特許第5861685号(P5861685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5861685
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】リニアモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20160202BHJP
   H02K 41/02 20060101ALI20160202BHJP
   H02K 9/10 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   H02K41/03 A
   H02K41/02 Z
   H02K9/10
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-222197(P2013-222197)
(22)【出願日】2013年10月25日
(65)【公開番号】特開2015-84619(P2015-84619A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2015年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100177633
【弁理士】
【氏名又は名称】土居 猛
(72)【発明者】
【氏名】柳 啓二
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−161838(JP,A)
【文献】 特開2005−237078(JP,A)
【文献】 特開2001−190088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/03
H02K 9/10
H02K 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動子を固定子に対して第一軸方向及び前記第一軸に直交する第二軸方向に駆動するリニアモータであって、
前記第一軸及び前記第二軸に平行に配置される第一の主面を有する第一のヨーク、前記第一軸及び前記第二軸に平行に配置され前記第一の主面に対向する第二の主面を有する第二のヨーク、前記第一軸に沿って並列するように前記第一の主面上に配置された複数の第一軸磁石、並びに前記第二軸に沿って並列するように前記第二の主面上に配置された複数の第二軸磁石、を有する界磁と、
前記第一の主面と前記第二の主面との間に配置され、前記第一軸磁石により形成された磁束と前記第二軸磁石により形成された磁束とを分離する磁束分離部材と、
前記第一の主面と前記磁束分離部材との間に配置された少なくとも一つの第一軸移動用コイル、及び前記第二の主面と前記磁束分離部材との間に配置された少なくとも一つの第二軸移動用コイルを有する電機子と、
を備え、
前記電機子及び前記界磁のいずれか一方が前記可動子であり、他方が前記固定子である、リニアモータ。
【請求項2】
前記磁束分離部材が、前記第一の主面側に配置された第一の板状部材、前記第二の主面側に配置された第二の板状部材、及び前記第一の板状部材と前記第二の板状部材との間に設けられ磁性を有しない非磁性部を有する、請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記第一の板状部材及び前記第二の板状部材が電磁鋼板である、請求項2に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記第一の板状部材が、前記第二軸方向に積層された複数の電磁鋼板であり、
前記第二の板状部材が、前記第一軸方向に積層された複数の電磁鋼板である、請求項3に記載のリニアモータ。
【請求項5】
前記磁束分離部材には、前記リニアモータを冷却する冷媒が流動する冷媒流路が設けられている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリニアモータ。
【請求項6】
前記磁束分離部材が、前記電機子に固定された、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリニアモータ。
【請求項7】
前記磁束分離部材が、前記界磁に固定された、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリニアモータ。
【請求項8】
