特許第5861635号(P5861635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5861635非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5861635
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20160202BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20160202BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20160202BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20160202BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20160202BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20160202BHJP
   H01M 4/56 20060101ALI20160202BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20160202BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20160202BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20160202BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20160202BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20160202BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M10/052
   H01M10/0568
   H01M10/0569
   H01M4/587
   H01M4/48
   H01M4/56
   H01M4/40
   H01M4/505
   H01M4/525
   H01M4/58
   H01M4/485
   H01M2/16 P
【請求項の数】11
【全頁数】80
(21)【出願番号】特願2012-527733(P2012-527733)
(86)(22)【出願日】2011年8月2日
(86)【国際出願番号】JP2011067632
(87)【国際公開番号】WO2012017999
(87)【国際公開日】20120209
【審査請求日】2014年7月11日
(31)【優先権主張番号】特願2010-176280(P2010-176280)
(32)【優先日】2010年8月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000252300
【氏名又は名称】和光純薬工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡本 訓明
(72)【発明者】
【氏名】角野 元重
(72)【発明者】
【氏名】綿引 勉
(72)【発明者】
【氏名】大久保 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】池田 樹子
【審査官】 山下 裕久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−080620(JP,A)
【文献】 特開2007−095380(JP,A)
【文献】 特開2008−169162(JP,A)
【文献】 特開2010−103052(JP,A)
【文献】 特開2008−153118(JP,A)
【文献】 特開2006−206515(JP,A)
【文献】 特開2000−133304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−0587
H01M 4/13−62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(3)を含んでなる非水系電解液。
(1)環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及び環状カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1つを含む非水系溶媒
(2)電解質塩として、該非水系溶媒に溶解し得るリチウム塩
(3)0.01〜2重量%の下記一般式[1]で示されるメチレンビススルホネート誘導体
(式中、R及びRは、夫々独立して置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数2〜8のアルキニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数7〜15のアラルキル基、又は置換基を有していてもよいヘテロ環基を表す。)
【請求項2】
更に、負極被膜形成剤及び膨れ抑制剤から選ばれる少なくとも1つを含んでなる、請求項1に記載の非水系電解液。
【請求項3】
該非水系溶媒が、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートから選ばれる少なくとも1つの環状炭酸エステルを含むものである、請求項1又は2に記載の非水系電解液。
【請求項4】
該メチレンビススルホネート誘導体/該環状炭酸エステル比(重量比)が、0.001〜0.05の範囲である、請求項に記載の非水系電解液。
【請求項5】
該リチウム塩が、LiPF、LiBF、LiN(CFSO、LiN(CSO、ビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム及びジフルオロ[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウムの群より選ばれる少なくとも1つのリチウム塩である、請求項1〜の何れかに記載の非水系電解液。
【請求項6】
該負極被膜形成剤が、下記一般式[2]で示されるビニレンカーボネート誘導体、一般式[3]で示される環状炭酸エステル、一般式[4]で示される化合物、一般式[4’]で示される化合物及び一般式[5]で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項2に記載の非水系電解液。
(式中、R及びRは、夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のハロアルキル基を表す。)
(式中、R〜Rは、夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のハロアルキル基又は炭素数2〜12のアルケニル基である。但し、R〜Rの少なくとも1つは、炭素数1〜12のハロアルキル基である。)
(式中、R及びR10は、夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のハロアルキル基、又は炭素数2〜12のアルケニル基であり、R及びR10のうち何れか一方はハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のハロアルキル基である。また、RとR10とそれらが結合する炭素原子とで環状脂肪族酸無水物を形成していてもよい。)
(式中、R9’は、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のハロアルキル基、又は炭素数2〜12のアルケニル基であり、R10’は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のハロアルキル基、又は炭素数2〜12のアルケニル基であり、R9’及びR10’のうち何れか一方はハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のハロアルキル基である。)
(式中、R11〜R14は、夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のハロアルキル基、又は炭素数2〜12のアルケニル基であり、R11〜R14の少なくとも1つは、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のハロアルキル基である。)
【請求項7】
該膨れ抑制剤が、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン及び下記一般式[6]で示される環状ホスファゼン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1つである請求項2に記載の非水系電解液。
(式中、R15〜R20は、夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のハロアルコキシ基、又はハロゲン原子を含有していてもよい炭素数6〜12のアリール基である。)
【請求項8】
非水系溶媒に、電解質塩としてリチウム塩を溶解させ、次いで、下記一般式[1]で示されるメチレンビススルホネート誘導体を溶解させることを特徴とする非水系電解液の製造方法であって、該非水系電解液中の該メチレンビススルホネート誘導体の含有量が0.01〜2重量%である、当該非水系電解液の製造方法
(式中、R及びRは、夫々独立して置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数2〜8のアルキニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数7〜15のアラルキル基、又は置換基を有していてもよいヘテロ環基を表す。)
【請求項9】
非水系溶媒が、少なくとも1つの環状炭酸エステルと「それ以外の非水系溶媒」を含むものである、請求項に記載の非水系電解液の製造方法。
【請求項10】
(i)請求項1〜の何れかに記載の非水系電解液、(ii)負極、(iii)正極、及び(iv)セパレータを備えた非水系電解液電池。
【請求項11】
下記(i)〜(iv)を備えた、請求項10に記載の非水系電解液電池。
(i)請求項1〜の何れかに記載の非水系電解液、
(ii)下記(a)〜(d)から選ばれる少なくとも1つの負極活物質を主成分として含む、リチウムの吸蔵・放出が可能な負極、
(a)X線回折における格子面(002)面のd値が0.340nm以下の炭素質材料
(b)Sn、Si、Pb及びAlから選ばれる1種以上の金属の酸化物
(c)Sn、Si、Pb及びAlから選ばれる1種以上の金属とリチウムとの合金
(d)リチウムチタン酸化物
(iii)下記(e)〜(h)から選ばれる少なくとも1つの酸化物及び/又はポリアニオン化合物を正極活物質の主成分として含む正極、
(e)コバルト酸リチウム
(f)スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物
(g)マンガン、ニッケル、コバルトを含有する層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物
(h)リチウム含有オリビン型リン酸塩
(iv)ポリエチレンを主成分とするセパレータ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチレンビススルホネート誘導体を用いた、電池の初期不可逆容量の低減、さらにサイクル特性、電気容量、保存特性等の電池特性を改善し得る新規な非水系電解液、その製造方法、及び該電解液を用いた非水系電解液電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やノートパソコン等に代表される携帯用電子端末等の様々な小型携帯電子機器の普及に伴い、それらの電源として二次電池は重要な役割を果たしている。
【0003】
リチウム二次電池は、例えば携帯電話やノート型パソコン等の電子機器の電源、電気自動車や電力貯蔵用の電源等として広く使用されており、主に正極、非水系電解液及び負極から構成されている。
【0004】
リチウム二次電池を構成する正極としては、例えばLiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiFePO4等が知られている。これらを用いたリチウム二次電池は、充電状態で高温になった場合、正極材料と非水系電解液との界面に於いて非水系電解液中の非水系溶媒が局部的に一部酸化分解してしまうため、これにより発生した分解物やガスが電池本来の電気化学的反応を阻害し、結果として、サイクル特性などのような電池性能を低下させることが報告されている。
【0005】
また、負極としては、例えば金属リチウム、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物(例えば金属単体、酸化物、リチウムとの合金等)、炭素材料等が知られており、特にリチウムを吸蔵・放出することが可能な、コークス、人造黒鉛、天然黒鉛等の炭素材料を用いたリチウム二次電池が広く実用化されている。
【0006】
例えば天然黒鉛や人造黒鉛等の高結晶化した炭素材料を負極材料として用いたリチウム二次電池は、非水系電解液中の非水系溶媒が充電時に負極表面で還元分解され、これにより発生した分解物やガスが電池の本来の電気化学的反応を阻害するため、サイクル特性が低下することが報告されている。また、例えばリチウム金属やその合金、スズ、ケイ素等を用いた金属単体や酸化物を負極材料として用いたリチウム二次電池は、初期容量は高いもののサイクル中に負極材料の微粉化が進むため、炭素材料の負極に比べて非水系溶媒の還元分解が加速的に起こり、結果として電池の初期不可逆容量の増加に伴う1サイクル目充放電効率の低下、それに伴う電池容量やサイクル特性のような電池性能が大きく低下することが知られている。
【0007】
このように、負極材料の微粉化や非水系溶媒の分解物が蓄積すると、負極へのリチウムの吸蔵及び放出がスムーズにできなくなり、結果としてサイクル特性などの電池特性の低下が著しいという問題を有している。
【0008】
以上のように、通常のリチウム二次電池は、正極上や負極上で非水系電解液が分解する際に発生する分解物やガスにより、リチウムイオンの移動を阻害したり、電池が膨れたりすることにより電池性能を低下させる原因を有していた。
【0009】
その一方で、リチウム二次電池が搭載されている電子機器の多機能化は益々進み、電力消費量が増大する流れにある。それに伴い、リチウム二次電池の高容量化もますます進んでおり、例えば電極の密度を高める、電池内の無駄な空間容積・デッドスペースを減らす等の改良により、電池内の非水系電解液の占める体積は小さくなり、少量の非水系電解液の分解が電池の性能低下に大きく影響を及ぼすことが問題となっている。
【0010】
更に、近年、電気自動車用又はハイブリッド電気自動車用の新しい電源として、出力密度の点から、活性炭等を電極に用いる電気二重層キャパシタ、エネルギー密度と出力密度の両立の観点から、リチウムイオン二次電池と電気二重層キャパシタの蓄電原理を組み合わせた、ハイブリッドキャパシタ(リチウムの吸蔵・放出による容量と電気二重層容量の両方を活用)と呼ばれる蓄電装置の開発が行われており、サイクル特性等の向上がより求められている現状にある。
【0011】
非水系電解液電池の特性向上のためには、負極や正極の特性のみならず、リチウムイオンの移送を担う非水系電解液の特性の向上も求められている。
【0012】
現状の非水系電解液二次電池の非水系電解液としては、非プロトン性有機溶媒に、例えばLiBF4、LiPF6、LiClO4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2CF2CF3)2等のリチウム塩(電解質塩)を混合した非水系溶液が用いられている。
【0013】
非水系溶媒に例えばLiBF4、LiPF6等を溶解した非水系電解液は、例えばリチウムイオンの移送を表す導電率が高く、且つLiBF4、LiPF6の酸化分解電圧が高いために高電圧において安定であることが知られている。従って、このような非水系電解液二次電池は、高電圧、高エネルギー密度という特徴を引き出すことに寄与している(特許文献1)。
【0014】
しかしながら、リチウム塩としてLiBF4、LiPF6を溶解した非水系溶媒からなる非水系電解液は、これらの電解質の熱安定性に劣るため、60℃以上の高温環境下においてリチウム塩が分解してフッ化水素(HF)が発生するという問題を有している。このフッ化水素は電池に於ける負極の例えば炭素質材料を分解する等の現象を引き起こすため、このような非水系電解液を備えた二次電池の初期不可逆容量の増加に伴う1サイクル目充放電効率の低下等の問題による電池容量の低下を引き起こすだけでなく、高温環境下において電池の内部抵抗が増大し、充放電サイクル寿命等の電池性能が大幅に低下するという問題があった。
【0015】
また、非水系電解液中の該リチウム塩を溶解する非プロトン性有機溶媒としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート等のカーボネート類が主に用いられ、中でも電解質の溶解性が高い高誘電率溶媒と低粘性溶媒とを組み合わせた混合溶媒が好ましい。高誘電率溶媒は粘度が高く、イオン移送が非常に遅いため、その粘度を下げてイオンの移送能力を高め、イオン伝導度を高くする必要があるためである。具体的には、高誘電率溶媒である、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状炭酸エステルと、低粘性溶媒である、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状炭酸エステルとの混合溶媒が用いられており、これを含んでなる電解液は、高いイオン伝導度が得られる。
【0016】
しかしながら、エチレンカーボネートのような環状炭酸エステルと、ジメチルカーボネート又はエチルメチルカーボネートといった鎖状炭酸エステルとの混合溶媒を用いた場合、電極上で鎖状炭酸エステルによるエステル交換反応が起こり、その中間体として、メトキシ基あるいはエトキシ基といったアルコキシドラジカルが生じる。このエステル交換により生じたこれらのラジカルは、強力な求核剤であるため、環状炭酸エステルであるエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの開環・分解を促進し、ガスを発生させ、あるいは、正極活物質の金属を溶解し、結晶構造を破壊することにより、その結果として電池の初期不可逆容量の増加、それに伴う電池容量やサイクル特性のような電池特性の低下などの問題を有している。
【0017】
例えば、黒鉛負極ではリチウムイオンが挿入する電位は0.3V(vs. Li+/Li)近傍であり、この電位ではほとんどの有機溶媒が分解される。従って、初回充電時にはエチレンカーボネートなどを用いた電解液の還元分解反応が1.OV近傍より生じる。電解液の分解生成物は黒鉛負極上に表面被膜を形成して、第2サイクル以降の電解液の還元分解を抑制するために、第2サイクル以降の充放電効率は ほぼ100%となる。ただし、初回充電時での表面被膜の生成により不可逆容量が生じるために、電解液を最適化して上述の電池の不可逆容量の低減をはかる研究開発にしのぎが削られてきた。(非特許文献1)
【0018】
以上のことから、非水系電解液二次電池は、電池の初期不可逆容量の増加に伴う初期充放電効率の低下等の問題に加え、高温保存時あるいは充放電を繰り返すことで電気容量の低下や内部抵抗の上昇が起こるといった問題があり、そのために、非水系電解液二次電池の安定性や各種電池特性の向上のために、種々の添加剤が提案されている。
【0019】
例えば結晶度の高い黒鉛系負極を使用する二次電池に於いては、例えばビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート等を含有する非水系電解液が(特許文献2及び特許文献3)、例えば炭素負極を使用する二次電池に於いては、1,3-プロパンスルトン及びブタンスルトンを含有する非水系電解液等(特許文献4)が提案されている。
【0020】
ビニレンカーボネートやビニルエチレンカーボネート等の不飽和基を有する環状カーボネート化合物や1,3-プロパンスルトンやブタンスルトン等のスルトン化合物を含有する電解液は、これら添加剤が負極表面で重合・還元分解することにより、負極の表面に電解液の還元分解を抑制する安定な被膜を形成するため、この反応被膜層が負極の表面を覆うことにより、負極表面で起こっていた溶媒の分解等の副反応が抑制され、結果として電池の初期不可逆容量の増加に伴う1サイクル目充放電効率の低下等の問題が改善される。このため、これら添加剤を含有する電解液は、何れの負極を使用した場合でもある一定の効果が得られるが、特に高結晶性の天然黒鉛や人造黒鉛負極に対して、ビニレンカーボネートがグラファイト層の剥離抑制に効果を示すことから、これらを負極とする電池の電解液添加剤として広く使用されてきた。
【0021】
一方、上述のスルトン化合物や不飽和基を有する環状カーボネート化合物以外にも負極上に被膜を形成する添加剤が報告されている。例えばプロピレングリコールジメタンスルホネート、1,4-ブタンジオールジメタンスルホネートなどのジスルホン酸エステル誘導体を添加剤として含む電解液(特許文献5、特許文献6、特許文献7及び特許文献8)、例えばエチレングリコールジメタンスルホネート等のジスルホン酸エステル誘導体と、メタンスルホン酸メチル等のスルホン酸エステル誘導体の両方を含有する電解液(特許文献9及び特許文献10)、例えばフッ素含有スルホネート化合物を含有する電解液(特許文献11及び特許文献12)等が挙げられる。
【0022】
しかしながら、例えば、前記ジスルホン酸エステル誘導体やスルホン酸エステル誘導体、フッ素含有スルホネート化合物などは、負極上での被膜形成能力が十分ではなく、非水系電解液の還元分解を抑制するのに十分な被膜が形成されないという問題点があり、またその被膜の耐久性が十分ではなかった。結果として、初期不可逆容量が増加してしまい、1サイクル目充放電効率が低下するなどの問題が生じていた。この点を改善するために非水系電解液中にジスルホン酸エステル誘導体を過剰に添加しても、負極表面に生成した被膜成分の抵抗が高くなり、逆に電池性能低下を導くという問題が生じる。そのため、これらの添加剤の電解液への添加は、電池特性と非水系電解液のコスト、その他環境面、製造工程などのトータルバランスを向上させるには不十分であった。
【0023】
また、非水系電解液調合の際には、前記リチウム塩を溶解、調合する際の発熱により、非水系電解液自体の温度が上昇し、非水系電解液中のリチウム塩が系内の水分と反応、分解してフッ化水素(HF)などの遊離酸が生成されるという問題があった。特に上述のスルトン化合物や、ジスルホン酸エステル誘導体などを含有した非水系電解液を調合する場合は、調合時の温度上昇により、前記副反応を促進することや、スルトン化合物や、ジスルホン酸エステル誘導体、フッ素含有スルホネート化合物自身が分解するなどにより、結果として、非水系電解液中の遊離酸が高くなってしまうなどの問題があるため、非水系電解液の温度上昇を防ぎ、非水系電解液の劣化を防ぐ必要があった。
【0024】
スルホネート系化合物を含む電解液については、例えば特許文献13(韓国特許公開第10-2009-0040214号)に、アルケニル基を置換基として有する2つ以上のスルホネート基を有するスルホネート系化合物を用いるものが開示されている。この文献の実施例で実際に合成されて用いられている化合物は、ビス(アリルスルホニル)エタン、ビス(2-ブテニルスルホニル)エタン、1,1,1-トリス(アリルスルホニルメチル)プロパン、テトラキス(アリルスルホニル)ネオペンタン等の、複数のスルホネート基が炭素数2以上の炭化水素鎖で結合されているものである。しかしながら、このようなスルホネート系化合物を含有する電解液を用いて作製されたリチウム電池には、1サイクル目充放電効率等の初期特性が添加剤を加えていない(無添加)の場合に比較してそれほど改善されない、という問題があった。
【0025】
以上のことから、上記の如きリチウム塩に係わる問題、非水系溶媒に係わる問題の双方を満足できる非水系電解液について検討が進められており、非水系電解液構成要素(非水系溶媒、リチウム塩、添加剤など)のそれぞれのマイナス面の効果を現れにくくする好ましい組み合わせ、新規添加剤の開発、及びそれを用いた処方の検討などが現状行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開平10−27625号公報
【特許文献2】特開平8−045545号公報
【特許文献3】特開2001−6729号公報
【特許文献4】特開平10−50342号公報
【特許文献5】特開2001−313071号公報
【特許文献6】特開2008−218425号公報
【特許文献7】特開2003−217654号公報
【特許文献8】国際公開WO2008/133112号
【特許文献9】特開2007−080620号公報
【特許文献10】特開2007−095380号公報
【特許文献11】特開2003−331920号公報
【特許文献12】特開2006−339020号公報
【特許文献13】韓国特許公開第10−2009−0040214号
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】「リチウムイオン電池 この15年と未来技術」シーエムシー出版、2008年12月25日 第1刷発行、54頁、1〜8行目
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は、上記した如き状況に鑑みなされたもので、電池の1サイクル目充放電効率、初期特性、サイクル特性・高温保存特性を向上させる、メチレンビススルホネート誘導体を含んでなる非水系電解液、その製造法及び該非水系電解液電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、<1>下記(1)〜(3)を含んでなる非水系電解液、
(1)環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及び環状カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1つを含む非水系溶媒
(2)電解質塩として、該非水系溶媒に溶解し得るリチウム塩
(3)下記一般式[1]で示されるメチレンビススルホネート誘導体
【0030】
(式中、R及びRは、夫々独立して置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数7〜15のアラルキル基、又は置換基を有していてもよいヘテロ環基を表す。)
<2>非水系溶媒に、リチウム塩を溶解させ、次いで、上記一般式[1]で示されるメチレンビススルホネート誘導体を溶解させることを特徴とする非水系電解液の製造方法。
<3>(i)上記<1>に記載の非水系電解液、(ii)負極、(iii)正極、及び(iv)セパレータを備えた非水系電解液電池、の発明である。
【発明の効果】
【0031】
本発明の非水系電解液は電解液の還元分解が抑制され、良好な被膜形成効果を有するため、初期不可逆容量が低減されることから、電池の1サイクル目充放電効率、初期特性が良好となり、高温下で安定である。従って、これをリチウム二次電池用非水系電解液として用いれば高温保存特性が良好となるだけでなく、電池内部でのガス発生が抑制可能な非水系電解液電池が提供できる。更に、充放電サイクルを繰り返しても、電池作製時の初期容量を維持することができるため、良好なサイクル特性を有する非水系電解液電池を提供できる。
【0032】
本発明の非水系電解液の製造方法は、遊離酸の生成を抑制し、非水系電解液の劣化を防ぐことが可能となるため、その品質を維持することができ、良好な非水系電解液を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
先ず、本発明の非水系電解液について説明する。
【0034】
1.メチレンビススルホネート誘導体
【0035】
本発明において使用されるメチレンビススルホネート誘導体は、下記一般式[1]で示されるものである(以下、本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体と略記する場合がある。)。
【0036】
【0037】
(式中、R及びRは、夫々独立して置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数7〜15のアラルキル基、又は置換基を有していてもよいヘテロ環基を表す。)
【0038】
一般式[1]に於いて、R及びRで示される置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基のアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、中でも直鎖状又は環状のものが好ましく、通常炭素数1〜6、好ましくは1〜4のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、中でもメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、シクロプロピル基等がより好ましい。
【0039】
置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基の置換基としては、例えばアシル基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基等が挙げられる。
【0040】
置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基の置換基として挙げられるアシル基としては、通常炭素数2〜6のものが挙げられ、具体的には、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基等が挙げられる。
【0041】
置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基の置換基として挙げられるアルコキシ基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜4のものが挙げられ、具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等が挙げられる。
【0042】
