特許第5861449号(P5861449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5861449
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】障害物警報装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/00 20060101AFI20160202BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20160202BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20160202BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   B60R21/00 628D
   H04N7/18 J
   G08G1/16 C
   B60R21/00 626G
   G06T1/00 330B
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-284006(P2011-284006)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-132976(P2013-132976A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 哲也
(72)【発明者】
【氏名】角屋 明
(72)【発明者】
【氏名】池田 圭吾
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−130646(JP,A)
【文献】 特開2003−212041(JP,A)
【文献】 特開平11−115660(JP,A)
【文献】 特開2001−010428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00
G06T 1/00
G08G 1/16
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後方の情景を撮影した撮影画像を取得する撮影画像取得部と、
前記撮影画像に基づいて注目撮影画像を生成する注目撮影画像生成部と、
前記車両を後方から視認した場合の半透明の自車イメージ画像を生成する自車イメージ画像生成部と、
前記注目撮影画像の外側の外側領域に物体が存在するか否かを判定する物体存在判定部と、
前記外側領域の物体の移動方向を判定する移動方向判定部と、
前記移動方向判定部により前記外側領域の物体が前記注目撮影画像の中央側に移動すると判定された場合に、前記自車イメージ画像を前記注目撮影画像の中央に表示させる表示を行なう明示画像出力部と、
を備え
前記明示画像出力部は、前記物体の移動に合わせて前記自車イメージ画像を前記中央から前記物体が存在する外側領域の側に移動させる表示を行なう障害物警報装置。
【請求項2】
車両の後方の情景を撮影した撮影画像を取得する撮影画像取得部と、
前記撮影画像に基づいて注目撮影画像を生成する注目撮影画像生成部と、
前記車両を後方から視認した場合の半透明の自車イメージ画像を生成する自車イメージ画像生成部と、
前記注目撮影画像の外側の外側領域に物体が存在するか否かを判定する物体存在判定部と、
前記外側領域の物体の移動方向を判定する移動方向判定部と、
前記移動方向判定部により前記外側領域の物体が前記注目撮影画像の中央側に移動すると判定された場合に、前記自車イメージ画像を前記注目撮影画像の中央に表示させる表示を行なう明示画像出力部と、
を備え、
前記明示画像出力部は、前記物体が前記注目撮影画像に対して左右両側から接近する場合には前記自車イメージ画像を拡大して前記中央に表示する害物警報装置。
【請求項3】
車両の後方の情景を撮影した撮影画像を取得する撮影画像取得部と、
前記撮影画像に基づいて注目撮影画像を生成する注目撮影画像生成部と、
前記車両を後方から視認した場合の半透明の自車イメージ画像を生成する自車イメージ画像生成部と、
前記注目撮影画像の外側の外側領域に物体が存在するか否かを判定する物体存在判定部と、
前記外側領域の物体の移動方向を判定する移動方向判定部と、