前記磁束分離部材が、前記電機子及び前記界磁のいずれに対しても可動である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械の分野で利用され、2軸方向の動作が可能なリニアモータとして、例えば、特許文献1に記載のリニアモータが知られている。特許文献1に記載のリニアモータの界磁は、2つの平板状の界磁ヨークの長手方向に並べて配置された複数のX軸永久磁石と、界磁ヨークの長手方向と直交する向きに並べて配置された2個のY軸永久磁石とを備える。そして、特許文献1に記載のリニアモータでは、これらの永久磁石に対向するように電機子コイルが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−74976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した2軸方向の動作が可能なリニアモータの分野では、2軸方向のそれぞれにおける可動範囲を確保しながらリニアモータをさらに小型化することが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、2軸方向のそれぞれにおける可動範囲を確保しながら小型化することができるリニアモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るリニアモータは、可動子を固定子に対して第一軸方向及び第一軸に直交する第二軸方向に駆動するリニアモータであって、第一軸及び第二軸に平行に配置される第一の主面を有する第一のヨーク、第一軸及び第二軸に平行に配置され第一の主面に対向する第二の主面を有する第二のヨーク、第一軸に沿って並列するように第一の主面上に配置された複数の第一軸磁石、並びに第二軸に沿って並列するように第二の主面上に配置された複数の第二軸磁石、を有する界磁と、第一の主面と第二の主面との間に配置され、第一軸磁石により形成された磁束と第二軸磁石により形成された磁束とを分離する磁束分離部材と、第一の主面と磁束分離部材との間に配置された少なくとも一つの第一軸移動用コイル、及び第二の主面と磁束分離部材との間に配置された少なくとも一つの第二軸移動用コイルを有する電機子と、を備え、電機子及び界磁のいずれか一方が可動子であり、他方が固定子である。
【0007】
磁束分離部材が、第一の主面側に配置された第一の板状部材、第二の主面側に配置された第二の板状部材、及び第一の板状部材と第二の板状部材との間に設けられ磁性を有しない非磁性部を有していてもよい。
【0008】
第一の板状部材及び第二の板状部材が電磁鋼板であってもよい。
【0009】
第一の板状部材が、第二軸方向に積層された複数の電磁鋼板であり、第二の板状部材が、第一軸方向に積層された複数の電磁鋼板であってもよい。
【0010】
磁束分離部材には、リニアモータを冷却する冷媒が流動する冷媒流路が設けられていてもよい。
【0011】
磁束分離部材が、電機子に固定されていてもよい。
【0012】
磁束分離部材が、界磁に固定されていてもよい。
【0013】
磁束分離部材が、電機子及び界磁のいずれに対しても可動であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、2軸方向のそれぞれにおける可動範囲を確保しながら小型化することができるリニアモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係るリニアモータの界磁の構成を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係るリニアモータの電機子の構成を示す斜視図である。
図3】磁束分離部材の分解斜視図である。
図4】第1実施形態に係るリニアモータにおける磁束を模式的に示す図である。
図5】第2実施形態に係るリニアモータの界磁の構成を示す斜視図である。
図6】第2実施形態に係るリニアモータの電機子の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るリニアモータ1は、界磁10と、電機子20と、を備えて構成される(図4参照)。リニアモータ1は、例えば半導体製造装置や工作機械などの各種産業機械において、第一軸方向と、第一軸に直交する第二軸方向と、の二方向への自由度を有しながら、テーブル等の可動部分を移動させるために用いられる駆動装置である。リニアモータ1は、界磁10及び電機子20のいずれか一方を可動子とするとともに他方を固定子として、可動子を固定子に対して第一軸方向及び第二軸方向に駆動する。可動子には、例えば産業機械におけるテーブル等の可動部分が取り付けられる。以下の説明では、界磁10を固定子とし、電機子20を可動子とする。また、第一軸をX軸とし、第二軸をY軸とし、第一軸及び第二軸の両方に垂直な第三軸をZ軸とする。
【0018】
図1を参照して、界磁10の構成について説明する。界磁10は、ヨーク(第一のヨーク)11Aと、ヨーク(第二のヨーク)11Bと、X軸磁石(第一軸磁石)12と、Y軸磁石(第二軸磁石)13と、を有する。一対のヨーク11A,11Bは、平板状の部材であり、それぞれXY平面に平行に配置されている。ヨーク11Aは、ヨーク11Bに対して、Z軸方向における負の側に配置されている。ヨーク11Bは、ヨーク11Aに対して、Z軸方向における正の側に配置されている。ヨーク11Aは、主面(第一の主面)11Aaを有する。ヨーク11Bは、主面(第二の主面)11Baを有する。ヨーク11Aの主面11Aa及びヨーク11Bの主面11Baは、XY平面に平行となっている。ヨーク11Aの主面11Aaは、ヨーク11Bの主面11Baに対向している。ヨーク11Aとヨーク11Bとは、X軸方向に延びるヨークベース14に取り付けられている。これにより、ヨーク11A、ヨーク11B、及びヨークベース14は、これらを一体としてX軸方向から見た場合には、略U字状の形状を呈する。ヨーク11Aとヨーク11Bとの間には、空隙Sが形成されている。この空隙Sには、電機子20が収容される。電機子20は、空隙Sの内部においてX軸方向及びY軸方向に駆動されて移動する。
