(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するロボットの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るロボットを示す側面図である。なお、説明を分かり易くするために、
図1には、鉛直上向きを正方向とし、鉛直下向きを負方向とするZ軸、紙面における左右方向をY軸、紙面奥から手前方向をX軸とした3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、後述の説明に用いる他の図面でも示す場合がある。
【0014】
また、以下においては、ロボットの構成について「X軸方向」「Y軸方向」「Z軸方向」などと表現して説明するが、これらはロボットが図示された姿勢にあるときのX軸、Y軸、Z軸方向を意味するものであって、表現した方向に限定されるものではない。
【0015】
図1に示すように、ロボット1は、先端にエンドエフェクタとして例えばアーク溶接用のトーチ2が取り付けられたアーク溶接用の産業ロボットである。また、ロボット1は、複数のリンクと、各リンクを連結する複数の回転軸(関節軸)Ja〜Jfとを有する多関節型ロボットである。かかるロボット1は、リンクとして、ベース10と、旋回部11と、下部アーム12と、上部アーム13と、第1から第3の手首部14a,14b,14cを有する手首部14とを備え、これらは互いに回転可能に連結される。
【0016】
具体的には、旋回部11は、ベース10に対して回転軸Ja回りに回転可能に連結され、下部アーム12は、旋回部11に対し、回転軸Jaと垂直な回転軸Jb回りに回転可能に連結される。また、上部アーム13は、下部アーム12に対して回転軸Jbと平行な回転軸Jc回りに回転可能に連結され、第1の手首部14aは、上部アーム13に対し、回転軸Jcと垂直な回転軸Jd回りに回転可能に連結される。
【0017】
第2の手首部(第1のリンク)14bは、第1の手首部14aに対し、回転軸Jdと垂直な回転軸Je回りに回転可能に連結され、第3の手首部(第2のリンク)14cは、第2の手首部14bに対し、回転軸Jeと垂直な回転軸Jf回りに回転可能に連結される。
【0018】
なお、上記した「垂直」「平行」、あるいは後述する「水平」などの語句は、必ずしも数学的に厳密な精度を必要とするものではなく実質的な公差や誤差などについては許容されるものである。また、この明細書において「垂直」なる語句は、2つの直線(回転軸)が同一平面上で直角に交わることのみを意味するものではなく、2つの直線(回転軸)の関係がねじれの位置である場合も含めるものとする。
【0019】
ロボット1は、上記した旋回部11、下部アーム12、上部アーム13、第1〜第3の手首部14a,14b,14cを回転駆動するアクチュエータMa〜Mfを備える。各アクチュエータMa〜Mfは、具体的には例えばサーボモータである。
【0020】
なお、上記でアクチュエータMa〜Mfをサーボモータとしたが、それに限られるものではなく、例えば油圧モータなど他の種類のモータであってもよい。また、以下においては、アクチュエータを「モータ」と表現する。
【0021】
各モータMa〜Mfについて説明すると、ベース10に取り付けられたモータMaは、旋回部11に接続されて旋回部11を回転駆動する。旋回部11に取り付けられたモータMbは、下部アーム12に接続されて下部アーム12を回転駆動し、また下部アーム12に取り付けられたモータMcは、上部アーム13に接続されて上部アーム13を回転駆動する。また、上部アーム13に取り付けられたモータMdは、手首部14、正確には第1の手首部14aに接続され、手首部14のうちの第1の手首部14aを回転駆動する。
【0022】
モータMeおよびモータMfはともに、第1の手首部14aに取り付けられる。モータMeは、モータMeの駆動力を第2の手首部14bへ伝達するプーリやギヤなどを含む動力伝達機構(図示せず)を介して第2の手首部14bに接続され、第2の手首部14bを回転駆動する。
【0023】
モータMfは、モータMfの駆動力を第3の手首部14cへ伝達するプーリやギヤなどを含む動力伝達機構(
図1で図示せず)を介して第3の手首部14cに接続され、第3の手首部14cを回転駆動する。なお、ロボット1では、モータMfの駆動力を第3の手首部14cへ伝達するギヤとして、例えばシザーズギヤなどが用いられるが、そのシザーズギヤを含む動力伝達機構の構成については、後に詳しく説明する。
【0024】
第3の手首部14cは手首フランジ14c1を備え、手首フランジ14c1には、前述したトーチ2が取り付けられる。
【0025】
上記したモータMa〜Mfには、図示しない制御装置から動作指令を示す信号が入力され、その信号に基づいて動作が制御される。そして、ロボット1は、モータMa〜Mfの動作が制御されることで、エンドエフェクタで所定の作業を行う、具体的に例えばトーチ2の位置や角度などを適宜に変更しつつ、溶接対象物へトーチ2を接近させ、トーチ2からアークを発生させてアーク溶接を行う。
【0026】
ロボット1はさらに、送給装置20を備える。送給装置20は、アーク溶接の溶加材となるトーチワイヤ(図示せず)をトーチ2へ送り出す。送給装置20は、例えば上部アーム13の後方側(Y軸方向の負側)であって、かつ下部アーム12の鉛直方向において上側(Z軸方向の正側)に配置される。
【0027】
ところで、上記したアーク溶接等の作業を行うロボットにおいては、以前より、モータとリンク(例えば第3の手首部)とを接続する動力伝達機構の占有スペースを小さくすることが望まれていた。