置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基の置換基として挙げられるアリールオキシ基としては、通常炭素数6〜10のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
【0043】
置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基の置換基として挙げられるアシルオキシ基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数2〜6、好ましくは2〜3のカルボン酸由来のものが挙げられ、具体的には、例えばアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、イソバレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基等の脂肪族飽和カルボン酸由来のもの、例えばアクリロイルオキシ基、プロピオロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、クロトノイルオキシ基、イソクロトノイルオキシ基、ペンテノイルオキシ基、ヘキセノイルオキシ基等の脂肪族不飽和カルボン酸由来のもの等が挙げられる。
【0044】
置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基の好ましい具体例としては、例えばシアノメチル基、2-シアノエチル基、メトキシメチル基、2-メトキシエチル基等が挙げられる。
【0045】
及びRで示される炭素数1〜6のハロアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)で置換されたものが挙げられ、具体的には、例えばフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2-フルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3-フルオロプロピル基、トリフルオロプロピル基、ジ(トリフルオロメチル)メチル基、ヘプタフルオロプロピル基、4-フルオロブチル基、ノナフルオロブチル基、5-フルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル基(−CH(CF)H)、パーフルオロペンチル基、6-フルオロヘキシル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロへプチル基、パーフルオロオクチル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、2-クロロエチル基、ペンタクロロエチル基、3-クロロプロピル基、トリクロロプロピル基、ジ(トリクロロメチル)メチル基、ヘプタクロロプロピル基、4-クロロブチル基、ノナクロロブチル基、5-クロロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタクロロペンチル基(−CH(CCl)H)、パークロロペンチル基、6-クロロヘキシル基、パークロロヘキシル基、パークロロへプチル基、パークロロオクチル基、ブロモメチル基、トリブロモメチル基、2-ブロモエチル基、ペンタブロモエチル基、3-ブロモプロピル基、トリブロモプロピル基、ジ(トリブロモメチル)メチル基、ヘプタブロモプロピル基、4-ブロモブチル基、ノナブロモブチル基、5-ブロモペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタブロモペンチル基(−CH(CBr)H)、パーブロモペンチル基、6-ブロモヘキシル基、パーブロモヘキシル基、パーブロモへプチル基、パーブロモオクチル基、ヨードメチル基、トリヨードメチル基、2-ヨードエチル基、ペンタヨードエチル基、3-ヨードプロピル基、トリヨードプロピル基、ジ(トリヨードメチル)メチル基、ヘプタヨードプロピル基、4-ヨードブチル基、ノナヨードブチル基、5-ヨードペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタヨードペンチル基(−CH(CI)H)、パーヨードペンチル基、6-ヨードヘキシル基、パーヨードヘキシル基、パーヨードへプチル基、パーヨードオクチル基等が挙げられ、中でもトリフルオロメチル基が好ましい。
【0046】
及びRで示される炭素数1〜6のアルコキシ基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2のものが挙げられ、具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基、ネオヘキシルオキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられ、中でもメトキシ基、エトキシ基等が好ましい。
【0047】
及びRで示される置換基を有していてもよい炭素数2〜8のアルケニル基のアルケニル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよいが、直鎖状又は環状が好ましく、通常炭素数2〜8、好ましくは2〜4のものが挙げられ、具体的には、例えばビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、2-メチルアリル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、1-ヘプテニル基、2-ヘプテニル基、3-ヘプテニル基、1-オクテニル基、2-オクテニル基、3-オクテニル基、4-オクテニル基、1-シクロブテニル基、1-シクロペンテニル基、1-シクロヘキセニル基等が挙げられ、中でもビニル基、アリル基等が好ましい。
【0048】
置換基を有していてもよい炭素数2〜8のアルケニル基の置換基としては、例えばアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基が挙げられる。
【0049】
置換基を有する炭素数2〜8のアルケニル基の置換基として挙げられるアルキル基としては、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜2であり、一般式[1]に於けるR及びRで示される置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基のアルキル基の例示と同様のものが挙げられる。
【0050】
置換基を有する炭素数2〜8のアルケニル基の置換基として挙げられるアリール基としては、炭素数6〜10のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0051】
置換基を有する炭素数2〜8のアルケニル基の置換基として挙げられるアシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基及びアシルオキシ基としては、一般式[1]に於けるR及びRで示される置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基の置換基として挙げられるアシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基及びアシルオキシ基と同様のものが挙げられる。
【0052】
置換基を有する炭素数2〜8のアルケニル基の好ましい具体例としては、例えば2-メチルアリル基、3-メチル-2-ブテニル基、シンナミル基(3-フェニル-2-プロペニル基)等が挙げられる。
【0053】
及びRで示される炭素数2〜8のアルキニル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数2〜8、好ましくは2〜4のものが挙げられ、具体的には、例えばエチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、1-メチル-3-ブチニル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、2-メチル-4-へプチニル基、1-へプチニル基、2-へプチニル基、3-へプチニル基、1-オクチニル基、2-オクチニル基、3-オクチニル基、4-オクチニル基等が挙げられ、中でも2-プロピニル基が好ましい。
【0054】
及びRで示されるアラルキル基としては、通常炭素数7〜15のもの、好ましくは7〜10のものが挙げられ、具体的には、例えばベンジル基、フェネチル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基、3-フェニルプロピル基、フェニルブチル基、1-メチル-3-フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられ、中でもベンジル基が好ましい。
【0055】
及びRで示される置換基を有していてもよいヘテロ環基のヘテロ環基としては、例えば5員環又は6員環であり、1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいるもの等が挙げられ、具体的には、例えばチエニル基、ピロリル基等の脂肪族ヘテロ環基が挙げられる。
【0056】
置換基を有するヘテロ環基の置換基としては、アルキル基及びエチレンジオキシ基等が挙げられ、アルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0057】
置換基を有するヘテロ環基の好ましい具体例としては、例えば4-メチル-2-チエニル基、3,4-エチレンジオキシ-チエニル基等の脂肪族ヘテロ環基等が挙げられる。
【0058】
本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体としては、下記一般式[1a]で示されるものが好ましい。
【0059】
【0060】
(式中、R1a及びR2aは、夫々独立して炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基を有する炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数1〜6のアルキル基を有する炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜10のアリール基を有する炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数2〜8のアルキニル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数7〜15のアラルキル基、窒素原子又は/及び硫黄原子を含む5〜6員のヘテロ環基、炭素数1〜3のアルキル基を有する窒素原子又は/及び硫黄原子を含む5〜6員のヘテロ環基、又はエチレンジオキシ基を有する窒素原子又は/及び硫黄原子を含む5〜6員のヘテロ環基を表す。)
【0061】
また、本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体としては、下記一般式[1b]で示されるものがより好ましい。
【0062】
【0063】
(式中、R1b及びR2bは、夫々独立して炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数1〜6のアルキル基を有する炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜10のアリール基を有する炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数7〜15のアラルキル基、硫黄原子を含む5〜6員のヘテロ環基を表す。)
【0064】
上記一般式に於いて、R1a、R2a、R1b及びR2bで示される炭素数1〜6のアルキル基、R1a及びR2aで示される炭素数1〜4のアルコキシ基を有する炭素数1〜6のアルキル基のアルキル基、R1a及びR2aで示されるシアノ基を有する炭素数1〜6のアルキル基のアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、中でも直鎖状又は環状のものが好ましく、通常炭素数1〜6、好ましくは1〜4のものが挙げられ、R及びRで示される置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基のアルキル基と同じものが例示される。
【0065】
炭素数1〜4のアルコキシ基を有する炭素数1〜6のアルキル基のアルコキシ基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜4のものが挙げられ、具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等が挙げられる。
炭素数1〜4のアルコキシ基を有する炭素数1〜6のアルキル基の好ましい具体例としては、例えばメトキシメチル基、2-メトキシエチル基等が挙げられる。
【0066】
1a、R2a、R1b及びR2bで示される炭素数1〜6のハロアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)で置換されたものが挙げられ、R及びRで示される炭素数1〜6のハロアルキル基と同じものが例示される。
【0067】
1a及びR2aで示される炭素数1〜4のアルコキシ基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2のものが挙げられ、R及びRで示される炭素数1〜6のアルコキシ基と同じものが例示される。
【0068】
1a、R2a、R1b及びR2bで示される炭素数2〜8のアルケニル基、R1a、R2a、R1b及びR2bで示される炭素数1〜6のアルキル基を有する炭素数2〜8のアルケニル基のアルケニル基、R1a、R2a、R1b及びR2bで示される炭素数6〜10のアリール基を有する炭素数2〜8のアルケニル基のアルケニル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよいが、直鎖状又は環状が好ましく、通常炭素数2〜8、好ましくは2〜4のものが挙げられ、R及びRで示される置換基を有していてもよい炭素数2〜8のアルケニル基のアルケニル基と同じものが例示される。
【0069】
炭素数1〜6のアルキル基を有する炭素数2〜8のアルケニル基のアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜2であり、一般式[1]に於けるR及びRで示される置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基のアルキル基の例示と同様のものが挙げられる。
炭素数1〜6のアルキル基を有する炭素数2〜8のアルケニル基の好ましい具体例としては、例えば2-メチルアリル基、3-メチル-2-ブテニル基等が挙げられる。
【0070】
炭素数6〜10のアリール基を有する炭素数2〜8のアルケニル基のアリール基としては、炭素数6〜10のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
炭素数6〜10のアリール基を有する炭素数2〜8のアルケニル基の好ましい具体例としては、例えばシンナミル基(3-フェニル-2-プロペニル基)等が挙げられる。
【0071】
1a及びR2aで示される炭素数2〜8のアルキニル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数2〜8、好ましくは2〜4のものが挙げられ、R及びRで示される炭素数2〜8のアルキニル基の例示と同様のものが挙げられる。
【0072】
1a、R2a、R1b及びR2bで示される炭素数7〜15のアラルキル基としては、通常炭素数7〜15のもの、好ましくは7〜10のものが挙げられ、R及びRで示されるアラルキル基の例示と同様のものが挙げられる。
【0073】
1a及びR2aで示される窒素原子又は/及び硫黄原子を含む5〜6員のヘテロ環基、炭素数1〜3のアルキル基を有する窒素原子又は/及び硫黄原子を含む5〜6員のヘテロ環基のヘテロ環基、エチレンジオキシ基を有する窒素原子又は/及び硫黄原子を含む5〜6員のヘテロ環基のヘテロ環基としては、異性原子として1〜3個の例えば窒素原子又は/及び硫黄原子のヘテロ原子を含んでいるもの等が挙げられ、具体的には、例えばチエニル基、ピロリル基等の脂肪族ヘテロ環基が挙げられる。
【0074】
1a及びR2aで示される炭素数1〜3のアルキル基を有する窒素原子又は/及び硫黄原子を含む5〜6員のヘテロ環基のアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
炭素数1〜3のアルキル基を有する窒素原子又は/及び硫黄原子を含む5〜6員のヘテロ環基の好ましい具体例としては、例えば4-メチル-2-チエニル基等が挙げられる。
【0075】
1a及びR2aで示されるエチレンジオキシ基を有する窒素原子又は/及び硫黄原子を含む5〜6員のヘテロ環基の好ましい具体例としては、例えば3,4-エチレンジオキシ-チエニル基等の脂肪族ヘテロ環基等が挙げられる。
【0076】
1b及びR2bで示される硫黄原子を含む5〜6員のヘテロ環基としては、異性原子として1〜3個の硫黄原子を含んでいるもの等が挙げられ、具体的には、例えばチエニル基等の脂肪族ヘテロ環基が挙げられる。
【0077】
本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体(一般式[1]、[1a]及び[1b]で示される化合物)は、左右対称の構造を有するものが好ましい。
【0078】
一般式[1]で示されるメチレンビススルホネート誘導体の具体例としては、例えばメチレンビス(メタンスルホネート)、メチレンビス(エタンスルホネート)、メチレンビス(n-プロパンスルホネート)、メチレンビス(n-ブタンスルホネート)、メチレンビス(シクロプロパンスルホネート)、メチレンビス(トリフルオロメタンスルホネート)、メチレンビス(ビニルスルホネート)、メチレンビス(2-プロピニルスルホネート)、メチレンビス(2-シアノエタンスルホネート)、メチレンビス(メトキシスルホネート)、メチレンビス(エトキシスルホネート)、メチレンビス(アリルスルホネート)、メチレンビス(2-メチルアリルスルホネート)、メチレンビス(3-メチル-2-ブテニルスルホネート)、メチレンビス(シンナミルスルホネート)、メチレンビス(ベンジルスルホネート)、メチレンビス(2-チエニルスルホネート)、メチレンビス(4-メチル-2-チエニルスルホネート)、メチレンビス(3,4−エチレンジオキシ-チエニルスルホネート)、メチレンビス(2-ピロリルスルホネート)等が挙げられる。
【0079】
一般式[1]の好ましい具体例としては、例えば以下の化合物No.1〜20等が挙げられる。但し、本発明で用いられるメチレンビススルホネート誘導体は、以下の例示により何ら制限されるものではない。
【0080】
【0081】
【0082】
これらの化合物の中でも、化合物No.1〜2、4、7、12、13、15及び17がより好ましい。
一般式[1]で示されるメチレンビススルホネート誘導体は、少なくとも1種用いればよいが、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0083】
本発明の非水系電解液中に溶解する本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体は、単独又は混合で用いる何れの場合でも、その濃度は、該非水系電解液に対して、通常0.01〜2重量%の範囲、好ましくは0.05〜1重量%の範囲である。一方、該メチレンビススルホネート誘導体の濃度が0.01重量%未満では、充放電特性などの改善効果、特にサイクル特性の改善効果が充分でなくなる場合があり、その濃度が2重量%を超えた場合には、4.2V満充電の状態で85℃以上の高温にすると、電池特性が大幅に低下し、また、その高温時に電池内部にてガス発生により膨れが生じる場合がある。
【0084】
2.非水系溶媒
本発明において使用される非水系溶媒としては、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及び環状カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1つが挙げられ(以下、本発明に係る非水系溶媒と略記する場合がある。)、中でも、少なくとも1つの環状炭酸エステルを含有するもの又は少なくとも1つの鎖状炭酸エステルを含有するものが好ましく、特に、少なくとも1つの環状炭酸エステルを有するものがより好ましい。
【0085】
環状炭酸エステルとしては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状炭酸エステルが挙げられ、中でも、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートが好ましく、特にエチレンカーボネートがより好ましい。これらは単独でも2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0086】
鎖状炭酸エステルとしては、例えば、炭素数3〜9の鎖状カーボネートが挙げられ、具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボネート、ジ-n-ブチルカーボネート、ジ-tert-ブチルカーボネート、n-ブチルイソブチルカーボネート、n-ブチル-tert-ブチルカーボネート、イソブチル-tert-ブチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルメチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、tert-ブチルメチルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルエチルカーボネート、イソブチルエチルカーボネート、tert-ブチルエチルカーボネート、n-ブチル-n-プロピルカーボネート、イソブチル-n-プロピルカーボネート、tert-ブチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルイソプロピルカーボネート、イソブチルイソプロピルカーボネート、tert-ブチルイソプロピルカーボネート等を挙げられ、中でも、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等が好ましい。これらは単独でも2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0087】
環状カルボン酸エステルとしては、炭素数3〜9のラクトン化合物が挙げられ、具体的には、例えばγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられ、中でも、γ−ブチロラクトン又はγ−バレロラクトンが好ましい。これらは単独でも2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0088】
本発明に係る非水系溶媒は、単独で用いても2種以上を適宜組み合わせて用いてもよく、中でも2種以上の非水系溶媒を組み合わせて用いるのがより好ましい。
【0089】
本発明に係る非水系溶媒を2種以上組み合わせて用いる場合の好ましい組合せとしては、例えば少なくとも1つの環状炭酸エステルと「それ以外の非水系溶媒」との組合せが挙げられる。
【0090】
少なくとも1つの環状炭酸エステルと組み合わせる「それ以外の非水系溶媒」としては、例えば当該環状炭酸エステル以外の環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル、その他の非水系溶媒等が挙げられる。
【0091】
「その他の非水系溶媒」としては、例えば炭素数3〜9の鎖状エステル、炭素数3〜6の鎖状エーテル、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、N、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン等が挙げられる。
【0092】
炭素数3〜9の鎖状エステルとしては、通常炭素数3〜9、好ましくは4〜5のものが挙げられ、具体的には、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸tert-ブチル等が挙げられ、中でも、例えば酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等が好ましい。
【0093】
炭素数3〜6の鎖状エーテルとしては、通常炭素数3〜6、好ましくは4〜6のものが挙げられ、具体的には、例えば、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、ジエトキシエタン、エトキシメトキシメタン、エトキシメトキシエタン等が挙げられ、中でも、ジメトキシエタン又はジエトキシエタンがより好ましい。
【0094】
本発明に係る非水系溶媒の好ましい組み合わせとしては、例えば環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルとの組み合わせ、環状炭酸エステルと環状カルボン酸エステルとの組み合わせ等の2種の非水系混合溶媒、例えば環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルと鎖状エステルとの組み合わせ等の3種の非水系混合溶媒等が挙げられる。
【0095】
中でも、環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルとの組み合わせは、低温サイクル特性が向上するため好ましく、環状炭酸エステルと環状カルボン酸エステルとの組合せは、低温放電特性が向上するため好ましい。これらの中でも環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルとの組み合わせがより好ましい。
【0096】
非水系溶媒の好ましい組み合わせである環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの各含有率は、環状炭酸エステル:鎖状炭酸エステル(容量比)が、通常10:90〜40:60、好ましくは15:85〜35:65、より好ましくは20:80〜30:70である。
【0097】
非水系溶媒の好ましい組み合わせである環状炭酸エステルと環状カルボン酸エステルの各含有率は、環状炭酸エステル:環状カルボン酸エステル(容量比)が、通常10:90〜40:60、好ましくは20:80〜35:65、より好ましくは25:85〜30:70である。
【0098】
また、非水系溶媒の好ましい組み合わせである、環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルと環状カルボン酸エステルとの各含有率は、環状炭酸エステル:鎖状炭酸エステル:環状カルボン酸エステル(容量比)が、通常10:89:1〜40:55:5、好ましくは15:84:1〜35:62:3である。
【0099】
本発明に係る非水系溶媒は、その他の非水系溶媒を更に含有していてもよいが、その場合の全非水溶媒中の、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及び環状カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1つの含有量としては、通常80容量%以上であることが好ましい。また、全非水系溶媒中に含有される本発明に係る非水系溶媒に於ける環状炭酸エステルの含有率としては、全非水系溶媒量に対して、下限が通常10容量%以上、好ましくは15容量%以上、より好ましくは20容量%以上であり、また、上限が通常60容量%以下、好ましくは50容量%以下、より好ましくは40容量%以下である。
【0100】
例えば、本発明に係る非水系溶媒(ここでは環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの組合せを一例とする)とその他の非水系溶媒として鎖状エステルを組合せた場合の各含有率の好ましい例を以下に示す。
即ち、環状炭酸エステル:鎖状炭酸エステル:鎖状エステル(容量比)が、通常10:89:1〜40:55:5、好ましくは15:84:1〜35:62:3である。
【0101】
また、本発明に係る非水系溶媒として、少なくとも1つの環状炭酸エステルを含むものを用いる場合の該環状炭酸エステルに対する本発明に係る一般式[1]で示されるメチレンビススルホネート誘導体の重量比(該メチレンビススルホネート誘導体/該環状炭酸エステル比)が、通常0.0005〜0.07、好ましくは0.001〜0.05の範囲である。この上限より高い場合は、副反応が進行する場合があるので注意が必要である。
【0102】
3.電解質塩(リチウム塩)
本発明の非水系電解液に使用される電解質塩としては、リチウム塩が用いられ(以下、本発明に係る電解質塩と略記する場合がある。)、電解質として、本発明に係る非水系溶媒に溶解して使用し得るものであれば特に限定はされないが、具体例としては、例えば無機リチウム塩、有機リチウム塩、その他のリチウム塩等が挙げられる。
【0103】
該無機リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF等の無機フッ化物塩、例えばLiClO、LiBrO、LiIO等の過ハロゲン酸塩等が挙げられ、中でも無機フッ化物が好ましく、特にLiPF、LiBFがより好ましい。
【0104】
該有機リチウム塩としては、例えばLiCFSO等の有機スルホン酸塩、例えばLiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSOLiN(CFSO)(CSO)等のパーフルオロアルキルスルホン酸イミド塩、例えばLiC(CFSO等のパーフルオロアルキルスルホン酸メチド塩、例えばLiPF(CF、LiPF(CF、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(C、LiPF(n-C、LiPF(n-C、LiPF(n-C、LiPF(iso-C、LiPF(iso-C、LiPF(iso-C等のパーフルオロアルキル基置換フルオロホスフェート塩、例えばLiB(CF、LiBF(CF、LiBF(CF、LiBF(CF)、LiB(C、LiBF(C、LiBF(C、LiBF(C)、LiB(n-C、LiBF(n-C、LiBF(n-C、LiBF(n-C)、LiB(iso-C、LiBF(iso-C、LiBF(iso-C、LiBF(iso-C)等のパーフルオロアルキル基置換フルオロボレート塩等のパーフルオロアルキル基置換含フッ素有機リチウム塩等が挙げられ、中でも有機スルホン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸イミド塩が好ましく、特にLiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSOLiN(CFSO)(CSO)がより好ましい。
