(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基材フィルムが両面に易接着層を有するポリエステルフィルムであり、少なくとも樹脂層を有する面とは反対面の易接着層がポリウレタン樹脂と粒子を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の筐体用表面被覆材。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の筐体用表面被覆材(以下、単に表面被覆材と略記する場合がある)は、基材フィルムの少なくとも一方の面に樹脂層を有する。この樹脂層は、粒子を含有し、かつマルテンス硬さが50N/mm
2以下である。そして基材フィルム上に上記樹脂層を有する本発明の表面被覆材は、ヘイズ値が5%以上である。
【0018】
本発明の表面被覆材は、電子機器等の筐体の表面に被覆されることにより、電子機器の触感と視感性が良好となる。つまり、しなやかさとさらさら感のある触感と視感性(見た目の優しさ感と落ち着き感)の両方を兼ね合わせたものになる。
【0019】
以下、本発明の表面被覆材を構成する各構成要素について詳細に説明する。
【0020】
[基材フィルム]
基材フィルムとしては、各種プラスチックフィルムが好ましく用いられる。かかるプラスチックフィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アートン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びセルロース樹脂が好ましく、特にポリエステル樹脂が好ましく用いられ、更にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。また、基材フィルムは、上記の樹脂からなる層が2層以上積層された積層プラスチックフィルムであってもよい。
【0021】
基材フィルムの厚みとしては、40〜300μmの範囲が適当であるが、強度や加工適性等の観点から50〜250μmの範囲が特に好ましく、特に75〜200μmの範囲が好ましい。
【0022】
基材フィルムは、樹脂層あるいは後述する印刷層や蒸着層との密着力を強化するために両面に易接着層を有する基材フィルムが好ましく用いられる。特に、基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる場合には、両面に易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく用いられる。
【0023】
易接着層は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等の樹脂で形成することができる。易接着層は、さらに、粒子および/または架橋剤を含有することが好ましい。
【0024】
架橋剤としては、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤が挙げられる。これらの中でも、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤が好ましく用いられる。
【0025】
易接着層の厚みは、5〜300nmの範囲が好ましく、10〜250nmの範囲がより好ましく、特に15〜200nmの範囲が好ましい。
【0026】
表面被覆材は加飾されることが多く、そのために基材フィルムの樹脂層とは反対面に印刷層や蒸着層(アルミや錫の蒸着層)が積層されることがある。これらの印刷層や蒸着層と基材フィルムとの密着性を向上させるために、基材フィルムの樹脂層とは反対面に易接着層が設けられていることが好ましい。特に、印刷層を設けるときの印刷適性および印刷層と基材フィルムの密着性を向上させるという観点から、易接着層は樹脂として少なくともポリウレタン樹脂を含み、かつ粒子を含有することが好ましい。
【0027】
上記ポリウレタン樹脂の含有量は、易接着層の全樹脂量100質量%に対して50質量%以上が好ましく、60質量%がより好ましく、特に70質量%が好ましい。易接着層は、ポリウレタン樹脂とポリエステル樹脂を組み合わせて含有することが好ましい。この場合のポリウレタン樹脂とポリエステル樹脂の含有比率(ポリウレタン樹脂:ポリエステル樹脂)は、95:5〜50:50の範囲が好ましく、90:10〜60:40の範囲がより好ましい。
【0028】
易接着層に含有する粒子としては、シリカ粒子、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カーボンブラック、ゼオライト粒子などの無機粒子や、アクリル粒子、シリコーン粒子、ポリイミド粒子、テフロン(登録商標)粒子、架橋ポリエステル粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋重合体粒子、コアシェル粒子などの有機粒子が挙げられる。これらの中でもシリカ粒子が好ましく、特に、コロイダルシリカが好ましく用いられる。
【0029】
易接着層に含有する粒子の平均粒子径は、0.01〜1μmの範囲が好ましく、0.03〜0.5μmの範囲がより好ましく、特に0.05〜0.4μmの範囲が好ましい。粒子の平均粒子径は、後述する樹脂層に含有する粒子の平均粒子径の測定と同様の方法で測定することができる。
【0030】
易接着層における粒子の含有量は、易接着層の固形分総量100質量%に対して0.05〜20質量%の範囲が好ましく、0.1〜15質量%の範囲がより好ましく、特に0.2〜10質量%の範囲が好ましい。
【0031】
易接着層は基材フィルムの製造工程内でインラインコーティングすることが好ましい。インラインコーティング法は、例えば基材フィルムとしてポリエステルフィルムを用いる場合、ポリエステル樹脂を溶融押し出ししてから二軸延伸後熱処理して巻き上げるまでの任意の段階で易接着層の塗布を行う方法である。通常は、ポリエステル樹脂を溶融押出し後、急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸(未配向)ポリエステルフィルム(aフィルム)、その後に長手方向に延伸された一軸延伸(一軸配向)ポリエステルフィルム(bフィルム)、またはさらに幅方向に延伸された熱処理前の二軸延伸(二軸配向)ポリエステルフィルム(cフィルム)の何れかのフィルムに、易接着層の塗液を塗布する。
