(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、空気中の被検知ガスを検知するガス検知素子が利用されてきた。このようなガス検知素子には、ガス感応物質である感応部と、当該感応部を加熱する加熱部と、前記感応部に通電する一対の端子部とを備えて構成されるものがある(例えば特許文献1−3)。
【0003】
特許文献1に記載のガスセンサは、絶縁基板の一方の面に感応部が設けられ、当該感応部上に互いに離間して一対の端子部が設けられる。また、特許文献2に記載のガスセンサは、絶縁基板の一方の面に互いに離間して一対の端子部が設けられ、当該一対の端子部の間を電気的に接続するように感応部が設けられる。また、特許文献3に記載のガスセンサは、絶縁膜上に加熱部が設けられ、当該加熱部を覆うように絶縁性のある保護膜が設けられる。この保護膜状に互いに離間する一対の端子部が設けられ、当該一対の端子部の間を電気的に接続するように感応部が設けられる。
【0004】
このようなガスセンサは、被検知ガスの濃度に応じて感応部の抵抗値が変化することで被検知ガスを検知する。具体的には、例えばガスセンサの感応部と所定の抵抗値を有する抵抗器とを直列接続したものに通電し、感応部と抵抗器との中点の電位の変化に基づき被検知ガスを検知している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、感応部の抵抗値の初期値は製造上、バラツキが生じる。このため、ガス検知素子に通電した場合、被検知ガスが存在しない場合であっても上述の中点の電位がばらついてしまう。このため、このような状態のガスセンサでは、精度良く被検知ガスを検知することができない。
【0007】
そこで、感応部をガスセンサに組み込む際に、感応部の抵抗値を測定し、当該測定値に応じて感応部に直列接続する抵抗器を選択して組み込むことが考えられる。しかしながら、このような方法では、異なる抵抗値の抵抗器を備えておく必要があるので材料管理上、手間を要する。また、汎用的な抵抗器では、予め設定された抵抗値のラインナップ(例えばE24系列やE96系列等)しかないので、最適値からずれている場合には複数の抵抗器を用いて構成する必要がある。このため、コストアップの要因となる。
【0008】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、ガス検知素子の抵抗値にバラツキがあった場合でも、抵抗器を変更することなくガス検知素子に通電することが可能なガス検知素子用通電制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るガス検知素子用通電制御装置の特徴構成は、
ガス濃度に応じて抵抗値が変化するガス検知素子と、
前記ガス検知素子に直列接続される抵抗器と、
前記抵抗器と直列に接続され、
前記ガス検知素子と前記抵抗器とに直流電圧を印加する電源から前記抵抗器に流れる電流を制御するスイッチ素子と、
前記スイッチ素子の開閉状態を制御するパルス信号を出力する制御信号出力部と、
前記抵抗器における前記電流が流入する側の端子と接地電位との間に配置されるコンデンサと、
前記コンデンサの端子電圧を前記ガス濃度に応じた検出結果として出力する出力端子と、
を備える点にある。
【0010】
このような特徴構成とすれば、パルス信号に応じて抵抗器に流れる電流を制限することができるので、抵抗器の見かけ上の抵抗値を本来の抵抗値よりも大きくすることができる。したがって、ガス検知素子の抵抗値にバラツキがあった場合でも、パルス信号によりガス検知素子と抵抗器とによる抵抗比を一定にすることができるため、抵抗器を変更することなくガス検知素子に適切に通電することが可能となる。
【0011】
また、前記スイッチ素子を開状態にする時間が、前記抵抗値の初期値に基づいて予め設定されてあると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、ガス検知素子の抵抗値の初期値により設定されたパルス信号に応じて、抵抗器に流れる電流を制限することができる。したがって、ガス検知素子の抵抗値にバラツキがあった場合でも抵抗器を変更することなくガス検知素子に通電することが可能となる。
【0013】
また、前記スイッチ素子は、前記ガス検知素子を流れた電流が前記抵抗器を介して流れるように構成されてあると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、パルス信号を、接地電位を基準に生成することができる。したがって、パルス信号におけるHi信号を生成する上で、所定の電位にクランプする必要がないのでパルス信号を容易に且つ省電力で生成することができる。したがって、例えばガス検知素子用通電制御装置の電力消費を低減できる。