【0105】
その他のリチウム塩としては、例えば(CF(SONLi、(CF(SONLi等の環状アルキレン鎖含有リチウム塩、例えばビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム、ジフルオロ[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム等のオキサレート錯体アニオン含有リチウム塩等が挙げられ、中でも(CF(SONLi、(CF(SONLi、ビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム、ジフルオロ[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウムが好ましい。
【0106】
本発明に係る電解質塩の中でも、特に好ましい電解質塩としては、例えばLiPF、LiBF、LiN(CFSO、LiN(CSO、ビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム、ジフルオロ[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム等が挙げられ、最も好ましい電解質塩としては、例えばLiPF、LiBF、LiN(CFSO、ビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム等が挙げられる。これらの電解質塩は単独で用いても2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0107】
これらの電解質塩の好適な組合せとしては、例えばLiBF、LiN(CFSO、LiN(CSO、ビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウムやジフルオロ[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウムから選ばれる少なくとも1つとLiPFとを組み合わせたものが挙げられ、中でも、LiPFとLiBFとの組合せ、LiPFとLiN(SOCFとの組合せ、LiPFとビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウムとの組合せ等がより好ましい。
【0108】
電解質として、LiPFと、LiBF4、LiN(CFSO、LiN(CSO、ビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウム及びジフルオロ[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウムから選ばれる少なくとも1つとを混合使用した場合の混合比率(モル比)は、通常70:30〜99:1、好ましくは80:20〜98:2の範囲である。このような比率で組合せた電解質塩を使用することにより、種々の電池特性をさらに向上させる効果がある。一方、該比率が、70:30よりもLiPFの割合が低い場合には低温サイクル特性が低下してしまう。
【0109】
また、該電解質を2種類以上混合して用いる場合、非水系電解液中の溶質の全リチウム塩のモル濃度は、通常0.5〜3モル/リットル、好ましくは0.7〜2.5モル/リットル、より好ましくは0.7〜1.5モル/リットルである。全リチウム塩の濃度が低過ぎると非水系電解液のイオン伝導率が不十分となる場合がある。一方、該リチウム塩の濃度が高過ぎると、粘度上昇のためイオン伝導率が低下し、また低温での析出が起こりやすくなる場合もある。
【0110】
4.負極被膜形成剤
本発明の非水系電解液は、更に、負極被膜形成剤を含有していてもよい。負極被膜形成剤は、これを非水系電解液に含有させることにより負極の表面上に被膜を形成するため、例えば電解液中の非水系溶媒の分解などの副反応が抑制され、初期の不可逆容量の低減を図ることができる。
【0111】
該負極被膜形成剤としては、例えば下記一般式[2]で示されるビニレンカーボネート誘導体、一般式[3]で示される環状炭酸エステル、一般式[4]で示される化合物、一般式[4’]で示される化合物及び一般式[5]で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つであるもの挙げられる(以下、本発明に係る負極被膜形成剤と略記する場合がある。)。これらは単独でも2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0112】
(式中、R及びRは、夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のハロアルキル基を表す。)
【0113】
(式中、R〜Rは夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のハロアルキル基又は炭素数2〜12のアルケニル基である。但し、R〜Rの少なくとも1つはハロアルキル基である。)
【0114】
(式中、R及びR10は夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のハロアルキル基、又は炭素数2〜12のアルケニル基であり、R及びR10のうち何れか一方はハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のハロアルキル基である。また、RとR10とそれらが結合する炭素原子とで環状脂肪族酸無水物を形成していてもよい。)
【0115】
(式中、R’は、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のハロアルキル基、又は炭素数2〜12のアルケニル基であり、R10’は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のハロアルキル基、又は炭素数2〜12のアルケニル基であり、R’及びR10’のうち何れか一方はハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のハロアルキル基である。)
【0116】
【0117】
(式中、R11〜R14は夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のハロアルキル基、又は炭素数2〜12のアルケニル基であり、R11〜R14の少なくとも1つは、ハロゲン原子、1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のハロアルキル基である。)
【0118】
一般式[2]〜[5]に於いて、R〜R14で示されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0119】
〜R14で示される炭素数1〜12のアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜12の、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、ネオヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ネオオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、ネオノイル基、n-デシル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、ネオデシル基、n-ウンデシル基、イソウンデシル基、sec-ウンデシル基、tert-ウンデシル基、ネオウンデシル基、n-ドデシル基、イソドデシル基、sec-ドデシル基、tert-ドデシル基、ネオドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0120】
〜R14で示される炭素数1〜12のハロアルキル基としては、通常炭素数1〜12、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)で置換されたものが挙げられ、具体的には、例えばフルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、2-フルオロエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタブロモエチル基、ペンタヨードエチル基、3-フルオロプロピル基、3-クロロプロピル基、3-ブロモプロピル基、トリフルオロプロピル基、トリクロロプロピル基、トリブロモプロピル基、ジ(トリフルオロメチル)メチル基、ジ(トリクロロメチル)メチル基、ジ(トリブロモメチル)メチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ヘプタクロロプロピル基、4-フルオロブチル基、4-クロロブチル基、4-ブロモブチル基、ノナフルオロブチル基、ノナクロロブチル基、ノナブロモブチル基、5-フルオロペンチル基、5-クロロペンチル基、5-ブロモペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル基(−CH(CF)H)、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタクロロペンチル基(−CH(CCl)H)、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタブロモペンチル基(−CH(CBr)H)、パーフルオロペンチル基、パークロロペンチル基、パーブロモペンチル基、6-フルオロヘキシル基、6-クロロヘキシル基、6-ブロモヘキシル基、パーフルオロヘキシル基、パークロロヘキシル基、パーブロモヘキシル基、パーフルオロへプチル基、パークロロヘプチル基、パーブロモヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パークロロオクチル基、パーブロモオクチル基、パーフルオロノニル基、パークロロノニル基、パーブロモノニル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデシル基(−(CH)(CF)CF)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカクロロデシル基(−(CH)(CCl)CCl)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカブロモデシル基(−(CH)(CBr)CBr)、パーフルオロデシル基、パークロロデシル基、パーブロモデシル基、パーフルオロウンデシル基、パークロロウンデシル基、パーブロモウンデシル基、パーフルオロドデシル基、パークロロドデシル基、パーブロモドデシル基等が挙げられる。
【0121】
一般式[3]〜[5]に於いて、R〜R14で示される炭素数2〜12のアルケニル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数2〜12、好ましくは2〜6のものが挙げられ、具体的には、例えばビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチルアリル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、1-ヘプテニル基、2-ヘプテニル基、3-ヘプテニル基、4-ヘプテニル基、5-ヘプテニル基、6-ヘプテニル基、1-ドデセニル基、2-ドデセニル基、3-ドデセニル基、4-ドデセニル基、5-ドデセニル基、6-ドデセニル基、7-ドデセニル基、8-ドデセニル基、9-ドデセニル基、10-ドデセニル基、11-ドデセニル基、1-シクロブテニル基、1-シクロペンテニル基、1-シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0122】
一般式[4]に於いて、RとR10とそれらが結合する炭素原子とで形成される環状脂肪族酸無水物としては、該無水物上の水素原子が全てフッ素原子で置換されていてもよく、通常炭素数3〜8、好ましくは3〜5の、フッ素置換されていない環状脂肪族無水物、フッ素置換無水物等が挙げられる。該フッ素置換されていない環状脂肪族無水物としては、具体的には、例えば無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられ、中でも無水コハク酸、無水グルタル酸が好ましい。該フッ素置換環状脂肪族酸無水物としては、例えばジフルオロ無水マレイン酸、テトラフルオロ無水コハク酸、テトラフルオロ無水シトラコン酸、テトラフルオロ無水グルタコン酸、テトラフルオロ無水イタコン酸、ヘキサフルオロ無水グルタル酸等が挙げられ、中でもテトラフルオロ無水コハク酸、ヘキサフルオロ無水グルタル酸が好ましい。
【0123】
負極被膜形成剤として挙げられる一般式[2]で示されるビニレンカーボネート誘導体の具体例としては、例えばビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、フルオロメチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、プロピルビニレンカーボネート、ブチルビニレンカーボンネード、ジプロピルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート等が挙げられ、中でもビニレンカーボネートが好ましい。
【0124】
一般式[3]で示される環状炭酸エステルの具体例としては、例えばフルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピレンカーボネート、ジフルオロプロピレンカーボネート、モノフルオロメチルエチレンカーボネート、ジフルオロメチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、クロロプロピレンカーボネート、ジクロロプロピレンカーボネート等が挙げられ、中でもフルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネートが好ましい
【0125】
一般式[4]で示される化合物の具体例としては、例えば無水トリフルオロ酢酸、無水ペンタフルオロプロピオン酸、無水ヘプタフルオロ−n−酪酸等のフッ素化カルボン酸無水物、例えばジフルオロ無水マレイン酸、テトラフルオロ無水コハク酸、テトラフルオロ無水シトラコン酸、テトラフルオロ無水グルタコン酸、テトラフルオロ無水イタコン酸、ヘキサフルオロ無水グルタル酸等のフッ素置換環状脂肪族酸無水物、例えば無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸等の環状脂肪族酸無水物等が好ましい。
【0126】
一般式[4’]で示される化合物の具体例としては、例えばトリフルオロ酢酸メチル、ペンタフルオロプロピオン酸メチル、ヘプタフルオロ−n−酪酸メチル、ノナフルオロ吉草酸メチル等のフッ素化カルボン酸メチル、例えばトリフルオロ酢酸エチル、ペンタフルオロプロピオン酸エチル、ヘプタフルオロ−n−酪酸エチル、ノナフルオロ吉草酸エチル等のフッ素化カルボン酸エチル等が好ましい。
【0127】
一般式[5]で示される化合物の具体例としては、例えば無水フタル酸、3-フルオロ無水フタル酸、4-フルオロ無水フタル酸、テトラフルオロ無水フタル酸等が好ましい。
【0128】
負極被膜形成剤としては、上記一般式[2]〜[5]で示される化合物から選ばれる少なくとも1種を用いればよいが、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
負極被膜形成剤として、上記一般式[2]〜[5]で示される化合物から選ばれる2種以上を用いる場合の好ましい組合せとしては、例えば一般式[2]で示されるビニレンカーボネート誘導体と一般式[4]で示される化合物との組合せ、一般式[3]で示される環状炭酸エステルと一般式[4]で示される化合物との組合せ、一般式[2]で示されるビニレンカーボネート誘導体と一般式[3]で示される環状炭酸エステルと一般式[4]で示される化合物との組合せ、一般式[2]で示されるビニレンカーボネート誘導体と一般式[3]で示される環状炭酸エステルと一般式[5]で示される化合物との組合せ等が挙げられる。
【0129】
一般式[2]で示されるビニレンカーボネート誘導体と一般式[4]で示される化合物との組合せの好ましい具体例としては、例えばビニレンカーボネートと無水トリフルオロ酢酸との組合せ、ビニレンカーボネートとヘキサフルオロ無水グルタル酸との組合せ等が挙げられる。
【0130】
一般式[3]で示される環状炭酸エステルと一般式[4]で示される化合物との組合せの好ましい具体例としては、例えばフルオロエチレンカーボネートとテトラフルオロ無水コハク酸との組合せ、ジフルオロエチレンカーボネートとヘキサフルオロ無水グルタル酸との組合せ等が挙げられる。
【0131】
一般式[2]で示されるビニレンカーボネート誘導体と一般式[3]で示される環状炭酸エステルと一般式[4]で示される化合物との組合せの好ましい具体例としては、例えばビニレンカーボネートとフルオロエチレンカーボネートとテトラフルオロ無水コハク酸との組合せ等が挙げられる。
【0132】
一般式[2]で示されるビニレンカーボネート誘導体と一般式[3]で示される環状炭酸エステルと一般式[5]で示される化合物との組合せの好ましい具体例としては、例えばビニレンカーボネートとフルオロエチレンカーボネートとテトラフルオロ無水フタル酸との組合せ等が挙げられる。
【0133】
本発明の非水系電解液中に溶解する該負極被膜形成剤の含有量は、単独又は混合で用いる場合でも、その濃度は、該非水系電解液に対して0.1〜15重量%の範囲である。
【0134】
また、負極被膜形成剤として一般式[2]で示されるビニレンカーボネート誘導体を用いる場合の該ビニレンカーボネートの好ましい含有量は、本発明の非水系電解液に対して、通常0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%の範囲である。
【0135】
更に、一般式[3]で示される環状炭酸エステルを用いる場合の該環状炭酸エステルの好ましい含有量は、本発明の非水系電解液に対して、通常0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜15重量%である。
【0136】
更にまた、一般式[4]で示される化合物又は一般式[5]で示される化合物を用いる場合の該化合物の好ましい含有量は、本発明の非水系電解液に対して、通常0.1〜2重量%、好ましくは0.1〜1重量%である。
【0137】
5.膨れ抑制剤
本発明の非水系電解液は、更に、膨れ抑制剤を含有していてもよい。膨れ抑制剤は、これを非水系電解液に含有させることにより、例えば4.2V〜4.3V満充電の状態で60℃以上の高温保存時でのガス発生を抑制することができ、また高温貯蔵特性を改善することができる。
【0138】
該膨れ抑制剤としては、例えばγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン及び下記一般式[6]で示される環状ホスファゼン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1つであるものが挙げられる(以下、本発明に係る膨れ抑制剤と略記する場合がある。)。これらは単独でも2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0139】
(式中、R15〜R20は夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のハロアルコキシ基、又はハロゲン原子を含有していてもよい炭素数6〜12のアリール基である。)
【0140】
一般式[6]に於いて、R15〜R20で示されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でもフッ素原子が好ましい。
【0141】
15〜R20で示される炭素数1〜10のアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、ネオヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ネオオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、ネオノイル基、n-デシル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、ネオデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0142】
15〜R20で示される炭素数1〜10のハロアルキル基としては、通常炭素数1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)で置換されたものが挙げられ、具体的には、例えばフルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、2-フルオロエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタブロモエチル基、ペンタヨードエチル基、3-フルオロプロピル基、3-クロロプロピル基、3-ブロモプロピル基、トリフルオロプロピル基、トリクロロプロピル基、トリブロモプロピル基、ジ(トリフルオロメチル)メチル基、ジ(トリクロロメチル)メチル基、ジ(トリブロモメチル)メチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ヘプタクロロプロピル基、4-フルオロブチル基、4-クロロブチル基、4-ブロモブチル基、ノナフルオロブチル基、ノナクロロブチル基、ノナブロモブチル基、5-フルオロペンチル基、5-クロロペンチル基、5-ブロモペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル基(−CH(CF)H)、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタクロロペンチル基(−CH(CCl)H)、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタブロモペンチル基(−CH(CBr)H)、パーフルオロペンチル基、パークロロペンチル基、パーブロモペンチル基、6-フルオロヘキシル基、6-クロロヘキシル基、6-ブロモヘキシル基、パーフルオロヘキシル基、パークロロヘキシル基、パーブロモヘキシル基、パーフルオロへプチル基、パークロロヘプチル基、パーブロモヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パークロロオクチル基、パーブロモオクチル基、パーフルオロノニル基、パークロロノニル基、パーブロモノニル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデシル基(−(CH)(CF)CF)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカクロロデシル基(−(CH)(CCl)CCl)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカブロモデシル基(−(CH)(CBr)CBr)、パーフルオロデシル基、パークロロデシル基、パーブロモデシル基等が挙げられる。
【0143】
15〜R20で示される炭素数1〜10のアルコキシ基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基、ネオヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、sec-ヘプチルオキシ基、tert-ヘプチルオキシ基、ネオヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec-オクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、ネオオクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、sec-ノニルオキシ基、tert-ノニルオキシ基、ネオノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、イソデシルオキシ基、sec-デシルオキシ基、tert-デシルオキシキ、ネオデシルオキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロノニルオキシ基、シクロデシルオキシ基等が挙げられる。
【0144】
15〜R20で示される炭素数1〜10のハロアルコキシ基としては、通常炭素数1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3のアルコキシ基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)で置換されたものが挙げられ、具体的には、例えばフルオロメトキシ基、クロロメトキシ基、ブロモメトキシ基、ヨードメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、トリクロロメトキシ基、トリブロモメトキシ基、2-フルオロエトキシ基、2-クロロエトキシ基、2-ブロモエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ペンタクロロエトキシ基、ペンタブロモエトキシ基、ペンタヨードエトキシ基、3-フルオロプロポキシ基、3-クロロプロポキシ基、3-ブロモプロポキシ基、トリフルオロプロポキシ基、トリクロロプロポキシ基、トリブロモプロポキシ基、ジ(トリフルオロメチル)メトキシ基、ジ(トリクロロメチル)メトキシ基、ジ(トリブロモメチル)メトキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基、ヘプタクロロプロポキシ基、4-フルオロブトキシ基、4-クロロブトキシ基、4-ブロモブトキシ基、ノナフルオロブトキシ基、ノナクロロブトキシ基、ノナブロモブトキシ基、5-フルオロペンチルオキシ基、5-クロロペンチルオキシ基、5-ブロモペンチルオキシ基、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチルオキシ基(−CH(CF)H)、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタクロロペンチルオキシ基(−CH(CCl)H)、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタブロモペンチルオキシ基(−CH(CBr)H)、パーフルオロペンチルオキシ基、パークロロペンチルオキシ基、パーブロモペンチルオキシ基、6-フルオロヘキシルオキシ基、6-クロロヘキシルオキシ基、6-ブロモヘキシルオキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パークロロヘキシルオキシ基、パーブロモヘキシルオキシ基、パーフルオロへプチルオキシ基、パークロロヘプチルオキシ基、パーブロモヘプチルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、パークロロオクチルオキシ基、パーブロモオクチルオキシ基、パーフルオロノニルオキシ基、パークロロノニルオキシ基、パーブロモノニルオキシ基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデシルオキシ基(−(CH)(CF)CF)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカクロロデシルオキシ基(−(CH)(CCl)CCl)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカブロモデシルオキシ基(−(CH)(CBr)CBr)、パーフルオロデシルオキシ基、パークロロデシルオキシ基、パーブロモデシルオキシ基等が挙げられる。
【0145】
15〜R20で示されるハロゲン原子を含有していてもよい炭素数6〜12のアリール基のアリール基としては、炭素数6〜10のものが好ましく、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0146】
ハロゲン原子を含有する炭素数6〜12のアリール基としては、該アリール基中の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)で置換されたものが挙げられ、具体的には、例えばフルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、パーフルオロフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、トリクロロフェニル基、パークロロフェニル基、ブロモフェニル基、ジブロモフェニル基、トリブロモフェニル基、パーブロモフェニル基、ヨードフェニル基、ジヨードフェニル基、トリヨードフェニル基、パーヨードフェニル基、フルオロナフチル基、パーフルオロナフチル基、クロロナフチル基、パークロロナフチル基、ブロモナフチル基、パーブロモナフチル基、ヨードナフチル基、パーヨードナフチル基等が挙げられる。
【0147】