前記移動方向判定部により前記外側領域の物体が前記注目撮影画像の中央側に移動すると判定された場合に、前記自車イメージ画像を前記注目撮影画像の中央に表示させる表示を行なう明示画像出力部と、
を備え、
前記明示画像出力部は、前記注目撮影画像のうち前記物体が存在する外側領域の側から中央側に向けて、前記注目撮影画像の中央側への前記物体の移動を明示する複数の指標を順次異なる位置に表示させると共に、後に表示する指標と直前に表示した指標とについては後に表示する指標の方を直前に表示した指標よりも大きく表示させる表示も行なう害物警報装置。
【請求項4】
前記明示画像出力部は、前記物体が前記注目撮影画像に対して左右両側から接近する場合には前記自車イメージ画像を拡大して前記中央に表示する請求項に記載の障害物警報装置。
【請求項5】
前記明示画像出力部は、前記注目撮影画像のうち前記物体が存在する外側領域の側から中央側に向けて、前記注目撮影画像の中央側への前記物体の移動を明示する複数の指標を順次異なる位置に表示させると共に、後に表示する指標と直前に表示した指標とについては後に表示する指標の方を直前に表示した指標よりも大きく表示させる表示も行なう請求項1又は2に記載の障害物警報装置。
【請求項6】
前記明示画像出力部は、前記物体が前記注目撮影画像内に進入した場合に前記表示を中止する請求項1からの何れか一項に記載の障害物警報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に接近する障害物の存在を乗員に明示する障害物警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の周囲には運転者の位置から視認できない死角があり、運転者は車両の運転にあたり当該車両の周囲に細心の注意を払う必要がある。特に、車両を後退して駐車させる場合には、駐車自体に苦手意識を持っているユーザも多く、精神的疲労も少なくない。そこで、従来、車両の周囲の障害物を監視する技術が利用されてきた(例えば特許文献1及び2)。
【0003】
特許文献1に記載の車両の障害物警報装置は、横移動障害物検出手段と、横移動方向検出手段と、横移動情報提供手段とを備えて構成される。横移動障害物検出手段は車両前方において進行方向を横切る方向に移動する障害物を検出する。横移動方向検出手段は横移動障害物検出手段により検出された障害物の横移動方向を検出する。横移動情報提供手段は横移動方向検出手段により検出された障害物の横移動方向に関する情報をドライバーに提供する。この際、横移動情報提供手段は表示部に横移動方向検出手段により検出された横移動方向を表わす矢印をディスプレイに表示する。
【0004】
特許文献2に記載の車両周囲監視装置は、撮像手段と、障害物検出手段と、表示手段とを備えて構成される。撮像手段は自車両の一部を含む車両周囲を撮像する。障害物検出手段は車両周囲に位置する障害物を検出し、検出した障害物と自車両との距離を算出する。表示手段は撮像手段によって撮像された撮像画像と障害物検出手段によって算出された距離を示す障害物表示画像とを1つの画面に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−115660号公報
【特許文献2】特開2009−217740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載の技術のように車両の周囲の障害物を検出し、当該障害物を明示する情報(矢印等)を画面表示することで運転者に車両の周囲の障害物の存在を報知することが可能である。しかしながら、車両に搭載されるディスプレイ(表示手段)の画面サイズは大きいものではない。このため、ディスプレイに表示される車両の周囲の状況を示す画像上に矢印等を表示すると、車両の周囲の状況が見難くなったり障害物を把握できなくなったりする可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、車両の周囲の状況を見難くすることなく、車両に接近する障害物の存在を運転者に明示することが可能な障害物警報装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る障害物警報装置の特徴構成は、
車両の後方の情景を撮影した撮影画像を取得する撮影画像取得部と、
前記撮影画像に基づいて注目撮影画像を生成する注目撮影画像生成部と、
前記車両を後方から視認した場合の半透明の自車イメージ画像を生成する自車イメージ画像生成部と、
