【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の好ましい実施形態は又、所与の体積流量の流体が所定の期間にわたり一様に生じるようにするマイクロフルイディック装置を提供するものである。
【0008】
本発明は、請求項1の特徴を有するマイクロフルイディック装置に関する。
【0009】
本発明のマイクロフルイディック装置により、経時的に一定である体積流量の流体を提供することができる。この目的のため、本装置は、分離手段、特に血液を濾過する手段を有すると共に分離された流体を受け入れてこれを運び去る第1のチャネルを有する。
【0010】
第1のチャネルは、停止手段、特に流体停止部又は毛管停止部に隣接して端部領域に設けられており、流体停止部又は毛管停止部は、所与の期間にわたり第1のチャネル内の流体の流れを止めることができる。第1のチャネルに隣接すると共に流体停止部に隣接して上流側において第2のチャネルが第1のチャネルから枝分かれしている。第2のチャネルは、リザーバへの連結部を形成する。
【0011】
本発明のマイクロフルイディック装置の停止手段又は流体停止部は、好ましくは、例えば欧州特許出願公開第1441131(A3)号明細書から知られている毛管停止部である。
【0012】
流体停止部は、好ましくは、流体運搬要素の幾何学的形状が流体停止部のところで例えば段部の形成によって急変するという特定の設計上の特徴を有する。流体停止部は又、流体運搬要素の濡れ特性の突然の変化により、例えば、或る特定の領域が親水性又は疎水性材料で覆われている結果として形成されても良い。
【0013】
分離手段は、好ましくは、メンブレン又はフィルタである。
【0014】
例えばマイクロフルイディック装置を分析器で動作させるため、所与の量の流体が装置の入口開口部内に送り込まれる。これは、例えば、20マイクロリットルの量の1滴の血液であるのが良い。入口開口部内には、供給された媒体が流れ込むメンブレン又はフィルタが設けられるのが良い。流体の流れは、特に、フィルタ又はメンブレンの細孔及び毛管を通って垂直流れ方向に運ばれる。このように「垂直方向」と言った場合、これは、流れが特にプレート形マイクロフルイディック計量器具の基質平面に実質的に垂直であることを意味している。流れは、本質的に厚さの方向にメンブレンを通過する。
【0015】
メンブレン又はフィルタは、好ましくは、入口開口部とメンブレン/フィルタの下に配置された入口チャンバとの間で垂直方向に配置される。メンブレン又はフィルタは、その細孔又は毛管の毛管作用により液体を吸収することができ、そして細孔又は毛管よりもサイズの大きな大形粒子を保持することができる。
【0016】
細孔は、保持した粒子の凝集によって部分的に閉塞状態になり、その結果、貫流に有効な流れの断面は、分離プロセスが進むと、絶えず減少するようになる。
【0017】
これにより、マイクロフルイディック装置内における流体の体積流れの流量が減少する。例えば、40マイクロリットルの量の血液が追加された場合、流量が当初1秒当たり0.3マイクロリットルである場合、この値は、常時減少し、その結果、20秒後には、1秒当たり0.1マイクロリットルしかフィルタ又はメンブレンを通過して入口チャンバに隣接したチャネル内に流入することができないようになる。
【0018】
入口チャンバは、流体の流れにより溶解される試薬を収容しているのが良い。同様に、メンブレンには、試薬、例えば血液が凝固するのを阻止する試薬を吸い込ませ又は含浸させるのが良い。流体が加えられると、分離は、このようにして処理されたメンブレンで起こると同時に、第1の試薬が溶解され、この第1の試薬は、生物学的及び/又は化学的及び/又は物理的性質、特に流体の粘度に影響を及ぼす。
【0019】
入口チャンバ内には第2の試薬を沈積させるのが良く、第2の試薬は、流体中に検出反応を生じさせる。これは、例えば光学的な色の変化であるのが良い。
【0020】
