(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酸素雰囲気下に配置される被処理物に対して真空紫外光を出射する紫外線出射ランプと、前記被処理物と前記紫外線出射ランプとの間に配置された、当該紫外線出射ランプからの真空紫外光を透過する光透過窓とを備えた光照射装置において、
前記光透過窓が被処理物押さえ用スペーサを介して前記被処理物の被処理面に対して押圧状態で当接されて配置されて、当該光透過窓の光出射側の表面と当該被処理物の被処理面との間の距離が一定の大きさとされる間隙が形成されることを特徴とする光照射装置。
動作時において、前記光透過窓の紫外線出射ランプ側の雰囲気の圧力を、前記被処理物側の雰囲気の圧力より高い状態に維持する圧力調整機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
前記光透過窓における突部は、当該突部の高さ方向に垂直な切断面による断面積が先端に向かうに従って小さくなる形状を有することを特徴とする請求項3に記載の光照射装置。
【背景技術】
【0002】
現在、例えば、半導体や液晶等の製造工程におけるレジストの光アッシング処理、ナノインプリント装置におけるテンプレートのパターン面に付着したレジストの除去あるいは液晶用のガラス基板やシリコンウエハなどのドライ洗浄処理、プリント基板製造工程におけるスミアの除去(デスミア)処理を行う方法として、紫外線を用いたドライ洗浄方法が知られている。特に、エキシマランプから放射される真空紫外線により生成されるオゾン等の活性酸素を利用した方法は、より効率良く短時間で所定の処理を行うことができることから、好適に利用されている。このような光照射装置としては、これまでに、種々の構成のものが提案されている(例えば特許文献1〜特許文献3参照)。
【0003】
このような真空紫外線を利用した光照射装置のある種のものは、例えば
図8に示すように、真空紫外線を出射する紫外線出射ランプ55からの光を、例えば酸素雰囲気下に配置された被処理物Wに対して、光透過窓を介して照射し、真空紫外線により生成されるオゾンおよび活性酸素によって、被処理物Wの表面処理を行う構成とされている。
【0004】
図8における符号50は光源ユニットであって、一方(下方)に開口部を有する箱型状のケーシング51を備えている。このケーシング51の開口部には、光透過窓を構成する平板状の光透過性窓部材52が、当該開口部を気密に塞ぐよう設けられている。ケーシング51内には、複数本の棒状の紫外線出射ランプ55がランプ中心軸が同一水平面内において互いに平行に延びる状態で配置されている。また、反射ミラー56がこれらの紫外線出射ランプ55を囲むよう設けられている。
【0005】
図8における符号60は、被処理物Wが載置される処理ステージであって、この処理ステージ60の平坦な被処理物載置面61には、光源ユニット50における光透過性窓部材52の光出射面52aと処理ステージ60の被処理物載置面61との間に所定の大きさの空間を形成するための枠状のスペーサ部材65が配置されている。スペーサ部材65の上面には、シール部材66が配置されている。そして、光源ユニット50が当該シール部材66を介して処理ステージ60上に気密に配置されて光源ユニット50と処理ステージ60との間に処理室S2が形成されている。
【0006】
また、処理ステージ60には、処理室S2内に所定の酸素濃度を有する処理用ガスを供給する処理用ガス供給用貫通孔62および処理用ガス排出用貫通孔63が互いに面方向(ランプの配列方向)に離間した位置に形成されている。そして、被処理物Wは、被処理物載置面61上における処理用ガス供給用貫通孔62と処理用ガス排出用貫通孔63との間の位置に配置されている。
【0007】
このような構成の光照射装置においては、処理効率(生産性)の向上の観点から、光透過性窓部材52の光出射面52aと、被処理物Wの被処理面Waとの間の距離は、例えば1.0mm以下、0.1〜0.5mmに設定されることが好ましいとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
而して、本発明者は、例えば厚みが0.1〜0.3mmである多層プリント配線基板について、光透過性窓部材52の光出射面52aと被処理物Wの被処理面Waとのギャップの大きさを例えば0.2mmとして表面処理を試みたところ、被処理物の被処理面を均一に処理することができないことがあることが判明した。この理由は次のように考えられる。すなわち、厚みの小さい多層プリント配線基板においては、
