【実施例1】
【0011】
まず、実施例1の電動車両における構成を、「電動車両の基本構成」、「駆動系冷却回路の構成」、「室内空調用回路の構成」、「連結回路の構成」、「変速機用熱交換部の構成」、「変速機の暖機制御系の構成」、「変速機の暖機処理」、「変速機の冷却処理」、「変速機の充電時暖機処理」に分けて説明する。
【0012】
[電動車両の基本構成]
図1は、実施例1の電動車両を示すシステムブロック図である。以下、
図1に基づいて、実施例1の電動車両の基本構成を説明する。
【0013】
図1に示すハイブリッド車両(電動車両)1の駆動系は、エンジンEngと、第1クラッチCL1と、モータ/ジェネレータ(モータ)MGと、自動変速機(変速機)ATと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左前輪FLと、右前輪FRと、を有する。
【0014】
前記エンジンEngは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、エンジン制御指令に基づいて、エンジン始動制御やエンジン停止制御やスロットルバルブのバルブ開度制御やフューエルカット制御等が行われる。なお、エンジン出力軸には、第1クラッチCL1を介してモータ/ジェネレータMGが接続されている。
【0015】
前記第1クラッチCL1は、前記エンジンEngと前記モータ/ジェネレータMGの間に介装されたクラッチであり、図示しない油圧ユニットにより作り出された第1クラッチ制御油圧により、締結・スリップ締結(半クラッチ状態)・開放が制御される。
【0016】
前記モータ/ジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータであり、インバータINVにより作り出された三相交流を印加することにより駆動を制御される。このモータ/ジェネレータMGは、バッテリBATからの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできる(以下、この動作状態を「力行」と呼ぶ)し、ロータがエンジンEngや駆動輪である左右前輪FL,FRから回転エネルギを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、バッテリBATを充電することもできる(以下、この動作状態を「回生」と呼ぶ)。なお、このモータ/ジェネレータMGのロータは、ダンパを介して自動変速機ATの変速機入力軸に連結されている。また、バッテリBATの充電残量SOCは、インバータINVに設けられたSOC監視部B1により常時監視されている。
【0017】
前記自動変速機ATは、例えば、前進7速/後退1速等の有段階の変速段を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り換える有段変速機である。この自動変速機ATの出力軸は、図示しないプロペラシャフト、ディファレンシャル、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右前輪FL,FRに連結されている。
なお、このハイブリッド車両1では、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、トルク伝達経路に配置される最適なクラッチやブレーキを選択し、モータ/ジェネレータMGと左右前輪FL,FRとの間を適宜締結・スリップ締結・開放する第2クラッチとしている。
【0018】
そして、実施例1のハイブリッド車両1の駆動系は、電気車両走行モード(以下、「EVモード」という。)と、ハイブリッド車走行モード(以下、「HEVモード」という。)と、駆動トルクコントロール走行モード(以下、「WSCモード」という。)等の走行モードを有する。なお、この走行モードの設定は、アクセル開度と車速によって決まる運転点と、図示しない走行モードマップとに基づいて演算される。
【0019】
ここで、「EVモード」は、第1クラッチCL1を開放状態とし、モータ/ジェネレータMGの動力のみで走行するモードである。「HEVモード」は、第1クラッチCL1を締結状態とし、モータアシスト走行モード・走行発電モード・エンジン走行モードの何れかにより走行するモードである。「WSCモード」は、「HEVモード」からのP,N→Dセレクト発進時、あるいは、「EVモード」や「HEVモード」からのDレンジ発進時、モータ/ジェネレータMGの回転数制御により自動変速機AT内に設定した第2クラッチをスリップ締結状態に維持し、第2クラッチを経過するクラッチ伝達トルクが、車両状態や運転者操作に応じて決まる要求駆動トルクとなるようにクラッチトルク容量をコントロールしながら発進するモードである。なお、「WSC」とは「Wet Start Clutch」の略である。
【0020】
さらに、実施例1のハイブリッド車両1は、駆動系冷却回路2と、室内空調用回路3と、連結回路4と、変速機用熱交換部(熱交換部)5と、変速機暖機コントローラ(暖機制御手段)(
図2参照)6と、充電手段CHAと、を備える。
前記充電手段CHAは、急速充電器や商用電源等の外部電源7に接続されたパドル7aを接続するためのコネクタと、コネクタを経由して供給された外部電源7からの交流電力を直流に変換してバッテリBATへ出力する充電器と、を有する。
