(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
管軸に垂直な断面形状が矩形状の扁平な筒状の発光管と、当該発光管における一対の幅広の扁平壁部の各々の外面に設けられた一対の外部電極と、当該発光管の少なくとも一方の端部に設けられた、一対の扁平壁部対向壁部および前記発光管の扁平壁部の各々を連結する側壁部に対向する一対の側壁部対向壁部により形成される矩形筒状のベースとを具え、当該ベースが、前記発光管の端部が前記ベースに形成された発光管挿入用開口から内部に挿入された状態において当該ベースの内周面と当該発光管の外周面との間の間隙に注入された接着剤によって、当該発光管に固定されてなるエキシマランプにおいて、
前記ベースには、前記側壁部対向壁部の内面に、接着剤が一旦溜められる接着剤溜まり用凹所が形成されていると共に、接着剤注入用貫通孔が一方の開口が一方の扁平壁部対向壁部の外面に開口すると共に他方の開口が当該一方の扁平壁部対向壁部の内面における前記接着剤溜まり用凹所を臨む位置に開口するよう形成されており、当該接着剤注入用貫通孔の孔径の大きさが前記ベースの側壁部対向壁部と前記発光管の側壁部との間の間隙の幅寸法より大きく、
前記接着剤注入用貫通孔は、当該接着剤注入用貫通孔の中心位置から発光管挿入用開口の開口縁の位置までの管軸方向における長さが、前記ベースの一方の扁平壁部対向壁部の内面と他方の扁平壁部対向壁部の内面との離間距離の大きさより大きくなる位置に形成されていることを特徴とするエキシマランプ。
前記ベースは、前記発光管の端部が挿入される発光管挿入用開口の開口縁の位置が、前記発光管の管軸方向における前記外部電極の外端縁位置より外方側に離隔されて位置されるよう、設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
前記接着剤注入用貫通孔および前記接着剤溜まり用凹所は、前記発光管の管軸方向における外端縁側の位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエキシマランプ。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば金属、ガラスおよびその他の材料よりなる被処理体に、波長200nm以下の真空紫外光を照射することにより、当該真空紫外光およびこれにより生成されるオゾンの作用によって被処理体を処理する技術、例えば被処理体の表面に付着した有機汚染物質を除去する洗浄処理技術や、被処理体の表面に酸化膜を形成する酸化膜形成処理技術が開発され、実用化されている。
このような真空紫外光を照射する光源としては、例えば、エキシマ放電によってエキシマ分子を形成し、当該エキシマ分子から放射される光を利用するエキシマランプが知られている。
【0003】
図9は、従来におけるエキシマランプの一例における構成の概略を一部を拡大して示す平面図、
図10は、
図9に示すエキシマランプの側面図、
図11は、
図9におけるA−A線断面図である。
このエキシマランプ50は、例えば両端が気密に封止されて内部に放電空間が形成された、管軸に垂直な断面形状が矩形状の扁平な筒状の発光管51を具えており、この発光管51の互いに対向する一対の幅広の扁平壁部52,53の外面の各々に、一対の外部電極58が設けられていると共に、発光管51の放電空間内に、例えばキセノンガスや、アルゴンと塩素とを混合した発光ガスが封入されて構成されている。そして、発光管51の少なくとも一方の端部には、発光管51の当該端部の外周を覆うよう設けられた、発光管51における外部電極58が設けられる扁平壁部52,53の各々にそれぞれ対向する幅広の一対の扁平壁部対向壁部61,62および発光管51における扁平壁部52,53の各々を連結する側壁部54,55の各々に対向する一対の側壁部対向壁部63,64により形成される矩形筒状のベース60が設けられており、このベース60は、例えば接着剤Cによって発光管51に対して固定されている。このような構成のエキシマランプ50は、例えば特許文献1に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、発光管51の放電空間内に封入された発光ガスによって紫外光が生成されたとき、その紫外光が発光管51の端部から接着剤Cに照射されることとなるため、接着剤Cとしては、通常、紫外光に対する耐性を有する無機接着剤が用いられるが、次に示すような問題がある。
