特許第5861433号(P5861433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5861433
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】液圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20160202BHJP
   B60T 8/36 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   F16K31/06 305A
   B60T8/36
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-273008(P2011-273008)
(22)【出願日】2011年12月14日
(65)【公開番号】特開2013-124698(P2013-124698A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100084858
【弁理士】
【氏名又は名称】東尾 正博
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】小河 真仁
(72)【発明者】
【氏名】山村 鮎美
(72)【発明者】
【氏名】土方 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】矢内 浩二
【審査官】 関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−29110(JP,A)
【文献】 特開2011−185313(JP,A)
【文献】 特開2000−179734(JP,A)
【文献】 実開平7−32268(JP,U)
【文献】 米国特許第6202699(US,B1)
【文献】 特開2007−131233(JP,A)
【文献】 特開2007−153305(JP,A)
【文献】 特開平8−135830(JP,A)
【文献】 特開平8−145224(JP,A)
【文献】 特開2005−214412(JP,A)
【文献】 特表2010−519486(JP,A)
【文献】 特開平6−341547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
F16K 27/00
B60T 8/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧ブロックに液圧制御用の電磁弁を組み付けた液圧ユニットと、樹脂製ケースの内部に電磁弁の駆動制御回路を有する回路基板を収納した電子制御ユニットを組み合わせて構成される液圧制御装置であって、前記液圧ユニットの前記液圧ブロックに固定した電磁弁の本体にソレノイドコイルを外嵌し、
前記樹脂製ケースに、基端がその樹脂製ケースに連なり、自由端となる先端が前記回路基板と平行方向に延び出した弾性変形可能なコイル押さえアームを一体成型して設け、
前記ソレノイドコイルを、弾性変形により先端側が前記回路基板の厚み方向に変位する前記コイル押さえアームで前記液圧ブロックに弾性的に押し付けて固定した液圧制御装置。
【請求項2】
前記コイル押えアームの先端を、コイル中心を越えてケースのアーム連設点からの離反量が大きくなる方向に延びださせた請求項1に記載の液圧制御装置。
【請求項3】
前記ソレノイドコイルに一体化されるヨークを、コイルの両端に対面させる端壁と両端が前記端壁の一辺に連なった中間壁とからなる側面視コ字状のヨークにし、前記コイル押えアームを前記ヨークの中間壁側に偏らせて、コイル中心よりもヨークの中間壁の近傍において前記コイル押えアームの先端部で前記ヨークの端壁を押圧するようにした請求項1又は2に記載の液圧制御装置。
【請求項4】
前記コイル押えアームの先端に突起を有し、その突起で前記ソレノイドコイルを押圧するようにした請求項1〜のいずれかに記載の液圧制御装置。
【請求項5】
前記コイル押えアームを、コイル端を直視した図において前記ソレノイドコイルの外周に沿う方向に彎曲させた請求項1〜のいずれかに記載の液圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液圧ユニットと電子制御ユニットを組み合わせて構成される液圧制御装置、詳しくは、液圧ユニットの液圧ブロック(ハウジング)に固定される電磁弁の本体にソレノイドコイルを外嵌し、そのソレノイドコイルを、弾性部材の力で固定するタイプの液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ブレーキに用いる液圧制御装置として、例えば、下記特許文献1、2に示されるようなものがある。
【0003】
これ等の液圧制御装置は、液圧制御用の電磁弁、ポンプ、ポンプ駆動用のモータなどを液圧ブロックに組み付けた液圧ユニットと、電磁弁やモータ用の駆動制御回路を有する回路基板を樹脂製ケースの内部に収納した電子制御ユニットとを組み合わせて構成されている。
【0004】
電磁弁は、本体を液圧ユニットの液圧ブロックに固定し、その本体の液圧ブロックからの突出部にソレノイドコイルを外嵌し、そのソレノイドコイル(コイルと一体のヨーク)を弾性支持部材で押圧してヨークやボビンとともに液圧ブロックに固定している。