すなわち、この充電手段CHAは、外部電力を用いてバッテリBATへ充電可能とするものである。
【0021】
[駆動系冷却回路の構成]
次に、
図1に基づいて、実施例1のハイブリッド車両1における駆動系冷却回路の構成を説明する。
【0022】
図1に示す駆動系冷却回路2は、ハイブリッド車両1に搭載されたエンジンEng、モータ/ジェネレータMG、インバータINVの冷却を行う冷却回路である。前記駆動系冷却回路2は、エンジン冷却回路21と、モータ冷却回路22と、を有する。
【0023】
前記エンジン冷却回路21は、冷媒である冷却水23が循環する冷却水経路24と、空冷により冷却水23を冷却する第1ラジエータ25と、を備える。ここで、冷却水経路24は、一部がエンジンEngと接触して熱交換可能に設置されている。なお、冷却水23は、ここでは、LLC(Long Life Coolant)と呼ばれる不凍液である。
【0024】
前記モータ冷却回路22は、冷媒(熱媒体)26が循環するモータ用冷媒経路27と、外気との熱交換により冷媒26の熱を放出させる第2ラジエータ28と、を備える。
ここで、モータ用冷媒経路27は、一部がモータ/ジェネレータMG及びインバータINVと接触して熱交換可能に設置されている。なお、冷媒26は、ここでは、LLC(Long Life Coolant)と呼ばれる不凍液である。
また、第2ラジエータ28は、第1ラジエータ25の車両前方側に設置されている。そして、第1ラジエータ25の車両後方側にはファンF1が設けられている。
【0025】
[室内空調用回路の構成]
次に、
図1に基づいて、実施例1のハイブリッド車両1における室内空調用回路の構成を説明する。
【0026】
図1に示す室内空調用回路3は、ハイブリッド車両1の車室R内の空調(暖房)を行う暖房回路である。前記室内空調用回路3は、空調用冷媒経路31と、電動ウォータポンプ32と、電気ヒータ33と、冷媒温度検出センサ34と、暖房用熱交換器35と、を備える。
【0027】
前記空調用冷媒経路31は、冷媒(熱媒体)26が循環する冷媒経路である。この空調用冷媒経路31の一部は、変速機用熱交換部5において自動変速機ATの作動油ATFとの間で熱交換可能とされている。さらに、この空調用冷媒経路31は、変速機用熱交換部5を迂回するバイパス経路31aを有する。
このバイパス経路31aは、変速機用熱交換部5の上流側に設けられたバイパス切替バルブ31bにより開閉される。つまり、バイパス切替バルブ31bは、このバイパス切替バルブ31bの上流側の空調用冷媒経路31と変速機用熱交換部5とが連通する状態と、バイパス切替バルブ31bの上流側の空調用冷媒経路31とバイパス経路31aとが連通する状態とを適宜切り替える。
【0028】
前記電動ウォータポンプ32は、空調用冷媒経路31を流れる冷媒26を電気ヒータ33に向けて圧送する。
【0029】
前記電気ヒータ33は、電動ウォータポンプ32の下流側で、冷媒26を加熱する。前記冷媒温度検出センサ34は、電気ヒータ33の下流側で、冷媒26の温度を検出する。
【0030】
前記暖房用熱交換器35は、冷媒温度検出センサ34の下流側で、車室R内空気との熱交換により冷媒26の熱を放出させる。なお、この暖房用熱交換器35の車室R外方側には、暖房ファンF2が設けられている。
【0031】
[連結回路の構成]
次に、
図1に基づいて、実施例1のハイブリッド車両1における連結回路の構成を説明する。
【0032】
図1に示す連結回路4は、駆動系冷却回路2のモータ冷却回路22と、室内空調用回路3とを連結する連結回路である。この連結回路4は、第1連結回路41と、第2連結回路42と、を備える。
【0033】
前記第1連結回路41は、一端が開閉バルブ43Aを介してモータ冷却回路22のモータ用冷媒経路27に接続し、他端が開閉バルブ43Bを介して室内空調用回路3の空調用冷媒経路31に接続する。そして、開閉バルブ43A,43Bが開くと、第1連結回路41内を、室内空調用回路3からモータ冷却回路22へ向かって冷媒26が流れる。
ここで、第1連結回路41の一端は、インバータINVの下流側であって、第2ラジエータ28の上流側に接続する。また、この第1連結回路41の他端は、暖房用熱交換器35の下流側であって、バイパス切替バルブ31bの上流側に接続する。
【0034】
前記第2連結回路42は、一端が開閉バルブ43Cを介してモータ冷却回路22のモータ用冷媒経路27に接続し、他端が開閉バルブ43Dを介して室内空調用回路3の空調用冷媒経路31に接続する。そして、開閉バルブ43C,43Dが開くと、第2連結回路42内を、モータ冷却回路22から室内空調用回路3へ向かって冷媒26が流れる。
ここで、第2連結回路42の一端は、第2ラジエータ28の下流側であって、モータ/ジェネレータMGの上流側に接続する。また、この第2連結回路42の他端は、バイパス経路31aの流出口31cの下流側であって、電動ウォータポンプ32の上流側に接続する。
【0035】
前記開閉バルブ43A〜43Dは、一斉に開閉制御されるバルブである。連結回路4は、この開閉バルブ43A〜43Dにより開閉される。
【0036】
[変速機用熱交換部の構成]
