特許第5861884号(P5861884)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 荒川化学工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5861884
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】エキソ型ノルボルネン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/67 20060101AFI20160202BHJP
   C07C 47/445 20060101ALI20160202BHJP
   C07C 49/553 20060101ALI20160202BHJP
   C07C 49/798 20060101ALI20160202BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160202BHJP
【FI】
   C07C45/67
   C07C47/445
   C07C49/553
   C07C49/798
   !C07B61/00 300
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-77711(P2012-77711)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-203728(P2013-203728A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】曽根 孝明
【審査官】 品川 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−536068(JP,A)
【文献】 特表2008−526974(JP,A)
【文献】 特表2002−534404(JP,A)
【文献】 特開昭63−139161(JP,A)
【文献】 特開2006−104378(JP,A)
【文献】 特開2007−261980(JP,A)
【文献】 特開2006−160712(JP,A)
【文献】 特開2011−153160(JP,A)
【文献】 特開昭53−103458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 45/67
C07C 47/445
C07C 49/553
C07C 49/798
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】
(式中、Rは水素、または置換基を有していてもよいメチル基及びアルキル基もしくはフェニル基のいずれかを表す。)で表わされる2位にアシル基を有するエンド型ノルボルネン化合物(A)に、アセトニトリル中における共役酸の酸解離定数が20以上の強塩基性有機化合物(B)を接触させることを特徴とするエキソ型ノルボルネン化合物の製造方法。
【請求項2】
アセトニトリル中で求められた共役酸の酸解離定数が20以上の強塩基性有機化合物(B)が、グアニジン塩基類、アミジン系及びグアニジン系多窒素多複素環状化合物の強塩基類およびそのポリマ−担持強塩基類、フォスファゼン塩基類、プロアザフォスファトラン塩基類からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項記載のエキソ型ノルボルネン化合物の製造方法。
【請求項3】
2位にアシル基を有するエンド型ノルボルネン化合物(A)に、アセトニトリル中で求められた共役酸の酸解離定数が20以上の強塩基性有機化合物(B)を接触させて得られた反応液を蒸留することによりエキソ型ノルボルネン化合物を得ることを特徴とする請求項1又は2記載のエキソ型ノルボルネン化合物の製造方法。
【請求項4】
2位にアシル基を有するエンド型ノルボルネン化合物(A)に、アセトニトリル中で求められた共役酸の酸解離定数が20以上の強塩基性有機化合物(B)を接触させつつ反応液を蒸留することによりエキソ型ノルボルネン化合物を得ることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のエキソ型ノルボルネン化合物の製造方法。
【請求項5】
