【文献】
CVD Diamond,Delaware Diamond Knives,2002年,URL:http://www.ddk.com/PDFs/CVDDiamond.pdf
【文献】
D. King,Scaling the microwave plasma-assisted chemical vapor diamond deposition process to 150-200 mm substrates,Diamond and Related Materials,2008年 1月11日,Volume 17, Issues 4-5,Pages 520-524
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多結晶CVDダイヤモンドウェーハは、前記特徴のうちの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個又は11個全てを有する、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の多結晶CVDダイヤモンドウェーハ。
最も大きな直線寸法は、130mm以上、135mm以上、140mm以上、145mm以上又は150mm以上である、請求項1〜4のうちいずれか一に記載の多結晶CVDダイヤモンドウェーハ。
前記中央領域の直径は、前記最も大きな直線寸法の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%である、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の多結晶CVDダイヤモンドウェーハ。
前記多結晶CVDダイヤモンドウェーハは、125mm以上、130mm以上、135mm以上、140mm以上、145mm以上、150mm以上又は160mm以上の少なくとも2つの互いに直交する直線寸法を有する、請求項1〜6のうちいずれか一に記載の多結晶CVDダイヤモンドウェーハ。
前記厚さは、250μm以上、350μm以上、450μm以上、500μm以上、750μm以上、1000μm以上、1500μm以上又は2000μm以上である、請求項1〜7のうちいずれか一に記載の多結晶CVDダイヤモンドウェーハ。
前記多結晶CVDダイヤモンドウェーハの表面粗さは、200nm以下、150nm以下、100nm以下、80nm以下、60nm以下又は40nm以下である、請求項1〜11のうちいずれか一に記載の多結晶CVDダイヤモンドウェーハ。
反射防止又は回折構造が前記多結晶CVDダイヤモンドウェーハの表面内又は表面上に形成されている、請求項1〜12のうちいずれか一に記載の多結晶CVDダイヤモンドウェーハ。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野においてはダイヤモンド材料の合成のための化学気相成長又は蒸着(CVD)法が今や周知である。ダイヤモンド材料の化学気相成長に関する有用な背景技術情報がジャーナル・オブ・フィジックス(Journal of Physics)の特集号、即ち、ダイヤモンド関連技術を特集したコンデンスド・マター(Condensed Matter),第21巻,36号(2009)に見受けられる。例えば、アール・エス・バルマー等(R. S. Balmer et al.)による書評記事は、CVDダイヤモンド材料、技術及び用途に関する包括的な概要を与えている(これについては、「ケミカル・ベーパ・デポジション・シンセティック・ダイヤモンド:マテリアルズ,テクノロジー・アンド・アプリケーションズ(Chemical vapour deposition synthetic diamond: materials, technology and applications)」,ジャーナル・オブ・フィジックス(J. Phys.),コンデンスド・マター(Condensed Matter),第21巻,36号,2009年,364221を参照されたい)。
【0003】
ダイヤモンドが黒鉛と比較して準安定状態にある領域内にある状態で、CVD条件下におけるダイヤモンドの合成は、内部熱力学ではなく、表面反応速度論によって規定される。CVDによるダイヤモンド合成は、通常、典型的にはメタンの形態の僅かなフラクション(典型的には、5%未満)の炭素を用いて実施される。但し、過剰水素分子中において他の炭素含有ガスを利用することができる。水素分子を2000Kを超える温度まで加熱した場合、水素原子への相当な解離が生じる。適当な基板材料の存在下において、合成ダイヤモンド(人造ダイヤモンド又は人工ダイヤモンドとも称される)材料を析出させることができる。
【0004】
水素原子は、これが基板から非ダイヤモンド炭素をエッチングにより選択的に除去してダイヤモンド成長が生じることができるようにするのでプロセスにとって必要不可欠である。CVDダイヤモンド成長に必要なラジカルを含む反応性炭素及び水素原子を発生させるためにガス種を含む炭素及び水素分子を加熱する種々の方法が利用可能であり、かかる方法としては、アークジェット、ホットフィラメント、DCアーク、酸素アセチレン炎及びマイクロ波プラズマが挙げられる。
