(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態に係る電動シリンダ1を有する電動シリンダシステム(電動サーボシリンダシステム)100について図面を参照して説明する。電動シリンダシステム100は、
図1に示すように、電動シリンダ1と、電動シリンダを制御する制御部101と、電動シリンダ1を取り付けるためのシステム本体フレーム102とを有する。
【0012】
電動シリンダ1は、
図2に示すように、外筒体2と、ロッド3と、軸受4と、回転軸5と、ねじ機構6と、歪検出部7とを備える。外筒体2は、例えば円筒状のケーシングであり、一端側2aに当該電動シリンダ1の取付箇所(システム本体フレーム102の取付部103)に固定するための固定部11を有している。また、外筒体2は、少なくとも二以上の分割及び結合可能な分割部材からなり、歪検出部7は、二以上の分割部材のうちの一の分割部材に設けられる。
【0013】
具体的に、例えば、外筒体2は、第1の分割部材51と、第2の分割部材52とを有する。第1の分割部材51は、固定部11を有するとともに一端側2aに配置される。第2の分割部材52は、軸受4を保持する軸受保持部13を有している。第1及び第2の分割部材51,52は、例えばフランジ等の結合部51a,52aを、ねじ等の締結部材55により締結されることにより結合され、外筒体2として機能する。
【0014】
歪検出部7は、第2の分割部材52に設けられる。尚、歪検出部は、
図11に示すように一端側2aの第1の分割部材に設けられるように構成してもよく、
図11に示す例については後述する。
【0015】
固定部11は、例えばフランジ等であり、ねじ10等によりフレーム102の取付部103に締結され、電動シリンダ1がシステムに固定される。
【0016】
ロッド3は、外筒体2の一端側(一端2aが設けられた側)の開口2bから軸方向に伸縮可能とされている。ロッド3の伸縮とは、開口2bから軸方向に伸びるように突出することと、軸方向に縮むように開口2bより内部に引っ込むこと(外筒体2から突出した部分が小さくなる方向に縮むこと)とを意味する。
【0017】
軸受4は、外筒体2の他端側(他端2cが設けられた側)であって内部に設けられている。回転軸5は、軸受4に回転可能に支持されるとともに、電動機12の駆動力により回転駆動される。ねじ機構6は、回転軸5の回転運動をロッド3の直線運動に変換して伝達する。歪検出部7は、外筒体2の外周であって軸受4が設けられた位置と固定部11との間の位置に設けられる。
【0018】
具体的に、歪検出部7は、軸受4の固定部11側の端部4aと、固定部11との間の位置に設けられる。「軸受4の固定部11側の端部4a」とは、軸受4の外周に位置して軸受4を保持する軸受保持部13の当接部13aに軸受4が当接する部分を意味するものとする。これは、歪検出部7の軸方向の位置が、軸受4の引張り方向の力を受ける位置と固定部11との間の位置で、且つ軸受4の圧縮方向の力を受ける位置と固定部11との間の位置であることが必要であるからである。軸受保持部13は、ここでは、外筒体2の第2の分割部材52に一体に設けられる部材であり、軸受4を保持する部材である。尚、軸受保持部は、外筒体2と一体に限られるものではなく、別体で設けるようにしてもよい。
【0019】
また、歪検出部7は、外筒体2の軸受4の取付位置と固定部11との間の部分に加わる軸方向の荷重を検出して電気信号に変換する。外筒体2の第2の分割部材52は、歪検出部7を取り付ける部分52dの外径が第2の分割部材52の他の部分の外径よりも小さくされた薄肉状とされている。尚、歪検出部7を取り付ける部分は薄肉形状に限られるものではなく(後述の他の歪検出部67、207、237、267も同様)、例えば均一な太さの筒状部材に設けてもよい。なお、このような薄肉形状とされていることにより、歪検出部7を取り付ける部分52dに、保護カバーを設けたときに外形寸法を小さく抑えることを可能とする。また、この部分52dは、推力に耐えうる断面積となるような厚さで且つ後述の歪ゲージによって外筒体2の第2の分割部材52に掛かる反力を検出可能な程度の薄さにすることが要求される。この観点においても薄肉状とすることが都合がよい。
【0020】
歪検出部7は、例えば、