【0032】
[樹脂層]
本発明の樹脂層は、マルテンス硬さが50N/mm
2以下である。樹脂層のマルテンス硬さを上記範囲とすることにより触感が向上する。マルテンス硬さの下限は1.3N/mm
2超が好ましい。
【0033】
さらさらとした触感を高めるという観点から、樹脂層のマルテンス硬さは1.5N/mm
2以上が好ましく、2.0N/mm
2以上がより好ましく、2.5N/mm
2以上が特に好ましく、3.0N/mm
2以上が最も好ましい。また、しなやかな触感を高めるという観点から、40N/mm
2以下が好ましく、30N/mm
2以下がより好ましく、25N/mm
2以下が特に好ましく、20N/mm
2以下が最も好ましい。
【0034】
樹脂層は、マルテンス硬さを上記範囲とするために軟質性樹脂を含有することが好ましい。軟質性樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、アクリル系透明ゴム状樹脂、シリコーン系ゴム状樹脂、オレフィン系やスチレン系のエラストマー等の軟質性合成樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリウレタン系樹脂が好ましく用いられる。
【0035】
以下、本発明の樹脂層に好ましく用いられるポリウレタン系樹脂について詳細に説明する。
【0036】
樹脂層は、ポリウレタン系樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物あるいは活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化せしめた樹脂層であることが好ましい。上記熱硬化性樹脂組成物あるいは活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、さらに有機ケイ素化合物および/またはフッ素系化合物を含有することが好ましく、特に有機ケイ素化合物を含有することが好ましい。
【0037】
樹脂層は基材フィルムの一方の面のみ設けてもよいし、基材フィルムの両面に設けてもよい。好ましくは、基材フィルムの一方の面のみに樹脂層を設けることである。本発明の表面被覆材は、前述したように基材フィルムの樹脂層とは反対面に印刷層や蒸着層を設けることがあり、基材フィルムの両面に樹脂層を設けると、印刷層や蒸着層と樹脂層との密着性が低下することがある。
【0038】
[有機ケイ素化合物]
有機ケイ素化合物としては、ポリシロキサン系化合物、ポリジメチルシロキサン系化合物、ポリジメチルシロキサン系共重合体が挙げられる。また、これら化合物を組む合わせたものであってもよい。
【0039】
ポリシロキサン系化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトキエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するシラン化合物の部分加水分解物や、有機溶媒中に無水ケイ酸の微粒子を安定に分散させたオルガノシリカゾル、または該オルガノシリカゾルにラジカル重合性を有する上記シラン化合物を付加させたもの等を使用することができる。
【0040】
ポリジメチルシロキサン系化合物としては、ポリジメチルシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン、カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、エポキシ変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリジメチルシロキサン、(メタ)アクリレート変性ポリジメチルシロキサン(例えば、東亞合成(株)製GUV−235)などが挙げられる。
【0041】
ポリジメチルシロキサン系共重合体は、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体のいずれであってもよいが、ブロック共重合体、グラフト共重合体が好ましい。
【0042】
ポリジメチルシロキサン系共重合体は、リビング重合法、高分子開始剤法、高分子連鎖移動法などに製造することができるが、生産性を考慮すると高分子開始剤法、高分子連鎖移動法を用いるのが好ましい。
【0043】
[熱硬化性樹脂組成物]
上記熱硬化性樹脂組成物は、ポリカプロラクトンを含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物を少なくとも含むことが好ましい。このような組成物は、熱を与えることによってポリカプロラクトンを含有する化合物の水酸基とイソシアネート基を含有する化合物のイソシアネート基がウレタン結合を生起してポリウレタン系樹脂を生成する。
【0044】
また、熱硬化性樹脂組成物として、ポリカプロラクトンとイソシアネート基を含有する樹脂を少なくとも含む組成物も好ましく用いられる。
【0045】
[ポリカプロラクトンを含有する化合物]
ポリカプロラクトンは、下記化1で表される構造を有する。また、ポリカプロラクトンを含有する化合物は少なくとも1以上の水酸基を含有する必要がある。水酸基は、ポリカプロラクトンを含有する化合物の末端にあることが好ましい。
【0047】
上記化1の中でも、2〜4官能の水酸基を有するポリカプロラクトンが好ましく、特に2〜3官能の水酸基を有するポリカプロラクトンが好ましい。
【0048】
上記2〜4官能の水酸基を有するポリカプロラクトンとしては、下記化2で表されるポリカプロラクトンジオール類、下記化3で表されるポリカプロラクトントリオール類、その他4官能のポリカプロラクトンポリオール類が挙げられる。
【0049】
また、下記化4で表されるラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのラジカル重合性ポリカプロラクトンも好ましく用いられる。
【0053】
上記化2の化合物としては例えばダイセル化学工業(株)のプラクセル200シリーズ、化3の化合物としては例えばダイセル化学工業(株)のプラクセル300シリーズ、化4の化合物としては例えばダイセル化学工業(株)のプラクセルFMシリーズがあり、使用することができる。
【0054】
