(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5861585
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】洗車機
(51)【国際特許分類】
B60S 3/04 20060101AFI20160202BHJP
【FI】
B60S3/04
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-159766(P2012-159766)
(22)【出願日】2012年7月18日
(65)【公開番号】特開2014-19299(P2014-19299A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2014年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100085501
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 静夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128842
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 温
(74)【代理人】
【識別番号】100149179
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 洋一
(72)【発明者】
【氏名】平野 正樹
【審査官】
粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3028026(JP,U)
【文献】
実開平01−073449(JP,U)
【文献】
特開平07−246918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/00−06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄車両の下方を前後方向に移動して所定の噴射範囲で洗浄水を鉛直方向に噴射して被洗浄車両の下面を洗浄する下面洗浄部と、
被洗浄車両の形状を検知する車両センサと、を備えた洗車機であって、
前記車両センサに基づき被洗浄車両の下面の高さが高い時に低い時よりも被洗浄車両の前端と前記噴射範囲の前端との距離及び被洗浄車両の後端と前記噴射範囲の後端との距離を大きくしたことを特徴とする洗車機。
【請求項2】
被洗浄車両の下方を前後方向に移動して所定の噴射範囲で洗浄水を噴射して被洗浄車両の下面を洗浄する下面洗浄部と、
被洗浄車両の形状を検知する車両センサと、を備えた洗車機であって、
被洗浄車両の下面の高さが高い時に低い時よりも被洗浄車両の前端と前記噴射範囲の前端との距離及び被洗浄車両の後端と前記噴射範囲の後端との距離を大きくし、
被洗浄車両の下面の高さが高い時に低い時よりも前記下面洗浄部の移動速度を遅くしたことを特徴とする洗車機。
【請求項3】
前記車両センサによって被洗浄車両のボンネットを検知し、前記下面洗浄部が前記ボンネットの下方を移動する時の移動速度を前記ボンネットの下方以外を移動する時よりも遅くしたことを特徴とする請求項2に記載の洗車機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被洗浄車両の下面を洗浄する下面洗浄部を備える洗車機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の洗車機は特許文献1に開示される。洗車機は被洗浄車両の下面を洗浄する下面洗浄部及び車両センサを備える。下面洗浄部は被洗浄車両の下方を前後方向に移動し、噴射ノズルを備える。噴射ノズルは洗浄水を被洗浄車両の下面に向けて噴射する。車両センサは被洗浄車両の車長を検知する。
【0003】
洗浄が開始されると車両センサによって被洗浄車両の車長が検知される。車長に応じて下面洗浄部は前後方向に移動して洗浄を開始する。これにより、被洗浄車両の下面が洗浄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−181746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、同じ車長であっても車種によっては車高が高い車種がある。車高が高い場合には低い場合に比べ、下面洗浄部と被洗浄車両の下面との距離(以下、車両下面高さと記載する)が大きい。このため、車両下面高さが高い車両に対して、低い車両と同一の洗浄範囲でもって下面洗浄部が洗浄すると、被洗浄車両の前端や後端から洗浄水が周囲に飛散して利便性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、周囲への洗浄水の飛散を抑制して利便性を向上する洗車機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、被洗浄車両の下方を前後方向に移動して所定の噴射範囲で洗浄水を噴射して被洗浄車両の下面を洗浄する下面洗浄部と、被洗浄車両の形状を検知する車両センサと、を備えた洗車機において、被洗浄車両の下面の高さ(車両下面高さと同義)が高い時に低い時よりも被洗浄車両の前端と前記噴射範囲の前端との距離及び被洗浄車両の後端と前記噴射範囲の後端との距離を大きくしたことを特徴とする。
