(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の真空抽出法においては、溶存気体量を比較的短時間で測定できるという利点を有する反面、超音波を用いたとしても完全に液体中から溶存気体を抽出することが難しい。また、測定時に液体を大気開放状態にするため、大気との接触に起因して溶存気体量に変化が生じてしまう。このようなことから、真空抽出法においては、特に、高圧で加圧されている被圧液体や高圧で加圧されていた被圧液体中の溶存気体量を精度よく測定することが難しいという問題があった。
【0005】
一方、湯煎法においても、溶存気体量を比較的短時間で測定することが可能であるが、湯煎温度を100℃にしても溶存気体が液体中に残存する。このため、やはり、高圧で加圧されている被圧液体や高圧で加圧されていた被圧液体中の溶存気体量を精度よく測定することが難しい。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、被圧液体中の溶存気体量を精度よく、且つ効率よく測定することを可能にする被圧液体中の溶存気体量の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0008】
本発明の被圧液体中の溶存気体量の測定方法は、被圧液体中に溶存する気体の量を測定する方法であって、キャビテーションを発生させながら前記被圧液体をサンプリング容器に流入させて採取するとともに、前記キャビテーションによって前記被圧液体から解離した過飽和溶存気体を捕集し、該過飽和溶存気体の量を測定する過飽和溶存気体量測定工程と、前記過飽和溶存気体量測定工程でサンプリング容器に採取した前記被圧液体を用い、該被圧液体中で二酸化炭素を発生させ、前記被圧液体中の溶存気体を二酸化炭素の泡によって連行湧出させるとともに二酸化炭素を除去し、二酸化炭素以外の溶存気体量を測定する二酸化炭素以外の溶存気体量測定工程と、前記過飽和溶存気体量測定工程でサンプリング容器に採取した前記被圧液体を用い、該被圧液体の総酸度を求め、前記総酸度から前記被圧液体中の溶存二酸化炭素の量を求める溶存二酸化炭素量測定工程とを備え、前記過飽和溶存気体の量と前記二酸化炭素以外の溶存気体の量と前記溶存二酸化炭素の量を合計して前記被圧液体中の溶存気体量を求めようにしたことを特徴とする。
【0009】
ここで、本発明における「被圧液体」は、加圧された状態にある液体だけでなく、加圧されていた液体も含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の被圧液体中の溶存気体量の測定方法においては、過飽和溶存気体量測定工程で、キャビテーションを発生させながら被圧液体をサンプリング容器に採取するようにしたことにより、被圧液体から過飽和溶存気体を効率的且つ効果的に解離して捕集することができ、過飽和溶存気体の量を測定することができる。
また、二酸化炭素以外の溶存気体量測定工程で、被圧液体中で二酸化炭素を発生させ、被圧液体中の溶存気体を二酸化炭素の泡によって連行湧出させることにより、二酸化炭素以外の溶存気体量を測定することができる。
さらに、溶存二酸化炭素量測定工程で、被圧液体の総酸度を求め、総酸度から被圧液体中の溶存二酸化炭素の量を求めることができる。
【0011】
よって、本発明の被圧液体中の溶存気体量の測定方法においては、過飽和溶存気体量測定工程と、二酸化炭素以外の溶存気体量測定工程と、溶存二酸化炭素量測定工程(水上置換法と、二酸化炭素による追い出し法と、酸度法)の3種類の工程を組み合わせることにより、従来、その計量が困難であった被圧液体中の溶存気体量を確実に計量することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1から