[イソシアネート基を含有する化合物]
上記イソシアネート基を含有する化合物としては、例えば、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンイソシアネートのビューレット体などのポリイソシアネート、および上記イソシアネートのブロック体などを挙げることができる。
【0055】
[ポリカプロラクトンとイソシアネート基を含有する樹脂]
上記ポリカプロラクトンとイソシアネート基を含有する樹脂とは、一分子鎖内に上述したポリカプロラクトンとイソシアネート基を含有する樹脂であって、少なくとも1以上の水酸基を有する樹脂である。水酸基は、樹脂の末端にあることが好ましい。
【0056】
イソシアネート基は水酸基と反応してウレタン結合を生起させるので、熱によってポリカプロラクトンとイソシアネート基を含有する樹脂の分子鎖内および/または分子鎖間を架橋させることができる。
【0057】
[活性エネルギー線硬化性樹脂組成物]
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、紫外線や電子線を照射することにより硬化する樹脂組成物であり、この組成物はウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
ここで、「・・・(メタ)アクリレート」なる表現は、「・・・アクリレート」と「・・・メタクリレート」の両方の化合物を含む。
a)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとポリカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、
b)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、
c)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとポリカーボネートジオールおよびヒドロキシ変性(メタ)アクリレートとを反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレート、
d)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと、ヒドロキシ変性(メタ)アクリレートおよびポリカプロラクトン含有多官能アルコールとを反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレート、
e)1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと長鎖アルキルアルコールおよびポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、
f)1分子中に2以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート。
【0058】
これらのウレタン(メタ)アクリレートは、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記のウレタン(メタ)アクリレートの中でも、ポリカプロラクトン成分を含むものが好ましい。
【0059】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、特開2002−256053号公報、特開2004−35599号公報、特開2004−244426号公報、特開2005−162908号公報等に記載されており、これらを参照して合成することができる。
【0060】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、更に重合性モノマーあるいは重合性オリゴマーを含むことが好ましい。
【0061】
重合性モノマーとしては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の単官能性のもの、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート等の二官能性のもの、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの3モルプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの6モルエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン付加物のヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能性のものが挙げられる。
【0062】
重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0063】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、更に光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、o−ベンゾイルメチルベンゾエート、アセトフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、エチルアントラキノン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、メチルベンジルホルメートなどが挙げられる。
【0064】
[粒子]
本発明の樹脂層は粒子を含有する。樹脂層に粒子を含有させて表面被覆材のヘイズ値を5%以上とすることにより、視感性が向上する。また、さらさらとした触感も向上する。
【0065】
表面被覆材のヘイズ値を5%以上に調整するために、樹脂層に含有させる粒子の含有量は、樹脂層の固形分総量100質量%に対して5質量%以上とするのが好ましい。さらに、樹脂層における粒子の含有量は、樹脂層の固形分総量100質量%に対して7質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、特に15質量%以上が好ましい。樹脂層における粒子の含有量の上限は、樹脂層の固形分総量100質量%に対して40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、特に30質量%以下が好ましい。