図8に示すように、積層時の絶縁性樹脂の貼り合わせ時や熱処理時に、全体が反ったり、波打った形状になったりして、例えば最大で2mm程度の変形が生ずることがある。従って、光透過性窓部材52の光出射面52aと被処理物Wの被処理面Waとの間の距離を、被処理面Waの全域にわたって均一な大きさとすることができない。このため、処理室S2内の酸素濃度が均一な状態であっても、紫外線出射ランプ55から到達する真空紫外線の強度に分布が生じ、被処理物Wを均一に処理することができないものと推測される。また、被処理物Wの変形の程度は個体差があるため、この点においても、被処理物Wを均一に処理することが困難であるのが実情である。
【0010】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、光透過窓の光出射面と被処理物の被処理面との間の距離を実質的に一定の大きさにすることができて、被処理物を均一に処理することのできる光照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光照射装置は、酸素雰囲気下に配置される被処理物に対して真空紫外光を出射する紫外線出射ランプと、前記被処理物と前記紫外線出射ランプとの間に配置された、当該紫外線出射ランプからの真空紫外光を透過する光透過窓とを備えた光照射装置において、
前記光透過窓が被処理物押さえ用スペーサを介して前記被処理物
の被処理面に対して押圧状態で
当接されて配置されて、当該光透過窓の光出射側の表面と当該被処理物の表面との間の距離が一定の大きさとされる間隙が形成されることを特徴とする。
【0012】
本発明の光照射装置においては、動作時において、前記光透過窓の紫外線出射ランプ側の雰囲気の圧力を、前記被処理物側の雰囲気の圧力より高い状態に維持する圧力調整機構を備えた構成とされていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の光照射装置においては、前記光透過窓は、一定の大きさの厚みを有する基体部の光出射側の表面に、前記被処理物の
被処理面に押圧状態で当接される複数の突部が設けられて構成されており、
前記スペーサが当該複数の突部により構成されていることが好ましい。
【0014】
さらにまた、本発明の光照射装置においては、前記光透過窓の基体部は、前記被処理物側に向かって凸となる湾曲した形態を有する構成とされていることが好ましい。
【0015】
さらにまた、本発明の光照射装置においては、前記光透過窓の突部によって、当該光透過窓の基体部における光出射側の表面と、被処理物の
被処理面との間に形成されるギャップに、所定濃度の酸素を含む処理用ガスを供給する処理用ガス供給手段を備えた構成とされていることが好ましい。
【0016】
さらにまた、本発明の光照射装置においては、前記光透過窓における突部は、前記真空紫外光を透過させる光透過性材料からなる構成とされていることが好ましい。
また、前記光透過窓における突部は、当該突部の高さ方向に垂直な切断面による断面積が先端に向かうに従って小さくなる形状を有する構成とされていることが好ましい。
【0017】
さらにまた、本発明の光照射装置においては、前記被処理物押さえ用スペーサは、互いに重なることなく前記被処理物の
被処理面に張設された複数の線材
よりなるものとすることができる。
【0018】
さらにまた、本発明の光照射装置においては、前記被処理物を保持する保持装置を備えており、当該保持装置には、前記被処理物を加熱する加熱手段が設けられた構成とされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光照射装置によれば、光透過窓によって、被処理物が被処理物押さえ用スペーサを介して押圧されることにより、被処理物自体の有する湾曲等の変形が矯正されるので、光透過窓と被処理物との間の距離が実質的に一定の大きさとされた間隙が形成された状態で処理を行うことができる。従って、被処理物の表面(被処理面)に照射される真空紫外線の強度を実質的に均一にすることができると共に真空紫外線により生成されるオゾンの濃度を実質的に均一にすることができ、その結果、被処理物を均一に処理することができる。
【0020】
また、光透過窓の紫外線出射ランプ側の雰囲気の圧力が、圧力調整機構によって、被処理物側の雰囲気の圧力より高い状態に維持されることにより、光透過窓の自重に加えて、当該圧力差によって作用する押圧力によって被処理物が押圧されて被処理物の変形が矯正されるので、上記効果を一層確実に得ることができる。
【0021】
さらにまた、光透過窓が被処理物側に向かって凸となる湾曲した形態を有する構成とされていることにより、当該光透過窓が被処理物に当接されて平板状の形態をなす状態とされることによって、被処理物をより一層強い力で押さえつけることができるので、上記効果を確実に得ることができる。