2位にアシル基を有するエンド型ノルボルネン化合物(A)に、アセトニトリル中で求められた共役酸の酸解離定数が20以上の強塩基性有機化合物(B)を接触させつつ反応液を蒸留するとともに2位にアシル基を有するエンド型ノルボルネン化合物を連続的または分割して追加供給しながら反応と蒸留を継続することによりエキソ型ノルボルネン化合物を得ることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のエキソ型ノルボルネン化合物の製造方法。
【請求項6】
2位にアシル基を有するエンド型ノルボルネン化合物(A)に、アセトニトリル中で求められた共役酸の酸解離定数が20以上の強塩基性有機化合物(B)を接触させつつ反応液を蒸留するとともに2位にアシル基を有するエンド型ノルボルネン化合物(A)と強塩基性有機化合物(B)を同時あるいは別々に連続的または分割して追加供給しながら反応と蒸留を継続することによりエキソ型ノルボルネン化合物を得ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエキソ型ノルボルネン化合物の製造方法。
【請求項7】
蒸留により得られたエキソ型ノルボルネン化合物を吸着剤に接触させることを特徴とする請求項3〜6に記載のエキソ型ノルボルネン化合物の製造方法。
【請求項8】
吸着剤がシリカゲル、活性アルミナ、活性炭、活性白土、イオン交換樹脂、珪藻土及びセルロ−スからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項に記載のエキソ型ノルボルネン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキソ型ノルボルネン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−アシル−5−ノルボルネン類は、例えば電子材料や光学材料用モノマー類の原料前駆体として有用であり、還元してメチロール基としたり、酸化してカルボン酸やエステルあるいは酸ハロゲン化物等に誘導して利用されている。特にエキソ体はエンド体に比べて重合特性や光学特性に優れていることが知られている(特許文献1〜4参照)。
【0003】
2−置換−5−ノルボルネン類はディールス−アルダー反応により製造されるものであり、該反応ではエンド付加体が優先的に得られることがよく知られている(非特許文献1参照)。このエンドリッチ付加体を水酸化アルカリ溶液や金属アルコラート溶液中でエピメリ化反応によりエキソ富化しようとする試みがなされてきた(特許文献5及び非特許文献2〜4参照)。しかしながら、これらの固体塩基類を用いた場合には、反応を円滑に進めるため溶媒で希釈溶解した反応系にするという工業的不利益の他に、アルデヒド基の場合(R=H)には塩基性が強過ぎてアセタール化反応、アルドール縮合反応、重合反応、樹脂化等の副反応を引き起こし高収率でエキソ(富化)体が得られないという欠点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011−503004号公報
【特許文献2】特表2010−522254号公報
【特許文献3】特開2007−261980号公報
【特許文献4】特開2006−160712号公報
【特許文献5】特表平03−505452号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.Furukawa等,J.Am.Chem.Soc.,92,6548(1970)
【非特許文献2】R.S.Bly等,J.Org.Chem.,34,2346(1969)
【非特許文献3】F.Kasper,J.prakt.Chem.,311,201(1969)
【非特許文献4】J.G.Dinwiddie等,J.Org.Chem.,30,766(1965)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、電子材料や光学材料用モノマー類の原料前駆体として有用なエキソ体を多く含む(エキソ富化体)ノルボルネン化合物、特に2−アシル−5−ノルボルネン類の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、かかる課題に鑑み鋭意検討した結果、エキソ体を多く含む(エキソ富化)ノルボルネン化合物を製造する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、一般式(1):
【化1】