メンブレン又はフィルタが高い固有の毛管作用を有するので、体積流量が隣接の入口チャンバ内に垂直方向に流下するのを助ける手段が設けられるのが良い。この目的のため、入口チャンバは、1本又は2本以上のピラー又はポストを有するのが良く、これらピラー又はポストは、垂直方向に延びる1つ又は2つ以上の切欠きを有するのが有利である。
【0021】
ピラー又はポストは、メンブレンがピラー又はポストに載るよう配置される。ピラー又はポストの高さは、入口チャンバの深さに一致するのが良く、入口チャンバの深さは、好ましくは、10ミクロン〜1000ミクロンであり、特に50ミクロン〜500ミクロンであるのが有利である。
【0022】
ピラー又はポストの切欠きは、接触すべきメンブレンと流体接触関係にあり、これらの毛管作用により、流体をメンブレンからチャンバのベースに導き出し、その結果、チャンバが湿潤される(ぬれる)ようになる。代替的に又は追加的にメンブレンは、形状が凸状であっても良く、この凸の高さは、チャンバの深さに一致し、その結果、メンブレンは、チャンバのベースの凸の頂点に当たるようになる。
【0023】
メンブレンの頂点がチャンバベースと鋭角をなすので、メンブレンの湿潤中、個々に高い毛管力が生じ、その結果、分離された流体は、メンブレンとチャンバのベースとの間の隙間を通ってチャンバ内に運び去られるようになる。
【0024】
チャンバは、少なくとも部分的にトレンチよって包囲されるのが良く、トレンチは、チャンバの深さよりも深く、トレンチは、入口チャンバ内の空気をトレンチ上の流入流体によって置き換えることができるよう空気ベントを有するのが有利である。トレンチは、好ましくは、幅が100〜1000ミクロン、深さが200〜1000ミクロンである。入口チャンバの容積は、好ましくは、0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、20、50、100、200、500又は1000マイクロリットルであり、他方、指定された値を互いに加えることによって得られるチャンバ容積を選択することも可能である。
【0025】
流体を入口チャンバから運び出して1つ又は2つ以上の流体チャネル中に運び込むため、チャネルは、連結領域において入口チャンバに向かって漏斗の形状をなして広がっているのが良い。先ず最初に、チャネルの幅は、漏斗の細い部分内で広がり、次に、チャンバに向かって円錐状に増大する。漏斗の拡大円錐形部分内には、漏斗内への流体の運搬を助けることができる構造要素、例えば上述のポスト又はピラーが設けられるのが良い。
【0026】
流体運搬は、例えば構造要素と漏斗壁との間に隙間が形成され、毛管力が隙間を通って流体に作用することによって助長される。ピラー壁又はポスト壁と漏斗壁との間の距離、即ち、隙間の幅は、5ミクロン〜500ミクロンであるのが良い。
【0027】
上述のトレンチは、流体の流れがトレンチ段部を越えて流れることができないので流体停止部となる。トレンチは、入口チャンバの漏斗状出口領域とは別に、入口チャンバを完全に包囲するのが良く、その結果、空気は、入口チャンバから一様に押し退けられることができるようになる。
【0028】
互いに隣接して位置するチャンバ出口漏斗とトレンチの端部との間の領域では、トレンチ内への流体の望ましくない流出が生じる恐れがある。したがって、漏斗壁からトレンチへの特に垂直な流れを阻止するようトレンチの端部を広げ又は拡大させるべきであることが想定される。
【0029】
入口チャンバに隣接して位置する第1のチャネルにより運搬される流体は、上述した流体停止部まで流れる。第2のチャネルが第1のチャネルから枝分かれしており、この第2のチャネルは、リザーバを第1のチャネルに結合する。
【0030】
入口チャンバから流出した流体は、流体停止部に達すると、リザーバ内に流れ、そしてこれを所与のレベルまで、50%〜100%のレベルまで満たすことができるのが有利である。このレベルに達すると、流体停止部は、閉鎖されるのが良く、リザーバからの流体は、第2のチャネル及び流体停止部を連続的に通って入口チャネル内に流れるのが良い。出口チャネルは、下流側で流体停止部に連結されるのが良い。