次に、
図1に基づいて、実施例1のハイブリッド車両1における変速機用熱交換部(熱交換器)の構成を説明する。
【0037】
図1に示す変速機用熱交換部5は、自動変速機ATの作動油流路51を流れる作動油ATFと、室内空調用回路3を流れる冷媒26との間で熱交換を行う熱交換器である。なお、作動油流路51にはオイルポンプ52が設けられており、このオイルポンプ52は、作動油流路51内で作動油ATFを圧送し、作動油ATFを循環させる。
【0038】
前記変速機用熱交換部5は、自動変速機ATに設けられ、オイル側熱交換部53と、冷媒側熱交換部54と、油温検出センサ(作動油温検出手段)55と、を備える。
前記オイル側熱交換部53は、作動油流路51の一部であり、オイルポンプ52の下流側に設けられている。
前記冷媒側熱交換部54は、空調用冷媒経路31の一部であり、バイパス切替バルブ31bと流出口31cの間に位置し、バイパス経路31aと平行に設けられている。
ここで、オイル側熱交換部53と冷媒側熱交換部54は、作動油ATFと冷媒26の間で熱交換可能に接触する。
前記油温検出センサ55は、オイル側熱交換部53の下流側で、作動油ATFの温度を検出する。
【0039】
[変速機の暖機制御系の構成]
図2は、実施例1の電動車両における変速機の暖機制御系を示すブロック図である。以下、
図2に基づいて、実施例1の電動車両の変速機の暖機制御系を説明する。
【0040】
図2に示すハイブリッド車両(電動車両)1の制御系は、変速機暖機コントローラ6を有する。
【0041】
前記変速機暖機コントローラ6は、冷媒温度検出センサ34からの冷媒26の温度情報と、油温検出センサ55からの作動油ATFの温度情報と、SOC監視部B1からの充電残量SOC情報と、が入力される。そして、バイパス切替バルブ31bに切替信号を出力し、開閉バルブ43A〜43Dに一斉に開閉信号を出力し、電気ヒータ33、電動ウォータポンプ32、オイルポンプ52にON/OFF制御信号を出力する。
なお、上記各情報の入力タイミング及び各信号の出力タイミングについては、以下に説明する各制御処理に基づいて実行される。
【0042】
[変速機の暖機処理]
図3は、実施例1の電動車両による変速機の暖機処理の流れを示すフローチャートである。
以下、
図3に示すフローチャートで、実施例1の変速機暖機コントローラ6にて実行される自動変速機ATの暖機処理の流れを説明する。
なお、この自動変速機ATの暖機処理を実行する場合には、開閉バルブ43A〜43Dはすべて閉制御されており、駆動系冷却回路2のモータ冷却回路22と、室内空調用回路3とは切り離されている。
【0043】
ステップS1では、ハイブリッド車両1がEVモードにて走行中であるか否かを判断し、YES(EV走行中)の場合はステップS2へ移行し、NO(EV以外で走行中)の場合はステップS1を繰り返す。
ここで、EVモードにて走行中であるか否かの判断は、アクセル開度と車速にて設定される運転点と、予め設定された走行モードマップ(図示せず)とに基づいて行う。
【0044】
ステップS2では、ステップS1でのEV走行中との判断に続き、暖房要求があるか否かを判断し、YES(暖房要求あり)の場合はステップS3へ移行し、NO(暖房要求なし)の場合はステップS11へ移行する。
【0045】
ステップS3では、ステップS2での暖房要求ありとの判断に続き、室内空調用回路3に設けた電動ウォータポンプ32をON制御すると共に、冷媒温度検出センサ34により空調用冷媒経路31を流れる冷媒26の温度(以下、冷媒温といいう)を検出し、ステップS4へ移行する。
ここで、電動ウォータポンプ32がON制御されることで、空調用冷媒経路31内を冷媒26が循環する。
【0046】
ステップS4では、ステップS3での冷媒温検出に続き、室内空調用回路3に設けた電気ヒータ33をON制御し、ステップS5へ移行する。
ここで、電気ヒータ33がON制御されることで、空調用冷媒経路31内を循環する冷媒26が加熱される。
【0047】
ステップS5では、ステップS4での電気ヒータ33のON制御に続き、再度冷媒温度検出センサ34により冷媒温を検出し、ステップS6へ移行する。
【0048】
ステップS6では、ステップS5での冷媒温の検出に続き、検出された冷媒温が目標とする冷媒26の温度(以下、目標冷媒温という)を上回ったか否かを判断し、YES(冷媒温>目標冷媒温)の場合はステップS7へ移行し、NO(冷媒温≦目標冷媒温)の場合はステップS10へ移行する。
ここで、「目標冷媒温」は、暖房要求を満たすために設定される冷媒温であり、暖房要求時に設定される目標室内温度に応じて決まる。
【0049】
ステップS7では、ステップS6での冷媒温>目標冷媒温との判断に続き、暖房要求を満たしているとして、油温検出センサ55により作動油流路51を流れる作動油ATFの温度(以下、作動油温という)を検出し、ステップS8へ移行する。
【0050】
ステップS8では、ステップS7での作動油温の検出に続き、検出された作動油温が目標とする作動油ATFの温度(以下、目標作動油温という)未満であるか否かを判断し、YES(作動油温<目標作動油温)の場合はステップS9へ移行し、NO(作動油温≧目標作動油温)の場合は自動変速機ATの暖機が完了したとしてエンドへ移行する。