前記注目撮影画像の外側の外側領域に物体が存在するか否かを判定する物体存在判定部と、
前記外側領域の物体の移動方向を判定する移動方向判定部と、
前記移動方向判定部により前記外側領域の物体が前記注目撮影画像の中央側に移動すると判定された場合に、前記自車イメージ画像を前記注目撮影画像の中央に表示させる表示を行なう明示画像出力部と、
を備えている点にある。
【0009】
このような特徴構成とすれば、車両に備えられるモニタの画面内に物体が映っていなくても、車両に接近する物体が撮影範囲内に入った時点で、車両の周囲の状況を表示しつつ、乗員に車両に接近する物体の存在を明示することができる。このため、モニタの画面サイズが小さい場合でも、車両に接近する物体を見逃すことがなくなる。したがって、車両の周囲の物体を見逃すことなく、車両に接近する物体の存在を乗員に明示することが可能となる。
【0010】
また、前記明示画像出力部は、前記物体の移動に合わせて前記自車イメージ画像を前記中央から前記物体が存在する外側領域の側に移動させる表示を行うと好適である。
【0011】
このような構成とすれば、外側領域から車両の側に物体が接近していること、及び物体が接近してくる方向を、より強力に明示することができる。
【0012】
また、前記明示画像出力部は、前記物体が前記注目撮影画像に対して左右両側から接近する場合には前記自車イメージ画像を拡大して前記中央に表示すると好適である。
【0013】
このような構成とすれば、車両の左右両方向から物体が接近していることを明示することができる。したがって、乗員に適切に注意喚起することが可能となる。
【0014】
また、前記明示画像出力部は、前記注目撮影画像のうち前記物体が存在する外側領域の側から中央側に向けて、前記注目撮影画像の中央側への前記物体の移動を明示する複数の指標を順次異なる位置に表示させると共に、後に表示する指標と直前に表示した指標とについては後に表示する指標の方を直前に表示した指標よりも大きく表示させる表示も行なうと好適である。
【0015】
このような構成とすれば、車両に接近する物体の方向を、車両の乗員により明確に明示することができる。このため、モニタの画面サイズが小さい場合でも、車両に接近する物体を見逃すことがなくなる。
【0016】
また、前記明示画像出力部は、前記物体が前記注目撮影画像内に進入した場合に前記指標及び前記自車イメージ画像の表示を中止すると好適である。
【0017】
このような構成とすれば、車両から物体が遠ざかったことを明示することができる。したがって、必要以上に車両の後方を注視することがないことを乗員に認識させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】障害物警報装置の構成を模式的に示したブロック図である。
図2】障害物警報装置の処理の一例を示した図である。
図3】合成画像の一例を示した図である。
図4】障害物警報装置の処理を模式的に示した図である。
図5】その他の実施形態に係る合成画像を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明に係る障害物警報装置100は、車両に接近する物体がある場合に当該車両の運転者に物体が接近していることを明示する機能を備えている。以下、図面を用いて説明する。
【0020】
図1は、障害物警報装置100の構成を模式的に示したブロック図である。図1に示されるように、障害物警報装置100は、撮影画像取得部11、注目撮影画像生成部12、外側領域生成部13、物体存在判定部14、移動方向判定部15、明示画像出力部16、明示画像格納部17、合成画像生成部18、自車イメージ画像生成部19の各機能部を備えて構成される。各機能部はCPUを中核部材として車両1の運転者に物体7の接近を明示する種々の処理を行うための上述の機能部がハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0021】