膨れ抑制剤として挙げられる一般式[6]で示される環状ホスファゼン誘導体の具体例としては、例えば、ヘキサメトキシトリシクロホスファゼン、ヘキサエトキシトリシクロホスファゼン、ヘキサプロポキシトリシクロホスファゼン等のアルコキシ置換環状ホスファゼン類、例えばヘキサクロロシクロトリホスファゼン、ヘキサフルオロシクロトリホスファゼン、ヘキサブロモシクロトリホスファゼン等のハロゲン置換環状ホスファゼン類、例えばエトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、ジエトキシテトラフルオロシクロトリホスファゼン、フェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、メトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、プロポキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、ブトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン等のアルコキシ及びハロゲン置換環状ホスファゼン類等が挙げられ、中でも、ハロゲン置換環状ホスファゼン類、アルコキシ及びハロゲン置換環状ホスファゼン類が好ましく、特に、例えばヘキサフルオロシクロトリホスファゼン、エトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、フェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン等がより好ましい。
【0148】
本発明に係る膨れ抑制剤の中でも、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ヘキサフルオロシクロトリホスファゼン、エトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、フェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼンがより好ましい。
【0149】
膨れ抑制剤としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン及び上記一般式[6]で示される環状ホスファゼン誘導体から少なくとも1つを用いればよいが、2種以上を用いる場合、その好ましい組み合わせとしては、例えばγ−ブチロラクトンとヘキサフルオロシクロトリホスファゼンとの組合せ、γ−ブチロラクトンとγ−バレロラクトンとヘキサフルオロシクロトリホスファゼンとの組合せ、γ−ブチロラクトンとヘキサフルオロシクロトリホスファゼンとエトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼンとの組合せ、γ−ブチロラクトンとエトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼンとフェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼンとの組合せ等が挙げられ、中でも、γ−ブチロラクトンとヘキサフルオロシクロトリホスファゼンとの組合せ、γ−ブチロラクトンとヘキサフルオロシクロトリホスファゼンとエトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼンとの組合せ、γ−ブチロラクトンとエトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼンとフェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼンとの組合せがより好ましい。
【0150】
本発明の非水系電解液中に溶解する該膨れ抑制剤の濃度は、該膨れ抑制剤を単独又は混合で用いる場合でも、その濃度は、該非水系電解液に対して、通常0.1〜3重量%、好ましくは0.2〜2重量%の範囲である。その濃度が0.1重量%未満では、例えば4.2V〜4.3V満充電の状態で60℃以上の高温保存時でのガス発生の抑制、高温貯蔵特性などの改善効果が充分でない、特にガス発生の抑制の改善効果が充分でないという問題が生じる場合がある。
【0151】
本発明に係る負極被膜形成剤及び膨れ抑制剤が、本発明の非水系電解液に含有される場合としては、例えば負極被膜形成剤のみが単独で含有される場合、膨れ抑制剤のみが単独で含有される場合、負極被膜形成剤及び膨れ抑制剤が共に含有される場合があり、中でも、負極被膜形成剤と膨れ抑制剤が共に含有される場合が好ましい。
【0152】
6.本発明の非水系電解液
本発明の非水系電解液の好ましい組み合わせとしては、例えば下記(I)〜(IV)が挙げられる。
【0153】
〔非水系電解液(I)〕
(1)本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体、(2)非水系溶媒、及び(3)リチウム塩(電解質塩)を含んでなる非水系電解液、
【0154】
〔非水系電解液(II)〕
(1)本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体、(2)少なくとも環状炭酸エステルを含む非水系溶媒、(3)リチウム塩(電解質塩)、及び(4)負極被膜形成剤を含んでなる非水系電解液、
【0155】
〔非水系電解液(III)〕
(1)本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体、(2)少なくとも環状炭酸エステルを含む非水系溶媒、(3)リチウム塩(電解質塩)、及び(4)膨れ抑制剤を含んでなる非水系電解液、
【0156】
〔非水系電解液(IV)〕
(1)本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体、(2)少なくとも環状炭酸エステルを含む非水系溶媒、(3)リチウム塩(電解質塩)、(4)負極被膜形成剤、及び(5)膨れ抑制剤を含んでなる非水系電解液
【0157】
本発明の非水系電解液(I)は、充放電特性などの改善効果、特にサイクル特性の改善効果や、高温保存特性改善等の効果を示す。
本発明の非水系電解液(II)は、充放電特性などの改善効果、特に初期不可逆容量の低減やサイクル特性の改善や、高温保存特性改善等の効果を示す。
本発明の非水系電解液(III)は、サイクル特性の改善効果や、高温保存特性改善に加え、4.2V〜4.3V満充電の状態で60℃以上の高温保存時でのガス発生の抑制、電池の膨れ抑制等の効果を示す。
本発明の非水系電解液(IV)は、充放電特性などの改善効果、特に初期不可逆容量の低減やサイクル特性の改善効果や、高温保存特性改善に加え、4.2V〜4.3V満充電の状態で60℃以上の高温保存時でのガス発生の抑制、電池の膨れ抑制等の効果を示す。
【0158】
本発明の非水系電解液には、本発明の効果に悪影響を与えないものであれば、例えば過充電特性向上、非水系電解液の濡れ性向上等を目的として、通常の電解液に添加されるものが適宜添加されてもよい。
【0159】
本発明の非水系電解液に添加されてもよいものとしては、例えばジフェニルジスルフィド、ジメチルスルホン、ジビニルスルホン、ジメチルサルファイト、エチレンサルファイト、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸-2-プロピニル、2-スルホ安息香酸無水物等のイオウ含有化合物、例えばtert-ブチルベンゼン、tert-アミルベンゼン、ビフェニル、o-ターフェニル、4-フルオロビフェニル、フルオロベンゼン、2,4-ジフルオロベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ジフェニルエーテル、2,4-ジフルオロアニソール、トリフルオロメチルベンゼン等の芳香族化合物又はそのフッ素置換化合物等が挙げられる。これら化合物は単独で用いても、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0160】
また、本発明の非水系電解液は、電極やセパレータへの含浸を促進する目的で、例えばリン酸エステル(例えば、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル等)等の界面活性剤、例えばフルオロアルキル基含有フッ素系非イオン界面活性剤(例えばフタージェント、FT-250、FT-251、FT-222F(ネオス製)等)を添加してもよい。
【0161】
7.メチレンビススルホネート誘導体の合成
本発明の一般式[1]で示されるメチレンビススルホネート誘導体は、下記の方法により合成することができるが、本製法に限定されるものではない。
【0162】
一般式[1]で示される化合物は、常法(例えば国際公開WO2008/032463号公報等)に従って適宜合成すればよく、具体的には例えば以下の如く製造し得る。
【0163】
一般式[1]で示されるメチレンビススルホネート誘導体の製造法として、一般式[1]に於けるR及びRが同一である場合の化合物、即ち下記一般式[1’]で示されるメチレンビススルホネート誘導体を一例として挙げて以下に説明する。
【0164】
{式中、2つのR21は夫々独立して、一般式[12]
【0165】
(式中、R22はハロゲン原子、ハロアルキル基、アルコキシ基、又は置換基を有していてもよいアルキル基若しくはアリール基を表す。)で示されるスルホニル基又は一般式[13]
【0166】
(式中、R23は置換基を有していてもよい、アルキル基又はアリール基を表す。)で示されるアシル基を表し、2つのRは前記に同じ。}
【0167】
一般式[12]に於いて、R22で示されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0168】
22で示されるハロアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜12、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3のアルキル基中の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子(例えばフッ素原子、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。)で置換されたものが挙げられ、具体的には、例えばフルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、2-フルオロエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタブロモエチル基、ペンタヨードエチル基、3-フルオロプロピル基、3-クロロプロピル基、3-ブロモプロピル基、トリフルオロプロピル基、トリクロロプロピル基、トリブロモプロピル基、ジ(トリフルオロメチル)メチル基、ジ(トリクロロメチル)メチル基、ジ(トリブロモメチル)メチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ヘプタクロロプロピル基、4-フルオロブチル基、4-クロロブチル基、4-ブロモブチル基、ノナフルオロブチル基、ノナクロロブチル基、ノナブロモブチル基、5-フルオロペンチル基、5-クロロペンチル基、5-ブロモペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル基(−CH(CF)H)、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタクロロペンチル基(−CH(CCl)H)、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタブロモペンチル基(−CH(CBr)H)、パーフルオロペンチル基、パークロロペンチル基、パーブロモペンチル基、6-フルオロヘキシル基、6-クロロヘキシル基、6-ブロモヘキシル基、パーフルオロヘキシル基、パークロロヘキシル基、パーブロモヘキシル基、パーフルオロへプチル基、パークロロヘプチル基、パーブロモヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パークロロオクチル基、パーブロモオクチル基、パーフルオロノニル基、パークロロノニル基、パーブロモノニル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデシル基(−(CH)(CF)CF)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカクロロデシル基(−(CH)(CCl)CCl)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカブロモデシル基(−(CH)(CBr)CBr)、パーフルオロデシル基、パークロロデシル基、パーブロモデシル基、パーフルオロウンデシル基、パークロロウンデシル基、パーブロモウンデシル基、パーフルオロドデシル基、パークロロドデシル基、パーブロモドデシル基等が挙げられる。
【0169】
22で示されるアルコキシ基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜12、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えば一般式[6]に於けるR15〜R20で示される炭素数1〜10のアルコキシ基の例示と同様のもの、n-ウンデシルオキシ基、イソウンデシルオキシ基、sec-ウンデシルオキシ基、tert-ウンデシルオキシ基、ネオウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、イソドデシルオキシ基、sec-ドデシルオキシ基、tert-ドデシルオキシ基、ネオドデシルオキシ基等が挙げられる。
【0170】
一般式[12]及び[13]に於いて、R22及びR23で示される置換基を有していてもよいアルキル基のアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜12、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えば一般式[2]〜[5]に於けるR〜R14で示される炭素数1〜12のアルキル基の例示と同様のものが挙げられる。
【0171】
22及びR23で示される置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、通常炭素数6〜14、好ましくは6〜10のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基等が挙げられる。
【0172】
22で示される置換基を有していてもよいアルキル基の置換基としては、例えば炭素数1〜12のアルコキシ基、アシル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ホルミル基等が挙げられる。
【0173】
23で示される置換基を有していてもよいアルキル基の置換基としては、例えばハロゲン原子、炭素数1〜12のアルコキシ基、アシル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ホルミル基等が挙げられる。
【0174】
22及びR23で示される置換基を有していてもよいアリール基の置換基としては、例えばハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、アシル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、ホルミル基等が挙げられる。
【0175】
置換基として挙げられるハロゲン原子は、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0176】
置換基として挙げられる炭素数1〜12のアルコキシ基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜12、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えば一般式[12]に於けるR22で示される炭素数1〜12のアルコキシ基の例示と同様のものが挙げられる。
【0177】
置換基として挙げられるアシル基としては、脂肪族カルボン酸由来及び芳香族カルボン酸由来のものが挙げられる。
【0178】
脂肪族カルボン酸由来のアシル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状でもよく、また更に鎖中に二重結合を有していてもよく、通常炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15のものが挙げられ、具体的には、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル、デカノイル基、ウンデカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、イコサノイル基、シクロヘキシルカルボニル基等の飽和脂肪族カルボン酸由来のアシル基、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基等の不飽和脂肪族カルボン酸由来のアシル基等が挙げられる。
【0179】
芳香族カルボン酸由来のアシル基としては、通常炭素数7〜15、好ましくは7〜11のものが挙げられ、具体的には、例えばベンゾイル基、ナフトイル基、トルオイル基、アントイル基等が挙げられる。
【0180】
置換基として挙げられる炭素数1〜12のアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜12、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えば一般式[2]〜[5]に於けるR〜R14で示される炭素数1〜12のアルキル基の例示と同様のものが挙げられる。
【0181】
一般式[1’]で示される化合物の製造法としては、例えば、適当な溶媒中で、一般式[10]で示されるスルホン酸と当該スルホン酸に対して1〜4倍モルの有機塩基と0.2〜0.5倍モルの一般式[11]で示される化合物とを0〜150℃で添加した後、0.5〜12時間撹拌反応させることにより、目的とする一般式[1’]で示されるメチレンビススルホネート誘導体が得られる。
【0182】
尚、一般式[10]で示されるスルホン酸と当該有機塩基とを適当な溶媒中で予め混合し、要すれば濃縮するなどして溶媒を除去した後に、また要すれば適当な貧溶媒を加えて塩を析出させ、次いでこれをろ過することにより単離した一般式[10]で示されるスルホン酸と有機塩基により形成される塩に、一般式[11]で示される化合物を反応させてもよい。
【0183】
ここで使用される有機塩基としては、一般式[10]で示されるスルホン酸と塩を形成し得るものが挙げられ、具体的には、例えば第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0184】
第2級アミン及び第3級アミンとしては、例えば一般式[15]
【0185】
(式中、R24〜R26は、夫々独立して水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R24〜R26及びそれらが結合する窒素原子とでヘテロ環を形成していてもよい。但し、R24〜R26のうちの2つが水素原子の場合及び全てが水素原子の場合を除く。)で示されるものが挙げられる。
【0186】
第4級アンモニウム塩としては、例えば一般式[16]
【0187】
(式中、R27〜R30は、夫々独立してアルキル基又はアラルキル基を表し、Aはカウンターアニオンを表す。また、R27〜R30のうちの2つ又は3つとそれらが結合する窒素原子とでヘテロ環を形成していてもよい。)で示されるもの等が挙げられる。
【0188】
当該第4級アンモニウム塩のカチオン部分のうち、一般式[16]に於けるR27〜R30のうちの3つとそれらが結合する窒素原子とでヘテロ環を形成している場合の具体例としては、例えば一般式[17]
【0189】
(式中、R31は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を表し、R32はアルキル基又はアラルキル基を表し、R30は前記に同じ。)で示されるイミダゾリウムイオン、一般式[18]
【0190】
(式中、s個のR33は夫々独立してアルキル基を表し、sは0〜5の整数を表し、R30は前記に同じ。)で示されるピリジニウムイオン、一般式[19]
【0191】
(式中、R34はアルキル基又はアラルキル基を表し、R30は前記に同じ。尚、この場合、カウンターアニオンAは2個となる。)で示されるビピリジニウムイオン等が挙げられ、中でも一般式[18]で示されるピリジニウムイオンが好ましい。
【0192】
一般式[15]〜[19]に於いて、R24〜R34で示されるアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状の何れでもよく、通常炭素数1〜12、好ましくは1〜4のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、ネオヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ネオオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、ネオノニル基、n-デシル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、ネオデシル基、n-ウンデシル基、イソウンデシルk、sec-ウンデシル基、tert-ウンデシル基、ネオウンデシル基、n-ドデシル基、イソドデシル基、sec-ドデシル基、tert-ドデシル基、ネオドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基等が挙げられ、中でも、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等が好ましい。
【0193】
一般式[15]に於いて、R24〜R26で示されるアリール基としては、通常炭素数6〜14、好ましくは6〜10のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基等が挙げられる。
【0194】
一般式[15]〜[19]に於いて、R24〜R34で示されるアラルキル基としては、通常炭素数7〜15のものが挙げられ、具体的には、例えばベンジル基、フェネチル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基、3-フェニルプロピル基、フェニルブチル基、1-メチル-3-フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0195】
一般式[15]に於けるR24〜R26及びそれらが結合する窒素原子とで形成されるヘテロ環並びに一般式[16]に於けるR27〜R30のうちの2つ又は3つとそれらが結合する窒素原子とで形成されるヘテロ環としては、例えば5員環又は6員環であり、1個の窒素原子以外に1〜2個のヘテロ原子(例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等)を含んでいてもよく、具体的には、例えば2H-ピロール環、イミダゾリン環、ピラゾリン環、ピロリン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チアゾリン環等の脂肪族ヘテロ環、例えばピリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、フラン環、ピラン環、ピロール環、ピロリジン環、キノリン環、インドール環、イソインドリン環、カルバゾール環等の芳香族ヘテロ環等が挙げられる。
【0196】
当該芳香族ヘテロ環は、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基を更に置換基として有していてもよく、このような置換基を有する芳香族ヘテロ環化合物の具体例としては、例えば2-ピコリン、3-ピコリン、4-ピコリン、2,3-ルチジン、2,4-ルチジン、2,5-ルチジン、2,6-ルチジン、α-コリジン、β-コリジン、γ-コリジン、2-イソブチルピリジン、2,6-ジ-tert-ピリジン、3-イソブチルピリジン、2-イソプロピルピリジン、2-エチル-6-イソプロピルピリジン、2-n-プロピルピリジン等が挙げられる。
【0197】
有機塩基の中でも第3級アミンが好ましく、就中、例えばピリジン、ルチジン、コリジン等がより好ましい。
【0198】
一般式[15]で示される第2級アミンの好ましい具体例としては、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジ-tert-ブチルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、ジイソペンチルアミン、ジ-sec-ペンチルアミン、ジ-tert-ペンチルアミン、ジネオペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジイソヘキシルアミン、ジ-sec-ヘキシルアミン、ジ-tert-ヘキシルアミン、ジネオヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、ジデシルアミン、ジセチルアミン、ジシクロプロピルアミン、ジシクロブチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、メチルエチルアミン、イソプロピルエチルアミン等の第2級アルキルアミン類、例えばジフェニルアミン、ジナフチルアミン等の第2級アリールアミン類、例えばジベンジルアミン等の第2級アラルキルアミン類、例えばモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、ピペラジン等の第2級環状アミン類等が挙げられ、中でも第2級アリールアミン類が好ましく、就中、ジフェニルアミンがより好ましい。
【0199】
一般式[15]で示される第3級アミンの好ましい具体例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリn-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリsec-ブチルアミン、トリtert-ブチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、トリイソペンチルアミン、トリsec-ペンチルアミン、トリtert-ペンチルアミン、トリネオペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリイソヘキシルアミン、トリsec-ヘキシルアミン、トリtert-ヘキシルアミン、トリネオヘキシルアミン、トリシクロプロピルアミン、トリシクロブチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、ジメチルエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の第3級アルキルアミン類、例えばトリフェニルアミン、トリナフチルアミン等の第3級アリールアミン類、例えばトリベンジルアミン等の第3級アラルキルアミン類、例えばピリジン、2,3-ルチジン、2,4-ルチジン、2,5-ルチジン、2,6-ルチジン、3,4-ルチジン、3,5-ルチジン、2,4,6-コリジン、α-コリジン(4-エチル-2-メチルピリジン)、β-コリジン(3-エチル-4-メチルピリジン)、γ-コリジン(2,4,6-コリジン)等の第3級環状アミン類等が挙げられ、中でも第3級環状アミン類が好ましく、就中、ピリジン、ルチジン、コリジンが好ましい。
【0200】
一般式[16]で示される第4級アンモニウム塩のカチオン部の好ましい具体例としては、例えばテトラエチルアンモニウムイオン、テトラ-n-プロピルアンモニウムイオン、テトラ-n-ブチルアンモニウムイオン、テトラ-n-ペンチルアンモニウムイオン、テトラ-n-ヘキシルアンモニウムイオン、テトラ-n-ヘプチルアンモニウムイオン、テトラ-n-オクチルアンモニウムイオン、テトラ-n-ノニルアンモニウムイオン、テトラ-n-デシルアンモニウムイオン、テトラ-n-ウンデシルアンモニウムイオン、テトララウリル(ドデシル)アンモニウムイオン、テトラ-n-テトラデシルアンモニウムイオン、テトラミリスチル(テトラデシル)アンモニウムイオン、テトラ-n-ペンタデシルアンモニウムイオン、テトラセチルアンモニウムイオン、テトラ-n-ヘプタデシルアンモニウムイオン、トリオクタデシルメチルアンモニウムイオン、トリデシルメチルアンモニウムイオン、トリノニルメチルアンモニウムイオン、トリオクチルエチルアンモニウムイオン、トリヘプチルペンチルアンモニウムイオン、トリヘプチルプロピルアンモニウムイオン、トリヘプチルメチルアンモニウムイオン、トリヘキシルブチルアンモニウムイオン、トリヘキシルエチルアンモニウムイオン、ノニルトリペンチルアンモニウムイオン、ヘキシルトリペンチルアンモニウムイオン、トリペンチルブチルアンモニウムイオン、トリペンチルメチルアンモニウムイオン、オクチルトリブチルアンモニウムイオン、ヘキシルトリブチルアンモニウムイオン、デシルトリプロピルアンモニウムイオン、ウンデシルトリプロピルアンモニウムイオン、ヘプチルトリプロピルアンモニウムイオン、ヘキシルトリプロピルアンモニウムイオン、トリプロピルメチルアンモニウムイオン、デシルトリエチルアンモニウムイオン、オクチルトリエチルアンモニウムイオン、オクタデシルトリメチルアンモニウムイオン、ヘプタデシルトリメチルアンモニウムイオン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムイオン、ドデシルトリメチルアンモニウムイオン、デシルトリメチルアンモニウムイオン、ノニルトリメチルアンモニウムイオン、オクチルトリメチルアンモニウムイオン、ヘキシルトリメチルアンモニウムイオン、エチルトリメチルアンモニウムイオン、ウンデシルブチルジプロピルアンモニウムイオン、ウンデシルブチルジエチルアンモニウムイオン、ウンデシルプロピルジエチルアンモニウムイオン、ノニルオクチルジエチルアンモニウムイオン、ノニルオクチルジメチルアンモニウムイオン、ノニルヘキシルジブチルアンモニウムイオン、ノニルヘキシルジメチルアンモニウムイオン、ノニルペンチルジメチルアンモニウムイオン、ノニルブチルジメチルアンモニウムイオン、オクチルヘキシルジペンチルアンモニウムイオン、オクチルヘキシルジプロピルアンモニウムイオン、オクチルヘキシルジメチルアンモニウムイオン、オクチルペンチルジブチルアンモニウムイオン、オクチルペンチルジプロピルアンモニウムイオン、オクチルペンチルジメチルアンモニウムイオン、オクチルブチルジプロピルアンモニウムイオン、オクチルエチルジメチルアンモニウムイオン、ヘプチルペンチルジメチルアンモニウムイオン、ヘキシルペンチルジブチルアンモニウムイオン、ヘキシルペンチルジメチルアンモニウムイオン、ヘキシルブチルジメチルアンモニウムイオン、ペンチルブチルジプロピルアンモニウムイオン等のテトラアルキルアンモニウムイオン、例えばベンジルトリメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリエチルアンモニウムイオン、ベンジルトリプロピルアンモニウムイオン、ベンジルトリ-n-プロピルアンモニウムイオン等のアラルキルトリアルキルアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0201】
