特許第5861532号(P5861532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5861532
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】レーザレーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/89 20060101AFI20160202BHJP
【FI】
   G01S17/89
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-71893(P2012-71893)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-205094(P2013-205094A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀幸
【審査官】 目黒 大地
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−098111(JP,A)
【文献】 特開2009−069003(JP,A)
【文献】 特開2000−098027(JP,A)
【文献】 特開2006−349694(JP,A)
【文献】 特開平08−035799(JP,A)
【文献】 特開2004−138383(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0278715(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S7/48−7/51
17/00−17/95
G01C1/00−15/14
G01B11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発生させるレーザ光発生手段と、
少なくとも前記レーザ光発生手段を収容するケースと、
所定の中心軸を中心として回転可能に構成された偏向部と、前記偏向部を回転駆動する駆動手段とを備え、前記偏向部を回転させつつ前記レーザ光発生手段にて発生したレーザ光を前記偏向部により前記ケース外の外部空間に向けて偏向させ、前記外部空間に存在する物体に前記レーザ光を照射して当該物体で反射光を生じさせる回転偏向手段と、
前記中心軸と平行な方向を上下方向としたとき、前記偏向部を介して前記外部空間に照射されるレーザ光の前記上下方向の向きを変更する照射方向変更手段と、
前記外部空間で生じた前記反射光を受光するための受光手段と、
前記偏向部の周囲に配置されると共に前記偏向部との上下の相対的位置関係に応じて前記外部空間において前記受光手段で受光可能となる視野方向を定めるように構成され、前記視野方向にある前記反射光を、前記偏向部を介して前記受光手段へ導くレンズ部材と、
前記レンズ部材又は前記偏向部を上下に移動させ、前記レンズ部材及び前記偏向部の上下の相対的位置関係を変更することで、前記受光手段で受光可能となる前記視野方向を、前記照射方向変更手段で設定されたレーザ光の向きに対応させて上下に変更する視野方向変更手段と、
前記受光手段による受光結果に基づいて前記物体の位置を検出する検出手段と、
を有することを特徴とするレーザレーダ装置。
【請求項2】
前記視野方向変更手段は、前記偏向部の回転中心となる軸の向きを前記上下方向に維持しつつ前記回転偏向手段を上下に移動させる上下動手段と、前記照射方向変更手段によるレーザ光の向きの変更に応じて、前記回転偏向手段の上下方向の位置をその変更されるレーザ光の向きに対応する位置とするように前記上下動手段の駆動を制御する駆動制御手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載のレーザレーダ装置。
【請求項3】
少なくとも前記回転偏向手段及び前記レンズ部材を収容する構成をなし、前記偏向部の周囲において当該偏向部からのレーザ光を通過させる開口部が形成されてなるケースと、
前記偏向部の周囲において前記開口部を閉塞する構成で前記ケースに固定されるレーザ光透過板と、
を備え、
前記レンズ部材は、前記レーザ光透過板とは別部材として構成され前記ケース内において前記偏向部の周囲且つ前記レーザ光透過板の内側の位置に配置されており、
前記視野方向変更手段は、前記レンズ部材を上下に移動させる上下動手段と、前記照射方向変更手段によるレーザ光の向きの変更に応じて、前記レンズ部材の上下方向の位置をその変更されるレーザ光の向きに対応する位置とするように前記上下動手段の駆動を制御する駆動制御手段とを有することを特徴とする請求項1に記載のレーザレーダ装置。
【請求項4】
前記偏向部の全回転角度範囲の内、所定の回転角度範囲を検出範囲とし、前記所定の回転角度範囲外を非検出範囲とするように検出エリアを設定する設定手段を備え、
前記照射方向変更手段は、前記偏向部の回転位置が前記非検出範囲にあるタイミングでレーザ光の向きを切り替える動作を行い、
前記視野方向変更手段は、前記偏向部の回転位置が前記非検出範囲にあるタイミングで前記視野方向を変更する動作を行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置。
【請求項5】
前記照射方向変更手段は、前記偏向部が1周回転する時間以上の時間間隔をあけて定められる動作タイミング毎に前記外部空間に照射されるレーザ光の向きを変更し、
前記視野方向変更手段は、それら動作タイミング毎に前記レンズ部材又は前記偏向部を移動させ、変更されるレーザ光の向きに合わせて前記視野方向を切り替えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を用いて物体を検出する技術として、例えば特許文献1のような装置が提供されている。この特許文献1の装置では、レーザ光発生手段からのレーザ光の光軸上に、レーザ光を透過させ、かつ検出物体からの反射光を検出手段に向けて反射する光アイソレータを設けている。さらに、光アイソレータを透過するレーザ光の光軸上において当該光軸方向の中心軸を中心として回動する凹面鏡を設け、この凹面鏡によってレーザ光を空間に向けて反射させると共に、検出物体からの反射光を光アイソレータに向けて反射させることで360°の水平走査を可能としている。
【0003】
特許文献1の技術では、凹面鏡の回動により360°の水平走査を可能とし、検出領域(レーザ光による走査がなされる領域)を装置の周囲全体に拡大しているが、検出領域が平面に限定されてしまうという問題がある。即ち、凹面鏡から空間に向けて反射されたレーザ光は所定平面(走査平面)内で走査がなされるため、その走査平面から外れた領域については検出不能となる。従って、走査平面から外れた検出物体は検出することができず、また、走査平面内に検出物体が存在する場合であってもその検出物体を立体的に把握することはできなかった。