【0028】
具体的に説明すると、動力伝達機構はギヤなどから構成され、そのギヤとして例えばバックラッシを低減可能なシザーズギヤが用いられることがある。シザーズギヤは、メインギヤと、サブギヤと、メインギヤおよびサブギヤに対して互いに異なる回転方向に付勢力を付与するスプリングとを備えるが、スプリングを備えることで、シザーズギヤが大型化するおそれがあった。
【0029】
詳しくは、例えばスプリングやスプリングを収容する収容溝が、メインギヤおよびサブギヤにおいて互いに重合する重合面に配置される場合、シザーズギヤはスプリングや収容溝の分だけ径方向に大型化し、動力伝達機構の占有スペースも大きくなるおそれがあった。なお、上記したシザーズギヤの大型化は、メインギヤおよびサブギヤが外歯歯車、内歯歯車のいずれであっても同様に生じ得る。
【0030】
また、動力伝達機構の占有スペースが大きくなると、ロボット全体も大型化し、結果として例えばロボットが所定の作業を行っているときに、作業対象物などと干渉する可能性が生じる。そのため、シザーズギヤを小型化して、シザーズギヤを含む動力伝達機構の占有スペースを可能な限り小さくすることが望まれていた。
【0031】
そこで、本実施形態に係るロボット1にあっては、モータとリンク、具体的には例えば、モータMfと第3の手首部14cとを接続する動力伝達機構の占有スペースを小さくできるような構成とした。以下、その動力伝達機構の構成について詳しく説明する。
【0032】
図2は、
図1に示す上部アーム13、第1〜第3の手首部14a,14b,14c付近のみを示す部分断面上面図であり、
図3は、
図2に示す第2、第3の手首部14b,14c付近を拡大して示す拡大部分断面上面図である。また、
図4は、
図2に示す第1〜第3の手首部14a,14b,14cをY軸方向の正側から見たときの側面図である。
【0033】
なお、
図2以降にあっては、図示の簡略化のため、下部アーム12、トーチ2などの図示を省略した。また、
図2以降においては、第2の手首部14bを回転軸Je回りに90度回転させて水平にした状態、換言すれば、回転軸Jdと回転軸Jfとが同軸となるような姿勢を示した。
【0034】
図2,3に示すように、ロボット1において、第2の手首部14bは、手首本体部30と、側面カバー31とを備える。
【0035】
図3によく示すように、手首本体部30は、Z軸方向から見た上面視において略L字状に形成される。具体的に手首本体部30は、上面視における長手方向がY軸方向に対して平行な一端部30aと、一端部30aから連続して形成されるとともに、上面視における長手方向がX軸方向に対して平行な他端部30bとを備える。
【0036】
手首本体部30は、一端部30aの一面側において、第1の手首部14aと回転軸Je回りに回転可能に連結される。すなわち、第1の手首部14aと第2の手首部14bとは、一端部30aの1ヶ所で連結される、いわゆる片持ち構造とされる。
【0037】
他端部30bは、中空部32を備える。中空部32は、Y軸方向に対して平行な軸を中心軸とする略円筒状に形成される。中空部32には、送給装置20からトーチ2へ延び、トーチワイヤなどを内包するコンジットケーブル33が挿通される。したがって、中空部32の中空径d1は、コンジットケーブル33が挿通可能な値に設定される。
【0038】
また、上記した一端部30aは、中空部32とX軸方向において重ならないように配置される。これにより、中空部32においてコンジットケーブル33が挿通される空間が、一端部30aによって塞がれることがなくなり、よってコンジットケーブル33の挿通を容易に行うことができる。
【0039】
また、手首本体部30を構成する一端部30aおよび他端部30bはともに、内部に空間を有するように形成される。そして、他端部30bは、Y軸方向の正側の側面が開口され、開口部分には側面カバー31が取り付けられる。側面カバー31は、
図4によく示すように、第3の手首部14cが挿通される開口31aが形成される。
【0040】
ロボット1は、上記したように、モータMfの駆動力を第3の手首部14cへ伝達する動力伝達機構40を備える。動力伝達機構40は、その一部分が手首本体部30の内部空間に配置される。
【0041】
具体的に説明すると、動力伝達機構40は、プーリと、ベルトと(ともに図示せず)、駆動側シャフト41と、外歯歯車42と、シザーズギヤ43とを備える。プーリおよびベルトは、図示は省略するが、第1の手首部14aの適宜位置に配置されて、モータMfと駆動側シャフト41とを接続する。
【0042】
駆動側シャフト41は、長手方向である回転軸(軸線)41aが第2の手首部14bの回転軸Jeに対して垂直で、かつ第3の手首部14cの回転軸Jfと平行な向きに配置され、手首本体部30の一端部30aに回転可能に支持される。
【0043】
駆動側シャフト41は、上記したように、プーリやベルトなどを介してモータMfに接続される。したがって、駆動側シャフト41は、モータMfの駆動力が伝達されて回転軸41a回りに回転する。
【0044】
図5は、
図3のV−V線端面図である。外歯歯車42は、
図3,5に示すように、外周面に歯が形成されており、駆動側シャフト41においてY軸方向の正側の端部に設けられる。外歯歯車42は、駆動側シャフト41の回転に伴って回転軸42a回りに回転する。このように、外歯歯車42は、駆動側シャフト41、プーリやベルトなどを介してモータMfに接続され、モータMfの駆動力によって回転する。