【0008】
この構成によると、洗車の開始が指示されると車両センサによって被洗浄車両の形状が検知される。下面洗浄部は被洗浄車両の下方を前後移動し、所定の噴射範囲で洗浄水を噴射して被洗浄車両の下面を洗浄する。この時、車両下面高さが高いときに低いときよりも噴射範囲の開始位置が後方に配され、終了位置が前方に配される。
【0009】
また、本発明は上記構成の洗車機において、車両下面高さが高い時に低い時よりも前記下面洗浄部の移動速度を遅くしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は上記構成の洗車機において、前記車両センサによって被洗浄車両のボンネットを検知し、前記ボンネットの下方の前記下面洗浄部の移動速度を前記ボンネットの後方よりも遅くしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、下面洗浄部を車両下面高さが高い時に低い時よりも被洗浄車両の前端と噴射範囲の前端との距離及び被洗浄車両の後端と噴射範囲の後端との距離を大きくしたため、周囲への洗浄水の飛散を抑制して洗車機の利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態の洗車機の全体構成を示す側面図
【
図2】本発明の実施形態の洗車機の全体構成を示す正面図
【
図3】本発明の実施形態の洗車機の全体構成を示す平面図
【
図4】本発明の実施形態の洗車機の下面洗浄部の動作を示す側面図
【
図5】本発明の実施形態の洗車機の下面洗浄部の動作を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
図1、
図2及び
図3は本実施形態の洗車機を示す側面図、正面図及び平面図である。洗車機WAは洗車機本体1を備え、洗車機本体1の進入経路上にはリモートパネル7Aが配される。被洗浄車両CAはリモートパネル7Aの面前で停車し、リモートパネル7Aの操作によって洗車の受け付け等を行う。
【0014】
洗車機本体1は前後に開口し、被洗浄車両CAを跨ぐ門型に形成される。洗車機本体1の底面には地面に設けられた左右一対のレール2上に配される車輪3が設けられる。これにより、洗車機本体1はレール2上を走行して被洗浄車両CAに対して前後に相対移動する。
【0015】
洗車機本体1には被洗浄車両CAをブラッシングする複数の回転するブラシを設けている。ブラシはトップブラシ4、サイドブラシ5及びロッカーブラシ6から成っている。トップブラシ4は被洗浄車両CAの上面を洗浄し、布(織布、編布、不織布等)や樹脂繊維から成るブラシ毛を放射状に固着して形成される。
【0016】
サイドブラシ5は洗車機本体1の後部に左右一対設けられ、被洗浄車両CAの両側面と前後面に摺動して被洗浄車両CAを洗浄する。ロッカーブラシ6は左右一対設けられ、被洗浄車両CAのタイヤを含む側面下面を洗浄する。サイドブラシ5及びロッカーブラシ6もトップブラシ4と同様の回転軸及びブラシ毛を有している。
【0017】
洗車機本体1の一方の側方には洗剤やワックス等の各種液剤を貯液する複数の貯液タンク(不図示)を収納するタンク収納部50が配される。タンク収納部50の上方には市水及び各貯液タンクからの液剤を電磁弁等を介して分配する分配配管部51が設けられる。分配配管部51には第1、第2浄水ノズル11、13、第1、第2洗剤ノズル12、15、撥水コートノズル14、ワックスノズル16が導出される。
【0018】
第1、第2浄水ノズル11、13は洗車機本体1の手前側及び奥側にそれぞれ配され、被洗浄車両CAに対して市水を噴射する。第1、第2洗剤ノズル12、15は洗車機本体1の手前側及び奥側にそれぞれ配され、被洗浄車両CAに対して洗剤を噴射する。撥水コートノズル14は洗車機本体1の奥側に配され、被洗浄車両CAに対して撥水コート剤を噴射する。ワックスノズル16は洗車機本体1の奥側に配され、被洗浄車両CAに対してワックスを噴射する。
【0019】
洗車機本体1には被洗浄車両CAを乾燥させるトップ送風ノズル21及びサイド送風ノズル22を設けている。洗車機本体1の中央上部にはトップ送風ノズル21が設けられ、両側方にはサイド送風ノズル22が設けられる。トップ送風ノズル21及びサイド送風ノズル22はブロワ20からの送風を被洗浄車両CAに対して吹き付けて乾燥させる。
【0020】
洗車機本体1の前面には車両センサ8、9が設けられている。車両センサ8は光電センサから成って左右一対で設けられ、洗車機本体1に進入する被洗浄車両CAの外面形状、被洗浄車両CAの車両下面高さ、前端及び後端を検知する。車両センサ9は超音波センサから成って洗車機本体1の上部に設けられ、洗車機本体1に進入する被洗浄車両CAの車両形状やフロントガラス、ボンネット50等を検知する。
【0021】
洗車機本体1の一方の側方の前面には操作パネル7が配される。操作パネル7はリモートパネル7Aと同様の操作ボタンを備え、被洗浄車両CAから降車したユーザ等の操作により洗車の受け付けや洗車条件の設定を行う。
【0022】
洗車条件の設定としてはシャンプー、ワックス掛け、撥水コート等を水洗いに追加するボタンが操作パネル7及びリモートパネル7Aに設けられる。また、高級なシャンプー、高級なワックス、高級な撥水コート、特殊なコート等を行うボタンも設けられている。さらに、フロントガード有り、フェンダーポール有り、ドアミラー有り、リヤワイパー有り、該当装備品無し等の装備品設定ボタンが設けられている。