図3を参照し、本発明の一実施形態に係る被圧液体中の溶存気体量の測定方法について説明する。ここで、本実施形態では、LPG貯蔵タンクが具備する底水排水槽中の高圧の排水に溶存した気体の量を測定するものとして説明を行うが、本発明にかかる被圧液体中の溶存気体量の測定方法は、勿論、加圧されている、あるいは加圧されていた水以外の液体中の溶存気体量を測定する場合にも適用可能である。
【0014】
はじめに、
図1及び
図2に示すように、本実施形態の被圧液体中の溶存気体量の測定方法を用い、LPG貯蔵タンク1が具備する底水排水槽2の高圧の排水(高圧水、被圧液体)W中の溶存気体量を測定する際には、高圧の排水Wを底水排水槽2から排出する排出経路3にサンプリング装置4を設置しておく。
【0015】
ここで、排出経路3は、底水排水槽2の高圧の排水W中に配設したポンプ5と、ポンプ5からLPG貯蔵タンク1の外部に延出した排水管6を備えている。また、排水管6には、ポンプ5側から順に、バランスホール付き逆止弁7、第1自動制御弁8、第2自動制御弁9、流量伝送器10、流量調整弁11、オリフィス12などが設けられている。さらに、第1自動制御弁8と第2自動制御弁9の間に第1分岐配管15が接続され、この第1分岐配管15には、分岐接続部側から順に、第3自動制御弁16、排気弁17、第1開閉弁19、ボリュームタンク20などが設けられている。さらに、流量伝送器10と流量調整弁11の間、流量調整弁11とオリフィス12の間にそれぞれ、第2分岐配管21、第3分岐配管22が接続して設けられ、これら第2分岐配管21と第3分岐配管22にはそれぞれ、開閉弁(第2開閉弁23、第3開閉弁24)が設けられている。
【0016】
本実施形態のサンプリング装置4は、第2分岐配管21と第3分岐配管22の各開閉弁23、24に接続して架設された連絡配管25と、連絡配管25に第2分岐配管21側から順に設けられた定流量弁26、第4開閉弁27、第5開閉弁28と、第4開閉弁27と第5開閉弁28の間に接続して分岐した第4分岐配管29、第5分岐配管30とを備えて構成されている。また、第4分岐配管29に第6開閉弁31、第5分岐配管30に第7開閉弁32が着脱可能に設けられ、これら第6開閉弁31と第7開閉弁32にそれぞれ、サンプリング容器33、34が接続されている。このとき、流量調整用のニードル弁35を介してサンプリング容器33、34が接続されている。また、各サンプリング容器33、34は、例えば、容量が300ccで12.4MPaの耐圧性を備えている。
【0017】
そして、本実施形態の被圧液体中の溶存気体量の測定方法では、過飽和溶存気体量測定工程と、二酸化炭素以外の溶存気体量測定工程と、溶存二酸化炭素量測定工程(水上置換法と、二酸化炭素による追い出し法と、酸度法)の3種類の工程を実施して、高圧の排水(被圧液体)中の溶存気体量を計量する。
【0018】
はじめに、過飽和溶存気体量測定工程(水上置換法)を行なう。この過飽和溶存気体量測定工程は、
図2に示すように、サンプリング装置4によってサンプリング容器34に排水(被圧液体)Wを採取すると同時に原位置で行なう。具体的に、過飽和溶存気体量測定工程では、流量調整弁11を閉じるとともに各開閉弁23、24、27、28、29、32を開き、サンプリング容器33、34に排水Wを流入させて採取する。このとき、ニードル弁35を操作してサンプリング容器34に流入する排水Wの通水量を例えば約0.5L/minに絞り、この所定の通水量への調節でキャビテーションを発生させながら排水Wをサンプリング容器34に採取する。
【0019】
そして、このようにキャビテーションを発生させることにより、排水W中の過飽和溶存気体R1が連行湧出して解離する。この過飽和溶存気体R1をサンプリング容器34から配管36を通じて水上のメスシリンダー37で捕集し、その体積を計量する。これにより、高圧の排水W中に溶存している全溶存気体のうち、過飽和溶存気体R1の量が、過飽和溶存気体量測定工程によって原位置で測定される。