撮影画像取得部11は、車両1の後方の情景を撮影した撮影画像Gを取得する。ここで、車両1にはカメラ5が備えられる。本実施形態におけるカメラ5は、CCD(charge coupled device)やCIS(CMOS image sensor)などの撮像素子を内蔵するとともに、撮影した情報を動画情報として出力するデジタルカメラにより構成される。このようなカメラ5は、図2(a)に示されるように、車両1の外側後部に備えられるライセンスプレートの近傍、或いは車両1の外側後部に備えられるエンブレムの近傍等に、車両1の後方に向けてやや俯角を有して配設される。また、カメラ5は広角レンズ(図示せず)を備えて構成される。これにより、車両1の後方を略180度に亘って、車両1の周囲の情景を撮影することができる。このような撮影範囲は、図2(a)の「広視野角」として示される。このカメラ5は、リアルタイムで動画を撮影画像Gとして出力する性能を有する。このような撮影画像Gは、撮影画像取得部11に伝達される。
【0022】
このような撮影画像Gの一例が図2(b)に示される。図2(b)の全幅は、図2(a)の広視野角に対応する。ここで、撮影画像Gは、図2(a)に示されるような車両1から後方を見て左側にいる物体7が、図2(b)に示されるように撮影画像G内の右側にいるように鏡像処理が行われる。これは、モニタ50に車両1の後方の情景を表示する際、車両1の運転者が撮影画像Gに含まれる物体7が車両1の左側にいるのか右側にいるのかを感覚的に理解し易くするためである。
【0023】
図1に戻り、注目撮影画像生成部12は、撮影画像Gに基づいて注目撮影画像を生成する。本実施形態では、撮影画像Gの撮影範囲は広視野角である。このため、注目撮影画像生成部12は、撮影画像Gの中央部分である狭視野領域Nを注目撮影画像として生成する。撮影画像Gは上述の撮影画像取得部11から伝達される。本実施形態では、注目撮影画像は、図2(b)に示される撮影画像Gの横方向の中央部分が相当する。このような狭視野領域Nは、図1(a)の「狭視野角」のような例えば車両1の後方120〜130度程度の領域とすると好適である。また、狭視野領域Nは車両1が後退する際の進行可能範囲に近いので、撮影画像Gのうち特に注目すべき領域であることから「注目撮影画像」と称される。このような注目撮影画像は、後述するモニタ50に表示される表示画像に対応する(図2(c)参照)。なお、本実施形態では、「注目撮影画像」は「狭視野領域」の画像であるとして説明する。
【0024】
外側領域生成部13は、注目撮影画像の外側の外側領域Oを生成する。すなわち、撮影画像Gのうち狭視野領域Nの外側の外側領域Oを生成する。上述のように、撮影画像Gの横方向の中央部分に注目撮影画像生成部12により狭視野領域Nが生成される。外側領域生成部13はこのような狭視野領域Nの横方向の外側に、図2(b)のような外側領域Oを生成する。外側領域生成部13により生成された外側領域Oは、後述する物体存在判定部14に伝達される。
【0025】
物体存在判定部14は、外側領域Oに物体7が存在するか否かを判定する。外側領域Oは、外側領域生成部13から伝達される。物体7が存在するか否かの判定は、例えばパターンマッチング等の公知の画像認識処理を用いて行うことが可能である。もちろん、パターンマッチング以外の処理により、外側領域Oに物体7が存在するか否かを判定することは可能である。物体存在判定部14の判定結果は、後述する移動方向判定部15に伝達される。
【0026】
移動方向判定部15は、外側領域Oの物体7の移動方向を判定する。このような移動方向の判定は、物体存在判定部14により、外側領域Oに物体7が存在すると判定された場合に行われる。特に本実施形態では、移動方向判定部15により、外側領域Oの物体7が狭視野領域Nの側に移動するか否かが判定される。狭視野領域Nの側に移動するとは、車両1の後方において、車両1の幅方向外側から、車両1の真後ろの方向に移動することを示す。このような判定は、例えば現在の撮影画像Gにおける物体7の位置と所定時間前の撮影画像Gにおける物体7の位置とを比較して行うことも可能であるし、オプティカルフローを用いるなどの公知の手法を用いて行うことができる。このような移動方向の判定結果は、後述する明示画像出力部16に伝達される。
【0027】
自車イメージ画像生成部19は、車両1を後方から視認した場合の半透明の自車イメージ画像CIを生成する。自車イメージ画像CIは、車両1を真後ろから視認した場合のイメージ画像である。この自車イメージ画像CIは、後述するように車両1の後方の情景を示す注目撮影画像に重畳して表示される。したがって、自車イメージ画像CIは、自車イメージ画像CIと重複する位置にある車両1の後方の情景が見え難くならないように、所定の透明度を有して生成される。半透明とは、透明度が50%に限定されるものではなく、自車イメージ画像CIと重複する位置にある車両1の後方の情景が少なくとも見えるような透明度である。自車イメージ画像生成部19により生成された自車イメージ画像CIは、明示画像として明示画像格納部17に格納され、後述する明示画像出力部16により読み出される。