【0006】
具体的には、ベース60を発光管51に固定する方法としては、例えば
図9および
図10に示すように、予め接着剤Cをベース60の内部に充填しておき、ベース60の内部に発光管51の端部を挿入すること(
図9における白抜き矢印は発光管51の挿入方向を示す。)によりベース60を発光管51の当該端部に固定する方法があるが、このような方法であると、発光管51の管軸に垂直な断面形状が矩形状であることから、発光管51の外周面とベース60の内周面との間の間隙における所望の位置に接着剤Cが充填されるよう調整することが困難であり、また、ベース60の、発光管51の端部が挿入される発光管挿入用開口66の開口端面における内端縁と発光管51の外周面との間の間隙から接着剤Cが溢れ出てしまうこと、あるいは、接着剤Cの焼成処理時にベース60の外部に吹き出てしまうことがある、という問題がある。
【0007】
また、例えば、
図12に示すように、発光管51の端部をベース60の内部に挿入配置した後、発光管51の外周面とベース60の内周面との間の間隙に、発光管挿入用開口66からニードル30によって接着剤Cを注入することによりベース60を発光管51の当該端部に固定する方法があるが、このような方法であると、無機接着剤は粘度が高いものであり、また、発光管51の外周面とベース60の内周面との間に形成される間隙の大きさが比較的小さく設定されるため、当該間隙における発光管51の管軸方向外端側の空間に接着剤Cを注入することが困難であり、十分な量の接着剤Cが注入される前に、ベース60の外部に溢れ出てしまう、という問題がある。なお、接着剤Cの粘度は水などの含有量により調整することができるが、水の含有量が多いと、接着剤Cを乾燥させて硬化させる焼成処理を行なったときに、接着剤が硬化されたセメント部の内部にポーラスが多数存在することとなり、接着強度が低下してしまい、ベース60と発光管51との固定という接着剤Cの本来の機能を損なってしまう。また、発光管51の外周面とベース60の内周面との間の間隙の大きさを大きくすると、ベース60が大型化してしまうと共に接着剤Cが発光管挿入用開口66から溢れ出やすくなる。
【0008】
このように接着剤Cがベース60の外部に溢れ出てしまうと、発光管51の外面に設けられた外部電極58に接着剤Cが付着してしまうことにより接着剤Cに含まれる微量のアルカリ金属のイオンの影響によって外部電極58が劣化すること、あるいは、溢れ出た接着剤が硬化されたセメント部と外部電極58との間に十分な離間距離を確保することができなくなることなどにより、絶縁不具合(放電しやすくなる)が発生するという問題が生じる。
【0009】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、発光管の少なくとも一方の端部にベースが接着剤によって固定されてなる外部電極型のエキシマランプにおいて、所定量の接着剤を適正な位置に注入することができてベースと発光管とを確実に固定することがきると共に、接着剤がベースの外部に溢れ出すことによる絶縁不具合が生ずることを回避することのできるエキシマランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のエキシマランプは、管軸に垂直な断面形状が矩形状の扁平な筒状の発光管と、当該発光管における一対の幅広の扁平壁部の各々の外面に設けられた一対の外部電極と、当該発光管の少なくとも一方の端部に設けられた、一対の扁平壁部対向壁部および前記発光管の扁平壁部の各々を連結する側壁部に対向する一対の側壁部対向壁部により形成される矩形筒状のベースとを具え、当該ベースが、前記発光管の端部が
前記ベースに形成された発光管挿入用開口から内部に挿入された状態において当該ベースの内周面と当該発光管の外周面との間の間隙に注入された接着剤によって、当該発光管に固定されてなるエキシマランプにおいて、
