルプレート及び前記インペラハウジングの材質、あるいは、前記ノズルプレートと前記インペラハウジングとを位置決めするインロー部におけるクリアランスは、加熱時において前記インロー部におけるクリアランスが確保可能に設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両には、燃費向上及び出力向上のためにターボチャージャが搭載される場合がある。
このターボチャージャは、特許文献1に示すように、タービンとコンプレッサとを備えており、タービンにおいて排気ガスに含まれるエネルギを回転動力として回収し、この回収した回転動力を用いてコンプレッサにおいて内燃機関に供給する空気を圧縮するものである。
【0003】
ところで、タービン及びコンプレッサは、内部に回転駆動されるインペラを備えている。そして、上述のようなターボチャージャにおいては、タービンあるいはコンプレッサにおける流体の整流を行う翼体がインペラ周りに複数配置されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−215083号公報
【特許文献2】特開2009−144546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような翼体をインペラ周りに配列することによってタービン及びコンプレッサの性能が向上するものの、翼体を設置すると、特許文献2に示すように、翼体が設置されるノズルプレートの裏面側に隙間が形成され、翼体の上流側と下流側とをバイパスする漏れ流路が形成される場合がある。
【0006】
近年では、上述の翼体として回動せずに固定された固定翼を用いるターボチャージャが提案されており、このようなターボチャージャでは特に漏れ流路における漏れ量が多くなる懸念がある。
これは、固定翼とハウジングとの間の隙間が極小化されるように、ノズルプレートがハウジングに向けて押圧できるように移動可能とされており、ノズルプレートが移動した際に大きな流路が形成される可能性があるためである。
【0007】
このような漏れ流路が形成されると漏れ流路を流れる漏れ流れが生じる。この漏れ流れは、圧力損失が増大する原因となると共に、シールリングを通過して意図しない領域に流れ込むブローバイガスとなる場合もある。
つまり、漏れ流路が形成されて漏れ流れが生じると、圧力損失の増大に起因する性能低下やブローバイガスの増大の原因となる。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、インペラ周りに固定翼が配列されたターボチャージャにおいて、固定翼を通過することなく上流側から下流側にバイパスする漏れ流れを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0010】
第1の発明は、スクロール流路と連通するインペラ収容空間にてインペラを収容すると共に当該インペラに軸方向から接続されるシャフトを収容するハウジングと、上記インペラ周りに固定配置される複数の固定翼と、上記軸方向を向く表面側に上記固定翼が設置されると共に上記軸方向に移動可能とされたノズルプレートと、上記ノズルプレートを上記固定翼側に押圧する押圧手段とを有し、上記ノズルプレートの裏面側に上記スクロール流路と上記インペラ収容空間とを接続する漏れ流路を有するターボチャージャであって、上記ノズルプレートと上記ハウジングとを上記インペラの径方向において位置決めするインロー部を上記漏れ流路内部に有するという構成を採用する。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ハウジングが上記インペラを収容するインペラハウジングと、上記シャフトを収容する軸部ハウジングとを有し、上記インロー部として、上記ノズルプレートと上記軸部ハウジングとを位置決めする第1インロー部を備えるという構成を採用する。
【0012】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記インロー部として、上記ノズルプレートと上記インペラハウジングとを位置決めする第2インロー部をさらに備えるという構成を採用する。
【0013】
第4の発明は、上記第1〜第3の発明において、上記インロー部は、上記押圧手段よりも上記漏れ流路における流れの上流側に配置されているという構成を採用する。
【0014】
第5の発明は、上記第1〜第4いずれかの発明において、上記ノズルプレート及び上記インペラハウジングの材質、あるいは、上記ノズルプレートと上記インペラハウジングとを位置決めするインロー部におけるクリアランスが、加熱時において上記インロー部におけるクリアランスが確保可能に設定されているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、固定翼が設置される面と反対のノズルプレートの裏面側に漏れ流路を有するものの、当該漏れ流路内部にノズルプレートとハウジングとを位置決めするインロー部を有している。