図3に示すように配置された複数の歪ゲージRg1〜Rg4からなる。尚、
図3は説明の分かり易さのため外筒体2の第2の分割部材52の薄肉形状とされた検出部の取り付け用の部分52dのみを図示している。なお、実際にはその上下に連続的に同一部材が設けられる。歪検出部7は、各歪ゲージRg1〜Rg4を接続する接続配線7aと、必要に応じて端子台7bとを有する。そして、例えば
図3(b)や
図3(c)に示す(1)と(2)との間のEが印加電圧であり、(3)と(4)との間のe0が出力電圧である。
図3(c)に示すように各ゲージによりホイートストンブリッジを形成することで、印加電圧に比例し、且つひずみに比例する電圧信号が出力される。歪検出部7の出力は、
図1に示すように制御部101の第1のコントローラ104に送られる。
【0021】
ロッド3は、回転軸5が挿通可能な筒状に形成される。ロッド3の外径は、外筒体2の内径より小さく形成される。ねじ機構6は、ボールねじである。尚、ねじ機構6は、例えば台形ネジや角ネジであってもよい。台形ネジは、雄ネジ及び雌ネジの断面が台形であるネジをいい、角ネジは、雄ネジ及び雌ネジの断面が矩形であるネジをいう。また、その他軸方向の荷重を受け、回転運動を直線運動へ変換する機械要素を用いても良い。ここで説明するロッド3には、ボールねじであるねじ機構6のナット部材15が一体とされている。回転軸5に一体とされる雄ねじ部分16は、ナット部材15及びボール17とともにボールねじを構成している。
【0022】
ロッド3の端部3aの外周には、軸方向に形成された溝部18が一又は複数設けられる。ここでは、
図4(a)に示すように、溝部18が円周方向に等間隔で3箇所設けられている。この端部3aは、外筒体2の一端側2aの開口2bから飛び出す側の端部である。一方、外筒体2の一端側2aの開口2bの内側には、圧入(締りばめ)により嵌合されたブッシュ部材19が取り付けられている。ブッシュ部材19の内面には、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、溝部18に対応する一又は複数の突出部20が形成されている。ここでは、3箇所の突出部20が設けられている。ブッシュ部材19は円筒の内面に軸方向に形成された突出部20を有する形状を呈している。突出部20は、溝部18と係合することでロッド3の回転を規制する。尚、突出部20及び溝部18の間には、
図4(c)に示すように、ロッド3が外筒体2に対して軸方向に摺動可能な程度の微小な隙間が形成されている。また、同様に、ブッシュ部材19の内面とロッド3の外面との間にも、ロッド3が外筒体2に対して軸方向に摺動可能な程度の微小な隙間が形成されている。尚、
図4(a)に示すように、ロッド3の先端である端部3aには、電動シリンダシステム100の構成の必要に応じて治具(例えば
図1の圧入用治具108)を取り付けるためのボルト穴21が設けられている。
【0023】
図4(a)〜
図4(c)で説明したブッシュ部材19は、回転規制用のブッシュ部材である。外筒体2(第1の分割部材51)には、さらに、揺動防止用のブッシュ部材22が設けられている。このブッシュ部材22は、
図4(d)に示すように、円筒状に形成され、圧入により外筒体2内に嵌合される。ブッシュ部材22の内面とロッド3の外面との間には、ロッド3が外筒体2に対して摺動可能な程度の微小な隙間が形成されている。ブッシュ部材19及びブッシュ部材22は、
図2に示すように、所定の距離を有して配置されている。ブッシュ部材19及びブッシュ部材22は、ロッド3が軸に対して傾斜するように揺動動作することを防止する。ロッド3が揺動動作してしまうと、ねじ機構6の機能が発揮できず、すなわちボールねじ部に不必要な力が発生することとなり、さらに、ボールねじ部の各部品に偏った磨耗等が発生してねじ機構が損傷する問題が発生するおそれがある。ブッシュ部材19及びブッシュ部材22は、このような問題を防止する。以上のようにブッシュ部材19は、回転規制機能と、揺動防止機能を兼ね備える。
【0024】
尚、電動シリンダ1を構成する回転規制用のブッシュ部材と、溝部の構成はこれに限られるものではない。例えば、JIS B1601の角形スプライン、JIS B1603のインボリュートスプライン、JIS B1193のボールスプライン等のスプライン形状の溝及び突出部を有するブッシュ部材を構成するようにしてもよい。例えば、上述した溝部18及びブッシュ部材19に換えて、
