(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
弾性体からなる管状部材(チューブ)の断面形状を変形させてその管状部材内の流体を吐出するポンプ装置は、チューブポンプとして知られている。チューブポンプは、弾力性を有するチューブをその長手方向に垂直な面内において変形させる変形機構と、そのチューブを閉塞および解放する入力弁および出力弁とを有する。入力弁によりチューブの一方を閉塞し、出力弁により他方を解放し、かつ変形機構により当該チューブを絞り当該チューブの断面形状を変形させてチューブの断面空間を収縮させることにより、チューブ内の流体を出力弁側の長手方向に移動させることができる。また、絞り終わった後は、入力弁によりチューブの一方を解放し、出力弁によりチューブの他方を閉塞し、かつ変形機構が絞り動作の開始前の状態に復帰することにより、チューブの形状がその弾性により復元して、入力弁側の長手方向から流体がチューブ内に満たされる。このように、変形機構の絞り動作と、それに同期した入力弁と出力弁により、チューブ内の液体を推進移動させることができる。このような動作によりポンプ装置はチューブ内の流体を吐出する。
【0003】
チューブポンプは、液体や気体の輸送に広く使われている。特に、流体物が汚染を嫌う場合に、その流体をその内部を流れるチューブを介して他の容器に移動させる用途には有効である。その流体の流路であるチューブ内部空間を外部から収縮させてチューブ内の流体を移動させるため、流体が推進装置とは直接触れることがないからである。そのため、チューブポンプは、医療用のバッグに封入された輸液や薬液を投薬チューブを介して人体に注入する輸液ポンプ、さらにバイオ実験用ポンプ等、カラーインク等の調色用ポンプに用いられている。
【0004】
チューブポンプは、チューブロータリポンプと蠕動ポンプ(Peristaltic Pump)ポンプに大別できる。前者は変形機構として更に入力弁及び出力弁としてローラを用いるもので、機構が簡単で古くからあり、小型から大型までの各種の容量のポンプがある(特許文献1、2参照)。後者は、変形機構として蠕動運動を行う機構を用いるもので、構造が複雑であるが、チューブの機械的疲労が少なく、特に小型のチューブポンプとして利用されている。蠕動ポンプのうち、チューブを変形させる変形機能として往復運動する部材(シャトル部材)を用いるシャトルポンプ(Shuttle Pump)も知られている(特許文献3〜9参照)。
【0005】
図38の(A),(B),(C)は、シャトルポンプの動作原理を説明する図である。この図は、基本的に、特許文献4に示された図の符号を変えて示すものである。
【0006】
シャトルポンプ1000は、基本的に、チューブ1001と、変形機構としてのシャトル機構1002と、入力弁としての入力バルブ機構1003と、出力弁としての出力バルブ機構1004とを備える。シャトル機構1002と入力バルブ機構1003および出力バルブ機構1004とは同期して働き、チューブ1001を時間的に変形および復元を繰り返して、チューブ1001に充填された液体をチューブ1001の上流から下流に移動させる。チューブ1001のうち、入力バルブ機構1003と出力バルブ機構1004との間の領域が、流体の充填および吐出を行うポンプ動作を行う。この領域を、以下、「ポンプ領域」という。
【0007】
チューブ1001のポンプ領域へ流体を充填させるには、
図38の(A)に示すように、入力バルブ機構1003よりチューブ1001の入力側を開放し、出力バルブ機構1004によりチューブ1001の出口側を閉塞し、シャトル機構1002がチューブ1001を開放する。これにより、チューブ1001のポンプ領域内に、流体が充填される。
【0008】
続いて、チューブ1001のポンプ領域内に流体が充填された状態で、
図38の(B)に示すように、出力バルブ機構1004によりチューブ1001の出口側を開放し、入力バルブ機構1003によりチューブ1001の入口側を閉塞する。そして、
図38の(C)に示すように、シャトル機構1002によりチューブ1001を変形させることで、チューブ1001の内部空間を小さくする。これにより、チューブ1001のポンプ領域内に充填されていた流体が、出力バルブ機構1004により開放されている出口側から、下流側に移動する。
【0009】
この後、再び、
図38の(A)に示すように、入力バルブ機構1003よりチューブ1001の入力側を開放し、出力バルブ機構1004によりチューブ1001の出口側を閉塞し、シャトル機構1002がチューブ1001の変形を開放する。これにより、チューブ1001の形状が元の形状に復元し、チューブ1001のポンプ領域における内部空間の体積が、変形収縮した時の体積から、元のチューブ1001の固有の体積へと増大することとなる。その大きくなった体積は、上流より供給される流体により満たされる。
【0010】
このように、入力バルブ機構1003および出力バルブ機構1004の動作をシャトル機構1002の動作に同期させて、シャトル機構1002の動作に同期して交互に閉塞と開放を繰り返すことで、チューブ1001に充填された液体をチューブ1001の上流から下流に移動させることができる。
【0011】
図39は、シャトル機構の公知例を示す断面図である。このシャトル機構は、特許文献4に示されたものである。
【0012】
この公知例のシャトル機構は、特殊形状をしたチューブ1011を用い、このチューブ1011の両側(図の左右方向)に設けられた顎部材1012,1013を備える。顎部材1012,1013はそれぞれ2つの部分からなり、チューブ1011のそれぞれ半分の領域を挟み込むことができる。この挟み込みの方向(図の上下の向きの方向)をY方向とする。
【0013】
顎部材1012,1013は、互いに同期して、同じ方向に動作する。上部の顎部材1012,1013と下部の顎部材1012、1013がY方向に相互に逆の向きに動作することによりチューブ1011を挟んで押すこととなり、チューブ1011が変形し、流体が充填されたチューブ1011の内部空間の体積が小さくなる。このシャトル機構の上流と下流とにはバルブ機構が設けられ、チューブ1011の内部空間に充填された流体は、上流側のバルブ機構の介入を受け、逆流することはない。逆に、チューブ1011の内部空間に充填された流体は、下流側のバルブ機構の介入を受けることなくチューブ1011の下流部分に押し出される。この押し出す作用により、チューブ1011の内部空間に充填された流体が移動する。上部および下部の顎部材1012,1013がY方向に開放されると、チューブ1011は、弾性復元力により元の形状に戻り、その内部空間の体積は元に戻ろうとする。この動作に同期して、その上流側のバルブ機構が解放され、下流側のバルブ機構が閉塞される。これにより、チューブ1011が弾性復元力する際には、流体がチューブ1011の内部空間に充填されることとなる。以上の動作が繰り返されることにより、流体が下流方向のみに押し出されて、全体としてポンプ動作が行われる。
【0014】
図40は、シャトル機構の別の公知例を示す断面図である。このシャトル機構は、特許文献3に示されたものである。
【0015】
この公知例のシャトル機構は、チューブ1020に対する変形機能を発揮する部材1021,1022を備える。部材1021,1022は、互いに平行に移動する。この平行移動において、部材1021,1022は、移動動作の一端ではチューブ1020の断面形状を変形させることなくそのままの断面を保ち、移動動作の他端では、図示のように、チューブ1020を押すことでチューブ1020の断面形状を変形させる。この変形により、流体が充填されたチューブ1020の内部空間の体積が小さくなり、内部空間に充填された流体をチューブ1020の下流部分に押し出すことができる。
【0016】
しかし、
図39に示すシャトル機構は、チューブ1011として特殊な形状、すなわち両側から顎部材1012,1013で操作するための陵部1014を必要とする。このため、通常の中空円筒状のチューブを使用することはできない。一方、
図40に示すシャトル機構は、チューブ1020を部材1021,1022の間に脱着するためには、部材1021,1022の一方を部材の端部を中心に回転させ、横方向部分においてその一方の部材を開口スライドさせる必要がある。このような動作を実現するには複雑な付随的な機構をシャトル機構に組み込まなければならず、シャトルポンプの機構が複雑になる。
【0017】
図41は、シャトル機構のさらに別の公知例を示す図である。この公知例は、特殊な形状のチューブを使用する必要がなく、また、チューブの着脱も容易であって、実用的な構造を有している。
【0018】
図41の(A)と(B)に示す公知の従来例のシャトル機構は、チューブ1030を挟む2つのシャトルメンバ1031,1032を備える。これらのシャトルメンバ1031,1032は、チューブ1030の長手方向(紙面の奥行き方向)に平板的に広がった形状をしており、チューブ1030を鋏む面の反対側の面から見た形状から「シャトルメンバ」に代えて「シャトルプレート」とも呼ばれる。シャトルメンバ1031,1032にはそれぞれ、溝1033,1034が設けられる。これらの溝1033,1034は、
図41の(A)に示すように、互いに対向した状態のとき、チューブ1030をその断面形状を実質的に変形させることなく収容することができる。
【0019】
シャトルメンバ1031,1032は、スライド方向とは直角の方向において互いに所定の間隔を維持して、
図41の(A)に描かれた両方向矢印に示す方向に沿って相対的にスライド移動させることができる。シャトルメンバ1032をシャトルメメンバ1031に対してスライドさせると、
図41の(B)に示すように、溝1033,1034の相対位置がスライドし、チューブ1030がシャトルメンバ1031と1032により押し潰される。このとき、チューブ1030の断面形状が変形して内部空間の体積が小さくなり、内部空間に充填されていた流体がバルブ機構との同期動作によって、チューブ1030の下流側に押し出される。
【0020】
図41の(A)と(B)に示すシャトル機構では、チューブ1030が、シャトルメンバ1031,1032の溝1033,1034に挟まれるように装着される。その装着動作として、溝1033,1034は単純な形状をしているため、シャトルメンバ1031,1032の対向する間隔を広げてチューブ1030を溝1033または1034の位置に配置し、シャトルメンバ1031,1032の対向する間隔を元に戻すことにより、容易にチューブ1030をシャトル機構に装着することができる。また、そのようなチューブ1030のシャトル機構への着脱機構も簡単に実現できる。この特徴のために、本シャトル機構が、実際の大容量輸液ポンプ(Volumetric Infusion Pump)のポンプ機構に用いられている。
【0021】
いずれのシャトルポンプであってもその特徴は、流体の輸送による流体速度のバラつきが少ないことである。たとえば
図41の(A)と(B)に示すシャトル機構を用いる場合、シャトルメンバ1032をシャトルメンバ1031に対してスライド間隙を維持しつつ相対的に水平方向に動かし、チューブ1030をシャトルメンバ1031,1032により押し潰すことで、チューブ1030を
図41の(B)のように変形させている。この変形は、溝1033,1034の物理形状と、そのスライド量とに依存し、チューブ1030の材質には原理的は依存しない。
【0022】