【0004】
このような問題を解消し、三次元的な物体認識を可能とする技術として、特許文献2のような技術が提供されている。例えば、特許文献2の三次元測距装置では、所定の回転軸線(P1)を中心として回転する回転体(8)を備えた二次元測距装置(100)と、この二次元測距装置(100)を第一軸心(P1)と斜交する第二軸心(P2)周りに回転駆動する第二回転機構(20)とが設けられている。そして、第二回転機構20には、第二軸心(P2)と直交する第三軸心(P3)周りに揺動支持する第一ブラケット(22)と、第一軸心(P1)上の所定位置にフリージョイント機構(24)を介して連結された回転アーム(24)とが設けられ、回転アーム(24)を駆動機構(28)によって回転駆動することにより、第一軸心(P1)のロール角度(α)及びピッチ角度(β)を変化させ、これにより、二次元測距装置(100)全体を揺動させてレーザ走査を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2789741号公報
【特許文献2】特開2008−134163公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2のような技術によりレーザ走査を行えば、水平方向に限定されていたレーザ走査範囲を高さ方向に広げることができ、三次元的な物体認識が可能となるため、用途や利便性を格段に高めることができる。しかしながら、このように高さ方向の走査の自由度が高まると、特許文献1のような水平走査ではあまり問題とならなかった新たな課題が生じることになる。
【0007】
例えば、特許文献1のような水平走査タイプのものでは、反射光が発生する位置(即ち、物体にレーザ光が照射される位置)が水平走査エリア上に限定されるため、外部空間における視野範囲(受光センサによって受光可能となる範囲)は、水平走査エリア上で生じる反射光を検出できる程度であればよい。従って、一般的には、視野範囲はそれほど広く設定する必要が無いため、水平方向から外れた方向の外乱光(太陽光等)がそれほど問題とはなりにくかった。
【0008】
これに対し、特許文献2のようにレーザ走査を行う場合、走査範囲が高さ方向に広がることになるため、これに合わせて受光可能となる視野範囲を広げる必要が生じる。例えば、水平方向の走査だけでなく、これよりも高い方向にもレーザ光を走査し得るように構成する場合、水平走査時に物体から戻ってくる反射光だけでなく、最大の高さ方向での走査時に物体から戻ってくる反射光をも受光できるようにするには、受光センサで受光可能となる高さ方向の角度幅をある程度広く設定し、外部空間での視野範囲(受光センサで受光可能となる範囲)を広げておく必要がある。しかしながら、このように単に視野範囲を広げてしまうと、レーザ走査に応じて物体から返ってくる正規の反射光以外に、レーザ走査とは関係ない方向からの外乱光が取り込まれる可能性が高くなり、正規の反射光と外乱光とが区別できなくなってしまう虞がある。
【0009】
特にレーザレーダ装置を屋外に配置して三次元的に物体認識を行おうとした場合、低い方向(例えば水平方向やそれよりも低い方向など)にレーザ光を照射するときであっても、太陽光(特に、光量が大きくレーザ光と同波長或いは近似波長の成分を有する光)が外乱光として入り込んでしまい、正確な物体検出が阻害される可能性が大きくなる。また、このような問題は、レーザレーダ装置を屋外に配置する場合に限られるものではなく、上方側或いは下方側に外乱光を生じさせる何らかの要素が存在する場合(例えば、レーザレーダ装置の設置位置の上方側に外乱光となりうる照明光源などが存在する場合等)には同様の問題が生じる可能性がある。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、レーザ光の照射方向を高さ方向に変化させて三次元的な物体認識を行い得るレーザレーダ装置において、レーザ光の照射方向から外れた方向から入り込もうとする外乱光の影響を効果的に抑制し得る構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、レーザ光を発生させるレーザ光発生手段と、
少なくとも前記レーザ光発生手段を収容するケースと、
所定の中心軸を中心として回転可能に構成された偏向部と、前記偏向部を回転駆動する駆動手段とを備え、前記偏向部を回転させつつ前記レーザ光発生手段にて発生したレーザ光を前記偏向部により前記ケース外の外部空間に向けて偏向させ、前記外部空間に存在する物体に前記レーザ光を照射して当該物体で反射光を生じさせる回転偏向手段と、
前記中心軸と平行な方向を上下方向としたとき、前記偏向部を介して前記外部空間に照射されるレーザ光の前記上下方向の向きを変更する照射方向変更手段と、
前記外部空間で生じた前記反射光を受光するための受光手段と、
前記偏向部の周囲に配置されると共に前記偏向部との上下の相対的位置関係に応じて前記外部空間において前記受光手段で受光可能となる視野方向を定めるように構成され、前記視野方向にある前記反射光を、前記偏向部を介して前記受光手段へ導くレンズ部材と、
前記レンズ部材又は前記偏向部を上下に移動させ、前記レンズ部材及び前記偏向部の上下の相対的位置関係を変更することで、前記受光手段で受光可能となる前記視野方向を、前記照射方向変更手段で設定されたレーザ光の向きに対応させて上下に変更する視野方向変更手段と、
前記受光手段による受光結果に基づいて前記物体の位置を検出する検出手段と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、偏向部の周囲にレンズ部材が配置され、このレンズ部材と偏向部との上下の相対的位置関係に応じて視野方向(受光手段で受光可能となる視野の方向)が定められるようになっている。更に、視野方向変更手段が設けられ、この視野方向変更手段は、レンズ部材又は偏向部を上下に移動させ、レンズ部材及び偏向部の上下の相対的位置関係を変更することで、照射方向変更手段で設定されたレーザ光の向きに対応させて視野方向を上下に変更するようになっている。
この構成では、受光手段で受光可能となる視野の向き(視野方向)と、ケース外の外部空間に照射されるレーザ光の向きとが対応するように制御されるため、レーザ光の向きとは関係の無い方向からの外乱光が受光手段に受光されにくくなり、このような外乱光の影響をより確実に抑えることができる。例えば、水平方向や斜め下方向にレーザ光が照射されるときにその照射方向とは関係の無い上方側の光(例えば太陽光などの強い光)が受光センサに入り込むといったことを抑えることができる。また、上方側の外乱光に限られるものではなく、例えば、水平方向や斜め上方向にレーザ光が照射されるときに下側からの光(例えば、水たまりや雪などに太陽光が照射されたときの照り返し等)が受光センサに入り込むことを抑えることができる。そして、このように外乱光が入り込むことを防ぐことで、外乱光に起因する物体検出の誤判断(例えば、物体が存在しないのに外乱光の影響によって物体検出がなされたと誤判断する場合等)、或いは外乱光に起因する検出漏れ(例えば、物体から正規の反射光が生じているのに、この反射光が外乱光にかき消されてしまう場合等)などをより確実に防止することができ、物体検出の精度を高めることができる。