【0028】
明示画像出力部16は、移動方向判定部15により外側領域Oの物体7が注目撮影画像の中央側に移動すると判定された場合に、自車イメージ画像CIを注目撮影画像の中央に表示させる表示を行う。上述のように外側領域Oの物体7の移動方向は移動方向判定部15により判定される。したがって、物体7が注目撮影画像の中央側に移動するか否かの判定も移動方向判定部15により行うことが可能である。一方、自車イメージ画像CIは自車イメージ画像生成部19から伝達される。明示画像出力部16は、外側領域Oの物体7が注目撮影画像の中央側に移動すると判定された場合には、注目撮影画像の中央に自車イメージ画像CIを表示する。ここで、自車イメージ画像CIは半透明であるので、当該自車イメージ画像CIと重複する注目撮影画像の部分、すなわち車両1の後方の情景が見えなくなることはない。したがって、車両1の乗員は自車イメージ画像CIが注目撮影画像に重畳して表示されても、車両1の後方の情景が見えなくなることはない。
【0029】
また、明示画像出力部16は、移動方向判定部15により外側領域Oの物体7が注目撮影画像の中央側に移動すると判定された場合に、注目撮影画像のうち物体7が存在する外側領域Oの側から中央側に向けて、注目撮影画像の中央側への物体7の移動を明示する複数の指標Sを順次異なる位置に表示させる。ここで、「注目撮影画像のうち物体7が存在する外側領域Oの側から中央側に向けて」とは、右側の外側領域Oの物体7が存在する場合には、「右側から中央側に向けて」ということを示し、左側の外側領域Oの物体7が存在する場合には、「左側から中央側に向けて」ということを示す。
【0030】
また、明示画像出力部16は、注目撮影画像までの距離に応じて指標Sの数を増加させる。これにより、外側領域Oに存在する物体7が、注目撮影画像の中央側に近づいてきていることを乗員に明示することが可能となる。このような指標Sは、例えば、注目撮影画像(狭視野領域N)の中央側に突出する凸部を有する矢印形状に構成すると好適である。これにより、物体7の移動方向を直感的に認識することが可能となる。更には、この指標Sは、車両1の後方の情景が認識できなくなることを防止するために、所定の透明度を有するように構成することも可能である。このような指標Sは、図2(d)に示されるように明示画像として明示画像格納部17に格納しておくと好適である。
【0031】
ここで、複数の指標Sは、後に表示する指標Sと直前に表示した指標Sとについては後に表示する指標Sの方を直前に表示した指標Sよりも大きく構成される。すなわち、指標Sが複数表示される場合には、最後に重畳された指標Sが最もサイズが大きく、最初に重畳された指標Sが最もサイズが小さくなる。なお、夫々の指標Sは、互いに相似する形状でサイズの大小を設定しても良いし、指標Sの縦又は横の何れか一方の長さを変更してサイズの大小を設定しても良い。このように表示することにより、車両1の乗員に、指標Sのサイズが大きくなるにつれて、物体7が接近していることを直感的に認識させることが可能となる。
【0032】
また、本実施形態に係る明示画像出力部16は、物体7の移動に合わせて自車イメージ画像CIを注目撮影画像の中央から物体7が存在する外側領域Oの側に移動させる表示を行う。上述のように、指標Sは物体7の注目撮影画像の中央側への接近に伴い、数が増加する。これに合わせて、自車イメージ画像CIは物体7が存在する外側領域Oの側に移動される。すなわち、注目撮影画像の中央側に接近する物体7が右側の外側領域Oに存在すると、自車イメージ画像CIは右側の外側領域Oの側に移動され、注目撮影画像の中央側に接近する物体7が左側の外側領域Oに存在すると、自車イメージ画像CIは左側の外側領域Oの側に移動される。この移動は、指標Sが追加されるタイミングに同期して行うと良い。これにより、物体7が車両1に次第に接近していることを明示することが可能となる。
【0033】