【0022】
さらにまた、被処理物押さえ用スペーサによって確保される光透過窓の光出射側の表面と被処理物の表面との間の間隙(ギャップ)に処理用ガスが流通される構成とされていることにより、被処理物の表面上における酸素濃度を略一定にすることができるので、オゾンおよび活性酸素を安定して生成することができて被処理物の処理を安定して行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の光照射装置の一例における構成を概略的に示す説明用断面図である。この光照射装置は、例えば可撓性を有する略平板状の被処理物(ワーク)Wが載置される平坦な被処理物載置面11を有する処理ステージ10を備えた保持装置と、処理ステージ10上に枠状スペーサを介して配置された光源ユニット20とを備えている。
【0025】
光源ユニット20は、一方(
図1において下方)に開口部を有する略直方体の箱型形状のケーシング21を備えている。このケーシング21の開口部には、真空紫外線を透過する光透過窓を構成する光透過性窓部材30が気密に設けられており、これにより、ケーシング21の内部に密閉されたランプ収容室S1が形成されている。ケーシング21内には、各々棒状の紫外線出射ランプ25が中心軸が同一水平面内において互いに平行に延びるよう並設されている。また、光源ユニット20の光照射方向における紫外線出射ランプ25の背面側の位置には、反射ミラー26が設けられている。また、ケーシング21には、例えば窒素ガスの不活性ガスをパージする不活性ガスパージ手段(図示せず)が設けられている。
【0026】
この光源ユニット20は、ケーシング21の下面が処理ステージ10の被処理物載置面11上に配置された矩形枠状のスペーサ部材15の上面にシール部材16を介して対接されて配置されており、これにより、光源ユニット20と処理ステージ10との間に処理室S2が形成されている。
【0027】
紫外線出射ランプ25としては、真空紫外線を放射するものであれば、公知の種々のランプを用いることができる。具体的には例えば、紫外線出射ランプ25としては、185nmの真空紫外線を放射する低圧水銀ランプ、中心波長が172nmの真空紫外線を放射するキセノンエキシマランプ、あるいは、発光管内にキセノンガスが封入されると共に、発光管の内面に例えば190nmの真空紫外線を出射する蛍光体が塗布されてなる蛍光エキシマランプなどを例示することができる。
図1に示す光照射装置のように、例えば紫外線出射ランプ25からの真空紫外線を被処理物Wに一括照射して処理を行う構成のものにおいては、被処理物Wの表面(以下、「被処理面」ともいう。)Waにおける紫外線強度の均一性を得るために、紫外線出射ランプ25としては、円筒型のものを用いることが望ましい。
【0028】
この光照射装置は、所定濃度の酸素を含む処理用ガスを処理室S2内に供給する処理用ガス供給手段を備えている。
処理用ガス供給手段について具体的に説明すると、処理ステージ10には、各々処理ステージ10の厚さ方向に貫通して延びる処理用ガス供給用貫通孔12およびガス排出用貫通孔13が形成されており、処理用ガス供給用貫通孔12には、図示しない処理用ガス供給源が接続されている。処理用ガス供給用貫通孔12およびガス排出用貫通孔13は、いずれも、例えば開口形状が紫外線出射ランプ25のランプ軸方向に沿って延びる長円形とされた長孔により構成されている。そして、処理用ガス供給用貫通孔12およびガス排出用貫通孔13は、例えば紫外線出射ランプ25の配列方向に互いに離間した位置に形成されている。ここに、被処理物Wは、処理ステージ10の被処理物載置面11上において、ランプの配列方向における、処理用ガス供給用貫通孔12とガス排出用貫通孔13との間の位置に配置される。
処理室S2内に供給される処理用ガスの酸素濃度は、例えば50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。これにより、真空紫外線により生成されるオゾンおよび活性酸素の量を多くすることができて所期の処理を確実に行うことができる。
【0029】
而して、この光照射装置においては、光透過性窓部材30が被処理物押さえ用スペーサを介して被処理物Wに対して押圧状態で配置されて、光透過性窓部材30の光出射側の表面と被処理物Wの表面Waとの間の距離hが一定の大きさとされた間隙が形成されている。具体的には、光透過性窓部材30は、一定の大きさの厚みを有する平板状の基体部31と、この基体部31の光出射側の表面(以下、「光出射面」という。)32に一体に設けられた複数の突部35とにより構成されている。そして、光透過性窓部材30の各々の突部35の先端面が被処理物Wの被処理面Waに押圧状態で当接されて配置され、従って、各々の突部35は、基体部31の光出射面32と被処理物Wの被処理面Waとの間の距離hを一定の大きさとする被処理物押さえ用スペーサとして機能する。ここに、基体部31の光出射面32と被処理物Wの被処理面Waとの間の距離hは、例えば1mm以下とされることが好ましく、特に0.5mm以下とされることが好ましい。これにより、オゾンおよび活性酸素を安定して生成することができると共に被処理物Wの被処理面Waに到達する真空紫外線を十分な大きさの強度(光量)とすることができる。