【0023】
また、高速洗浄コースや低速洗浄コースを設けて後述の下面洗浄装置30の洗浄時間を可変にしている。高速洗浄コースを選択することにより被洗浄車両CAの洗浄時間を短縮することができる。
【0024】
レール2の間にはレール2の前端及び後端近傍まで伸びる左右一対のレール32が設けられる。レール32上には下面洗浄装置30が載置される。下面洗浄装置30は回転モータ、車輪(いずれも不図示)及び噴射ノズル31を備える。回転モータの駆動により車輪がレール32上を転動して下面洗浄装置30がレール32上を前後方向(噴射範囲M(
図4、
図5参照))に移動する。
【0025】
下面洗浄装置30は複数のノズル31を備えて、ノズル31から所定の噴射角度で高圧水などを噴射して被洗浄車両CAの下面を洗浄する。また、洗浄水の噴射角度は洗車スタッフにより適宜設定可能である。
【0026】
上記構成により、ユーザは操作パネル7やリモートパネル7Aにて洗車機本体1の洗車条件を設定し、洗車機本体1の洗浄が開始される。洗車機本体1が前後方向に移動すると車両センサ8、9は被洗浄車両CAの形状や被洗浄車両CAの車両下面高さH1、H2の高さを検知する。車両センサ8、9の検知結果に基づき各種回転ブラシが被洗浄車両CAに摺動して被洗浄車両CAの洗浄が開始される。
【0027】
図4は乗用車系の被洗浄車両CAを洗浄する下面洗浄部30の洗浄動作を示す図である。下面洗浄部30は被洗浄車両CAの車両下面高さH1の時には前端CA1と噴射範囲Mの前端(開始位置)との第1距離L1だけ離れて噴射を開始する。乗用車系の被洗浄車両CAの場合には第1距離L1を例えば約200mm設けている。
【0028】
下面洗浄部30が噴射範囲Mの間を移動中、下面洗浄部30は洗浄水を噴射して被洗浄車両CAの下面を洗浄する。この時、下面洗浄部30は被洗浄車両CAの前部であるボンネット50の下方の移動速度をボンネット50の後方よりも遅くして前後方向に移動する。これにより、エンジンルーム内の油汚れや配管上の塵埃等の多いボンネット50の下方の洗浄力を向上できる。
【0029】
その後、下面洗浄部30は被洗浄車両CAの後端CA2と噴射範囲Mの後端との第2距離を設けて噴射を終了する。この時、乗用車系の被洗浄車両CAの場合には第2距離L2を例えば約210mm設けている。なお、第1距離L1と第2距離L2とは同じであってもよい。その後、洗車機本体1は各種ブロアを用いて被洗浄車両CAを乾燥させて洗浄は終了する。
【0030】
図5はジープ系の被洗浄車両CAを洗浄する下面洗浄部30の洗浄動作を示す図である。ジープ系の被洗浄車両CAは乗用車系の被洗浄車両CA(
図4参照)に比べて被洗浄車両CAの車両下面高さH1が高い。
【0031】
このため、第1距離L1(約450mm)、第2距離L2は乗用車系の被洗浄車両CAに比べて大きくしている。このように、被洗浄車両CAの車両下面高さH1、H2が高い時に低いい時よりも被洗浄車両CAの前端CA1と噴射範囲Mの前端(開始位置)との第1距離L1及び被洗浄車両CAの後端CA2と噴射範囲Mの後端(終了位置)との第2距離L2を大きくし、周囲への洗浄水の飛散を抑制する。
【0032】
また、ジープ系の被洗浄車両CAを洗浄する際、下面洗浄部30は乗用車系の被洗浄車両CAを洗浄する時よりも移動速度を遅くして洗浄する。これにより、被洗浄車両CAの車両下面高さH1が高い場合でも洗浄力の低下を抑制できる。
【0033】
また、被洗浄車両CAの車両下面高さH1、H2を直接検知するのではなく、ボンネット50の高さや形状に応じて噴射範囲Mの開始位置及び終了位置を可変にしてもよい。ボンネット50の高さや形状によってある被洗浄車両CAの種類を概ね特定できるためである。
【0034】
本実施形態によると、下面洗浄部30は被洗浄車両CAの車両下面高さH1、H2が高い時に低い時よりも被洗浄車両CAの前端CA1と噴射範囲Mの前端(開始位置)との第1距離L1及び被洗浄車両CAの後端CA2と噴射範囲Mの後端(終了位置)との第2距離L2を大きくしたために、周囲への洗浄水の飛散を抑制して洗車機WAの利便性を向上できる。
【0035】
また、被洗浄車両CAの車両下面高さが大きい時に小さい時よりも下面洗浄部30の移動速度を遅くしたため、洗浄力の低下を抑制できる。
【0036】
また、車両センサ8によってボンネット50を検知し、下面洗浄部30がボンネット50の下方を移動する時の移動速度をボンネット50の下方以外を移動する時よりも遅くしたため、ボンネット50の下方の洗浄力を向上できる。これにより、エンジンルーム内の油汚れや配管上の塵埃等の多いボンネット50の下方の洗浄力を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によると、被洗浄車両の下面を洗浄する下面洗浄部を備える洗車機に利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 洗車機本体
4 トップブラシ
5 サイドブラシ
6 ロッカーブラシ
7 操作パネル
7A リモートパネル
8 車両センサ
9 車両センサ
30 下面洗浄装置
CA 被洗浄車両
L1 第1距離
L2 第2距離
M 噴射範囲
WA 洗車機