これに対して他の蠕動ポンプでは、チューブを押す機構要素が複数設けられ、複数点において蠕動機構によりチューブを押している。このため、チューブの内部空間の体積が、その押す力とチューブの復元力とのバランスで決まる。すなわち、チューブの長手方向に対して、チューブを押す機構要素により、押し込み変形を受けたチューブ領域と、そのような変形を受けずチューブの弾性により形状が復元したチューブ領域とが交互に現れる。このとき、チューブの弾性のバラつきまたは変動により、その該形状が復元したチューブ領域におけるチューブの内部空間の体積がバラつき、または変動することとなる。そのため、チューブの材質のバラつき、あるいは温度による弾性の変動によって、チューブから押し出される流体の量も同様にバラつき、または変動を受ける。このため蠕動ポンプは、そのポンプ動作による流体の流速の精度および安定性が悪い。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
[第1の実施の形態]
【0042】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るポンプ装置を説明する図である。ここでは、本発明の主要な特徴を説明するため、ポンプ装置におけるシャトル機構(チューブの変形機構)とその動作のみを示す。
【0043】
このポンプ装置はシャトルポンプであり、弾性体からなる管状部材としてチューブ10が用いられ、このチューブ10の長手方向に沿って対向して配置される2つの対向部材として、シャトルメンバ11,12を備える。シャトルメンバ11,12にはそれぞれ、互いに対向する面に、互いに対向することでチューブ10が断面内に収容される空間を形成する溝13,14が設けられる。チューブ10は、シャトルメンバ11に形成された溝13と、シャトルメンバ12に形成された溝14とに挟まれて配置される。
【0044】
この実施の形態では、溝13,14は、シャトルメンバ11,12でそれぞれ実質的に同一形状の三角形溝であり、互いに対向することで、チューブ10の長手方向における断面形状が実質的に正方形の溝空間を形成する。
【0045】
シャトルメンバ11,12は、互いに対向する面に沿って少なくとも一方が他方に対して相対的にスライド動作をする。ここで、スライド動作におけるシャトルメンバ11,12の相対的な特定位置として、流体保持位置と流体排出位置の2つの特定位置を定義する。流体保持位置は、シャトルメンバ11,12の溝13,14が互いに対向することにより、チューブ10が断面内に収容される空間を形成させて、チューブ10の内部に流体が導入された状態を保持する位置である。以下の説明では、特に、溝13,14により形成される空間の断面積が最大となる位置(
図1の(A)に示す位置)を、流体保持位置という。流体排出位置は、溝13,14の位置が互いにずれることによりチューブ10の断面形状を変化させて、チューブ10の内部に導入された流体をチューブ10から排出させる位置である。以下の説明では、特に、溝13,14に挿入されているチューブ10の内部に導入された流体をチューブ10から排出させる動作が終了する位置(
図1の(B)および(C)にそれぞれ示す位置)を、流体排出位置という。
【0046】
シャトルメンバ11,12は、スライド動作をして、
図1の(A)に示す流体保持位置と、
図1の(B)および(C)にそれぞれ示す流体排出位置との間で往復動作をする。流体排出位置は、
図1の(B)および(C)に示すように、流体保持位置の両側にある。シャトルメンバ11,12は、流体保持位置を中心に、2つの流体排出位置の間で往復動作を行う。すなわち、シャトルメンバ11,12の特定位置は、流体保持位置から一方の流体排出位置、一方の流体排出位置から流体保持位置、流体保持位置から他方の流体排出位置、他方の流体排出位置から流体保持位置へと変化する。
【0047】
シャトルメンバ11,12はまた、上述のスライド動作において互いに対向する面と直交する方向への相対的な移動が可能であり、溝13,14の位置が互いにずれるとき、すなわち流体保持位置から流体排出位置に向かうときには、溝13,14のうちの一方の溝の周辺部が他方の溝の内部に進入する進入動作をする。そして、
図1の(B)および(C)にそれぞれ示す流体排出位置で進入動作が終了し、チューブ10を最大限に圧縮変形させる。以下では、チューブ10を圧縮変形させることを、「絞る」という。また、チューブ10を絞る動作を、「チューブ絞り動作」あるいは単に「絞り動作」という。絞り動作によるチューブ10の変形を「絞り変形」という。
【0048】
シャトルメンバ11,12のスライド動作は、シャトルメンバ11,12の内の少なくとも一方、たとえばシャトルメンバ12をシャトルメンバ11,12の互いに対向する面に沿って往復させる往復駆動機構により実現される。そして、進入動作は、往復駆動機構により、スライド動作と同期して実現される。往復駆動機構の詳細については後述する。
【0049】
背景技術におけるシャトルポンプでは、対面するシャトルプレートが、平行してスライドする動作を行っている。この動作およびその動作のための機構が、ホンプの吐出量の精度の低下と経時変化を生じている原因である。一方、本実施の形態では、背景技術におけるシャトルプレートに対応するシャトルメンバ11,12に、進入動作をさせている。
【0050】
シャトルメンバ11,12によるポンプ動作について説明する。以下の説明では、シャトルメンバ11が固定され、シャトルメンバ12が、シャトルメンバ11に対して上下に往復動作することによるスライド動作と進入動作をするものとして説明する。
【0051】
図1の(A)に示すチューブ10は、シャトルメンバ11に形成された溝13と、シャトルメンバ12に形成された溝14との間に挟まれている。シャトルメンバ12がシャトルメンバ11の中点、すなわち流体保持位置にある場合、チューブ10は、溝13と溝14との中に納まり、変形を受けない。一方、シャトルメンバ12がシャトルメンバ11に対して上方向の流体排出位置にスライドし、シャトルメンバ12の溝14の下側の周辺部がシャトルメンバ11の溝13に進入して上止点に達すると、シャトルメンバ11,12の相対的な位置関係が、
図1の(B)に示すようになる。このとき、チューブ10は、シャトルメンバ11とシャトルメンバ12とにより圧縮変形を受けることになる。この変形により、チューブ10の内部に充填された流体が下流に移動させられる。
【0052】
シャトルメンバ12がシャトルメンバ11の中点、すなわち
図1の(A)に示す流体保持位置に戻ると、チューブ10の形状が復元し、チューブ10に流体が上流から充填される。シャトルメンバ12がさらに下方向に移動し、シャトルメンバ12の溝14の上側の周辺部がシャトメンバ11の溝13に進入動作して下止点に移動すると、シャトルメンバ11,12の相対的な位置関係が、
図1の(C)に示すようになる。このとき、チューブ10の内部に充填された流体が、さらに下流に移動させられることになる。
【0053】
[進入動作がない場合の動作]
図1に示す実施の形態におけるシャトル機構は、シャトルメンバ11,12が、対面するシャトルメンバ12,11に形成された溝14,13に相対的に進入動作することを最も主要な特徴としている。この進入動作の効果を説明するための比較説明として、
図2から
図5を参照して、進入動作がない場合の動作の問題について説明する。
【0054】
シャトルメンバ11,12の進入動作がない構成は、
図41に示す公知の従来のシャトル機構に相当する。この場合、流体の流速の精度は、上述したように、シャトル機構の物理形状で決まる。しかし、シャトル機構の物理形状で流体の流速の精度が決まることは、逆に、その精度がシャトル機構の組み立て精度や経時変化に依存することを意味する。これについて生じる問題を、以下に定量的に説明する。
【0055】
図2は、進入動作のないシャトルメンバ11,12の動作例を説明する図である。ここでは、シャトルメンバ11,12の間のスライド間隔が標準的な値dの場合の例を示す。ここで、スライド間隔が標準的とは、シャトルメンバ11,12が機械的に接触しない間隙であることをいう。シャトルメンバ11,12の相対的な移動は、チューブ10が変形縮小したときに、チューブ10の内壁どうしが接するまで行われるものとする。
図2の(A)は、シャトルメンバ11,12が流体保持位置にあり、チューブ10が変形より元の形状に復元している状態を示す。
図2の(B)および(C)は、チューブ10が変形縮小した2つの場合を示す。
【0056】
ここで、チューブ10の具体的な物理形状が、典型的な例として、外形3.6mm、内径2.6mmである場合を採用して議論する。この場合、流体が充填されている内部の断面積は、5.31mm
2である。一方、変形縮小した場合の断面は、
図2の(C)に示すように近似的には三角形A〜Dに分解される。三角形A、Dは、扁平に変形縮小したチューブ10の湾曲した選択部を近似する三角形であり、チューブ10の膨らんだ部分を辺aとし、チューブ10の湾曲した部分を頂点とする三角形である。三角形B,Cは、扁平に変形縮小した部分を近似する三角形であり、辺aと辺bからなる直角三角形である。
【0057】
辺aの長さは、チューブ10の肉厚0.5mm(=(外形−内径)/2)に、チューブ10の変形時のチューブ10の弾性で決まる定数k1を乗じた値となる。また、三角形A、Dのそれぞれの高さは、チューブ10の肉厚0.5mmに、チューブ10の変形時のチューブ10の弾性で決まる定数k2を乗じた値となる。辺bの値は、チューブ10の半径1.8mmに、円周率と、チューブ10の変形で決まる偏平長k3とを乗じた値となる。したがって、このとき、三角形A〜Dの面積(それぞれをA,B,C,Dとする)はそれぞれ、
A=D=(k1×0.5mm)×(k2×0.5mm)×1/2
B=C=(k3×3.14×1.8mm)×(k1×0.5mm)×1/2
となる。ここでは、チューブ10の硬さやその肉厚で決まる定数値は代表的には、例えばk1=1.5,k2=1.0,k3=0.3であり、この場合、
A+B+C+D=1.65mm
2
となる。これは、変形を受けない正常な内部断面積の31%である。言いかえると、流体の移動量(ポンプ吐出量)は、5.31mm
2−1.65mm
2=3.66mm
2に、単位時間当たりのチューブ10に沿った流体の移動距離を乗じた量となる。
【0058】
図3は、進入動作のない従来例におけるシャトルメンバ11,12の別の動作例を説明する図である。ここでは、組み立て制度の問題から、シャトルメンバ11,12の間のスライド間隔が標準的な値dからeだけ増えた場合を示す。
図3の(A)は、シャトルメンバ11,12が流体保持位置にあり、チューブ10が変形より復元している状態を示す。
図3の(B)および(C)は、チューブ10が変形縮小した2つの場合を示す。
【0059】
この場合、チューブ10の変形縮小した断面積は、eが小さい範囲では、原則的には上記のA、B、C、Dに加えて、
図3の(C)に示す長方形Fおよび三角形G,Hの面積が増えることとなる。長方形Fは、チューブ10の不十分な閉塞によりチューブ10の内部に生じる間隙であり、特に、「閉塞間隙」と呼ばれる。シャトルメンバ11,12の対向する平坦面に対する溝13,14の壁の角度が45度であるとすると、それぞれの面積は、
F=(e/1.41)×2b
G=H=(e/1.41)×(k2×0.5mm)×1/2
となる。定数値は代表的な値としては、k2=1.0であり、その結果、
F+G+H=2.41e+0.355e=2.77e
となる。
【0060】
ここで、e=0.1mmの場合、およびe=0.2mmの場合を考える。これらの場合、変形縮小したチューブ10内の断面積はそれぞれ、1.65mm
2+0.28mm
2、および、1.65mm
2+0.55mm
2となる。したがって、吐出量に係るチューブ10の断面積は、それぞれ、3.38mm
2、3.11mm
2となる。これらの値は、