図5に示すような溝部28及びブッシュ部材29を有するように構成しても良い。
図5(a)に示すように、溝部28が、溝部18と同様に、ロッド3の外周に、端部3aから軸方向に設けられている。溝部28は、円周方向に等間隔で8箇所設けられている。外筒体2に圧入されるブッシュ部材29の内面には、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、溝部28に対応する複数の突出部30が形成されている。ここでは、8箇所の突出部30が設けられており、溝部28と係合することでロッド3の回転を規制する。尚、突出部30及び溝部28の間には、適度の隙間が形成され、ブッシュ部材29の内面とロッド3の外面との間にも、適度の隙間が形成され、ロッド3が外筒体2に対して軸方向に摺動可能とされている。
【0025】
また、電動シリンダ1を構成する回転規制機構は、上述のブッシュ部材19,29を用いたブッシュ構造に限られるものではない。すなわち、
図6に示すような滑りキーを用いた構造としてもよい。すなわち、上述した溝部18及びブッシュ部材19に換えて、溝部32及びキー部材33を有するように構成してもよい。滑りキー構造とする場合には、上述したブッシュ部材22と同様の揺動防止機能のみを有する円筒状のブッシュ部材34を設ける必要がある。キー部材33は、外筒体2に設けた開口部33aにねじ部材33bにより取り付けられる。キー部材33は、外筒体2に取り付けられたときに、溝部32側に突出する突出部33cを有している。突出部33cは、溝部32と係合することでロッド3の回転を規制する。突出部33c及び溝部32の間には、ロッド3が外筒体2に対して軸方向に摺動可能な程度の微小な隙間が形成される。
【0026】
上述の回転規制機構のうち、ブッシュ部材19,29を用いたブッシュ構造は、キー部材33を用いた滑りキー構造に比べて電動シリンダ1の軸方向の長さを短縮するという観点及び構成の簡素化という観点からは有利である。この点について
図7を用いて説明する。
図7(a)に示すように滑りキー構造を採用した場合(キー部材33等を用いた場合)には、ロッド3に設けた溝部32の内、揺動防止用のブッシュ部材34の部分は、回転規制として使用できない。その一方で
図7(b)に示すようにブッシュ構造を採用した場合(ブッシュ部材19等を用いた場合)には、ロッド3に設けた溝部18は、先端まで回転規制用として用いることができる。よって、ブッシュ構造を採用した方が、
図7に示すL1分だけ軸方向の寸法を短縮することができる。
【0027】
ところで、電動機12は、モータ本体37と、出力軸38と、エンコーダ39とを有する。また、電動シリンダ1は、電動機12の出力軸38の回転力を回転軸5に伝達する伝達機構40を備えている。伝達機構40は、出力軸38に接続されるタイミングプーリ41と、回転軸5に接続されるタイミングプーリ42と、タイミングプーリ41,42間に巻き回されるタイミングベルト43とを有する。伝達機構40は、出力軸38の回転力を、回転軸5に伝達することができる。この際、タイミングプーリ41,42の径の大きさの関係を変更することで、所望の減速率で減速又は増速することができる。回転軸5は、外筒体2(軸受保持部13)及び伝達機構40において複数の軸受46により回転方向の力を受けるようにされている。軸受46は、所謂ラジアル軸受である。一方、上述した軸受4は、回転軸5にかかる推力を受けるようにされている。この軸受4は、所謂スラスト軸受であり、ベアリングナット47により、回転軸5と一体とされる。また、軸受4は、上述した軸受保持部13に嵌合されている。
【0028】
電動機12は、出力軸38が回転軸5と平行となるように配置されるとともに、外筒体2に対して軸方向に直交する位置に設けられる。すなわち、出力軸38と回転軸5が一致しておらず、全体としてコ字状(U字状)となるように配置されている。換言すると、回転軸5及び出力軸38は、伝達機構40に対して共に同じ方向に向けて配置されている。よって、外筒体2及びモータ本体37が軸方向に重なる位置に配置でき、すなわち装置全体の軸方向の寸法を小さくすることができる。尚、電動シリンダ1において、伝達機構40を設けずに、出力軸38と回転軸5が一致(互いに延長線上に位置)するように配置して、全体としてI字状となるように配置するようにしてもよい。この場合、伝達機構40は不要となるが、装置全体の軸方向の寸法は