【0020】
次に、二酸化炭素以外の溶存気体量測定工程(二酸化炭素による追い出し法)を行なう。この二酸化炭素以外の溶存気体量測定工程では、過飽和溶存気体量測定工程でサンプリング容器33、34に採取した排水Wを用い、この排水W中で二酸化炭素を発生させる。そして、排水W中の溶存気体を二酸化炭素の泡によって連行湧出させ、二酸化炭素を除去することによって、二酸化炭素以外の溶存気体量を測定する。
【0021】
具体的に、二酸化炭素以外の溶存気体量測定工程は、サンプリング容器34で採取した排水(試料水、被圧液体)Wに対し、分析室で溶存気体量を測定する。
図3(a)に示すように、はじめに、250mlの試料ビン40に5gの大理石41を入れ、サンプリング容器34内の排水Wを、採水管42を用いて試料ビン40に250ml注入する。
【0022】
次に、
図3(b)に示すように、試料ビン40の上に、下部にHCl栓43を備えたHClビュレット44を組み立てて接続し、このビュレット44に上方からHCl(2+1)S1を15ml入れ、NaOH栓45をビュレット44の上部に取り付けてHCl(2+1)S1を内封する。
【0023】
また、
図3(c)に示すように、HClビュレット44の上にNaOHビュレット46を組み立て、このNaOHビュレット46内に20%NaOH溶液S2を注入して満たす。このとき、NaOH溶液S2には、水酸化カルシウムの沈殿を防止するために、50g/lのロッシェル塩を加える。
【0024】
そして、
図3(d)に示すように、HCl栓43を開栓し、HCl(S1)を試料ビン40に降下させると、HCl(S1)と大理石41が反応して二酸化炭素(CO
2)が発生する。このように二酸化炭素を発生させると、二酸化炭素の泡によって溶存気体が連行湧出される。また、連行湧出された溶存気体と二酸化炭素がNaOH溶液S2を通過すると、二酸化炭素がNaOH溶液S2に吸収され、二酸化炭素以外の溶存気体R2のみが捕集される。よって、この捕集した溶存気体R2を計量することで、二酸化炭素以外の溶存気体R2の量が測定される。
【0025】
次に、二酸化炭素以外の溶存気体量測定工程で二酸化炭素以外の溶存気体量を測定したので、溶存二酸化炭素量測定工程(酸度法)によって、残りの二酸化炭素(CO
2)の気体量の測定を行なう。この溶存二酸化炭素量測定工程では、過飽和溶存気体量測定工程でサンプリング容器33、34に採取した排水Wを用い、この排水W中にフェノールフタレイン試液を加え、NaOH溶液を滴定し、pH8.3を定量点として滴定量から総酸度を算定する。そして、総酸度から遊離炭酸(水中に溶解している二酸化炭素)の質量を求め、体積に換算することで、排水中の溶存二酸化炭素R3の量を求める。
【0026】
具体的に、溶存二酸化炭素量測定工程は、サンプリング容器33、34で採取した排水(試料水、被圧液体)Wに対し、分析室で溶存二酸化炭素量を測定する。
【0027】
ここで、酸度とは、水中に含まれている炭酸、鉱酸、有機酸などの酸分を中和するのに要するアルカリ分を、これに対応するCaCO
3のppmで表したもので、その1ppm(mg/l)を1度とする。また、総酸度とは、水中の酸分全部をこれに対応するCaCO
3のppmで表したものである。
【0028】
そして、本実施形態では、まず、サンプリング容器33、34で採取した排水Wの総酸度の定量を、フェノールフタレイン測定法を用いて行なう。このフェノールフタレイン測定法で排水Wの総酸度を定量する際には、排水(試料水W)100mlを比色管にとり、フェノールフタレイン試薬(指示薬)を4〜5滴加えて白紙上に置き、微虹色が消えずに残るまで0.02規定(0.02mol/l;本溶液1mlがCaCO