【0005】
電極を必要とする方法、例えばDCアークプラズマは、電極腐食及びダイヤモンド中への物質の混入に起因した欠点を呈する場合がある。燃焼方法には電極腐食に関する問題はないが、燃焼方法は、高品質ダイヤモンド成長と一致したレベルまで精製しなければならない比較的高価な供給ガスを利用する。また、酸素アセチレン混合物を燃焼させた場合であっても、火炎の温度は、ガス流中の相当なフラクションの水素原子を達成するには不十分であり、かかる方法は、程々の成長速度を達成するための局所領域内におけるガスのフラックスの濃縮を利用する。恐らくは、燃焼がバルクダイヤモンド成長のために普及していない主要な理由は、kWhで表される抽出可能なエネルギーコストである。電気と比較して、高純度アセチレン及び酸素の使用は、熱を発生させる上で費用のかかるやり方である。ホットフィラメント型反応器は、一見すると簡単なように見えるが、制限された量の水素原子を成長面まで比較的効果的に運ぶようにするために必要な低ガス圧力での使用に制限されるという欠点を有する。
【0006】
上述のことに照らして、マイクロ波プラズマは、電力効率、成長速度、成長面積及び得ることができる生成物の純度の面でCVDダイヤモンド析出を実施する最も効果的な方法であることが判明した。
【0007】
マイクロ波プラズマ活性化型CVDダイヤモンド合成システムは、典型的には、原料ガス供給源とマイクロ波電力源の両方に結合されたプラズマ反応器容器を含む。プラズマ反応器容器は、定常マイクロ波を支える空胴共振器を形成するよう構成される。炭素源及び水素分子を含む原料ガスがプラズマ反応器容器内に送り込まれ、かかる原料ガスを定常マイクロ波によって活性化させると、高電場領域内にプラズマを生じさせることができる。適当な基板をプラズマに近接して設けると、ラジカルを含む反応性炭素は、プラズマから拡散して基板に至ることができ、そして基板上に析出可能である。水素原子も又、プラズマから拡散して基板に至ることができ、そして基板から非ダイヤモンド炭素をエッチングにより選択的に除去してダイヤモンド成長が生じることができるようにする。
【0008】
CVD法による合成ダイヤモンド膜成長のための考えられるマイクロ波プラズマ反応器群が当該技術分野において知られている。かかる反応器は、多種多様な設計のものである。共通の特徴は、プラズマチャンバ、プラズマチャンバ内に設けられた基板ホルダ、プラズマを生じさせるマイクロ波発生器、マイクロ波発生器からのマイクロ波をプラズマチャンバ中に送り込む結合構造体、プロセスガスをプラズマチャンバ内に送り込んでプロセスガスをプラズマチャンバから除去するガス流システム及び基板ホルダ上の基板の温度を制御する温度制御システムを含む。
【0009】
種々の考えられる反応器設計例をまとめて記載したシルヴァ等(Silva et al.)による有益な概要的論文が上述のジャーナル・オブ・フィジックスに記載されている(これについては、「マイクロウェーブ・エンジニアリング・オブ・プラズマ‐アシステッドCVDリアクターズ・フォア・ダイヤモンド・デポジション(Microwave engineering of plasma-assisted CVD reactors for diamond deposition)」,ジャーナル・オブ・フィジックス(J. Phys.),コンデンスド・マター(Condens. Matter),第21巻,36号,2009年,364202を参照されたい)。特許文献に注目すると、米国特許第6645343号明細書(発明者:フラウンホッファー(Fraunhofer))は、化学気相成長プロセスによるダイヤモンド膜成長のために構成されたマイクロ波プラズマ反応器の一例を開示している。この米国特許明細書に記載された反応器は、円筒形プラズマチャンバを有し、このベースには基板ホルダが取り付けられている。冷却装置が基板ホルダ上の基板の温度を制御するために基板ホルダの下に設けられている。さらに、ガス入口及びガス出口がプロセスガスを供給したりこれを除去したりするためにプラズマチャンバのベースに設けられている。マイクロ波発生器が高周波同軸ラインによりプラズマチャンバに結合され、この高周波同軸ラインは、プラズマチャンバの上方でその送り側端部のところで細分され、そしてプラズマチャンバの周囲のところで、プラズマチャンバの側壁内に取り付けられた石英リングの形態をした本質的にリング状のマイクロ波窓に方向付けられている。
【0010】
マイクロ波プラズマ反応器、例えば先行技術において開示されたマイクロ波プラズマ反応器を用いると、適当な基板、例えばシリコンウェーハ又は高融点金属(refractory metal)ディスクを形成する炭化物(カーバイド)上への化学気相成長によって多結晶ダイヤモンドウェーハを成長させることが可能である。かかる多結晶CVDダイヤモンドウェーハは、一般に、これらの成長させたままの形態では不透明であるが、ウェーハの互いに反対側のフェースを研磨することによって多結晶CVDダイヤモンドウェーハを透明に作ることができ、それにより光学用途向きの透明な多結晶ダイヤモンド窓を作ることができる。