図2を用いて説明した上述の方が短くでき、この観点からは有利である。電動機12と伝達機構40は、ボルト48で一体となるように固定されている。外筒体2と伝達機構40は、ボルト49で一体となるように固定されている。
【0029】
回転軸5と伝達機構40との間には、減速機44が配置されている。電動シリンダ1は、減速機44を備えることにより、所望の力及び速度で回転軸5を回転でき、所望の推力及び速度でロッド3を出し入れすることが可能である。また、電動シリンダ1は、伝達機構40の減速のみに頼ると伝達機構のプーリが大きくなり装置全体が大きくなりすぎるおそれがある。しかし、減速機44を有することによりこのような問題を解消して装置の小型化を可能とする。また、減速機は、電動機12と伝達機構40との間に配置することも可能である。しかし、
図2に示すように回転軸5と伝達機構40との間に配置することにより次の効果がある。すなわち、減速機を電動機12側に配置した場合には、電動機12の端部(
図2では下端部)が電動シリンダシステム100のシステム本体フレーム102側に近づく。システム全体の都合により、外筒体2の取付部である固定部11を伝達機構40側(
図2では上側)に移動するように設計変更したい場合がある。しかし、減速機を電動機12側に配置すると、電動機12が本体フレーム102に干渉し、上述の設計変更ができないこととなる。すなわち、システム全体の自由度が低下することとなる。
図2に示す電動シリンダ1は、減速機44が回転軸5と伝達機構40との間に配置されているため、該問題を防止でき、すなわち、電動シリンダシステム100のシステム全体の自由度を向上させることができる。
【0030】
以上のような電動シリンダ1により、例えば
図8に示すように被加工物120を押圧するとその押圧荷重X1が反力となって、矢印X2〜X8に示すように各部材を伝達することとなる。そして固定部11において固定されている外筒体2の矢印Y1で示される部分に引っ張り力が発生することとなる。また、電動シリンダ1が例えば
図8と逆方向に力が掛かるように用いられる場合には、矢印X2〜X5の部分に反力が各部材を伝達し、軸受4の固定部11側の端部4aから図中下方向に、軸受保持部13の当接部13aに、その反力が伝達することとなる。そして固定部11において固定されている外筒体2の矢印Y2で示される部分に圧縮力が発生することとなる。歪検出部7は、
図2に示すようにボールねじのナット部材15の外側に位置しており、すなわち、軸受4の固定部11側の端部4aと、固定部11との間の位置に設けられている。よって、歪検出部7は、上述したY1で示される引っ張り力が加わる範囲を考慮した場合にもY2で示される圧縮力が加わる範囲を考慮した場合にもそのロッド3に加わる軸方向の荷重(反力)を検出することが可能である。
【0031】
尚、電動シリンダ1は、電動シリンダ特有の構造、すなわち外筒体2には上述の反力以外の外力が発生しないことに鑑みて、この外筒体2の上述したような引張り力も圧縮力も反力として掛かる部分に歪検出部7を設けてもよい。すなわち、ケーシングとしての外筒体2を歪検出部の取付部として兼用させ、その構成の簡素化及び適切な軸方向の荷重検出を実現したものである。
【0032】
以上のように、電動シリンダ1は、上述したような外筒体2、ロッド3、軸受4、回転軸5、ねじ機構6、歪検出部7を備え、外筒体2(第2の分割部材52)に設けた歪検出部7により荷重検出を行うことができるので、別途ロードセル等を設ける必要がなくなり、構成の簡素化を実現できる。
【0033】
また、電動シリンダ1は、ロッド先端にロードセルを設けた場合に必要な出力ケーブル(可動側の端部がロッド先端と一緒に動くようにたるみを有した出力ケーブル)等を設ける必要もなくなり、このケーブルが繰り返される屈曲により断線する等の不具合も防止できる。よって、電動シリンダ1は、荷重検出を必要とする場合において、構成を簡素化できるとともに、軸方向の長さを縮小して装置の小型化を実現する。
【0034】