【0015】
また、前記スイッチ素子が、前記抵抗器と接地電位と間に配置されたN型MOS−FETであると好適である。
【0016】
このような構成とすれば、正常なパルス信号が入力されるまでの間に、抵抗器に電流が流れることがない。すなわち、抵抗器に流れる電流を遮断することができる。したがって、誤検出を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明に係るガス検知素子用通電制御装置(以下「通電制御装置」とする)100は、被検知ガスの濃度に応じて抵抗値が変化するガス検知素子の初期抵抗値にバラツキがあった場合でも、被検知ガスの検知において許容させる機能を備えている。以下、図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る通電制御装置100の構成を模式的に示した回路図である。
図1に示されるように、通電制御装置100は、ガス検知素子10、抵抗器20、スイッチ素子30、制御信号出力部40、コンデンサ50、出力端子60を備えて構成される。特に制御信号出力部40は、CPUを中核部材として、ガス検知素子10の初期抵抗値のバラツキを許容させる種々の処理を行うための機能部がハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0020】
ガス検知素子10は、
図1に示されるように、検出電極11、ガス感応部12、加熱部13を備えて構成される。検出電極11は金属電極線により構成される。ガス感応部12は、被検知ガスと接触自在に設けられる。加熱部13は、ガス感応部12を加熱し、例えばコイル状に構成される。検出電極11及び加熱部13は、例えば、白金、又は白金にロジウム等を添加したもの等を用いて構成される。もちろん、他の材料を用いて構成することも可能である。
【0021】
ガス感応部12は、金属酸化物半導体から構成されている。このような金属酸化物半導体としては、例えば、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、又は酸化セリウム等の一種又は二種以上からなるものが挙げられ、被検知ガスの種類に応じて任意に選択可能である。被検知ガスとしては、例えば、メタンガス、液化石油ガス(LPG)、水素、一酸化炭素、硫化水素、フロンガス、アンモニア、その他の可燃性ガス、毒性ガス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
このようなガス検知素子10による被検知ガスの検知は、被検知ガスがガス感応部12に付着することによりガス感応部12の抵抗値が変化し、ガス検知素子10の抵抗値(一対の検出電極11間の抵抗値)も変化する。すなわち、ガス検知素子10は、ガス濃度に応じて抵抗値が変化する。このような抵抗値の変化に基づき、被検知ガスを検知している。なお、このような動作は公知であるので詳細な説明は省略する。ガス検知素子10には、
図2の「A点」で示されるような電位V1の直流電圧が印加される。
【0023】
ここで、ガス検知素子10の抵抗値は一定であることが望ましいが、ガス検知素子10の製造上、抵抗値にバラツキが生じる。したがって、ガス検知素子10に定電圧を印加した場合でも、初期抵抗値にバラツキがあるので、被検知ガスの濃度に応じた出力もばらついてしまう。このため、ガスを検知したと判定する判定閾値THを設定するにあたり、上述のバラツキを考慮して設定する必要があるので、適切に被検知ガスを検知することが可能であるとは言い難い。そこで、本通電制御装置100は所定のガス濃度中でのガス検知素子10の抵抗値に応じて通電を制御する。
【0024】
抵抗器20は、ガス検知素子10に直列接続される。本実施形態では、抵抗器20は、ガス検知素子10との間に他の部品を介することなく直接、接続される。この抵抗器20の抵抗値は固定値である。すなわち、抵抗器20は固定抵抗器であり、被検知ガスの濃度に伴って変化するものではない。
【0025】
スイッチ素子30は、抵抗器20と直列に接続され、抵抗器20に流れる電流を制御する。本実施形態では、スイッチ素子30は、ガス検知素子10を流れた電流が抵抗器20を介して流れるように構成される。すなわち、電源供給側から接地電位側に向かって、ガス検知素子10、抵抗器20、スイッチ素子30の順に直列に接続される。本実施形態では、
図1に示されるように、スイッチ素子30は、抵抗器20と接地電位との間に配置されたN型MOS−FETで構成される。N型MOS−FETのドレイン端子が抵抗器20に接続され、ソース端子が接地される。