【0005】
上記弾性支持部材として、特許文献1は、曲げ加工した板ばねを用いており、また、特許文献2は、切り起し舌片を有するカップ状ヨークにコイルを収納し、前記舌片をばねとして働かせてそのばねの力でソレノイドコイルをヨークと一緒に液圧ユニットの液圧ブロックと電子制御ユニットの樹脂製ケースとの間に挟み込んでいる。
【0006】
このほかに、電子制御ユニットの樹脂製ケースとソレノイドコイルとの間に弾性変形するゴムボールやシリコン材などを挟んでそれらを弾性支持部材として利用するものや、コイルをコイルケースに挿入し、そのコイルケースに板ばねをリベットで取り付けてその板ばねでコイルを押圧するものなども知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−360864号公報
【特許文献2】特開2006−342863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1,2に記載されたソレノイドコイルの固定構造や、弾性支持部材としてゴムボールなどを利用する固定構造は、弾性支持部材の収容スペースを確保する必要があり、電子制御ユニットのケースが大きくなって液圧制御装置の更なる体格縮小が図り難い。加えて、部品点数が増加する。
【0009】
また、特許文献2の構造は、弾性支持部材として利用する舌片の切り起し工程を必要とする。さらに、ソレノイドコイルをコイルケースに挿入し、コイルケースに固定した板ばねでコイルを押圧して固定するものは、板ばねの取り付け工程などが必要になる。また、これ等も部品数の増加が伴い、コスト低減の面でも問題がある。
【0010】
この発明は、液圧ユニットの液圧ブロックに固定された電磁弁の本体にソレノイドコイルを外嵌し、そのソレノイドコイルを弾性部材で押圧して固定するタイプの液圧制御装置を改善の対象にして、ソレノイドコイルの固定を部品点数の増加や装置の体格増を招かずに行えるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、この発明においては、液圧ブロックに液圧制御用の電磁弁を組み付けた液圧ユニットと、樹脂製ケースの内部に電磁弁の駆動制御回路を有する回路基板を収納した電子制御ユニットを組み合わせて構成される液圧制御装置を以下の通りに構成した。
【0012】
即ち、前記液圧ユニットの液圧ブロックに固定された電磁弁の本体にソレノイドコイル
を外嵌し、前記樹脂製ケースに、基端がその樹脂製ケースに連なり、自由端となる先端が前記回路基板と平行方向に延び出した弾性変形可能なコイル押さえアームを一体成型して設け、前記ソレノイドコイルを、弾性変形により先端側が前記回路基板の厚み方向に変位する前記コイル押さえアームで前記液圧ブロックに弾性的に押し付けて固定した
【0013】
前記コイル押えアームの厚みや幅は、徐々に減少させてもよいし、段階的に減少させてもよい。また、このコイル押えアームは、先端を、コイル中心(ソレノイドコイルの中心)を越えてケースのアーム連設点からの離反量が大きくなる方向に延びださせたものが好ましい。
【0014】
また、前記ソレノイドコイルに一体化されるヨークを、コイルの両端に対面させる端壁と両端が前記2つの端壁の一辺に連なった中間壁とからなる側面視コ字状のヨークにし、コイル押えアームを前記ヨークの中間壁側に偏らせて、コイル中心よりもヨークの中間壁近傍においてコイル押えアームの先端部でヨーク端壁を押圧するのも好ましい。
【0015】
さらに、コイル押えアームは、先端に突起を有し、その突起で押圧を行うものが好ましく、そのコイル押えアームを、コイル端を直視した図においてソレノイドコイルの外周に沿う方向に彎曲させるのも好ましい。
【0016】
そのコイル押えアームは、1コイル当たりに少なくとも1本設ける。1コイル当たりのアーム設置数が1本でも、コイル固定の目的は達成されるが、スペース面で問題がなければ1コイル当たりに複数本設けてもよい。
【発明の効果】
【0017】
この発明の液圧制御装置は、電子制御ユニットの樹脂製ケースにコイル押えアームを一体成型して設けてそのコイル押えアームでコイルを押圧する。従って、曲げ加工やリベット止めした板ばねやゴムボールなどの弾性支持部材を別途設ける必要がなく、弾性支持部材をケースや電磁弁のヨークなどに固定する作業も不要となる。
【0018】
これにより、部品数の削減、装置の構造の簡素化、組み付けの工数削減が図れるようになる。コイル押えアームは、厚みのさほど大きくない板状のものでよいので、設置スペースの増加も殆ど無く、ケースの小型化も実現できる。
【0019】
さらに、コイル押えアームの厚み、幅、もしくはその両方をアームの根元側から先端側に向かって漸減させたので、コイル押えアームの弾性変形能が高まってそのコイル押えアームの耐力が向上する。その耐力の向上は、押圧の安定性向上やコイル押えアームの寿命向上などにつながる。
【0020】
また、コイル押えアームの先端に突起を設けてその突起で押圧を行うものは、押圧点が変化せず、固定の安定性がより高まる。
【0021】
コイル押えアームの先端をソレノイドコイルの中心を越えて延びださせものや、コイル端を直視した図においてそのアームをコイルの外周に沿う方向に彎曲させたものも、適正箇所で押圧を行なって押圧固定の安定性をより高めることができる。