【0011】
ダイヤモンド材料は、これが紫外線から赤外線までの広い光学的透明度を有するので光学部品として有用である。ダイヤモンド材料は、他の考えられる窓材料と比較して、ダイヤモンド材料が機械的に強固であり、不活性であり、しかも生体適合性であるという点で追加の利点を有する。例えば、ダイヤモンド材料が不活性であることにより、ダイヤモンドは、他の光学的窓材料が適していない反応性化学環境で用いる上で優れた選択肢となる。さらに又、ダイヤモンド材料は、熱伝導率が極めて高く、しかも熱膨張率が低い。したがって、ダイヤモンド材料は、光学部品が加熱される傾向のある高エネルギービーム用途において光学部品として有用である。ダイヤモンド材料は、熱を迅速に取り除いて加熱が起こる領域を冷却し、それにより例えば高エネルギービームがダイヤモンド材料を通過する特定の箇所での熱の蓄積を阻止する。材料が加熱されるまで、ダイヤモンド材料の熱膨張率が低いことにより、部品は、甚だしくは変形することがないようになり、なお、変形は、使用中、光学的及び/又は機械的問題を引き起こす場合がある。
【0012】
多結晶CVDダイヤモンド光学部品を作製する場合の一問題は、CVD成長プロセス中、不純物、例えば、窒素、珪素及び非ダイヤモンド炭素が以下に説明するようにダイヤモンド材料中に取り込まれるということにある。
【0013】
雰囲気中の窒素は、一般に、プロセス原料ガス中の不純物として存在し、又、真空シールが不完全であり且つ/或いは残留不純物がCVD反応器の内面に吸着され、そしてかかる欠陥及び/又は不純物が使用中に脱着する場合があるので、CVD反応器部品内の残留不純物として存在する場合がある。さらに、窒素ガスは、合成ダイヤモンド成長プロセス中にCVD合成雰囲気中に意図的に導入される場合が多い。というのは、窒素が合成ダイヤモンド材料の成長速度を増大させることが知られているからである。窒素は、商業的に有用な成長速度を達成する上で有利であるが、合成ダイヤモンド材料中への窒素の取り込みは、材料の光学的及び熱的性能特性に悪影響を及ぼす場合がある。したがって、CVD合成雰囲気中に十分な窒素を提供して許容可能な成長速度を達成することと他方において、成長中の固体CVDダイヤモンド材料中に取り込まれる窒素の量を制限することとのバランスが取られるのが良い。装置及びプロセス条件は、CVD合成雰囲気中の窒素が成長中の固体CVDダイヤモンド材料中に取り込まれる速度に影響を及ぼす場合がある。
【0014】
珪素不純物は、CVD反応器内の珪素を主成分とするコンポーネントに起因している場合がある。例えば、石英窓又はベルジャー(bell jar)は、マイクロ波をプラズマチャンバ中に結合すると共にプラズマ及びプロセスガスを基板成長面の近くに閉じ込めてCVDダイヤモンド成長を達成するよう用いられる場合が多い。かかる珪素含有石英コンポーネントは、使用中、プラズマからの極めて高い温度にさらされ、この結果、これらコンポーネントからの珪素が合成ダイヤモンド材料中に取り込まれる場合がある。装置及びプロセス条件は、成長中の固体CVDダイヤモンド材料中への珪素の取り込み速度に影響を及ぼす場合がある。
【0015】
非ダイヤモンド炭素(例えば、SP2混成黒鉛状炭素)がCVDダイヤモンド成長プロセス中、基板の成長面上に不可避的に蒸着される。上述したように、水素原子がCVDダイヤモンド成長プロセスにとって必要不可欠である。というのは、水素原子は、非ダイヤモンド炭素を選択的にエッチングして基板から除去し、その結果、ダイヤモンド成長が起こることができるようになるからである。しかしながら、この選択的エッチングプロセスは、通常、蒸着した非ダイヤモンド炭素を全て除去することはなく、従って、かかる物質は、CVDダイヤモンド材料中に取り込まれるようになる。装置及びプロセス条件は、成長中の固体CVDダイヤモンド材料中への非ダイヤモンド炭素の取り込み速度に影響を及ぼす場合がある。
【0016】
上述のことに照らして、装置形態及びプロセス条件は、CVD成長中、合成ダイヤモンド材料中に取り込まれる不純物のレベルが高性能光学部品にとって極めて小さいものであるようにするために注意深く選択されると共に制御されなければならない。
【0017】
絶対不純物レベルの制御に加えて、不純物取り込みの一様性は、一貫した性能特性を有する生成物を達成するよう制御されることも又重要である。一様性は、成長面全体にわたる不純物取り込み速度の空間的ばらつき及び1回の成長プロセスにわたる不純物取り込み速度の時間的ばらつきの面における問題である。例えば、成長面全体における物理的及び化学的プロセスパラメータの非一様な分布状態により、合成多結晶ダイヤモンドウェーハ全体における不純物取り込み速度の空間的ばらつきが生じることがある。さらに、合成多結晶ダイヤモンドウェーハが成長するにつれて、合成多結晶ダイヤモンドウェーハ内の結晶粒界はサイズが増大する。合成多結晶ダイヤモンドウェーハが厚く成長するにつれて結晶粒界のサイズが増大すると、拡大された結晶粒界内の不純物取り込み速度の増大が生じ、その結果、合成多結晶ダイヤモンドウェーハの厚さ全体を通じて不純物の濃度の増大が生じる場合がある。