当該インロー部は、ノズルプレートとハウジングとを嵌め合わせるためのものであり、ノズルプレートとハウジングとの相対的な移動を規制して位置決めするものである。このようなインロー部においては、ノズルプレートとハウジングとは圧接されてないものの、軽く接触あるいは極めて近接して配置されることとなる。
このため、本発明のように、漏れ流路の内部にインロー部が配置されると、漏れ流路を通過する流体は、インロー部を通過しなければならないこととなる。つまり、本発明によれば、漏れ流路の圧力損失が増大し、流体が漏れ流路を通過し難くなる。
したがって、本発明によれば、インペラ周りに固定翼が配列されたターボチャージャにおいて、固定翼を通過することなく上流側から下流側にバイパスする漏れ流れを低減することが可能となる。
【0016】
近年においては、固定翼をノズルプレートに固定し、ノズルプレートを固定翼側に移動可能とすることによって、稼働中においても固定翼と流路壁との間に隙間ができることを抑制可能な固定翼式ターボチャージャが提案されている。
このようなターボチャージャによれば、ノズルプレートが移動可能とするために、ノズルプレートの周囲には隙間を設ける必要があり、この分漏れ流路が大きくなる。本発明は、漏れ流路における流体の漏れ量を低減することができるため、特にノズルプレートが移動可能とされた固定翼式ターボチャージャに適したものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態におけるターボチャージャの概略構成を示す断面図である。
図2図1の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係るターボチャージャの一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0019】
図1は、本実施形態のターボチャージャS1の概略構成を示す断面図である。
本実施形態のターボチャージャS1は、自動車に搭載されるものであり、自動車のエンジンから排気される排気ガスに含まれるエネルギを回転動力として回収し、当該回転動力を用いてエンジンに供給する空気を圧縮するものである。
そして、本実施形態のターボチャージャS1は、図1に示すように、タービン1と、ノズル機構2と、コンプレッサ3と、軸部4とを備えている。
【0020】
タービン1は、排気ガスに含まれるエネルギを回転動力として回収するものであり、タービンハウジング1a(インペラハウジング)と、タービンインペラ1b(インペラ)とを備えている。
【0021】
タービンハウジング1aは、タービン1の外形を形作る中空部材であり、内部にスクロール流路1a1と、インペラ収容空間1a2と、接続流路1a3とが設けられている。
スクロール流路1a1は、エンジンから排気された排気ガスをターボチャージャS1の内部に取り込むための流路であり、タービンインペラ1bの回転軸を中心として当該タービンインペラ1bを囲んで設けられている。
インペラ収容空間1a2は、タービンインペラ1bを収容する領域であり、タービンインペラ1bの回転軸方向から見てタービンハウジング1aの中央部に設けられている。なお、図1に示すように、タービンハウジング1aには排気ガスを排出するための排気口1a4が設けられており、インペラ収容空間1a2は、当該排気口1a4と接続されている。
接続流路1a3は、スクロール流路1a1とインペラ収容空間1a2との間に設けられた流路である。なお、接続流路1a3は、図1に示すように、タービンハウジング1aの内壁面と、ノズル機構2が備える後述するノズルプレート2aとの間に設けられており、ノズルプレート2aに固定されたノズル翼2b(固定翼)が配置される流路である。
【0022】
タービンインペラ1bは、上述のようにインペラ収容空間1a2内に収容され、スクロール流路1a1から接続流路1a3を通過して供給される排気ガスによって回転駆動されるラジアルインペラである。
【0023】
ノズル機構2は、スクロール流路1a1からタービンインペラ1bに供給される排気ガスを接続流路1a3にて整流するものであり、ノズルプレート2aと、複数のノズル翼2bとを備えている。
【0024】
ノズルプレート2aは、ノズル翼2bを設置するための円板形状のプレートであり、中央部にタービンインペラ1bを挿通可能なように開口が設けられている。
また、ノズルプレート2aは、タービンインペラ1bの回転軸方向から見て、タービンインペラ1bよりも大径に設定されており、タービンインペラ1bから食み出した領域にノズル翼2bが設けられている。