明示画像出力部16は、このような表示を行わせる。ここで、本実施形態では、図2(c)に示されるように、自車イメージ画像CI及び指標Sは狭視野領域Nである注目撮影画像に合成してモニタ50に表示される。そこで、合成画像生成部18は、注目撮影画像に自車イメージ画像CI及び指標Sを合成した合成画像を生成する。これにより、図2(c)に示されるような画像が生成される。このように自車イメージ画像CI及び指標Sを表示することにより、車両1の乗員に対して当該車両1に物体7が接近していることを視覚的に明示することができる。
【0034】
明示画像出力部16は、物体7が注目撮影画像内に進入した場合に指標S及び自車イメージ画像CIの表示を中止する。これにより、物体7が注目撮影画像内に進入したので、車両1の乗員に更なる注視を促すことができる。
【0035】
このような自車イメージ画像CI及び指標Sを重畳して表示する一連の画像の一例が、図3及び図4に示される。図3(a)に示されるように、外側領域Oにいる物体7が狭視野領域Nの中央側に移動していることが検出されると、注目撮影画像の中央に自車イメージ画像CIが重畳表示されると共に、注目撮影画像のうち、物体7が存在する外側領域Oの側に指標S(以下「S1」とする)が重畳して表示される。物体7が、更に、注目撮影画像の中央側に移動すると、自車イメージ画像CIを物体7が存在する外側領域Oの側に移動させると共に、先に表示されていた指標S1よりも大きい指標S(以下「S2」とする)が追加して表示される(図3(b))。
【0036】
更に、物体7が、注目撮影画像の中央側に移動すると、自車イメージ画像CIを物体7が存在する外側領域Oの側に移動させると共に、先に表示されていた指標S1、S2よりも大きい指標S(以下「S3」とする)が追加して表示される(図3(c))。物体7が、注目撮影画像に進入すると(図3(d))、適宜、自車イメージ画像CI及び指標Sの表示が中止される(図3(e))。
【0037】
ここで、図3(a)−(e)の表示画面内には、等高線のような線(破線)も付されている。これは、車両1からの等距離の位置を示す等距離線である。このような等距離線を表示画面内に表示することにより、物体7が注目撮影画像内に進入した場合に、車両1から物体7までの距離が認識し易くすることができる。
【0038】
次に、障害物警報装置100が、自車イメージ画像CI及び指標Sを注目撮影画像に重畳表示した合成画像をモニタ50に表示する一連の処理について、図4の模式図を用いて説明する。まず、撮影画像取得部11が、車両1のカメラ5により撮影された撮影画像Gを取得する(ステップ#1)。
【0039】
次に、注目撮影画像生成部12が、取得された撮影画像Gの中央部分(狭視野領域N)を注目撮影画像として生成する(ステップ#2)。一方、外側領域生成部13が、取得された撮影画像Gの横方向両側部分を外側領域Oとして生成する(ステップ#3)。このように生成された外側領域Oに物体7が存在しているか否か、物体存在判定部14により判定される(ステップ#4)。
【0040】
外側領域Oに物体7が存在していると判定されると、移動方向判定部15により当該物体7の移動方向が判定される(ステップ#5)。物体7の移動方向が、外側領域Oから注目撮影画像に対応する狭視野領域Nの側へのものである場合、明示画像出力部16により明示画像が出力される(ステップ#6)。この明示画像は、明示画像格納部17に格納されている明示画像を参照して出力される。
【0041】
合成画像生成部18は、ステップ#2において生成された注目撮影画像に、ステップ#6で出力された明示画像を重畳して合成画像を生成する(ステップ#7)。生成された合成画像は、モニタ50に表示される(ステップ#8)。このように車両1に接近する物体7に応じて、自車イメージ画像CI及び指標Sを注目撮影画像に重畳して表示することにより車両1の乗員に車両1の周囲に物体7が存在することを明示することが可能であると共に、車両1に接近する物体7の方向を明示することが可能となる。したがって、車両1の周囲の状況を把握させることができると共に、障害物が接近していることを明示することが可能となる。
【0042】
このように本発明に係る障害物警報装置100によれば、車両1に備えられるモニタ50の画面内に物体7が映っていなくても、車両1に接近する物体7が撮影範囲内に入った時点で、車両1の周囲の状況を表示しつつ、乗員に車両1に接近する物体7の存在及び方向を明示することができる。このため、モニタ50の画面サイズが小さい場合でも、車両1に接近する物体7を見逃すことがなくなる。したがって、車両1の周囲の物体7を見逃すことなく、車両1に接近する物体7の存在を乗員に明示することが可能となる。