【0018】
上述の問題に加えて、合成多結晶ダイヤモンドウェーハ全体にわたる成長速度のばらつきにより、不純物取り込みのばらつきが生じることがある。例えば、成長速度が増大すると、非ダイヤモンド炭素が合成多結晶ダイヤモンドウェーハ内に封入される前に非ダイヤモンド炭素をエッチングして成長面から除去するのに有効な時間が減少する。さらに、成長速度のばらつきによっても、厚さのばらつきが生じ、それにより、CVD成長プロセスの完了後の冷却時に合成多結晶ダイヤモンドウェーハのひずみ及び亀裂発生が生じる場合がある。成長速度のばらつきは、成長面全体にわたるプラズマの非一様性及び合成多結晶ダイヤモンドウェーハを成長させる基板の温度の非一様性によって引き起こされる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述の問題にもかかわらず、高い光学的特性の多結晶ダイヤモンドウェーハを直径最高約100mmまで作製することが今日まで可能であった。しかしながら、高い光学的特性の大径の多結晶ダイヤモンドウェーハの製造には問題のあることが判明した。大径の多結晶ダイヤモンドウェーハを作製することが可能ではあったが、これらは、特にウェーハの周囲寄りでは低い光学的特性のものであった。かかるウェーハは、極めて高い光学的特性を備えると共に比較的厚くしかも比較的大径の合成多結晶ダイヤモンド窓を必要とする或る特定の商業的用途に関する要件を満たしていない。例えば、或る特定の極めて高い出力のレーザビーム用途は、関与する極めて高い出力密度を取り扱うことができる直径120mmを超える有効アパーチュア(有効口径)の光学等級多結晶ダイヤモンドレーザ窓を必要とする。適切な光学的性質を備えた多結晶ダイヤモンドレーザ窓は、小さなサイズ及び厚さの状態で利用できる。しかしながら、これらサイズは、或る特定の用途にとっては十分に大きいわけではない。かかる多結晶ダイヤモンドウェーハは又、耐放射線性窓としての使用に必要である。
【0022】
本発明の或る特定の実施形態の目的は、窓領域の実質的に全てにわたり(例えば、少なくとも70%にわたり)極めて高い光学的特性を備えた厚く(例えば、少なくとも1.3mm)大きな(例えば、直径少なくとも70mm)の合成多結晶ダイヤモンド窓を作製するために適当なマイクロ波プラズマ反応器形態及び適当なCVDプロセス条件を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第1の観点によれば、
多結晶化学気相成長(CVD)ダイヤモンドウェーハであって、
125mm以上の最も長い直線寸法と、
200μm以上の厚さと、
少なくとも多結晶CVDダイヤモンドウェーハの中央領域について室温(公称298K)で測定された以下の特徴のうちの一方又は両方とを有し、中央領域は、円形であり、多結晶CVDダイヤモンドウェーハの中央箇所上に心出しされ且つ多結晶CVDダイヤモンドウェーハの最も長い直線寸法の少なくとも70%の直径を有し、かかる特徴は、
(1)10.6μmで0.2cm
-1以下の吸収係数、及び
(2)145GHzで2×10
-4以下の誘電損係数tanδである。
【0024】
好ましくは、多結晶CVDダイヤモンドウェーハは、少なくとも中央領域について以下の特徴のうちの1つ又は2つ以上を更に有し、かかる特徴は、
(3)多結晶CVDダイヤモンドウェーハの核形成フェースが引張り状態にある場合、200〜500μmの厚さについて760MPa×n以上、500〜750μmの厚さについて700MPa×n以上、750〜1000μmの厚さについて650MPa×n以上、1000〜1250μmの厚さについて600MPa×n以上、1250〜1500μmの厚さについて550MPa×n以上、1500〜1750μmの厚さについて500MPa×n以上、1750〜2000μmの厚さについて450MPa×n以上又は2000μm以上の厚さについて400MPa×n以上の引張り破壊強度(乗率nは、1.0、1.1、1.2、1.4、1.6、1.8又は2である)、
(4)多結晶CVDダイヤモンドウェーハの成長フェースが引張り状態にある場合、200〜500μmの厚さについて330MPa×n以上、500〜750μmの厚さについて300MPa×n以上、750〜1000μmの厚さについて275MPa×n以上、1000〜1250μmの厚さについて250MPa×n以上、1250〜1500μmの厚さについて225MPa×n以上、1500〜1750μmの厚さについて200MPa×n以上、1750〜2000μmの厚さについて175MPa×n以上又は2000μm以上の厚さについて150MPa×n以上の引張り破壊強度(乗率nは、1.0、1.1、1.2、1.4、1.6、1.8又は2である)、及び
(5)5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下、0.5μm以下、0.2μm以下又は0.1μm以下の表面平面度である。
【0025】