【0030】
各突部35は、例えば、互いに同一の高さを有する円柱状であって、基体部31の光出射面32上において散点状に存在する状態で、設けられている。
突部35は、各突部35の先端面の面積の合計が基体部31の光出射面32の面積の20%以下の大きさとなるよう設けられていることが好ましい。また、各突部35の先端面の面積は、先端面の合計面積の20%以下の大きさとされていることが好ましい。このような構成とされていることにより、突部35による真空紫外線の遮光や処理用ガスの流通の阻害の程度を小さく抑制することができる。
【0031】
突部35の形成パターンは、特に限定されるものではないが、例えば、複数の突部35が所定の大きさのピッチ(中心間距離)で格子状に配置された構成とすることができる。また、例えば、被処理物Wが光源ユニット20による光照射領域内において処理する必要のない非処理領域を有するものである場合には、当該非処理領域に対応する領域に多数の突部35が位置されるよう偏在した状態とされていてもよい。また、被処理物Wの被処理面Wa上に処理用ガスを流通させるために、処理用ガス供給用貫通孔12からガス排出用貫通孔13に連通する突部35間の間隙が形成されるよう、複数の突部35が配置された構成とされることが好ましい。
【0032】
突部35の高さは、上述したように、基体部31の光出射面32と被処理物Wの被処理面Waとの間の距離hの大きさとの関係において、例えば1mm以下、特に0.5mm以下とされることが好ましい。
【0033】
以上において、光透過性窓部材30の基体部31を構成する材料としては、上述したように、紫外線出射ランプ25から放射される真空紫外線について透過性を有し、真空紫外線およびオゾンに対する耐性を有するものであればよく、例えば石英ガラスを用いることができる。
また、突部35が基体部31と別部材により構成される場合において、突部35を構成する材料としては、真空紫外線やオゾンへの耐性があれば種々の材料を用いることできるが、突部35の存在によって真空紫外光が遮光されることを抑制することができる点で、真空紫外線について光透過性を有する例えば石英ガラスを用いることが好ましい。
【0034】
この光透過性窓部材30は、例えばフォトリソグラフィー法により作製することができる。具体的には、平板状の光透過窓形成材料の一面をマスクした状態で、例えばフッ化水素水によってエッチングすることにより突部35を形成し、以て、
図1に示す光透過性窓部材30を得ることができる。
また、平板状の光透過窓形成材料の一面における突部形成箇所をマスクして、サンドブラスト処理や研削加工によって当該一面を削ることにより突部35を形成し、これにより
図1に示す光透過性窓部材30を作製することもできる。さらにまた、例えば石英ガラスよりなる平板状の光透過窓形成材料の一面上に例えばガラスビーズなどを配置し、例えば電気炉で加熱することによりガラスビーズを溶着させて突部35を形成することにより、
図1に示す光透過性窓部材30を作製することができる。
【0035】
本発明の光照射装置においては、動作時において、光透過性窓部材30の紫外線出射ランプ25側の雰囲気の圧力を、被処理物W側の雰囲気の圧力より高い状態に維持する圧力調整機構を備えた構成とされていることが好ましい。
【0036】
圧力調整機構は、ランプ収容室S1内の圧力が処理室S2内の圧力より高い状態が維持されるよう、不活性ガスパージ手段による不活性ガスの供給量および処理用ガス供給手段による処理用ガスの供給量を調整する機能を有する。ランプ収容室S1内の圧力が処理室S2内の圧力より高い状態とされることにより、当該圧力差によって、光透過性窓部材30の突部35を確実に被処理物Wの被処理面Waに対して押圧状態で当接させることができる。一方、処理室S2内の圧力がランプ収容室S1内の圧力より高い状態となるよう処理用ガスが供給された場合には、当該圧力差によって、光透過性窓部材30を被処理物Wより離間させる方向に力が作用するため、光透過性窓部材30の突部35を被処理物Wの被処理面Waに対して押圧状態で当接させることができないことがある。
【0037】