【0013】
請求項2の発明では、視野方向変更手段が、偏向部の回転中心となる軸の向きを上下方向に維持しつつ回転偏向手段を上下に移動させる上下動手段と、照射方向変更手段によるレーザ光の向きの変更に応じて、回転偏向手段の上下方向の位置をその変更されるレーザ光の向きに対応する位置とするように上下動手段の駆動を制御する駆動制御手段と、を有している。
この構成では、回転中心付近に集約された回転偏向手段を上下動させることでレーザ光の照射方向と視野方向とを合わせることができるため、嵩張る構成のものを上下動させるような構成と比較すると、相対移動を実現するための部材保持構造や駆動構成をコンパクト化しやすくなり、装置全体の小型化に有利となる。
【0014】
請求項3の発明は、少なくとも回転偏向手段及びレンズ部材を収容する構成をなし、偏向部の周囲において当該偏向部からのレーザ光を通過させる開口部が形成されてなるケースと、偏向部の周囲において開口部を閉塞する構成でケースに固定されるレーザ光透過板と、を備えており、レンズ部材が、レーザ光透過板とは別部材として構成されケース内において偏向部の周囲且つレーザ光透過板の内側の位置に配置されている。そして、視野方向変更手段は、レンズ部材を上下に移動させる上下動手段と、照射方向変更手段によるレーザ光の向きの変更に応じて、レンズ部材の上下方向の位置をその変更されるレーザ光の向きに対応する位置とするように上下動手段の駆動を制御する駆動制御手段とを有している。
この構成よれば、静止体(レンズ部材)を駆動させることで相対移動(偏向部に対してレンズ部材を相対的に上方又は下方に移動させる動作)を実現できる。このため、回転偏向手段のような常時動作する物体を上下動させて視野方向を変更する構成と比較して、偏向部(回転体)の上下の位置や回転軸の方向を正確に保ちやすく、一定の回転状態で安定させやすくなる。
【0015】
請求項4の発明では、偏向部の全回転角度範囲の内、所定の回転角度範囲を検出範囲とし、所定の回転角度範囲外を非検出範囲とするように検出エリアを設定する設定手段が設けられている。そして、照射方向変更手段は、偏向部の回転位置が非検出範囲にあるタイミングでレーザ光の向きを切り替える動作を行い、視野方向変更手段は、偏向部の回転位置が非検出範囲にあるタイミングで視野方向を変更する動作を行うようになっている。
この構成によれば、偏向部の回転角度が非検出範囲にある期間を利用し、物体検出動作への影響が少ないタイミングで視野方向を効率的に切り替えることができる。
【0016】
請求項5の発明では、照射方向変更手段は、偏向部が1周回転する時間以上の時間間隔をあけて定められる動作タイミング毎に外部空間に照射されるレーザ光の向きを変更し、視野方向変更手段は、それら動作タイミング毎にレンズ部材又は偏向部を移動させ、変更されるレーザ光の向きに合わせて視野方向を切り替えるように構成されている。
この構成では、偏向部が1周する間に視野方向の切り替え制御が何回も繰り返されないため、切り替え制御に伴う電気的、機械的負荷を確実に低減することができる。例えば、偏向部が1周する間に視野方向を複数回切り替える方法を用いた場合、偏向部の周期の数分の一、或いは数十分の一で視野方向を切り替える必要があり、このような高速駆動は技術的に困難性を伴うが、上記構成によればこのような問題が生じ難い。
また、上記構成によれば、偏向部の高速化も図りやすくなる。例えば、1周の間に視野方向を複数回切り替える方法では、偏向部の回転周期を視野方向の切り替え間隔の何倍、或いは何十倍にする必要があるため、偏向部の高速化が難しくなる。これに対し、上記構成では、視野方向の切り替え間隔を偏向部の回転周期以上に長く設定することができるため、視野方向を高速に切り替え可能な場合は勿論のこと、それほど切り替え間隔が短くない場合であっても偏向部の高速化に対応し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るレーザレーダ装置の概略断面図である。
図2図2は、図1での視野方向とは異なる視野方向に切り替えた様子を説明する説明図である。
図3図3は、図1のレーザレーダ装置における視野方向切替処理の流れを例示するフローチャートである。
図4図4(A)は、図1のレーザレーダ装置において、レーザ光の照射の向きが第1方向に設定されているときの視野方向を概念的に説明する説明図であり、図4(B)は、レーザ光の照射の向きが第2方向に設定されているときの視野方向を概念的に説明する説明図である。
図5図5(A)は、従来の視野範囲設定方法を説明する説明図であり、図5(B)は、図5(A)の方法を用いた場合の検出結果の例を説明する説明図である。
図6図6は、本発明の第2実施形態に係るレーザレーダ装置の概略断面図である。
図7図7は、図6での視野方向とは異なる視野方向に切り替えた様子を説明する説明図である。
図8図8は、本発明の第3実施形態に係るレーザレーダ装置の概略断面図である。
図9図9は、図8での視野方向とは異なる視野方向に切り替えた様子を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
(レーザレーダ装置の全体構成)
まず、図1等を参照し、第1実施形態に係るレーザレーダ装置の全体構成について概説する。図1は、本発明の第1実施形態に係るレーザレーダ装置の概略断面図である。図1では照射されるレーザ光L1を実線で示しており、この実線のレーザ光から向きが変更されたレーザ光を一点鎖線にて仮想的に示している。なお、図面では、空間に照射されるレーザ光L1のうち、水平方向に照射されるレーザ光を符号L11で示しており、斜め上方向に照射されるレーザ光を符号L12で示している。また、物体で反射して返ってくる反射光L2のうち、水平方向に入り込んでくる反射光を符号L21で示しており、斜め上から入り込んでくる反射光を符号L22で示している。
【0019】
図1に示すように、レーザレーダ装置1は、レーザ光L1を発生させるレーザダイオード10と、検出物体からの反射光L2を受光するフォトダイオード20とを備え、検出物体までの距離や方位を検出する装置として構成されている。
【0020】
レーザダイオード10は、「レーザ光発生手段」の一例に相当するものであり、例えば公知のレーザダイオードによって構成されている。このレーザダイオード10は、図示しない駆動回路からパルス電流の供給を受け、このパルス電流に応じてパルスレーザ光(レーザ光L1)を所定間隔おきに間欠的に投光するものである。