好ましくは、多結晶CVDダイヤモンドウェーハは、少なくとも中央領域について以下の特徴のうちの1つ又は2つ以上を更に有し、かかる特徴は、
(6) 1
ブラックスポットmm
-2以下、0.5
ブラックスポットmm
-2以下又は0.1
ブラックスポットmm
-2以下の平均ブラックスポット
面密度、
(7)任意の3mm
2領域内の4個以下、3個以下、2個以下又は1個以下のブラックスポットが存在するようなブラックスポット分布状態、
(8)2760cm
-1から3030cm
-1までの範囲内の修正直線バックグラウンドで測定して単位厚さ当たり0.20cm
-2以下、0.15cm
-2以下、0.10cm
-2以下又は0.05cm
-2以下の積分吸収係数、
(9)1900Wm
-1K
-1以上、2000Wm
-1K
-1以上、2100Wm
-1K
-1以上又は2200Wm
-1K
-1以上の熱伝導率、
(10)前面及び後面が15nm未満の二乗平均粗さまで研磨されている場合、0.7mmのサンプル厚さについて10.6μmで1%以下、0.5%以下又は0.1%以下の前方半球における全積分散乱率、及び
(11)2次イオン質量分析法によって測定して10
17cm
-3以下、5×10
16cm
-3以下、10
16cm
-3以下、5×10
15cm
-3以下又は10
15cm
-3以下の珪素濃度である。
【0026】
実施形態は、上述の好ましい特徴の任意の組み合わせを含むことができる。しかしながら、多結晶CVDダイヤモンドウェーハは、上記において列挙して与えられた11個の特徴のうちの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個又は11個全てを有する。
【0027】
本発明の第2の観点によれば、上述の多結晶CVDダイヤモンドウェーハを作製するためのマイクロ波プラズマ反応器であって、このマイクロ波プラズマ反応器は、
ベース、頂部プレート及びベースから頂部プレートまで延びていて、マイクロ波共振モードを支えるための空胴共振器を構成する側壁を有するプラズマチャンバを有し、空胴共振器は、ベースから頂部プレートまで延びる中心回転対称軸線を有し、
プラズマチャンバのベースに向かう方向でリング状誘電体窓を経て頂部プレートを通ってマイクロ波をプラズマチャンバ中に誘導結合する環状誘電体窓を含むマイクロ波結合構造体を有し、
プラズマチャンバのベースに向かう方向で1つ又は2つ以上のガス入口ノズルを経て頂部プレートを通ってプロセスガスをプラズマチャンバ中に送り込むガス流システムを有し、
プラズマチャンバのベース内に設けられた基板ホルダを有し、基板ホルダは、使用中、多結晶CVDダイヤモンドウェーハを成長させることができる基板を支持する支持面を有し、
使用中、基板ホルダの支持面全体にわたる温度プロフィールを制御するよう液体冷却剤及び/又は気体冷却剤を基板ホルダに送る冷却剤送り出しシステムを含む基板温度制御システムを有し、
少なくとも、環状誘電体窓は、回転対称性であり、空胴共振器の中心回転対称軸線から0.2mmの範囲内に位置する回転対称軸線を有することを特徴とするマイクロ波プラズマ反応器が提供される。
【0028】
本発明の第3の観点によれば、上述のマイクロ波プラズマ反応器を用いて多結晶CVDダイヤモンドウェーハを作製する方法であって、この方法は、
基板を基板ホルダ上に配置するステップを含み、基板は、回転対称性であり、基板は、基板ホルダ上に配置されると、空胴共振器の中心回転対称軸線から1.0mmの範囲内に位置する回転対称軸線を有し、
15から40kWまでの範囲内の電力で環状誘電体窓を通ってマイクロ波をプラズマチャンバ内に送り込むステップを含み、
1つ又は2つ以上のガス入口ノズルを通ってプロセスガスをプロセスチャンバ中に送り込むステップを含み、プロセスガスは、98から99%までの範囲内の原子濃度の水素、0.3から1.1%までの範囲内の原子濃度の炭素及び30から270ppbまでの範囲内の原子濃度の窒素を含み、プロセスガスの全流量は、2000から15000sccmまでの範囲内にあり、プラズマチャンバ内の圧力は、140から235トルまでの範囲内にあり、
775から950℃までの範囲内の基板温度状態で基板上に多結晶CVDダイヤモンドウェーハを成長させるステップを含み、
多結晶CVDダイヤモンドウェーハをマイクロ波プラズマ反応器から取り出すステップを含み、
多結晶CVDダイヤモンドウェーハを研磨するステップを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0029】
本発明の或る特定の実施形態は、(i)特定のマイクロ波プラズマ反応器構成例を開発し、(ii)この特定の形態のマイクロ波プラズマ反応器を極めて厳密な設計上の公差に合わせて更に改造し、そして(iii)特定形態のマイクロ波プラズマ反応器を動作させる適当なプロセス条件を開発して極めて高い光学的特性を備えた大きな合成多結晶ダイヤモンド窓の作製を達成することによって実現された。
【0030】