【0045】
また、外歯歯車42の回転軸42aは、駆動側シャフト41の回転軸41aと同軸であり、回転軸Jfに対して平行な向きとされる。なお、外歯歯車42は、例えば平歯車とされるが、これに限られるものではなく、例えばはすば歯車など他の種類の歯車であってもよい。
【0046】
図6は、
図3などに示すシザーズギヤ43を取り出して示す拡大斜視図であり、
図7は、
図6に示すシザーズギヤ43の拡大分解斜視図である。
【0047】
図6,7に示すように、シザーズギヤ43は、メインギヤ44と、サブギヤ45と、スプリング46とを備える。
【0048】
メインギヤ44は、
図7に示すように、円筒状の第1のシャフト50の一端50a側に形成される。なお、第1のシャフト50は、ロボット1に組み込まれた状態において、中心軸50cが回転軸Jfと同軸となるように配置され、また一端50a側は、Y軸方向の負側に位置される(
図3参照)。
【0049】
また、メインギヤ44は、第1のシャフト50の内周面に歯が形成された内歯歯車であり、上記した外歯歯車42と噛合する。メインギヤ44は、第1のシャフト50の内周面のうち、一端50a側に形成される一方、他端50b側には形成されない。
【0050】
すなわち、第1のシャフト50の内周面は、中心軸50c方向において、メインギヤ44の歯が形成される部位51(以下、「形成部位51」という)と、メインギヤ44の歯が形成されない部位52(以下、「非形成部位52」という)との2種類の部位を備える。
【0051】
また、第1のシャフト50の他端50bには、挿通溝53と、掛止溝54とが形成され、これら挿通溝53および掛止溝54にはスプリング46が挿通または掛止される。
図8は、
図3に示すシザーズギヤ43付近を示すVIII−VIII線端面図である。
【0052】
図8に示すように、挿通溝53には、スプリング46の一端部46aが挿通される。すなわち、スプリング46の一端部46aは、挿通溝53を通るのみであって、挿通溝53には固定されない。したがって、第1のシャフト50の周方向における挿通溝53の溝幅a1は、スプリング46を挿通可能な値、具体的に例えばスプリング46の一端部46aの径よりも大きい値とされる。
【0053】
掛止溝54は、挿通溝53に対して第1のシャフト50の中心軸50cを挟んだ反対側の部位(
図8において上端の部位)から、第1のシャフト50の周方向に所定角度αずれた位置に形成される。所定角度αは任意の値とされるが、ここでは0度<α<20度に設定される。なお、上記では所定角度αについて具体的な数値を挙げたが、これは例示あって限定されるものではない。
【0054】
掛止溝54には、スプリング46の他端部46bが掛止されて固定され、これによってスプリング46と第1のシャフト50の他端50b側とが接続される。したがって、第1のシャフト50の周方向における掛止溝54の溝幅a2は、スプリング46を掛止可能な値、具体的に例えばスプリング46の他端部46bの径以下の値とされる。
【0055】
また、
図7によく示すように、挿通溝53および掛止溝54は、中心軸50c方向における深さが互いに相違するように形成される。具体的には例えば、掛止溝54の中心軸50c方向における深さは、挿通溝53のそれに比して長くなるように設定される。
【0056】
サブギヤ45は、円筒状の第2のシャフト60の一端60a側に形成される。なお、第2のシャフト60は、ロボット1に組み込まれた状態において、中心軸60cが回転軸Jfと同軸となるように配置され、また一端60a側は、Y軸方向の負側に位置される(
図3参照)。
【0057】
また、サブギヤ45は、第2のシャフト60の内周面に歯が形成された内歯歯車であり、メインギヤ44と同様、外歯歯車42と噛合する。なお、メインギヤ44およびサブギヤ45はともに、例えば平歯車とされるが、これに限られるものではなく、例えばはすば歯車など他の種類の歯車であってもよい。
【0058】
サブギヤ45は、第2のシャフト60の内周面のうち、一端60a側に形成される一方、他端60b側には形成されない。すなわち、第2のシャフト60の内周面は、中心軸60c方向において、サブギヤ45の歯が形成される部位61(以下、「形成部位61」という)と、サブギヤ45の歯が形成されない部位62(以下、「非形成部位62」という)との2種類の部位を備える。
【0059】
第2のシャフト60の非形成部位62の内径は、第1のシャフト50の外径よりも大きくなるように設定される。これにより、
図6に示す如く、第1のシャフト50を、第2のシャフト60の内側に相対回転可能に嵌合させることができる。
【0060】
なお、第1、第2のシャフト50,60を嵌合させた状態において、各中心軸50c,60cは同軸とされる。また、第1、第2のシャフト50,60の中心軸50c,60cは、メインギヤ44またはサブギヤ45の回転軸に相当することから、シザーズギヤ43の回転軸43cは第1、第2のシャフト50,60の中心軸50c,60cと同軸とされる。
【0061】
また、上記したように、メインギヤ44は第1のシャフト50の一端50a側に、サブギヤ45は第2のシャフト60の一端60a側に形成される。これにより、メインギヤ44とサブギヤ45とは、第1、第2のシャフト50,60を嵌合させた状態において、中心軸50c,60c方向に隣接して配置されることとなる。
【0062】
第2のシャフト60の説明を続けると、他端60bには、掛止溝64が形成される。