(式中、Rは水素、または置換基を有していてもよいメチル基及びアルキル基もしくはフェニル基のいずれかを表す。)で表わされる2位にアシル基を有するエンド型ノルボルネン化合物(A)に、アセトニトリル中における共役酸の酸解離定数が20以上の強塩基性有機化合物(B)を接触させることを特徴とするエキソ型ノルボルネン化合物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子材料や光学材料用モノマー類の原料前駆体として有用なエキソ体を多く含むエキソ型ノルボルネン化合物、特に2−アシル−5−ノルボルネン類を効率的に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、2位にアシル基を有するエンド型ノルボルネン化合物(A)(以下、成分(A)という)に、アセトニトリル中における共役酸の酸解離定数が20以上の強塩基性有機化合物(B)(以下、成分(B)という)を接触させることを特徴とする。
本発明の製造に用いられる成分(A)は、特に限定されないが、通常は一般式(1)
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、Rは水素または置換基を有していてもよいアルキル基もしくはフェニル基を表す。)で表わされる。成分(A)は、公知の方法によりアクロレインあるいはビニルケトン類(CH2=CH−CO−R)(式中、Rは水素または置換基を有していてもよいアルキル基もしくはフェニル基を表す。)とシクロペンタジエンとのディールス−アルダー反応によって調製される。
【0013】
本エピメリ化(異性化)反応は、通常は非水系で成分(B)を用いる。成分(B)のアセトニトリル中における共役酸の酸解離定数は、I.Leito等,J.Org.Chem.,70,1019(2005)に記載の方法で行う。なお、反応の際には溶剤を用いてもよい。溶剤としては、成分(A)と反応し得る一級アミン類や成分(B)の窒素と反応する化合物や酸性物質等以外のものであれば、通常の炭化水素系溶剤の他、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アセトニトリルやジメチルスルホキシド(DMSO)等の極性有機溶剤を使用して反応することもできる。
【0014】
成分(B)としては、テトラメチルグアニジンやポリグアニジン等のグアニジン塩基類(グアニジン及びグアニジン誘導体としてその置換体とポリグアニド類を含む)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、トリアザビシクロデセン(TBD)、N−メチル−トリアザビシクロデセン(MTBD)等に代表されるアミジン系及びグアニジン系多窒素多複素環状化合物やそれらのポリマー担持強塩基類、フォスファゼン(Schweisinger)塩基類、プロアザフォスファトラン(Verkade)塩基類が挙げられる。使用量は、成分(A)に対して成分(B)が0.1〜20モル%程度が適量であり、好ましくは0.5〜10モル%がより適量である。
【0015】
反応温度は通常−60〜140℃であり、好ましくは−20〜100℃、より好ましくは0〜80℃である。140℃を超えると熱異性化平衡とともに熱分解・熱重合等の副反応が複雑に起こってしまい、収率が低下することがある。
【0016】
反応時間は通常1分〜24時間であるが、触媒量及び反応温度を調整することにより適宜変更可能である。
【0017】
得られた反応液を、必要に応じて精製することで、エキソ型ノルボルネン化合物を得ることができる。精製方法としては特に限定されないが、反応液を蒸留することが、低沸点のエキソ型ノルボルネン化合物を選択的に取り出し、反応液系内にはエンド型ノルボルネン化合物を残存させて更にエピメリ化(異性化)平衡反応を継続して行える反応場を提供できる点から好ましい。
【0018】
反応液には成分(B)が含まれていてもよく、成分(B)を接触させつつ反応液を蒸留することが、低沸点のエキソ型ノルボルネン化合物を選択的に取り出し、反応液系内にはエンド型ノルボルネン化合物と成分(B)を残存させて更にエピメリ化(異性化)平衡反応を継続して行うので連続的にエキソ型ノルボルネン化合物を製造できる点から好ましい。
【0019】
なお、成分(A)に、成分(B)を接触させつつ反応液を移すことなくそのまま蒸留するとともに成分(A)必要に応じて成分(B)を連続的または分割して追加供給しながら反応と蒸留を継続することで連続的にエキソ型ノルボルネン化合物を製造することができる。
【0020】
上記方法で得たエキソ型ノルボルネン化合物に成分(B)またはその分解生成物等の塩基性化合物や酸性化合物が混入していた場合には再びエピメリ化が起こる可能性があり、長期の保存安定性を確実なものとするためこれらの化合物を、吸着剤を用いて除去することが好ましい。