【0026】
制御信号出力部40は、スイッチ素子30の開閉状態を制御するパルス信号を出力する。上述のように、本実施形態では、スイッチ素子30はN型MOS−FETが用いられる。したがって、スイッチ素子30は、Hi信号で開状態となり、Lo信号で閉状態となる。パルス信号は、
図2の「B点」で示されるようなHi信号とLo信号とを周期的に繰り返す信号からなる。スイッチ素子30を開状態にする時間は、ガス検知素子10の抵抗値の初期値に基づいて予め設定される。スイッチ素子30を開状態にする時間とは、上述のHi信号が出力される時間に相当する。ガス検知素子10の抵抗値は、上述のようにバラツキがあるが、製造後、所定のガス濃度中で測定することにより既知である。このようなガス検知素子10の抵抗値に基づき、Hi信号が出力される時間が設定される。
【0027】
Hi信号が出力される時間は、被検知ガスが存在しない状態において、出力端子60から出力される検出結果が一定値となるように設定される。Hi信号が出力される時間は、
図3に示されるように、ガス検知素子10の初期抵抗値が大きい程短くなり、ガス検知素子10の初期抵抗値が小さい程長くなるように設定される。
【0028】
具体的には、例えばガス検知素子10の初期抵抗値がR1以上R2未満であればHi信号の出力時間をT1に設定し、これを周期的に繰り返すと良い。また、ガス検知素子10の初期抵抗値がR2以上R3未満であればHi信号の出力時間をT2(ただし、T2<T1)に設定し、これを周期的に繰り返すと良い。同様に、ガス検知素子10の初期抵抗値がR3以上R4未満であればHi信号の出力時間をT3(ただし、T3<T2)に設定して周期的に繰り返し、初期抵抗値がR4以上R5未満であればHi信号の出力時間をT4(ただし、T4<T3)に設定し周期的に繰り返すと良い。もちろん、R5以上にあっても、Hi信号の出力時間は適宜設定される。
【0029】
図3に示されるようなマップに基づきHi信号の出力時間を設定すると好適である。制御信号出力部40は、このように設定された時間に基づくパルス信号を、ガス濃度に拘らず、継続して出力する。これにより、抵抗器20に流れる電流を調整する(制限する)ことができるので、抵抗器20の見かけ上の抵抗値をガス検知素子10の所定のガス濃度中での抵抗値に応じて調整することが可能となる。
【0030】
コンデンサ50は、抵抗器20における電流が流入する側の端子と接地電位との間に配置される。抵抗器20における電流が流入する側の端子とは、ガス検知素子10に接続される側の端子である。接地端子とはスイッチ素子30に用いられるN型MOS−FETのソース端子が接続される電位と同電位である。スイッチ素子30が開状態にある場合(N型MOS−FETがオフ状態である場合)には、ガス検知素子10に印加される電圧でコンデンサ50が充電され、スイッチ素子30が閉状態にある場合(N型MOS−FETがオン状態である場合)には、ガス検知素子10の抵抗値と抵抗器20の抵抗値との抵抗比に基づきガス検知素子10に印加される電圧を分圧した電圧になるまでコンデンサ50が放電される。したがって、コンデンサ50は、
図2の「C点」で示されるように、ガス検知素子10に印加される電位(電圧)V1と、ガス検知素子10と抵抗器20とにより分圧された電位(電圧)V2との間で充放電を繰り返す。
【0031】
なお、C点ではこのようなガス検知素子10に印加される電位V1及びガス検知素子10と抵抗器20とにより分圧された電位V2が観測されるが、コンデンサ50の容量を大きくしたり、新たに抵抗器やコンデンサを加えたりすることにより、C点での電位V1及び電位V2の変動を小さくし、見かけ上一定値として測定することが可能である。また、制御信号出力部40から出力されるパルス信号の周波数を速くすることでも、見かけ上一定値として測定することが可能である。
【0032】
出力端子60は、コンデンサ50の端子電圧をガス濃度に応じた検出結果として出力する。コンデンサ50の端子電圧とは、抵抗器20における電流が流入する側の端子の電圧である。すなわち、上述のように、V1及びV2の2つの電位間において充放電を繰り返す電圧である。出力端子60は、このような電圧を検出結果として出力する。
【0033】
検出結果について、例を挙げて具体的に説明する。
図4の上段には、被検知ガスの濃度の時間変化が示される。時刻t1からt2までは、被検知ガスの濃度は略0ppmに近いので、出力端子60からの検出結果は(a)に示されるように、被検知ガスが検知したと判定する基準となる判定閾値TH以下である。(a)における上下方向の矢印は、t1からt2において被検知ガスの濃度の微弱な変化に起因した変動を示すものである。
【0034】