なお、本実施形態のターボチャージャS1においてノズルプレート2aは、タービンインペラ1bと、軸部4の後述する軸部ハウジング4aとの間に介挿されており、タービン1から軸部4への熱の伝達を抑制するための遮熱板としても機能する。
【0025】
ノズル翼2bは、タービンインペラ1bに対して供給される排気ガスを接続流路1a3において整流するものであり、タービンインペラ1bの回転軸方向から見て、当該回転軸を中心として等間隔かつ環状に複数配列されている。
なお、ノズル翼2bは、隣り合うノズル翼2b同士の間に隙間流路(ノズル)を形成する。そして、排気ガスは、当該隙間流路を通過することによって整流される。
【0026】
また、本実施形態のターボチャージャS1においては、ノズルプレート2aをタービンハウジング1a側に押圧して付勢する皿バネ5を備えている。
この皿バネ5は、ノズルプレート2aと軸部ハウジング4aとの間に介挿されており、ノズルプレート2aをタービンハウジング1a側に付勢することによってノズル翼2bをタービンハウジング1aの内壁に押し付け、これによってノズル翼2bとタービンハウジング1aとの間における隙間を小さくするものである。
【0027】
コンプレッサ3は、タービン1によって得られた回転動力を用いてエンジンに供給される空気を圧縮するものであり、コンプレッサハウジング3aと、コンプレッサインペラ3bとを備えている。
【0028】
コンプレッサハウジング3aは、コンプレッサ3の外形を形作る中空部材であり、内部にスクロール流路3a1と、インペラ収容空間3a2と、接続流路3a3とが設けられている。
スクロール流路3a1は、コンプレッサインペラ3bによって圧縮された空気をエンジンに案内するための流路であり、コンプレッサインペラ3bの回転軸を中心として当該コンプレッサインペラ3bを囲んで設けられている。
インペラ収容空間3a2は、コンプレッサインペラ3bを収容する領域であり、コンプレッサインペラ3bの回転軸方向から見てコンプレッサハウジング3aの中央部に設けられている。なお、図1に示すように、コンプレッサハウジング3aには空気を取り込むための吸入口3a4が設けられており、インペラ収容空間3a2は、当該吸入口3a4と接続されている。
接続流路3a3は、スクロール流路3a1とインペラ収容空間3a2との間に設けられた流路である。
【0029】
コンプレッサインペラ3bは、上述のようにインペラ収容空間3a2内に収容され、タービンインペラ1bから軸部4を介して伝達される回転動力によって回転駆動されるラジアルインペラである。
そして、コンプレッサインペラ3bは、吸入口3a4から取り込んだ空気を圧縮し、接続流路3a3を介してスクロール流路3a1に送り込む。
【0030】
軸部4は、タービン1で回収された回転動力をコンプレッサ3に伝達するものであり、タービン1とコンプレッサ3との間に配置されている。
そして、軸部4は、図1に示すように、軸部ハウジング4aと、シャフト4bとを備えている。
【0031】
軸部ハウジング4aは、軸部4の外形を形作る中空部材であり、内部にシャフト4bを収容するシャフト収容空間4a1を有している。
この軸部ハウジング4aは、タービンハウジング1aとコンプレッサハウジング3aとの間に配置されており、これらのタービンハウジング1aとコンプレッサハウジング3aとに固定されている。
なお、軸部ハウジング4aの内部には、シャフト4bの潤滑及び冷却を行う潤滑油の流路が形成されており、軸部ハウジング4aは、当該潤滑油の供給及び回収装置(不図示)と接続されている。
【0032】
シャフト4bは、軸部ハウジング4aのシャフト収容空間4a1内に収容されており、不図示の軸受によって軸支されている。
このシャフト4bは、一端がタービンインペラ1bに対して軸方向から接続され、他端がコンプレッサインペラ3bと接続されている。そして、シャフト4bは、タービンインペラ1bの回転に伴って回転し、同時にコンプレッサインペラ3bを回転させる。
また、シャフト4bと軸部ハウジング4aとの間には、図1に示すように、ブローバイガスを低減するためのシールリング4cが設置されている。
【0033】
なお、本実施形態においては、タービンハウジング1aとコンプレッサハウジング3aと軸部ハウジング4aとによって本発明のハウジングが構成されている。
【0034】
そして、本実施形態のターボチャージャS1においては、ノズルプレート2aとタービンハウジング1aとの間及びノズルプレート2aと軸部ハウジング4aとの間に隙間が設けられている。
このため、このようなターボチャージャS1では、ノズルプレート2aがタービンインペラ1bの回転軸方向に僅かに移動可能とされている。
【0035】