図6,8に示すように、掛止溝64は、第1、第2のシャフト50,60が嵌合され、かつメインギヤ44およびサブギヤ45の歯すじが揃った状態において、第1のシャフト50の挿通溝53に隣接する位置に形成される。
【0063】
したがって、上記した第1のシャフト50の掛止溝54は、第2のシャフト60の掛止溝64に対して中心軸50c,60cを挟んだ反対側の部位(
図8において上端の部位)から、第1のシャフト50の周方向に所定角度αずれた位置に形成されることとなる。
【0064】
掛止溝64には、スプリング46の一端部46aが掛止されて固定され、これによってスプリング46と第2のシャフト60の他端60b側とが接続される。したがって、第2のシャフト60の周方向における掛止溝64の溝幅b1は、スプリング46を掛止可能な値、具体的に例えばスプリング46の一端部46aの径以下の値とされる。
【0065】
また、
図6,7に示すように、掛止溝64の中心軸60c方向における深さは、挿通溝53の深さと同程度とされる。したがって、上記した第1のシャフト50の掛止溝54の深さは、第2のシャフト60の掛止溝64のそれに比して長くなるように設定される。
【0066】
これにより、スプリング46の一端部46aと他端部46bとを、第1のシャフト50の掛止溝54と第2のシャフト60の掛止溝64とに確実に掛止することができる。すなわち、スプリング46は、後述するようにコイル状に形成されて一端部46aと他端部46bとが中心軸50c,60c方向においてずれるように構成される。スプリング46がそのような形状であっても、掛止溝54,64の深さを相違させるようにしたので、スプリング46の一端部46aと他端部46bとを掛止溝54,64に確実に掛止することができる。
【0067】
スプリング46は、例えば周方向に弾性変形可能なねじりばね(ねじりコイルばね)である。なお、ここではスプリング46をねじりばねとしたが、これは例示であって限定されるものではない。すなわち、スプリング46は、周方向に弾性変形するものであれば、例えば板ばねや渦巻きばねなど他の種類のものであってもよい。
【0068】
また、
図8においては、第1、第2のシャフト50,60に取り付けられる前の状態のスプリング46を想像線で示した。
図8に想像線で示す如く、スプリング46は、円柱状の線材をコイル状に所定回数(例えば1.5回。換言すれば、中心軸50c,60c回りに例えば540度)巻いた形状とされる。なお、上記では、スプリング46の巻き数である所定回数等を具体的な数値で示したが、これに限定されるものではなく、シザーズギヤ43の仕様に応じて適宜に変更してもよい。
【0069】
スプリング46は、一端部46aおよび他端部46bが径方向において外側に向けて突出するように形成される。また、スプリング46の外径は、第1のシャフト50の内径よりも小さい値に設定される。
【0070】
上記の如く構成されたスプリング46は、周方向に弾性変形させられつつ第1、第2のシャフト50,60の内側に取り付けられる。このように、スプリング46は、一端部46aがサブギヤ45を有する第2のシャフト60に接続され、一端部46aからシザーズギヤ43の円周に沿って所定回数巻かれた後、他端部46bがメインギヤ44を有する第1のシャフト50に接続されるように形成される。
【0071】
これにより、シザーズギヤ43は、簡易な構成でありながら、スプリング46によって、メインギヤ44およびサブギヤ45に対して互いに異なる回転方向に付勢力を付与することができる。
【0072】
具体的には、第1、第2のシャフト50,60が嵌合され、挿通溝53と掛止溝64とが径方向において揃った状態で、スプリング46は、一端部46aが第1のシャフト50の挿通溝53に挿通されつつ、第2のシャフト60の掛止溝64に掛止される。一方、スプリング46の他端部46bは、第1のシャフト50の掛止溝54に掛止される。
【0073】
上記したように、掛止溝54は掛止溝64に対して中心軸50c,60cを挟んだ反対側の部位から、周方向に所定角度αずれた位置に形成されるため、スプリング46は、所定角度αの分だけ弾性変形させられた状態で第1、第2のシャフト50,60に掛止される。
【0074】
これにより、弾性変形したスプリング46は、メインギヤ44およびサブギヤ45に対して互いに異なる回転方向に付勢力を付与することとなる。具体的にスプリング46は、第1のシャフト50のメインギヤ44に対して
図8において時計回り方向に、第2のシャフト60のサブギヤ45に対して
図8において反時計回り方向に付勢力を付与することとなる。
【0075】
また、スプリング46を、第1のシャフト50の他端50b側と第2のシャフト60の他端60b側とに接続するようにした。これにより、スプリング46を第1、第2のシャフト50,60に容易に取り付けることができ、シザーズギヤ43の組み立て性を向上させることができる。
【0076】
また、スプリング46をコイル状に所定回数巻いた形状としたことから、メインギヤ44およびサブギヤ45に対し、相対的な回転変位をもたせつつ安定した付勢力を付与することができる。
【0077】
シザーズギヤ43は、上記のように構成されることで、相手側のギヤ、具体的には外歯歯車42をメインギヤ44とサブギヤ45とで挟み込むように噛合することとなり、よってバックラッシを低減することができる。
【0078】
なお、シザーズギヤ43において、第1のシャフト50と第2のシャフト60とは、相対回転可能な状態を維持しつつ、ボルト70(
