(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
トンネル栽培とは、作物をプラスチックフィルムでトンネル形に被覆して、その作物の保温状態を維持する栽培方法である。
すなわち、
図9に示すように、略台形状に形成された畝Hに作物が植えられ、その畝Hに長尺方向の所定間隔毎に逆U字形のポールUが打ち込まれ、このポールUの上から長尺のプラスチックフィルムFがトンネル形に被覆される。そして、このプラスチックフィルムFが風などによって飛ばされないようにするため、ポールUの打込み際に杭Pを交互に打ち込み、この杭Pの上端のフックfに紐Rを掛け渡して、プラスチックフィルムFが押さえられる。
【0003】
従来、上記杭Pの打ち込みは、作業者が畝Hと畝Hの間の溝Dに腰を屈め、杭Pをハンマーなどで打ち込むことにより行われていた。そのため、作業者に多大な肉体的負担がかかり、腰を痛める要因ともなっていた。
【0004】
これに対して、特許文献1には、トンネル栽培用のプラスチックフィルムを固定するための杭Pを打ち込むことができる杭打ち機が提案されている。
しかるに、上記従来の杭打ち機は、エンジン駆動のものであり、大型で重量のあるものであった。一般に、畝Hと畝Hの間の溝Dの幅は人の肩幅ほどもない細いものであるため、このような大型で重量のある杭打ち機を操作することは困難であるという問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1から
図3において、10は本発明の一実施形態に係る杭打ち機Aの車体フレーム、11は車体フレーム10の後方に取り付けられたハンドルバー、21は車体フレーム10の後方に取り付けられた駆動輪、22は車体フレーム10の前方に取り付けられた従動輪、30は車体フレーム10の略中央に取り付けられた杭打ち部である。
【0011】
車体フレーム10には、その前方であって従動輪22の上方に、バッテリ41が格納されたバッテリケース42が設置されている。そのバッテリケース42の上面にはトンネル栽培用のプラスチックフィルムを固定するための杭Pが入れられる杭受け箱51が設けられている。
【0012】
また、ハンドルバー11には、杭Pが格納される他の杭受け箱52と、コントローラ43が取り付けられている。また、ハンドルバー11の一端のハンドルグリップ12の近傍には、電源スイッチ44、スロットルレバー45および前後進切替スイッチ46が取り付けられている。ハンドルバー11の他端のハンドルグリップ13の近傍には、杭打込スイッチ47が取り付けられている。
【0013】
駆動輪21はホイルインモータであり、バッテリ41から供給される電力により駆動する。
より詳細には、コントローラ43は、スロットルレバー45および前後進切替スイッチ46と、図示しないケーブルにより電気的に接続されており、スロットルレバー45および前後進切替スイッチ46の操作信号が入力されるようになっている。また、コントローラ43は、バッテリ41および駆動輪21とも図示しないケーブルにより電気的に接続されており、スロットルレバー45および前後進切替スイッチ46からの操作信号に従って、バッテリ41から駆動輪21に電力を供給して、駆動輪21を駆動させる。
【0014】
そのため、作業員が電源スイッチ44を入にした後に、スロットルレバー45および前後進切替スイッチ46を操作すれば、駆動輪21が正回転または逆回転して、杭打ち機Aを前進または後進させることができる。
なお、従動輪22は、駆動輪21の駆動により杭打ち機Aが前進または後進するのに従って回転する。
【0015】
図3および
図4に示すように、杭打ち部30は、杭Pが載せられる杭スライド31と、杭スライド31に載せられた杭Pを打ち込む駆動手段32とからなる。
杭スライド31は、断面略V字形の溝状の部材であり、杭Pの全長よりも長尺となっている。また、杭スライド31の下面には取付部材60が設けられており、杭スライド31はこの取付部材60を介して車体フレーム10の略中央に取り付けられている。
【0016】
取付部材60は、車体フレーム10の略中央に立設された垂直柱61と、十字形に形成され、垂直柱61に対して上下方向に褶動可能な十字部材62と、十字部材62に対して杭打ち機Aの幅方向(
図4における左右方向)に褶動可能な梁63と、梁63の一端に回動可能に取り付けられた伸縮柱64とからなる。そして、梁63の他端は杭スライド31の一端に回動可能に連結されており、伸縮柱64の上端は杭スライド31の他端側に回動可能かつ褶動可能に連結されている。