【0021】
なお、レーザダイオード10から照射されるレーザ光L1の光軸上には図示しないレンズが設けられており、このレンズは、例えばコリメートレンズとして構成され、レーザダイオード10からのレーザ光L1を略平行光に変換する機能を有している。
【0022】
フォトダイオード20は、受光手段の一例に相当するものであり、外部空間で生じた反射光L2を受光可能とされている。このフォトダイオード20は、例えば、アバランシェフォトダイオード等の公知のフォトダイオードで構成されており、レーザダイオード10からレーザ光L1が発生したときに、このレーザ光L1が外部空間に存在する物体で反射した反射光L2を受光し、電気信号に変換する構成をなしている。なお、検出物体からの反射光L2については、後述する光学系で設定された視野範囲のものが取り込まれる構成となっており、図1の例では、レーザ光L1が実線(レーザ光L11)で示す経路を通過する場合には、例えば符号L2で示す2つのライン間(L21,L21)の領域を通る反射光が取り込まれるようになっている。
【0023】
レーザダイオード10からのレーザ光L1の光路上には、揺動ミラー31が配置されている。この揺動ミラー31は、レーザダイオード10からのレーザ光L1を回転偏向装置40に向けて反射する構成をなし、且つ揺動可能に構成されている。この揺動ミラー31は、偏向部41に対するレーザ光の入射方向を相対的に変化させることで、偏向部41からの反射の向きを変化させ、空間に照射されるレーザ光L1と水平面(鉛直方向と直交する仮想平面)とのなす角度(即ち、上下方向の向き)を変更するように機能している。
【0024】
また、この揺動ミラー31を、多自由度をもって駆動するミラー駆動部が設けられている。このようにミラーを多自由度をもって駆動する技術はガルバノミラー等の分野において公知であるので詳細は省略するが、ミラー駆動部については、例えば、揺動ミラー31をジンバル、ピボット軸受等で支持することにより、二方向へ回転運動させる構成とすることができる。
【0025】
図1の例では、回転偏向装置40の中心軸42aの方向をY軸方向とし、このY軸方向と直交する所定方向(図1では、レーザダイオード10からのレーザ光L1の出射方向)をX軸方向とし、X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向として説明している。このような定義において、反射面31aとXY平面とのなす角をα、反射面31aとYZ平面とのなす角をβ、反射面31aとXZ平面とのなす角をγとした場合、アクチュエータ36は、これらα、β、γを変更し得るように構成されており、後述する制御部70がアクチュエータ36を制御して、α、β、γの値を調整することにより、揺動ミラー31からのレーザ光L1の向き、及びレーザ光L1が偏向部41に入射するときの入射方向が定まり、これにより空間に照射されるレーザ光L1と水平面(鉛直方向と直交する仮想平面)とのなす角度が決定されるようになっている。
【0026】
なお、本実施形態では、制御部70、揺動ミラー31、及びアクチュエータ36が「照射方向変更手段」の一例に相当し、中心軸42aと平行な方向を上下方向としたとき、偏向部41を介して外部空間に照射されるレーザ光L1の上下方向の向きを変更するように機能する。
【0027】
揺動ミラー31で反射したレーザ光L1の光軸上には、回転偏向装置40が設けられている。この回転偏向装置40は、「回転偏向手段」の一例に相当するものであり、中心軸42aを中心として回転可能に構成された偏向部41と、偏向部41を回転駆動するモータ50(駆動手段)とを備え、偏向部41を回転させつつレーザダイオード10(レーザ光発生手段)にて発生したレーザ光L1を偏向部41により当該レーザレーダ装置1の装置外の外部空間に向けて偏向させ、外部空間に存在する物体にレーザ光L1を照射して当該物体で反射光を生じさせるように機能する。
【0028】
回転偏向装置40は、主として、偏向部41、軸部42、モータ50、回転角度センサ52によって構成されている。偏向部41は、平坦な反射面41aを備えたミラーとして構成されており、反射面41aが斜め上方を向き且つこの反射面41aが入射するレーザ光L1に対して傾斜するように配されている。軸部42は、偏向部41に固定されると共に図示しない軸受によって回転可能に支持されており、モータ50の駆動力を受けて中心軸42aを中心として回転するように構成されている。
【0029】
モータ50は、「駆動手段」の一例に相当するものであり、例えば公知の直流モータ或いは公知の交流モータによって構成されている。そして、制御部70からの駆動指示があったときに、図示しないモータドライバによって駆動状態(例えば、回転タイミングや回転速度)が制御されるようになっており、このときに、予め定められた一定の回転速度で定常回転するようになっている。このモータは、回転駆動軸が軸部42と一体的に構成されており、軸部42と偏向部41とを、中心軸42aを回転中心として定常回転させるように構成されている。偏向部41は、偏向面(反射面41a)と中心軸42aとのなす角度θが一定角度(例えば45°)となるように配置されており、モータ50の駆動力を受けたときにこの角度θを一定角度で維持しつつ回転するようになっている。
【0030】
また、本実施形態では、図1に示すように、モータ50の軸部42の回転角度位置(即ち偏向部41の回転角度位置)を検出する回転角度センサ52が設けられている。回転角度センサ52は、ロータリーエンコーダなど、軸部42の回転角度位置を検出しうるものであれば様々な種類のものを使用できる。
【0031】
また、偏向部41の周囲には、偏向部41を取り囲むようにレンズ部材62が環状且つ筒状に配されている。このレンズ部材62は、後述するレーザ光透過板5とは別部材として構成されケース3の内部において偏向部41の周囲且つレーザ光透過板5の内側の位置に配置されており、装置外から装置中心(中心軸42aの位置)に向けて入り込んできた反射光L2を偏向部41側に向かうにつれて徐々に集光させる集光レンズとして機能している。
【0032】
このレンズ部材62は、例えば中心軸42aを通る切断面で切断した外形が外側に向けて凸となる蒲鉾形状をなしており、中心軸42aを通るどの方向の切断面でも同様の外形となるように構成されている。即ち、中心軸42aを通るどの方向の切断面でも図1のような外形形状をなしている。また、中心軸42aを通るどの方向の切断面でもレンズの光軸が水平方向(中心軸42aと直交する方向)となっており且つ各切断面での光軸の高さ(レンズ下端からの高さ)が一定となっている。このレンズ部材62は、偏向部41との上下の相対的位置関係に応じて視野方向(外部空間においてフォトダイオード20(受光手段)で受光可能となる視野の方向)を定めるように構成され、物体からの反射光がこの視野方向にある場合に当該反射光を集光しつつ偏向部41を介してフォトダイオード20へ導くように機能する。例えば、レンズ部材62の上記光軸が位置P1とほぼ同じ高さのときには、図1図4(A)のように視野方向が水平方向に沿って設定される。また、レンズ部材62の上記光軸が位置P1よりも高いときには、図2図4(B)のように視野方向が斜め上向きに設定される。また、レンズ部材62の上記光軸が位置P1よりも低いときには、視野方向が斜め下向きに設定される。