処理用ガスの供給による処理室S2内の圧力(ゲージ圧)は、例えば300Pa以上とされることが好ましい。また、不活性ガスのパージによるランプ収容室S1内の圧力(ゲージ圧)は、例えば400pa以上とされることが好ましい。そして、ランプ収容室S1内と処理室S2内との圧力差は、例えば100Pa以上とされることが好ましい。
【0038】
また、本発明の光照射装置においては、処理ステージ10に、被処理物Wを加熱する加熱手段(図示せず)が設けられた構成とされていることが好ましい。このような構成によれば、被処理物Wの被処理面Waの温度が上昇されることに伴ってオゾンおよび活性酸素による作用を促進させることができるので、効率よく処理を行うことができる。また、処理用ガスを昇温させた状態で処理室S2内に供給することができるので、処理用ガスが被処理物Wの被処理面Waに沿って流通されることによっても被処理物Wの被処理面Waの温度を上昇させることができて上記効果を一層確実に得ることができる。
加熱手段による加熱条件は、被処理物Wの被処理面Waの温度が、例えば80℃以上、340℃以下となる条件であることが好ましく、より好ましくは、80℃以上、200℃以下となる条件である。
【0039】
この光照射装置においては、被処理物Wを処理ステージ10の被処理物載置面11上における処理用ガス供給用貫通孔12とガス排出用貫通孔13との間の位置に載置した状態において、処理ステージ10上に、光源ユニット20をスペーサ部材15およびシール部材16を介して配置する。これにより、光透過性窓部材30の突部35がそれぞれ被処理物Wの被処理面Waに押圧状態で当接され、被処理物Wの被処理面Waと光透過性窓部材30の基体部31の光出射面32との間の距離hが一定の大きさとされる。この状態において、圧力調整機構によって、供給量が適正に制御された不活性ガスがランプ収容室S1内にパージされると共に、供給量が適正に制御された処理用ガスが処理ステージ10の処理用ガス供給用貫通孔12を流通される過程において加熱手段によって昇温されて処理室S2内に供給される。これにより、ランプ収容室S1内の圧力が処理室S2内の圧力より高い状態に維持される。ここに、光透過性窓部材30の被処理物Wに対する押圧力は、例えば1000N/m
2程度である。処理室S2内に供給された処理用ガスは、光透過性窓部材30の突部35によって光透過性窓部材30の基体部31の光出射面32と被処理物Wの被処理面Waとの間に形成されるギャップに当該光出射面32および被処理面Waに沿って流通される。
そして、各紫外線出射ランプ25が点灯されることにより、当該紫外線出射ランプ25からの真空紫外線が光透過性窓部材30を介して被処理物Wに向かって照射される。これにより、被処理物Wの被処理面Waに到達する真空紫外線、および、真空紫外線により生成されるオゾンおよび活性酸素によって、被処理物Wの被処理面Waの処理が行われる。
【0040】
而して、上記の光照射装置においては、光透過性窓部材30における各突部35は、その先端面が被処理物Wの被処理面Waに対して押圧状態で当接されている。従って、上記構成の光照射装置によれば、被処理物W自体の有する湾曲等の変形が矯正され、これにより、光透過性窓部材30の基体部31の光出射面32と被処理物Wの被処理面Waとの間の距離hが被処理物Wの被処理面Waの全域にわたって一定の大きさとされた状態で処理を行うことができる。従って、被処理物Wの被処理面Waに照射される真空紫外線の強度を実質的に均一にすることができると共に真空紫外線により生成されるオゾンの濃度を実質的に均一にすることができ、その結果、被処理物Wを均一に処理することができる。
【0041】
また、光透過性窓部材30の突部35によって光透過性窓部材30の基体部31の光出射面32と被処理物Wの被処理面Waとの間に形成されるギャップに、処理用ガスを流通させる構成とされていることにより、被処理物Wの被処理面Wa上における酸素濃度を略一定にすることができるので、オゾンおよび活性酸素を安定して生成することができて被処理物Wの処理を安定して行うことができる。
【0042】
さらにまた、圧力調整機構によって、ランプ収容室S1内の圧力が処理室S2内の圧力より高い状態に維持されることにより、光透過性窓部材30の自重による押圧力に加えて、当該圧力差による押圧力によって被処理物Wが押圧されて被処理物Wの変形が矯正されるので、上記効果を一層確実に得ることができる。
【0043】
以上、本発明の光照射装置の実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、種々の変更を加えることが可能である。
【0044】
例えば、
図1に示す光照射装置は、いわゆる一括照射タイプのものとして構成されているが、
図2に示すように、スキャンタイプのものとして構成されていてもよい。