【0066】
樹脂層に含有させる粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、ゼオライト等の無機粒子、架橋アクリル粒子、架橋PMMA粒子、架橋ポリスチレン粒子、ナイロン粒子、ポリエステル粒子、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物粒子、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子等の有機粒子、シリカ・アクリル複合化合物からなる有機・無機ハイブリッド粒子が挙げられる。これらの中でも、無機粒子が好ましく、さらにシリカ粒子が好ましい。
【0067】
樹脂層に含有させる粒子の平均粒子径は、0.005〜10μmの範囲から選択されることが好ましく、0.01〜5μmの範囲から選択されることがより好ましく、0.02〜3μmの範囲から選択されることが特に好ましい。
【0068】
表面被覆材の触感と視感性を向上させるという観点から、樹脂層に含有させる粒子の平均粒子径(D)と樹脂層の厚み(T)の比率(D/T)が、0.15未満であることが好ましい。つまり、樹脂層の厚み(T)に対して平均粒子径(D)が大幅に小さい粒子を樹脂層に含有させることにより、触感と視感性が一段と向上する。
【0069】
上記比率(D/T)は、さらに0.13未満が好ましく、0.01未満がより好ましく、0.05未満が特に好ましく、0.03未満が最も好ましい。下限は0.001以上が好ましく、0.002以上がより好ましく、0.003以上が特に好ましい。
【0070】
上記比率(D/T)が0.15未満を満足する場合、表面被覆材のヘイズ値を5%以上とするためには、粒子の含有量は樹脂層の固形分総量100質量%に対して10質量%以上とするのが好ましく、13質量%以上とするのがより好ましく、特に15質量%以上とするのが好ましい。上限は40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、特に30質量%以下が好ましい。このように、樹脂層の厚み(T)に対して平均粒子径(D)が大幅に小さい粒子を樹脂層に比較的多量に含有させることにより、触感と視感性が一段と向上する。
【0071】
粒子は、樹脂層中に凝集状態で存在してよいし、あるいは凝集せずに個々の粒子として存在してもよい。
【0072】
表面被覆材の視感性を向上させるという観点から、比率(D/T)が0.15未満の関係となるように樹脂層に粒子を含有させ、その粒子が樹脂層中に凝集状態で存在することが好ましい。
【0073】
樹脂層中に粒子を凝集状態で存在させるためには、平均粒子径が1μm未満の粒子を含有させることが好ましく、さらに平均粒子径が0.5μm未満の粒子を含有させることが好ましく、特に平均粒子径が0.3μm未満の粒子を含有させることが好ましい。下限の平均粒子径は、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましく、特に0.03μm以上が好ましい。
樹脂層中に粒子を凝集状態で存在させるために用いられる粒子としては、無機粒子が好ましく、特にシリカ粒子が好ましい。
【0074】
前述した軟質性樹脂と平均粒子径が1μm未満の無機粒子を含有する樹脂層形成用塗布液を塗布し、必要に応じて乾燥、硬化して形成された樹脂層には、粒子の凝集状態が形成されやすくなる。
【0075】
樹脂層中に粒子の凝集体が存在しているかどうかは、樹脂層の断面を電子顕微鏡で観察することにより確認することができる。
【0076】
図2および
図3は、本発明の表面被覆材を構成する樹脂層の電子顕微鏡による断面写真である。
図2の倍率は5000倍、
図3は10000倍である。
図2および
図3から分かるように、数十個〜数百個あるいは数千個の粒子が集合して凝集体11を形成している。凝集体11の形状や大きさは様々である。
図3では多数の凝集体の中の一部の凝集体のみを実線で囲んで表示している。
【0077】
樹脂層には、50個以上の粒子が集合した凝集体が少なくとも存在することが好ましい。例えば、上記断面写真において、樹脂層の幅10μmの中に50個以上の粒子が集合した凝集体が1個以上観察されることが好ましい。
【0078】
樹脂層中に形成された粒子の凝集体は、粒子が密に凝集したものではなく、粒子間に樹脂が介在した軟凝集体となっている。軟凝集体の場合は、上記の断面写真からも分かるように個々の粒子を判別することができる。更に倍率を大きくする(2万〜5万倍)ことにより粒子の平均粒子径を測定することができる。
【0079】
樹脂層中に粒子が軟凝集体として存在することにより、視感性と触感が一段と向上する。
【0080】
樹脂層の厚みは、表面被覆材の触感と視感性を向上させるという観点から、10μm超が好ましく、15μm以上がより好ましく、特に20μm以上が好ましい。樹脂層の上限の厚みは、樹脂層の保持性(容易に破壊されないこと)、加工性(打ち抜き加工性や成型性)、生産効率の観点から50μm未満が好ましく、45μm以下がより好ましく、特に40μm以下が好ましい。
【0081】
樹脂層は、さらに粒子の沈降防止剤を含有することが好ましい。沈降防止剤としては有機系沈降防止剤が好ましく、例えば、脂肪酸アミド、酸化ポリエチレン、金属石鹸類、有機ベントナイト、水添ヒマシ油ワックスなどが挙げられる。これらの中でも、特に、脂肪酸アミド、酸化ポリエチレンが好ましい。
【0082】
樹脂層は、更に界面活性剤、粒子の分散剤や沈降防止剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を含有することができる。脂肪酸アミド、酸化ポリエチレン、金属石鹸類、有機ベントナイト、水添ヒマシ油ワックスなどが挙げられ、これらの中でも、特に、脂肪酸アミド、酸化ポリエチレンが好ましい。
【0083】
脂肪酸アミド系沈降防止剤としては、例えば、楠本化成(株)製)の「ディスパロンA603−10X(又は20X)」、「ディスパロン6900−10X(又は20X)」、「ディスパロン6810−10X(又は20X)」等、共栄社化学(株)製の「ターレン7500−20」、「フローノンSP−1000」、「フローノンHR−2」等が挙げられる。