【0033】
更に、本実施形態のレーザレーダ装置1には、レンズ部材62の位置を変更し得る1又は複数のレンズ駆動部80が設けられている。このレンズ駆動部80は、筒状に構成されたレンズ部材62を上下に移動させる上下動手段に相当するものであり、例えばリニアアクチュエータ等によって構成され、制御部70から出力される信号に応じて動作する構成をなしており、移動対象となるレンズ部材62を、例えば、所定の中間位置(図1に示す第1位置)、この第1位置のときよりも上方となる上方位置(図2に示す第2位置)、第1位置よりも下方となる下方位置(第3位置)などに切り替え可能とされている。なお、リニアアクチュエータとしては、公知の様々な種類のものを用いることができ、周知のリニアモータ、リニア振動アクチュエータ、リニア電磁ソレノイドなどを好適に用いることができる。また、ここでは3段階に切り替え得る構成を例示したが、4段階以上の多段階に切り替え得る構成であってもよい。
【0034】
制御部70は、CPUを備えたマイクロコンピュータなどの1又は複数の制御回路によって構成されており、上述したレーザダイオード10の投光動作やモータ50の回転動作、レンズ駆動部80の駆動動作などを制御するように構成されている。また、フォトダイオード20や回転角度センサ52に接続されており、これらからの信号を取得可能に構成されている。また、制御部70には、ROM、RAM,不揮発性メモリなどのメモリ72が接続されており、制御部70は、このメモリ72内の情報の読み出しやメモリに対する書き込みが可能となっている。
【0035】
また、本実施形態では、レーザダイオード10、フォトダイオード20、レンズ60、回転偏向装置40、モータ50等がケース3内に収容され、防塵や衝撃保護が図られている。ケース3は、光遮光性を有する有色(例えば、黒等の暗色)のものであり、ケース3における偏向部41の周囲には、当該偏向部41を取り囲むようにレーザ光L1及び反射光L2の通過を可能とする開口部(導光部)4が形成されている。開口部4は、この開口部4に入光するレーザ光L1の光軸を中心とした環状形態で、ほぼ360°に亘って構成されており、この開口部4を閉塞する形態でガラス板等からなるレーザ光透過板5が配され、防塵が図られている。
【0036】
(物体検出動作)
次に、レーザレーダ装置1で行われる物体の検出処理(監視処理)について基本的な動作を説明する。
図1に示すレーザレーダ装置1では、モータ50からの駆動力により偏向部41が一定速度で回転するようになっており、このような回転時に、レーザダイオード10に対してパルス電流が供給されると、このパルス電流のタイミング及びパルス幅に応じた時間間隔のパルスレーザ光(レーザ光L1)がレーザダイオード10から出力される。このレーザ光L1は、ある程度の広がり角をもった拡散光として投光され、レンズ(図示略)を通過することで平行光に変換される。このレンズ(図示略)を通過したレーザ光L1は、揺動ミラー31で反射した後、ミラー30の貫通孔30aを通過し、偏向部41で更に反射して空間に向けて照射される。
【0037】
このように偏向部41から照射されたレーザ光L1が、外部空間に存在する物体(検出物体)に当たったときには、この検出物体で反射して装置側に戻ってくる反射光の一部(反射光L2参照)がレーザ光透過板5を介してケース内に入り込み、レンズ部材(集光レンズ)62で集光されつつ偏向部41に入射することになる。偏向部41は、この反射光L2をフォトダイオード20側へ誘導(反射)し、その誘導された反射光L2はミラー30で反射してフォトダイオード20に入射する。そして、フォトダイオード20は、このような反射光L2を受光したとき、その受光した反射光L2の強度に応じた電気信号(例えば受光した反射光L2に応じた電圧値)を出力する。
【0038】
制御部70は、レーザダイオード10に対するパルス信号の送信タイミングとフォトダイオード20からの受光信号が出力されるタイミングとに基づいて、レーザ光L1の投光から受光までの時間T(即ち、レーザダイオード10がパルスレーザ光L1を出力してからフォトダイオード20が当該パルスレーザ光に応じた反射光L2を受光するまでの時間)を測定しており、更に、制御部70は、この時間Tと、既知の光速Cとに基づいて、装置内の基準位置(例えば位置P1)から検出物体までの距離Lを算出している。
【0039】
更に、制御部70は、アクチュエータ36の変位量を制御しているため、上記パルスレーザ光L1が照射されるときの揺動ミラー31の変位(揺動ミラー31の反射面31aとXY平面とのなす角α、反射面31aとYZ平面とのなす角β、反射面31aとXZ平面とのなす角γ)を把握でき、且つ、パルスレーザ光L1が照射されるときの回転角度センサ52からの出力値(即ち、パルスレーザ光L1が照射されるタイミングにおける偏向部41の基準角度からの回転変位θ)をも把握できるようになっている。このように、揺動ミラー31の反射面31aとXY平面とのなす角α、反射面31aとYZ平面とのなす角β、反射面31aとXZ平面とのなす角γが定まり、偏向部41の回転変位θが定まると、偏向部41からレーザ光L1が向かう方向が一の方位に定まるため、制御部70は、パルスレーザ光L1の出力時におけるこれら値(α、β、γ、θ)と上記の算出距離Lとに基づいて、検出物体の方位を正確に検出できる。なお、制御部70は、「検出手段」の一例に相当し、フォトダイオード20(受光手段)による受光結果に基づいて物体の位置を検出するように機能する。
【0040】
(視野方向の制御)
次に、視野範囲の制御について説明する。
図3は、図1のレーザレーダ装置における視野範囲切替処理の流れを例示するフローチャートである。
図3に示すように、レーザレーダ装置1では、検出処理の開始に伴い、水平面に対するレーザ光L1の傾斜角度(レーザ光L1の水平面に対する傾き)を切り替える処理を行う(S1)。なお、図3の開始処理直後に行われるS1の処理では、水平面に対するレーザ光L1の傾斜角度を例えばデフォルトの角度(図1に示す実線の方向等)に設定する。
【0041】
S1の処理の後には、S1で設定された傾斜角度に対応する視野範囲に切り替える処理を行う(S2)。例えば、レーザ光の方向が水平向きの第1方向(図1のレーザ光L11の方向)に設定されている場合には、レンズ駆動部80によってレンズ部材62を図1のように配置し、フォトダイオード20での視野方向を水平方向に沿った第1の視野方向AR1(図4(A)参照)に設定する。このとき、フォトダイオード20では、設定された視野方向AR1から返ってくる反射光L21を選択的に受光することになる。