図2,3にのみ示す)で係合され、よって嵌合した第1、第2のシャフト50,60が外れるのを防止するようにしている。
【0079】
詳しくは、ボルト70は、例えば軸線が中心軸50c,60cに対して垂直となる向きに配置され、第1、第2のシャフト50,60にそれぞれ穿設されたボルト孔55,65に挿入される。
【0080】
第2のシャフト60のボルト孔65の径は、ボルト70の軸径やボルト頭の対角距離よりも大きく設定される、すなわち、ボルト70とボルト孔65との間に遊びを有するように設定される。また、第1のシャフト50のボルト孔55には、ボルト70に対応する雌ねじが形成される。
【0081】
これにより、ボルト70がボルト孔55,65に挿入されて、第1、第2のシャフト50,60が係合された状態であっても、第2のシャフト60は第1のシャフト50に対して相対的に回転することができる。また、第1、第2のシャフト50,60は、ボルト70によって係合されることから、嵌合した第1、第2のシャフト50,60が外れることもない。
【0082】
なお、上記では、第1、第2のシャフト50,60をボルト70で係合して、シザーズギヤ43を組み立てるようにしたが、組み立て手法はそれに限定されるものではない。すなわち、例えば先ず第1、第2のシャフト50,60を仮止めボルトで仮止めし、その状態でスプリング46を取り付け、その後第1、第2のシャフト50,60をボルト70で係合し、最後に仮止めボルトを取り外して、シザーズギヤ43を組み立ててもよい。このように、シザーズギヤ43の組み立て手法については、適宜に変更することができる。
【0083】
図3の説明を続けると、シザーズギヤ43は、メインギヤ44およびサブギヤ45が外歯歯車42に噛合されるとともに、ベアリング(支持部)72によって回転軸43c回りに回転可能に支持される。
【0084】
ロボット1に組み込まれたシザーズギヤ43の回転軸43cは、外歯歯車42の回転軸42aに対して平行な向きとされ、また回転軸Jfと同軸とされる。なお、ベアリング72は、具体的に例えば転がり軸受けであるが、これに限定されるものではなく、例えば滑り軸受けなど他の種類のものであってもよい。
【0085】
上記したベアリング72は、第2の手首部14bに取り付けられる。具体的にベアリング72は、手首本体部30の他端部30bの内部空間に配置され、また第1のシャフト50の内側、正確には非形成部位52と当接するように配置される。
【0086】
そして、シザーズギヤ43は、メインギヤ44を有する第1のシャフト50の他端50b側において、第3の手首部14cとボルト75によって締結固定される。したがって、シザーズギヤ43は、モータMfから駆動側シャフト41、外歯歯車42を介して入力された駆動力を第3の手首部14cへ伝達し、第3の手首部14cを回転駆動させる。
【0087】
ここで、シザーズギヤ43とベアリング72との位置関係について詳しく説明する。シザーズギヤ43のスプリング46は、シザーズギヤ43の回転軸43c方向においてベアリング72に隣接して配置される。換言すれば、スプリング46は、ベアリング72と略同径とされるとともに、回転軸43c方向から見た場合に、少なくとも一部分がベアリング72と重なるような位置に配置される。
【0088】
これにより、動力伝達機構40のギヤとして、スプリング46を有するシザーズギヤ43を用いた場合であっても、シザーズギヤ43の径方向における幅(
図3において符号Wで示す)を小さくすることができ、シザーズギヤ43を小型化できる。
【0089】
すなわち、仮にスプリング46をシザーズギヤ43の径方向(X軸方向)においてベアリング72に隣接して配置した場合、シザーズギヤ43の幅Wがスプリング46の分だけ大きくなるおそれがある。
【0090】
しかしながら、本実施形態では、スプリング46を回転軸43c方向においてベアリング72に隣接して配置することで、シザーズギヤ43の幅Wを小さくすることができ、シザーズギヤ43を小型化することができる。また、シザーズギヤ43を小型化することで、動力伝達機構40の占有スペースも小さくすることができる。
【0091】
また、第1のシャフト50は、他端50b側に第3の手首部14cが接続されるとともに、メインギヤ44が形成される形成部位51よりも他端50b側においてベアリング72で支持される。そして、スプリング46は、ベアリング72に対して、シザーズギヤ43の出力側である第3の手首部14c側に隣接して配置される。
【0092】
これにより、シザーズギヤ43を確実に小型化することができる。すなわち、第1のシャフト50の一端50a側には、駆動側シャフト41や外歯歯車42などモータMfの駆動力を入力する側の構成要素が接続される。そのため、仮にスプリング46を、ベアリング72に対して入力側に隣接して配置すると、シザーズギヤ43は、スプリング46の分だけ回転軸43c方向に大きくなるおそれがある。
【0093】
そこで、本実施形態にあっては、スプリング46を、ベアリング72に対して出力側である第3の手首部14c側に隣接して配置することで、シザーズギヤ43が回転軸43c方向に大きくなることはなく、よってシザーズギヤ43を確実に小型化することができる。
【0094】
また、複数のリンクを有する手首部14のうち、先端のリンクである第3の手首部14cにシザーズギヤ43が接続されるようにしたので、ロボット1においてエンドエフェクタに近い部分を小型化することができる。これにより、例えば第3の手首部14cやエンドエフェクタであるトーチ2を、比較的狭いところにある作業対象物まで移動させることが可能となり、ロボット1のアクセス性能を向上させることができる。