図2に示す標準的なスライド間隔の場合に比べて、それぞれ7.6%、15%少ない。これは、シャトル機構の組み立て誤差が0.1mm生じた場合に、ポンプの吐出量が7.6%も減少することを意味する。また、このような誤差は、経時変化によっても生じる。すなわち、進入動作のないシャトルポンプでは、対面するシャトルメンバ11,12のスライド間隙の経時変化により、吐出量が大きく変動することになる。
【0061】
シャトルポンプの用途として医療用ポンプが想定される。医療用ポンプにおいては、投薬量の再現精度は、5%以下でなければならない。このため、上述のような誤差のあるシャトルポンプでは、医療用に使用するには問題がある。現実には、組み立て時に、ポンプユニット毎にシャトル機構のシャトル動作速度と吐出量の関係を求めて、投薬量とシャトル動作速度の関係を得て校正して、製品の出荷をしている。そのため、校正作業に時間がかかり、シャトルポンプの生産性が悪いという課題を生じている。
【0062】
図4は、進入動作のない従来例におけるシャトルメンバ11,12のさらに別の動作例を説明する図である。ここでは、スライド間隙の標準値dからのずれを想定して、チューブ10の直径に対して、溝13と14をあらかじめ小さなものを用いる場合の例を示す。
図4の(A)は、シャトルメンバ11,12が流体保持位置にあり、チューブ10が変形より復元している状態を示す。
図4の(B)および(C)は、シャトルメンバ11,12が流体排出位置にあって、チューブ10が変形縮小している2つの状態を示す。
【0063】
この場合、シャトルメンバ11,12からなるシャトル機構は、常時チューブ10を過剰圧縮している。このため、シャトルメンバ11とシャトルメンバ12とを相対的に往復スライド動作させるには、チューブ10を単純に変形させるに必要な力以上の大きな力が必要となり、ポンプの駆動負荷が大きなものとなる。そのため、ポンプを駆動させるモータ(図示せず)の負荷が大きく、ポンプ装置の消費電力は大きくなる。
【0064】
さらに、シャトルメンバ11,12の往復スライド動作によって折り曲げられるチューブ10の折り曲げ部15,16は、シャトルメンバ11,12がどちらにスライドした場合でも、その位置がほとんど変化しない。このため、折り曲げ部15,16は経時的に疲労しやすく、その結果、弾力が経時的に小さくなってしまう。折り曲げ部15,16の弾力が小さくなると、シャトルメンバ11,12による絞り動作の後にチューブ10が変形からの復元する復元力が弱くなり、ポンプの吐出量は経時的に減少する。さらに、長期間のポンプの駆動により、折り曲げ部15,16でチューブ10の亀裂が生じる可能性がある。そのような亀裂が生じると、外界の雑菌がチューブ10に入り、チューブ10内の流体物に汚染を生じさせる可能性がある。
【0065】
このように、チューブ10の直径に対して溝12,13を小さくすると、スライド間隙の標準値dからのずれに対する吐出量の変動を小さくすることができるが、ポンプの駆動パワーが大きくなり、また、チューブ10に亀裂が生じる可能性があるという課題がある。
【0066】
[発明の実施の形態による効果]
図1に示すポンプ装置のシャトル機構では、
図2から
図4に示す往復スライド動作に加え、シャトルメンバ11,12が、対面するシャトルメンバ12,11に形成された溝14,13に相対的に進入動作をする。この進入動作では、シャトルメンバ11,12間のスライド間隙の経時変化の問題は生じない。もはや、スライド間隙を維持しながらシャトルメンバ11,12を往復スライド動作させる従来の動作が行われないからであり、進入動作によって、チューブ10の閉塞間隙(
図3の(C)の長方形F)は生じないこととなるからである。進入動作においては、シャトルメンバ11,12が相対的に相手側に移動するため、機構として、チューブ10の閉塞間隙が生じにくいからである。すなわち、シャトルメンバ11,12の相対的な相手側への進入動作時には、チューブ10を過剰圧縮する程度に押し潰すことができ、チューブ10に閉塞間隙が原理的に生じることはない。よって、
図1に示すポンプ装置では、経時変化による吐出量の変化を、進入動作のない従来のシャトルポンプに比べて原理的になくすることができる。
【0067】
さらに、チューブ10の変形時にチューブ10の内面が接触する断面接触長fは、従来のシャトルポンプの断面接触長(たとえば
図2の(C)に示す場合では0.1〜0.2b程度)に比べて長い。したがって、シャトルメンバ11,12が流体排出位置にあるとき、すなわちチューブ10を最大限に変形させたとき、チューブ10に残っている断面積は、進入動作がない場合のチューブ10の変形時の断面積より小さくなる。このことは、進入動作により、チューブ10の絞り変形によるチューブ10からの排出量が多いことを意味する。また、逆に、チューブ10を最大限に変形させたときにチューブ10に残っている断面積が小さいので、残留容量が小さく、そのバラツキも小さい。したがって、この点からも、ポンプとしての吐出量の経時変化を小さくすることができる。
【0068】
また、本実施の形態では、チューブ10の絞り変形が、チューブ10の断面円環における互いに反対側の2箇所の折り曲げ部15,16と、そこからそれぞれ約90度ずれた位置に折り曲げ部17,18として生じる(
図1の(B)および(C)参照)。このため、チューブ10の変形はその周囲に分散され、シャトルポンプの動作においても、チューブ10の弾力性は失われ難く、また、チューブ10の機械疲労も少ない。この点からも、チューブ10の内部における流体の充填と排出移動の経時変化も小さくなり、さらに、吐出量の経時変化も小さくなる。さらに、長時間のポンプ稼働においても、チューブ10の破損事故は少なくなる。
【0069】
また、チューブ10の過剰圧縮が行われるのは、シャトルメンバ11,12が流体排出位置にあるとき、すなわちシャトルメンバ11,12が最大限にスライドした点(
図1の(B)と(C)に示す)の付近だけである。このため、ポンプの駆動パワーは、
図4に示す動作例、すなわち、チューブ10を常時過剰に圧縮する動作例に比べ、少なくて済む。
【0070】
[第2の実施の形態]
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るポンプ装置を説明する図である。ここでは、
図1と同様に、シャトル機構とその動作のみを示す。
【0071】
このポンプ装置はシャトルポンプであり、弾性体からなる管状部材としてチューブ10が用いられ、このチューブ10の長手方向に沿って対向して配置される2つの対向部材として、シャトルメンバ21,22を備える。シャトルメンバ21,22にはそれぞれ、互いに対向する面に、互いに対向することでチューブ10が断面内に収容される空間を形成する溝23,24が設けられる。
【0072】
シャトルメンバ21,22は、互いに対向する面に沿って少なくとも一方が他方に対して相対的にスライド動作をして、
図5の(A)に示す流体保持位置と
図5の(B)および(C)にそれぞれ示す流体排出位置との間で、往復動作をする。
図5の(B)および(C)に示すように、流体排出位置は流体保持位置を挟んで2つあり、シャトルメンバ21,22の往復動作は、流体保持位置を中心に2つの流体排出位置の間で行われる。シャトルメンバ21,22は、
図5の(A)に示す流体保持位置では、溝23,24が互いに対向することによりチューブ10が断面内に収容される空間を形成させて、チューブ10の内部に流体が導入された状態を保持する。シャトルメンバ21,22は、
図5の(B)および(C)にそれぞれ示す流体排出位置では、溝23,24の位置が互いにずれることによりチューブ10の断面形状を変化させて、チューブ10の内部に導入された流体をチューブ10から排出させる。シャトルメンバ21,22はまた、相対的なスライド動作において、互いに対向する面と直交する方向への相対的な移動が可能であり、溝23,24の位置が互いにずれるときには、溝23,24のうちの一方の溝の周辺部が他方の溝の内部に進入する進入動作をする。
【0073】
溝23,24は、シャトルメンバ21,22に形成されそれぞれ実質的に同一形状の三角形溝であり、互いに対向することで、チューブ10の長手方向における断面形状が実質的に正方形の溝空間を形成する。溝23,24の一方、この例ではシャトルメンバ22の溝24には、流体排出位置においてチューブ10を押し潰してその内部の断面積を小さくする突出部として、溝24の両側に、バンプ25が設けられている。
【0074】
図1を参照して説明した第1の実施の形態の構成では、チューブ10を過剰圧縮する際に、チューブ10の断面接触長fが、溝13または14の片側平面を転写しているために、長くなっている。この場合の過剰圧縮力は、断面接触長fが短い場合より大きく、その結果、ポンプの駆動パワーの低減化にも限界がある。
図5に示した第2の実施形態の構成では、溝24の端部にバンプ25を形成することにより、シャトルメンバ21,22の流体排出位置におけるチューブ10の過剰圧縮が、バンプ25によってなされる。これによって、第1の実施の形態におけるチューブ10の断面接触長fより短い断面積長gにおいて、過剰圧縮が生じる。このため、ポンプの駆動パワーを効果的に低減化させることが可能となる。また、シャトル機構の経時変化によりシャトルメンバ21,22のスライド間隔が大きくなっても、過剰圧縮を生じて断面接触長gが小さくなるだけで、シャトルメンバ21,22の流体排出位置におけるチューブ10の残留断面積に基づく残留容量の経時変化も小さい。したがって、ポンプの吐出量の経時変化についても、従来のシャトルポンプ機構のポンプだけでなく、第1の実施の形態のポンプ装置に比較して、小さくすることができる。
【0075】
[第3の実施の形態]
図6は、本発明の第3の実施の形態に係るポンプ装置を説明する図である。ここでは、
図1、
図5と同様に、シャトル機構とその動作のみを示す。
【0076】
このポンプ装置はシャトルポンプであり、弾性体からなる管状部材としてチューブ10が用いられ、このチューブ10の長手方向に沿って対向して配置される2つの対向部材として、シャトルメンバ31,32を備える。シャトルメンバ31,32にはそれぞれ、互いに対向する面に、互いに対向することでチューブ10が断面内に収容される空間を形成する溝33,34が設けられる。
【0077】
シャトルメンバ31,32は、互いに対向する面に沿って少なくとも一方が他方に対して相対的にスライド動作をして、
図6の(A)に示す流体保持位置と
図6の(B)および(C)にそれぞれ示す流体排出位置との間で、往復動作をする。
図6の(B)および(C)に示すように、流体排出位置は流体保持位置を挟んで2つあり、シャトルメンバ31,32の往復動作は、流体保持位置を中心に2つの流体排出位置の間で行われる。シャトルメンバ31,32は、
図6の(A)に示す流体保持位置では、溝33,34が互いに対向することによりチューブ10が断面内に収容される空間を形成させて、チューブ10の内部に流体が導入された状態を保持する。シャトルメンバ31,32は、
図6の(B)および(C)にそれぞれ示す流体排出位置では、溝33,34の位置が互いにずれることによりチューブ10の断面形状を変化させて、チューブ10の内部に導入された流体をチューブ10から排出させる。シャトルメンバ31,32はまた、相対的なスライド動作において、互いに対向する面と直交する方向への相対的な移動が可能であり、溝33,34の位置が互いにずれるときには、溝33,34のうちの一方の溝の周辺部が他方の溝の内部に進入する進入動作をする。
【0078】
溝33,34は、シャトルメンバ31,32に形成されそれぞれ実質的に同一形状の三角形溝であり、互いに対向することで、チューブ10の長手方向における断面形状が実質的に正方形の溝空間を形成する。溝33,34の一方、この例ではシャトルメンバ32の溝34には、流体排出位置においてチューブ10を押し潰してその内部の断面積を小さくする突出部として、溝34を形成する2つの側面のそれぞれの面のほぼ全体にわたりバンプ35が設けられている。このバンプ35は、その形状により、チューブ10の変形場所を、中心部に位置するようにしている。これにより、チューブ10の変形が均等になり、その機械疲労も少なく、ポンプの吐出量の経時変化も少なくなる。さらに、長時間のポンプ稼働においても、チューブ10の破損事故は少なくなる。