さらに、電動シリンダ1は、これを有する電動シリンダシステム100における構成(システム構成)の柔軟化を実現でき、すなわち、電動シリンダ自体の軸方向の長さ縮小や小型化により、システム全体のフレキシブルな外部構成を実現する。
【0035】
さらにまた、電動シリンダ1は、外筒体2が、分割及び結合可能な第1及び第2の分割部材51,52からなり、歪検出部7が、第1及び第2の分割部材のうちの一の分割部材(第2の分割部材52)に設けられてもよい。このように、電動シリンダ1は、2分割方式であることにより「納期の短縮化」を実現する。この点について、
図9及び
図10を用いて分割部材を有さない単一部材方式と比較して説明する。
【0036】
図9の電動シリンダ501は、比較例であり、外筒体502が単一部材方式である。外筒体502の方式が異なることや、軸受保持部材513が外筒体502と別体に設けられることを除いて上述した電動シリンダ1と同様の構成を備えるので、同じ部分には、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。電動シリンダ501は、
図9に示すように、外筒体502と、ロッド3と、軸受4と、回転軸5と、ねじ機構6と、歪検出部507とを備える。
【0037】
外筒体502は、例えば円筒状のケーシングであり、一端側502aに当該電動シリンダ501の取付箇所(システム本体フレーム102の取付部103)に固定するための固定部11を有している。外筒体502は、金属材料から削り出されることにより、すなわち固定部11を含めて所謂一体物(単一の部材)で形成されている。歪検出部507は、歪検出部7と同様に構成されている。
【0038】
図9の電動シリンダ501は、電動シリンダ1と同様に、構成を簡素化できるとともに、軸方向の長さを縮小して装置の小型化を実現する。しかし、納期を考慮すると次のような問題がある。外筒体502の製作は、外筒体502自体の製作工程と、この外筒体502に歪検出部507としての歪ゲージを貼り付ける工程とからなる。これらの工程は、別個に行う必要があるため、他の部品に比べて製作日程が長い。ストローク(ロッドの可動長さ)が標準の仕様であれば、この外筒体502を在庫しておけば、製作日程を短縮できる。しかし、例えば、
図9(b)に示すようなロングストローク仕様の電動シリンダや、逆にショートストローク仕様の電動シリンダの場合には、全ての長さに対応して在庫を持つことは現実的ではなく、製作日程の短縮は困難である。よって、完成までの製作日程が長くなり、納期の短縮化は困難である。
【0039】
一方で、
図2の電動シリンダ1の場合は、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、ストロークが異なる場合にも、歪検出部7が設けられる第2の分割部材52の長さを同じにすれば、この第2の分割部材52を在庫として保有することで、納期を短縮化できる。すなわち、先端側の第1の分割部材51とボールねじ軸とロッドだけをストロークに合わせて製作すればよいため、各部品の製作工程を短くできる。この第1の分割部材51は、歪検出部7を有する第2の分割部材52に比べて元々納期が短いからである。このように、電動シリンダ1は、外筒体2が少なくとも二以上の分割部材51,52からなり、歪検出部が二以上の分割部材のうちの一の分割部材52に設けられていることから電動シリンダの生産(製造)に要する時間を短縮化できる。
【0040】
また、電動シリンダ1の場合には、ロードセルに不具合が発生した場合にも、第2の分割部材52のみ変更すればよいというメリットもある。さらに、回転規制用のブッシュ部材19等が磨耗して不具合が発生した場合にも、第1の分割部材51のみ変更すればよいというメリットもある。また、外筒体2を2部材から構成することで部品点数は増えてしまうが、個々の部材(第1及び第2の分割部材51,52)の長さが短くなるため、加工は容易となる。このように、電動シリンダ1は、短納期化を実現するとともに、メンテナンス及び修理コストを抑えることも実現できる。
【0041】
次に、この電動シリンダ1を有する電動シリンダシステム100について説明する。