ここで、「目標作動油温」は、作動油流路51内での作動油ATFの流れが潤滑になる温度であり、自動変速機ATの暖機が完了したと判断する温度である。
【0051】
ステップS9では、ステップS8での作動油温<目標作動油温との判断に続き、自動変速機ATの暖機が完了していないとして、バイパス切替バルブ31bを冷媒側熱交換部54側に切替制御して変速機用熱交換部5の冷媒側熱交換部54に冷媒26を流通させると共に、バイパス経路31aへの冷媒26の流れを遮断し、ステップS7へ戻る。これにより、オイル側熱交換部53を流れる作動油ATFと、冷媒側熱交換部54を流れる冷媒26との間で熱交換が開始される。
【0052】
ステップS10では、ステップS6での冷媒温≦目標冷媒温との判断に続き、暖房要求を満たしていないとして、バイパス切替バルブ31bをバイパス経路31a側に切替制御してバイパス経路31aに冷媒26を流通させると共に、冷媒側熱交換部54への冷媒26の流れを遮断し、ステップS5へ戻る。
このとき、冷媒側熱交換部54への冷媒26の流れが遮断されるために、オイル側熱交換部53を流れる作動油ATFと、冷媒側熱交換部54を流れる冷媒26との間の熱交換は停止する。
【0053】
ステップS11では、ステップS2での暖房要求なしとの判断に続き、油温検出センサ55により作動油温を検出し、ステップS12へ移行する。
【0054】
ステップS12では、ステップS11での作動油温の検出に続き、検出された作動油温が目標作動油温未満であるか否かを判断し、YES(作動油温<目標作動油温)の場合はステップS13へ移行し、NO(作動油温≧目標作動油温)の場合は自動変速機ATの暖機が完了したとしてエンドへ移行する。
【0055】
ステップS13では、ステップS12での作動油温<目標作動油温との判断に続き、自動変速機ATの暖機が完了していないとして、バイパス切替バルブ31bを冷媒側熱交換部54側に切替制御して変速機用熱交換部5の冷媒側熱交換部54に冷媒26を流通させると共に、バイパス経路31aへの冷媒26の流れを遮断し、ステップS14へ移行する。
【0056】
ステップS14では、ステップS13での冷媒側熱交換部54側への切替制御に続き、室内空調用回路3に設けた電動ウォータポンプ32をON制御すると共に、電気ヒータ33をON制御しステップS11へ戻る。
これにより、空調用冷媒経路31内を冷媒26が循環し、この空調用冷媒経路31内を循環する冷媒26が加熱される。そして、オイル側熱交換部53を流れる作動油ATFと、冷媒側熱交換部54を流れる冷媒26との間で熱交換が開始される。
【0057】
[変速機の冷却処理]
図4は、実施例1の電動車両による変速機の冷却処理の流れを示すフローチャートである。
以下、
図4に示すフローチャートで、実施例1の変速機暖機コントローラ6にて実行される自動変速機ATの冷却処理の流れを説明する。
なお、この自動変速機ATの冷却処理を実行する場合には、開閉バルブ43A〜43Dはすべて閉制御されており、駆動系冷却回路2のモータ冷却回路22と、室内空調用回路3とは切り離されている。
【0058】
ステップS20では、油温検出センサ55により作動油温を検出し、ステップS21へ移行する。
【0059】
ステップS21では、ステップS20での作動油温の検出に続き、検出された作動油温が要冷却作動油温を上回っているか否かを判断し、YES(作動油温>要冷却作動油温)の場合はステップS22へ移行し、NO(作動油温≦要冷却作動油温)の場合は作動油温が適正であるとしてエンドへ移行する。
ここで、「要冷却作動油温」とは、作動油ATFが自動変速機ATの使用に適さない程度に高温になる温度である。
【0060】
ステップS22では、ステップS21での作動油温>要冷却作動油温との判断に続き、開閉バルブ43A〜43Dを一斉に開制御してモータ冷却回路22と室内空調用回路3を連結する。さらに、バイパス切替バルブ31bを冷媒側熱交換部54側に切替制御して変速機用熱交換部5の冷媒側熱交換部54に冷媒26を流通させると共に、バイパス経路31aへの冷媒26の流れを遮断し、ステップS20へ戻る。
このとき、第1連結回路41を介して室内空調用回路3からモータ冷却回路22へと冷媒26が流れる。また、第2連結回路42を介してモータ冷却回路22から室内空調用回路3へと冷媒26が流れる。また、オイル側熱交換部53を流れる作動油ATFと、冷媒側熱交換部54を流れる冷媒26との間で熱交換が開始される。
【0061】
[変速機の充電時暖機処理]
図5は、実施例1の電動車両による変速機の充電時暖機処理の流れを示すフローチャートである。
以下、
図5に示すフローチャートで、実施例1の変速機暖機コントローラ6にて実行される自動変速機ATの充電時暖機処理の流れを説明する。
なお、この自動変速機ATの充電時処理を実行する場合には、開閉バルブ43A〜43Dはすべて閉制御されており、駆動系冷却回路2のモータ冷却回路22と、室内空調用回路3とは切り離されている。また、バイパス切替バルブ31bは、冷媒側熱交換部54側に切替制御されている。
【0062】
ステップS30では、ハイブリッド車両1が充電中であるか否かを判断し、YES(充電中)の場合はステップS31へ進み、NO(非充電中)の場合はステップS30を繰り返す。