【0017】
垂直柱61と十字部材62とはボルト65で固定されており、十字部材62を垂直柱61に対して上下方向に褶動させてボルト65で固定することにより、十字部材62の高さ方向の位置を調整することができる。また、十字部材62と梁63とはボルト66で固定されており、梁63を十字部材62に対して幅方向に褶動させてボルト66で固定することにより、梁63の幅方向の位置を調整することができる。また、伸縮柱64はテレスコピック状に構成されており、手動で伸縮させ、その長さを調整して固定できるものである。
【0018】
取付部材60は上記のような構成であるから、杭スライド31は車体フレーム10に対して幅方向に傾斜して取り付けられる。
そして、伸縮柱64の伸縮を調整することで杭スライド31の傾斜角度を調整することができ、垂直柱61に対する十字部材62の高さ方向の位置を調整することで杭スライド31の高さ方向の位置を調整することができ、十字部材62に対する梁63の幅方向の位置を調整することで杭スライド31の幅方向の位置を調整することができる。
【0019】
図5に示すように、駆動手段32は、電動モータ33と、電動モータ33に取り付けられたピニオンギヤ33pと、ピニオンギヤ33pと噛み合うギヤ33gと、ギヤ33gの回転軸に転結されたネジ軸34sと、ネジ軸34sに螺合するナット34nとからなる。ネジ軸34sとナット34nとでボールネジ34が構成されている。
そのため、電動モータ33の駆動によりネジ軸34sが回転し、ナット34nをネジ軸34sに沿って移動させることができる。
【0020】
また、ネジ軸34sの両端近傍には、リミットスイッチ35a、35bが設けられており、ナット34nが上限に達したことを上限リミットスイッチ35aで検知することができ、ナット34nが下限に達したことを下限リミットスイッチ35bで検知することができるようになっている。
【0021】
図6に示すように、駆動手段32のケース32cには、杭スライド31側の側面にスリット36が長手方向に沿って形成されている。ナット34nには連結板37が取り付けられており、その連結板37はスリット36を通して杭スライド31側に突出している。また、連結板37には、杭スライド31側に杭打込ブロック38が取り付けられている。そのため、杭打込ブロック38はボールネジ34の駆動により杭スライド31の傾斜方向に移動することができる。
【0022】
図7(a)に示すように、この杭打込ブロック38は、杭スライド31の傾斜方向下方の面に、逆V字形のV凹部38vが形成されており、そのV凹部38vの頂点には逆U字形のU凹部38uが形成されている。このU凹部38uは、杭Pの軸径よりも若干幅広に形成されている。また、
図7(b)に示すように、杭打込ブロック38の底面は、断面略V字形の杭スライド31に沿うように、略V字型に突出している。
【0023】
図6に示すように、杭スライド31の傾斜方向下方の端部には、ゲート板39が設けられている。このゲート板39は杭スライド31を横断する回転軸39aに取り付けられており、杭スライド31に対して回動して、杭スライド31の端部を開閉できるようになっている。また、ゲート板39にはバネ39sが取り付けられており(
図4参照)、そのバネ39sにより杭スライド31の端部を閉状態に維持するように付勢されている。
【0024】
杭スライド31には、杭Pがその先端を傾斜方向下方に向けて載せられる。この際、杭Pは、その先端がゲート板39に当接して、杭スライド31から滑り落ちないように保持される。
【0025】
そして、ボールネジ34の駆動により杭打込ブロック38を杭スライド31の上方から下方に移動させると、杭打込ブロック38が杭Pの頭部に当接する。
ここで、一般的な杭Pの頭部は円形に曲げられてフックfが形成されているが、杭打込ブロック38のV凹部38vがそのフックfに当接することにより、フックfの幅広方向が立つように規制される。さらに杭スライド31を下方に移動させることで、フックfがU凹部38u内に挿入され、杭Pが杭打込ブロック38に固定される。
【0026】
そして、さらに杭打込ブロック38を杭スライド31の下方に移動させると、杭Pを傾斜方向下方にスライドさせて、杭スライド31から排出し、畝に打ち込むことができる。この際、ゲート板39は、杭Pにより押されて開状態となる。
このように、ゲート板39は、杭Pの自重では開かないが、杭打込ブロック38の押し込み力により開くようにバネ39sにより付勢されている。
【0027】