図1に示すように、電動シリンダシステム100に設けられた制御部101は、歪検出部7からの検出信号を受信する第1のコントローラ104と、周辺機器や作業状態に合わせての動作指示を行う第2のコントローラ105と、電動機12を駆動制御するとともに電動機12のエンコーダ39からの信号を受信するモータドライバ106とを有する。
【0042】
モータドライバ106は、第1のコントローラ104からの動作条件の指令に基づいて電動機12の回転制御(回転指令)を行う。モータドライバ106は、エンコーダ39からエンコーダパルス数の信号を受信し、この受信した情報を含めた電動機12の各種情報を第1のコントローラ104に送信する。第1のコントローラ104は、エンコーダ39からの情報を受信するとともに、歪検出部7からロッド3に加わる軸方向の荷重の検出出力信号を、すなわち荷重(推力)に比例した出力を受信する。第2のコントローラ105は、プログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller)であり、第1のコントローラ104から各種情報を受け取るとともに、第1のコントローラ104に対して部品の投入・取り出しを行う周辺機器や作業状態に合わせての動作指示等を行う。第1のコントローラ104は、随時ロッド3の位置や、ロッド3に加わる軸方向の荷重をモニタし、次の制御サイクルの動作条件を設定・演算してモータドライバ106への指示(制御)を行う。以上のように、制御部101は、電動機12のエンコーダ39からの信号と、荷重検出手段(荷重検出部)としての歪検出部7からの信号に基づいて電動シリンダ1を制御する。
【0043】
電動シリンダシステム100は、電動シリンダ1と、電動シリンダ1を制御する制御部101とを備え、電動シリンダ1は、上述したような外筒体2と、ロッド3と、軸受4と、回転軸5と、回転軸5の回転運動をロッド3の直線運動に変換して伝達するねじ機構6と、ロッド3に加わる軸方向の荷重を、ロッド3からねじ機構6を経由して伝達された位置で検出する荷重検出手段としての歪検出部7とを有し、制御部101が、電動機1のエンコーダ39からの信号と、荷重検出手段(歪検出部7)からの信号に基づいて電動シリンダ1を制御する構成としてもよい。電動シリンダシステム100は、システム構成を簡素化及び柔軟化するとともに、荷重検出及び位置検出を行うことを実現する。
【0044】
すなわち、電動シリンダシステム100は、荷重検出手段である歪検出部7が、ロッド3からねじ機構6を経由して伝達された位置でロッド3に加わる軸方向の荷重を検出するので、ロッド3先端にロードセルを設ける必要がなくなり、構成を簡素化できる。換言すると、伸縮動作するロッド3に荷重検出手段を設けるのではなく、固定側ともいえる外筒体2側に荷重検出手段を設けてもよい。また、ロッド先端にロードセルを設けた場合に必要な出力ケーブル等を設ける必要もなくなり、このケーブルが繰り返される屈曲により断線する等の不具合も防止できる。よって、荷重検出及び位置検出を必要とするシステムにおいて、構成を簡素化できるとともに、小型化を実現する。また、システム構成の柔軟化や、システム全体のフレキシブルな外部構成を実現する。
【0045】
電動シリンダシステム100は、電動シリンダ1を用いることにより、上述した電動シリンダ1自体の有利な効果をも兼ね備えるものである。尚、この電動シリンダシステム100に用いられる電動シリンダは、上述した電動シリンダ1に限られるものではなく、
図11に示す電動シリンダ61を用いてもよい。
【0046】
次に、電動シリンダシステム100に用いることが可能な電動シリンダ61について説明する。電動シリンダ61においては、歪検出部67が先端側(一端側62a)の第1の分割部材71に設けられることを除いて上述した電動シリンダ1と同様であるので、同じ部分(構成)には、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0047】
具体的に、電動シリンダ61は、
図11に示すように、外筒体62と、ロッド3と、軸受4と、回転軸5と、ねじ機構6と、歪検出部67とを備える。外筒体62は、第1の分割部材71と、第2の分割部材72とを有する。第1の分割部材71は、固定部11を有するとともに一端側62aに配置される。第2の分割部材72は、軸受4を保持する軸受保持部13を有している。第1及び第2の分割部材71,72は、例えばフランジ等の結合部71a,72aを、ねじ等の締結部材75により締結されることにより結合され、外筒体62として機能する。