【0021】
吸着剤としては、シリカゲル、活性アルミナ、活性炭、活性白土、イオン交換樹脂、珪藻土及びセルロ−スから選択される少なくとも1種類を用いることができる。吸着剤の使用量は特に限定されないが、エピメリ化後蒸留精製して得られたエキソ型ノルボルネン化合物に対し1重量%から100重量%を、好ましくは5〜50重量%を、より好ましくは10〜25重量%である。処理方法は特に限定されないが、通常、得られたエキソ型ノルボルネン化合物に吸着剤を加え、10分〜120分間混合攪拌した後、濾過するかまたは該吸着剤の充填塔にエピメリ化後蒸留精製したエキソ体を通して長期保存可能なエキソ体を得ることができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例、比較例、応用例及び保存安定性試験によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。
【0023】
[2−ホルミル−5−ノルボルネン(R=H)の例]
実施例1
攪拌機、温度計、窒素導入口を装備した50mL四口フラスコにエンドリッチ2−ホルミル−5−ノルボルネン(A)12.22g(100ミリモル)を仕込み、25℃の恒温槽に浸し、窒素雰囲気攪拌下にエンドリッチ2−ホルミル−5−ノルボルネン(A)に対し強塩基性有機化合物(B)として5モル%に相当するジアザビシクロウンデセン(DBU)0.76g(5ミリモル≒0.75mL)を注入してエピメリ化反応を開始した。反応の追跡はガスクロマトグラフィー(GC)を用いて行った(装置:(株)島津製作所製GC17A;検出器:FID;カラム:DB5使用)。反応液の一部を1,2,4及び24時間でサンプリング、そのGC分析結果を表1に示した。なお、エンドリッチ2−ホルミル−5−ノルボルネン(A)の組成はエキソ体19.9%、エンド体76.9%であった。
【0024】
実施例2及び比較例1〜2
使用した塩基を表1のように変更した他は実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0025】
【表1】
【0026】
(表中、DBUはジアザビシクロウンデセン、28%NaOMeは28重量%ナトリウムメトキシドを含有したメタノール溶液、MTBDはN−メチル−トリアザビシクロデセン、1M−t−BuOKは1モル/l濃度のt−ブトキシドカリウムを含有したt−ブタノール溶液を表す。)
【0027】
表1の実施例1及び2に示した強塩基性有機化合物(B)を用いたエピメリ化(異性化)反応では、副生物も少なくエンド体のエキソ体へのエピメリ化(異性化)が主反応であるのに対し、比較例1及び2に示した金属アルコラート塩基を用いた反応では高沸点化合物であるアセタール化合物やアルドール縮合物が主生成物として得られ、目的とするエピメリ化(異性化)生成物はほとんど得られないことがわかった。
【0028】
実施例3
攪拌機、温度計、窒素導入口を装備した50mL四口フラスコにエンドリッチ2−ホルミル−5−ノルボルネン(A)12.22g(100ミリモル)を仕込み、5℃の恒温槽に浸し、窒素雰囲気攪拌下にエンドリッチ2−ホルミル−5−ノルボルネン(A)に対し強塩基性有機化合物(B)として5モル%に相当するテトラメチルグアニジン(TMG)0.58g(5ミリモル≒0.63mL)を注入してエピメリ化反応を開始した。5℃で1時間反応させた後、25℃で1時間、50℃で2時間、70℃で2時間、100℃で2時間反応させた。その後表2に記した温度に段階的に昇温して一定時間反応を継続した。反応の追跡はガスクロマトグラフィーを用いて行った(装置:(株)島津製作所製GC17A;検出器:FID;カラム:DB5使用)。反応液の一部を所定時間毎にサンプリングし、結果を表2に示した。原料(A)の組成はエキソ体19.9%、エンド体76.9%であった。なお、表2各欄の数値はエキソ体/エンド体比を記した。
【0029】
実施例4〜8及び比較例3〜5
使用した塩基をTMGから表2のように変更した他は実施例3と同様に行った。なお、実施例8は6時間で反応を終了させた。結果を表2に示した。
【0030】
【表2】
【0031】
(表中、pKBHは酸解離定数、TMGはテトラメチルグアニジン、DBUはジアザビシクロウンデセン、DBNはジアザビシクロノネン、PS−BnTBDはN−ベンジルポリスチレン担持トリアザビシクロデセン、MTBDはN−メチル−トリアザビシクロデセン、BTPPは、フォスファゼン塩基P1−t−ブチル−トリス(テトラメチレン)、Pyはピリジン、H+スポンジはプロトンスポンジを表す。)