【0042】
S1、S2の処理の後には、それら処理にて設定された傾斜角度及び視野方向で検出処理を行う(S3)。この例では、S1、S2で設定された傾斜角度及び視野方向にて一定の角度範囲の検出処理を行っており、S2の切り替えが終了した後、例えば偏向部41が所定の回転基準角度(0°)となった時などを起点(回転起点)として当該偏向部41が一定の角度範囲(例えば180°の角度範囲)変位するまで検出エリア内でレーザ走査を行い、上述の方法で検出エリア内の物体を検出している。なお、この検出処理が行われている間にフォトダイオード20が検出エリア内の物体からの反射光を受光したときには、上述の方法でこの物体の位置及び高さを算出する(S3)。
【0043】
このような検出処理は、S2の処理の後、偏向部41が一定角度(例えば180°)回転するまで継続し、偏向部41が上記回転起点から一定角度範囲分だけ回転していない段階ではS4にてNoに進むことになり、S3の検出処理を繰り返すことになる。一方、偏向部41において上記回転起点から一定角度範囲分(例えば180°)の回転が行われたときには、S4にてYesに進み、S1、S2に戻って傾斜角度の設定処理及び視野方向の切り替え処理を行う。
【0044】
なお、S3において一定の角度範囲でレーザ走査がなされたか否かの判断をする方法としては、例えば、S2の後の上記開始起点から所定回数のパルス出力が行われたか否かに基づいて判断する方法を用いることができる。或いは、S1で走査を開始するときには、当該開始時の偏向部41の回転位置(基準角度に対する回転角度)を図示しないメモリ等に記録しておき、この記録内容に基づいて、偏向部41が一定範囲回転したか否かを判断してもよい。
【0045】
S4にてYesに進み、S1、S2に戻って処理を行う場合、水平面に対するレーザ光L1の傾斜角度を、直近のS3の処理で設定されていた角度から切り替える。例えば、S1を行う前の直近のS3の処理において、水平面に対するレーザ光L1の傾斜角度が図1のような角度(図1図4(A)のレーザ光L11の角度)に設定されていた場合、このS1の処理では、水平面に対するレーザ光L1の傾斜角度を、例えば図2のように斜め上向きの所定角度(図2図4(B)のレーザ光L12の角度)に切り替える。そして、その直後のS2の処理では、レンズ駆動部80を動作させ、図2のように切り替えられたレーザ光の傾斜角度に対応するように視野方向を斜め上向きに切り替える(図4(B)も参照)。このとき、フォトダイオード20では、設定された視野方向AR2から返ってくる反射光L22(即ち、装置に対して斜め上から入り込んでくる反射光)を選択的に受光することになる。このように視野方向を切り替えた後には、再び、一定の角度範囲内で物体の検出処理を行うことになる(S3、S4)。
【0046】
なお、S1で切り替えるレーザ光の照射方向及び視野方向は図1図2のような方向に限られない。例えば、レーザ光L1の方向が斜め下向きの第3方向に切り替えられてもよく、この場合、レンズ駆動部80によってレンズ部材62を図1のときよりも下位置に移動させ、フォトダイオード20での視野方向も斜め下向きの方向(第3方向)に設定すればよい。
【0047】
本実施形態では、制御部70及びレンズ駆動部80が「視野方向切替手段」の一例に相当しており、レンズ部材62を上下に移動させ、レンズ部材62及び偏向部41の上下の相対的位置関係を変更することで、フォトダイオード20(受光手段)で受光可能となる視野方向を、照射方向変更手段で設定されたレーザ光L1の向きに対応させて上下に変更するように機能する。また、制御部70は「駆動制御手段」の一例に相当し、上述の照射方向変更手段によるレーザ光L1の向きの変更に応じて、レンズ部材62の上下方向の位置をその変更されるレーザ光L1の向きに対応する位置とするようにレンズ駆動部80(上下動手段)の駆動を制御する。
【0048】
(第1実施形態の主な効果)
本実施形態に係るレーザレーダ装置1では、偏向部41の周囲にレンズ部材62が配置され、このレンズ部材62と偏向部41との上下の相対的位置関係に応じて視野方向(フォトダイオード20で受光可能となる視野の方向)が定められるようになっている。更に、視野方向変更手段により、レンズ部材62を上下に移動させ、レンズ部材62及び偏向部41の上下の相対的位置関係を変更することで、視野方向を図1のような水平方向、或いは図2のような斜め上方向といった具合にレーザ光L1の向きに対応させて上下に変更している。
この構成では、フォトダイオード20で受光可能となる視野の向き(視野方向)と、外部空間に照射されるレーザ光L1の向きとが対応するように制御される。即ち、レーザ光L1が斜め上向きに照射されるときには視野方向もその向きに対応して斜め上向きになり、レーザ光L1が水平向きに照射されるときには視野方向もその向きに対応して水平向きになっている。また、レーザ光L1が斜め下向きに照射されるときには視野方向もその向きに対応して斜め下向きになる。この構成によれば、レーザ光L1の向きとは関係の無い方向からの外乱光がフォトダイオード20に受光されにくくなり、このような外乱光の影響をより確実に抑えることができる。
【0049】
従来では、レーザ光の向きを上方側や下方側に変更可能として三次元的に物体認識を行う場合、図5(A)のように視野範囲AR’をある程度広く設定し、斜め上方に照射されたときでも、斜め下方に照射されたときでもフォトダイオード20’で反射光を受光できるようにする必要があった。しかしながら、図5(A)のように屋外を検出エリアとして物体検出を行う場合、視野範囲が図5(a)の符号AR’のように広いと、水平方向付近にレーザ光を照射して物体Wa、Wbからの反射光を検出しようとしたときに、これら物体Wa、Wbからの正規の反射光だけでなくエネルギーの大きい太陽光も受光してしまうことになり、図5(B)のように、特に遠距離の物体からの光量の小さい反射光が太陽光にかき消されてしまうことになる(図5(B)では、太陽光の成分S3によって物体Wbからの受光成分S2’がかき消されてしまっている)。本発明はこのような従来の問題を効果的に解消しており、例えば水平方向や斜め下方向にレーザ光を照射する場合に、太陽光が入り込みやすい上方側を視野範囲とせず、検出に必要な方向付近に絞って視野方向を設定できるため、太陽光等の受光を抑制することができ、このような外乱光に起因する検出漏れや誤検出を効果的に防ぐことができる。
【0050】
また、本実施形態では、静止体(レンズ部材62)を上下に駆動させることで相対移動(偏向部41に対してレンズ部材62を相対的に上方又は下方に移動させる動作)を実現できる。このため、回転偏向装置40のような常時動作する物体を上下動させて視野方向を変更する構成と比較して、偏向部41(回転体)の上下の位置や回転軸(中心軸42a)の方向を正確に保ちやすく、一定の回転状態で安定させやすくなる。