前記ベースには、前記側壁部対向壁部の内面に、接着剤が一旦溜められる接着剤溜まり用凹所が形成されていると共に、接着剤注入用貫通孔が一方の開口が一方の扁平壁部対向壁部の外面に開口すると共に他方の開口が当該一方の扁平壁部対向壁部の内面における前記接着剤溜まり用凹所を臨む位置に開口するよう形成されており、当該接着剤注入用貫通孔の孔径の大きさが前記ベースの側壁部対向壁部と前記発光管の側壁部との間の間隙の幅寸法より大き
く、
前記接着剤注入用貫通孔は、当該接着剤注入用貫通孔の中心位置から発光管挿入用開口の開口縁の位置までの管軸方向における長さが、前記ベースの一方の扁平壁部対向壁部の内面と他方の扁平壁部対向壁部の内面との離間距離の大きさより大きくなる位置に形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のエキシマランプにおいては、前記ベースは、前記発光管の端部が挿入される発光管挿入用開口の開口縁の位置が、前記発光管の管軸方向における前記外部電極の外端縁位置より外方側に離隔されて位置されるよう、設けられた構成とされていることが好ましい。
【0012】
また、本発明のエキシマランプにおいては、前記接着剤注入用貫通孔および前記接着剤溜まり用凹所は、前記発光管の管軸方向における外端縁側の位置に形成された構成とされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエキシマランプによれば、ベースの側壁部対向壁部の内面に接着剤が一旦溜められる接着剤溜まり用凹所が形成されていると共に、一方の開口が一方の扁平壁部対向壁部の外面に開口すると共に他方の開口が当該一方の扁平壁部対向壁部の内面における前記接着剤溜まり用凹所を臨む位置に開口する、ベースの側壁部対向壁部と発光管の側壁部との間の間隙の幅寸法より大きい孔径を有する接着剤注入用貫通孔が形成された構成とされていることにより、ベースを発光管に固定するに際して、接着剤を、接着剤注入用貫通孔の接着剤注入用開口および発光管挿入用開口より外部に流出させることなく、発光管の外周面とベースの内周面との間の間隙に容易にかつ効率よく充填することができるので、十分な接着強度を得ることができて発光管の不所望の移動が生ずることを防止することができると共に、接着剤がベースの外部に溢れ出すことによる絶縁不具合が生ずることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のエキシマランプの一例における構成の概略を一部を拡大して示す平面図である。
【
図3】ベースを発光管に固定する工程において、発光管の端部がベースの内部に挿入されて各々独立に適宜の固定部材によって保持固定された状態を示す、発光管の管軸に垂直な断面図である。
【
図4】ベースを発光管に固定する工程において、ベースの側壁部対向壁部の内面と発光管の側壁部の外面との間の間隙に対して接着剤の注入している状態を示す、発光管の管軸に垂直な断面図である。
【
図5】ベースを発光管に固定する工程において、ベースの側壁部対向壁部の内面と発光管の側壁部の外面との間の間隙に対する接着剤の注入を開始してから所定時間の時間が経過した状態を示す、発光管の管軸に垂直な断面図である。
【
図6】ベースを発光管に固定する工程において、接着剤の仮乾燥処理が行われた後の状態を示す、発光管の管軸に垂直な断面図である。
【
図7】ベースを発光管に固定する工程において、接着剤を乾燥させる焼成処理が行われている状態を示す、発光管の管軸に垂直な断面図である。
【
図8】一方の扁平壁部対向壁部に単に接着剤注入用貫通孔を形成したベースを接着剤によって発光管に固定する場合における、ベースの側壁部対向壁部の内面と発光管の側壁部の外面との間の間隙に対して接着剤を注入している状態を示す、発光管の管軸に垂直な断面図である。
【
図9】従来におけるエキシマランプの一例における構成の概略を一部を拡大して示す平面図である。
【
図10】
図9に示すエキシマランプの側面図である。
【
図12】接着剤による発光管とベースとの固定方法の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明のエキシマランプの一例における構成の概略を一部を拡大して示す平面図、
図2は、
図1におけるA−A線断面図である。以下においては、便宜上、発光管の互いに対向する一対の幅広の扁平壁部に垂直な方向(