【0043】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、明示画像出力部16は、指標Sの追加に合わせて自車イメージ画像CIを中央から物体7が存在する外側領域Oの側に移動させる表示を行うとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。指標Sが追加された場合であっても、自車イメージ画像CIを外側領域Oの側に移動させないように構成することも当然に可能である。係る場合でも、指標Sの表示及び指標Sの増加に合わせて車両1に接近する物体7の存在を乗員に明示することは当然に可能である。
【0044】
上記実施形態では、車両1に接近する物体7が左右方向のうち一方側から接近している場合の例を挙げて説明した。本発明に係る障害物警報装置100は、左右両側から物体7が接近している場合にも適用することが可能である。係る場合、明示画像出力部16は、物体7が注目撮影画像に対して左右両側から接近する場合には自車イメージ画像CIを拡大して中央に表示する構成とすると好適である。
【0045】
このような形態の例が、図5に示される。例えば、図5(a)に示されるように、右側の外側領域Oにいる物体7が狭視野領域Nの中央側に移動していることが検出されると、注目撮影画像の中央に自車イメージ画像CIは重畳表示されると共に、注目撮影画像のうち、物体7が存在する外側領域Oの側に指標S(以下「S1」とする)が重畳して表示される(図5(a))。
【0046】
図5(b)に示されるように、物体7が、更に注目撮影画像の中央側に移動すると、自車イメージ画像CIを物体7が存在する外側領域Oの側に移動させると共に、先に表示されていた指標S1よりも大きい指標S(以下「S2」とする)が追加して表示される(図5(b))。
【0047】
このような状態で、右側の外側領域Oの物体7が注目撮影画像の中央側に移動する際に、左側の外側領域Oにも注目撮影画像の中央側に移動する物体7が検出されると、自車イメージ画像CIが注目撮影画像の中央に拡大して表示される。また、左側の外側領域Oの物体7の接近を示す指標S及び右側の外側領域Oの物体7の接近を示す指標S(S4)が夫々表示される(図5(c))。このような形態で表示することにより、車両1の左右両側から物体7が接近する場合であっても、適切に車両1の乗員に物体7の接近を明示することが可能となる。
【0048】
上記実施形態では、表示画面内に、車両1からの等距離の位置を示す等距離線が表示されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。表示画面内に、等距離線を表示しない構成とすることも当然に可能である。
【0049】
上記実施形態では、明示画像出力部16は、物体7が注目撮影画像内に進入した場合に指標S及び自車イメージ画像CIの表示を中止するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば物体7が注目撮影画像の中央に達した場合に指標S及び自車イメージ画像CIの表示を中止する構成とすることも可能であるし、物体7が注目撮影画像から退出した場合に指標S及び自車イメージ画像CIの表示を中止する構成とすることも可能である。
【0050】
上記実施形態では、明示画像出力部16は、注目撮影画像のうち物体7が存在する外側領域Oの側から中央側に向けて、注目撮影画像の中央側への物体Oの移動を明示する複数の指標Sを順次異なる位置に表示させると共に、後に表示する指標Sと直前に表示した指標Sとについては後に表示する指標Sの方を直前に表示した指標Sよりも大きく表示させる表示も行なうとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。明示画像出力部16は、指標Sを表示させないように、すなわち、自車イメージ画像CIのみを表示させる構成とすることも当然に可能である。
【0051】
本発明は、車両に接近する障害物の存在を乗員に明示する障害物警報装置に関する。
【符号の説明】
【0052】
1:車両
7:物体
11:撮影画像取得部
12:注目撮影画像生成部
14:物体存在判定部
15:移動方向判定部
16:明示画像出力部
19:自車イメージ画像生成部
100:障害物警報装置
CI:自車イメージ画像
G:撮影画像
O:外側領域
S(S1−S3):指標
図1
図2
図3
図4
図5