【0095】
また、シザーズギヤ43のメインギヤ44およびサブギヤ45を内歯歯車としたことから、シザーズギヤ43と外歯歯車42とを含む歯車全体の径方向(X軸方向)における幅を小さくすることができる。すなわち、例えば仮にメインギヤ44およびサブギヤ45が外歯歯車であり、外歯歯車42と噛合するようにした場合、シザーズギヤ43と外歯歯車42とを含む歯車全体の径方向における幅は、2つの外歯歯車の外径を足した値にほぼなり、大きくなってしまう。
【0096】
そこで、本実施形態に係るロボット1にあっては、メインギヤ44およびサブギヤ45を内歯歯車とし、シザーズギヤ43の内側で外歯歯車42と接続するようにした。これにより、歯車全体の幅はシザーズギヤ43の幅Wに相当する分のみとなり、歯車全体の幅、ひいては動力伝達機構40全体を小さくすることができる。
【0097】
また、上記したように、シザーズギヤ43の内側(正確には第1のシャフト50の内側)にベアリング72を配置して、シザーズギヤ43を支持するようにした。これにより、動力伝達機構40が大型化するのを防止することができる。
【0098】
すなわち、例えば仮にベアリング72を、シザーズギヤ43の外側(正確には第2のシャフト60の外側)に配置すると、動力伝達機構40は、ベアリング72の分だけ径方向に大きくなる。しかしながら、本実施形態では、ベアリング72をシザーズギヤ43の内側に配置することから、動力伝達機構40が大型化するのを防止することができる。
【0099】
また、ベアリング72は、第1のシャフト50の非形成部位52の内周面に当接するように配置される。これにより、径方向における非形成部位52の肉厚を、形成部位51のそれに比して薄くでき、さらにはベアリング72から作用する荷重を許容できる値まで薄くすることができ、よって第1のシャフト50を小型化および軽量化することができる。
【0100】
また、非形成部位52の径方向の肉厚を薄くしたことから、シザーズギヤ43の内周側の中空部分を大きくすることができる。シザーズギヤ43の中空部分には、図示のように、コンジットケーブル33が挿通されるが、上記のように中空部分を大きくすることで、例えばサーボトーチやタンデムトーチに用いられるような、比較的太いコンジットケーブルも挿通可能となる。これにより、ロボット1を様々な種類の溶接に適応させることができる。
【0101】
また、第2の手首部14bにおいて、手首本体部30と第3の手首部14cとの間には第1のオイルシール76aが、側面カバー31と第3の手首部14cとの間には第2のオイルシール76bが介挿される。これにより、シザーズギヤ43などを潤滑するオイルが外部へ漏洩するのを防止することができる。
【0102】
また、上記したシザーズギヤ43のスプリング46は、第1のオイルシール76a付近に配置される、詳しくは第1のオイルシール76aに対してシザーズギヤ43の径方向に隣接するように配置される。これにより、第1のオイルシール76a近傍におけるスペースを有効に利用でき、またシザーズギヤ43と第3の手首部14cとの接続部分付近をコンパクトにすることができる。
【0103】
また、
図5に示すように、外歯歯車42のピッチ円直径は、シザーズギヤ43のピッチ円直径に比して小さく設定され、例えばシザーズギヤ43のピッチ円直径の約3分の1以下とされる。これにより、モータMfの駆動力を、外歯歯車42とシザーズギヤ43との間で大きく変速、具体的には減速させることができるとともに、上記したシザーズギヤ43の内周側の中空部分も確実に確保することができる。なお、上記した各歯車のピッチ円直径は例示であって限定されるものではなく、例えば外歯歯車42のピッチ円直径が、シザーズギヤ43のピッチ円直径の3分の1より大きい値であってもよい。
【0104】
また、第3の手首部14cの手首フランジ14c1は、
図3,4に示すように、中空状に形成された中空部80を備える。中空部80の中空径d2は、中空部32の中空径d1と略同一の値、すなわち、コンジットケーブル33が挿通可能な値に設定される。これにより、コンジットケーブル33を、中空部32、シザーズギヤ43の内周側の中空部分、中空部80に容易に通すことができる。
【0105】
また、
図2,3および
図5に示すように、中空部80と外歯歯車42とは、外歯歯車42の回転軸42a方向から見た場合に重ならない位置に配置される。換言すれば、外歯歯車42は、回転軸42aと垂直な方向において、中空部80から所定の距離だけ離間するように配置される。これにより、中空部80の中空径d2を大きくすることができ、よってコンジットケーブル33を中空部80により一層容易に通すことができる。
【0106】
上述してきたように、第1の実施形態では、ロボット1において、シザーズギヤ43は、シザーズギヤ43の回転軸43c方向においてベアリング72に隣接して配置され、メインギヤ44およびサブギヤ45に対して互いに異なる回転方向に付勢力を付与するスプリング46を備えるようにした。これにより、ロボット1において、シザーズギヤ43を小型化でき、よってシザーズギヤ43を含む動力伝達機構40の占有スペースを小さくすることができる。
【0107】
なお、上記では、ロボット1において、第1の手首部14aと第2の手首部14bとの連結部分を「片持ち構造」としたが、それに限定されるものではなく、例えば第1、第2の手首部14a,14bを
図9に示すようにして連結してもよい。すなわち、