ここで、充電中であるか否かの判断は、充電手段CHAを介して外部電源7からバッテリBATへと電力供給がなされているか否かにより行う。
【0063】
ステップS31では、ステップS30での充電中との判断に続き、タイマー空調が設定されているか否かを判断し、YES(設定あり)の場合はステップS32へ進み、NO(設定なし)の場合はステップS34へ移行する。
ここで、「タイマー空調」とは、所定時間後に空調をON制御して車室R内の空調を開始し、所定時間後に空調をOFF制御して空調を停止させることである。
【0064】
ステップS32では、ステップS31でのタイマー空調設定ありとの判断に続き、油温検出センサ55により作動油温を検出し、ステップS33へ移行する。
【0065】
ステップS33では、ステップS32での作動油温の検出に続き、検出された作動油温と目標作動油温との差であるΔ作動油温と、タイマー空調の終了時間とから、自動変速機ATの暖機に必要な時間(以下、暖機必要時間という)を算出し、ステップS36へ移行する。
ここで、「タイマー空調の終了時間」とは、タイマー空調の設定時に予め設定される時間であり、充電が終了する時間である。
【0066】
ステップS34では、ステップS31でのタイマー空調設定なしとの判断に続き、油温検出センサ55により作動油温を検出すると共に、バッテリBATの充電残量SOCを検出し、ステップS35へ移行する。
【0067】
ステップS35では、ステップS32での作動油温及び充電残量SOCの検出に続き、検出された作動油温と目標作動油温との差であるΔ作動油温と、満充電時間とから、自動変速機ATの暖機に必要な時間(以下、暖機必要時間という)を算出し、ステップS36へ移行する。
ここで、「満充電時間」とは、充電残量SOCに基づいて設定される時間であり、バッテリBATが満充電になり、充電が終了する時間である。
【0068】
ステップS36では、ステップS33又はステップS35での暖機必要時間の算出に続き、電動ウォータポンプ32及び電気ヒータ33をON制御し、ステップS37へ移行する。
ここで、電動ウォータポンプ32がON制御されることで、空調用冷媒経路31内を冷媒26が循環する。また、電気ヒータ33がON制御されることで、空調用冷媒経路31内を循環する冷媒26が加熱される。つまり、空調用冷媒経路31内を、加熱された冷媒26が循環する。このとき、バイパス切替バルブ31bが冷媒側熱交換部54側に切替制御されているので、変速機用熱交換部5の冷媒側熱交換部54に冷媒26が流通する。また、電動ウォータポンプ32及び電気ヒータ33の駆動用の電源としては、ハイブリッド車両1に供給されている外部電源7からの電力を利用する。
【0069】
ステップS37では、ステップS36での電動ウォータポンプ32及び電気ヒータ33のON制御に続き、作動油流路51に設けたオイルポンプ52をON制御し、ステップS38へ移行する。
これにより、作動油流路51内で作動油ATFが循環し、オイル側熱交換部53を流れる作動油ATFと、冷媒側熱交換部54を流れる冷媒26との間で熱交換が開始される。
【0070】
ステップS38では、ステップS37での熱交換開始に続き、ステップS33又はステップS35において算出した暖機必要時間が経過したか否かを判断し、YES(時間経過)の場合は自動変速機ATの暖機が完了したとしてステップS39へ移行し、NO(時間未経過)の場合は自動変速機ATの暖機が完了していないとしてステップS36へ戻る。
【0071】
ステップS39では、ステップS38での時間経過との判断に続き、電動ウォータポンプ32、電気ヒータ33、オイルポンプ52をそれぞれOFF制御し、エンドへ進む。これにより、空調用冷媒経路31内での冷媒26の循環及び加熱と、作動油流路51内での作動油ATFの循環が停止し、変速機用熱交換部5における熱交換も停止する。
【0072】
次に、実施例1の電動車両における作用を、「暖房要求時変速機暖機作用」、「暖房非要求時変速機暖機作用」、「変速機冷却作用」、「充電時変速機暖機作用」に分けて説明する。
【0073】
[暖房要求時変速機暖機作用]
図6は、実施例1の電動車両での暖房要求時の変速機暖機中における熱媒体の流れを示すシステム回路図である。
図7は、実施例1の電動車両での暖房要求時の暖房優先中における熱媒体の流れを示すシステム回路図である。
【0074】
実施例1のハイブリッド車両1において、EVモードにて走行中、エンジンEngは停止している。つまり、EVモード走行時にはエンジンEngの熱を利用した自動変速機ATの暖機を行うことができない。しかしながら、自動変速機ATの作動油ATFの温度が低いとフリクションが大きくなり、燃費の悪化や消費電力の増加につながってしまう。そのため、自動変速機ATの暖気は、エンジンEngの熱による暖機ができないEVモードであっても行う必要がある。
【0075】
そこで、実施例1のハイブリッド車両1において、EVモード走行時に自動変速機ATの暖機を行うには、まず、
図3に示すフローチャートのステップS1で、EVモード走行中であるか否かを判断し、EVモードであるためステップS2へと進んで暖房要求の有無を判断する。そして、暖房要求があればステップS3→ステップS4へと進み、電動ウォータポンプ32をON制御して空調用冷媒経路31内で冷媒26を循環させつつ、循環している冷媒26を電気ヒータ33で加熱する。