一般式[17]で示されるイミダゾリウムイオンの好ましい具体例としては、例えば1,3-ジメチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-エチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-ブチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-ペンチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-ヘキシルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-デシルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-ドデシルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-テトラデシルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-ヘキサデシルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-オクタデシルイミダゾリウムイオン、1,3-ジエチルイミダゾリウムイオン、1-エチル-3-ブチルイミダゾリウムイオン、1-エチル-3-ペンチルイミダゾリウムイオン、1-エチル-3-ヘキシルイミダゾリウムイオン、1-エチル-3-オクチルイミダゾリウムイオン、1-エチル-3-デシルイミダゾリウムイオン、1-エチル-3-ドデシルイミダゾリウムイオン、1-エチル-3-テトラデシルイミダゾリウムイオン、1-エチル-3-ヘキサデシルイミダゾリウムイオン、1-エチル-3-オクタデシルイミダゾリウムイオン等のアルキル置換イミダゾリウムイオン、例えば1-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-フェニルプロピルイミダゾリウムイオン等のアラルキル置換イミダゾリウムイオン、例えば1,2,3-トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2-ジメチル-3-エチルイミダゾリウムイオン、1,2-ジメチル-3-ブチルイミダゾリウムイオン、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムイオン、1,2-ジメチル-3-ヘキシルイミダゾリウムイオン、1,2-ジメチル-3-ヘキサデシルイミダゾリウムイオン等のアルキル3置換イミダゾリウムイオン等が挙げられる。
【0202】
一般式[18]で示されるピリジニウムイオンの好ましい具体例としては、例えば1-メチルピリジニウムイオン、1-エチルピリジニウムイオン、1,3-ジメチルピリジニウムイオン、1-メチル-3-エチルピリジニウムイオン、1,3,5-トリメチルピリジニウムイオン、1-メチル-3,5-ジエチルピリジニウムイオン等が挙げられ、中でも、例えば1-メチルピリジニウムイオン等が好ましい。
【0203】
一般式[19]で示されるビピリジニウムイオンの好ましい具体例としては、例えば1,1'-ジメチル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1,1'-ジエチル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1,1'-ジプロピル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1,1'-ジブチル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1,1'-ジペンチル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1,1'-ジヘキシル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1,1'-ジヘプチル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1,1'-ジオクチル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1,1'-ジノニル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1,1'-ジデシル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1,1'-ジウンデシル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1,1'-ジドデシル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1,1'-ジトリデシル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1,1'-ジテトラデシル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1,1'-ジペンタデシル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1,1'-ジ-ヘキサデシル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1,1'-ジヘプタデシル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1,1'-ジオクタデシル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1,1'-ジノナデシル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1,1'-ジイコシル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-メチル-1'-エチル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-メチル-1'-プロピル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-メチル-1'-ブチル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-メチル-1'-ペンチル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-メチル-1'-ヘキシル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-メチル-1'-へプチル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-メチル-1'-オクチル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-メチル-1'-ノニル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-メチル-1'-デシル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-メチル-1'-ウンデシル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-メチル-1'-ドデシル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-エチル-1'-プロピル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-エチル-1'-ブチル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-エチル-1'-ペンチル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-エチル-1'-ヘキシル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-エチル-1'-へプチル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-エチル-1'-オクチル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-エチル-1'-ノニル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-エチル-1'-デシル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-エチル-1'-ウンデシル-4,4'-ビピリジニウムイオン、1-エチル-1'-ドデシル-4,4'-ビピリジニウムイオン等のN,N'-ジアルキル-4,4'-ビピリジニウムイオン、例えば1-メチル-1'-ベンジル-4,4'-ビピリジニウムイオン等のN-アルキル-N'-アラルキル-4,4'-ビピリジニウムイオン等が挙げられる。
【0204】
一般式[16]で示される第4級アンモニウム塩のカウンターアニオンの好ましい具体例としては、例えばヨウ化物イオン、臭化物イオン、塩化物イオン等のハロゲン化物イオン、例えばヨウ素酸イオン、臭素酸イオン、塩素酸イオン等のハロゲン酸イオン、例えば過ヨウ素酸イオン、過臭素酸イオン、過塩素酸イオン等の過ハロゲン酸イオン、例えば亜塩素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、亜臭素酸イオン等の亜ハロゲン酸イオン、例えば次亜塩素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、次亜臭素酸イオン等の次亜ハロゲン酸イオン、例えば硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸水素イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、リン酸水素イオン、亜リン酸水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、ホウ酸イオン、ホウ酸水素イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、水酸化物イオン等の無機酸由来のアニオン、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ヘキサン酸、シクロヘキサンカルボン酸等の炭素数2〜7の脂肪族飽和カルボン酸、例えばトリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリブロモ酢酸、トリヨード酢酸、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸、3,3,3-トリクロロプロピオン酸、ペンタフルオロプロピオン酸、ペンタクロロプロピオン酸、ペンタブロモプロピオン酸、ペンタヨードプロピオン酸、3,3,4,4,4-ペンタフルオロ酪酸、ヘプタクロロ酪酸、ヘプタフルオロ酪酸、ヘプタブロモ酪酸、ヘプタヨード酪酸、ヘプタフルオロイソ酪酸、ヘプタクロロイソ酪酸、ヘプタブロモイソ酪酸、ヘプタヨードイソ酪酸、ノナフルオロ吉草酸、ノナクロロ吉草酸、ノナブロモ吉草酸、ノナヨード吉草酸、6,6,6-トリフルオロヘキサン酸、6,6,6-トリクロロヘキサン酸、パーフルオロヘキサン酸、パークロロヘキサン酸、パーブロモヘキサン酸、パーヨードヘキサン酸、パーフルオロシクロヘキサンカルボン酸等の炭素数2〜7のハロゲン化飽和脂肪族カルボン酸、例えば安息香酸、ナフトエ酸等の炭素数7〜11の芳香族カルボン酸、例えばペンタフルオロ安息香酸、ペンタクロロ安息香酸、ペンタブロモ安息香酸、ペンタヨード安息香酸、パーフルオロナフトエ酸、パークロロナフトエ酸、パーブロモナフトエ酸、パーヨードナフトエ酸等の炭素数7〜11のハロゲン化芳香族カルボン酸等のカルボン酸由来のアニオン、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸等の炭素数1〜6のアルキルスルホン酸、例えばトリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、トリブロモメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ペンタクロロエタンスルホン酸、ペンタブロモエタンスルホン酸、ペンタヨードエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ヘプタクロロプロパンスルホン酸、ヘプタブロモプロパンスルホン酸、ヘプタヨードプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ノナクロロブタンスルホン酸、ノナブロモブタンスルホン酸、ノナヨードブタンスルホン酸、パーフルオロペンタンスルホン酸、パークロロペンタンスルホン酸、パーブロモペンタンスルホン酸、パーヨードペンタンスルホン酸、パーフルオロヘキサンスルホン酸、パークロロヘキサンスルホン酸、パーヨードヘキサンスルホン酸等の炭素数1〜6のハロアルキルスルホン酸、例えばシクロヘキサンスルホン酸等のシクロアルキルスルホン酸、例えばベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、p-メトキシベンゼンスルホン酸等の炭素数6〜10の芳香族スルホン酸、例えばペンタフルオロベンゼンスルホン酸、ペンタクロロベンゼンスルホン酸、ペンタブロモベンゼンスルホン酸、ペンタヨードベンゼンスルホン酸、パーフルオロナフタレンスルホン酸、パークロロナフタレンスルホン酸、パーブロモナフタレンスルホン酸、パーヨードナフタレンスルホン酸等の炭素数6〜10のハロゲン化芳香族スルホン酸等のスルホン酸由来のアニオン等が挙げられる。
【0205】
ここで使用される反応溶媒としては、非水溶媒が好ましく、具体的には、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類又はこれらの混合物(例えばパラフィン、ミネラルスピリット等)、例えば塩化メチレン、臭化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、例えば炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等のカーボネート類、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、例えばジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、例えばアセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは単独で用いても二種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0206】
反応溶媒を混合溶媒で用いる場合の好ましい組合せとしては、例えばアセトニトリルとシクロヘキサン、アセトニトリルとトルエン等の組合せが挙げられる。
【0207】
反応温度は、通常0〜150℃、好ましくは20〜100℃である。
反応時間は、通常0.5〜24時間、好ましくは0.5〜12時間である。
【0208】
また、一般式[15]で示されるスルホン酸と有機塩基により形成される塩を予め析出させる際の用いる貧溶媒としては、当該塩の溶解度を低下させる溶媒、即ち当該塩を析出させるものであれば何れでもよいが、具体的には、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類又はこれらの混合物(例えばパラフィン、ミネラルスピリット等)、例えば塩化メチレン、臭化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、例えば炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等のカーボネート類、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、例えばジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトニトリル等が挙げられる。これらは単独で用いても二種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
反応後の後処理は、この分野に於いて通常行われる後処理法に準じて行えばよい。
【0209】
8.本発明の非水系電解液の製造法
本発明の非水系電解液は、本発明に係る非水系溶媒に、本発明に係るリチウム塩(電解質塩)を溶解し、次いで、得られた溶液中に一般式[1]で示されるメチレンビススルホネート誘導体を好ましくは0.01〜1重量%含有させることにより調製するのが望ましい。この際に用いる非水系溶媒、及び非水系電解液に加えるメチレンビススルホネート誘導体は、生産性を著しく低下させない範囲内で、予め精製して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。
【0210】
本発明に係る非水系溶媒を2種以上用いる場合、本発明の非水系電解液の製造法の具体例としては、例えば下記(A)、(B)、(C)の順で構成される工程を経ればよい。
(A)例えば少なくとも1つの環状炭酸エステルと「それ以外の非水系溶媒」といった2種以上の非水系溶媒を組み合わせて、これから非水系混合溶媒を調製する非水系混合溶媒調製工程
(B)該非水混合溶媒に該リチウム塩を溶解するリチウム塩溶解工程
(C)該一般式[1]で示されるメチレンビススルホネート誘導体を、該工程(B)で得られた溶液中に溶解する工程
【0211】
上記工程(A)に於いて混合される2種以上の非水系溶媒のうち、30℃以下で固体である非水系溶媒(例えばエチレンカーボネート等)を含む場合には、30℃以下で液体である少なくとも1つの非水系溶媒を含むのが好ましい。この場合の30℃以下で液体である非水系溶媒としては、本発明に係る非水系溶媒(即ち環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル等)又は前述したその他の非水系溶媒の何れでもよい。上記工程(A)で混合される2種以上の非水系溶媒としては、例えば環状炭酸エステル(少なくともエチレンカーボネートを含む)と鎖状炭酸エステル(ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートから選ばれる少なくとも1種以上を含む)の組合せが好ましい。
【0212】
また、上述の製造法は、更に(A1)、(B1)、(C1)の順で構成される工程を行うことが好ましい。
(A1)鎖状炭酸エステルとしてジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートから選ばれる少なくとも1種以上と、少なくともエチレンカーボネートを含む環状炭酸エステルを加えて、液温が30℃を越えないように非水混合溶媒を調製する非水系混合溶媒調製工程
(B1)該非水混合溶媒に該リチウム塩を液温が30℃を越えないように、該非水系溶媒に該リチウム塩を溶解させた非水系電解液1リットルに対し、全リチウム塩が0.5〜3モルの濃度となるように少量ずつ加えるリチウム塩溶解工程
(C1)該一般式[1]で示されるメチレンビススルホネート誘導体を該非水系電解液中に0.01質量%以上、1質量%以下の範囲で含有するように少量ずつ加えて溶解する工程
【0213】
本発明の製造方法は、更に、水分及び遊離酸分を測定する工程を含んでいてもよい。その場合、上記工程(C)又は(C1)を行った後、例えば下記の如き各種測定を行えばよい。
水分値の測定は、例えば微量水分測定装置(カールフィッシャー電量滴定装置)〔製品名「CA-200;三菱化学アナリテック社製」〕を用いればよい。
【0214】
遊離酸分の測定は、例えば水酸化ナトリウム水溶液を用いた中和滴定により行えばよい。具体的には、例えば、露点-40℃以下のドライボックス中において、各非水系電解液を採取し、密栓してドライボックスから取り出した後、氷水中にすばやく投入して、ブロムチモールブルー指示薬を添加したのち、撹拌しながら水酸化ナトリウム水溶液を用いた中和滴定によって測定する等の操作を行えばよい。
【0215】
本発明に係る負極被膜形成剤及び/又は膨れ抑制剤を含有する非水系電解液の製造法は、以下のとおりである。即ち、下記(A2)、(B2)、(C2)の順で構成される工程を行うことが好ましい。
(A2)鎖状炭酸エステルとしてジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートから選ばれる少なくとも1種以上と、少なくともエチレンカーボネートを含む環状炭酸エステルを加えて、液温が30℃を越えないように非水系混合溶媒を調製する非水系混合溶媒調製工程
(B2)該非水系混合溶媒に該リチウム塩を液温が30℃を越えないように、該非水系溶媒に該リチウム塩を溶解させた非水系電解液1リットルに対し、全リチウム塩が0.5〜3モルの濃度となるように少量ずつ加えるリチウム塩溶解工程
(C2)該一般式[1]で示されるメチレンビススルホネート誘導体を該非水系電解液中に0.01質量%以上、1質量%以下の範囲で含有するように少量ずつ加えて溶解し、次いで、負極被膜形成剤及び/又は膨れ抑制剤が該非水系電解液中に上述の範囲内で含有されるように少量ずつ加えて溶解する工程
【0216】
上記工程(C2)に於いて、負極被膜抑制剤及び膨れ抑制剤を共に添加する場合は、負極被膜形成剤を先に添加してもよいし、膨れ抑制剤を先に添加しても何れでもよい。
【0217】
尚、本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体を含有する非水系電解液を用いて電池を調製する場合、要すれば、乾燥雰囲気下にて未封口状態の非水系電解液電池を予備充電し、初期充電時にて発生するガスを電池内から除去してもよい。これによって、より安定した品質の非水系電解液電池を提供することが可能となり、これを用いることにより高温放置時の電池特性の低下を防ぐことが可能となる。
【0218】
非水系電解液の製造方法に於いて、リチウム塩を溶解する場合に、例えばエチレンカーボネート等の環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルと混合して得た非水系混合溶媒の液温が30℃を越えないようにすることで、非水系電解液中のリチウム塩が系内の水分と反応、分解してフッ化水素(HF)などの遊離酸の生成を抑制できる。従って、結果として非水系溶媒の分解も抑制することが可能となるため、非水系電解液の劣化防止に有効である。また、リチウム塩溶解工程では、全リチウム塩が0.5〜3モルの濃度となるように少量ずつ加えて前記リチウム塩を溶解、調合すれば、同様にフッ化水素(HF)などの遊離酸を生成させることを抑制することが可能となる。
【0219】
特に、本発明のメチレンビススルホネート誘導体を含有した非水系電解液を調合する場合は、調合時の非水系電解液の液温上昇により、前記副反応が進行しやすくなるため、非水系電解液の液温が30℃を越えないように温度上昇を抑えることで、非水系電解液の劣化を防ぐことが可能となり、その品質を維持することが可能となる。
【0220】
該非水系溶媒混合工程(A)において、液温が30℃を越えないようにエチレンカーボネート等の環状炭酸エステルを加熱、融解させて、液体の状態で鎖状炭酸エステルと混合する際には、該環状炭酸エステルを少量ずつ加えることが望ましい。系内の液温が30℃を越えないようにすることで、上述の問題を解決するだけでなく、非水混合溶媒混合時の鎖状炭酸エステルの揮発も抑制することができ、結果として非水系混合溶媒組成を変化させることがないため、好適である。
【0221】
該リチウム塩溶解工程(B)において、液温が30℃を越えないように少量ずつ加えて前記リチウム塩を溶解、調合する方法としては、例えば、混合溶媒中にまず全リチウム塩の10〜35重量%の範囲を加えて溶解した後、次いで、更に全リチウム塩の10〜35重量%の範囲を加えて、溶解する操作を2〜9回実施し、最後に、残りのリチウム塩をゆっくり加えて溶解することで、液温が30℃を越えないようにすることが好ましい。
【0222】
また、該リチウム塩溶解工程(B)において、リチウム塩を2種以上組み合わせて使用する場合、例えば、上述の好適な組合せとして示した、LiPFとLiBFとの組合せ、LiPFとLiN(SOCFとの組合せ、LiPFとビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウムとの組合せなどでは、割合の多いLiPFを先に少量ずつ加えた後、比率の低いリチウム塩を少量ずつ加えて、液温が30℃を越えないようにすることが好ましい。
【0223】
9.本発明の非水系電解液電池
本発明の非水系電解液電池は、(i)本発明の非水系電解液、(ii)負極、(iii)正極、及び(iv)セパレータを備えており、中でも下記(i)〜(iv)を備えたものが好ましい。
【0224】
(i)本発明の非水系電解液、
(ii)下記(a)〜(d)から選ばれる少なくとも1つの負極活物質を主成分として含む、リチウムの吸蔵・放出が可能な負極、
(a)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nm以下の炭素質材料
(b)Sn、Si、Pb及びAlから選ばれる1種以上の金属の酸化物
(c)Sn、Si、Pb及びAlから選ばれる1種以上の金属とリチウムとの合金
(d)リチウムチタン酸化物
(iii)下記(e)〜(h)から選ばれる少なくとも1つの酸化物及び/又はポリアニオン化合物を正極活物質の主成分として含む正極、
(e)コバルト酸リチウム
(f)スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物
(g)マンガン、ニッケル、コバルトを含有する層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物
(h)リチウム含有オリビン型リン酸塩
(iv)ポリエチレンを主成分とするセパレータ
【0225】
負極を構成する負極活物質としては、リチウムイオンのド−プ・脱ド−プが可能なものであり、例えば(a)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nm以下の炭素質材料、(b)Sn、Si、Pb及びAlから選ばれる1種以上の金属酸化物、(c)Sn、Si、Pb及びAlから選ばれる1種以上の金属とリチウムとの合金等が挙げられる。
【0226】
負極活物質として挙げられる(a)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nm以下の炭素質材料の炭素材料としては、例えば熱分解炭素類、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス等)、グラファイト類、有機高分子化合物焼成体(例えばフェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、活性炭等が挙げられ、これらは黒鉛化したものでもよい。
【0227】
また、当該炭素材料は、X線回折法で測定した(002)面の面間隔(d002)が0.340nm以下のものであり、中でも、その真密度が1.70g/cm以上である黒鉛またはそれに近い性質を有する高結晶性炭素材料が好ましい。このような炭素材料を用いると、例えば非水系電解液電池のエネルギー密度を高くすることができる。負極活物質の市販品としては、例えば、MCMB25-28、OMAC(大阪ガスケミカル製)、KMFC-HAG(JFEケミカル製)、LB-BG(日本黒鉛工業製)、MAG-V、MAG-D(日立化成工業製)などが挙げられる。
【0228】
更に、当該炭素材料としては、例えばホウ素を更に含有するもの、例えば金、白金、銀、銅、Sn、Si等の金属で被覆したもの、例えば非晶質炭素で被覆したもの等も併せて使用することができる。これらの炭素材料は単独で用いても、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0229】
負極活物質として挙げられる(b)Sn、Si、Pb及びAlから選ばれる1種以上の金属酸化物としては、リチウムイオンのド−プ・脱ド−プが可能な、例えば酸化スズ、酸化シリコン等が挙げられる。
【0230】
負極活物質として挙げられる(c)Sn、Si、Pb及びAlから選ばれる1種以上の金属又は該金属とリチウムとの合金としては、例えばシリコン、スズ、鉛等の金属、例えばシリコン合金、スズ合金、鉛合金等の金属とリチウムの合金化物等が挙げられる。
【0231】
これらの特に好ましい具体例としては、国際公開WO2004/100293号及び特開2008−016424号等に記載される、例えばケイ素(Si)、スズ(Sn)等の金属単体(例えば粉末状のもの)、該金属合金、該金属を含有する化合物、該金属にスズ(Sn)とコバルト(Co)とを含む合金等が挙げられる。
【0232】
当該金属は、これを電極に使用した場合、高い充電容量を発現することができ、かつ、充放電に伴う体積の膨張・収縮が比較的少ないことから好ましい。また、これらの金属は、これをリチウム二次電池の負極に用いた場合に、充電時にLiと合金化するため、高い充電容量を発現することが知られているので、この点でも好ましい。
【0233】
更に、例えば国際公開WO2004/042851号、国際公開WO2007/083155号等に記載される、サブミクロン直径のシリコンのピラーから形成された負極活物質、シリコンで構成される繊維からなる負極活物質などを用いてもよい。