このように、ノズルプレート2aがタービンインペラ1bの回転軸方向に移動可能とされていると、可動時の高温環境によって各部材が熱膨張によって変形した場合であっても、皿バネ5の付勢力によってノズルプレート2aを常にタービンハウジング1aの内壁面に向けて付勢することができる。よって、ノズル翼2bとタービンハウジング1aとの間の隙間(ノズルサイドクリアランス)を常に最小限に抑えることができる。
【0036】
ただし、上述のようにノズルプレート2aをタービンインペラ1bの回転軸方向に僅かに移動可能とするためには、ノズルプレート2aとタービンハウジング1aとの間及びノズルプレート2aと軸部ハウジング4aとの間に隙間が設けられることとなる。このため、図2の拡大図に示すように、ノズルプレート2aのノズル翼2bが設置される側を表面(タービンインペラ1bの軸方向を向く表面)とすれば、ノズルプレート2aの裏面側にスクロール流路1a1とインペラ収容空間1a2とを接続する漏れ流路Rが形成されてしまう。
このような漏れ流路Rが形成されると、排気ガスの一部がノズル翼2bを介することなくタービンインペラ1bに供給されてしまうため、ノズル翼2bとタービンハウジング1aとの間の隙間を最小限とした場合の効果が最大限に得られなくなってしまう。
【0037】
これに対して、本実施形態のターボチャージャS1は、ノズルプレート2aとタービンハウジング1aとをタービンインペラ1aの径方向において位置決めするインロー部(以下、第2インロー部10と称する)を漏れ流路R内部に有している。
第2インロー部10は、ノズルプレート2aの側壁面11と、当該側壁面11に対向するタービンハウジング1aの内壁面12とによって構成されている。側壁面11及び内壁面12は、タービンインペラ1bの回転軸方向から見て、当該回転軸を中心としてノズルプレート2a及びタービンハウジング1aの全周に亘って設けられている。そして、側壁面11と内壁面12とが全周に亘って対向配置されることによって、ノズルプレート2aとタービンハウジング1aとが正確に位置決めされる。なお、ノズルプレート2aとタービンハウジング1aとが位置決めされた際に、側壁面11と内壁面12とは圧接されておらず、軽く接触あるいは極めて近接して配置される。
【0038】
また、本実施形態のターボチャージャS1は、軸部ハウジング4aとノズルプレート2aとをタービンインペラ1aの径方向において位置決めするインロー部(以下、第1インロー部20と称する)を漏れ流路R内部に有している。
第1インロー部20は、ノズルプレート2aのコンプレッサ3側に突出された突出部2a1の内側を向く側壁面21と、当該側壁面21に対向する軸部ハウジング4aの内壁面22とによって構成されている。側壁面21及び内壁面22は、タービンインペラ1bの回転軸方向から見て、当該回転軸を中心としてノズルプレート2aと軸部ハウジング4aの全周に亘って設けられている。そして、側壁面21と内壁面22とが全周に亘って対向配置されることによって、ノズルプレート2aと軸部ハウジング4aとが正確に位置決めされる。なお、ノズルプレート2aと軸部ハウジング4aとが位置決めされた際に、側壁面21と内壁面22とは圧接されておらず、軽く接触あるいは極めて近接して配置される。
【0039】
このような構成を有する本実施形態のターボチャージャS1においては、エンジンより排気ガスがタービン1に供給されると、排気ガスは、スクロール流路1a1、接続流路1a3を介してタービンインペラ1bに供給される。
タービンインペラ1bに排気ガスが供給されると、排気ガスの流れによってタービンインペラ1bが回転駆動され、これによって排気ガスに含まれるエネルギが回転動力として回収される。
なお、エネルギが回収された排気ガスは、排気口1a4を介してターボチャージャS1の外部に排出される。
【0040】
タービンインペラ1bが回転駆動されると、シャフト4bを介してコンプレッサインペラ3bに回転動力が伝達され、これによってコンプレッサインペラ3bが回転駆動される。
この結果、吸入口3a4から取り込まれた空気がコンプレッサインペラ3bによって圧縮され、圧縮空気が接続流路3a3及びスクロール流路3a1を介してエンジンに供給される。
【0041】
このような本実施形態のターボチャージャS1においては、ノズルプレート2aの裏面側に漏れ流路Rを有するものの、当該漏れ流路R内部にノズルプレート2aと軸部ハウジング4aとを位置決めする第1インロー部20を有している。
ここで、当該第1インロー部20は、ノズルプレート2aと軸部ハウジング4aとを嵌め合わせて位置決めするためのものであり、ノズルプレート2aと軸部ハウジング4aとの相対的な移動を規制して位置決めする。そして、このような第1インロー部20においては、ノズルプレート2aと軸部ハウジング4aとは圧接されてないものの、軽く接触あるいは極めて近接して配置されることとなる。