酸化ポリエチレンとしては、例えば、楠本化成(株)製の「ディスパロン4200−10」、「ディスパロン4200−20」等が挙げられる。
沈降防止剤の樹脂層における含有量は、粒子100質量部に対して、0.1〜30質量部の範囲が好ましい。
【0084】
樹脂層は、さらに界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を含有することができる。
【0085】
[表面被覆材]
本発明の表面被覆材は、ヘイズ値が5%以上である。表面被覆材のヘイズ値を5%以上とすることにより、良好な視感性が得られる。表面被覆材のヘイズ値は、さらに7%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上が特に好ましく、20%以上が最も好ましい。表面被覆材のヘイズ値が5%未満であると、良好な視感性が得られない。
【0086】
表面被覆材のヘイズ値の上限は90%以下が好ましく、85%以下がより好ましく、80%以下が特に好ましい。表面被覆材のヘイズ値が90%を越えると、透明性の低下や白化が強くなるので好ましくない。
【0087】
本発明における表面被覆材のヘイズ値は、基材フィルムに樹脂層のみが積層された状態でのヘイズ値である。基材フィルムには前述したように易接着層が含まれる。
【0088】
本発明の表面被覆材は、クラック伸度が10%以上であることが好ましい。これにより表面被覆材を筐体に被覆するときの成型加工性が向上する。本発明の表面被覆材は、さらにクラック伸度が20%以上であることがより好ましく、特に30%以上であることが好ましい。クラック伸度の上限は300%程度であり、200%以下が好ましい。
【0089】
本発明の表面被覆材を構成する樹脂層は、前述したように軟質性樹脂で構成されているので、樹脂層のクラック伸度を10%以上とすることができる。
ここで、クラック伸度とは、表面被覆材の片側を固定して引張速度50mm/minで表面被覆材を引っ張ったときに、樹脂層にクラックが発生するときの伸び率である。
[用途]
本発明の表面被覆材は、携帯型パーソナルコンピュータ、モバイル機器、携帯電話、電子手帳などの電子機器等の筺体の外装用に用いることができる。
【0090】
表面被覆材は、一般にインサート成型により筐体に装着される。以下、インサート成型の一例を説明する。
【0091】
図1は、本発明の表面被覆材が筐体を構成する部材(例えばABS樹脂)にインサート成型によって装着されたときの模式断面図である。
【0092】
本発明の表面被覆材10は、基材フィルム1の一方の面に樹脂層2が積層されたものである。表面被覆材10には、基材フィルム1の樹脂層2とは反対面に、筐体を加飾するための印刷層3が設けられている。印刷層3は、公知の印刷方法、例えばシルクスクリーン法、グラビア法、インクジェット法等の印刷法により、所望の文字や模様が印刷されて形成される。
【0093】
印刷層3の上には、接着層4が設けられている。接着層4は、表面被覆材10と筐体構成部材5との接着性を高めるためのものであり、筐体構成部材の材質に応じて、ポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、塩ビ・酢ビ共重合物、セルロース系等の接着剤を適宜使用することができる。
表面被覆材10に印刷層3および接着層4が設けられた後、所定の大きさに打ち抜き断裁され、次にプレフォーム加工される。プレフォーム加工とは、表面被覆材を射出成形の金型に入れる前に、金型に合う様に仮成形することである。このとき、表面被覆材は張力が掛けられて引き伸ばされるので、表面被覆材にはある程度の伸度が要求される。つまり、表面被覆材のクラック伸度は10%以上であることが好ましい。
【0094】
次に、プレフォームされた表面被覆材を成型金型に配置し、加熱し流動状態となった樹脂(ABS樹脂等の筐体構成部材を形成する樹脂)を金型に流し込み、この樹脂を硬化させて表面被覆材と筐体構成用部材を一体化させる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。尚、本実施例における測定方法と評価方法を以下に示す。
【0096】
(1)表面被覆材のヘイズ値の測定
JIS K 7136に基づき、日本電色工業(株)製の濁度計「NDH−2000」を用いて測定した。また、基材フィルムのヘイズ値も上記と同様の方法で測定した。
【0097】
(2)粒子の平均粒子径の測定
樹脂層の断面を電子顕微鏡(約2万〜5万倍)で観察し、その断面写真から、無作為に選択した50個の粒子のそれぞれの最大長さを計測し、それらを平均した値を粒子の平均粒子径とした。
【0098】
(3)樹脂層中の粒子の凝集状態の観察
樹脂層の断面を電子顕微鏡(約5千〜5万倍)で観察し、その断面写真から、樹脂層の幅10μmの中に50個以上の粒子が集合した凝集体が存在するかどうか観察した。この凝集体が存在する場合を「有り」、凝集体が存在しない場合を「なし」とした。
【0099】
(4)樹脂層のマルテンス硬さの測定
基材フィルム上に積層された樹脂層のマルテンス硬さを、20℃、50%相対湿度の雰囲気下で超微小硬さ試験装置((株)フィッシャー・インストルメンツ社製の「フィッシャースコープH−100」)を用いて、最大荷重が2mN、第1クリープが5sec、第2クリープが5secの条件で測定した。
【0100】
(5)触感の官能性評価
各サンプルについて、評価者10人による官能評価を実施した。官能評価は、各サンプルの樹脂層表面を指で撫でて、しなやかさおよびさらさら感をそれぞれ下記の5段階で評価した。評価者10人の評価点の平均点を各官能評価として採用した。ここで、ブランクは比較例1である。
5;ブランクに比べて非常に優れている。
4;ブランクに比べてかなり良好である。
3;ブランクに比べてやや良好である。
2;ブランクと同程度である。
1;ブランクより劣る。
【0101】
(6)視感性の官能評価
<評価用サンプルの作製>
各サンプルの樹脂層とは反対側の基材フィルム面に、黒色およびワインレッド色のベタ印刷をそれぞれ施して、2種類の評価用サンプルをそれぞれ用意した。
<評価>
蛍光灯下で照度が400ルックス程度の机上に、評価用サンプルを樹脂層面が上になるように置き、評価者10人に下記の5段階で官能評価させた。この10人の評価点の平均点を視感性の評価として採用した。ここで、ブランクは比較例1である。