【0019】
X軸磁石12は、Y軸方向に沿って延びる板状(或いは直方体)の永久磁石であり、X軸方向に並列するようにヨーク11Aの主面11Aa上に複数配置されている。隣り合うX軸磁石12は、互いにZ軸方向における逆の極性を有している。例えば、1つのX軸磁石12の極性がZ軸方向の正の側にN極を有していれば、当該X軸磁石12の隣のX軸磁石12の極性は、Z軸方向の負の側にN極を有する。
【0020】
Y軸磁石13は、X軸方向に沿って延びる板状(或いは直方体)の永久磁石であり、Y軸方向に並列するようにヨーク11Bの主面11Ba上に複数配置されている。隣り合うY軸磁石13は、互いにZ軸方向における逆の極性を有している。例えば、1つのY軸磁石13の極性がZ軸方向の正の側にN極を有していれば、当該Y軸磁石13の隣のY軸磁石13の極性は、Z軸方向の負の側にN極を有する。
【0021】
なお、X軸磁石12及びY軸磁石13として、永久磁石に代えて電磁石を用いてもよい。
【0022】
次に、図2を参照して、電機子20の構成について説明する。電機子20は、X軸移動用コイル(第一軸移動用コイル)21と、Y軸移動用コイル(第二軸移動用コイル)22と、を有する。
【0023】
X軸移動用コイル21は、Y軸方向に長く延び、XY平面に平行な長円状のコイルである。本実施形態では、X軸移動用コイル21として、X軸方向に平行に3個のコイル21A,21B,21Cが配列されている。コイル21A,21B,21Cのそれぞれには、不図示の給電ケーブルを介して、三相電流の各相の電流が外部から供給される。
【0024】
Y軸移動用コイル22は、X軸方向に長く延び、XY平面に平行な長円状のコイルである。本実施形態では、Y軸移動用コイル22として、Y軸方向に平行に3個のコイル22A,22B,22Cが配列されている。コイル22A,22B,22Cのそれぞれには、不図示の給電ケーブルを介して、三相電流の各相の電流が外部から供給される。
【0025】
なお、X軸移動用コイル21及びY軸移動用コイル22として、コイル21A,21B,21Cのような3個のコイルの組合せを複数設けてもよい。また、X軸移動用コイル21及びY軸移動用コイル22に供給する電流が単相交流や直流である場合には、X軸移動用コイル21及びY軸移動用コイル22は、3個のコイルの組合せでなくてもよく、少なくとも一つのコイルがあれば足りる。
【0026】
電機子20には、磁束分離板(磁束分離部材)30が固定されている。磁束分離板30は、XY平面に平行に配置された平板状の部材である。磁束分離板30は、第一の主面30aと、第一の主面30aの反対側に位置する第二の主面30bと、を有する。磁束分離板30は、磁束分離板30の第一の主面30a側における磁束と、磁束分離板30の第二の主面30b側における磁束とを分離する。第一の主面30a上にはX軸移動用コイル21が配置されており、第二の主面30b上にはY軸移動用コイル22が配置されている。X軸移動用コイル21、Y軸移動用コイル22及び磁束分離板30は、例えばモールド樹脂(不図示)により一体成形される。
【0027】
ここで、図3に分解斜視図として示すように、磁束分離板30は、第一の板状部材31と、第二の板状部材32と、から構成される。第一の板状部材31及び第二の板状部材32は、いずれもXY平面に平行な平板状の部材である。第一の板状部材31及び第二の板状部材は、いずれも磁性材料からなる。好ましくは、第一の板状部材31及び第二の板状部材32は、電磁鋼板である。より好ましくは、第一の板状部材31は、Y軸方向に積層された複数の電磁鋼板であり、第二の板状部材32は、X軸方向に積層された複数の電磁鋼板である。さらに好ましくは、第一の板状部材31は、X軸方向を磁化容易方向とする方向性電磁鋼板がY軸方向に複数積層されて構成されており、第二の板状部材32は、Y軸方向を磁化容易方向とする方向性電磁鋼板がX軸方向に複数積層されて構成されている。
【0028】
第一の板状部材31と第二の板状部材32との間には、磁性を有しない非磁性部が設けられる。この非磁性部は、例えば空気を含む空洞であってもよいし、非磁性材料からなる平板状の部材であってもよい。
【0029】
なお、磁束分離板30は、上述した構成を有するものに限定されない。磁束分離板30は、例えば、XY平面に平行な1枚の金属板において、Z軸方向における中央部に、X軸方向に延在する長穴を設けたものであってもよい。
【0030】
また、磁束分離板30には、リニアモータ1を冷却する冷媒が流動する冷媒流路が設けられていてもよい。例えば、第一の板状部材31と第二の板状部材32との間に空洞33を設け(図4参照)、この空洞に冷媒を流動させてもよい。第一の板状部材31又は第二の板状部材32の内部に配管を設け、この配管に冷媒を流動させてもよい。冷媒としては、例えば空気等の気体、又は水等の液体が用いられ得る。