【0031】
中間リザーバにより、経時的に一定の流体の体積流量を達成することができる。開始媒体の分離中、時間が経過するにつれて体積流量が大幅に減少するので、リザーバは、体積流量のこの減少分を補償するのに役立つ。リザーバ又は中間貯蔵手段は、分離された流体で満杯になる。指定された量の流体がリザーバによって取り込まれ、リザーバは、0.1マイクロリットル、0.2マイクロリットル、0.5マイクロリットル、1マイクロリットル、2マイクロリットル、5マイクロリットル、10マイクロリットル、20マイクロリットル、50マイクロリットル、100マイクロリットル、200マイクロリットル、500マイクロリットル、1000マイクロリットル又はこれらの分数又は倍数の容量を有するのが良い。
【0032】
幾つかに量の流体、例えば血液の1滴である場合、0.5マイクロリットル〜10マイクロリットルのリザーバ容積が提供されるのが良い。
【0033】
チャネルが収容することができる量よりも多い量の流体を収容するため、リザーバは、第1のチャネルよりも深いものであるのが良く、これは、供給チャネル又はフィードチャネルとも呼ばれる。特に、リザーバの深さは、第1のチャネルの深さの1.2〜5倍であるのが良い。
【0034】
第1のチャネルからリザーバへの供給手段となる第2のチャネルは、リザーバの入口領域で広がり又は拡大しているのが良い。第2のチャネルの深さは、枝分かれ箇所において第1のチャネルの深さに一致しているのが良い。リザーバへの円錐形に広がった連結領域において段部又はテラスを設けるのが良い。変形例として、リザーバの入口又は連結領域の深さは、傾斜路のように増大していても良く、その結果、第2のチャネル内に流れる流体は、傾斜路又は段部に沿ってリザーバの底部に流れ、そして深いリザーバ内部を満たすようになる。
【0035】
リザーバ内への流体の一様な流れを保証すると共に気泡の形成又は混入を阻止するため、リザーバは、側方がトレンチによって境界付けられるのが良い。
【0036】
リザーバの幾何学的形状は、流体の流れのフロントがトレンチに対して90°未満の角度をなすようなものであるのが良く、その結果、流体フロントは、充填中、トレンチのエッジに沿って進むようになる。しかしながら、変形例として、90°の流入角度も又許容できる。
【0037】
リザーバの出口、即ち、全体の充填が行なわれる場合に最後に満たされるリザーバの領域では、第3のチャネル、いわゆるトリガチャネルが枝分かれするのが良い。トリガチャネルは、リザーバ出口と流体停止部の両方に結合される。トリガチャネルは、リザーバと比較して高い毛管作用の小さな断面を有するのが良い。トリガチャネルは、流体停止部とリザーバ出口との流体結合を可能にし、リザーバから運ばれる流体がチャネルを経て流体停止部内に流れる。
【0038】
流体停止部は、隆起したベースを有する漏斗半部又はタブ又は桶形状を有するのが良い。漏斗半部又はタブの深さは、最も深い箇所で100〜500ミクロンであるのが良い。
【0039】
深い部分の頂部のところで、第1のチャネルは、流体停止部の底部の上方で壁内に開口するのが良い。トリガチャネルは、流体停止部の平坦な隆起区分内に開口するのが良く、その深さは、5ミクロン〜100ミクロン、特に30ミクロン〜70ミクロンであるのが良い。
【0040】
流体停止部の平坦な領域は、デルタの形状をしているのが良く、デルタは、深さ方向において傾斜路である。傾斜路は、流体停止部の深い領域をトリガチャネルの口に連結する。
【0041】
流体停止部は、トリガチャネルによって満たされるのが良い。流体停止部のチャンバ内の流体レベルが第1のチャネルの高さに達するやいなや、流体停止部は、橋渡しされ、リザーバ内に溜められている流体は、第2のチャネル及び出口チャネルを通って流れ去る。
【0042】