【0079】
[第4の実施の形態]
図7は、本発明の第4の実施の形態に係るポンプ装置を説明する図である。ここでは、
図1、
図5および
図6と同様に、シャトル機構とその動作のみを示す。
【0080】
このポンプ装置はシャトルポンプであり、弾性体からなる管状部材としてチューブ10が用いられ、このチューブ10の長手方向に沿って対向して配置される2つの対向部材として、シャトルメンバ41,42を備える。シャトルメンバ41,42にはそれぞれ、互いに対向する面に、互いに対向することでチューブ10が断面内に収容される空間を形成する溝43,44が設けられる。
【0081】
シャトルメンバ41,42は、互いに対向する面に沿って少なくとも一方が他方に対して相対的にスライド動作をして、
図7の(A)に示す流体保持位置と
図7の(B)および(C)にそれぞれ示す流体排出位置との間で、往復動作をする。
図7の(B)および(C)に示すように、流体排出位置は流体保持位置を挟んで2つあり、シャトルメンバ41,42の往復動作は、流体保持位置を中心に2つの流体排出位置の間で行われる。シャトルメンバ41,42は、
図7の(A)に示す流体保持位置では、溝43,44が互いに対向することによりチューブ10が断面内に収容される空間を形成させて、チューブ10の内部に流体が導入された状態を保持する。シャトルメンバ41,42は、
図7の(B)および(C)にそれぞれ示す流体排出位置では、溝43,44の位置が互いにずれることによりチューブ10の断面形状を変化させて、チューブ10の内部に導入された流体をチューブ10から排出させる。シャトルメンバ41,42はまた、相対的なスライド動作において、互いに対向する面と直交する方向への相対的な移動が可能であり、溝43,44の位置が互いにずれるときには、溝43,44のうちの一方の溝の周辺部が他方の溝の内部に進入する進入動作をする。
【0082】
溝43,44として、この実施の形態では、シャトルメンバ41,42の一方(この例ではシャトルメンバ41)には三角形溝(溝43)が設けられ、シャトルメンバ41,42の他方(この例ではシャトルメンバ42)には、流体排出位置においてチューブ10を押し潰す2つのバンプ45(突起部)とこれら2つのバンプ45を隔絶する形状の溝(溝44)が設けられている。
【0083】
この実施の形態において、シャトルメンバ42のシャトルメンバ41の溝への進入動作によるチューブ10の絞り変形は、チューブ10の断面円環において折り曲げ部46,47(
図7の(B))および折り曲げ部48,49(
図7の(C))で生じるが、バンプ45が突起形状であるため、絞り変形の曲率は大きく、チューブ10の機械疲労は少ない。その結果、長期のシャトルの動作に対して、チューブ10の破損は生じ難いものとなる。
【0084】
[シャトルメンバの往復駆動]
以上の説明においては、本発明の主要な特徴を説明するため、ポンプ装置におけるシャトル機構(チューブの変形機構)とその動作について説明した。以下では、上述したシャトル機構を動作させる構成、すなわち、シャトルメンバ11と12,21と22,31と32あるいは41と42のような2つ対向部材の内の少なくとも一方の対向部材を、互いに対向する面に沿って往復させ、2つの対向部材の相対的なスライド動作を実現すると共に、そのスライド動作と同期して、2つの対向部材の一方の対抗部材に形成した溝の周辺部が他方の対抗部材に形成した溝の内部に進入する進入動作を実現する往復駆動機構の詳細な構成について説明する。
【0085】
[往復駆動機構の第1の構成例]
図8は、往復駆動機構の第1の構成例を示す分解斜視図である。
図8には、往復駆動機構により駆動されるシャトル機構を共に示す。この構成例には、シャトル機構の2つの対向部材として、シャトルメンバ110,120が設けられている。往復駆動機構は、この2つのシャトルメンバ110,120を互いに4箇所で連結する4つのアーム130を備える。シャトルメンバ110は、シャトルベース140に、固定的に組み付けられている。シャトルメンバ120は、シャトルメンバ110に対する可動部材となっている。往復駆動機構は、さらに、可動部材であるシャトルメンバ120のシャトルメンバ110と対向する面とは逆の面に設けられた伝達ロッド123(
図11と
図12参照)を備え、シャトルメンバ110,120の往復動作の範囲に相当する開口部152(
図13参照)が設けられたガイドメンバ150を備え、モータ170により駆動される回転軸の周りに偏心したトレース溝であるカム案内溝162を有するロータリカム160を備える(
図14)。
【0086】
シャトルメンバ110は、シャトルベース140に、固定的に組み付けられる。シャトルメンバ120は、ガイドメンバ150に案内されて、図の上下方向に往復スライド動作可能である。シャトルメンバ120を駆動するため、ロータリカム160およびモータ170が用いられる。シャトルメンバ110,120により絞られるべきチューブは、シャトルメンバ110,120の互いに対抗する面に形成されたチューブ絞り溝180に挿入される。
【0087】
4つのシャトルアーム130はそれぞれ、その両端が、シャトルメンバ110,120に対して、チューブ絞り溝180に挿入されるチューブと交差する面内で双方向に回転可能に取り付けられる。これにより、4つのシャトルアーム130は、シャトルメンバ110,120を流体保持位置と流体排出位置との間で相対的に往復移動させるとともに、シャトルメンバ110,120の互いに対向する面と直交する方向への相対的な移動を生じさせる。
【0088】
この構成において、シャトルメンバ110,120の動きは、シャトルアーム130の長さにより制限され、他方に対して円弧状となる。この円弧状の動きが滑らかに行われるように、シャトルメンバ110,120のチューブ絞り溝180の周囲の形状が選択される。
【0089】
4つのシャトルアーム130は、
図8に示す例では、シャトルメンバ110,120に回転自在に取り付けられ、その取り付けは相互に平行である。そのためシャトルメンバ120はシャトルメンバ110に対して円弧状の動きをすることができる。即ち、シャトルメンバ120は、シャトルメンバ110に対して平行を保ちつつシャトルメンバ110に進入し、チューブ(図示せず)に対して絞り動作をする。すなわち、シャトルメンバ110,120の相互に対抗する面は、この絞り動作中も平行である。
【0090】
これに対して、4つのシャトルアーム130のうち、
図8における上部のものと下部のものが非平行であっても良い。この場合に、シャトルメンバ120は、シャトルメンバ110に非平行に進入し、チューブ(図示せず)に対して絞り動作をする。一方、シャトルメンバ110,120として、
図6に示すシャトルメンバ31,32や、
図7に示すシャトルメンバ41,42を用いる場合に、チューブとバンプ35または45の接触面に垂直の方向にシャトルメンバ32や42を進入動作させることができる。
【0091】
以上の説明ではシャトルアーム130の個数を4としたが、5以上であっても、同様の動作を実現することができる。
【0092】
図9は、シャトルメンバ110の詳細な構造を説明する斜視図である。シャトルメンバ110は、溝111、軸受112、軸穴113およびスクリュー穴114を有する。溝111は、チューブ絞り溝180の一部を構成する。軸受112および軸穴113は、4つのシャトルアーム130のそれぞれに対応して設けられ、シャトルアーム130が回転自由に取り付けられる。スクリュー穴114は、シャトルメンバ110をボルト(図示せず)によりシャトルベース140に固定するためのものである。
【0093】
図10は、シャトルベース140の詳細な構造を説明する斜視図である。シャトルベース140は、シャトルメンバ110を固定すると共に、ガイドメンバ150に結合されて、シャトルメンバ120をシャトルメンバ110に対向させて保持する部材である。シャトルベース140は、結合溝141およびボルト穴142,143を有する。
【0094】
結合溝141はガイドメンバ150と結合するためのものであり、ボルト穴143が、溝141を貫いて設けられている。シャトルベース140は、結合溝141によりガイドメンバ150に結合され、ボルト穴143を介するボルト締めにより、ガイドメンバ150に固定される。ボルト穴142は、シャトルメンバ110を固定するためのものである。ボルト穴142を介してシャトルベースの裏面よりボルト(図示せず)をシャトルメンバ110のスクリュー穴114にねじ込むことにより、シャトルメンバ110が、このシャトルベース140に固定される。
【0095】
図11および
図12は、シャトルメンバ120の詳細な構造を説明する斜視図である。
図11は、シャトルメンバ110側から見た図であり、
図12は、ガイドメンバ150から見た図である。シャトルメンバ120は、溝121、案内溝122、伝達ロッド123、ローラ124、軸受125および軸穴126を有する。
【0096】
溝121は、チューブ絞り溝180の一部を構成する。案内溝122は、ガイドメンバ150の案内レール151(
図13参照)に沿ってシャトルメンバ120を案内し、チューブに対して絞り動作をするために必要な、遊びの少ない上下運動を発生させる。伝達ロッド123は、先端部がガイドメンバ150の開口部152(
図13参照)を通してロータリカム160のトレース溝であるカム案内溝162(
図14参照)内に配置され、ロータリカム160の回転に伴って開口部152に沿って移動し、ロータリカム160の回転運動をシャトルメンバ120の往復運動に変換する。ローラ124は、伝達ロッド123の先端部に設けられ、ロータリカム160のカム案内溝162(
図14参照)を少ない摩擦でなぞるように動作する。ローラ124は、ボールベアリング等により構成される。軸受125および軸穴126は、シャトルメンバ110と同様に、4つのシャトルアーム130のそれぞれに対して設けられ、シャトルアーム130が回転自由に取り付けられる。シャトルメンバ110とは異なり、シャトルメンバ120には、シャトルベース140に直接固定する部分はない。
【0097】
シャトルメンバ110,120のそれぞれの軸受112,125は、シャトルアーム130の動きの回転摩擦を減らしその動作を滑らかにするためのものである。軸受112,125としては、ボールベアリングや、オイルメタル軸受などが用いられる。また、軸受112,125を用いることにより、シャトルメンバ110の溝111とシャトルメンバ120の溝121とによる絞り動作における動作の遊びを少なくして、チューブの絞り量を一定にし、ポンプの吐出量を安定化させることができる。
【0098】
図13は、ガイドメンバ150の詳細な構造を説明する斜視図である。ガイドメンバ150は、ロータリカム160の回転動作を、チューブに対する絞り動作に必要な上下運動に変換するための部材である。ガイドメンバ150は、案内レール151、開口部152、カム軸受153およびカムホール154、ベース結合部155およびボルト穴156を有する。
【0099】
案内レール151は、シャトルメンバ120の案内溝122に係合し、その動きを制限する。開口部152は、先端部がロータリカム160に設けたカム案内溝162(
図14参照)に挿入されているシャトルメンバ120の伝達ロッド123(
図12参照)の動きを上下方向のみとなるように制限する。カム軸受153には、ロータリカム160のカム軸161(
図14参照)が挿入される。カムホール154は、ロータリカム160を収容する。