【0032】
表2の5℃から100℃まで順次昇温した実施例3〜8及び比較例3〜5より、アセトニトリル中で求められた共役酸の酸解離定数が20以上の強塩基性有機化合物(B)であるTMG、DBU、DBN、PS−BnTBS、MTBD及びBTPPを用いた実施例3〜8ではエピメリ化(異性化)反応が容易に進行し、エキソ体/エンド体比が1.2前後の平衡値に到達するのに対し、無触媒や弱塩基のピリジンあるいはプロトンスポンジの比較例3〜5では反応温度にかかわりなくほとんどエピメリ化(異性化)が進行しないことがわかった。
【0033】
実施例9
攪拌機、温度計、窒素導入口を装備した50mL四口フラスコにエンドリッチ2−ホルミル−5−ノルボルネン(A)12.22g(100ミリモル)と同量のトルエン12.22gを仕込み、25℃の恒温槽に浸し、窒素雰囲気攪拌下にエンドリッチ2−ホルミル−5−ノルボルネン(A)に対し強塩基性有機化合物(B)として5モル%に相当するジアザビシクロウンデセン(DBU)0.76g(5ミリモル≒0.75mL)を注入してエピメリ化反応を開始した。25℃で4時間反応後、昇温して50℃とし2時間反応を継続した。反応追跡はガスクロマトグラフィーを用いて行った(装置:(株)島津製作所製GC17A;検出器:FID;カラム:DB5使用)。6時間反応後の結果を表3に示した。なお、エンドリッチ2−ホルミル−5−ノルボルネン(A)の組成はエキソ体19.9%、エンド体76.9%であった。
【0034】
実施例10〜17
使用した溶媒をトルエンからクロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、t−ブタノ−ル(t−BuOH),シクロヘキサノン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)及び無溶媒に替えた他は実施例9と同様に行い、結果を表3に示した。
【0035】
【表3】
【0036】
実施例18
温度計、窒素導入毛細管及びウイットマ−精留塔(60cm、約5段)を装備した300mLナシ型四口フラスコにエンドリッチ2−ホルミル−5−ノルボルネン(A)122.2g(1モル)を仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、氷冷下にジアザビシクロウンデセン(DBU)7.6(0.05モル)を添加して窒素置換して室温で1日放置した。その後、減圧下に窒素バブリング開始し、80℃の油浴に浸し液温70℃1000Pa前後の減圧度で2時間維持した後、減圧度を300〜400Paまで高め沸点48〜52℃の留分を分取した。蒸留結果を表4に示した。
【0037】
【表4】
【0038】
実施例19
温度系、窒素導入毛細管及びディクソンパッキン充填精留塔(100cm、約10段)を装備した300mLナシ型四口フラスコにエンドリッチ2−ホルミル−5−ノルボルネン(A)122.2g(1モル)を仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、室温下にジアザビシクロウンデセン(DBU)7.6(0.05モル)を添加して窒素置換した。その後、減圧下に窒素バブリング開始し、80℃の油浴に浸し液温70℃1000Pa前後の減圧度で2時間維持した後、減圧度を350〜400Paまで高め還流比10:1(戻し:留出弁開放時間比)で沸点49〜51℃の留分を分取した。蒸留結果を表5に示した。
【0039】
【表5】
【0040】
保存安定性試験1
実施例18で得た留分2を5.0gとり、トルエン5.0gとシリカゲル0.5gを加えて1時間攪拌した。シリカゲルを濾過した後、トルエンを減圧留去したサンプルを5℃及び25℃で保管し、所定時間毎にサンプリングしたものをGC分析してエキソ/エンド比を求めて保存安定性(エピメリ化)の有無を調べた。その結果を表6に示した。
【0041】
保存安定性試験2〜4及び比較保存安定性試験1
シリカゲルに替えて吸着剤をアルミナ、活性炭、活性白土及び比較例として吸着剤未処理のままで保存安定性試験1と同様に行った。それらの結果を表6に示した。
【0042】
【表6】
【0043】
保存安定性試験5
実施例19で得た留分2を10.0gとり、シリカゲル2.0gを充填したカラムに通したものを5℃及び25℃で保管し、所定時間毎にサンプリングしたものをGC分析してエキソ/エンド比を求めて保存安定性(エピメリ化)の有無を調べた。その結果を表7に示した。