特徴(i)に着目すると、マイクロ波プラズマ反応器は、1つ又は2つ以上のガス入口ノズルを介してプロセスガスと環状誘電体窓を経てプラズマチャンバの頂部プレートを通り、プラズマチャンバのベース内に取り付けられた適当に温度制御されている基板に向けられるマイクロ波との両方を結合するよう構成され、その結果として、プロセスガスとマイクロ波の両方が回転対称の状態でプロセスチャンバ内に結合され、そして基板成長面のほうへ方向付けられるようになっている。かかる形態は、高いガス流量、高いプロセス圧力及び高いマイクロ波電力プロセス条件を適当に温度制御された窒素濃度の状態で高い成長速度での良好な品質の合成ダイヤモンドの成長の達成に利用することができる上で有用であることが判明した。さらに、プラズマチャンバの頂部プレートの周辺領域に沿ってぐるりと環状誘電体窓を設けることにより、代替手段、例えばベルジャーの使用、プラズマチャンバの中央部分をまたぐ窓の使用又はプラズマチャンバの側壁に設けられた環状誘電体窓の使用と比較した場合に成長中における合成ダイヤモンド材料中への珪素移行又は取り込みを減少させることができ、上述の代替手段の全ては、チャンバ内のプラズマ領域への誘電体窓材料の暴露を増大させる。
【0031】
特徴(ii)に着目すると、かかる形態を利用した場合であっても、極めて高い光学的特性を有すると共に亀裂のない合成多結晶ダイヤモンドの広い領域(例えば、直径120mm以上)の且つ厚い(200μm以上)窓を作製するのは可能ではないことが判明した。この問題の原因は、プラズマチャンバの中心対称回転軸線に対するマイクロ波結合形態、ガス送り出しシステム及び基板取り付け及び温度制御システムの極めて僅かな位置合わせ不良にある。狭い領域(例えば、直径100mm以下)にわたって成長させた合成ダイヤモンド材料の品質の顕著な低下の面で顕在することがないが、広い領域(例えば、直径120mm以上)にわたって合成ダイヤモンド材料を作製した場合、部品相互間の極めて僅かな位置合わせ不良であっても、これは、特に合成多結晶ダイヤモンドウェーハの周辺領域周りの材料品質に悪影響を及ぼす場合があることが判明した。したがって、部品、特に環状誘電体窓は、回転対称であるべきことが判明し、各部品は、空胴共振器の中心回転対称軸線から0.2mmの範囲内に位置した回転対称軸線を有する。好ましくは、他の部品、例えば基板ホルダ及び1つ又は2つ以上のガス入口ノズルも又、正確に構成されて位置合わせされなければならない。かかる正確な位置合わせがプロセスガスとマイクロ波の両方が基板成長面に向かって軸方向にプラズマチャンバ内に結合される上述の形態と組み合わさることによって、高いガス流量及び高いマイクロ波電力条件を、極めて高い光学的特性を備えた合成多結晶ダイヤモンドの大面積且つ厚い窓の作製を達成する上で重要であることが判明した。高い回転対称度で達成することができる。
【0032】
特徴(iii)に着目すると、上述の正確に位置合わせされたマイクロ波プラズマ反応器構成例を利用した場合であっても、多結晶ダイヤモンドウェーハの周辺領域に沿ってぐるりと位置する多結晶ダイヤモンド材料の品質は、極めて高い光学的特性に関する要件を満たさない場合のあることが判明した。特に、不純物のレベル、例えば非ダイヤモンド炭素のレベルが大面積ウェーハの周辺領域のところで増大することが判明した。この問題は、大きな厚さまで成長した場合にも深刻化する。というのは、合成多結晶ダイヤモンドウェーハが成長すると、結晶粒界のサイズが増大し、これにより、結晶粒界内の不純物取り込み速度が増大するからである。この問題は、水素ガス流量を増大させることによって軽減できることが判明した。非ダイヤモンド炭素を選択的にエッチングしてこれを基板から除去するのに必要な水素原子の濃度は、直径が極めて大きい場合には低く、かくして、非ダイヤモンド炭素のエッチング効率が低下すると考えられる。成長面のほうへ方向付けられる水素ガス流量を増大させると、より多くの水素原子が多結晶ダイヤモンドウェーハの周辺領域に押しやられ、かくして非ダイヤモンド炭素がエッチングにより成長面から除去される速度が増大すると共に成長中のウェーハの周辺領域の材料の品質が向上する。別の又は追加の手段は、基板の成長面のほうへ方向付けられると共に水素原子の十分に大きな濃度が成長中、多結晶ダイヤモンドウェーハの周辺領域にもたらされるようにするのに十分広い領域にわたって配置された複数個のガス入口ノズルを備えたガス入口ノズルアレイを提供することにある。さらに別の代替手段又は追加の手段は、非ダイヤモンド炭素をエッチングして成長面から除去するための時間を多く取ることができるよう多結晶CVDダイヤモンドウェーハの成長速度を減少させることである。例えば、成長速度を多結晶CVDダイヤモンドウェーハの厚さが増大するにつれて減少させるのが良く、その手段として、例えば、基板上における多結晶CVDダイヤモンドウェーハの成長中、炭素の原子濃度及び/又は窒素の原子濃度を減少させる。
【0033】
反応器設計の技術的発展、技術上の公差管理の技術的発展及びプロセス設計の技術的発展を組み合わせることによって、極めて高い光学的特性を備えた大きな合成多結晶ダイヤモンド窓の作製を達成することが可能であった。
【0034】