図2における上下方向)を「上下方向」、発光管の一対の幅広の扁平壁部を連結する互いに対向する一対の側壁部に垂直な方向(
図2における左右方向)を「左右方向」と定義するが、使用形態等を限定するものではない。
このエキシマランプ10は、両端が気密に封止されて内部に放電空間が形成された、管軸に垂直な断面形状が矩形状の筒状の発光管11を具えている。この例における発光管11は、互いに対向する一対の幅広の扁平壁部(以下、「上壁部」および「下壁部」という。)12,13、および、上壁部12および下壁部13を連結する互いに対向する一対の側壁部14,15により形成される扁平な矩形とされている。
発光管11の上壁部12および下壁部13の各々の外面には、各々網状の一対の外部電極18が発光管11の管軸に沿って延びるよう設けられており、発光管11の放電空間の内部には、発光ガスが封入されている。
【0016】
発光管11を構成する材料としては、真空紫外線を良好に透過するもの、具体的には、合成石英ガラスなどのシリカガラス、サファイアガラスなどを用いることができる。
外部電極18を構成する材料としては、アルミニウム、ニッケル、金などの金属材料を用いることができる。外部電極18は、例えば、金と低融点ガラスとを混合した導電性ペーストを発光管11の外面に塗布して焼成することによって形成することができる。
発光管11の放電空間内に封入される発光ガスとしては、真空紫外線を放射するエキシマを生成し得るもの、具体的には、キセノン、アルゴン、クリプトン等の希ガス、または、希ガスと、臭素、塩素、ヨウ素、フッ素等のハロゲンガスとを混合した混合ガスなどを用いることができる。エキシマ用ガスの具体的な例を放射される紫外線の波長と共に示すと、キセノンガスでは172nm、アルゴンとヨウ素との混合ガスでは191nm、アルゴンとフッ素との混合ガスでは193nmである。また、発光ガスの封入圧は、例えば10〜100kPaである。
【0017】
上記のエキシマランプ10においては、発光管11の少なくとも一方の端部に、発光管11の上壁部12および下壁部13にそれぞれ対向する幅広の一対の平板状の扁平壁部対向壁部(以下、「上壁部対向壁部」および「下壁部対向壁部」という。)21,22と、当該上壁部対向壁部21および下壁部対向壁部22の各々の内面に位置されて上壁部対向壁部21および下壁部対向壁部22の両者を連結する互いに対向する一対の平板状の側壁部対向壁部23,24により形成される矩形筒状の扁平なベース20が、発光管11の端部の外周を覆うよう、設けられている。
具体的には、ベース20は、発光管11の端部が挿入される発光管挿入用開口26の開口縁の位置が発光管11の長手方向における外部電極18の外端縁位置から外方側に離隔されて位置されるよう発光管11の端部が内部に挿入された状態において、ベース20の内周面と発光管11の外周面との間の間隙に注入された接着剤Cによって、発光管11に固定されている。このような構成とされていることにより、接着剤Cがベース20の外部に溢れ出すことによる絶縁不具合が生ずることを確実に回避することができる。ここに、発光管11の上壁部12の外面とベース20の上壁部対向壁部21の内面との間の間隙(以下、「上方間隙」という。)S1、発光管11の下壁部13の外面とベース20の下壁部対向壁部22の内面との間の間隙(以下、「下方間隙」という。)S2、および、発光管11の側壁部14,15の外面とベース20の側壁部対向壁部23,24の内面との間の間隙(以下、「側方間隙」という。)S3,S4は、いずれも、例えば同一の大きさの幅寸法であって、例えば1〜2mmである。
【0018】
接着剤Cとしては、例えばシリカ、アルミナを主成分とし、粘度が例えば50000mPa・s程度の無機接着剤を用いることができる。
【0019】
而して、本発明のエキシマランプにおいては、ベースの側壁部対向壁部の内面に、接着剤が一旦溜められる接着剤溜まり用凹所が形成されていると共に、接着剤注入用開口とされる一方の開口が一方の扁平壁部対向壁部の上面に開口すると共に他方の開口が当該一方の扁平壁部対向壁部の内面における前記接着剤溜まり用凹所を臨む位置に開口する接着剤注入用貫通孔が形成されている。
【0020】