【0100】
ベース結合部155およびボルト穴156は、ガイドメンバ150とシャトルベース140とを結合するためのものである。ガイドメンバ150のベース結合部155をシャトルベース140の結合溝141(
図10)に挿入し、ボルト穴156に結合用のボルト(図示せず)を通すことにより、ガイドメンバ150とシャトルベース140とが結合される。
【0101】
図14は、ロータリカム160の詳細な構造を説明する斜視図である。ロータリカム160は、カム軸161、カム案内溝162およびモータ軸穴163を有する。
【0102】
カム軸161は、ガイドメンバ150のカム軸受153(
図13参照)に挿入され、ロータリカム160は、ガイドメンバ150のカムホール154(
図13参照)に回転自在に係合される。カム案内溝162には、ガイドメンバ150の開口部152(
図13参照)を通して、シャトルメンバ120の伝達ロッド123(
図12参照)が挿入される。
【0103】
カム案内溝162は、モータ軸穴163に基づく回転中心に対して偏心して形成されている。ロータリカム160の回転に伴って、シャトルメンバ120のローラ124が、カム案内溝162に沿って動く。このとき、ローラ124が設けられているシャトルメンバ120の伝達ロッド123の動きが、ガイドメンバ150の開口部152により制限される。これにより、ロータリカム160の回転運動が、シャトルメンバ120の上下運動に変換される。この上下運動は、案内レール151と案内溝122およびシャトルアーム130により規制され、シャトルメンバ120によるチューブ絞り動作に変換される。
【0104】
図15は、ロータリカム160を回転駆動するモータ170の構成例を示す斜視図である。このモータ170は、必要な回転速度が遅いので、ギアによる減速機構をもつモータである。モータ170は、モータ本体171と、減速された回転出力を伝えるD型カット断面を有するモータ軸172とを有する。モータ軸171は、モータ本体に設けられたモータ軸受173により支持されている。
【0105】
[往復駆動機構の第2の構成例]
図16は、往復駆動機構の第2の構成例を示す分解斜視図である。
図16には、往復駆動機構により駆動されるシャトル機構を共に示す。この構成例には、シャトル機構の2つの対向部材として、シャトルメンバ210,220が設けられている。シャトルメンバ210は、取り付け部材としてのシャトルベース230に取り付けられている。シャトルメンバ220は、シャトルメンバ210に対する可動部材となっている。往復駆動機構は、シャトルメンバ210,220の一方の対抗部材(この例ではシャトルメンバ220)の他方の対抗部材(この構成例ではシャトルメンバ210)に対する動きを案内する案内部材として、ガイドメンバ240を備える。シャトルメンバ220とガイドメンバ240とには、突出部(具体的には、案内ロッド224)とその突出部を案内する案内溝(具体的には、シャトル動作案内溝247)とにより、シャトルメンバ210に対してシャトルメンバ220を流体保持位置と流体排出位置との間で相対的に往復移動させるとともに、シャトルメンバ210に対するシャトルメンバ220の互いに対向する面と直交する方向への相対的な移動を生じさせる手段として、案内ロッド224およびシャトルローラ225(
図19および
図20参照)と、シャトル動作案内溝247(
図21参照)備える。これらは、課題を解決するための手段の一つとして説明した突出部とその突出部を案内する案内溝である。往復駆動機構は、さらに、可動部材であるシャトルメンバ220のシャトルメンバ210と対向する面とは逆の面に設けられた伝達ロッド222(
図20参照)を備え、シャトルメンバ210,220の往復動作の範囲に相当する開口部242(
図21参照)が設けられたガイドメンバ240を備え、モータ170により駆動される回転軸の周りに偏心したトレース溝を有するロータリカム160を備える。
【0106】
シャトルメンバ210,220により絞られるべきチューブは、シャトルメンバ210とシャトルメンバ220の対向する面に形成されたチューブ絞り溝250に挿入される。ロータリカム160の構成は、
図14に示すものと同等である。また、モータ170の構成は、
図15に示すものと同等である。以下では、ロータリカム160の構成については
図14を参照して、モータ170の構成については
図15を参照して、それぞれ説明する。
【0107】
図16に示す構成例が
図8から
図15を参照して説明した構成例と大きく異なる点は、チューブ(図示せず)をシャトル機構に装着するについて、シャトル機構の上部より挿入できるように、シャトルメンバ210をシャトルメンバ220に対して開くことができる構造としていることである。また、これに伴い、シャトルメンバ210,220の相対的な往復スライド動作の方向およびチューブの長手方向の双方と交差する方向の相対的な移動を生じさせる手段として、シャトルアーム130とは別の手段である案内ロッド224とシャトル案内溝247が設けられている。
【0108】
図17は、シャトルメンバ210の詳細な構造とシャトル開放ロッド217を説明する斜視図である。シャトルメンバ210は、溝211、脚部212、取り付け穴213および結合ボックス214を有する。
【0109】
溝211は、対向するシャトルメンバ220の溝221(
図19参照)と共に、チューブ絞り溝250(
図16参照)を構成する。脚部212は、シャトメルメンバ210をシャトルベース230上のシャトメルメンバ取り付け台232(
図18参照)に、取り付け穴213および取り付け台穴233(
図18参照)を介してボルト(図示せず)により、回転可能に取り付けられている。結合ボックス214には、ロッド結合穴215およびロッド装着ピン穴216が設けられている。結合ボックス214には、シャトル開放ロッド217が装着されている。シャトル開放ロッド217の先端には、先端ボール218が形成されている。この先端ボール218は、ロッド結合穴215に挿入されて、ロッド装着ピン穴216を介してピン止めされている。シャトル開放ロッド217の先端が先端ボール218でピン止めされていることで、シャトル開放ロッド217を含む垂直面に対してシャトルメンバ210がその垂直面においてある程度回転でき、チューブ装着に必要なシャトルメンバ210の円滑な開放動作ができる。
【0110】
図18は、シャトルベース230の詳細な構造を説明する斜視図である。シャトルベース230は、シャトルメンバ210が回転可能に取り付けられると共に、ガイドメンバ240に結合されて、シャトルメンバ220をシャトルメンバ210に対向させて保持する部材である。シャトルベース230は、その表面に平行な直線を軸とすべく2つの取り付け台穴233、シャトルメンバ210側には2つの取り付け穴213が形成され、ボルト(図示せず)でシャトルメンバ210が回転自在に取り付けられる。この構造で、シャトルメンバ210をチューブの長手方向と交差する面に沿って回転させることにより、シャトルメンバ210をシャトルメンバ220に対して蝶番状に開閉させることができる。シャトルベース230は、結合溝231およびシャトルメンバ取り付け台232を有し、結合溝231を貫いてボルト穴234を有する。
【0111】
結合溝231は、ガイドメンバ240と結合するためのものである。シャトルベース230は、結合溝231によりガイドメンバ240に結合され、ボルト穴234を介するボルト締めにより、ガイドメンバ240に固定される。シャトルメンバ取り付け台232には、シャトルメンバ210の脚部212が、取り付け穴213および取り付け台穴233を介してボルト(図示せず)により、回転可能に取り付けられている。
【0112】
シャトルメンバ210がこのようにシャトルベース240に取り付けられることにより、チューブをシャトル機構に挿入するときに、シャトル開放ロッド217を引いてシャトルメンバ210を蝶番状に開き、シャトルメンバ210,220が上に開いた状態とすることができる。この状態で、チューブを、シャトルメンバ210の溝211とシャトルメンバ220の溝221(
図19参照)とにより形成されるチューブ絞り溝250(
図16参照)に収容する。その後は、シャトル開放ロッド217を押し戻し、シャトルメンバ210を垂直に立て、上部に向かって閉じた状態とする。
【0113】
この例では、シャトルメンバ210がその脚部212を軸として回転可能となる場合を例に示したが、シャトルメンバ210を何らかの部材に取り付け、その部材を軸として回転する構成とすることもできる。
【0114】
図19および
図20は、シャトルメンバ220の詳細な構造を説明する斜視図である。
図19は、シャトルメンバ210側から見た図であり、
図20は、ガイドメンバ240から見た図である。このシャトルメンバ220は、溝221、伝達ロッド222、ローラ223、案内ロッド224およびシャトルローラ225を有する。
【0115】
溝221は、対向するシャトルメンバ210の溝211(
図17参照)と共に、チューブ絞り溝250(
図16参照)を構成する。伝達ロッド222は、先端部がガイドメンバ240の開口部242(
図21参照)を通してロータリカム160のトレース溝であるカム案内溝162(
図14参照)内に配置され、ロータリカム160の回転に伴って開口部242に沿って移動し、ロータリカム160の回転運動をシャトルメンバ220の往復運動に変換する。これにより、チューブに対して絞り動作をするために必要な、遊びの少ない上下運動を発生させることができる。ローラ223は、伝達ロッド222の先端部に設けられ、ロータリカム160のカム案内溝162(
図14参照)を少ない摩擦でなぞるように動作する。ローラ223は、ボールベアリング等により構成される。
【0116】
案内ロッド224は、シャトルメンバ220の両側に2つずつ設けられ、それぞれの先端部に、シャトルローラ225が設けられている。案内ロッド224およびシャトルローラ225は、ガイドメンバ240のシャトル動作案内溝247(
図21参照)と共に、突出部とその突出部を案内する案内溝とを構成し、シャトルメンバ210に対してシャトルメンバ220を流体保持位置と流体排出位置との間で相対的に往復移動させるとともに、シャトルメンバ210に対するシャトルメンバ220の互いに対向する面と直交する方向への相対的な移動を生じさせる手段を構成する。
【0117】
図21は、ガイドメンバ240の詳細な構造を説明する斜視図である。ガイドメンバ240は、シャトルメンバ210,220の一方(この例ではシャトルメンバ220)の他方(この例ではシャトルメンバ210)に対する動きを案内する案内部材であり、ロータリカム160の回転動作を、チューブに対する絞り動作に必要な上下運動に変換する。ガイドメンバ240は、2つの案内縁241と、開口部242、カム軸受243、カムホール244、ベース結合部245とを有し、ベース結合部245には、ボルト穴246を有し、2つの案内縁241にはそれぞれ、2つのシャトル動作案内溝247を有する。
【0118】
2つの案内縁241にそれぞれ設けられているシャトル動作案内溝247には、シャトルメンバ220の対応するシャトルローラ225が係合する。シャトル動作案内溝247は、シャトルローラ225およびそのシャトルローラ225が設けられている案内ロッド224を案内し、シャトルメンバ210に対してシャトルメンバ220を流体保持位置と流体排出位置との間で相対的に往復移動させるとともに、シャトルメンバ210に対するシャトルメンバ220の互いに対向する面と直交する方向への相対的な移動を生じさせる。
【0119】
2つの案内縁241は、シャトルメンバ220の全体の動きを横方向(チューブの長手方向)から規制する。シャトル動作案内溝247は、シャトルメンバ220によるシャトルメンバ210に対する往復動作および進入動作によるチューブ絞り動作が行われるように、シャトルメンバ220の経路の軌跡を規定する。