この光照射装置は、被処理物Wを保持する保持装置40と、紫外線出射ランプ25aを備えた光源ユニット20aと、光源ユニット20aおよび保持装置40の一方を他方に対して相対的に水平方向に移動させる駆動手段(図示せず)とを備えている。この例においては、例えば保持装置40が駆動手段によって光源ユニット20aに対して水平方向に移動される構成とされている。保持装置40の移動方向を白抜きの矢印で示してある。
【0045】
保持装置40は、平坦な被処理物載置面11を有する処理ステージ10に、上方に開口する開口部を有する処理室S2を画成する光透過窓保持枠41が着脱自在に取り付けられ、さらに、光透過窓を構成する光透過性窓部材30が光透過窓保持枠41の開口部を気密に塞ぐ状態で設けられて構成されている。処理ステージ10には、処理室S2内に所定の酸素濃度の処理用ガスを供給する処理用ガス供給用貫通孔12およびガス排出用貫通孔13が保持装置40の移動方向(搬送方向)に互いに離間した位置に形成されている。ここに、被処理物Wは、処理用ガス供給用貫通孔12とガス排出用貫通孔13の間の位置に配置される。
光透過性窓部材30は、例えば
図1に示す光照射装置のものと同一の構成を有するものが用いられており、具体的な説明を省略する。
【0046】
光源ユニット20aは、一方(図示の例では下方)が開口するケーシング21aと、このケーシング21a内において、ランプ中心軸が水平に延びる姿勢で配置された紫外線出射ランプ25aとを備えている。ケーシング21aには、ケーシング21a内に不活性ガス(例えば窒素ガス)を流通させるためのガス流路管22が設けられている。
このようなスキャンタイプの光照射装置においては、高い出力を得るために、紫外線出射ランプ25aとして、例えば特定方向に光を照射する角型のエキシマランプを用いることが望ましい。
【0047】
この光照射装置においては、保持装置40の移動速度を調整することにより、真空紫外線の被処理物Wに対する照射露光量を適正化することができる。
【0048】
このようなスキャンタイプの光照射装置においては、複数の保持装置(処理ステージ)を備えた構成とすることができる。このような構成のものにおいては、一の保持装置によって保持された被処理物について光源ユニットによる真空紫外線の照射処理を行う前に、予め、別工程で、他の保持装置において被処理物の取り付けや処理用ガスの供給を行うことができるので、複数の被処理物について連続的な紫外線照射処理が可能になり、生産性を向上させることができる。
【0049】
また、本発明の光照射装置において、光透過窓は、
図1および
図2に示す構成のものに限定されない。
例えば、光透過性窓部材における突部は、先端に向かうに従って突部の高さ方向に垂直な切断面による断面積が小さくなる形状を有する構成とすることができる。具体的には、
図3(a)に示すように、光透過性窓部材30aにおける突部35aが球状または半球状とされた構成、あるいは、
図3(b)に示すように、光透過性窓部材30bにおける突部35bが錐状(例えば円錐状)とされた構成とされていてもよい。このような構成の突部35a,35bにおいては、突部35a,35bの先端部が被処理物Wの被処理面Waに実質上点接触されるので、突部35a,35bと被処理物Wとの接触面積を小さくすることができ、被処理面Waにおける真空紫外線およびオゾン等によって処理可能な領域(有効処理領域)を大きくすることができる。
【0050】
さらにまた、光透過窓は全体が平板状の光透過性窓部材により構成されている必要はなく、例えば
図4に示すように、全体が弧状に湾曲した形態を有する構成とされていてもよい。この光透過性窓部材30cは、厚みtが一定の大きさとされた弧状に湾曲する基体部31aの凸側の表面(光出射面)32に、被処理物Wの被処理面Waに押圧状態で当接される複数の突部35が設けられて構成されている。この光透過性窓部材30cは、
図4において破線で示すように、被処理物Wに当接された状態において平板状の形態をなす。
このような光透過性窓部材30cは、平面状の基体部の表面に突部を形成した光透過窓形成材料を、例えば上方に凸となるカーボンの型に載置し、所定の加熱条件で加熱処理を行うことにより得ることができる。
【0051】