【0022】
このほか、側面視コ字状のヨークを採用してそのヨークの中間壁側に偏った位置でヨーク端壁をコイル押えアームの先端で押圧するものは、ソレノイドコイルの重心に近い位置(この形態のソレノイドコイルは重心がヨークの中間壁がある側に偏る)を押圧することになるため、固定の安定性が高く、車両振動などによるソレノイドコイルのガタツキの抑制効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】この発明の液圧制御装置の一例を示す部分破断側面図
図2】コイル押えアームによるソレノイドコイルの押圧状態を図1の矢視方向にみて示す図
図3】コイル押えアームによるソレノイドコイルの押圧状態を示す斜視図
図4】コイル押えアームとコイル押圧状態の他の例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面の図1図4に基づいて、この発明の液圧制御装置の実施の形態を説明する。図1は、液圧制御装置の一例の概要を表している。この液圧制御装置1は、液圧ユニット2と電子制御ユニット3を組み合わせてなる。
【0025】
液圧ユニット2は、液圧ブロック(ハウジング)4にポンプ(図示せず)と液圧制御用の電磁弁5の本体5aを組み付け、さらに、液圧ブロック4の一面にポンプ駆動用のモータ6を装着して構成されている。液圧ブロック4の内部には、必要に応じて圧力センサやダンパ、低圧リザーバなども組み込まれる。
【0026】
電磁弁の本体5aは、液圧ブロックの外部に突出しており、その突出部の外周にソレノイドコイル5bが外嵌される。ソレノイドコイル5bは、ボビン(図示せず)に巻いたコイルとヨーク7(図2図3参照)を一体的に組み合わせたものが採用されている。5cはソレノイドコイル5bを電源回路に接続する端子である。
【0027】
ヨーク7は、図3に示すように、コイルの両端に対面させる端壁7a,7bと、両端が前記2つの端壁の一辺に連なった中間壁7cとからなる側面視コ字状のものが用いられている。
【0028】
電子制御ユニット3は、樹脂製ケース8の内部に電磁弁の駆動制御回路(図示せず)を有する回路基板9を収納して構成されている。
【0029】
樹脂製ケース8は、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)を材料に用いたものであって、このケースが液圧ブロック4にボルトなどを用いて締結される。この樹脂製ケース8にコイル押えアーム10が一体成型して設けられている。
【0030】
例示の液圧制御ユニットにおいては、そのコイル押えアーム10を、樹脂製ケース8の側壁8aに連ならせて設けている。コイル押えアーム10の基端が側壁8aに連なり、そのアームの先端(自由端)が側壁8aからの離反量が大きくなる方向に延びだしている。
【0031】
そのコイル押えアーム10は、先端にコイル側に突出した突起10aを有しており、その突起をヨーク7に当接させてコイルを押圧する。そのときの押圧力は、樹脂製ケース8を液圧ブロック4に締結した状態においてコイル押えアーム10を厚み方向に撓ませて(弾性変形させて)発生させる。
【0032】
弾性変形したコイル押えアーム10は、自己の弾性によって復元しようとし、その復元力でヨーク7が液圧ブロック4に押し付けられて固定される。
【0033】
なお、例示のコイル押えアーム10は、図2に示すように、幅を先端側に向って減少させ、さらに、図3に示すように、先端側の厚みを根元側に比べて薄くしており、撓み易くなっている。
【0034】
また、先端側を、コイル中心Oを越えてケースの側壁8aからの離反量が大きくなる方向に延びださせ、なおかつ、コイル端を直視した図においてほぼ全体をコイルの外周に沿う方向に彎曲させており、これによってアーム長が十分に確保され、コイル押えアーム10が耐力と弾性変形能に優れたものになっている。
【0035】
例示の液圧制御装置は、側面視コ字状のヨーク7を用いたことから、ソレノイドコイル5bの重心がヨークの中間壁7cのある側に偏っている。そこで、コイル押えアーム10を、例えば、図2のようにコイル中心Oを通るその軸線方向に見た状態で、ヨークの中間壁7cのある側に偏らせて配置し、そのコイル押えアーム10の先端でヨーク端壁7aにおけるコイル中心Oよりも中間壁7c近傍を押圧するようにしている。これにより、押圧がソレノイドコイルの重心に近い位置でなされてコイルの固定が安定する。
【0036】
図4は、この発明の液圧制御装置の他の例の要部を示している。このように、コイル押えアーム10は、直線的なアームであってもよいし、その数を複数にしてもよい。また、樹脂製ケースの内部に対向側壁間に掛け渡されるリブが設置される場合には、そのリブからコイル押えアーム10を延びださせてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 液圧制御装置
2 液圧ユニット
3 電子制御ユニット
4 液圧ブロック
5 電磁弁
5a 本体
5b ソレノイドコイル
5c 端子
6 モータ
7 ヨーク
7a,7b 端壁
7c 中間壁
8 樹脂製ケース
8a 側壁
9 回路基板
10 コイル押えアーム
10a 突起
O コイル中心
図1
図2
図3
図4