【0234】
負極活物質として挙げられる(d)リチウムチタン酸化物としては、例えば、スピネル構造を有するチタン酸リチウム、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウムなどを挙げることができる。スピネル構造を有するチタン酸リチウムとしては、例えば、Li4+αTi12(αは充放電反応により0≦α≦3の範囲内で変化する)が挙げることができる。また、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウムとしては、例えば、Li2+βTi(βは充放電反応により0≦β≦3の範囲内で変化する)が挙げることができる。
【0235】
これら負極活物質は、例えば特開2007−018883号公報、特開2009−176752号公報等に記載される製造方法等に準じて調製すればよい。
【0236】
負極としては、銅製の箔やエキスパンドメタルなどの集電体上に、前記の負極活物質が形成された構成が一般的である。負極活物質の集電体への接着性を向上させるために、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレンプロピレンジエンターポリマー等の結着剤を用いてもよく、また導電助剤としてカーボンブラック、アモルファスウィスカーカーボン等を加えて使用してもよい。
【0237】
負極活物質と、上述の結着剤、導電助剤とを混合し、これに1−メチル−2−ピロリドン等の高沸点溶剤を加えて混練して負極合剤とした後、この負極合剤を集電体の銅箔等に塗布して、乾燥、加圧成型した後、50℃〜250℃程度の温度で約2〜8時間真空下で加熱処理することにより作製することができる。
【0238】
また、負極活物質に黒鉛を用いた場合、負極の集電体を除く部分の密度は、電池の容量をさらに高めるため、下限は、通常は1.4g/cm以上であり、好ましくは1.5g/cm以上、より好ましくは1.7g/cm以上である。また、上限は、通常2.1g/cm以下、好ましくは1.9g/cm以下である。
【0239】
正極を構成する正極活物質としては、充放電が可能な種々の材料から形成することができ、例えば(e)コバルト酸リチウム(LiCoO)、(f)スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物、(g)マンガン、ニッケル及びコバルトを含有する層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、及び(h)リチウム含有オリビン型リン酸塩から少なくとも1つを含有するものが挙げられる。
【0240】
正極活物質として挙げられる(f)スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物としては、例えば、一般式[20]
Lib(Mn2−c)O4 [20]
【0241】
(式中、MはNi、Co、Fe、Mg、Cr、Cu、Al及びTiからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属元素であり、bは1.05≦b≦1.15であり、cは0.05≦c≦0.20である。)で示されるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物が挙げられ、具体的には、例えば、LiMn、LiMn1.9Al0.14、LiMn1.95Al0.05等が挙げられる。
【0242】
正極活物質として挙げられる(g)マンガン、ニッケル及びコバルトを含有する層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物としては、例えば一般式[21]
Li Mnx Niy Coz [21]
【0243】
(式中、dは0≦d≦1.2であり、x、y及びzは、x+y+z=1、0<x≦0.5、0<y≦0.5、及びz≧0の条件を満たす。)で示されるリチウム含有複合酸化物が挙げられ、具体的には、例えばLiNiO、LiMn、LiCo1−aNi(0.01<a<1)、LiMnO、Li[Mn1/3Ni1/3Co1/3]O、Li[Mn0.3Ni0.5Co0.2]O、Li[Mn0.2Ni0.6Co0.2]O等が挙げられる。その中でも、その構造安定性を高め、リチウム二次電池における高温での安全性を向上させるためにマンガンを含有するものが好ましく、特にリチウム二次電池の高率特性を高めるためにコバルトを更に含有するものがより好ましく、このような好ましい具体例としては、例えば4.3V以上に充放電領域を有する、Li[Mn1/3Ni1/3Co1/3]O、Li[Mn0.3Ni0.5Co0.2]O、Li[Mn0.2Ni0.6Co0.2]O等が挙げられる。
【0244】
また、該リチウム含有複合酸化物には、例えばB等の半金属元素、例えばMg等のアルカリ土類金属元素、例えばAl、Zn、Sn等の金属元素、例えばTi、Cr、V、Fe、Cu、Nb、Y、Zr等から選ばれる少なくとも1つの元素を更に少量含んでいることが好ましく、中でもB、Mg、Al、Sn等がより好ましい。
【0245】
正極活物質として挙げられる(h)リチウム含有オリビン型リン酸塩としては、例えば一般式[22]
LiFe1−qPO [22]
【0246】
(式中、MはCo、Ni、Mn、Cu、Zn、Nb、Mg、Al、Ti、W、Zr及びCdから選ばれる少なくとも1つであり、qは、0≦q≦0.5である。)で示されるもの、LiFePO、LiCoPO、LiNiPO、LiMnPO等が挙げられ、中でもLiFePOまたはLiMnPOが好ましい。
【0247】
正極活物質としては、上記(e)〜(h)から選ばれる少なくとも1つを主成分として含有すればよいが、それ以外に含まれるものとしては、例えばFeS、TiS、V、MoO、MoS等の遷移元素カルコゲナイド、例えばポリアセチレン、ポリピロール等のポリマー等が挙げられる。
【0248】
電池電圧4.25V以上で充電終止電圧を設定する場合は、正極活物質の中でも、(g)マンガン、ニッケル及びコバルトを含有する層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物がより好ましい。
【0249】
正極は、前記の正極活物質を、例えばアセチレンブラック、カーボンブラックなどの導電剤、及び例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンとブタジエンの共重合体(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンの共重合体(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレンプロピレンジエンターポリマー等の結着剤と混合し、これに1−メチル−2−ピロリドン等の高沸点溶剤を加えて混練して正極合剤とした後、この正極合剤を集電体のアルミニウムやチタンやステンレス製の箔、エキスパンドメタルなどの集電体上に塗布して、乾燥、加圧成型した後、約50℃〜250℃で約2〜8時間真空下、加熱処理することにより作製することができる。
【0250】
正極の集電体を除く部分の密度は、電池の容量をさらに高めるため、下限としては、通常2g/cm以上、好ましくは3g/cm以上、より好ましくは3.4g/cm以上であり、上限としては、通常4g/cm以下である。
【0251】
ポリエチレンを主成分とするセパレ−タとしては、正極と負極とを電気的に絶縁し、かつリチウムイオンが透過可能な膜が挙げられ、具体的には、例えば多孔性ポリオレフィンフィルム等の微多孔性高分子フィルムが挙げられる。多孔性ポリオレフィンフィルムの具体例としては、例えば多孔性ポリエチレンフィルム単独、又は多孔性ポリエチレンフィルムと多孔性ポリプロピレンフィルムとを重ね合わせて複層フィルムとして用いてもよい。また、多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとの複合化したフィルム等が挙げられる。
【0252】
多孔性ポリオレフィンフィルムに使用されるポリオレフィン樹脂としては、例えば、密度が0.94g/cm3を超えるような高密度ポリエチレン、密度が0.93〜0.94g/cm3の範囲の中密度ポリエチレン、密度が0.93g/cm3より低い低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。中でも、微多孔膜の膜強度を高くする観点から、高密度ポリエチレン及び中密度ポリエチレンが好ましく用いられる。それらは単独で、或いは混合物として使用することができる。
【0253】
これらのフィルムは、電解液がしみ込んでイオンが透過し易いように、微多孔化されているものが好ましい。これらフィルムの微多孔化方法としては、例えば高分子化合物と溶剤の溶液をミクロ相分離させながら製膜し、溶剤を抽出除去して多孔化する「相分離法」、例えば溶融した高分子化合物を高ドラフトで押し出し製膜した後に熱処理し、結晶を一方向に配列させ、さらに延伸によって結晶間に間隙を形成して多孔化をはかる「延伸法」等が挙げられ、その方法は用いられるフィルムによって適宜選択される。
【0254】
また、セパレ−タとして、高分子電解質を使用することもできる。高分子電解質としては、例えばリチウム塩を溶解した高分子物質や、電解液で膨潤させた高分子物質なども使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0255】
本発明の非水系電解液は、高分子物質を膨潤させて高分子電解質を得る目的で使用してもよく、また、多孔性ポリオレフィンフィルムと高分子電解質を併用した形のセパレータに非水系電解液をしみこませてもよい。
【0256】
本発明の非水系電解液電池の好ましい組み合わせとしては、例えば下記(V)〜(XII)が挙げられる。
【0257】
〔非水系電解液電池(V)〕
(i)非水系電解液:(1)本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体、(2)非水系溶媒、及び(3)リチウム塩(電解質液)を含んでなる非水系電解液(本発明の非水系電解液(I)に相当)
(ii)負極:(a)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nm以下の炭素質材料を負極活物質の主成分として含む負極
(iii)正極:(e)コバルト酸リチウムを正極活物質の主成分として含む正極
(iv)セパレータ:微多孔性ポリエチレン製セパレータ
【0258】
〔非水系電解液電池(VI)〕
(i)非水系電解液:(1)本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体、(2)非水系溶媒、(3)リチウム塩(電解質液)、及び(4)負極被膜形成剤を含んでなる非水系電解液(本発明の非水電解液(II)に相当)
(ii)負極:(a)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nm以下の炭素質材料を負極活物質の主成分として含む負極
(iii)正極:(e)コバルト酸リチウムを正極活物質の主成分として含む正極
(iv)セパレータ:微多孔性ポリエチレン製セパレータ
【0259】
〔非水系電解液電池(VII)〕
(i)非水系電解液:(1)本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体、(2)非水系溶媒、(3)リチウム塩(電解質液)、及び(4)膨れ抑制剤を含んでなる非水系電解液(本発明の非水系電解液(III)に相当)
(ii)負極:(a)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nm以下の炭素質材料を負極活物質の主成分として含む負極
(iii)正極:(e)コバルト酸リチウムを正極活物質の主成分として含む正極
(iv)セパレータ:微多孔性ポリエチレン製セパレータ
【0260】
〔非水系電解液電池(VIII)〕
(i)非水系電解液:(1)本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体、(2)非水系溶媒、(3)リチウム塩(電解質液)、(4)負極被膜形成剤、及び(5)膨れ抑制剤を含んでなる非水系電解液(本発明の非水系電解液(IV)に相当)
(ii)負極:(a)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nm以下の炭素質材料及び/又は(c)Sn、Si、Pb及びAlから選ばれる1種以上の金属とリチウムとの合金を負極活物質の主成分として含む負極
(iii)正極:(e)コバルト酸リチウムを正極活物質の主成分として含む正極
(iv)セパレータ:微多孔性ポリエチレン製セパレータ
【0261】
〔非水系電解液電池(IX)〕
(i)非水系電解液:(1)本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体、(2)非水系溶媒、(3)リチウム塩(電解質液)、(4)負極被膜形成剤、及び(5)膨れ抑制剤を含んでなる非水系電解液(本発明の非水系電解液(IV)に相当)
(ii)負極:(a)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nm以下の炭素質材料及び/又は(c)Sn、Si、Pb及びAlから選ばれる1種以上の金属とリチウムとの合金を負極活物質の主成分として含む負極
(iii)正極:(f)スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物及び/又は(g)リチウム含有オリビン型リン酸塩を正極活物質の主成分として含む正極
(iv)セパレータ:微多孔性ポリエチレン製セパレータ
【0262】
〔非水系電解液電池(X)〕
(i)非水系電解液:(1)本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体、(2)非水系溶媒、(3)リチウム塩(電解質液)、(4)負極被膜形成剤、及び(5)膨れ抑制剤を含んでなる非水系電解液(本発明の非水系電解液(IV)に相当)
(ii)負極:(a)X線回折における格子面(002面)のd値が0.340nm以下の炭素質材料及び/又は(c)Sn、Si、Pb及びAlから選ばれる1種以上の金属とリチウムとの合金を負極活物質の主成分として含む負極
(iii)正極:(g)マンガン、ニッケル、コバルトを含有する層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質の主成分として含む正極
(iv)セパレータ:微多孔性ポリエチレン/微多孔性ポリプロピレン製の2層セパレータ
【0263】
〔非水系電解液電池(XI)〕
(i)非水系電解液:(1)本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体、(2)非水系溶媒、(3)リチウム塩(電解質液)、(4)負極被膜形成剤、及び(5)膨れ抑制剤を含んでなる非水系電解液(本発明の非水系電解液(IV)に相当)
(ii)負極:(d)リチウムチタン酸化物を負極活物質の主成分として含む負極
(iii)正極:(e)コバルト酸リチウムを正極活物質の主成分として含む正極
(iv)セパレータ:微多孔性ポリエチレン製セパレータ
【0264】
〔非水系電解液電池(XII)〕
(i)非水系電解液:(1)本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体、(2)非水系溶媒、(3)リチウム塩(電解質液)、(4)負極被膜形成剤、及び(5)膨れ抑制剤を含んでなる非水系電解液(本発明の非水系電解液(IV)に相当)
(ii)負極:(d)リチウムチタン酸化物を負極活物質の主成分として含む負極
(iii)正極:(f)スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物及び/又は(g)マンガン、ニッケル、コバルトを含有する層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質の主成分として含む正極
(iv)セパレータ:微多孔性ポリエチレン/微多孔性ポリプロピレン製の2層セパレータ
【0265】
本発明の非水系電解液を使用した二次電池の形状については特に限定されることはなく、円筒型、角型、アルミラミネート型、コイン型、ボタン型など種々の形状にすることができる。
【0266】
本発明の非水系電解液を用いた非水系電解液電池を作製する場合、その電池の外装体の材質としては、金属材料あるいは金属樹脂積層体フィルム(両面に樹脂被膜を有するアルミニウム箔などのアルミニウムラミネートシート)が用いられる。金属材料としては、例えばニッケルメッキを施した鉄鋼板、ステンレス鋼板、ニッケルメッキを施したステンレス鋼板、アルミニウム又はその合金、ニッケル、チタン等が挙げられる。
電池の用途に応じて円形筒状、方形筒状、薄型箱状などの形状が適宜決められる。生産性、封止性の点を考慮して、金属をこれら形状として加工した缶の形態で用いるのが好ましい。
【0267】
これら金属外装体の封止方法としては、通常この分野で用いられる方法であれば何れでもよいが、例えばレーザー溶接、かしめ、電気溶接等の方法が挙げられる。
【0268】
また、この金属外装体に内圧上昇時のガス放出機能を有するラプチャー構造、電極端子の電流遮断機構、温度上昇に於いて電流遮断機能を有するPTC(positive temperature coefficient)素子を併設してもよい。
【0269】
金属樹脂積層体フィルムを用いて、外装体を作製する方法としては、通常この分野で用いられる方法であれば何れでもよいが、例えばウェットラミネーション、押し出しコーティング、共押し出しラミネーション、ドライラミネーション等の方法が挙げられる。
【0270】
金属樹脂積層体フィルムを用いて、外装体に電極端子を配置した電池要素積層体を包装する場合、包装の手順は最終的に外装体で密封されれば構わないが、電極端子がはみ出る部分を残して筒状或いは袋状に予めしておき、電池要素積層体を外装体に投入した後、電極端子がはみ出るように外装体の開口部を封止する方法が好ましい。
封止する方法としては、インパルスシール、ヒートシール、高周波シール等による最内側の対向する熱可塑性樹脂層を熱融着する方法などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0271】
また、外装体の電極端子取り出し部位において、外装体の端を絶縁材料で覆うこと、または外装体を構成する金属層の一部に欠損領域を設けることは、電極端子を折り曲げた場合の金属層を通じての短絡を防止することが可能となり、電池の安全性、信頼性を高める上で効果的である。
【0272】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
即ち、本発明によれば、非水系電解液において、本発明に示すとおり、従来の系では全く見られない新規のメチレンビススルホネート誘導体を本発明の所定範囲の添加量にて調製した非水系電解液を使用することにより、非水系電解液が高温下での安定性や、良好な被膜形成効果を有するため、1サイクル目充放電効率、初期特性や高温保存特性も良好となるだけでなく、電池内部でのガス発生が抑制可能な非水系電解液電池が提供できる。加えて、充放電サイクルを繰り返しても電池作製時の初期の容量を維持することができ、良好なサイクル特性を有する非水系電解液電池が提供できる。
【0273】
また、本発明の非水系電解液の製造方法は、遊離酸の生成を抑制し、非水系電解液の劣化を防ぐことが可能となり、その品質を維持することより、良好な非水系電解液の提供が実現できる。
【実施例】
【0274】
以下に示す合成例、実験例、比較実験例、比較例及び実施例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0275】
合成例(本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体及び比較化合物)
【0276】
[本発明に係るメチレンビススルホネート]
【0277】
合成例1.化合物No.1〔メチレンビス(メタンスルホネート)〕の合成
【0278】
炭酸ジメチル(10mL)中、米国特許第4649209号公報記載の方法に従って合成されたメチレンビス(クロロスルフェート)〔ClSOOCHOSOCl〕(1.5g, 6.1mmol)及びメタンスルホン酸ピリジニウム塩(2.1g, 12.0mmol)を55℃で3時間撹拌反応させた。反応終了後、析出したクロロスルホン酸ピリジニウム塩を濾別し、減圧濃縮して薄茶褐色固体を得た。活性炭で吸着処理した後に再結晶で精製することにより、目的物であるメチレンビス(メタンスルホネート)を収率48%(0.6g, 2.9mmol)で得た。1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (CD3CN) ; δ = 5.80 (s, 2H), 3.19 (s, 6H)
【0279】
合成例2.化合物No.2〔メチレンビス(エタンスルホネート)〕の合成
【0280】
合成例1において、メタンスルホン酸ピリジニウム塩(2.1g, 12.0mmol)の代わりにエタンスルホン酸ピリジニウム塩(2.3g, 12.0mmol)を使用した他は合成例1と同様に処理して、メチレンビス(エタンスルホネート)を収率41%(0.6g, 2.5mmol)で得た。1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3) ; δ = 5.82 (s, 2H), 3.31-3.26 (q, 4H), 1.50-1.46 (t, 6H)
【0281】
合成例3.化合物No.4〔メチレンビス(n-ブタンスルホネート)〕の合成
【0282】
合成例1において、メタンスルホン酸ピリジニウム塩(2.1g, 12.0mmol)の代わりにn-ブタンスルホン酸ピリジニウム塩(2.6g, 12.0mmol)を使用した他は合成例1と同様に処理して、メチレンビス(n-ブタンスルホネート)を収率55%(1.0g, 3.3mmol)で得た。1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (DMSO) ; δ =δ = 5.86 (s, 2H), 3.44-3.49 (m, 4H), 1.68-1.73 (m, 4H), 1.37-1.44 (m, 4H), 0.87-0.92 (t, 6H),
【0283】
合成例4.化合物No.6〔メチレンビス(トリフルオロメタンスルホネート)〕の合成
【0284】
n-ヘキサン(10mL)中、ジヨードメタン(1.0g, 3.7mmol)及びトリフルオロメタンスルホン酸銀(2.0g, 7.8mmol)を加熱還流下で4時間反応させた。反応終了後、析出したヨウ化銀を濾別し、減圧濃縮して薄褐色オイルを得た。活性炭で吸着処理した後に活性炭を濾別し、減圧濃縮して目的物であるメチレンビス(トリフルオロメタンスルホネート)を収率76%(0.9g, 2.9mmol)で得た。1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3) ; δ = 6.06 (s, 2H)
【0285】
合成例5.化合物No.7〔メチレンビス(ビニルスルホネート)〕の合成
【0286】
合成例1において、メタンスルホン酸ピリジニウム塩(2.1g, 12.0mmol)の代わりにビニルスルホン酸ピリジニウム塩(2.2g, 12.0mmol)を使用した他は合成例1と同様の処理を行うことにより、メチレンビス(ビニルスルホネート)を収率61%(0.8g, 3.7mmol)で得た。1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (CD3CN) ; δ = 6.77-6.72 (q, 2H), 6.47-6.43 (d, 2H), 6.29-6.27 (d, 2H), 5.73 (s, 2H)
【0287】
合成例6.化合物No.12〔メチレンビス(アリルスルホネート)〕の合成
【0288】
合成例1において、メタンスルホン酸ピリジニウム塩(2.1g, 12.0mmol)の代わりにアリルスルホン酸ピリジニウム塩(2.4g, 12.0mmol)を使用する以外は合成例1と同様の処理を行うことにより、メチレンビス(アリルスルホネート)を収率43%(0.7g, 2.6mmol)で得た。1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (CD3CN) ; δ = 5.93-5.82 (m, 2H), 5.76 (s, 2H), 5.55-5.49 (m, 4H), 4.06-4.04 (d, 4H)
【0289】
合成例7.化合物No.13〔メチレンビス(2-メチルアリルスルホネート)〕の合成
【0290】
合成例1において、メタンスルホン酸ピリジニウム塩(2.1g, 12.0mmol)の代わりに2-メチルアリルスルホン酸ピリジニウム塩(2.6g, 12.0mmol)を使用する以外は合成例1と同様の処理を行うことにより、メチレンビス(2-メチルアリルスルホネート)を収率35%(0.6g, 2.1mmol)で得た。1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (CD3CN) ; δ = 5.78 (s, 2H), 5.26-5.20 (d, 4H), 4.04 (s, 4H), 1.93 (s, 6H)
【0291】
合成例8.化合物No.15〔メチレンビス(シンナミルスルホネート)〕の合成
【0292】
合成例1において、メタンスルホン酸ピリジニウム塩(2.1g, 12.0mmol)の代わりにシンナミルスルホン酸ピリジニウム塩(3.3g, 12.0mmol)を使用する以外は合成例1と同様の処理を行うことにより、メチレンビス(シンナミルスルホネート)を収率40%(1.0g, 2.4mmol)で得た。1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (DMSO-d6) ; δ = 7.48 (d, 4H), 7.38-7.30 (m, 6H), 6.83 (d, 2H), 6.29-6.22 (m, 2H), 5.95 (s, 2H), 4.47 (d, 4H)
【0293】
合成例9.化合物No.16〔メチレンビス(ベンジルスルホネート)〕の合成
【0294】
合成例1において、メタンスルホン酸ピリジニウム塩(2.1g, 12.0mmol)の代わりにベンジルスルホン酸ピリジニウム塩(3.0g, 12.0mmol)を使用する以外は合成例1と同様の処理を行うことにより、メチレンビス(ベンジルスルホネート)を収率31%(0.7g, 1.9mmol)で得た。1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (CD3CN) ; δ = 7.43 (s, 10H), 5.58 (s, 2H), 4.56 (s, 4H)
【0295】
合成例10.化合物No.17〔メチレンビス(2-チエニルスルホネート)〕の合成
【0296】
合成例4において、トリフルオロメタンスルホン酸銀(2.0g, 7.8mmol)の代わりに2-チエニルスルホン酸酸銀(2.1g, 7.8mmol)を使用した他は合成例4と同様に処理して、メチレンビス(2-チエニルスルホネート)を収率52%(0.7g, 2.0mmol)で得た。1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (DMSO) ; δ = 8.19-8.21 (m, 2H), 7.81-7.83 (m, 2H), 7.27-7.30 (m, 2H), 6.00 (s, 2H)
【0297】
[比較化合物]
本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体の比較化合物として、下記ジスルホン酸エステル誘導体を示す。
【0298】
比較化合物No.C−2〔エチレンビス(エタンスルホネート)〕
比較化合物No.C−2を以下のように合成した。
アセトニトリル(190mL)中、エタンスルホニルクロリド(25.7g, 200mmol)、エチレングリコール(6.2g, 100mmol)及びトリエチルアミン(20.2g, 200mmol)を25℃で2時間撹拌反応させた。反応終了後、酢酸エチルに希釈して水で分液洗浄した。酢酸エチル層を活性炭で吸着処理した後に活性炭を濾別し、減圧濃縮して目的物であるエチレンビス(エタンスルホネート)を収率18%(4.5g, 18mmol)で得た。1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3) ; δ = 4.46 (s, 4H), 3.24-3.16 (q, 4H), 1.48-1.43 (t, 6H)
【0299】
比較化合物No.C−12〔エチレンビス(アリルスルホネート)〕
比較化合物No.C−12を以下のように合成した。
比較化合物No.C−2の合成において、エタンスルホニルクロリド(25.7g, 200mmol)の代わりにアリルスルホニルクロリド(18.1g, 200mmol)を使用した他は比較化合物No.C−2と同様に処理して、エチレンビス(アリルスルホネート)を収率48%(13.0g, 48mmol)で得た。1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3) ; δ = 5.95-5.85 (m, 2H), 5.53-5.47 (m, 4H), 4.47-4.43 (t, 4H), 3.92-3.90 (d, 4H)
【0300】
比較化合物No.C−16〔エチレンビス(ベンジルスルホネート)〕
比較化合物No.C−16を以下のように合成した。
比較化合物No.C−2の合成において、エタンスルホニルクロリド(25.7g, 200mmol)の代わりにベンジルスルホニルクロリド(38.0g, 200mmol)を使用した他は比較化合物No.C−2と同様に処理して、エチレンビス(ベンジルスルホネート)を収率51%(19.0g, 51mmol)で得た。1H NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (DMSO-d6) ; δ = 7.43-7.36 (m, 10H), 4.75-4.70 (t, 2H), 4.46 (s, 4H)
【0301】
比較化合物No.21:エチレングリコールジメタンスルホネート
比較化合物No.21は、常法(例えば、J Reprod Fertil. 1988 Sep;84(1):63-9等)により合成した。