【0048】
歪検出部67は、第1の分割部材71に設けられる。歪検出部67は、第1の分割部材71に設けられる点を除いて、上述した歪検出部7と同様の構成である。外筒体62の第1の分割部材71は、歪検出部67を取り付ける部分71dの外径が第1の分割部材71の他の部分の外径よりも小さくされた薄肉状とされている。
【0049】
以上のように、電動シリンダ61は、上述したような外筒体62、ロッド3、軸受4、回転軸5、ねじ機構6、歪検出部67を備え、外筒体62(第1の分割部材71)に設けた歪検出部67により荷重検出を行うことができるので、別途ロードセル等を設ける必要がなくなり、構成の簡素化を実現できる。
【0050】
さらに、電動シリンダ61は、軸方向の長さを縮小して装置の小型化を実現し、納期の短縮化を実現し、電動シリンダシステム100のフレキシブルな外部構成を実現する。また、歪検出部67が先端側の第1の分割部材71にあるため、交換の手間は少ない。
【0051】
また、電動シリンダシステム100に用いられる電動シリンダは、上述した電動シリンダ1,61のような2分割方式に限られるものではなく、3分割方式であってもよい。例えば、
図12〜
図14に示す電動シリンダ201,231,261であってもよい。次に、電動シリンダ201,231,261について説明するが、3分割方式であることを除いて上述した電動シリンダ1と同様であるので、同じ部分(構成)には、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0052】
図12に示す電動シリンダ201は、外筒体202と、ロッド3と、軸受4と、回転軸5と、ねじ機構6と、歪検出部207とを備える。外筒体202は、少なくとも二以上の分割及び結合可能な分割部材からなり、歪検出部207は、二以上の分割部材のうちの一の分割部材に設けられる。
【0053】
具体的に、例えば、外筒体202は、第1の分割部材211と、第2の分割部材212と、第3の分割部材213とを有する。第1の分割部材211は、固定部11を有するとともに一端側202aに配置される。第3の分割部材213は、軸受4を保持する軸受保持部13を有するとともに他端側202cに配置され、第2の分割部材212は、第1の分割部材211及び第3の分割部材213の間に配置されている。
【0054】
第1及び第2の分割部材211,212は、例えばフランジ等の結合部211a,212aを、ねじ等の締結部材215により締結されることにより結合される。第2及び第3の分割部材212,213は、例えばフランジ等の結合部212b,213bを、ねじ等の締結部材216により締結されることにより結合される。これにより第1乃至第3の分割部材211,212,213は、外筒体202として機能する。
【0055】
歪検出部207は、第2の分割部材212に設けられる。歪検出部207は、第2の分割部材212に設けられる点を除いて、上述した歪検出部7と同様の構成である。外筒体202の第2の分割部材212は、歪検出部207を取り付ける部分212dの外径が第2の分割部材212の他の部分の外径よりも小さくされた薄肉状とされている。
【0056】
以上のように、電動シリンダ201は、上述したような外筒体202、ロッド3、軸受4、回転軸5、ねじ機構6、歪検出部207を備え、外筒体202(第2の分割部材202)に設けた歪検出部207により荷重検出を行うことができるので、別途ロードセル等を設ける必要がなくなり、構成の簡素化を実現できる。
【0057】
尚、3分割方式の電動シリンダ201は、上述した2分割方式と同様に、
図9に示す単一部材方式と比べて納期の短縮化を実現する。また、電動シリンダ201は、メンテナンス及び修理コストを抑えることも実現できる。3分割方式の電動シリンダ201は、2分割方式の電動シリンダ1と比べると、少し構成要素が増加するが、個々の部材(第1乃至第3の分割部材211,212,213)の長さが短くなるため、加工は容易となる。
【0058】
