(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5861560
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】工事効率評価システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20160202BHJP
【FI】
G06Q50/08
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-110428(P2012-110428)
(22)【出願日】2012年5月14日
(65)【公開番号】特開2013-238956(P2013-238956A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2014年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】安福 大輔
(72)【発明者】
【氏名】滝口 紀賀
【審査官】
大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−018388(JP,A)
【文献】
特開2006−048468(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/113253(WO,A1)
【文献】
特開2010−122734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−50/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象とする工事現場全域を納めた写真を、あらかじめ設定された時間間隔で繰り返し撮影するインターバル撮影手段と、
当該インターバル撮影によって得られた連続写真を取り込んで、写真から作業者を除去する画像処理を行う画像処理手段と、
画像処理された画像処理データと予め定義付けされた位置データとに基づいて、工事現場内における各設備の位置を、各時間ごとに推定して追跡し、各設備の移動軌跡を求めるトラッキング手段を備えることを特徴とする工事効率評価システム。
【請求項2】
トラッキング手段は、各設備位置の推定を、Lucas−Kanade法または平均値シフト法によって行うことを特徴とする請求項1記載の工事効率評価システム。
【請求項3】
画像処理手段は、写真から作業者を除去する画像処理を、平均値法またはコードブック法によって行うことを特徴とする請求項1または2に記載の工事効率評価システム。
【請求項4】
画像処理手段は、平均値法またはコードブック法によって除去しきれなかった成分を、カルマンフィルタにより除去することを特徴とする請求項3記載の工事効率評価システム。
【請求項5】
インターバル撮影手段は、インターバル撮影を5〜30秒間隔で行うことを特徴とする請求項1記載の工事効率評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に建設工事のように集団で、階層的かつ組織的に行う工事の作業効率を評価するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、工場における作業評価方法としては、作業状態をビデオカメラ等で記録し、記録された動画をコンピュータに取り込んで、動作分析装置を用いて分析する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、従来の技術は、工場における個々の作業者の動作に着目して、各作業者の作業遅れを分析するものが主流であり、特に建設工事のように集団で、階層的かつ組織的に行う工事について、工事終了後に、工事現場全体での作業効率を大局的に確認し、全工事作業計画が適切であったか否かを定量的に評価することは困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−312017公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は前記の問題を解決し、建設工事のように集団で行い、階層的・組織的に行う作業に関し、工事管理者等によって事前に計画された全工事作業計画が適切であったか否かを定量的に評価することを可能とする工事効率評価システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の工事効率評価システムは、隔で繰り返し撮影するインターバル撮影手段と、当該インターバル撮影によって得られた連続写真を取り込んで、写真から作業者を除去する画像処理を行う画像処理手段と、画像処理された画像処理データと予め定義付けされた位置データとに基づいて、工事現場内における各設備の位置を、各時間ごとに推定して追跡
し、各設備の移動軌跡を求めるトラッキング手段を備えることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の工事効率評価システムにおいて、トラッキング手段は、各設備位置の推定を、Lucas−Kanade法または平均値シフト法によって行うことを特徴とするものである。
【0009】
請求項3記載の発明は、
請求項1または2に記載の工事効率評価システムにおいて、画像処理手段は、写真から作業者を除去する画像処理を、平均値法またはコードブック法によって行うことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4記載の発明は、
請求項3記載の工事効率評価システムにおいて、平均値法またはコードブック法によって除去しきれなかった成分を、カルマンフィルタにより除去することを特徴とするものである。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の工事効率評価システムにおいて、インターバル撮影手段は、インターバル撮影を5〜30秒間隔で行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
まず、本発明に係る工事効率評価システムでは、インターバル撮影手段によって評価対象とする工事現場全域を納めた写真を元に工事効率評価を行うことにより、ビデオ撮影による動画ではデータ量が膨大になり、数日以上に亘って行われる全工事期間の工事効率評価を自動解析で行うことが困難である問題を解決した。その上で、インターバル撮影手段によって評価対象とする工事現場全域を納めた写真を、あらかじめ設定された時間間隔で繰り返し撮影し、該インターバル撮影によって得られた連続写真を取り込んで、写真から作業者を除去する画像処理を行う画像処理手段と、画像処理された画像処理データと予め定義付けされた位置データとに基づいて、工事現場内における各設備の位置を、各時間ごとに推定して追跡し
、各設備の移動軌跡を求めるトラッキング手段を備える構成により、建設工事のように集団で行い、階層的・組織的に行う作業に関し、工事管理者等によって事前に計画された全工事作業計画が適切であったか否かを定量的に評価可能とした。
【0013】
本発明によれば、
各設備の移動軌跡から工事効率の定量的な評価が可能となるため、評価結果と工事に先立って作成されていた工事工程とを比較することで、工事技能の評価や次回工事への反映を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の工事効率評価システムを説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1のフローに従って本発明の好ましい実施形態を示す。
【0016】
(ST1)評価対象とする工事現場全域を納めた写真を、5〜30秒間隔で繰り返し撮影する。本発明では、ビデオ撮影による動画ではなく、インターバル撮影による前後写真を用いることで大修繕等の長期間でも記録・処理することを可能としている。
【0017】
このように、インターバル期間を5〜30秒として、前後写真の比較を行った場合、作業者の動きは動的なデータとして検出されるのに対し、テーブル等の据え付け設備は、瞬間的な移動作業時以外は、ほぼ静止している準静的データとして検出される。すなわち(ST1)においてインターバル期間を5〜30秒とすることにより、後段の(ST2)において作業者画像の消去に必要な条件(「設備状態は準静的だが、人は動的」)を整えることができる。
【0018】
(ST2)インターバル撮影によって得られた連続写真を取り込んで、写真から作業者を除去する画像処理を行う。写真から作業者を除去する画像処理は既存の技術、例えば、平均値法またはコードブック法によって行うことができる。
【0019】
(ST3)画像処理された画像処理データと予め定義付けされた位置データとに基づいて、工事現場内における各設備の位置を、各時間ごとに推定して追跡する。各設備位置の推定は、Lucas−Kanade法または平均値シフト法によって行い、トラッキングされた各設備の移動軌跡から、作業率・並列化率・手直し率の各指標を並列計算機で自動計算する。
【0020】
画像処理により除去しきれなかったノイズは、下記の状態方程式(数1)およびフィルタリング方程式(数2)で定義されるカルマンフィルタにより除去することができる。
【0023】
(ST4)各設備の移動軌跡から、工事効率(作業率・並列化率・手直し率)を評価する。本発明では、人の作業ではなく、あくまでも工事によるモノの流れを追跡し、並列計算機の効率化評価に用いられる指標との親和性がよい「モノの流れの解析」により工事効率の評価を行うことにより、工事効率評価の自動化を実現している。
【0024】
(ST5)ST4で得られた評価結果と、工事に先立って作成されていた工事工程とを比較することで、工事技能の評価や次回工事への反映を行うことができる。