このため、本実施形態のターボチャージャS1のように、漏れ流路Rの内部に第1インロー部20が配置されると、漏れ流路Rを通過する排気ガスは、第1インロー部20を通過しなければならないこととなる。つまり、本実施形態のターボチャージャS1によれば、漏れ流路Rの圧力損失が増大し、排気ガスが漏れ流路Rを通過し難くなる。
したがって、本実施形態のターボチャージャS1によれば、タービンインペラ1b周りにノズル翼2bが配列されたターボチャージャにおいて、ノズル翼2bを通過することなく上流側から下流側にバイパスする排気ガスを減少することが可能となる。
【0042】
また、本実施形態のターボチャージャS1は、ノズル翼2bをノズルプレート2aに固定し、ノズルプレート2aをノズル翼2b側(タービンインペラ1aの軸方向)に移動可能とし、さらにノズルプレート2aを皿バネ5で押圧することによって、稼働中においてもノズル翼2bと流路壁との間に隙間ができることを抑制可能な固定翼式ターボチャージャとなっている。
しかしながら、このような本実施形態のターボチャージャS1は、ノズルプレート2aを移動可能とするために、ノズルプレート2aの周囲には隙間を設ける必要があり、この分漏れ流路Rが大きくなる。
これに対して、本実施形態のターボチャージャS1は、上述のように第1インロー部20によって、漏れ流路Rにおける排気ガスの漏れ量を低減することができるため、ノズル翼2bとタービンハウジング1aとの間の隙間を最小限とすることによって得られる効果を最大限に発揮することができる。
【0043】
また、本実施形態のターボチャージャS1においては、漏れ流路R内部にタービンハウジング1aとノズルプレート2aとを位置決めする第2インロー部10をさらに有している。
このため、漏れ流路Rを通過する排気ガスは、第2インロー部10を通過しなければならないこととなる。したがって、漏れ流路Rの圧力損失がより増大し、排気ガスが漏れ流路Rをより通過し難くなる。
したがって、本実施形態のターボチャージャS1によれば、ノズル翼2bを通過することなく上流側から下流側にバイパスする排気ガスをより減少することが可能となる。
【0044】
なお、第2インロー部10は、必ずしも設置する必要はなく、第1インロー部20のみで十分に排気ガスの漏れ量を減少できる場合には、省略することもできる。
【0045】
なお、ノズルプレート2aとタービンハウジング1aとが排気ガスによって温められると、一般的に冷却される軸部ハウジング4aからの距離の違い等により、ノズルプレート2aとタービンハウジング1aと軸部ハウジング4aとの間に熱膨張差が生じる。
このため、ノズルプレート2aとタービンハウジング1aと軸部ハウジング4aとの材質は、上記熱膨張差によって第2インロー部10と第1インロー部20におけるクリアランスを確保可能となるように選定する必要がある。
一方、第2インロー部10と第1インロー部20との材質を選定できない場合には、加熱時に第2インロー部10と第1インロー部20におけるクリアランスを確保可能に、加熱前における当該クリアランスを設定する必要がある。
【0046】
また、本実施形態においては、インロー部が皿バネ5よりも漏れ流路Rにおける流れの上流側に配置されている構成について説明した。
これによって、皿バネ5への排気ガスの供給量が減少し、皿バネ5が熱変形することを防止することができる。
【0047】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態においては、タービン1の接続流路1a3にノズルプレートに設けられる固定翼を配置する構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、コンプレッサ3の接続流路3a3にノズルプレートに設けられた固定翼を配置する構成を採用することもできる。
この際、ノズルプレートの裏面側に漏れ流路が生じる場合には、ノズルプレートと軸部ハウジング(インペラハウジング)との位置合わせを行うインロー部、さらにはノズルプレートとコンプレッサハウジングとの位置合わせを行うインロー部を当該漏れ流路に設置しても良い。
これによって、ノズルプレートの裏面側の漏れ流路を通過して漏れる空気の漏れ量を低減させることができる。
【符号の説明】
【0049】
S1……ターボチャージャ、1……タービン、1a……タービンハウジング(インペラハウジング)、1b……タービンインペラ(インペラ)、2……ノズル機構、2a……ノズルプレート、2b……ノズル翼(翼体)、3……コンプレッサ、3a……コンプレッサハウジング、4……軸部、4a……軸部ハウジング、5……皿バネ(押圧手段)、10……第2インロー部(インロー部)、20……第1インロー部(インロー部)
図1
図2