【0120】
同じ案内縁241に形成されている上下の2つのシャトル動作案内溝247は、同一形状である。また、その離間距離は、上下の2つのシャトルローラ225の離間距離と同一である。これにより、シャトルメンバ210の溝211とシャトルメンバ220の溝221の相互に対抗する面は、チューブ絞り動作中も平行が維持される。
【0121】
上下の2つのシャトル動作案内溝247の離隔距離を変更して、シャトルメンバ220が伝達ロッド222を介して上下運動をするときに、シャトルメンバ220がシャトルメンバ210に対して非平行の運動する構成とすることもできる。その場合には、シャトルメンバ220はシャトルメンバ210に非平行に進入し、チューブ(図示せず)に対して絞り動作をする。すなわち、シャトルメンバ210の溝211とシャトルメンバ220の溝221を構成する面にバンプを有する場合(
図5に示すバンプ25、
図6に示すバンプ35や
図8に示すバンプ45)に、チューブとバンプの接触面に、垂直方向に進入動作をさせることができる。
【0122】
シャトル動作案内溝247に沿って動くシャトルローラ225としては、滑らかな被案内動作が実現されるように、ボールベアリングやオイルメタル軸受等を用いることが好ましい。このような構成により、シャトル動作案内溝247に沿ってシャトルメンバ220が往復シフト移動する場合に、動作が滑らかであり、かつ動作の遊びを少なくして、チューブの絞り量を一定にし、ポンプの吐出量を安定化させることができる。
【0123】
ガイドメンバ240の開口部242は、先端部がロータリカム160のカム案内溝162(
図14参照)に挿入されているシャトルメンバ220の伝達ロッド222(
図20参照)の動きを上下方向のみとなるように制限する。カム軸受243には、ロータリカム160のカム軸161(
図14参照)が挿入される。カムホール244は、ロータリカム160を収容する。
【0124】
ベース結合部245およびボルト穴246は、ガイドメンバ240とシャトルベース230とを結合するためのものである。ガイドメンバ240のベース結合部245をシャトルベース230の結合溝231(
図18参照)に挿入し、ボルト穴234に結合用のボルト(図示せず)を通すことにより、ガイドメンバ240とシャトルベース230とが結合される。
【0125】
ロータリカム160およびモータ170の動作は、往復駆動機構の第1の構成例における動作と同等であり、ロータリカム160の回転運動が、シャトルメンバ220の上下運動に変換される。この上下運動は、案内縁241、シャトル動作案内溝247、案内ロッド224およびシャトルローラ225により規制され、シャトルメンバ220によるチューブ絞り動作に変換される。
【0126】
[往復駆動機構の第3の構成例]
図22は、往復駆動機構の第3の構成例を示す分解斜視図である。
図22には、往復駆動機構により駆動されるシャトル機構を共に示す。この構成例には、シャトル機構の2つの対向部材として、シャトルメンバ310,320が設けられている。シャトルメンバ310は、取り付け部材としてのシャトルベース330に取り付けられている。シャトルメンバ320は、シャトルメンバ310に対する可動部材となっている。往復駆動機構は、シャトルメンバ310,320の一方(この例ではシャメルメンバ320)が4つのアーム(この例ではシャトルインナアーム340という)により取り付けられる取り付け台として、ガイドメンバ350を備える。4つのシャトルインナアーム340はそれぞれ、その両端が、シャトルメンバ320とガイドメンバ350とに対して、チューブと交差する面内で双方向(上下方向と進入方向)に回転可能に取り付けられる。これによりシャトルインナアーム340は、シャトルメンバ310に対してシャトルメンバ320を流体保持位置と流体排出位置との間で相対的に往復移動させるとともに、シャトルメンバ310に対するシャトルメンバ320の互いに対向する面と直交する方向への相対的な移動を生じさせる。往復駆動機構は、さらに、可動部材であるシャトルメンバ320のシャトルメンバ310と対向する面とは逆の面に設けられた伝達ロッド323(
図26参照)を備え、シャトルメンバ310,320の往復動作の範囲に相当する開口部352(
図27参照)が設けられたガイドメンバ350を備え、モータ170により駆動される回転軸の周りに偏心したトレース溝であるカム案内溝162を有するロータリカム160を備える。
【0127】
シャトルメンバ310,320により絞られるべきチューブは、シャトルメンバ310とシャトルメンバ320の対抗する面に形成されたチューブ絞り溝360に挿入される。ロータリカム160の構成は、
図14に示すものと同等である。また、モータ170の構成は、
図15に示すものと同等である。以下では、ロータリカム160の構成については
図14を参照して、モータ170の構成については
図15を参照して、それぞれ説明する。また、シャトルメンバ310およびシャトルベース330の構成も、
図16から
図18を参照して説明したシャトルメンバ210およびシャトルベース230と同等であり、以下では説明を省略する。
【0128】
この構成例が
図8に示す構成例と異なる点は、
図8に示す構成例における4つのシャトルアーム130に換えて、4つのシャトルインナアーム340を備え、これらシャトルインナアーム340を、シャトルメンバ310ではなく、ガイドメンバ350に回転自在に取り付けてある点にある。
【0129】
図23は、シャトルメンバ310の詳細な構造とシャトル開放ロッド317を説明する斜視図である。シャトルメンバ310は、溝311、脚部312、取り付け穴313および結合ボックス314を有する。
【0130】
溝311は、対向するシャトルメンバ320の溝321(
図25参照)と共に、チューブ絞り溝350(
図22参照)を構成する。脚部312は、シャトメルメンバ310をシャトルベース330上のシャトメルメンバ取り付け台332(
図24参照)に、取り付け穴313(
図23)および取り付け台穴333(
図24参照)を介してボルト(図示せず)により、回転可能に取り付けられている。結合ボックス314には、ロッド結合穴315およびロッド装着ピン穴316が設けられている。結合ボックス314には、シャトル開放ロッド317が装着されている。シャトル開放ロッド317の先端には、先端ボール318が形成されている。この先端ボール318は、ロッド結合穴315に挿入されて、ロッド装着ピン穴316を介してピン止めされている。シャトル開放ロッド317の先端が先端ボール318でピン止めされていることで、シャトル開放ロッド317を含む垂直面に対してシャトルメンバ310がその垂直面においてある程度回転でき、チューブ装着に必要なシャトルメンバ310の円滑な開放動作ができる。
【0131】
図24は、シャトルベース330の詳細な構造を説明する斜視図である。シャトルベース330は、シャトルメンバ310が回転可能に取り付けられると共に、ガイドメンバ350に結合されて、シャトルメンバ320をシャトルメンバ310に対向させて保持する部材である。シャトルベース330は、その表面に平行な直線を軸とすべく2つの取り付け台穴333、シャトルメンバ310側には2つの取り付け穴313が形成され、ボルト(図示せず)でシャトルメンバ310が回転自在に取り付けられる。この構造で、シャトルメンバ310をチューブの長手方向と交差する面に沿って回転させることにより、シャトルメンバ310をシャトルメンバ320に対して蝶番状に開閉させることができる。シャトルベース330は、結合溝331およびシャトルメンバ取り付け台332を有し、結合溝331を貫いてボルト穴334を有する。
【0132】
結合溝331は、ガイドメンバ350と結合するためのものである。シャトルベース330は、結合溝331によりガイドメンバ350に結合され、ボルト穴334を介するボルト締めにより、ガイドメンバ350に固定される。シャトルメンバ取り付け台332には、シャトルメンバ310の脚部312が、取り付け穴313および取り付け台穴333を介してボルト(図示せず)により、回転可能に取り付けられている。
【0133】
シャトルメンバ310がこのようにシャトルベース340に取り付けられることにより、チューブをシャトル機構に挿入するときに、シャトル開放ロッド317を引いてシャトルメンバ310を蝶番状に開き、シャトルメンバ310,320が上に開いた状態とすることができる。この状態で、チューブを、シャトルメンバ310の溝311とシャトルメンバ320の溝321(
図25参照)とにより形成されるチューブ絞り溝350(
図22参照)に収容する。その後は、シャトル開放ロッド317を押し戻し、シャトルメンバ310を垂直に立て、上部に向かって閉じた状態とする。
【0134】
この例では、シャトルメンバ310がその脚部312を軸として回転可能となる場合を例に示したが、シャトルメンバ310を何らかの部材に取り付け、その部材を軸として回転する構成とすることもできる。
【0135】
図25は、シャトルメンバ320とシャトルインナアーム340の詳細な構造とアーム軸326を説明する斜視図である。
図26は、シャトルメンバ320をガイドメンバ350側から見た斜視図である。シャトルメンバ320は、溝321、伝達ロッド322、ローラ323、軸受324および軸穴325を有する。シャトルインナアーム340は、アームピン341、アーム穴342を有する。4つのシャトルインナアーム340は、シャトルメンバ320の軸受324および軸穴325と、シャトルインナアーム340のアーム穴342とを貫くアーム軸326により、シャトルメンバ320が回転自在に取り付けられている。
溝321、伝達ロッド322およびローラ323の詳細は、
図19および
図20を参照して説明した溝221、伝達ロッド222およびローラ223と同等であり、ここでは説明を省略する。
【0136】
図27は、ガイドメンバ350の詳細な構造を説明する斜視図である。ガイドメンバ350は、2つの対向部材であるシャトルメンバ310,320の一方(この例ではシャトルメンバ320)が取り付けられる取り付け台を構成し、2つのアーム取り付け壁351、開口部352、カム軸受353、カムホール354、ベース結合部355とを有する。ベース結合部355には、ボルト穴356が設けられている。2つのアーム取り付け壁351にはそれぞれ、2組の軸受357および支持穴358が設けられている。
【0137】
シャトルインナアーム340は、そのアームピン341により、アーム取り付け壁351の支持穴358に取り付けられた軸受357に対して、回転自由に取り付けられている。また、アームピン341の反対側は、上述したように、シャトルインナアーム340に穿たれたアーム穴342と、シャトルメンバ320の軸受324とにより、シャトルメンバ320に対して回転自在に取り付けられている。また、シャトルインナアーム340自体は、アーム軸326に固定して取り付けられている。この構造により、シャトルメンバ320がシャトルメンバ310に対して進入動作をする際に必要な動作軌跡が、シャトルメンバ320に取り付けた4つのシャトルインナアーム340と、これらをアーム取り付け壁351に回転自由に装着することにより作り出される。
【0138】
すなわち、4つのシャトルインナアームはそれぞれ、その両端が、シャトルメンバ320とガイドメンバ350とに対して、チューブと交差する面内で上下方向と進入方向の双方向に回転可能に取り付けられ、シャトルメンバ310に対する往復スライド動作を可能とすると共に、その往復スライド動作に伴って、往復スライド動作の方向およびチューブの長手方向の双方と交差する方向の相対的な移動を生じさせる。
【0139】