このような構成の光透過性窓部材30cによれば、被処理物W側に向かって凸となる湾曲した形態を有することにより、被処理物Wを強い力で押さえつけることができる。すなわち、例えば平板状の光透過性窓部材を被処理物Wに押し付けると、両者は密着した状態となるが、被処理物Wと光透過性窓部材との間に処理用ガスが供給されることにより光透過性窓部材には処理用ガスの圧力がかかる。処理用ガスの圧力が、光透過性窓部材のランプ側の雰囲気(ランプ収容室内)の圧力と同等またはそれ以上の大きさである場合には、光透過性窓部材は、通常、その周縁部が固定されて設けられているので、当該光透過性窓部材の中央部がランプ側に凸となる形態となる。このため、光透過性窓部材による被処理物を押さえつけるという効果が低下または得られなくなってしまう。然るに、光透過性窓部材30cが、被処理物W側に向かって凸となる湾曲した形態を有することにより、処理用ガスの供給によって作用するガス圧に抵抗できるだけの押圧力を光透過性窓部材30c自体が有しているので、被処理物Wを確実に押さえつけることができる。従って、このような構成の光透過性窓部材30cによれば、上記効果を確実に得ることができる。
【0052】
さらにまた、光透過窓と被処理物との間に介在される被処理物押さえ用スペーサは、光透過窓の一部により構成されることは必須ではなく、上述したように、例えば光透過窓と別部材により構成されていてもよい。
【0053】
図5は、本発明の光照射装置のさらに他の例における保持装置の構成を概略的に示す断面図であって、(a)処理用ガスの流通方向に沿った平面で切断した鉛直方向断面図、(b)処理用ガスの流通方向に直交する平面で切断した鉛直方向断面図である。
この光照射装置における保持装置40aにおいては、処理ステージ10a上に配置された被処理物Wの表面(被処理面)Wa上に、被処理物押さえ用スペーサを構成する複数本の線材70が互いに重なることなく配置されており、光透過窓を構成する平板状の光透過性窓部材45が線材70を介して被処理物Wに対して押圧状態で配置されている。従って、各々の線材70によって、光透過性窓部材45の光出射面46と被処理物Wの被処理面Waとの間の距離hが一定の大きさとされている。各々の線材70は、両端部が光透過性窓部材45と光透過窓保持枠41aとによって挟持されて保持されており、この例では、各々の線材70は互いに離間した位置において処理用ガスの流通方向(
図5(a)において左右方向)に沿って平行に延びるよう配置されている。
図5(a)、(b)において、42は窓固定部材、43は基台である。
【0054】
各々の線材70は、例えば金属製のワイヤーにより構成することができる。
線材70の線径は、上述したように、光透過性窓部材45の光出射面46と被処理物Wの被処理面Waとの間の距離hの大きさとの関係において、例えばφ1mm以下、特にφ0.5mm以下であることが好ましい。
【0055】
以上において、被処理物押さえ用スペーサを線材により構成する場合においては、線材の保持方法は、特に限定されるものではなく、例えば
図6(a)、(b)に示すように、複数本の線材70が共通の線材保持部材75によって保持された構造体を構成し、当該構造体を保持するようにしてもよい。この例における線材保持部材75は、上下方向に開口する枠体76における、互いに対向する一対の周壁の他方の開口縁部に、外方に突出するフランジ部77が形成されてなるものであって、枠体76の一方の開口部に複数の線材70が張設されている。そして、線材保持部材75のフランジ部77が基台43と光透過窓保持枠41aとによって挟持されて固定されており、これにより、光透過窓を構成する平板状の光透過性窓部材45が線材70を介して被処理物Wに対して押圧状態で配置されている。
【0056】
また、線材70は、直線状に延びるよう張設されている必要はなく、処理用ガスの流通を阻害しないよう、同一平面内において例えば湾曲していてもよい。また、線材70の本数についても特に限定されない。
【0057】
図7は、参考例に係る光照射装置の一例における保持装置の構成を概略的に示す、(a)一部を省略して示す斜視図、(b)(a)におけるA−A線断面図である。この被処理物押さえ用スペーサは
、平板片により構成されて
いる。この例においては、処理用ステージ10aの四周にワーク押さえ部材80a,80bが配置されている。各々のワーク押さえ部材80a,80bは、処理ステージ10aの周側面に対接されて位置される垂直板片81と、被処理物Wの表面(被処理面)Waの周縁部に係止される水平板片82とを有する「L」字型のものである。
各々のワーク押さえ部材80a,80bにおける水平板片82の厚みは、上述したように、光透過性窓部材45の光出射面46と被処理物Wの被処理面Waとの間の距離hの大きさとの関係において、例えばφ1mm以下、特にφ0.5mm以下であることが好ましい。
【0058】