【0076】
このとき、開閉バルブ43A〜43Dは一斉に閉制御されているため、駆動系冷却回路2のモータ冷却回路22と、室内空調用回路3とは切り離されている。つまり、電気ヒータ33によって加熱された冷媒26は、室内空調用回路3内のみを循環する。
そして、室内空調用回路3の空調用冷媒経路31を流れる冷媒26は、暖房用熱交換器35において車室R内の空気と熱交換する。なお、このとき暖房ファンF2は駆動し、冷媒26にて暖められた空気が車室Rへと送風される。
【0077】
そして、ステップS5→ステップS6へと進み、空調用冷媒経路31を循環している冷媒26の温度、冷媒温を検出する。そして、この冷媒温が目標冷媒温を上回っていれば、暖房要求は満たされているとしてステップS7→ステップS8へと進み、自動変速機ATの作動油ATFの温度、作動油温を検出する。そして、この作動油温が目標作動油温を下回っていれば、ステップS9へと進んで、バイパス切替バルブ31bを冷媒側熱交換部54側に切替制御する。これにより、
図6に示すように、変速機用熱交換部5の冷媒側熱交換部54に冷媒26が流通すると共に、バイパス経路31aへの冷媒26の流れが遮断される。
【0078】
一方、ハイブリッド車両1はEVモードで走行中であるため、自動変速機ATにおいてオイルポンプ52は駆動しており、作動油流路51内を作動油ATFが循環している。つまり、変速機用熱交換部5のオイル側熱交換部53に作動油ATFが流通している。
【0079】
これにより、変速機用熱交換部5において、オイル側熱交換部53を流れる作動油ATFと、冷媒側熱交換部54を流れる冷媒26との間で熱交換が行われる。ここで、冷媒26は電気ヒータ33によって加熱されているため温度が高くなっており、冷媒26の熱が作動油ATFへと伝達され、作動油ATFの温度を上昇させることができる。
【0080】
さらに、このとき、開閉バルブ43A〜43Dが一斉に閉制御され、モータ冷却回路22と、室内空調用回路3とが切り離されている。そのため、モータ冷却回路22内を冷媒26が循環することでモータ/ジェネレータMG及びインバータINVの冷却を行っていても、第2ラジエータ28にて冷却された冷媒26が室内空調用回路3に流れ込むことはない。そのため、モータ/ジェネレータMGの冷却と、自動変速機ATの暖機とは異なる回路によって行われることになる。この結果、モータ冷却回路22によるモータ冷却時であっても、室内空調用回路3を流れる冷媒26の熱により自動変速機ATの作動油ATFを暖める変速機暖機を行うことができる。
【0081】
なお、ステップS6の判断において、冷媒温が目標冷媒温以下であれば、暖房要求が満たされていないとしてステップS10へと進んで、バイパス切替バルブ31bをバイパス経路31a側に切替制御する。これにより、
図7に示すように、バイパス経路31aに冷媒26が流通すると共に、冷媒側熱交換部54への冷媒26の流れが遮断される。
【0082】
このとき、冷媒側熱交換部54への冷媒26の流れが遮断されることで、オイル側熱交換部53を流れる作動油ATFと、冷媒側熱交換部54を流れる冷媒26との間の熱交換は停止する。つまり、車室R内の暖房要求の方が自動変速機ATの暖機要求よりも優先され、暖房機能を確保することができる。
【0083】
[暖房非要求時変速機暖機作用]
図8は、実施例1の電動車両での暖房非要求時の変速機暖機中における熱媒体の流れを示すシステム回路図である。
【0084】
実施例1のハイブリッド車両1において、EVモードで走行時に暖房要求がない場合に自動変速機ATの暖機を行うには、まず、
図3に示すフローチャートのステップS1で、EVモード走行中であるか否かを判断し、EVモードであるためステップS2へと進んで暖房要求の有無を判断する。そして、暖房要求がないためステップS11→ステップS12へと進み、自動変速機ATの作動油ATFの温度、作動油温を検出する。そして、この作動油温が目標作動油温を下回っていれば、ステップS13へと進んで、バイパス切替バルブ31bを冷媒側熱交換部54側に切替制御する。これにより、
図8に示すように、変速機用熱交換部5の冷媒側熱交換部54に冷媒26が流通すると共に、バイパス経路31aへの冷媒26の流れが遮断される。
【0085】
そして、ステップS14へと進み、電動ウォータポンプ32をON制御して空調用冷媒経路31内で冷媒26を循環させつつ、循環している冷媒26を電気ヒータ33で加熱する。
このとき、開閉バルブ43A〜43Dは一斉に閉制御されているため、駆動系冷却回路2のモータ冷却回路22と、室内空調用回路3とは切り離されている。つまり、電気ヒータ33によって加熱された冷媒26は、室内空調用回路3内のみを循環する。さらにこのとき、ハイブリッド車両1がEVモードで走行中であるため、自動変速機ATにおいてオイルポンプ52は駆動しており、作動油流路51内を作動油ATFが循環している。つまり、変速機用熱交換部5のオイル側熱交換部53に作動油ATFが流通している。
【0086】