上記杭打ち部30も、バッテリ41から供給される電力により駆動する。
より詳細には、コントローラ43は、杭打込スイッチ47と、図示しないケーブルにより電気的に接続されており、杭打込スイッチ47の操作信号が入力されるようになっている。また、コントローラ43は、バッテリ41および電動モータ33とも図示しないケーブルにより電気的に接続されており、杭打込スイッチ47からの操作信号に従って、バッテリ41から電動モータ33に電力を供給して、杭打ち部30を動作させる。
【0028】
なお、コントローラ43には、リミットスイッチ35a、35bの検知信号も入力されている。また、杭打込スイッチ47は自動復帰形スイッチである。そして、コントローラ43は、作業者が杭打込スイッチ47を入にしたときに、杭打込ブロック38を杭スライド31の傾斜方向下方に移動させ、杭打込ブロック38が下限に達したことを下限リミットスイッチ35bで検知した後に、杭打込ブロック38を杭スライド31の傾斜方向上方に移動させ、杭打込ブロック38が上限まで戻ったことを上限リミットスイッチ35aで検知したときに停止させる。
このようにコントローラ43が制御することで、作業者が杭打込スイッチ47を入にするたびに、杭Pを杭スライド31から排出して、畝に打ち込むことができる。
【0029】
以上のように、杭打ち機Aは、駆動輪21と杭打ち部30が電動であるので、エンジン駆動に比べて小型かつ軽量に構成できる。そのため、幅の細い畝と畝の間の溝においても杭打ち機Aの操作が容易である。
【0030】
つぎに、杭打ち機Aを用いた杭Pの打ち込み方法について説明する。
まず、
図8に示すように、取付部材60により、杭スライド31の傾斜角度、高さ方向の位置、幅方向の位置を調整して、畝Hに対する杭Pの打ち込み角度および位置を調整する。このように、杭Pの打ち込み角度および位置を調整することで、トンネル栽培用のプラスチックフィルムを押さえるのに適した角度で杭Pを打ち込むことができる。
【0031】
つぎに、作業員が、電源スイッチ44を入にした後に、スロットルレバー45および前後進切替スイッチ46を操作して、杭打ち機Aを畝Hと畝Hの間の溝Dを走行させる。そして、杭打ち機Aを所定位置に移動させたとき、例えば、杭打ち部30の先端がポールUの打込み際に達したときに、杭打ち機Aの走行を停止させる。ここで、駆動輪21および従動輪22は幅広であるため、杭打ち機Aは安定性が高い。
【0032】
つぎに、作業員が杭受け箱51、52に入れられた杭Pのうちの一本を杭スライド31に載せる。この際、杭Pの先端を杭スライド31の傾斜方向下方に向けて載せる。そして、杭打込スイッチ47を操作して、杭打ち部30から杭Pを畝Hに打ち込む。
なお、予め、畝Hには長尺方向の所定間隔毎に逆U字形のポールUが打ち込まれている。
【0033】
以上を繰り返して、ポールUの打込み際に交互に杭Pを打ち込んだ後に、ポールUの上から長尺のプラスチックフィルムFをトンネル形に被覆する。その後、杭Pの上端のフックfに、紐Rを掛け渡して、プラスチックフィルムFを押さえる。
【0034】
(他の実施形態)
上記実施形態では、駆動輪21をホイルインモータとしたが、他の電動の駆動輪を採用してもよい。例えば、電動モータを別に備え、その電動モータの駆動をギヤやチェーンなどで伝達して駆動輪を駆動させる構成としてもよい。ただし、駆動輪21をホイルインモータとすれば、駆動輪21を駆動させる駆動源を別に設ける必要がないため、杭打ち機Aをより小型かつ軽量に構成できる。また、駆動輪21をホイルインモータとすれば、杭打ち機Aの走行開始と停止がスムーズになる。
【0035】
また、上記実施形態では、杭スライド31の車体フレーム10に対する傾斜角度、高さ方向の位置、幅方向の位置のすべてを調整可能に構成したが、それらのうちのいずれか1つまたは2つを調整可能に構成してもよい。
【0036】
また、杭打ち部30の駆動源として用いられる電動モータ33は、一般的な電動モータでもよいが、インパクト機構を備える電動モータを採用する方が好ましい。ここで、インパクト機構とは、打撃により出力軸を回転させる機構であり、例えば、電動モータの出力軸の途中にハンマーとアンビルを介在させ、電動モータの駆動によりハンマーを回転させてアンビルに打ちつけることにより、アンビル側の出力軸を打撃により回転させる機構である。このような電動モータ33を用いれば、杭Pの打ち込み箇所が硬い場合でも、杭Pをハンマーで叩くように打ち込むことができるので、通常の電動モータに比べて杭Pを強く打ち込むことができるので好ましい。