本発明の良好な理解を得るため且つ本発明をどのように具体化するかを示すために、今、添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明するが、かかる実施形態は例示に過ぎない。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1に示されたマイクロ波プラズマ反応器は、次のコンポーネント、即ち、プラズマチャンバ2、基板ホルダ4、基板5、マイクロ波発生器6、核形成フェース9′及び成長フェース9″を備えた多結晶CVDダイヤモンドウェーハ9を成長させるために使用中生成されるプラズマ8、マイクロ波結合構造体10、誘電体窓12、原料ガス容器システム14、1つ又は2つ以上のガス入口16、1つ又は2つ以上のガス出口18、基板ホルダ4の支持面と基板5の後面との間にガス隙間22を構成するためのスペーサワイヤ又はスペーサパッド20及び供給管26を介してガス隙間22に結合されたガス供給システム24及び基板ホルダを冷却するための液体冷却剤供給システム28を含む基板温度管理装置を含む。
【0037】
マイクロ波プラズマ反応器は、3つのサブシステム、即ち、(A)プロセスガス及びマイクロ波をプラズマチャンバの頂部プレートを介してプラズマチャンバ中に送り込むよう構成されたガス及びマイクロ波送り出しシステム、(B)ベース、頂部プレート及びベースから頂部プレートまで延びていて、マイクロ波共振モードを支える空胴共振器を構成する側壁を備えたプラズマチャンバ、空胴共振器は、ベースから頂部プレートまで延びる中心回転対称軸線Sを有し、(C)プラズマチャンバのベース内に設けられていて、使用中、多結晶CVDダイヤモンドウェーハを成長させることができる基板を支持する支持面を提供する基板取り付け構造体及び液体冷却剤及び/又は気体冷却剤を基板ホルダに供給して使用中、基板ホルダの支持面全体にわたる温度プロフィールを制御する冷却剤送り出しシステムを含む基板温度制御システムを有するものと考えられる。
【0038】
以下においてサブシステムの各々について詳細に説明する。
【0039】
(A)ガス及びマイクロ波送り出しシステム
マイクロ波結合構造体10は、マイクロ波を方形導波管から環状誘電体窓12に送るよう構成された同軸導波管を有する。同軸導波管は、内側導体及び外側導体を有する。環状誘電体窓は、マイクロ波透過性材料、例えば石英で作られ、この環状誘電体窓は、プラズマチャンバの頂部に真空密環状窓を形成する。マイクロ波発生器6及びマイクロ波結合構造体10は、適当な波長のマイクロ波を発生させてかかるマイクロ波をプラズマチャンバ中に誘導結合し、それにより使用中において基板5のすぐ上に位置した高エネルギー最大振幅を有する定在波をプラズマチャンバ内に形成するよう構成されている。
【0040】
マイクロ波結合構造体10は、導波管プレート13を更に含む。導波管プレート13は、
図2(a)、
図2(b)及び
図3に詳細に示されている。導波管プレート13は、環状形態に設けられた複数個の孔32を有し、各孔は、同軸導波管からのマイクロ波を、環状誘電体窓12を通ってプラズマチャンバ中に結合する導波管を形成する。導波管プレートは、孔相互間に延びていて、冷却剤及び/又はプロセスガスを外側円周方向領域から内側軸方向領域に供給するのに適した複数本のチャネル34を更に有する。
【0041】
この構成は、これによりマイクロ波電力を環状誘電体窓経由でプラズマチャンバ中に結合できると共に、導波管構造体によって包囲されたプラズマチャンバの領域への冷却剤及び/又はプロセスガスの提供を可能にするので、有利であることが判明した。
【0042】
上述のことに加えて、導波管プレートは、同軸導波管の中央導体を支持するよう構成されているのが良い。したがって、
図1に示された中央導体は、接地ポストであるが、別の一構成例では、中央導体は、マイクロ波発生器からの方形導波管の上側壁に設置されることが必要ではない電気的に浮動状態のポストとして形成できる。導波管内で電気的に浮動する内側導体は、多くの点において、電力を方形導波管から同軸導波管に伝送する簡単且つ好都合な方法であることが判明している。これには、例えば冷却剤としての水及びプロセスガスのようなサービスを
図1に示されているような中央導体から導入することができる接地箇所を失うという欠点がある。しかしながら、本発明の或る特定の実施形態は、導波管プレート内のチャネルを介してかかるサービスを供給する別の手段を提供する。
【0043】
さらに、導波管プレートは、プラズマチャンバの上方部分と下方部分を互いに結合して使用中において環状誘電体窓に加わる大きな圧縮応力を回避するよう構成されるのが良く、この場合、同軸導波管の中央導体を介する機械的アンカー箇所が使用されることはない。さらに又、環状誘電体窓は、2つの互いに反対側の表面を有するのが良く、マイクロ波は、これら互いに反対側の表面を通ってプラズマチャンバ中に結合され、シールが2つの互いに反対側の表面に設けられるのが良い。これにより、信頼性のあるシールをプラズマチャンバの上方区分と下方区分との間で且つ誘電体窓のところに形成することができる。
【0044】