これにより、変速機用熱交換部5において、オイル側熱交換部53を流れる作動油ATFと、冷媒側熱交換部54を流れる冷媒26との間で熱交換が行われる。ここで、冷媒26は電気ヒータ33によって加熱されているため温度が高くなっており、冷媒26の熱が作動油ATFへと伝達され、作動油ATFの温度を上昇させることができる。
すなわち、暖房要求がない場合であっても、作動油温に応じて適宜電気ヒータ33をON制御することで、冷媒26を昇温させ、この冷媒26の熱を利用して自動変速機ATの暖機を行うことができる。
【0087】
[変速機冷却作用]
図9は、実施例1での電動車両での変速機冷却中における熱媒体の流れを示すシステム回路図である。
【0088】
実施例1のハイブリッド車両1において、走行を継続することで作動油ATFが高温になることが考えられる。このとき、変速機用熱交換部5において、オイル側熱交換部53を流れる作動油ATFと、冷媒側熱交換部54を流れる冷媒26との間で熱交換を行うことで、作動油ATFの熱が冷媒26に放出される。しかしながら、開閉バルブ43A〜43Dが一斉に閉制御されており、室内空調用回路3が閉回路になっていると冷媒26の温度が上昇してしまう。そのため、作動油ATFの熱を冷媒26に取り込むことが難しくなってしまう。つまり、作動油ATFの冷却を十分に図ることができない。
【0089】
そこで、実施例1のハイブリッド車両1において、走行中に自動変速機ATの冷却を行うには、まず、
図4に示すフローチャートにおいてステップS20→ステップS21へと進み、自動変速機ATの作動油ATFの温度、作動油温を検出する。そして、この作動油温が要冷却作動油温を上回っていれば、ステップS22へと進んで開閉バルブ43A〜43Dを一斉に開制御すると共に、バイパス切替バルブ31bを冷媒側熱交換部54側に切替制御する。
【0090】
これにより、
図9に示すように、モータ冷却回路22と室内空調用回路3が連結される。そして、室内空調用回路3を流れる冷媒26の一部が、第1連結回路41を介して室内空調用回路3からモータ冷却回路22へと流れる。また、モータ冷却回路22を流れる冷媒26の一部が、第2連結回路42を介してモータ冷却回路22から室内空調用回路3へと流れる。
【0091】
ここで、第2連結回路42の一端は、モータ冷却回路22を流れる冷媒26を冷却する第2ラジエータ28の下流側に接続されているので、第2連結回路42に流れ込む冷媒26は低温となり、室内空調用回路3にはこの低温の冷媒26が流れ込むこととなる。
一方、第1連結回路41の一端は、第2ラジエータ28の上流側に接続しているため、室内空調用回路3を循環することで高温となった冷媒26は、モータ/ジェネレータMGの冷却にほとんど影響を与えることなく第2ラジエータ28にて冷却される。
【0092】
このように、モータ冷却回路22と室内空調用回路3を連結することで、モータ冷却回路22が有する第2ラジエータ28を利用して室内空調用回路3における冷媒26を冷却することができる。すなわち、室内空調用回路3の空調用冷媒経路31を流れる冷媒26の温度が低下する。
【0093】
さらに、室内空調用回路3においては、バイパス切替バルブ31bが冷媒側熱交換部54側に切替制御されるため、変速機用熱交換部5の冷媒側熱交換部54に冷媒26が流通すると共に、バイパス経路31aへの冷媒26の流れが遮断される。
【0094】
これにより、変速機用熱交換部5において、オイル側熱交換部53を流れる作動油ATFと、冷媒側熱交換部54を流れる冷媒26との間で熱交換が行われる。ここで、冷媒26は第2ラジエータ28を利用して温度低下しているので、作動油ATFの熱が冷媒26へと伝達され、作動油ATFの温度を低下させることができて、自動変速機ATの冷却を図ることができる。
【0095】
[充電時変速機暖機作用]
図10は、実施例1の電動車両での充電時の変速機暖機中における熱媒体の流れを示すシステム回路図である。
【0096】
実施例1のハイブリッド車両1において、外部電源7から電力をバッテリBATに充電中自動変速機ATの暖機を行うには、まず、
図5に示すフローチャートのステップS1で、外部電源7による充電中であるか否かを判断し、充電中であればステップS31へと進んでタイマー空調設定の有無を判断する。そして、タイマー空調が設定されていれば、ステップS32→ステップS33へと進み、Δ作動油温とタイマー空調終了時間から暖機必要時間を算出する。
【0097】
そして、暖機必要時間を求めたら、ステップS36→ステップS37→ステップS38→ステップS39へと進んで、電動ウォータポンプ32及び電気ヒータ33をON制御すると共に、オイルポンプ52をON制御する。これにより、
図10に示すように、変速機用熱交換部5において、オイル側熱交換部53を流れる作動油ATFと、電気ヒータ33で加熱された冷媒側熱交換部54を流れる冷媒26との間で熱交換を行う。そして、冷媒26の熱を利用して自動変速機ATの暖機を行う。さらに、暖機必要時間が経過したら電動ウォータポンプ32、電気ヒータ33、オイルポンプ52をすべてOFF制御する。
【0098】
このとき、電動ウォータポンプ32、電気ヒータ33、オイルポンプ52の駆動電力は、外部電源7から供給される電力を利用する。そのため、バッテリBATの充電残量SOCを低下させることなく自動変速機ATの暖機を行うことができる。