31mgに相当)のNaOH溶液で滴定して予備試験を行なう。次に、別の比色管に排水(試料水W)100mlをとり、フェノールフタレイン試薬を4〜5滴加え、これに予備試験で消費した量と同量の0.02規定のNaOH溶液を加え、軽く動揺し、虹色が消えた場合は、さらに同様にて規定を続ける。そして、虹色が消えずに残った時点で、遊離炭酸が溶存していない状態であるため、pH8.3におけるNaHCO
3の当量点(終末点)を総酸度とする。
【0029】
滴定時の化学反応式は、CO
2+NaOH→NaHCO
3である。また、最終的に、虹色が消えずに残った時点の0.02規定のNaOH溶液の合計ml数aから、〔総酸度(CaCO
3ppm)=a×1000/試料水ml〕によって総酸度を算定する。
【0030】
そして、総酸度から換算して遊離炭酸(排水中に溶解している二酸化炭素)R3の量が求まる。
このとき、遊離炭酸の質量算定式は、遊離炭酸(CO
2ppm;mg/l)=[総酸度(CaCO
3ppm)−鉱酸酸度(CaCO
3ppm)]×0.88であり、遊離炭酸の体積算定式は、遊離炭酸(CO
2ml/l)=CO
2ppm/44.01×22.263である。
【0031】
なお、遊離炭酸の質量算定式における〔鉱酸酸度〕とは、H
2SO
4、HCl、およびHNO
3などの鉱酸(炭酸以外の非金属を含む酸の総称で、古来、鉱物から得られた)による酸度である。また、試料水(排水W)中に第二鉄塩およびアルミニウム塩が著量に含有されているときは、鉄およびアルミニウムを測定して、これに対応するCaCO
3のppm(mg/l)を差し引いた残りを鉱酸酸度とする。当量点はpH4.8で、0.02規定のNaOH溶液で滴定するため、試料水がpH4.8以上の場合は、鉱酸酸度なしとする。
【0032】
また、遊離炭酸の質量算定式における(0.88)は、総酸度の算定式を同規定度のCO
2に換算して算定する際の換算比である。さらに、遊離炭酸の体積算定式における(44.01)は、日本化学会原子量委員会「4桁の原子量表(2010)」の分子量による。また、遊離炭酸の体積算定式における(22.263)は、実在気体のCO
21モルの物性値(体積)による。
【0033】
そして、上記のように、過飽和溶存気体量測定工程と、二酸化炭素以外の溶存気体量測定工程と、溶存二酸化炭素量測定工程(水上置換法と、二酸化炭素による追い出し法と、酸度法)の3種類の工程で計量した過飽和溶存気体R1の量と二酸化炭素以外の溶存気体R2の量と溶存二酸化炭素R3の量を合計することにより、高圧の排水中の溶存気体量が得られる。
【0034】
したがって、本実施形態の被圧液体中の溶存気体量の測定方法においては、過飽和溶存気体量測定工程で、キャビテーションを発生させながら被圧液体(高圧の排水)Wをサンプリング容器33、34に採取するようにしたことにより、被圧液体Wから過飽和溶存気体R1を効率的且つ効果的に解離して捕集することができ、過飽和溶存気体R1の量を測定することができる。
【0035】
また、二酸化炭素以外の溶存気体量測定工程で、被圧液体W中で二酸化炭素を発生させ、被圧液体W中の溶存気体を二酸化炭素の泡によって連行湧出させることにより、二酸化炭素以外の溶存気体R2の量を測定することができる。
【0036】
さらに、溶存二酸化炭素量測定工程で、被圧液体Wの総酸度を求め、総酸度から被圧液体W中の溶存二酸化炭素R3の量を求めることができる。
【0037】
よって、本実施形態の被圧液体中の溶存気体量の測定方法においては、過飽和溶存気体量測定工程と、二酸化炭素以外の溶存気体量測定工程と、溶存二酸化炭素量測定工程の3種類の工程を組み合わせることにより、従来、その計量が困難であった被圧液体中の溶存気体量を確実に計量することが可能になる。
【0038】
以上、本発明に係る被圧液体中の溶存気体量の測定方法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。