図9に示すように、第1の手首部14aにおいて、第2の手首部14bが連結される側を二股に形成し、二股に形成された部位で第2の手首部14bを両側から軸支する、いわゆる両持ち構造としてもよい。
【0108】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態に係るロボット1の第2、第3の手首部14b,14c付近を拡大して示す、
図3と同様な拡大部分断面上面図である。なお、以下においては、第1の実施形態と共通の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0109】
第1の実施形態との相違点に焦点をおいて説明すると、第2の実施形態に係るロボット1においては、シザーズギヤ143のメインギヤ144およびサブギヤ145がともに、外歯歯車となるように構成した。
【0110】
なお、以下においては、理解の便宜のため、駆動側シャフト41に設けられる外歯歯車42を「第1の外歯歯車42」という。また、メインギヤ144およびサブギヤ145たる外歯歯車を「第2の外歯歯車」ということもある。
【0111】
図10に示すように、第1の外歯歯車42には、シザーズギヤ143が噛合される。
図11は、
図10に示すシザーズギヤ143を取り出して示す拡大斜視図であり、
図12は、
図11に示すシザーズギヤ143の拡大分解斜視図である。また、
図13は、
図10に示すシザーズギヤ143付近を示すXIII−XIII線端面図である。
【0112】
図11から
図13に示すように、シザーズギヤ143は、メインギヤ144と、サブギヤ145と、スプリング146とを備える。
【0113】
メインギヤ144は、
図12に示すように、円筒状の第1のシャフト150の一端150a側に形成される。また、メインギヤ144は、第1のシャフト150の外周面に歯が形成された外歯歯車(第2の外歯歯車)であり、第1の外歯歯車42と噛合する。
【0114】
メインギヤ144は、第1のシャフト150の外周面のうち、一端150a側に形成される一方、他端150b側には形成されない。すなわち、第1のシャフト150の外周面は、中心軸150c方向において、メインギヤ144の歯が形成される形成部位151と、メインギヤ44の歯が形成されない非形成部位152との2種類の部位を備える。
【0115】
また、第1のシャフト150の他端150bには、挿通溝153と、掛止溝154とが形成され、これら挿通溝153および掛止溝154にスプリング146が挿通または掛止される。挿通溝153および掛止溝154の構成は、第1の実施形態における挿通溝53および掛止溝54と略同一であるため、これ以上の説明は省略する。
【0116】
サブギヤ145は、円筒状の第2のシャフト160の一端160a側に形成される。また、サブギヤ145は、第2のシャフト160の外周面に歯が形成された外歯歯車(第2の外歯歯車)であり、メインギヤ144と同様、第1の外歯歯車42と噛合する。
【0117】
サブギヤ145は、第2のシャフト160の外周面のうち、一端160a側に形成される一方、他端160b側には形成されない。すなわち、第2のシャフト160の外周面は、中心軸160c方向において、サブギヤ145の歯が形成される形成部位161と、サブギヤ145の歯が形成されない非形成部位162との2種類の部位を備える。
【0118】
第2のシャフト160の非形成部位162の外径は、第1のシャフト150の内径よりも小さくなるように設定される。これにより、
図11に示す如く、第1のシャフト150を、第2のシャフト160の外側に相対回転可能に嵌合させることができる。
【0119】
また、上記のように、メインギヤ144は第1のシャフト150の一端150a側に、サブギヤ145は第2のシャフト160の一端160a側に形成される。これにより、メインギヤ144とサブギヤ145とは、第1、第2のシャフト150,160を嵌合させた状態において、中心軸150c,160c方向に隣接して配置されることとなる。
【0120】
第2のシャフト160の他端160bには、掛止溝164が形成される。掛止溝164の構成は、第1の実施形態における掛止溝64と略同一であるため、詳しい説明は省略する。
【0121】
スプリング146は、第1の実施形態におけるスプリング46と同様、例えば周方向に弾性変形可能なねじりばね(ねじりコイルばね)である。
【0122】
スプリング146は、一端部146aおよび他端部146bが径方向において内側に向けて突出するように形成される。また、スプリング146の内径は、第1のシャフト150の非形成部位152の外径よりも大きい値に設定される。なお、スプリング146の巻き数などその他の構成は、第1の実施形態におけるスプリング46と略同一である。
【0123】
上記の如く構成されたスプリング146は、周方向に弾性変形させられつつ第1、第2のシャフト150,160の外側に取り付けられる。これにより、シザーズギヤ143は、簡易な構成でありながら、スプリング146によって、メインギヤ144およびサブギヤ145に対して互いに異なる回転方向に付勢力を付与することができる。
【0124】
具体的には、第1、第2のシャフト150,160が嵌合され、挿通溝153と掛止溝164とが径方向において揃った状態で、スプリング146は、一端部146aが第1のシャフト150の挿通溝153に挿通されつつ、第2のシャフト160の掛止溝164に掛止される。一方、スプリング146の他端部146bは、第1のシャフト150の掛止溝154に掛止される。