図13に示す電動シリンダ231は、外筒体232と、ロッド3と、軸受4と、回転軸5と、ねじ機構6と、歪検出部237とを備える。外筒体232は、第1の分割部材241と、第2の分割部材242と、第3の分割部材243とを有する。第1の分割部材241は、固定部11を有するとともに一端側232aに配置される。第3の分割部材243は、軸受4を保持する軸受保持部13を有するとともに他端側232cに配置され、第2の分割部材242は、第1の分割部材241及び第3の分割部材243の間に配置されている。
【0059】
第1及び第2の分割部材241,242は、例えばフランジ等の結合部241a,242aを、ねじ等の締結部材245により締結されることにより結合される。第2及び第3の分割部材242,243は、例えばフランジ等の結合部242b,243bを、ねじ等の締結部材246により締結されることにより結合される。これにより第1乃至第3の分割部材241,242,243は、外筒体232として機能する。
【0060】
歪検出部237は、第1の分割部材241に設けられる。歪検出部237は、第1の分割部材241に設けられる点を除いて、上述した歪検出部7,207と同様の構成である。外筒体232の第1の分割部材241は、歪検出部237を取り付ける部分241dの外径が第1の分割部材241の他の部分の外径よりも小さくされた薄肉状とされている。
【0061】
以上のように、電動シリンダ231は、上述したような外筒体232、ロッド3、軸受4、回転軸5、ねじ機構6、歪検出部237を備え、外筒体232(第1の分割部材241)に設けた歪検出部237により荷重検出を行うことができるので、別途ロードセル等を設ける必要がなくなり、構成の簡素化を実現できる。
【0062】
図14に示す電動シリンダ261は、外筒体262と、ロッド3と、軸受4と、回転軸5と、ねじ機構6と、歪検出部267とを備える。外筒体262は、第1の分割部材271と、第2の分割部材272と、第3の分割部材273とを有する。第1の分割部材271は、固定部11を有するとともに一端側262aに配置される。第3の分割部材273は、軸受4を保持する軸受保持部13を有するとともに他端側262cに配置され、第2の分割部材272は、その主要部272bが、第1の分割部材271及び第3の分割部材273の間に配置されるように取り付けられる。
【0063】
第1及び第2の分割部材271,272は、例えばフランジ等の結合部271a,272aを、ねじ等の締結部材275により締結されることにより結合される。第2及び第3の分割部材272,273は、例えばフランジ等の結合部272b,273bを、ねじ等の締結部材276により締結されることにより結合される。これにより第1乃至第3の分割部材271,272,273は、外筒体262として機能する。
【0064】
第2の分割部材272は、第1の分割部材271との締結位置よりも一端側262aに筒状部分272aを有する。該筒状部分272aは、固定部11よりも一端側262aの位置まで設けられるとともに、固定部11よりも一端側262aの位置で、ロッド3の回転を規制する。具体的に、外筒体262(第2の分割部材272の筒状部分272a)の一端側262aの開口262bの内側には、圧入(締りばめ)により嵌合されたブッシュ部材19が取り付けられる。このブッシュ部材19は、
図4を用いて上述したのと同様に、ロッド3の溝部18と係合することでロッド3の回転を規制する。第1の分割部材271は、第2の分割部材272の筒状部材272aの外側を囲むように設けられる。
【0065】
歪検出部267は、第1の分割部材271に設けられる。歪検出部267は、第1の分割部材271に設けられる点を除いて、上述した歪検出部7,207と同様の構成である。外筒体262の第1の分割部材271は、歪検出部267を取り付ける部分271dの外径が第1の分割部材271の他の部分の外径よりも小さくされた薄肉状とされている。
【0066】
以上のように、電動シリンダ261は、上述したような外筒体262、ロッド3、軸受4、回転軸5、ねじ機構6、歪検出部267を備え、外筒体262(第1の分割部材271)に設けた歪検出部267により荷重検出を行うことができるので、別途ロードセル等を設ける必要がなくなり、構成の簡素化を実現できる。
【0067】
以上のように、3分割方式の電動シリンダ201,231,261は、軸方向の長さを縮小して装置の小型化を実現し、納期の短縮化を実現し、電動シリンダシステム100のフレキシブルな外部構成を実現する。