この例においては、ベース20の側壁部対向壁部23,24の内面における上壁部対向壁部21側の位置に、上方および内方に開口して上壁部対向壁部21に垂直な方向に延びる接着剤溜まり用凹所28が形成されていると共に、ベース20の上壁部対向壁部21における側壁部対向壁部23,24の最内端縁が位置される箇所において、接着剤Cを注入するための接着剤注入用開口27Aとされる一方の開口が上壁部対向壁部21の外面に開口すると共に他方の開口が上壁部対向壁部21の内面における側壁部対向壁部23,24の接着剤溜まり用凹所28の直上の位置に開口する接着剤注入用貫通孔27が上壁部対向壁部21の外面に垂直な方向に延びるよう、接着剤溜まり用凹所28に連続して形成されている。側壁部対向壁部23,24に形成される接着剤溜まり用凹所28は、上壁部対向壁部21に形成された接着剤注入用貫通孔27により形成される空間を含む円柱状空間の一部を構成する形状の空間を形成している。
接着剤注入用貫通孔27は、発光管11の管軸方向における外端縁側の位置、より具体的には、接着剤注入用貫通孔27の中心位置から発光管挿入用開口26の開口縁の位置までの管軸方向における長さが、ベース20の上壁部対向壁部21の内面と下壁部対向壁部22の内面との離間距離の大きさより大きくなる位置に形成されていることが好ましい。このような構成とされていることにより、接着剤注入用貫通孔27と発光管挿入用開口26との距離を大きくとることができるので、接着剤注入用貫通孔27から注入された接着剤Cが発光管挿入用開口26の開口端面における内端縁と発光管11の外周面との間の隙間からベース20の外部に流出することを確実に防止することができる。
【0021】
接着剤注入用貫通孔27は、側方間隙S3(S4)の幅寸法Gより大きい孔径Dを有する(
図3参照。)。ここに、接着剤注入用貫通孔27の孔径Dの、側方間隙S3(S4)の幅寸法Gに対する比D/Gは、例えば2〜5であることが好ましい。
また、ベース20の側壁部対向壁部23(24)に形成される接着剤溜まり用凹所28における側壁部対向壁部23(24)の肉厚方向の寸法tの、側方間隙S3(S4)の幅寸法Gに対する比t/Gは、例えば0.5〜3であることが好ましい。
このような構成とされていることにより、所期の効果を確実に得ることができる。
【0022】
以下、上記のエキシマランプ10の製造工程における、発光管11に対するベース20の固定方法について説明する。
先ず、
図3に示すように、上壁部12および下壁部13の各々の外面に外部電極18が設けられると共に内部に発光ガスが封入された発光管11の端部を上記構成のベース20の内部に挿入し、発光管11の外周面とベース20の内周面との間に全周にわたって実質的に均一な幅寸法の間隙が形成されると共に発光管11の外端面とベース20の底壁部25の内面との間に間隙が形成されるよう位置決めされた状態で、発光管11およびベース20をそれぞれ独立して適宜の固定部材(図示せず)で保持固定する。このとき、ベース20は、上壁部対向壁部21における接着剤注入用貫通孔27の接着剤注入用開口27Aが上方に向かって開口するよう発光管11の管軸が水平に延びる姿勢とされていることが好ましい。これにより、接着剤Cの注入作業が容易になる。
【0023】
次いで、
図4に示すように、ニードル30をその先端部がベース20の側壁部対向壁部23における接着剤溜まり用凹所28の底面近傍(発光管11の上壁部12の外面より下方位置)に位置されるようベース20の上壁部対向壁部21における接着剤注入用貫通孔27の中央に挿入して接着剤Cを注入する。このとき、接着剤Cは、一時的に接着剤溜まり用凹所28内の空間に溜まることとなるが、後述するように、接着剤溜まり用凹所28内の接着剤Cは一定量が側方間隙S3内に円滑に進入するので、接着剤溜まり用凹所28内の空間に溜まる接着剤Cの量は、実質的に一定の量である。
そして、接着剤溜まり用凹所28内に溜まる接着剤Cの量が増加し始めた時点で、
図5に示すように、ニードル30を上方に引き抜きながら接着剤Cが上壁部対向壁部21における接着剤注入用貫通孔27の開口縁付近の位置まで充填されるよう、接着剤Cを注入し続ける。
【0024】