【0051】
また、本実施形態では、例えば、偏向部41が1周回転する間の全回転角度範囲の内、所定の回転角度範囲を検出範囲とし、この所定の回転角度範囲外を非検出範囲とするように検出エリアを設定している。例えば、偏向部41が所定の回転基準位置(0°の回転角度)から180°回転するまでの角度範囲を検出範囲としており、偏向部41の回転角度が180°を超えて360°に到達するまでの角度範囲を非検出範囲としている。そして、照射方向変更手段に相当する制御部70、揺動ミラー31、アクチュエータ36は、偏向部41の回転位置が上記非検出範囲にあるタイミングでレーザ光の向きを切り替える動作を行っている。そして、視野方向変更手段に相当する制御部70及びレンズ駆動部80は、偏向部41の回転位置が上記非検出範囲にあるタイミングで視野方向を変更する動作を行っている。この構成によれば、偏向部41の回転角度が非検出範囲にある期間を利用し、物体検出動作への影響が少ないタイミングで視野方向を効率的に切り替えることができる。
【0052】
また、照射方向変更手段に相当する制御部70、揺動ミラー31、アクチュエータ36は、偏向部41が1周回転する時間以上の時間間隔をあけて定められる動作タイミング毎に外部空間に照射されるレーザ光L1の向きを変更している。例えば、偏向部41の各周回ごと、或いは複数周おきの各非検出範囲においてレーザ光L1の向きを変更している。そして、視野方向変更手段に相当する制御部70及びレンズ駆動部80は、それら動作タイミング毎(即ち、レーザ光L1の向きが切り替えられる動作タイミング毎)にレンズ部材62を移動させ、変更されるレーザ光L1の向きに合わせて視野方向を切り替えている。
この構成では、偏向部41が1周する間に視野方向の切り替え制御が何回も繰り返されないため、切り替え制御に伴う電気的、機械的負荷を確実に低減することができる。例えば、偏向部41が1周する間に視野方向を複数回切り替える方法を用いた場合、偏向部41の周期の数分の一、或いは数十分の一で視野方向を切り替える必要があり、このような高速駆動は技術的に困難性を伴うが、上記構成によればこのような問題が生じ難い。
また、上記構成によれば、偏向部41の高速化も図りやすくなる。例えば、1周の間に視野方向を複数回切り替える方法では、偏向部41の回転周期を視野方向の切り替え間隔の何倍、或いは何十倍にする必要があるため、偏向部41の高速化が難しくなる。これに対し、上記構成では、視野方向の切り替え間隔を偏向部41の回転周期以上に長く設定することができるため、視野方向を高速に切り替え可能な場合は勿論のこと、それほど切り替え間隔が短くない場合であっても偏向部41の高速化に対応し易くなる。
【0053】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
図6は、本発明の第2実施形態に係るレーザレーダ装置の概略断面図である。図7は、図6での視野方向とは異なる視野方向に切り替えた様子を説明する説明図である。この第2実施形態に係るレーザレーダ装置1は、レンズ部材62が所定位置に固定されており、偏向部41が上下動し得るようになっている点が第1実施形態と異なり、これ以外の点については、第1実施形態と同様である。例えば、ケース3、レーザ光透過板5、レーザダイオード10、フォトダイオード20、揺動ミラー31、アクチュエータ36、ミラー30、メモリ72については、第1実施形態と同一の配置、構成、機能となっている。また、回転偏向装置40は、上下動可能に構成されている点が第1実施形態と異なるが、構成自体は第1実施形態と同様である。また、制御部70は、レンズ駆動部80を制御する代わりに機構駆動部250を制御している点が異なり、それ以外は第1実施形態と同様である。また、物体検出方法についても第1実施形態と同様であり、図3のような切替制御についても第1実施形態と同様である。
【0054】
第2実施形態でも、偏向部41の周囲において偏向部41を取り囲むようにレンズ部材62が環状且つ筒状に配されている。このレンズ部材62も、レーザ光透過板5とは別部材として構成されケース3の内部において偏向部41の周囲且つレーザ光透過板5の内側の位置に配置されており、装置外から装置中心(中心軸42aの位置)に向けて入り込んできた反射光L2を偏向部41側に向かうにつれて徐々に集光させる集光レンズとして機能している。このレンズ部材62は、例えば中心軸42aを通る切断面で切断した外形が外側に向けて凸となる蒲鉾形状をなしており、中心軸42aを通るどの方向の切断面でも同様の外形となるように構成されている。即ち、中心軸42aを通るどの方向の切断面でも図6のような外形形状をなしている。また、中心軸42aを通るどの方向の切断面でもレンズの光軸が水平方向(中心軸42aと直交する方向)となっており且つ各切断面での光軸の高さ(上下方向の位置)が一定となっている。このレンズ部材62は、偏向部41との上下の相対的位置関係に応じて視野方向(外部空間においてフォトダイオード20(受光手段)で受光可能となる視野の方向)を定めるように構成され、物体からの反射光がこの視野方向にある場合に当該反射光を集光しつつ偏向部41を介してフォトダイオード20へ導くように機能する。例えば、レンズ部材62の上記光軸が位置P1とほぼ同じ高さのときには、図6のように視野方向が水平方向に沿って設定される。また、レンズ部材62の上記光軸が位置P1よりも高いときには、図7のように視野方向が斜め上向きに設定される。また、レンズ部材62の上記光軸が位置P1よりも低いときには、視野方向が斜め下向きに設定される。
【0055】
本実施形態のレーザレーダ装置1には、回転偏向装置40を上下に移動させることで偏向部41の高さを変更し得る機構駆動部250が設けられている。この機構駆動部250は、偏向部41を上下に移動させる上下動手段に相当するものであり、例えばリニアアクチュエータ等によって構成され、制御部70から出力される信号に応じて動作する構成をなしており、移動対象となる偏向部41を、例えば、所定の中間位置(図6に示す第1位置)、この第1位置のときよりも下方となる下方位置(図7に示す第2位置)、第1位置よりも上方となる上方位置(第3位置)などに切り替え可能とされている。なお、リニアアクチュエータとしては、公知の様々な種類のものを用いることができ、周知のリニアモータ、リニア振動アクチュエータ、リニア電磁ソレノイドなどを好適に用いることができる。また、ここでは3段階に切り替え得る構成を例示したが、4段階以上の多段階に切り替え得る構成であってもよい。
【0056】