【0302】
比較化合物No.22:1,4−ブタンジオールジ−p−トルエンスルホネート
比較化合物No.22は、市販品((有)新成化学製)を用いた。
【0303】
比較化合物No.23:1,4−ブタンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)
比較化合物No.23は、市販品(ドイツChemos GmbH製)を用いた。
【0304】
実験例1〜3及び比較実験例1〜4
【0305】
[非水系電解液の調製]
i)基準電解液1の調製
まず、露点−50℃以下のドライボックス中に、予め加熱、溶解させたエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒(容量比3:7)を調製し、次いで、リチウム塩としてLiPFを濃度が1mol/リットルになるように添加し、基準電解液1を調製した。
【0306】
尚、この調製の際には、液温が30℃を超えないように冷却し、LiPFの添加は、先ず、予め混合した混合溶媒中に全LiPFの30重量%を加えて溶解した後、次いで全LiPFの30重量%を加えて、溶解する操作を2回繰り返し、最後に残りの10重量%のLiPFを加えて溶解するという操作により基準電解液1を調製した。基準電解液1の調製時の非水系溶媒混合工程(A)、リチウム塩溶解工程(B)での最大液温は、それぞれ、20℃、26℃であった。
【0307】
ii)非水系電解液1の調製
次に、i)で得られた基準電解液1に下記表1に記載した本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体を、下記表1に記載した所定量添加し、非水系電解液a−1〜a−3を調製した。
【0308】
また、本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体を添加していない非水系電解液b−1(ブランク:基準電解液1)及び、基準電解液1に下記表1に記載した比較化合物No.C−12、C−16又はC−2を、下記表1に記載した所定量添加した非水系電解液b−2〜b−4を比較例とした。
更に、各種非水系電解液調製後の水分値及び遊離酸値を併せて表1に示す。
尚、非水系電解液の調製後の水分値は、微量水分測定装置(カールフィッシャー電量滴定装置 三菱化学アナリテック製 CA-200)によって測定した。
【0309】
遊離酸の測定は、露点−40℃以下のドライボックス中において、各非水系電解液20gを採取し、密栓してドライボックスから取り出した後、同20.0gを氷水100g(氷50g+水50g)中にすばやく投入して、ブロムチモールブルー指示薬3滴を加えた後、撹拌しながら0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いる中和滴定により行った。
【0310】
【表1】
【0311】
[負極の作製]
負極活物質である炭素材料〔MCMB25−28(大阪ガスケミカル製)〕93重量部を、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)7質量部を予め1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて、均一に分散、混合し、負極合剤スラリーを調製した。得られた負極合剤スラリーを厚さ18μmの銅箔製の負極集電体に塗布し、乾燥させた後、圧縮成型し、これを直径17.5mmの円盤状に打ち抜いて、コイン状の負極を得た。
【0312】
[正極の作製]
正極活物質であるLiCoO(日本化学工業製 C-5H)94重量部と、導電剤であるアセチレンブラック3重量部とを混合し、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)3質量部を予め1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて均一に分散、混合し、LiCoO合剤スラリーを調製した。得られたLiCoO合剤スラリーを厚さ20μmのアルミ箔に塗布、乾燥させ、圧縮成型し、これを直径16.0mmに打ち抜き、正極を作製した。
【0313】
[コイン型電池の作製]
直径17.5mmの負極、直径16.0mmの正極、厚さ25μm、直径18.0mmの微多孔性ポリエチレンフィルムからできたセパレータ(東燃化学那須製 E25MMS)を、 ステンレス製の2032サイズの電池缶内に、負極、セパレータ、正極の順序で積層、配置した。
その後、負極、セパレータ及び正極へ非水系電解液900μLを真空中で注入した後、アルミニウム製の板(厚さ1.1mm、直径16.0mm)及びバネを収納した。最後に、ポリプロピレン製のガスケットを介して、電池缶蓋を専用のコインセルかしめ機を用いて、かしめることにより、電池内の気密性を保持し、直径20mm、高さ3.2mmのコイン型電池を作製した。
【0314】
[コイン型電池の充放電特性の測定条件]
上述の方法にて作製したコイン型電池を用いて、以下のように充放電特性を測定した。
a)1サイクル目の充電;
25℃にて、3.0Vまで0.6mAで充電し、次いで1.2mAで4.2Vまで充電した後、4.2Vから定電圧充電に移行し全体で6時間経過した時点で充電を終了した。
b)1サイクル目の放電;
上述の充電後、1.2mAで3.0Vまで放電した。
c)2サイクルの充電放電条件;
1.2mAで4.2Vまで充電し、4.2Vから定電圧充電に移行し全体で6時間経過した時点で充電を終了した。その後、1.2mAで3.0Vまで放電した。
コイン型電池での1サイクル目の充放電効率、放電容量、ならびに2サイクル目の放電容量に関しては、次式により算出した。
・1サイクル目の充放電効率 =(1サイクル目の充電容量/1サイクル目の放電容量)×100 (%)
・1サイクル目の放電容量 (mAh/g) = 各コインセルの1サイクル目の放電容量 /各コインセル正極活物質の重量
・2サイクル目の放電容量 (mAh/g) = 各コインセルの2サイクル目の放電容量 /各コインセル正極活物質の重量
【0315】
得られた1サイクル目充放電効率、1サイクル目放電容量及び2サイクル目放電容量の結果を表2に示す。
【0316】
【表2】
【0317】
表2の結果より、化合物No.12、16及び2の化合物(実験例1〜3:本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体)と比較して、比較実験例No.C−12、C−16及びC−2の化合物(比較実験例2〜4:エチレンビススルホネート誘導体)は、1サイクル目の充放電効率が低下していることから初期不可逆容量が増加する傾向にあることが判る。言い換えれば、本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体を用いることにより、電池の初期不可逆容量の低減という効果を奏する。
【0318】
実施例1−1〜1−14及び比較例1−1〜1−4
【0319】
[非水系電解液の調製]
i) 基準電解液1の調製;
まず、露点-50℃以下のドライボックス中に、予め加熱、溶解させたエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒(容量比1:1)を混合し、次いで、リチウム塩としてLiPFの濃度が1mol/リットルになるように、LiPFを添加し、基準電解液1を調製した。
【0320】
尚、この調製の際には、液温が30℃を超えないように冷却し、LiPFの添加は、先ず、予め混合した混合溶媒中に全LiPFの30重量%を加えて溶解した後、次いで全LiPFの30重量%を加えて、溶解する操作を2回繰り返し、最後に残りの10重量%のLiPFを加えて溶解するという操作により基準電解液1を調製した。基準電解液1の調製時の非水系溶媒混合工程(A)、リチウム塩溶解工程(B)での最大液温は、それぞれ、21℃、27℃であった。
【0321】
ii)非水系電解液1の調製
次に、i)で得られた基準電解液1に下記表3に記載した本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体を、下記表3に記載した所定量添加し、非水系電解液1−1〜1−14を調製した。
また、本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体を添加していない非水系電解液1−15(ブランク:基準電解液1)及び、基準電解液1に下記表3に記載した比較化合物No.21〜23を、下記表3に記載した所定量添加した非水系電解液1―16〜1−18を比較例とした。更に、各種非水系電解液調製後の水分値及び遊離酸値を併せて表3に示す。
【0322】
尚、非水系電解液の調製後の水分値は、微量水分測定装置(カールフィッシャー電量滴定装置 三菱化学アナリテック製 CA-200)によって測定した。
【0323】
遊離酸の測定は、露点-40℃以下のドライボックス中において、各非水系電解液20gを採取し、密栓してドライボックスから取り出した後、同20.0gを氷水100g(氷50g+水50g)中にすばやく投入して、ブロムチモールブルー指示薬3滴加えた後、撹拌しながら0.1mol/l 水酸化ナトリウム水溶液を用いる中和滴定により行った。
【0324】
【表3】
【0325】
[負極の作製]
負極活物質である炭素材料〔MCMB25−28(大阪ガスケミカル製)〕93重量部を、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)7質量部を予め1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて、均一に分散、混合し、負極合剤スラリーを調製した。得られた負極合剤スラリーを厚さ18μmの銅箔製の負極集電体に塗布し、乾燥させた後、圧縮成型し、これを直径18mmの円盤状に打ち抜いて、コイン状の負極を得た。
この負極合剤の厚さは95μm、重量は直径18mmの円盤状で71mgであった。
【0326】
[正極の作製]
正極活物質であるLiCoO(日本化学工業製 C-5H)94重量部と、導電剤であるアセチレンブラック3重量部とを混合し、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)3質量部を予め1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて均一に分散、混合し、LiCoO合剤スラリーを調製した。得られたLiCoO合剤スラリーを厚さ20μmのアルミ箔に塗布、乾燥させ、圧縮成型し、これを直径16.5mmに打ち抜き、正極を作製した。
このLiCoO合剤の厚さは105μm、重量は直径16.5mmの円で65mgであった。
【0327】
[コイン型電池の作製]
直径18mmの負極、直径16.5mmの正極、厚さ25μm、直径18.5mmの微多孔性ポリエチレンフィルムからできたセパレータ(東燃化学那須製 E25MMS)を、ステンレス製の2032サイズの電池缶内に、負極、セパレータ、正極の順序で積層、配置した。その後、負極、セパレータ及び正極へ非水系電解液1000μLを真空中で注入した後、アルミニウム製の板(厚さ1.1mm、直径16.5mm)及びバネを収納した。最後に、ポリプロピレン製のガスケットを介して、電池缶蓋を専用のコインセルかしめ機を用いて、かしめることにより、電池内の気密性を保持し、直径20mm、高さ3.2mmのコイン型電池を作製した。
【0328】
[ラミネート電池の作製]
上述のコイン型電池と同一の電極を使用し、寸法55mm×100mmの負極、寸法50mm×90mmの正極を切り出し、微多孔性ポリエチレンフィルムからできたセパレータを介して対向させて電極群とした。この電極群を、アルミニウムラミネートフィルム(住友電工製)で作製した筒状の袋に、正極、負極の両リード端子が片方の開放部から引き出されるように収容した。その後、まず、リード端子が引き出された側を熱融着して閉じた。次に、残った開口部を上にして、非水系電解液1.2gを電極群に注入し含浸させた後、15mAの定電流にて、90分充電した。その後、残った開口部を上にした状態で、さらに非水系電解液0.3gを注入し、含浸させた後、同開口部を熱融着して電極群を袋中に密封し、ラミネート電池を作製した。
【0329】
[コイン型電池とラミネート電池での電池特性の比較]
上記表3に示した種々の非水系電解液を用いたコイン型電池の高温保存後の特性評価結果と、ラミネート電池での25℃サイクル特性結果を併せて表4に示す。
尚、コイン型電池及びラミネート電池の充放電特性の測定条件を以下に示す。
【0330】
[コイン型電池の充放電特性の測定条件]
上述の方法にて作製したコイン型電池を用いて、以下のように充放電特性を測定した。
a)1サイクル目の充電;
25℃にて、3.0Vまで0.7mAで充電し、次いで1.4mAで4.2Vまで充電した後、4.2Vから定電圧充電に移行し全体で6時間経過した時点で充電を終了した。
b)1サイクル目の放電;
上述の充電後、1.4mAで3.0Vまで放電した。
c)2サイクル、3サイクル及び4サイクル目の充電放電条件;
1.4mAで4.2Vまで充電し、4.2Vから定電圧充電に移行し全体で6時間経過した時点で充電を終了した。その後、1.4mAで3.0Vまで放電した。この操作を計3回繰り返した。
d)高温保存後の特性(5サイクル及び6サイクル目の充電放電条件);
【0331】
コイン型電池での高温保存後の特性(5サイクル目の充電放電条件)に関しては、上述c)と同一充電条件にて、充電後85℃24時間保存後、25℃にて放電を同一放電条件で放電して容量維持率を次式により算出した。
・容量維持率=(5サイクル目の放電容量/4サイクル目の放電容量)×100 (%)
更に、常温にて2〜4サイクル目と同一条件で1サイクル充放電して容量回復率を次式により算出した。
・容量回復率=(6サイクル目の放電容量/4サイクル目の放電容量)×100 (%)
【0332】
[ラミネート電池の充放電特性の測定条件]
上述の方法で作製したラミネート電池を、室温にて1週間放置した後、以下のように充放電特性を測定した。
a)室温にて1週間放置後の充電(1サイクル目の充電);同充電は、30mAで4.2Vまで充電し、4.2Vから定電圧充電に移行し全体で5時間経過した時点で充電を終了した。
b)1サイクル目の放電;上述の充電後、30mAで3.0Vまで放電した。
c)2サイクル目以降の充電;上記b)の放電終了後、同充電は、30mAで4.2Vまで充電し、4.2Vから定電圧充電に移行し全体で6時間経過した時点で充電を終了した。
d)2サイクル目以降の放電;上記c)の充電後、30mAで3.0Vまで放電した。
同じ方法により、3.0Vから4.2V間の充放電(即ち、上記c)とd)工程)を計3回繰り返した。
【0333】
25℃サイクル特性に関しては、4サイクル目まで上述の充放電試験を実施した後、以下の充放電試験条件を実施した。即ち、25℃で以下の充放電条件にて100サイクル実施後の容量維持率を次式により算出した。
・充電;120mAで4.2Vまで充電し、4.2Vから定電圧充電に移行し全体で2.5時間経過した時点で充電を終了。
・放電;上述の充電後、120mAで3.0Vまで放電した。
・25℃100サイクル後の容量維持率=(25℃100サイクル目の放電容量/4サイクル目の放電容量)×100 (%)
【0334】
【表4】
【0335】
表4の実施例1−1〜1−14と比較例1−1の結果から明らかなように、本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体を所定量含有した非水系電解液を用いたコイン型電池は、いずれも基準電解液1単独(比較例1−1)と比較して、85℃、24時間保存後では、同電池の容量維持率、及び容量回復率に明らかな改善効果を示すことが判る。
【0336】
また、ラミネート電池でのサイクル特性の結果でも、本発明の非水系電解液を用いた場合において、良好な特性が得られていることを確認した。
【0337】
一方、該メチレンビススルホネート誘導体の代わりにその類似化合物である比較化合物No.21〜23を所定量含有させた非水系電解液(比較例1−2〜1−4)を用いた場合は、実施例1−1〜1−14と比較して、容量維持率及び容量回復率が何れも低下していることから高温保存特性が劣る傾向が確認された。
【0338】
実施例1−15〜1−17及び比較例1−5
【0339】
[コイン型電池での0℃サイクル特性の比較]
(実施例1−15〜1−17)
実施例1−1(非水系電解液No.1-1 (化合物No.1を0.2重量%含有)を使用)、実施例1−2(非水系電解液No.1-2 (化合物No.2を0.2重量%含有)を使用)及び実施例1−3(非水系電解液No.1-3 (化合物No.4を0.2重量%含有)を使用)と同様にコイン電池を作製し、0℃サイクル特性評価を行った。その結果を表5に示す。
尚、コイン型電池の0℃サイクル特性の測定条件を以下に示す。
【0340】
[0℃低温サイクル試験]
上述の方法にて作製したコイン型電池を用いて、以下のように充放電特性を測定した。
a)1サイクル目の充電;
25℃にて、3.0Vまで0.7mAで充電し、つづいて1.4mAで4.2Vまで充電し、4.2Vから定電圧充電に移行し全体で6時間経過した時点で充電を終了した。
b)1サイクル目の放電;
上述の充電後、1.4mAで3.0Vまで放電した。
c)2サイクル〜11サイクル目の充放電条件;
25℃にて、1.4mAで4.2Vまで充電し、4.2Vから定電圧充電に移行し全体で6時間経過した時点で充電を終了した。その後、25℃にて1.4mAで3.0Vまで放電した。この操作を10回繰り返した。
d)12サイクル〜21サイクル目の充放電条件;
0℃にて、1.4mAで4.2Vまで充電し、4.2Vから定電圧充電に移行し全体で6時間経過した時点で充電を終了した。その後、0℃にて1.4mAで3.0Vまで放電した。この操作を10回繰り返した。
また、コイン型電池での0℃低温サイクル特性に関しては、充電後25℃にて放電を同一放電条件で放電して容量維持率を次式により算出した。
・容量維持率=(21サイクル目の放電容量/3サイクル目の放電容量)×100 (%)
【0341】
(比較例1−5)
非水系電解液に本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体を添加しないもの(非水系電解液No.1-15 (化合物添加なし)を用いた以外は実施例1−15と同様にコイン電池を作製し、0℃サイクル特性評価を行った。また、コイン電池を解体して負極表面を観察した。その結果も表5に併せて示す。
【0342】
【表5】
【0343】
表5に示すように、本発明の非水系電解液を用いたコイン型電池(実施例1−15〜1−17)は、非水系電解液に本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体を添加しないもの〔比較例1−5:非水系電解液No.1-15 (基準電解液1単独)〕と比較して、0℃サイクル後の容量維持率に明らかな改善効果を示すことが判る。また、比較例1−5のコイン電池の負極表面にはLiデンドライトが多く発生していたのに対し、実施例1−15〜1−17のコイン電池の負極表面にはLiデンドライトの発生はなく、本発明の非水系電解液が良好な特性を示すことが判る。
【0344】
実施例2−1〜2−30及び比較例2−1
【0345】
i)基準電解液2の調製
露点−50℃以下のドライボックス中で、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒(容量比1:1:1)を予め混合し、次いで、リチウム塩としてLiPFの濃度が1.1mol/リットル、LiN(SOCFの濃度が0.1mol/リットルの濃度となるように、各リチウム塩を添加し、基準電解液2を調製した。
【0346】
尚、この調製の際には、液温が30℃を超えないようにし、LiPFの添加は、先ず、予め混合した混合溶媒中に全LiPFの30重量%を加えて溶解した後、次いで、全LiPFの30重量%を加えて、溶解する操作を2回繰り返し、最後に残りの10重量%のLiPFを加えて溶解した。その後、更にLiN(SOCFを所定量加えて溶解して、基準電解液2を調製した。基準電解液2の調製時の非水系溶媒混合工程(A)、リチウム塩溶解工程(B)での最大液温は、それぞれ、21℃、26℃であった。
【0347】
ii)非水系電解液2の調製
次に、i)で得られた基準電解液2に、下記表6に記載した本発明に係るメチレンビススルホネートを所定量添加し、非水系電解液2−1〜2−30を調製した。
【0348】
また、本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体を添加していない非水系電解液2−31(ブランク:基準電解液2)を比較例とした。調製後の非水系電解液の水分値及び遊離酸分値の結果を表6に併せて示す。
【0349】
【表6】
【0350】
[ラミネート電池での電池特性の比較]
表6に示した各非水系電解液を用い、実施例1−1〜1−14と同様の操作により作製されたラミネート電池の高温保存後の特性評価と、25℃サイクル特性評価を行った。それらの結果を表7に併せて示す。
【0351】
尚、ラミネート電池の高温保存後特性の測定条件を以下に示す。
a)上述の各非水系電解液を用いて作製したラミネート電池を室温にて1週間放置後の充電(1サイクル目の充電);同充電は、30mAで4.2Vまで充電し、4.2Vから定電圧充電に移行し全体で5時間経過した時点で充電を終了した。
b)1サイクル目の放電;上述の充電後、30mAで3.0Vまで放電した。
c)2サイクル、3サイクル及び4サイクル目の充電放電条件;30mAで4.2Vまで充電し、4.2Vから定電圧充電に移行し全体で6時間経過した時点で充電を終了した。その後、30mAで3.0Vまで放電した。この操作を計3回繰り返した。
d)高温保存後の特性(5サイクル及び6サイクル目の充電放電条件);ラミネート電池での高温保存後の特性(5サイクル目の充電放電条件)に関しては、上述c)と同一充電条件にて、充電後85℃24時間保存後、25℃にて放電を同一放電条件で放電して容量維持率を次式により算出した。
・容量維持率=(5サイクル目の放電容量/4サイクル目の放電容量)×100 (%)
また、常温にて2〜4サイクル目と同一条件で1サイクル充放電して容量回復率を次式により算出した。
・容量回復率=(6サイクル目の放電容量/4サイクル目の放電容量)×100 (%)
【0352】
[高温保存中のセルの膨れ評価]
ラミネート電池でのセルの膨れの測定方法は、シリコーンオイル中に同セルを浸漬したときの体積変化により計測した。ラミネート電池の体積を、高温保存試験の前後に室温状態まで冷却した後に測定し、その体積変化率を保存中のセルの膨れとした。その結果を表7に併せて示す。
【0353】
【表7】
【0354】
表7に示すように、本発明の非水系電解液を用いたラミネート電池(実施例2−1〜2−30)は、比較例2−1のラミネート電池と比較して、85℃、24時間保存後では、同電池の容量維持率、容量回復率、及びセルの膨れにて良好な効果を示すことが判る。
また、サイクル特性の結果においても、本発明の非水系電解液が良好な特性を示すことは明らかである。
【0355】
実施例2−31〜2−38及び比較例2−2〜2−5
【0356】
(実施例2−31〜2−32)
実施例2−4及び実施例2−16で用いた負極活物質の代わりに、負極活物質の原料となるSn粉末を用いて、負極を作製した。Sn粉末78質量部、導電剤としてアセチレンブラック15質量部を混合し、これを、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)7質量部を予め1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて、均一分散、混合し、負極合剤スラリーを調製した。この負極合剤スラリーを銅箔製の負極集電体上に塗布し、乾燥させた後、加圧・圧縮成型して所定の大きさに裁断し、帯状の負極を作製したこと以外は、実施例2−4と同様に操作を行うことによりラミネート電池を作製し、電池評価を行った(非水系電解液は非水系電解液No.2-4 (化合物No.1を0.5重量%含有)、No.2-16(化合物No.12を0.5重量%含有)を使用)。
尚、同電池の評価条件は、充電終止電圧を4.2V、放電終止電圧を2.5Vとしたこと以外は実施例2−4と同様の電池評価を行った。同ラミネート電池の25℃サイクル特性結果を表8に併せて示す。
【0357】
(比較例2−2)
非水系電解液として、本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体を添加しないもの(非水系電解液No.2-31 (化合物添加なし)を用いたこと以外は実施例2−31と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った。同ラミネート電池の25℃サイクル特性結果を表8に併せて示す。
【0358】
【表8】
【0359】
(実施例2−33〜2−34)
実施例2−3及び2−15で用いた正極活物質の代わりにLiFePOを用いて、正極を作製した。LiFePO粉末90質量部、導電剤としてアセチレンブラック5質量部を混合し、これを、結着剤のポリフッ化ビニリデン(PVDF)5質量部を予め1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて、均一分散、正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーをアルミニウム箔製の正極集電体上に塗布し、乾燥、加圧・圧縮成型所定の大きさに裁断し、帯状の正極を作製した以外は、実施例2−3と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った(非水系電解液は非水系電解液No.2-3(化合物No.1を0.2重量%含有)、No.2-15(化合物No.12を0.2重量%含有)を使用)。
尚、同電池の評価条件は、充電終止電圧を3.6V、放電終止電圧を2.0Vとしたこと以外は、実施例2−3と同様の電池評価を行った。その結果を表9に示す。
【0360】
(比較例2−3)
非水系電解液として、本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体を添加しないもの(非水系電解液No.2-31 (化合物添加なし))を用いた以外は実施例2−33と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った。同ラミネート電池の25℃サイクル特性結果を表9に併せて示す。
【0361】
【表9】
【0362】
(実施例2−35〜2−36)
実施例2−3及び実施例2−15で用いた正極活物質の代わりに、Li[Mn0.2Ni0.6Co0.2]Oを用いて、正極を作製した。Li[Mn0.2Ni0.6Co0.2]O粉末92質量部と導電剤としてアセチレンブラック4質量部を混合し、これを結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)4質量部を予め1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて、均一分散、正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーをアルミニウム箔製の正極集電体上に塗布し、乾燥、加圧・圧縮成型所定の大きさに裁断し、帯状の正極を作製した。そして、微多孔性ポリプロピレン−ポリエチレン2層フィルムからなるセパレータのポリプロピレン側を正極側に配置するように介して、正極、負極を対向させて電極群とした以外は、実施例2−3と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った(非水系電解液は非水系電解液No.2-3(化合物No.1を0.2重量%含有)、No.2-15(化合物No.12を0.2重量%含有)を使用)。
尚、同電池の評価条件は、充電終止電圧を4.3V、放電終止電圧を3.0Vとしたこと以外は、実施例2−3と同様の電池評価を行った。その結果を表10に併せて示す。
【0363】
(比較例2−4)
非水系電解液として、本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体を添加しないもの(非水系電解液No.2-31 (化合物添加なし))を用いた以外は実施例2−35と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った。同ラミネート電池の25℃サイクル特性結果を表10に併せて示す。
【0364】
【表10】
【0365】
(実施例2−37〜実施例2−38)
実施例2−3及び実施例2−15で用いた正極活物質の代わりに、LiMn1.95Al0.05を用いて、正極を作製した。LiMn1.95Al0.05粉末92質量部と導電剤としてアセチレンブラック4質量部を混合し、これを、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)4質量部を予め1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて、均一分散、正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーをアルミニウム箔製の正極集電体上に塗布し、乾燥、加圧・圧縮成型所定の大きさに裁断し、帯状の正極を作製した以外は、実施例2−3と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った(非水系電解液はNo.2-3(化合物No.1を0.2重量%含有)、No.2-15(化合物No.12を0.2重量%含有)を使用)。
尚、同電池の評価条件は、充電終止電圧を4.2V、放電終止電圧を3.0Vとしたこと以外は、実施例2−3と同様の電池評価を行った。その結果を表11に示す。
【0366】
(比較例2−5)
非水系電解液として本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体を添加しないもの(非水系電解液No.2-31(化合物添加なし))を用いた以外は実施例2−35と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った。同ラミネート電池の25℃サイクル特性結果を表11に併せて示す。
【0367】
【表11】
【0368】
表8〜11の結果から明らかなように、本発明の非水系電解液を用いたラミネート電池(実施例2−31〜実施例2−38)は、比較例2−1〜2−5の各電池を用いた場合に比べて顕著な25℃100サイクル後の容量維持率を示すことが判る。