接着剤Cをベース20の上壁部対向壁部21における接着剤注入用貫通孔27の開口縁付近の位置まで充填されるよう注入した後、所定時間の時間の間放置することにより接着剤Cを仮乾燥させ、これにより、
図6に示すように、接着剤注入用開口27Aを介して外部に露出される接着剤Cの表面位置が接着剤注入用貫通孔27の開口縁の位置より下方に低下するその低下量hに応じて接着剤Cを再度注入し、接着剤Cの注入量の調整を行う。
その後、
図7に示すように、ベース20が装着された発光管11の端部を例えば200℃の炉40内に入れて焼成処理を行うことにより接着剤C中の不要な水分を蒸発させて硬化させ、これにより、ベース20が発光管11に固定される。
以上のような接着剤Cの注入プロセスは、例えば2つの接着剤注入用貫通孔27の各々より同時に行われる。
【0025】
接着剤Cの注入プロセスのプロセス条件の一例を示すと、例えば、ベース20の内部空間における上下方向の寸法(上壁部対向壁部21の内面と下壁部対向壁部22の内面との間の距離)が18mm、左右方向の寸法(両側壁部対向壁部23,24の内面間の距離)が46mm、ベース20の深さ(発光管挿入用開口26の開口端面と底壁部25の内面との距離)が30mm、発光管11の上下方向の最大寸法が15mm(上方間隙S1および下方間隙S2の幅寸法が1〜2mm)、発光管11の左右方向の寸法が43mm(側方間隙S3,S4の幅寸法が1〜2mm)、接着剤注入用貫通孔27の孔径がφ5mm、長さが4mm、接着剤溜まり用凹所28の側壁部対向壁部の肉厚方向の寸法(左右方向の寸法)が2mm、上下方向の寸法が8mm、接着剤Cとして粘度が50000mPa・s程度である無機接着剤が用いられる場合には、ニードル30の先端開口径がφ1.4〜φ1.5mm、ニードル30の先端外径がφ1.9〜φ2mm、接着剤Cの注入量(乾燥後重量)が一の接着剤注入用貫通孔27につき約1g(合計約2g)、接着剤Cの注入圧力が、1gの接着剤Cが15secの時間で注入される程度の大きさである。
【0026】
而して、上記構成のエキシマランプ10によれば、ベース20の側壁部対向壁部23,24の内面における上壁部対向壁部21側の位置に、上壁部対向壁部21に垂直な方向に延びる接着剤溜まり用凹所28が形成されていると共に、ベース20の上壁部対向壁部21における側壁部対向壁部23,24の最内端縁が位置される箇所において、接着剤注入用開口27Aとされる一方の開口が上壁部対向壁部21の外面に開口すると共に他方の開口が接着剤溜まり用凹所28の直上の位置に開口する、側方間隙S3,S4の幅寸法Gより大きい孔径Dを有する接着剤注入用貫通孔27が上壁部対向壁部21の外面に垂直な方向に延びるよう接着剤溜まり用凹所28に連続して形成された構成とされていることにより、ベース20を発光管11に固定するに際して、接着剤Cをベース20の発光管挿入用開口26および接着剤注入用開口27Aより外部に流出させることなく、適正な量の接着剤Cを適正な位置に容易にかつ効率よく充填することができる。
【0027】
すなわち、例えば
図8に示すように、単に、接着剤注入用貫通孔27をベース20の上壁部対向壁部21に形成した構成のものであれば、ニードル30より注入される接着剤Cは、側方間隙S3,S4内に進入するものの、接着剤C自体の粘性および側方間隙S3,S4の幅寸法Gの大きさの影響により、接着剤Cは側方間隙S3,S4におけるベース20の下壁部対向壁部22側の空間に到達することなく側方間隙S3,S4におけるベース20の上壁部対向壁部21側の空間に滞留し始め、その後、一部の接着剤Cは上方間隙S1内に進入するものの、接着剤注入用貫通孔27内に充填される接着剤Cの量が徐々に増加して外部に溢れ出てしまうこととなる。これは、接着剤Cの注入圧力および注入量を増大させた場合であっても、接着剤Cを下方間隙S2内および側方間隙S3,S4におけるベース20の下壁部対向壁部22側の空間に充填されるよう注入することは困難であり、一層、接着剤注入用開口27Aおよび発光管挿入用開口26より外部に溢れ出やすくなる。このように、接着剤Cがベース20の外部に溢れ出して接着剤が外部電極18に付着すること、もしくは、溢れ出した接着剤Cが硬化されたセメント部と外部電極18との十分な離間距離を確保することができなくなることにより、絶縁不具合が発生する。
【0028】