そして、タイマー空調が設定されている場合には、Δ作動油温とタイマー空調終了時間から暖機必要時間を算出するため、タイマー空調の終了に合わせて終了する充電時間内に外部電力を用いて暖機を行うことができる。そして、走行開始時に変速機フリクションを低減させ、燃費や消費電力効率の改善を図ることができる。
【0099】
一方、ステップS31の判断において、タイマー空調が設定されていなければ、ステップS34→ステップS35へと進み、Δ作動油温と満充電時間から暖機必要時間を算出する。
【0100】
そして、暖機必要時間を求めたら、この場合であっても、ステップS36→ステップS37→ステップS38→ステップS39へと進んで、電動ウォータポンプ32及び電気ヒータ33をON制御すると共に、オイルポンプ52をON制御する。そして、
図10に示すように、変速機用熱交換部5において、オイル側熱交換部53を流れる作動油ATFと、電気ヒータ33で加熱された冷媒側熱交換部54を流れる冷媒26との間で熱交換を行い、自動変速機ATの暖機を行う。
【0101】
そして、タイマー空調が設定されていない場合には、Δ作動油温と満充電時間から暖機必要時間を算出するため、満充電時に終了する充電時間内に外部電力を用いて暖機を行うことができる。そして、走行開始時に変速機フリクションを低減させ、燃費や消費電力効率の改善を図ることができる。
【0102】
次に、効果を説明する。
実施例1の電動車両にあっては、下記に挙げる効果を得ることができる。
【0103】
(1) 走行駆動源となるモータ/ジェネレータMGと、
前記モータ/ジェネレータMGに接続される自動変速機ATと、
車室R内空調を行う室内空調用回路3と、
前記自動変速機ATの作動油流路51を流れる作動油ATFと、前記室内空調用回路3を
流れる冷媒26の間で熱交換を行う変速機用熱交換部5と、
を備えた構成とした。
このため、室内空調用回路3を流れる冷媒26の熱により自動変速機ATの作動油ATFを暖める変速機暖機を行うことができる。
【0104】
(2) 前記室内空調用回路3は、通電により発熱して前記冷媒26を加熱する電気ヒータ33を有し、
前記変速機用熱交換部5は、前記電気ヒータ33により加熱された冷媒26の熱を、前記作動油ATFに伝達させる構成とした。
このため、冷媒26の温度を電気ヒータ33で上昇させることができ、この電気ヒータ33からの熱によって変速機暖機を行うことができる。
【0105】
(3) 前記室内空調用回路3は、前記変速機用熱交換部5を迂回するバイパス経路31aと、
前記バイパス経路31aを開閉するバイパス切替バルブ31bと、を有する構成とした。
このため、車室R内の暖房性能を確保することができる。
【0106】
(4) 前記作動油ATFの温度を検出する油温検出センサ55と、
前記駆動系冷却回路2と前記室内空調用回路3を連結する連結回路4と、
前記連結回路4を開閉する開閉バルブ43A〜43Dと、を備えた構成とした。
このため、駆動系冷却回路2の冷却機能を利用して冷媒26の温度を低下させ、自動変速機ATの冷却を行うことができる。
【0107】
(5) 前記室内空調用回路3は、通電により発熱して前記冷媒26を加熱する電気ヒータ33を有し、
前記モータ/ジェネレータMGに電力供給するバッテリBATと、
前記バッテリBATに外部電源7から充電する充電手段CHAと、
前記充電手段CHAによる前記バッテリBATの充電時、前記外部電源7からの電力により前記電気ヒータ33を駆動させる変速機暖機コントローラ6と、
を備えた構成とした。
これにより、充電中、外部電力を用いて自動変速機ATの暖機を行うことができ、走行開始時に変速機フリクションを低減させ、燃費や消費電力効率の改善を図ることができる。
【0108】
以上、本発明の電動車両を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0109】
実施例1のハイブリッド車両1では、室内空調用回路3が電気ヒータ33を備えた暖房回路となっているがこれに限らない。電気ヒータ33を備えていない冷凍サイクルからなる空調回路であってもよい。この場合、冷媒26は、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)類やハイドロフルオロカーボン(HFC)類等の代替フロンガスである。
この場合であっても、作動油ATFの温度よりも空調回路を流れる熱媒体温度が高ければ、この空調回路の熱を利用して変速機の電気を行うことができる。
【0110】
また、実施例1のハイブリッド車両1は、エンジンEng及び充電手段CHAを備えたいわゆるプラグインハイブリッド車であるが、これに限らない。本発明は、エンジンEngを持たない電気自動車や燃料電池車、また外部電源7から充電可能とする充電手段CHAを持たない通常のハイブリッド車であっても適用することができる。
【0111】
さらに、実施例1の自動変速機ATは、有段の変速段を自動的に変更する変速機であるが、無段変速機であってもよい。
【0112】
そして、上記冷媒26に使用される物質はLLC(Long Life Coolant)と呼ばれる不凍液に限らず、室内空調用回路3を流れる熱媒体として冷却水(水)等適宜最適なものを採用することができる。