開口部352、カム軸受353、カムホール354、ベース結合部355およびボルト穴356の詳細、およびロータリカム160とモータ170の動作は、上述した往復駆動機構のものと同等であり、説明を省略する。
【0140】
この構成例では、シャトルインナアーム340の取り付けにより決まる動作機構により、シャトルメンバ320がロータリカム160の回転により上下に動作すると、シャトルメンバ320はシャトルメンバ310に進入し、チューブ(図示せず)に対して絞り動作をすることとなる。シャトルメンバ320には、シャトルインナアーム340の上述の取り付けによる運動機構により、このような運動軌跡が作られている。
【0141】
この例では、4つのシャトルインナアーム340は、シャトルメンバ320とアーム取り付け壁351に回転自由に取り付けられ、その取り付けは、相互に平行である。したがって、シャトルメンバ320はシャトルメンバ310に対して平行を保ちつつシャトルメンバ310に対して進入動作し、チューブ(図示せず)に対して絞り動作をする。すなわち、シャトルメンバ310の溝311とシャトルメンバ320の溝321の相互に対向する面は、このチューブ絞り動作中も平行である。
【0142】
4つのシャトルインナアーム340のうち、上部のものと下部のものが、非平行であっても良い。その場合には、シャトルメンバ320はシャトルメンバ310に非平行に進入し、チューブ(図示せず)に対して絞り動作をする。すなわち、シャトルメンバ310の溝311とシャトルメンバ320の溝321を構成する面にバンプを有する場合(
図6に示すバンプ25、
図7に示すバンプ35や
図8に示すバンプ45)に、チューブとバンプの接触面に垂直の方向に進入動作をさせることができる。
【0143】
この構成例では、シャトルインナアーム340を回転自由に取り付けるため、シャトルメンバ320には軸受324および軸穴325が設けられ、ガイドメンバ350には、2組の軸受357および支持穴358が設けられている。軸受324,357は、シャトルインナアーム340の動きの回転摩擦を減らし、その動作を滑らかにするためのものであり、ボールベアリングや、オイルメタル軸受が用いられる。また、軸受324,357を用いることにより、シャトルメンバ310の溝311とシャトルメンバ320の溝321による絞り動作における動作の遊びを少なくして、チューブの絞り量を一定にし、ポンプの吐出量を安定化させることができる。
【0144】
[バルブ機構を含むポンプ装置の全体構成例]
図28は、バルブ機構を含むポンプ装置の全体構成例を示す斜視図である。このポンプ装置は、シャトルメンバ410,420、シャトルベース430、受座440、バルブプランジャ450、ガイドメンバ460、ロータリカム470、背板480およびモータ170を備える。すなわち、チューブ(図示せず)の長手方向におけるシャトルメンバ410,420の両側にそれぞれ、チューブの閉塞および開放を行うバルブプランジャ450を備え、ロータリカム470の外周には、シャトルメンバ410,420の往復スライド動作に同期してバルブプランジャ450の動作を制御するための外縁部(具体的にはプランジャ案内内縁474とプランジャ案内外縁475(
図35参照))を有する。バルブプランジャ450と受座440の組は2つあり、これらが、それぞれチューブの閉塞および開放を行うバルブ手段(以下、簡単のため「バルブ」とも云う)を構成する。
【0145】
図28に示す構成例は、
図16から
図21を参照して説明した第2の構成例と異なる点が、2点ある。1点目は、シャトル機構に同期してシャトル機構の上流および下流部分でチューブ(図示せず)を閉塞・開放するバルブプランジャ450をロータリカム470により動作させ、その動作をシャトル機構によるチューブの絞り動作に同期させ、チューブの内部空間に充填された流体を、上流側から下流側に押出して移動させる点である。一方、
図8から
図15、
図16から
図21、
図22から
図27をそれぞれ参照して説明した構成例では、バルブは、ロータリカム160とは異なる別の機構により動作させるものとしている。2点目は、チューブに対する加圧手段であるシャトル機構において、チューブを絞るためのシャトルメンバの形状が
図28に示す構成例では他の構成例と異なる点である。すなわち、シャトルメンバ420として、
図7に示す第4の実施の形態に示したものを用いている。
【0146】
図29は、シャトルメンバ410の詳細な構造とシャトル開放ロッド417を説明する斜視図である。シャトルメンバ410は、溝411、脚部412、取り付け穴413および結合ボックス414を有する。結合ボックス414には、ロッド結合穴415およびロッド装着ピン穴416が設けられ、シャトル開放ロッド417が取り付けられている。シャトル開放ロッド417の先端には先端ボール416が設けられている。シャトルメンバ410にはさらに、連動結合穴419が設けられ、連動ロッド437が挿入されている。
【0147】
シャトルメンバ410は、その脚部412に設けられている取り付け穴413により、シャトルベース430のシャトルメンバ取り付け台432(
図30参照)に、取り付けロッド436で取り付けられている。シャトルメンバ410は、シャトルメンバ取り付け台432(
図30参照)に対して回転可能である。シャトル開放ロッド417とロッド結合ボックス414によってシャトルメンバ410を回転させることで、シャトルメンバ410をシャメルメンバ420に対して蝶番状に開くことができる。シャトル開放ロッド417の端部に設けられている先端ボール418は、ロッド結合穴415に挿入されて、ロッド装着ピン穴416を介してピン止めされている。これにより、シャトル開放ロッド417に対して、シャトルメンバ410が垂直面においてある程度回転でき、チューブ装着に必要なシャトルメンバ410の円滑な開放動作ができる。
【0148】
図30は、シャトルベース430と取り付けロッド436の詳細な構造を説明する斜視図である。シャトルベース430は、結合溝431、シャトルメンバ取り付け台432、受座取り付け部433を有する。結合溝431は、シャトルベース430をガイドメンバ460に結合するためのもので、ボルト締めにより、遊びを少なくしてガイドメンバ460に結合される。シャトルメンバ取り付け台432および受座取り付け部433にはシャトルメンバ取り付け穴434が設けられ、取り付けロッド436により、シャトルメンバ410が取り付けられる。受座取り付け部433にはさらに、受座440の一部である座台441(
図31参照)を取り付けるための座台取り付け穴435が設けられている。
【0149】
図31は、受座440の詳細な構造を説明する拡大斜視図である。この図では、構造が明確になるように、他の部分に比べて拡大して示す。受座440は、バルブプランジャ450を案内する座台441と、バルブプランジャ450の押子451(
図33参照)が押し付けられる受台442とを有する。受台442と押子451との間にはチューブが配置され、押子451によって、チューブの閉塞開放動作が行われる。座台441には、バルブプランジャ450の特に押子451を案内するプランジャ溝445と、取り付け穴446とが設けられている。受台442には、取り付け穴443と連動結合穴444とが設けられている。
【0150】
座台441は、座台441の取り付け穴443と、シャトルベース430の受座取り付け部433(
図30参照)に設けられている座台取り付け穴435とを、ボルト(図示せず)で連結することにより、シャトルベース430の受座取り付け部433に固定される。受台442は、取り付け穴446を介して、取り付けロッド436により、シャトルベース430の取り付け台432と受座取り付け部433(
図30参照)とに、回転可能に取り付けられる。また、受台442は、連動結合穴444を介して、シャトメルメンバ410の連動結合穴419と連動ロッド437により結合される。
【0151】
座台441がシャトルベース430に対して固定されるのに対し、受台442は、取り付けロッド436を中心に回転可能である。このため、受台442の下部の形状は、座台441との接触面を滑りながら、連動結合穴444を中心として回転できるような円孤形状となっている。
【0152】
図29から
図31に示すシャトルメンバ410、シャトルベース430および受座440の構成により、チューブの交換が可能となる。シャトル機構へのチューブの挿入、あるいは交換は、シャトル開放ロッド417を引いてシャトルメンバ410を上部に向かって開き、シトルメンバ410の溝411とシャトルメンバ420の溝421(
図32参照)との間にチューブを入れる、あるいは溝411,バンプ422の間からチューブを取り出すことができる。さらに、バルブを構成する受座440の受台442は、連動ロッド437を介してシャトルメンバ410に結合しているため、シャトルメンバ410が上部に向かって開くことに連動して、同様に上部に向かって開く。このため、チューブを、受台442とバルブプランジャ450(
図33参照)の先端部分である押子451との間から取り外す、あるいは受け入れることができる。チューブを挿入した後は、シャトル開放ロッド417を押し戻し、シャトルメンバ410を垂直に立て、上部に向かって閉じた状態とする。一方、受台442は、連動ロッド437を介してシャトルメンバ410と共に垂直に立ち、上部に向かって閉じた状態となる。すなわち、チューブがバルブに装着されることとなる。
【0153】
シャトルメンバ410および受台442を閉じた状態で維持するためには、シャトル開放ロッド417を図示していない固定手段により固定してもよく、また、シャトル開放ロッド417の固定手段とは別に、またはそれと組み合わせて、受台442を固定する手段を設けることもできる。
【0154】
図32は、シャトルメンバ420の詳細な構造と構成を説明する斜視図である。このシャトルメンバ420は、基本的な構造は
図7に示す第4の実施の形態に示したものと同等であり、溝421およびバンプ422を有する。また、シャトルメンバ420は、伝達ブロック423を有し、この伝達ブロック423に、伝達ロッド424およびローラ425を有する。また、シャトルメンバ420は、その側面に、案内ロッド426およびシャトルローラ427を有する。
【0155】
溝421とバンプ422は、対向するシャトルメンバ410の溝411(
図29参照)と共に、チューブ絞り溝を構成する。伝達ロッド424は、チューブに対して絞り動作をするために必要な遊びの少ない上下運動を発生させるために、ロータリカム470とガイドメンバ460とにより作られる上下運動を、シャトルメンバ420に伝達する。ローラ425は、伝達ロッド424の先端部に設けられ、ロータリカム470のトレース溝であるカム案内溝472(
図35参照)を少ない摩擦でなぞるように動作する。ローラ425は、ボールベアリング等により構成される。伝達ロッド424は伝達ブロック423に取り付けられ、伝達ロッド424に伝えられた上下運動は、シャトルメンバ420全体に伝えられる。
【0156】
案内ロッド426は、シャトルメンバ420の両側に2つずつ設けられ、それぞれの先端部に、シャトルローラ427が設けられている。シャトルメンバ420をシャトルメンバ410に進入動作させるために必要な動作軌跡は、案内ロッド426およびシャトルローラ426と、ガイドメンバ460に設けられているシャトル動作案内溝467(
図34参照)により作り出される。
【0157】
図33は、バルブプランジャ450の詳細な構造を説明する斜視図である。このバルブプランジャ450は、押子451、押子ガイド452、伝達スラブ453およびカムローラ454を有する。伝達スラブ453にはピン穴455が設けられ、バネ456が、ピン457により取り付けられる。
【0158】
押子451は、受台442(