【0369】
また、実施例2−31〜2−32と比較例2−1の結果、実施例2−33〜2−34と比較例2−2の結果、実施例2−35〜2−36と比較例2−3の結果、実施例2−37〜2−38と比較例2−5の結果から、負極にSnを用いた場合や、正極にリチウム含有オリビン型リン酸鉄塩、マンガン−ニッケル−コバルトを含有する層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物を用いた場合のいずれにおいても、本発明の非水系電解液は、実施例2−1〜2−30と同様な効果を示すことが判る。つまり、本発明の非水系電解液及びこれを用いた電池には、特定の正極や負極に依存せずにサイクル特性の改善効果が生じることは明らかである。
【0370】
本発明の非水系電解液の製造方法は、上述の(A)、(B)、(C)の順に調合工程を進めることで、例えば、エチレンカーボネートを加熱、融解させて、液体の状況下で他の低粘度溶媒と混合した場合でも、非水系電解液の液温が30℃を越えないように温度上昇を抑えることで、フッ化水素(HF)などの遊離酸の生成を抑制し、非水系電解液の劣化を防ぐことが可能となり、その品質を維持することができ、良好な非水系電解液の提供ができる。
【0371】
実施例3−1〜3−45
【0372】
i)非水系電解液3の調製
上述に示した基準電解液1に、下記表12に記載した本発明に係るメチレンビススルホネートと、負極被膜形成剤を所定量添加し、非水系電解液3−1〜3−45を調製した。調製後の非水系電解液の水分値及び遊離酸分値の結果を表12に併せて示す。
【0373】
【表12】
【0374】
[ラミネート電池での電池特性の比較]
前述した実施例2−1〜2−30と同様に、表12に示した各非水系電解液を用いたラミネート電池を作製した。同ラミネート電池の1サイクル目の充放電効率、高温保存後の特性評価結果と、25℃サイクル特性結果を表13〜14に併せて示す。
【0375】
尚、ラミネート電池の高温保存後特性の測定条件を以下に示す。
a)上述の各非水系電解液を用いて作製したラミネート電池を室温にて1週間放置後の充電(1サイクル目の充電);同充電は、30mAで4.2Vまで充電し、4.2Vから定電圧充電に移行し全体で5時間経過した時点で充電を終了した。
b)1サイクル目の放電;上述の充電後、30mAで3.0Vまで放電した。
c)2サイクル、3サイクル及び4サイクル目の充電放電条件;30mAで4.2Vまで充電し、4.2Vから定電圧充電に移行し全体で6時間経過した時点で充電を終了した。その後、30mAで3.0Vまで放電した。この操作を計3回繰り返した。
d)高温保存後の特性(5サイクル及び6サイクル目の充電放電条件);ラミネート電池での高温保存後の特性(5サイクル目の充電放電条件)に関しては、上述c)と同一充電条件にて、充電後85℃24時間保存後、25℃にて放電を同一放電条件で放電した。
【0376】
尚、作製したラミネート電池の1サイクル目の充放電効率に関しては、次式により算出した。
・1サイクル目の充放電効率=(1サイクル目の放電容量/1サイクル目の充電容量)×100(%)
また、1サイクル目の充電容量は、次式により算出した。
・1サイクル目の充電容量=(ラミネート電池試作時に非水電解液に注入、含浸させた後の90分定電流充電した時の充電容量+室温にて1週間放置後の充電容量)
【0377】
ラミネート電池での高温保存後の特性に関しては、次式により算出した。
・容量維持率=(5サイクル目の放電容量/4サイクル目の放電容量)×100 (%)
更に、常温にて5サイクル目と同一条件で1サイクル充放電して容量回復率を次式により算出した。
・容量回復率=(6サイクル目の放電容量/4サイクル目の放電容量)×100 (%)
【0378】
【表13】
【0379】
【表14】
【0380】
表13〜14の結果から明らかなように、本発明の非水系電解液を用いたラミネート電池(実施例3−1〜3−45)は、1サイクル目の充放電効率が良好であることがわかる。
【0381】
また、85℃、24時間保存後では、同電池の容量維持率、容量回復率、及びセルの膨れからみて良好な特性を示すことが判る。また、サイクル特性の結果においても、本発明の非水系電解液が良好な特性を示すことは明らかである。
【0382】
更に、本発明の非水系電解液としては、負極被膜形成剤を添加した方が添加しないものに比べてサイクル特性効果が向上することが分かる。この結果により、サイクル回数を数百回増やせば、負極被膜形成剤無添加の場合と負極被膜形成剤を添加した場合とを比べた場合に、そのサイクル特性効果に差が出ることが示唆される。
【0383】
実施例4−1〜4−62
【0384】
i)基準電解液4の調製
上述の基準電解液2において、リチウム塩としてLiPFの濃度が1.15mol/リットル、LiN(SOCFの濃度を0.05mol/リットルの濃度となるように、各リチウム塩を添加したほかは、基準電解液2と同様、調製時に液温が30℃を超えないようにするための操作、工程、手順にて基準電解液4を調製した。
【0385】
ii)非水系電解液4の調製
上述の非水系電解液2と同様の操作、工程、手順にて、上記基準電解液4に、下記表15〜17に記載した本発明に係るメチレンビススルホネートと、負極被膜形成剤を所定量添加し、非水系電解液4−1〜4−62を調製した。
【0386】
[ラミネート電池での電池特性の比較]
前述した実施例3−1〜3−45と同様に、下記表15〜17に示した各非水系電解液を用いたラミネート電池を作製した。実施例3−1〜3−45と同様の操作を行うことにより、同ラミネート電池の1サイクル目の充放電効率、高温保存後の特性評価結果と、25℃サイクル特性結果を表15〜17に併せて示す。
尚、作製したラミネート電池の1サイクル目の充放電効率、ラミネート電池での高温保存後の特性(容量維持率・容量回復率)に関しても実施例3−1〜3−45と同様に算出した。
【0387】
【表15】
【0388】
【表16】
【0389】
【表17】
【0390】
表15〜17の結果から明らかなように、本発明の非水系電解液を用いたラミネート電池(実施例4−1〜4−62)は、1サイクル目の充放電効率が良好となることがわかる。また、85℃、24時間保存後でも、同電池の容量維持率、容量回復率、及びセルの膨れからみて良好な特性を示すことが判る。また、サイクル特性の結果においても、本発明の非水系電解液が良好な特性を示すことは明らかである。
【0391】
上記電池特性を改善できる理由は、以下によるものと推測される。
即ち、本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体は、負極被膜形成剤とともに、非水系電解液と負極との界面において分解し、より抵抗の低い反応被膜層を形成する。
【0392】
本発明の非水系電解液は、本発明のメチレンビススルホネート誘導体と負極被膜形成剤とを含有させることにより、1サイクル目の充電時の溶媒分解などの副反応が更に抑制されるため、初期の不可逆容量の低減、1サイクル目の充放電効率向上等の効果を示す。また、サイクル特性の改善効果も示しているため、サイクル数を数百回に増やせば、その特性効果に大きな差がでることが示唆される。
【0393】
実施例5−1〜5−87
【0394】
i)基準電解液5の調製
上述の基準電解液2において、リチウム塩としてLiPFの濃度が1.2mol/リットル、LiBFの濃度が0.02mol/リットルの濃度となるように、各リチウム塩を添加したほかは、基準電解液2と同様、調製時に液温が30℃を超えないようにするための操作、工程、手順にて基準電解液5を調製した。
【0395】
ii)非水系電解液5の調製
上述の非水系電解液2と同様の操作、工程、手順にて、上記基準電解液5に、下記表18〜21に記載した本発明に係るメチレンビススルホネートと、負極被膜形成剤、膨れ抑制剤を所定量添加し、非水系電解液5−1〜5−87を調製した。
【0396】
[ラミネート電池での電池特性の比較]
前述した実施例3−1〜3−45と同様に、下記表18〜21に示した各非水系電解液を用いたラミネート電池を作製した。実施例3−1〜3−45と同様の操作を行うことにより、同ラミネート電池の1サイクル目の充放電効率、高温保存後の特性評価結果と、25℃サイクル特性結果を表18〜21に併せて示す。
尚、作製したラミネート電池の1サイクル目の充放電効率、ラミネート電池での高温保存後の特性(容量維持率・容量回復率)に関しても実施例3−1〜3−45と同様に算出した。
【0397】
【表18】
【0398】
【表19】
【0399】
【表20】
【0400】
【表21】
【0401】
表18〜21の結果から明らかなように、本発明の非水系電解液を用いたラミネート電池(実施例5−1〜5−87)は、1サイクル目の充放電効率が良好であることがわかる。85℃、24時間保存後でも、同電池の容量維持率、容量回復率、及びセルの膨れからみて良好な特性を示すことが判る。特に保存後のセルの膨れの抑制効果が顕著に現れている。また、サイクル特性の結果においても、本発明の非水系電解液が良好な特性を示すことは明らかである。
【0402】
更に、本発明の非水系電解液は、例えばγ−ブチロラクトン等の膨れ抑制剤を添加することにより、例えば高温保存下における負極の炭素質物のフッ化水素による分解反応を抑制することが可能であり、結果として、高温保存下での炭酸ガスなどの発生が抑制され、高温保存後のセルの膨れが抑制されるという効果を示すことが判った。一方、膨れ抑制剤として、一般式[6]で示される環状ホスファゼン誘導体を用いる場合、本発明の非水系電解液中の膨れ抑制剤は、非水系溶媒や充電初期に残存する負極被膜形成剤などよりも先に酸化分解し、正極に保護被膜が形成されるものと推測され、正極表面における非水系溶媒や負極被膜形成剤の酸化分解が抑制されるため、その結果として、特に高温保存後のセルの膨れが抑制されるものと考えられる。
【0403】
また、本発明の非水系電解液は、本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体のHOMOエネルギーから判断して、正極側でも分解し、正極と電解液界面抵抗を低下させる良好な反応被膜を形成するものと思われ、結果として、電池の内部抵抗を下げ、高温保存後の特性改善、セルの膨れ抑制に寄与できるものと考えられる。
【0404】
以上のことから、本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体、負極被膜形成剤と上記膨れ抑制剤とを併用することにより、メチレンビススルホネート誘導体を単独で添加する場合と同様、良好な25℃サイクル特性、及び高温時の保存後の特性が得られる。そして、高温放置時の電池の膨れが良好に抑制される。
【0405】
実施例6−1〜実施例6−54、及び比較例6−1〜6−6
【0406】
i)基準電解液6の調製
上述の基準電解液3において、リチウム塩としてLiPFの濃度が1.2mol/リットル、ビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウムの濃度が0.01mol/リットルの濃度となるように、各リチウム塩を添加したほかは、基準電解液2と同様、調製時に液温が30℃を超えないようにするための操作、工程、手順にて基準電解液6を調製した。
【0407】
ii)非水系電解液6の調製
上述の非水系電解液2と同様の操作、工程、手順にて、上記基準電解液6に、下記表22に記載した本発明に係るメチレンビススルホネートと、負極被膜形成剤、膨れ抑制剤を所定量添加し、非水系電解液6−1〜6−30を調製した。
【0408】
【表22】
【0409】
(実施例6−1〜6−9)
実施例2−3で用いた正極活物質の代わりにLiFePOを用いて、正極を作製した。LiFePO粉末90質量部、導電剤としてアセチレンブラック5質量部を混合し、これを、結着剤のポリフッ化ビニリデン(PVDF)5質量部を予め1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて、均一分散、正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーをアルミニウム箔製の正極集電体上に塗布し、乾燥、加圧・圧縮成型所定の大きさに裁断し、帯状の正極を作製した以外は、実施例2−3と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った(使用した非水系電解液No.6-1〜6-3、6-11〜6-13、6-21〜6-23は表22、表23に記載)。
尚、同電池は、実施例2−33と同様に充電終止電圧を3.6V、放電終止電圧を2.0Vとして電池評価を行った。その結果を表23に示す。
【0410】
(比較例6−1)
非水系電解液として本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体や負極被膜形成剤、膨れ抑制剤を添加しないもの(非水系電解液No.6-31 (化合物添加なし))を用いた以外は実施例6−1と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った。同ラミネート電池の25℃サイクル特性結果を表23に併せて示す。
【0411】
(実施例6−10〜6−18)
実施例2−3で用いた正極活物質の代わりにLiMn1.95Al0.05を用いて、正極を作製した。LiMn1.95Al0.05粉末92質量部、導電剤としてアセチレンブラック4質量部を混合し、これを、結着剤のポリフッ化ビニリデン(PVDF)4質量部を予め1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて、均一分散、正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーをアルミニウム箔製の正極集電体上に塗布し、乾燥、加圧・圧縮成型所定の大きさに裁断し、帯状の正極を作製した以外は、実施例2−3と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った(使用した非水系電解液は上述と同様。表22、表23に記載)。
尚、同電池は、実施例2−37と同様に充電終止電圧を4.2V、放電終止電圧を3.0Vとして電池評価を行った。その結果を表23に示す。
【0412】
(比較例6−2)
非水系電解液として本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体や負極被膜形成剤、膨れ抑制剤を添加しないもの(非水系電解液No.6-31 (化合物添加なし))を用いた以外は実施例6−10と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った。同ラミネート電池の25℃サイクル特性結果を表23に併せて示す。
【0413】
(実施例6−19〜6−27)
実施例2−3で用いた正極活物質の代わりに、Li[Mn0.2Ni0.6Co0.2]Oを用いて、正極を作製した。Li[Mn0.2Ni0.6Co0.2]O粉末92質量部、導電剤としてアセチレンブラック4質量部を混合し、これを、結着剤のポリフッ化ビニリデン(PVDF)4質量部を予め1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて、均一分散、正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーをアルミニウム箔製の正極集電体上に塗布し、乾燥、加圧・圧縮成型所定の大きさに裁断し、帯状の正極を作製した。そして、微多孔性ポリプロピレン−ポリエチレン2層フィルムからなるセパレータのポリプロピレン側を正極側に配置するように介して、正極、負極を対向させて電極群とした以外は、実施例2−3と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った(使用した非水系電解液は上述と同様。表22、表23に記載)。
尚、同電池は、実施例2−35と同様に充電終止電圧を4.3V、放電終止電圧を3.0Vとして電池評価を行った。その結果を表23に示す。
【0414】
(比較例6−3)
非水系電解液として本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体や負極被膜形成剤、膨れ抑制剤を添加しないもの(非水系電解液No.6-31 (化合物添加なし))を用いた以外は実施例6−19と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った。同ラミネート電池の25℃サイクル特性結果を表23に併せて示す。
【0415】
【表23】
【0416】
表23の結果から明らかなように、本発明の非水系電解液を用いたラミネート電池(実施例6−1〜6−27)は、それぞれ、比較例6−1〜6−3の電池を用いた場合に比べて顕著なサイクル後の容量維持率を示すことが判る。
【0417】
正極にリチウム含有オリビン型リン酸鉄塩、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物、マンガン−ニッケル−コバルトを含有する層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を用いた場合のいずれにおいても、本発明の非水系電解液は、良好な効果がみられることが判る。つまり、本発明の非水系電解液及びこれを用いた電池は、特定の正極や負極に依存せず高いサイクル特性を示すことは明らかである。
【0418】
(実施例6−28〜6−42)
実施例2−3で用いた負極活物質の代わりに、球形化黒鉛(三井鉱山株式会社製GDR)を用いて、負極を作製した。球形化黒鉛粉末95質量部に、増粘剤としてカルボシキメチルセルロース2重量部と結着剤としてスチレン・ブタジエンゴム3重量部と、溶剤として適量の水とを加えて混合し、均一に分散、混合し、負極合剤スラリーを調製した。この負極合剤スラリーを銅箔製の負極集電体上に塗布し、乾燥させた後、加圧・圧縮成型して所定の大きさに裁断し、帯状の負極を作製したこと以外は、実施例2−3と同様に操作を行うことによりラミネート電池を作製し、電池評価を行った(使用した非水系電解液No.6-4〜6-8、6-14〜6-18、6-24〜6-28は表22に記載)。
尚、同電池の評価条件は、充電終止電圧を4.2V、放電終止電圧を3.0Vとしたこと以外は、実施例2−3と同様の電池評価を行った。同ラミネート電池の1サイクル目の充放電効率、高温保存後の特性評価結果と、25℃サイクル特性結果を表24に併せて示す。
【0419】
(比較例6−4)
非水系電解液として本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体や負極被膜形成剤、膨れ抑制剤を添加しないもの(非水系電解液No.6-31 (化合物添加なし))を用いた以外は実施例6−28と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った。同ラミネート電池の1サイクル目の充放電効率、高温保存後の特性評価結果と、25℃サイクル特性結果を表24に併せて示す。
【0420】
【表24】
【0421】
表24の結果から明らかなように、本発明の非水系電解液を用いたラミネート電池(実施例6−28〜6−42)は、比較例6−4の電池を用いた場合に比べて顕著なサイクル後の容量維持率を示すことが判る。
【0422】
コバルト酸リチウムを正極活物質として含む正極と、球形化黒鉛を負極活物質として含む負極を用いた場合でも、本発明の非水系電解液は、良好な効果がみられることが判る。
【0423】
(実施例6−43〜6−48及び比較例6−5)
実施例2−3で用いた負極活物質の代わりに、負極活物質の原料としてSn粉末を用いて、負極を作製した。Sn粉末78質量部、導電剤としてアセチレンブラック15質量部を混合し、これを、結着剤のポリフッ化ビニリデン(PVDF)7質量部を予め1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて、均一分散、混合し、負極合剤スラリーを調製した。この負極合剤スラリーを銅箔製の負極集電体上に塗布し、乾燥させた後、加圧・圧縮成型して所定の大きさに裁断し、帯状の負極を作製したこと以外は、実施例2−3と同様に操作を行うことによりラミネート電池を作製し、電池評価を行った(使用した非水系電解液No.6-9〜6-10、6-19〜6-20、6-29〜6-30は表22に記載)。
尚、同電池の評価条件は、充電終止電圧を4.2V、放電終止電圧を2.5Vとしたこと以外は、実施例2−3と同様の電池評価を行った。同ラミネート電池の25℃サイクル特性結果を表25に示す。
【0424】
(比較例6−5)
非水系電解液に本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体や負極被膜形成剤、膨れ抑制剤を添加しない(非水系電解液No.6-31 (化合物添加なし))以外は実施例6−28〜6−42と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った。同ラミネート電池の25℃サイクル特性結果を表25に併せて示す。
【0425】
(実施例6−49〜6−54)
実施例6−43〜6−48で用いた正極活物質の代わりにLi[Mn0.2Ni0.6Co0.2]Oを用いて、正極を作製した。Li[Mn0.2Ni0.6Co0.2]O粉末92質量部、導電剤としてアセチレンブラック4質量部を混合し、これを、結着剤のポリフッ化ビニリデン(PVDF)4質量部を予め1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて、均一分散、正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーをアルミニウム箔製の正極集電体上に塗布し、乾燥、加圧・圧縮成型所定の大きさに裁断し、帯状の正極を作製した。そして、微多孔性ポリプロピレン−ポリエチレン2層フィルムからなるセパレータのポリプロピレン側を正極側に配置するように介して、正極、負極を対向させて電極群とした以外は、実施例6−43〜6−48と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った(使用した非水系電解液No.6-9〜6-10、6-19〜6-20、6-29〜6-30は表22に記載)。
尚、同電池の評価条件は、充電終止電圧を4.25V、放電終止電圧を2.5Vとしたこと以外は、実施例6−43〜6−48と同様の電池評価を行った。同ラミネート電池の25℃サイクル特性結果を表25に示す。
【0426】
(比較例6−6)
非水系電解液に本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体や負極被膜形成剤、膨れ抑制剤を添加しない(非水系電解液No.6-31 (化合物添加なし))以外は実施例6−49〜6−54と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った。同ラミネート電池の25℃サイクル特性結果を表25に併せて示す。
【0427】
【表25】
【0428】
表25の結果から明らかなように、本発明の非水系電解液を用いたラミネート電池(実施例6−43〜6−54)は、比較例6−5と6−6の電池を用いた場合に比べて顕著なサイクル後の容量維持率を示すことが判る。
また、本発明の非水系電解液を用いた電池は、正極活物質の種類に依存することなく、高い電池特性を示すことが判る。
【0429】
実施例7−1〜7−18及び比較例7−1〜7−3
【0430】
i)基準電解液7の調製
露点−50℃以下のドライボックス中に、予め加熱、溶解させたエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトンとの混合溶媒(容量比1:1:4)を調製し、次いで、リチウム塩としてLiBF4の濃度が2.0mol/リットル、ビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウムの濃度が0.01mol/リットルの濃度となるように、各リチウム塩を加え、基準電解液7を調製した。
尚、この調製の際には、基準電解液7の液温が30℃を超えないようにし、LiBFの添加は、先ず、予め混合した混合溶媒中に全LiBFの30重量%を加えて溶解した後、次いで、全LiBFの30重量%を加えて、溶解する操作を2回繰り返し、最後に残りの10重量%のLiBFを加えて溶解した。その後、更にビス[オキサレート−O,O’]ホウ酸リチウムを所定量加えて溶解して、基準電解液7を調製した。基準電解液7の調製時の非水系溶媒混合工程(A)、リチウム塩溶解工程(B)での最大液温は、それぞれ、22℃、26℃であった。
【0431】
ii)非水系電解液7の調製
上述の非水系電解液2と同様の操作、工程、手順にて、上記基準電解液7に、下記表26に記載した本発明に係るメチレンビススルホネートと、負極被膜形成剤、膨れ抑制剤を所定量添加し、非水系電解液7−1〜7−6を調製した。また、本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体、負極被膜形成剤及び膨れ抑制剤を添加していない非水系電解液7−7(ブランク:基準電解液7)を比較例とした。
【0432】
【表26】
【0433】
(実施例7−1〜7−6)
実施例2−3で用いた負極活物質の代わりに、負極活物質の原料としてLiTi12粉末を用いて、負極を作製した。LiTi12(平均粒径0.90μm)を85重量部と、LiTi12(平均粒径3.40μm)を5重量部とを混合し、これを、結着剤のポリフッ化ビニリデン(PVDF)10質量部を予め1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて、均一分散、混合し、負極合剤スラリーを調製した。この負極合剤スラリーを銅箔製の負極集電体上に塗布し、乾燥させた後、加圧・圧縮成型して所定の大きさに裁断し、帯状の負極を作製したこと以外は、実施例19と同様に操作を行うことによりラミネート電池を作製し、電池評価を行った(使用した非水系電解液No.7-1〜7-6は表26に記載)。
尚、同電池の評価条件は、充電終止電圧を2.7V、放電終止電圧を1.5Vとし、サイクル特性評価の温度を45℃としたこと以外は、実施例2−3と同様の電池評価を行った。同ラミネート電池の45℃サイクル特性結果を表27に示す。
【0434】
(比較例7−1)
非水系電解液に本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体や負極被膜形成剤、膨れ抑制剤を添加しない(非水系電解液No.7-7 (化合物添加なし))以外は実施例7−1〜7−6と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った。同ラミネート電池の45℃サイクル特性結果を表27に併せて示す。
【0435】
(実施例7−7〜7-12)
実施例7−1〜7−6で用いた正極活物質の代わりにLiMn1.95Al0.05を用いて、正極を作製した。LiMn1.95Al0.05粉末92質量部、導電剤としてアセチレンブラック4質量部を混合し、これを、結着剤のポリフッ化ビニリデン(PVDF)4質量部を予め1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて、均一分散、正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーをアルミニウム箔製の正極集電体上に塗布し、乾燥、加圧・圧縮成型所定の大きさに裁断し、帯状の正極を作製した以外は、実施例7−1〜7−6と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った(使用した非水系電解液No.7-1〜7-6は表26に記載)。
【0436】
(比較例7−2)
非水系電解液に本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体や負極被膜形成剤、膨れ抑制剤を添加しない(非水系電解液No.7-7 (化合物添加なし))以外は実施例7−7〜7-12と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った。同ラミネート電池の45℃サイクル特性結果を表27に併せて示す。
【0437】
(実施例7−13〜7-18)
実施例7−1〜7−6で用いた正極活物質の代わりにLi[Mn0.2Ni0.6Co0.2]Oを用いて、正極を作製した。Li[Mn0.2Ni0.6Co0.2]O粉末92質量部、導電剤としてアセチレンブラック4質量部を混合し、これを、結着剤のポリフッ化ビニリデン(PVDF)4質量部を予め1−メチル−2−ピロリドンに溶解させておいた溶液に加えて、均一分散、正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーをアルミニウム箔製の正極集電体上に塗布し、乾燥、加圧・圧縮成型所定の大きさに裁断し、帯状の正極を作製した。そして、微多孔性ポリプロピレン−ポリエチレン2層フィルムからなるセパレータのポリプロピレン側を正極側に配置するように介して、正極、負極を対向させて電極群とした以外は、実施例7−1〜7−6と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った(使用した非水系電解液No.7-1〜7-6は表26に記載)。
【0438】
(比較例7−3)
非水系電解液に本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体や負極被膜形成剤、膨れ抑制剤を添加しない(非水系電解液No.7-7 (化合物添加なし))以外は実施例7−13〜7-18と同様にラミネート電池を作製し、電池評価を行った。同ラミネート電池の45℃サイクル特性結果を表27に併せて示す。
【0439】
【表27】
【0440】
表27の結果から明らかなように、本発明の非水系電解液を用いたラミネート電池(実施例7−1〜7-18)は、比較例7−1〜7−3の電池を用いた場合に比べて顕著なサイクル後の容量維持率を示すことが判る。
【0441】
また、本発明の非水系電解液を用いた電池は、リチウムチタン酸化物を負極活物質に用いた場合でも正極活物質の種類に依存することなく、高い電池特性を示すことが判る。
【0442】
本発明の非水系電解液は、本発明に係るメチレンビススルホネート誘導体を添加することにより特徴を有するものであり、これを電池に用いた場合、サイクル特性が向上する。この効果は、長期サイクル、即ち、サイクル数が数百回以上となる場合に顕著であり、結果として、電池の容量維持率が高くなることが示唆される。