【0125】
このとき、スプリング146は、所定角度αの分だけ弾性変形させられた状態で第1、第2のシャフト150,160に掛止される。これにより、弾性変形したスプリング146は、メインギヤ144およびサブギヤ145に対して互いに異なる回転方向に付勢力を付与することとなる。
【0126】
具体的にスプリング146は、第1のシャフト150のメインギヤ144に対して
図13において時計回り方向に、第2のシャフト160のサブギヤ145に対して
図10において反時計回り方向に付勢力を付与することとなる。
【0127】
シザーズギヤ143は、上記のように構成されることで、第1の外歯歯車42をメインギヤ144とサブギヤ145とで挟み込むように噛合することとなり、よってバックラッシを低減することができる。
【0128】
なお、図示は省略するが、シザーズギヤ143において、第1のシャフト150と第2のシャフト160とは、相対回転可能な状態を維持しつつ、ボルトで係合される構成は、第1の実施形態と同じである。
【0129】
図10の説明に戻ると、上記の如く構成されたシザーズギヤ143は、メインギヤ144およびサブギヤ145が第1の外歯歯車42に噛合されるとともに、ベアリング72によって回転軸143c回りに回転可能に支持される。
【0130】
上記したベアリング72は、第1のシャフト150の外側、正確には非形成部位152と当接するように配置される。そして、シザーズギヤ143は、メインギヤ144を有する第1のシャフト150の他端150b側において、第3の手首部14cとボルト75によって締結固定される。したがって、シザーズギヤ143は、モータMfから駆動側シャフト41、第1の外歯歯車42を介して入力された駆動力を第3の手首部14cへ伝達し、第3の手首部14cを回転駆動させる。
【0131】
ここで、シザーズギヤ143とベアリング72との位置関係について詳説する。シザーズギヤ143のスプリング146は、第1の実施形態と同様、シザーズギヤ143の回転軸143c方向においてベアリング72に隣接して配置される。換言すれば、スプリング146は、ベアリング72と略同径とされるとともに、回転軸143c方向から見た場合に、少なくとも一部分がベアリング72と重なるような位置に配置される。
【0132】
第2の実施形態では、上記のように構成することで、動力伝達機構40のギヤとして、スプリング146を有するシザーズギヤ143を用いた場合であっても、シザーズギヤ143の径方向における幅Wを小さくすることができ、シザーズギヤ143を小型化できる。
【0133】
すなわち、仮にスプリング146をシザーズギヤ143の径方向(X軸方向)においてベアリング72に隣接して配置した場合、シザーズギヤ143の幅Wがスプリング146の分だけ大きくなるおそれがある。
【0134】
しかしながら、第2の実施形態では、スプリング146を回転軸143c方向においてベアリング72に隣接して配置することで、シザーズギヤ143の幅Wを小さくすることができ、シザーズギヤ143を小型化することができる。また、シザーズギヤ143を小型化することで、動力伝達機構40の占有スペースも小さくすることができる。
【0135】
また、第2の実施形態では、シザーズギヤ143において、メインギヤ144とサブギヤ145とがともに、第1の外歯歯車42に噛合する第2の外歯歯車であるように構成したが、上記の如く、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0136】
また、ベアリング72は、第1のシャフト150の非形成部位152の外周面に当接するように配置される。これにより、径方向における非形成部位152の肉厚を、形成部位151のそれに比して薄くでき、さらにはベアリング72から作用する荷重を許容できる値まで薄くすることができ、よって第1のシャフト150を小型化および軽量化することができる。なお、残余の構成および効果は、第1の実施形態と同一であるので、説明を省略する。
【0137】
なお、上述した実施形態では、モータMfと第3の手首部14cとを接続する動力伝達機構40が、シザーズギヤ43,143を備えるようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えばモータMaと旋回部11、モータMbと下部アーム12、モータMcと上部アーム13、モータMdと第1の手首部14a、モータMeと第2の手首部14bとを接続する動力伝達機構に、上記したようなシザーズギヤ43,143を用いるようにしてもよい。
【0138】
また、ロボット1をアーク溶接用のロボットとしたが、かかる構成に限定されるものではなく、その他のロボットであってもよい。すなわち、上記では、エンドエフェクタとしてトーチ2を備えるようにしたが、例えばワークを把持するハンドや、ワークを吸着・保持する吸着部をエンドエフェクタとして備え、ハンドなどを介してワークの搬送などの作業を行うロボットであってもよい。
【0139】
また、ロボット1を6軸構成のロボットで説明したが、かかる構成に限定されるものではなく、6軸構成以外のロボット、例えば7軸や8軸構成のロボットを用いることも可能である。
【0140】
また、第2の実施形態におけるロボット1において、第1の手首部14aと第2の手首部14bとの連結部分を「片持ち構造」としたが、第1の実施形態と同様、「両持ち構造」としてもよい。
【0141】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。