そして、処理用ガスの流通方向に位置される互いに対向する一対のワーク押さえ部材80aには、水平板片82に、処理用ガス流通用の複数の切り欠き部83が互いに離間して形成されており、これにより、舌片状の押さえ部84が櫛の歯状に形成されている。各々のワーク押さえ部材80a,80bは、平板状の光透過性窓部材45が被処理物Wに対して押圧状態で配置されることにより、水平板片82が光透過性窓部材45と処理用ステージ10aとによって挟持されて保持される。従って、ワーク押さえ部材80a,80bにおける水平板片82が被処理物押さえ用スペーサとして機能し、光透過性窓部材45の光出射面46と被処理物Wの被処理面Waとの間の距離が一定の大きさとされた間隙が形成されている。
【0059】
このように、被処理物押さえ用スペーサが線材
によって構成されている場合においても、被処理物W自体の有する湾曲等の変形を矯正することができるので、上記効果を得ることができる。
【0060】
さらにまた、本発明の光照射装置においては、被処理物の交換の際には、光透過窓と被処理物とを離間させることが必要とされることから、例えば、
図1に示す光照射装置において、光源ユニット20および処理ステージ10の一方を他方に対して相対的に鉛直方向に駆動可能な駆動手段をさらに備えた構成とすることができる。このような構成のものによれば、被処理物Wの交換を容易に行うことができると共に、駆動手段によって、光透過性窓部材30における突部35を確実に被処理物Wの被処理面Waに押圧状態で当接させることができて光透過性窓部材30の基体部31の光出射面32と被処理物Wの被処理面Waとの距離(ギャップの厚み)を確実に一定の大きさとすることができる。
【0061】
以下、本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。
<実験例1>
図1に示す構成を参照して、下記の仕様を有する本発明に係る光照射装置を作製した。[処理ステージ(10)]
寸法:650×650mm、厚さ20mm
材質:アルミニウム
〔加熱手段〕
被処理物の被処理面の温度が150℃となる加熱条件で動作する抵抗発熱ヒータ
[光源ユニット(20)]
紫外線出射ランプ(25):発光長が700mm、外径がφ40であるキセノンエキシマランプ
紫外線出射ランプの数:5本
入力電力:500W
〔光透過性窓部材(30)〕
基体部の寸法:550×550mm、厚さ7mm
基体部の材質:石英ガラス
突部の寸法:φ0.3mm、高さ0.2mm(円柱状)
突部の形成パターン:正方格子状、ピッチ50mm
突部の材質:石英ガラス
光透過性窓部材の基体部の光出射面と処理ステージの被処理物載面との間の距離:0.4mm(計算上の、光透過性窓部材の基体部の光出射面と被処理物の被処理面との間の距離:0.2mm)
光透過性窓部材の被処理物に対する押圧力:約1000N/m
2
〔処理用ガス供給手段〕
処理用ガス:酸素濃度100%
処理用ガスの供給量:10リットル/min
処理室内の圧力(ゲージ圧):300Pa
〔不活性ガス供給手段〕
不活性ガス:窒素ガス
不活性ガスの供給量:約100リットル/min
ランプ収容室内の圧力(ゲージ圧):400Pa
【0062】
そして、被処理物としては、厚みが0.1mmの銅箔上に、厚みが0.1mmの絶縁層が形成されてなるプリント基板材料(厚み0.2mm)に、複数のビアホールが形成されてなるものを用いた。このプリント基板材料の寸法は、500mm×500mmであり、ビアホールの孔径はφ0.05mmである。
【0063】
上記の光照射装置を用い、真空紫外線を30分間照射することによりプリント基板材料のデスミア処理を行ったところ、ビアホールの上部、側壁あるいは底部に付着していたスミアをすべて除去することができることが確認された。
【0064】
<比較実験例1>
図8に示す構成を参照して、光透過窓として、突部を有さない平板状の光透過性窓部材を用いたことの他は、実験例1において作製した光照射装置と同一の構成を有する比較用の光照射装置を作製した。
この比較用の光照射装置においては、光透過性窓部材の光出射面と処理ステージの被処理物載面との間の距離を2.2mm(計算上、光透過性窓部材の光出射面とプリント基板材料の被処理面との間の距離が0.2mm)とした。
【0065】
この比較用の光照射装置を用い、実験例1と同様の方法により、プリント基板材料のデスミア処理を行ったところ、一部のビアホールの底部にスミアが残っていることが確認された。この理由は、実際上は、プリント基板材料はうねり等を有しているため、被処理面の全域にわたって、光透過性窓部材の光出射面とプリント基板材料の被処理面との間の距離(ギャップ)を一定にすることができず、均一な処理を行うことができなかったためであると考えられる。実際に、プリント基板材料のうねりの凹部分に位置されるビアホールにスミアが残存しており、当該領域におけるギャップの大きさが他の領域におけるギャップより大きいことによって真空紫外線およびオゾン(あるいは活性酸素)の作用が十分にえられなかったものと推測される。