【0031】
上述した構成を有するリニアモータ1において、外部からX軸移動用コイル21に三相交流電流が供給された場合、X軸移動用コイル21に供給された三相交流電流と、X軸磁石12により形成される磁界と、の相互作用による力がX軸移動用コイル21に作用し、電機子20は、X軸方向に移動する。同様に、外部からY軸移動用コイル22に三相交流電流が供給された場合、Y軸移動用コイル22に供給された三相交流電流と、Y軸磁石13により形成される磁界と、の相互作用による力がY軸移動用コイル22に作用し、電機子20は、Y軸方向に移動する。このようにして、電機子20は、界磁10に対して、X軸方向及びY軸方向の二方向への自由度を有しながら移動する。
【0032】
次に、上述した構成を有するリニアモータ1における磁束の分布について、図4を参照して説明する。図4は、図1におけるIV-IV線に沿ったリニアモータ1の断面図である。
【0033】
磁束分離板30に対してZ軸方向の正の側、すなわちヨーク11Bが配置された側では、Y軸磁石13により磁束Byが発生している。磁束Byは、YZ平面に平行な、次のようなループを形成する。まず、磁束Byは、一つのY軸磁石13のN極から磁束分離板30の第二の板状部材32に向かう。次いで、磁束Byは、第二の板状部材32をY軸に平行な方向に進む。さらに、磁束Byは、上述の一つのY軸磁石13と隣り合うように配置されたY軸磁石13のS極に向かう。そして、磁束Byは、ヨーク11Bの内部をY軸に平行な方向に進み、上述の一つのY軸磁石13のS極に向かう。
【0034】
一方、磁束分離板30に対してZ軸方向の負の側、すなわちヨーク11Aが配置された側では、X軸磁石12により磁束Bxが発生している。磁束Bxは、XZ平面に平行な、次のようなループを形成する。まず、磁束Bxは、一つのX軸磁石12のN極から磁束分離板30の第一の板状部材31に向かう。次いで、磁束Bxは、第一の板状部材31をX軸に平行な方向に進む。さらに、磁束Bxは、上述の一つのX軸磁石12と隣り合うように配置されたX軸磁石12のS極に向かう。そして、磁束Bxは、ヨーク11Aの内部をX軸に平行な方向に進み、上述の一つのX軸磁石12のS極に向かう。
【0035】
このように、リニアモータ1では、磁束分離板30に対してZ軸方向の負の側では、X軸に平行な磁束Bxが発生している。一方、磁束分離板30に対してZ軸方向の正の側では、Y軸に平行な磁束Byが発生している。すなわち、磁束分離板30は、X軸磁石12により形成された磁束Bxと、Y軸磁石13により形成された磁束Byと、を分離している。
【0036】
これにより、X軸移動用コイル21には、X軸に平行な方向の駆動力が作用する。また、Y軸移動用コイル22には、Y軸に平行な方向の駆動力が作用する。
【0037】
本実施形態のリニアモータ1では、X軸磁石12により形成された磁束によりX軸移動用コイル21にX軸方向への駆動力が発生し、Y軸磁石13により形成された磁束によりY軸移動用コイル22にY軸方向への駆動力が発生することで、電機子20が界磁10に対してX軸方向及びY軸方向に駆動される。ここで、X軸磁石12により形成された磁束と、Y軸磁石13により形成された磁束とは、磁束分離板30により分離されている。したがって、電機子20をX軸方向及びY軸方向のいずれの方向に移動させたとしても、X軸磁石12により形成された磁束がY軸移動用コイル22に干渉したり、Y軸磁石13により形成された磁束がX軸移動用コイル21に干渉したりすることが抑制される。したがって、X軸磁石12及びY軸磁石13により形成された磁束と、X軸移動用コイル21及びY軸移動用コイル22と、の干渉を抑制するために不要な空間を設ける必要がないため、2軸方向のそれぞれにおける可動範囲を確保しながら、リニアモータ1を小型化することができる。
【0038】
特に、リニアモータ1では、X軸磁石12は、ヨーク11Aの主面11Aa上に配置されており、Y軸磁石13は、ヨーク11Bの主面11Ba上に配置されている。したがって、主面11Aa上においてX軸磁石12とY軸磁石13とが混在していない。このため、電機子20が移動しても、Y軸磁石13により形成される磁束をX軸移動用コイル21が横切ることがない。同様に、主面11Ba上においてもX軸磁石12とY軸磁石13とが混在していない。このため、電機子20が移動しても、X軸磁石13により形成される磁束をY軸移動用コイル22が横切ることがない。したがって、X軸方向及びY軸方向のいずれの方向についても、電機子20の移動が制約されることがなく、電機子20の可動範囲を大きく確保することができる。
【0039】
さらに、ヨーク11Aの主面11Aa上には、X軸に沿って並列する複数のX軸磁石12が設けられ、ヨーク11Bの主面11Ba上には、Y軸に沿って並列する複数のY軸磁石13が設けられている。この構成により、異なる方向に並列するX軸磁石12とY軸磁石13とをヨーク11Aの主面11Aa上やヨーク11Bの主面11Ba上に混在させて配列する必要がなくなるため、界磁10の製造を容易に行うことができる。