そして、このレーザレーダ装置1でも、フォトダイオード20で受光可能となる視野の向き(視野方向)と、外部空間に照射されるレーザ光L1の向きとが対応するように制御される。即ち、図7のようにレーザ光L1が斜め上向きに照射されるときには機構駆動部250の駆動制御(即ち偏向部41の上下位置制御)により視野方向もその向きに対応して斜め上向きになり、図6のようにレーザ光L1が水平向きに照射されるときには視野方向もその向きに対応して水平向きになる。また、レーザ光L1が斜め下向きに照射されるときには視野方向もその向きに対応して斜め下向きになる。
【0057】
本実施形態でも、レーザ光L1の向きの変更方法は第1実施形態と同様であり、制御部70、揺動ミラー31、アクチュエータ36が照射方向変更手段の一例に相当する。また、制御部70及び機構駆動部250が視野方向変更手段の一例に相当する。更に、機構駆動部250が上下動手段の一例に相当し、偏向部41の回転中心となる軸の向き(即ち、中心軸42aの向き)を上下方向に維持しつつ回転偏向装置40を上下に移動させるように機能する。また、制御部70は、駆動制御手段の一例に相当し、照射方向変更手段によるレーザ光L1の向きの変更に応じて、回転偏向装置40の上下方向の位置をその変更されるレーザ光L1の向きに対応する位置とするように上下動手段の駆動を制御する。
【0058】
そして、このような第2実施形態の構成でも、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第2実施形態の構成では、回転中心付近に集約された回転偏向装置40を上下動させることでレーザ光L1の照射方向と視野方向とを合わせることができるため、嵩張る構成のものを上下動させるような構成と比較すると、相対移動を実現するための部材保持構造や駆動構成をコンパクト化しやすくなり、装置全体の小型化に有利となる。
【0059】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。図8は、本発明の第3実施形態に係るレーザレーダ装置の概略断面図である。また、図9は、図8での視野方向とは異なる視野方向に切り替えた様子を説明する説明図である。第3実施形態では、レンズ部材62をレーザ光透過板の一部として兼用している点が第2実施形態と異なり、それ以外は第2実施形態と同様である。即ち、レーザ光透過板、レンズ部材以外の構成は、第2実施形態と同様あり、レーザ光透過板、レンズ部材以外の構成については第2実施形態と同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0060】
この第3実施形態のレーザレーダ装置1では、レンズ部材362が偏向部41の周囲において開口部4を閉塞する構成でケース3に固定されている。なお、ケース3の構成、開口部4の構成は第1、第2実施形態と同様である。このレンズ部材362も基本的には第2実施形態のレンズ部材62と同様の構成となっており、偏向部41の周囲において偏向部41を取り囲むように環状且つ筒状に配されている。そして、装置外から装置中心(中心軸42aの位置)に向けて入り込んできた反射光L2を偏向部41側に向かうにつれて徐々に集光させる集光レンズとして機能している。このレンズ部材362も、例えば中心軸42aを通る切断面で切断した外形が外側に向けて凸となる蒲鉾形状をなしており、中心軸42aを通るどの方向の切断面でも同様の外形となるように構成されている。即ち、中心軸42aを通るどの方向の切断面でも図8のような外形形状をなしている。また、中心軸42aを通るどの方向の切断面でもレンズの光軸が水平方向(中心軸42aと直交する方向)或いは水平方向に近い方向となっており且つ各切断面での光軸の高さ(上下方向の位置)が一定となっている。
【0061】
そして、このレンズ部材362は、偏向部41との上下の相対的位置関係に応じて視野方向(外部空間においてフォトダイオード20(受光手段)で受光可能となる視野の方向)を定めるように構成され、物体からの反射光がこの視野方向にある場合に当該反射光を集光しつつ偏向部41を介してフォトダイオード20へ導くように機能する。例えば、レンズ部材362の上記光軸が位置P1とほぼ同じ高さのときには、図8のように視野方向が水平方向に沿って設定される。また、レンズ部材362の上記光軸が位置P1よりも高いときには、図9のように視野方向が斜め上向きに設定される。また、レンズ部材362の上記光軸が位置P1よりも低いときには、視野方向が斜め下向きに設定される。
【0062】
そして、このレーザレーダ装置1でも、フォトダイオード20で受光可能となる視野の向き(視野方向)と、外部空間に照射されるレーザ光L1の向きとが対応するように制御される。即ち、図9のようにレーザ光L1が斜め上向きに照射されるときには機構駆動部250の駆動制御(即ち偏向部41の上下位置制御)により偏向部41が下方側に移動し、斜め上向きのレーザ光L1(レーザ光L12)の向きに対応して視野方向も斜め上向きになり、図8のようにレーザ光L1が水平向きに照射されるときには、水平向きのレーザ光L1(レーザ光L11)の向きに対応して視野方向も水平向きになる。また、レーザ光L1が斜め下向きに照射されるときには視野方向もその向きに対応して斜め下向きになる。
【0063】
このような本実施形態の構成でも第1、第2実施形態と同様の効果を奏する。また、開口部4を閉塞する部材としてレンズ部材362を兼用することができるため、別途レーザ光透過板等を用意する構成と比較して部品数の低減を図ることができる。これにより、装置構成の簡素化、コンパクト化を図りやすくなる。
【0064】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0065】
上記実施形態では、装置を基準とするレーザ光の上下の向き(水平面とのなす角度)を3段階に切り替え得る構成を例示したが、4段階以上の多段階に切り替え得る構成としてもよい。
【0066】
上記実施形態では、レーザ光の向きを水平方向だけでなく高さ方向に変化させ得るレーザレーダ装置を例示したが、このように走査する方法は上記の例に限られず、例えば、偏向部を変位させる方法や、ケース全体を変位させる方法など、公知の様々な方法を用いることができる。
【符号の説明】
【0067】
1…レーザレーダ装置
3…ケース
5…レーザ光透過板
10…レーザダイオード(レーザ光発生手段)
20…フォトダイオード(受光手段)
31…揺動ミラー(照射方向変更手段)
36…アクチュエータ(照射方向変更手段)
40…回転偏向装置(回転偏向手段)
41…偏向部
42a…中心軸
50…モータ(駆動手段)
62…レンズ部材
70…制御部(照射方向変更手段、視野方向変更手段、検出手段、駆動制御手段、設定手段)
80…レンズ駆動部(視野方向変更手段、上下動手段)
250…機構駆動部(視野方向変更手段、上下動手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9