その後、被検知ガスの濃度がn1ppmまで上昇すると、出力端子60からの検出結果は(b)に示されるように破線で示された(a)の状態の検出結果に比べて上昇する。しかしながら、検出結果は判定閾値TH以下であるので、被検知ガスを検知したと判定しない。時刻t3からt4にあっては、被検知ガスの濃度は略0ppmに近くなるので、出力端子60からの検出結果は(c)に示されるように、(a)と同様に小さくなる。なお、破線で示される波形は、(b)の状態における検出結果を示している。
【0035】
一方、被検知ガスの濃度がn2ppmまで上昇すると、出力端子60からの検出結果は(d)に示されるように判定閾値THよりも大きくなる。これより、被検知ガスを検知したと判定する。このように被検知ガスを検知することが可能である。なお、時刻t5以降は被検知ガスの濃度が略0ppmに低下しているので、(e)に示されるように(a)と同様に検出結果は判定閾値TH以下となる。
【0036】
このように本通電制御装置100によれば、パルス信号に応じて抵抗器20に流れる電流を制限することができるので、抵抗器20の見かけ上の抵抗値を本来の抵抗値よりも大きくすることができる。したがって、ガス検知素子10の抵抗値にバラツキがあった場合でも、パルス信号によりガス検知素子10と抵抗器20とによる抵抗比を一定にすることができるため、抵抗器20を変更することなくガス検知素子10に適切に通電することが可能となる。
【0037】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、スイッチ素子30を開状態にする時間が、ガス検知素子10の抵抗値の初期値に基づいて予め設定されてあるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。スイッチ素子30を開状態にする時間は、例えばガス検知素子10の使用時間に応じて補正される構成としても良い。このような構成とすれば、ガス検知素子10の抵抗値が経年変化した場合でも適切に通電を制御し、被検知ガスを検知することが可能となる。
【0038】
上記実施形態では、電源供給側から見て、ガス検知素子10、抵抗器20、スイッチ素子30の順に直列に接続されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。電源供給側から見て、抵抗器20、スイッチ素子30、ガス検知素子10の順に直列に接続することも可能である。このような回路構成が、
図5に示される。
【0039】
この場合、
図5に示されるように、スイッチ素子30は、P型MOS−FETを用いると良い。P型MOS−FETのソース端子が抵抗器20に接続され、ドレイン端子がガス検知素子10に接続される。また、コンデンサ50は、抵抗器20の電流が流入する側の端子と接地端子との間に設けると良い。出力端子60からの検出結果は、抵抗器20における電流が流入する側の端子の電圧が相当する。
【0040】
図6には、このような構成における各部の波形が示される。上記第1の実施形態と同様に、ガス検知素子10には電位V1の直列電圧が印加される(A点)。また、制御信号出力部40からは、B点で示されるようなパルス信号が出力される。ここで、上記第1の実施形態と異なりスイッチ素子30としてP型MOS−FETを用いているので、パルス信号の正負の論理が逆になっている。出力端子60からの検出結果がC点の波形として示される。C点の波形で示されるように、
図5のような構成の場合には、ガス検知素子10の抵抗値と抵抗器20の抵抗値とにより電位V1が分圧された電位V2を基準として充放電を繰り返す電圧を検出結果として出力する。
【0041】
このように、
図5のような構成であっても、スイッチ素子30を開状態にする時間をスイッチ素子30の抵抗値に基づき設定することにより適切に被検知ガスを検知することが可能となる。また、P型MOS−FETを用いる場合には、電源供給側から見て、スイッチ素子30、抵抗器20、ガス検知素子10の順に直列に接続することも可能である。
【0042】
上記実施形態では、スイッチ素子30がN型MOS−FETを用いて構成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。
図1に示される回路構成において、N型MOS−FETに換えてnpn型バイポーラトランジスタを用いて構成することも当然に可能である。また、スイッチ素子30をP型MOS−FETで構成する場合には、当該P型MOS−FETに換えてpnp型バイポーラトランジスタを用いて構成することも当然に可能である。更には、スイッチ素子30及び制御信号出力部40をマイコンのオープンドレイン端子を用いて構成することも当然に可能である。