5;ブランクに比べて見た目の優しさ感や落ち着き感が非常に優れている。
4;ブランクに比べて見た目の優しさ感や落ち着き感がかなり良好である。
3;ブランクに比べて見た目の優しさ感や落ち着き感がやや良好である。
2;ブランクと見た目の優しさ感や落ち着き感が同程度である。
1;ブランクより見た目の優しさ感や落ち着き感が劣っている。
【0102】
[実施例1]
下記の要領で表面被覆材を作製した。
<基材フィルム>
両面に下記の易接着層を有する、厚みが125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を用意した。両面の易接着層の厚みは、それぞれ0.08μmである。易接着層はPETフィルムの製造工程内でインラインコーティングした。この基材フィルムのヘイズ値は1%であった。
<易接着層の積層>
下記のポリエステル樹脂を固形分換算で22質量部、自己架橋型ポリウレタン樹脂水溶液(第一工業製薬製:商品名エラストロンH−3;固形分濃度20質量%)を固形分換算で78質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製:商品名Cat64)を5質量部、および粒子(平均粒子径が0.2μmのシリカ)を4質量部含む。
<ポリエステル樹脂>
ジメチルテレフタレート95質量部、ジメチルイソフタレート95質量部、エチレングリコール35質量部、ネオペンチルグリコール145質量部、酢酸亜鉛0.1質量部及び三酸化アンチモン0.1質量部を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に5−ナトリウムイソフタル酸6質量部を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂(固形分濃度30質量%の水分散液)を得た。
<樹脂層の積層>
上記PETフィルムの一方の面に下記の樹脂層形成用組成物を厚み(乾燥硬化後の厚み)が20μmとなるようにスリットダイコータで塗布し、80℃で乾燥後、紫外線を照射し硬化して樹脂層を形成した。
<樹脂層形成用組成物>
下記ウレタンアクリレート(a)を固形分換算で64質量部、下記シリコーン共重合体(b)を固形分換算で15質量部、粒子(平均粒子径が0.15μmシリカ)を18質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ(株)の「イルガキュア184」)を3質量部含有する活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)を調製した。
<ウレタンアクリレート(a)>
攪拌機、温度計及びコンデンサーを備えたフラスコに、キシレン92質量部、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(武田薬品工業(株)製の「タケネートD−212」)100質量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)製の「プラクセルFM3」)92質量部、ジブチルスズジラウレート0.02質量部、及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.2部を仕込み、70℃まで昇温した。その後、同温度で3時間保持して反応を終了し、固形分濃度50質量%のウレタンアクリレート(a)を得た。
<シリコーン共重合体(b)>
攪拌機、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、トルエン50質量部、メチルイソブチルケトン50質量部及びポリジメチルシロキサンマクロモノマー(チッソ(株)製の「FM0721」分子量5000)20質量部を仕込み、113℃還流下で、メチルメタクリレート質量30部、ブチルメタクリレート30質量部、イソシアネートエチルメタクリレート(昭和電工(株)製の「カレンズMOI」)20質量部及び2,2−アゾビス−2−メチルブチロニトリル5質量部からなる混合溶液を2時間かけて滴下した。その後、同温度で5時間保持して重合を終了し、固形分濃度が50質量%の共重合体溶液を得た。
次に、上記共重合体溶液200質量部に、トルエン80質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成(株)製の「アロニックスM305」)80質量部、ジブチルスズジラウレート0.03質量部、及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.2質量部を仕込み、70℃まで昇温した。その後、同温度で5時間保持して反応を終了し、固形分50重量%のシリコーン共重合体(b)を得た。
【0103】
[実施例2]
樹脂層の厚みを15μmに変更する以外は実施例1と同様にして表面被覆材を作製した。
【0104】
[実施例3]
下記の樹脂層形成用組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして表面被覆材を作製した。
<樹脂層形成用組成物>
ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体(大日本インキ化学工業(株)社製の「バーノックDN−950」)50質量%、セチルアルコール(日本油脂(株)社製の「NAA−44」)9質量%およびポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)製の「プラクセルFM3」)41質量%からなるウレタンアクリレートを66質量部、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(東亞合成(株)製の「M−5400」)を13質量部、粒子(平均粒子径が0.15μmのシリカ)を18質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ(株)の「イルガキュア184」)を3質量部含有する活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)を調製した。
【0105】
[実施例4]
下記の樹脂層形成用組成物に変更し、かつ樹脂層の厚みを30μmに変更する以外は、実施例1と同様にして表面被覆材を作製した。