図31参照)との間で、チューブの閉塞開放動作を行う。押子ガイド452は、座台441に設けられているプランジャ溝445に沿って、押子451を案内する。押子451は伝達スラブ453の一端に設けられており、伝達スラブ453の他端には、カムローラ454が設けられている。カムローラ454は、ロータリカム470に係合する。この係合は、バネ456の弾性により行われる。ロータリカム470の回転により生じるバルブプランジャ450の動作は、往復駆動機構による往復スライド動作に対して一定の関係を有し、それにより往復スライド動作に同期してチューブの上流側と下流側を閉塞または開放して、チューブ内の流体を上流から下流へ移動させることができる。
【0159】
図34は、ガイドメンバ460の詳細な構造を説明する斜視図である。ガイドメンバ460は、シャトルメンバ410,420の一方(この例ではシャトルメンバ420)の他方(この例ではシャトルメンバ410)に対する動きを案内する案内部材であり、ロータリカム470の回転動作を、チューブに対する絞り動作に必要な上下運動に変換する。ガイドメンバ460は、2つの案内縁461と、開口部462、カム軸受463、カムホール464、ベース結合部465とを有する。ベース結合部465には、ボルト穴466が設けられている。2つの案内縁461にはそれぞれ、2つのシャトル動作案内溝467が設けられている。また、このガイドメンバ460は、プランジャ穴468と、背板取り付け穴469とを有する。
【0160】
2つの案内縁461にそれぞれ設けられているシャトル動作案内溝467には、シャトルメンバ420の対応するシャトルローラ427が係合する。シャトルメンバ420の案内ロッド426およびシャトルローラ427と、シャトルローラ427を案内するシャトル動作案内溝467は、シャトルメンバ410,420の往復スライド動作の方向およびチューブの長手方向の双方と交差する方向の相対的な移動を生じさせる手段を構成する。2つの案内縁461は、シャトルメンバ420の全体の動きを横方向から規制する。シャトル動作案内溝467は、シャトルメンバ420によるシャトルメンバ410に対する往復シフト移動および進入動作によるチューブ絞り動作が行われるように、シャトルメンバ420の経路の軌跡を規定する。
【0161】
同じ案内縁461に形成されている上下の2つのシャトル動作案内溝467は、同一形状である。また、その離間距離は、上下の2つのシャトルローラ427の離間距離と同一である。これにより、シャトルメンバ410の溝411とシャトルメンバ420の溝421およびバンプ422は、チューブ絞り動作中も平行が維持される。
【0162】
上下の2つのシャトル動作案内溝467の離隔距離を変更して、シャトルメンバ420が伝達ロッド424を介して上下運動をするときに、シャトルメンバ420がシャトルメンバ410に対して非平行の運動をする構成とすることもできる。その場合には、シャトルメンバ420はシャトルメンバ410に非平行に進入し、チューブ(図示せず)に対して絞り動作をする。すなわち、シャトルメンバ410の溝411とシャトルメンバ420の溝421が隔絶している2つのバンプ422(
図32参照)を有するため、チューブとバンプの接触面に垂直方向に進入動作をさせ、チューブをその長手方向を軸として回転させつつチューブに対して絞り動作をさせることができる。この回転は、流体が高栄養剤の輸液であってコロイド状の沈殿ができ易い場合には有効である。すなわち、チューブの絞り動作中の回転により、コロイドに剪断応力を加えて、輸液を均質化することができるため、事前の輸液の振動撹拌による輸液の均質化の作業が不要となる。
【0163】
シャトル動作案内溝467に沿って動くシャトルローラ427としては、滑らかな被案内動作が実現されるように、ボールベアリングやオイルメタル軸受等が用いられることが好ましい。このような構成により、シャトル動作案内溝467に沿ってシャトルメンバ420が往復シフト移動する場合に、動作が滑らかであり、かつ動作の遊びを少なくして、チューブの絞り量を一定にし、ポンプの吐出量を安定化させることができる。
【0164】
ガイドメンバ460の開口部462は、先端部がロータリカム470のカム案内溝472(
図35参照)に挿入されているシャトルメンバ420の伝達ロッド424(
図32参照)の動きを上下方向のみとなるように制限する。カム軸受463には、ロータリカム470のカム前軸471(
図35参照)が挿入される。カムホール464は、ロータリカム470を収容する。
【0165】
ベース結合部465およびボルト穴466は、ガイドメンバ460とシャトルベース430とを結合するためのものである。ガイドメンバ460のベース結合部465をシャトルベース430の結合溝431(
図30参照)に挿入し、ボルト穴466とシャトルベース430のボルト穴とをボルト(図示せず)で結合することにより、ガイドメンバ460とシャトルベース430とが結合される。
【0166】
プランジャ穴468は、バルブプランジャ450の伝達スラブ453が貫通する穴であり、これを通して、ロータリカム470の回転に伴って、バルブプランジャ450を往復運動させることができる。背板取り付け穴469には、背板480が、ボルト(図示せず)により取り付けられる。
【0167】
図35は、ロータリカム470および背板480の詳細な構造を説明する斜視図である。ロータリカム470は、カム前軸471、カム案内溝472、モータ軸穴473、プランジャ案内内縁474、プランジャ案内外縁475およびカム後軸476を有する。背板480は、カム軸受481および背板取り付け穴482を有する。
【0168】
背板480は、背板取り付け穴482を通して、ボルト(図示せず)によりガイドメンバ460に取り付けられる。この取り付けにより、ロータリカム470が、ガイドメンバ460に組み付けられる。このとき、カム前軸471は、ガイドメンバ460のカム軸受463(
図34参照)に挿入され、ロータリカム470は、ガイドメンバ460のカムホール464(
図34参照)内に、回転自在に格納される。カム案内溝472には、ガイドメンバ460の開口部462(
図34参照)を通して、シャトルメンバ420の伝達ロッド424(
図32参照)が挿入される。ロータリカム470の外縁部にはプランジャ案内内縁474とプランジャ案内外縁475が設けられ(
図35参照)、これらにはバルブプランジャ450のカムローラ454(
図33参照)が係合する。カム後軸476は、背板480に穿たれたカム軸受481に、回転自在に係合する。
【0169】
カム案内溝472は、モータ軸穴473に基づく回転中心に対して偏心して形成されている。ロータリカム470の回転に伴って、シャトルメンバ420のローラ425が、カム案内溝472に沿って動く。このとき、ローラ425が設けられているシャトルメンバ420の伝達ロッド424の動きが、ガイドメンバ460の開口部462により制限される。これにより、ロータリカム470の回転運動が、シャトルメンバ420の上下運動に変換される。この上下運動は、案内縁461、シャトル動作案内溝467、案内ロッド424およびシャトルローラ425により規制され、シャトルメンバ420によるチューブ絞り動作に変換される。
【0170】
プランジャ案内内縁474またはプランジャ案内外縁475とカム案内溝472とは、ロータリカム470の回転に対して、固定した一定の位置関係がある。この関係より、ロータリカム470の回転により生じるバルブプランジャ450の動作は、往復駆動機構による往復スライド動作に対して一定の関係を有する。これにより、往復スライド動作に同期して、チューブの上流側と下流側を閉塞または開放し、チューブ内の流体を上流から下流へ移動させることができる。
【0171】
ロータリカム470のプランジャ案内内縁474およびプランジャ案内外縁475によって生じるバルブプランジャ450の動作について、以下に詳しく説明する。バルブプランジャ450は、カムローラ454を取り付ける前に、ガイドメンバ460のプランジャ穴468(
図34参照)に通しておく。バルブプランジャ450は、ロータリカム470の外周に形成されたプランジャ案内内縁474とプランジャ案内外縁475の回転軸方向に直角の面をなぞるように、バネ456によりガイドメンバ470に側に引き付けられている。ロータリカム470が回転し、シャトルメンバ420がチューブを絞るときは、チューブの上流側のバルブを閉じるべく、プランジャ案内内縁474が、それをなぞるバルブプランジャ450を、受座440に押し付ける。その結果、押子451が受台442に押し付けられる。さらに、チューブの下流側のバルブを開くべく、プランジャ案内外縁475をなぞるバルブプランジャ450は、受座440から離れる。離れる力は、バネ456による。逆に、シャトルメンバ420がチューブを元の形状に復元するように動くときは、チューブの上流側のバルブを開くべく、プランジャ案内外縁475をなぞるバルブプランジャ450は、受座440から離れる。その結果、押子451が受台442から離れる。この離れる力はバネ456による。さらに、下流側のバルブを閉じるべく、プランジャ案内内縁474は、それをなぞるバルブプランジャ450を、受座440に押し付ける。すなわち、押子451が受台442に押し付けられる。
【0172】
図36は、上述した往復駆動機構を用いるシャトルポンプにおける流体の吐出量Vとロータリカムの回転角θとの関係を示す。互いに対向するシャトメルメンバ110と120、210と220、310と320または410と420の変位位置xに対して、ポンプとしての吐出量Vが、
V=b・f(x)
の関係があるとする(上部のグラフ)。これに対して、ロータリカムの回転角θに対してシャトルメンバの変位位置xが、
x=g(θ)=f
−1(θ)
となるように(下部のグラフ)、カム案内溝162または472の形状を設定する。ここで、シャトメルメンバ110と120、210と220、310と320または410と420においてx=0とは、具体的には
図1の(A)、
図5の(A)、
図6の(A)、
図7の(A)の流体保持位置のときのシャトルメンバ11と12の間、シャトルメンバ21と22の間、シャトルメンバ31と32の間、シャトルメンバ41と42の間の変位位置xの量を意味する。これにより、一定の速度でチューブ内の液体を吐出することができる。なぜなら、
V=b・f(f
−1(θ))
=b・θ
だからである。
図37に、ロータリカムの外周と、カム案内溝のトレースとの関係の一例を示す。ここで、横軸とカム案内溝のトレースとの2つの交点は、シャトメルメンバ110と120、210と220、310と320または410と420(具体的にはシャトルメンバ11と12、シャトルメンバ21と22、シャトルメンバ31と32、シャトルメンバ41と42)のそれぞれが有する2つの流体排出位置を表し、縦軸とカム案内溝のトレースとの2つの交点(
図37では「中点」と記載されている)はそれぞれが有する2つの流体保持位置を示す。
【0173】
以上の説明では、本発明の一部の実施の形態について説明した。本発明は上述の構成に限定されるものではなく、実施段階では、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上述の実施の形態および構成例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の構成を実現できる。たとえば、実施の形態や構成例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態や構成例の構成要件を適宜組み合わせてもよい。
【0174】
また、対向する2つのシャトルメンバの一方が固定されるものとして説明したが、2つのシャトルメンバの固定あるいは可動は相対的なものであり、固定された台の上で、2つのシャトルメンバの双方が可動な構成とすることもできる。