【0044】
保存安定性試験6〜8
シリカゲルに替えて吸着剤をアルミナ、活性炭、活性白土を用いて保存安定性試験5と同様に行った。それらの結果を表7に示した。
【0045】
【表7】
【0046】
表6の結果より、いずれの吸着剤も未処理の場合に比べてエピメリ化の進行度合いは少なく安定であり、効果のあることが分かった。特にシリカゲルの効果が顕著であった。また表7の結果より、高段数で還流かけて精留効果を高めた留分については、いずれの吸着材を用いた場合にも高い割合でエピメリ化の進行を抑えられることが分かった。
【0047】
[2−アセチル−5−ノルボルネン(R=Me)の例]
実施例20
攪拌機、温度計、窒素導入口を装備した50mL四口フラスコにエンドリッチ2−アセチル−5−ノルボルネン(A)13.6g(100ミリモル)を仕込み、0℃の恒温槽に浸し、窒素雰囲気下に(A)に対し強塩基性有機化合物(B)として5モル%に相当するジアザビシクロウンデセン(DBU)0.76g(5ミリモル≒0.75mL)を注入してエピメリ化反応を開始した。0℃で1時間反応後(エキソ体/エンド体比は0.12)、25℃に昇温し1時間(エキソ体/エンド体比は0.12)、50℃に昇温し2時間(エキソ体/エンド体比は0.17)、70℃に昇温し2時間(エキソ体/エンド体比は0.30)、80℃で6時間反応させた。反応追跡はガスクロマトグラフィーを用いて行った(装置:(株)島津製作所製GC17A;検出器:FID;カラム:DB5使用)。12時間反応後の結果を表8に示した。なお、原料(A)の組成はエキソ体10.7%、エンド体88.5%であった。
【0048】
実施例21
使用した塩基をDBUからN−メチル−トリアザビシクロデセン(MTBD)0.76g(5ミリモル≒0.71mL)に替え、反応を、0℃で1時間反応後、25℃に昇温し1時間、50℃に昇温し2時間、70℃に昇温し6時間反応させたほかは実施例20と同様に行い、結果を表8に示した。
【0049】
実施例22
使用した塩基をDBUからフォスファゼン塩基P1−t−ブチル−トリス(テトラメチレン)(BTPP)1.56g(5ミリモル≒1.5mL)に替え、反応を、0℃で1時間反応後、25℃に昇温し1時間、50℃に昇温し2時間(エキソ体/エンド体比は0.24)、70℃に昇温し2時間、100℃に昇温し6時間反応させたほかは実施例20と同様に行い、結果を表8に示した。
【0050】
実施例23
反応温度を50℃の一定とし48時間反応させたほかは実施例20と同様に行い、結果を表8に示した。
【0051】
実施例24
反応温度を80℃の一定とし24時間反応させたほかは実施例20と同様に行い、結果を表8に示した。
【0052】
【表8】
【0053】
(表中、DBUはジアザビシクロウンデセン、MTBDはN−メチル−トリアザビシクロデセン、BTPPはフォスファゼン塩基P1−t−ブチル−トリス(テトラメチレン)を表す。)
【0054】
[2−ベンゾイル−5−ノルボルネン(R=Ph)の例]
実施例25
攪拌機、温度計、窒素導入口を装備した50mL四口フラスコにエンドリッチ2−ベンゾイル−5−ノルボルネン(A)19.8g(100ミリモル)を仕込み、0℃の恒温槽に浸し、窒素雰囲気下にエンドリッチ2−ベンゾイル−5−ノルボルネン(A)に対し強塩基性有機化合物(B)として5モル%に相当するジアザビシクロウンデセン(DBU)0.76g(5ミリモル≒0.75mL)を注入してエピメリ化反応を開始した。0℃で1時間反応後、25℃まで昇温し1時間、50℃まで昇温し2時間、70℃に昇温し3時間、80℃で5時間反応させた。反応追跡はガスクロマトグラフィーを用いて行った(装置:(株)島津製作所製GC17A;検出器:FID;カラム:DB5使用)。結果を表9に示した。なお、エンドリッチ2−ベンゾイル−5−ノルボルネン(A)の組成はエキソ体47.0%、エンド体50.5%であった。
【0055】
実施例26
反応温度を50℃の一定として24時間反応させたほかは実施例25と同様に行い、GC分析の結果を表9に示した。
【0056】
実施例27
反応温度を80℃の一定とした12時間反応させたほかは実施例25と同様に行い、GC分析の結果を表9に示した。
【0057】
【表9】
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のエキソ体を多く含む(エキソ富化)2−アシル−5−ノルボルネン類の製造方法は、電子材料及び光学材料用脂環系ポリマーを効率的に製造する方法として有用である。