<樹脂層形成用組成物>
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井武田ケミカル(株)製の「タケネートD−170N」)21.7質量%およびポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)製のプラクセルFM5))78.3質量%からなるウレタンアクリレートを67質量部、イタコン酸を12質量部と、粒子(平均一次粒子径が100nmのコロイダルシリカ)を18質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ(株)の「イルガキュア184」)を3質量部含有する活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)を調製した。
【0106】
[実施例5]
下記の樹脂層形成用組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして表面被覆材を作製した。
<樹脂層形成用組成物>
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井武田ケミカル(株)製の「タケネートD−170N」)40.0質量%、カプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)製の「プラクセルFM1D」)45.5質量%およびポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)製も「プラクセルFM5」)14.5質量%からなるウレタンアクリレートを79質量部、粒子(平均一次粒子径が100nmのコロイダルシリカ)を18質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ(株)の「イルガキュア184」)を3質量部含有する活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)を調製した。
【0107】
[実施例6]
下記の樹脂層形成用組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして表面被覆材を作製した。
<樹脂層形成用組成物>
上記ウレタンアクリレート(a)を固形分換算で70質量部、上記シリコーン共重合体(b)を固形分換算で11質量部、粒子(平均粒子径が0.15μmのシリカ)を16質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ(株)の「イルガキュア184」)を3質量部含有する活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)を調製した。
【0108】
[実施例7]
下記の樹脂層形成用組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして表面被覆材を作製した。
<樹脂層形成用組成物>
上記ウレタンアクリレート(a)を固形分換算で70質量部、上記シリコーン共重合体(b)を固形分換算で10質量部、粒子(平均粒子径が0.15μmのシリカ)を17質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ(株)の「イルガキュア184」)を3質量部含有する活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)を調製した。
【0109】
[実施例8]
下記の樹脂層形成用組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして表面被覆材を作製した。
<樹脂層形成用組成物>
上記ウレタンアクリレート(a)を固形分換算で65質量部、上記シリコーン共重合体(b)を固形分換算で13質量部、粒子(平均粒子径が0.15μmのシリカ)を19質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ(株)の「イルガキュア184」)を3質量部含有する活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)を調製した。
【0110】
[実施例9]
下記の樹脂層形成用組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして表面被覆材を作製した。
<樹脂層形成用組成物>
上記ウレタンアクリレート(a)を固形分換算で65質量部、上記シリコーン共重合体(b)を固形分換算で12質量部、粒子(平均粒子径が0.15μmのシリカ)を20質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ(株)の「イルガキュア184」)を3質量部含有する活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)を調製した。
【0111】
[実施例10]
下記の樹脂層形成用組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして表面被覆材を作製した。
<樹脂層形成用組成物>
上記ウレタンアクリレート(a)を固形分換算で65質量部、上記シリコーン共重合体(b)を固形分換算で11質量部、粒子(平均粒子径が0.15μmのシリカ)を21質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ(株)の「イルガキュア184」)を3質量部含有する活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)を調製した。
【0112】
[実施例11]
実施例1と同様の基材フィルムの一方の面に下記の樹脂層形成用組成物を厚み(乾燥硬化後の厚み)が40μmとなるようにスリットダイコータで塗布し、90℃で乾燥後、150℃で加熱し硬化して樹脂層を形成した。
<樹脂層形成用組成物>
下記のポリジメチルシロキサン系ブロック共重合体を固形分換算で48質量部、架橋剤としてHMDIイソシアヌレート体(武田薬品工業(株)製の「タケネートD−170N」)を34質量部、粒子(平均粒子径が0.15μmのシリカ)を18質量部含有する熱硬化性組成物を調製した。
<ポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体の合成>
攪拌機、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、トルエン50質量部および酢酸イソブチル50質量部を仕込み、110℃まで昇温した。別に、メタクリル酸メチル20質量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)製の「プラクセルFM5」)32質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート17質量部、下記のシロキサン成分10質量部、片末端メタクリル基ポリジメチルシロキサン(東亞合成化学工業(株)製の「AK−32」 )20質量部およびメタクリル酸1質量部および1,1−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル2質量部を混合し、この混合モノマーを上記トルエン及び酢酸イソブチルの混合液に2時間かけて滴下した。その後8時間反応させて、ポリジメチルシロキサン系グラフト共重合体(固形分濃度50質量%)を得た。
<シロキサン成分>
攪拌機、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、エタノール106質量部、メチルトリメトキシシラン270質量部、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシラン23質量部、脱イオン水100質量部、1質量%塩酸1質量部およびハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部を仕込み、シロキサンを合成した。これをメチルイソブチルケトンにより50質量%に調整し、シロキサン成分Aとした。
【0113】
[実施例12]
樹脂層の厚みを30μmに変更する以外は実施例11と同様にして表面被覆材を作製した。
【0114】
[実施例13]
樹脂層の厚みを20μmに変更する以外は実施例11と同様にして表面被覆材を作製した。
【0115】
[比較例1]
樹脂層形成用組成物を下記のハードコート層形成用組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして表面被覆材を作製した。ハードコート層の厚みは5μmであった。
<ハードコート層形成用組成物>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを97質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ(株)の「イルガキュア184」)を3質量部含有する活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)を調製した。
【0116】
[比較例2]
下記の樹脂層形成用組成物に変更し、かつ樹脂層の厚みを30μmに変更する以外は、実施例1と同様にして表面被覆材を作製した。
<樹脂層形成用組成物>
ポリエチレングリコール#1000ジアクリレートを78質量部、ジペンタエリスリトールトリアクリレートを9質量部、アクリル酸を1質量部、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製ぼ「HPA」)を9質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ(株)の「イルガキュア184」)を3質量部含有する活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)を調製した。
【0117】
[比較例3]
下記の樹脂層形成用組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして表面被覆材を作製した。
<樹脂層形成用組成物>
上記ウレタンアクリレート(a)を固形分換算で76質量部、上記シリコーン共重合体(b)を固形分換算で20質量部、粒子(平均粒子径が0.15μmのシリカ)を1質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ(株)の「イルガキュア184」)を3質量部含有する活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)を調製した。
【0118】
[比較例4]
樹脂層形成用組成物を下記のハードコート層形成用組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして表面被覆材を作製した。ハードコート層の厚みは2μmであった。
<ハードコート層形成用組成物>
ジペンタエリスリトールトリアクリレートを40質量部、トリプロピレングリコールジアクリレート20質量部、ジメチルアミノエチルメタクリレートを19質量部、粒子(平均粒子径が1.5μmのシリカ粒子)を18質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ(株)の「イルガキュア184」)を3質量部含有する活性エネルギー線硬化性組成物(紫外線硬化性組成物)を調製した。
【0119】
[評価]
上記の実施例および比較例で作製した表面被覆材について、ヘイズ値、樹脂層のマルテンス硬さ、触感、視感性を評価した。その結果を表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
表1の結果から、本発明の実施例は触感および視感性に優れていることが分かる。
【0122】
比較例1は、従来から一般的に用いられているハードコートフィルムの例であり、本実施例の評価におけるブランクとした。
【0123】
比較例2は、樹脂層が粒子を含有せず、表面被覆材のヘイズ値が5%未満であるために視感性が劣っている。
【0124】
比較例3は、樹脂層が粒子を含有するが、表面被覆材のヘイズ値が5%未満であるために視感性が劣っている。
【0125】
比較例4は、ハードコート層が粒子を含有するハードコートフィルムであり、マルテンス硬さが50N/mm
2より大きいために触感が劣っている。