【0040】
また、磁束分離板30が、ヨーク11Aの主面11Aa側に配置された第一の板状部材31、ヨーク11Bの主面11Ba側に配置された第二の板状部材32、及び第一の板状部材31と第二の板状部材32との間に設けられ磁性を有しない非磁性部を有している。この構成により、X軸磁石12により形成される磁束Bxと、Y軸磁石13により形成される磁束Byと、の分離を好適に行うことができる。
【0041】
また、磁束分離板30が電磁鋼板である。このため、磁束分離板30を磁束が通ることによる磁束分離板30における発熱を抑制することができる。
【0042】
さらに、磁束分離板30において、第一の板状部材31が、Y軸方向に積層された複数の電磁鋼板であり、第二の板状部材32が、X軸方向に積層された複数の電磁鋼板である。このため、磁束分離板30における発熱をさらに抑制することができる。
【0043】
また、磁束分離板30に、リニアモータ1を冷却する冷媒が流動する空洞33が設けられている場合には、磁束分離板30の内部の空間を有効に利用してリニアモータ1を冷却することができる。
【0044】
また、本実施形態のリニアモータ1では、磁束分離板30が電機子20に固定されている。このため、電機子20と磁束分離板30とを、例えばモールド樹脂を用いて一体成形することにより、電機子20と磁束分離板30とを別体とした場合と比較して、電機子20及び磁束分離板30の構成を簡便なものとすることができる。
【0045】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るリニアモータ101は、界磁110と、電機子120と、を備えて構成される。第2実施形態に係るリニアモータは、磁束分離部材としての磁束分離板30を界磁110側に備える点で、磁束分離板30を電機子20側に備える第1実施形態に係るリニアモータ1と異なる。
【0046】
図5に示すように、界磁110は、図1に示した界磁10と異なり、ヨークベース14に磁束分離板30が取り付けられている。磁束分離板30は、ヨーク11Aの主面11Aaとヨーク11Bの主面11Baとの間の略中央部において、ヨーク11Aの主面11Aa及びヨーク11Bの主面11Baに平行に配置されている。ヨーク11Aの主面11Aaと磁束分離板30との間の空隙S1には、X軸移動用コイル21が収容される。ヨーク11Bの主面11Baと磁束分離板30との間の空隙S2には、Y軸移動用コイル22が収容される。
【0047】
図6に示すように、電機子120は、図2に示した電機子20と異なり、磁束分離板30とは別体として構成されている。電機子120におけるX軸移動用コイル21及びY軸移動用コイル22の配置は、電機子20におけるX軸移動用コイル21及びY軸移動用コイル22の配置と同様である。X軸移動用コイル21とY軸移動用コイル22とは、例えばモールド樹脂(不図示)により一体成形される。このとき、X軸移動用コイル21とY軸移動用コイル22との間には、二点鎖線で示すように磁束分離板30を挿入することが可能な空隙が設けられる。
【0048】
このような第2実施形態に係るリニアモータ101においても、第1実施形態に係るリニアモータ100と略同様の作用効果が得られる。また、リニアモータ101では、電機子120が磁束分離板30とは別体であるため、電機子120を軽くすることができ、これにより高い加減速度での動作が可能となる。したがって、リニアモータ101を備えた産業機械におけるタクトタイムを短縮し、生産性を向上させることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第2実施形態に係るリニアモータ101において、磁束分離板30が界磁110から独立していてもよい。この場合には、磁束分離板30は、例えば界磁110及び電機子120のいずれとも固定されていないこととなる。すなわち、磁束分離板30が、界磁110及び電機子120のいずれに対しても可動となる。具体的には、磁束分離板30を外部筐体に固定し、界磁110及び電機子120のそれぞれを磁束分離板30に対して可動とした構成とすることができる。
【0050】
このような構成では、エアーを電機子120に向けて吹き出す吹出口と、この吹出口にエアーを供給する冷媒流路と、を磁束分離板30に設けやすいため、電機子120を容易に空冷することができる。また、界磁110や電機子120等の可動部に冷却配管を有しないため、冷却配管の引き回しや駆動系の設計をしやすくすることができる。
【符号の説明】
【0051】
1,101…リニアモータ、10,110…界磁(固定子)、11A…ヨーク(第一のヨーク)、11B…ヨーク(第二のヨーク)、11Aa…主面(第一の主面)、11Ba…主面(第二の主面)、12…X軸磁石(第一軸磁石)、13…Y軸磁石(第二軸磁石)、20,120…電機子(可動子)、30…磁束分離板(磁束分離部材)、31…第一の板状部材、32…第二の板状部材、33…空洞(冷媒流路)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6