リザーバを反応チャンバとして用いることも可能である。このために、例えば混入及び/又は乾燥により試薬をリザーバチャンバ内に沈積させるのが良い。リザーバが満たされている間及び次の滞留時間中、化学的又は生物学的反応が、例えば触媒の使用又は光及び/又は熱の供給によって助長された状態でリザーバ内で起こることができる。
【0043】
リザーバ内における流体の滞留時間は、充填速度及びトリガチャネル中の流体の流れの流量によって決定されるのが良い。リザーバ内における滞留時間又は反応時間は、5秒〜200秒である。
【0044】
トリガチャネル中に流入した流体がここに留まるので、チャネルの高い毛管作用により、トリガチャネルの容積は、リザーバの容積の5%を超えてはならない。
【0045】
リザーバは又、試薬を溶解させるために経時的に一定の体積流量を生じさせる機能を有するのが良い。試薬を流体停止部の下流側でチャネル又は貯蔵チャンバ内に沈積させる。特に粉末形態の試薬により、物質、特に粉末の流れによる流体中の確実な溶解を保証する体積流量を生じさせることが必要である場合が多い。
【0046】
特に、これら粉末状物質では、くっつきが生じる場合があり、それにより、試薬が溶解プロセスを開始させて塊をばらばらにする必要がある。この溶解プロセスは、十分に多量の流体が運搬されることによってのみ達成可能であり、1秒当たり0.1マイクロリットル〜10マイクロリットルの重量が物質、流体の量及び材料の量に基づいて定められる。
【0047】
毛管停止部の幾何学的形態の代わりに且つ/或いはこれに加えて、毛管停止部は、チャネルの疎水性区分によって形成されても良い。このために、第1のチャネルの一部は、疎水性被膜を備えるのが良く、又は、チャネルシステムを親水化する手立てが設けられている場合、チャネルの一区分をこの親水化から排除するのが良い。
【0048】
第1のチャネルを通って流れる水性液の流体インターフェイスは、チャネルの湿潤性がこの時点で急減するので、疎水性領域に進むことがないようになる。疎水性領域は、小さな流体粒子が物理的にくっつくことができる粗い表面を有するのが良い。粒子の付着により、この領域の湿潤性が向上し、その結果、元々疎水性であった領域は、指定された期間内に湿潤され、流体は、停止箇所を越えて流れることができるようになる。
【0049】
また、この湿潤化は化学反応によって、例えばチャネルの疎水性区分を流体成分が結合する試薬で更に被覆することによって引き起こされ又は助長されるのが良く、その結果、湿潤具合は、連続的に増大する。連続湿潤が起こる期間内において、上述した形式のリザーバを満たすのが良い。
【0050】
毛管停止部に打ち勝った後、リザーバ内に中間的に貯蔵されていた量の流体は、次の分析、診断又は試験手順に利用できる。リザーバは、確実に充填したり空にすることが保証されるよう幾何学的に設計されているのが良い。この目的のため、リザーバチャンバは、形態が実質的に球形、漏斗形又は三角形であり、断面が入口領域から広がり又は拡大していることが有利である。この場合、リザーバを満たすと、流体インターフェイスは、連続的に広がる。リザーバは、好ましくは、流体の伝搬フロントに関してその端部が非対称の形状を有する。リザーバの端部は、リザーバを完全に満たしたときに、最後に満たされるリザーバの領域を意味している。これは、特に、側方通気トレンチに隣接して位置する領域である。これにより、インターフェイスの伝搬方向、即ち、流体フロントの流れ方向は、リザーバの充填中、端部領域の方向に、特に、出口チャネル又はトリガチャネルの方向に変わる。その間、リザーバは、完全に満たされ、リザーバ内に存在する空気は、側方トレンチを経て押し退けられるのが有利である。
【0051】
空にする際、プロセスを逆にする。リザーバの流入及び流出領域中のメニスカスの幅の減少は、空にするのを助ける。というのは、インターフェイスが短くなることにより、短くなっている間のエネルギーの放出によって補助圧縮力が及ぼされるからである。
【0052】
次に、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を具体的に説明するが、これは例示であるに過ぎない。