然るに、ベース20の上壁部対向壁部21に形成された接着剤注入用貫通孔27に連続する接着剤溜まり用凹所28がベース20の側壁部対向壁部23,24に形成された構成とされていることにより、上記構成のエキシマランプ10によれば、ベース20を発光管11に固定するに際して、ニードル30より単位時間当たり一定の量で注入される接着剤Cは、側壁部対向壁部23,24における接着剤溜まり用凹所28内の空間に一旦溜まることとなり、接着剤溜まり用凹所28内の接着剤Cは、一定量が接着剤Cの自重の作用およびニードル30より押し出される接着剤Cの注入圧力の作用により、側方間隙S3,S4内を下方に向かって進行し、発光管11の外端面とベース20の底壁25の内面との間の間隙に進入しながら、下方間隙S2に到達する。そして、接着剤Cが下方間隙S2内および側方間隙S3,S4内に下方側から徐々に充填され、その後、接着剤溜まり用凹所28内から側方間隙S3,S4内に進行する接着剤Cの量が減少して接着剤溜まり用凹所28内に溜まる接着剤Cの量が増加すると、接着剤Cが上方間隙S1内に進行すると共に接着剤注入用貫通孔27内の空間内に充填される。
このように、上記構成のエキシマランプ10によれば、ベース20を発光管11に固定するに際して、接着剤Cを、接着剤注入用開口27Aおよび発光管挿入用開口26より外部に流出させることなく、発光管11の外周面とベース20の内周面との間の間隙に容易にかつ効率よく充填することができるので、十分な接着強度を得ることができて発光管11の不所望の移動が生ずることを防止することができると共に、接着剤Cがベース20の外部に溢れ出すことによる絶縁不具合が生ずることを回避することができる。
【0029】
また、ベース20を発光管11に固定するに際して、発光管11を管軸が水平に延びる姿勢で設置することができるので、ベース20が発光管11に対して適正に位置決めされた状態を確実に得ることができ、この状態において、接着剤Cの注入作業を行うことにより、上記効果を一層確実に得ることができる。
【0030】
さらにまた、ニードル30を、発光管11の外周面とベース20の内周面との間の間隙内に挿入せずに、ベース20の側壁部対向壁部23,24に形成された接着剤溜まり用凹所28内に位置させればよいので、接着剤Cを下方間隙S2にまで進入させるために発光管11の外周面とベース20の内周面との間の間隙の大きさを大きくする設定する必要がなく、また、ニードル30より接着剤溜まり用凹所28内に注入された接着剤Cは、発光管挿入用開口26が位置される方向ではなく、側方間隙S3,S4内を下方に向かって進行するので、ベース20の奥行き寸法(発光管挿入方向の長さ寸法)を小さくすることができ、従って、ベース20の小型化を図ることができてエキシマランプ10自体の小型化を図ることができる。
また、ニードル30として径の大きなものを利用できるので、この点においても、接着剤Cの注入を容易に行うことができる。
【0031】
さらにまた、ニードル30より接着剤溜まり用凹所28内に注入される接着剤Cが発光管11の側壁部14,15の外面に沿って周方向に発光管挿入用開口26側に向かって進入することをベース20の側壁部対向壁部23,24における接着剤溜まり用凹所28を区画する周壁によって規制して接着剤Cを側方間隙S3,S4内を下方に向かって進入させることができるので、接着剤Cが発光管挿入用開口26より外部に流出することを確実に防止することができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、ベースは、発光管の一方の端部だけに設けられていても、両端部の各々に設けられていてもよい。
また、接着剤注入用貫通孔は、一方の開口が一方の扁平壁部対向壁部の外面に開口し、他方の開口が一方の扁平壁部対向壁部の内面における側壁部対向壁部の接着剤溜まり用凹所を臨む位置に開口するよう形成されていれば、一方の扁平壁部対向壁部に垂直な方向に対して傾斜して延びるよう形成されていてもよい。
さらにまた、ベースの側壁部対向壁部に形成される接着剤溜まり用凹所は、底壁面が内方に向かうに従って下方に傾斜するテーパ面とされていてもよい。
さらにまた、接着剤注入用貫通孔およびこれに連続する接着剤溜まり用凹所の数および形成位置は、上記の実施例のものに限定されない。