図3は、環状誘電体窓12及び導波管プレート13をマイクロ波プラズマ反応器内にどのようにすれば設けることができるかの一例を示すマイクロ波プラズマ反応器の一部分の断面図である。図示の構成では、導波管プレート13の外側周辺部分が同軸導波管38の外側導体36とプラズマチャンバの側壁40との間に設けられている。環状誘電体窓12の外側周辺部分が導波管プレート13とプラズマチャンバの側壁40との間に設けられている。環状誘電体窓12の内側部分が導波管プレート13の内側部分と別のプレート42との間に保持されている。導波管プレートの孔32は、環状誘電体窓12及び冷却剤及び/又はプロセスガスのパスをこれら孔相互間で導波管プレート13の内側部分中に供給するチャネル34と整列している。環状誘電体窓12は、エラストマーOリング44を用いて導波管プレートに取り付けられるのが良い。この構成では、別のプレート42を誘電体窓12の一部分がエラストマーOリング44を介して別のプレート42と導波管プレート13との間に設けられると共に保持された状態で導波管プレートに取り付けるのが良い。
【0045】
上述の導波管プレートは、次の幾つかの有利な機能を実行する。
(i)導波管プレートは、冷却剤及び/又はプロセスガスの噴射を可能にする。
(ii)導波管プレートは、浮動中央同軸導体を支持する。
(iii)導波管プレートは、プラズマチャンバの上側部品と下側部品との間の結合部を形成する。
(iv)導波管プレートは、同軸導波管からのマイクロ波を基板に向かう軸方向をなしてプラズマチャンバ中に送り込む。
(v)導波管プレートは、環状誘電体窓を支持する。
【0046】
図示の実施形態では、導波管プレートの複数個の孔は、マイクロ波をプラズマチャンバの中心軸線に平行な方向でプラズマチャンバ中に結合するよう構成されている。この構成では、導波管プレートは、プラズマチャンバの中心軸線に垂直な平面内に設けられた状態でプラズマチャンバ内に上壁の一部分を形成している。マイクロ波をプラズマチャンバの軸線に平行な方向でプラズマチャンバ中に結合することは、効率が高く、しかも複雑な同軸供給形態の必要性を回避することが判明した。したがって、冷却剤及び/又はプロセスガスのためのチャネルが導波管プレートに設けられておらず且つ/或いは浮動ポストが設けられていない場合であっても、本発明の導波管プレートは、マイクロ波をプラズマチャンバ中に効率的且つ簡単な仕方で結合する上で依然として有利である。
【0047】
複数個の孔は、好ましくは、周期的回転対称性を有するよう構成される。例えば、n個の孔が設けられる場合、孔は、n倍の回転対称性を有するよう円に沿って対称に構成される。対称構造は、孔の非対称性の結果としてプラズマチャンバ内に生じる電場の非対称性を回避する上で好ましい。
【0048】
上述の環状誘電体窓は、誘電体材料の単一の完全なリングで形成される。しかしながら、別の構成では、環状誘電体窓は、複数個の別々の弧状セグメントで形成されても良く、各セグメントは、導波管プレートの対応の孔を横切って封止される。本発明の実施形態の重要な特徴は、環状誘電体窓が回転対称性であり、そして空胴共振器の中心回転対称軸線から0.2mmの範囲内、0.15mmの範囲内、0.10mmの範囲内又は0.05mmの範囲内に位置する回転対称軸線を備えているということにある。
【0049】
一形態では、導波管プレートの孔相互間に延びる1本又は2本以上のチャネルは、基板ホルダと対向して配置されていて、プロセスガスを基板ホルダに向かって噴射する1つ又は2つ以上の噴射ポートにプロセスガスを供給するよう構成された少なくとも1本のチャネルを含む。この構成により、軸方向ガス流構造体をマイクロ波結合構造体と同一のチャンバの端のところに設けることができる。
【0050】
導波管プレートの中央部分は、基板ホルダと対向して配置された導電性表面を支持するのが良い。導電性表面は、導波管プレートにより形成されても良く又は導波管プレートの中央部分に連結された別個の金属製本体により形成されても良い。プロセスガスを基板ホルダに向かって噴射する1つ又は2つ以上のガス入口ノズルが導電性表面に設けられるのが良い。一形態では、導電性表面は、湾曲しており、かかる導電性表面は、プラズマチャンバの中央領域に向かって延びる。例えば、導電性表面は、円錐形の本体を形成するのが良い。かかる導電性表面は、これがプラズマチャンバの上方領域内のプラズマ生成を阻止するのを助けることができるので有用である。事実上、導電性表面は、使用中において高電場領域を隠すことができる。即ち、導電性表面は、プラズマチャンバの中央領域に向かって延びる導電性表面を備えていない対応のチャンバ内に存在する高電場最大振幅領域を包囲するよう配置されるのが良い。
【0051】
導波管プレートは、2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個以上の孔を有するのが良い。孔の個数を変化させることが、プラズマチャンバ中へのマイクロ波結合効率に影響を及ぼすことができるということが判明した。或る特定の構成によれば、導波管プレートは、奇数個の孔、最も好ましくは素数個の孔を有する。例えば、導波管プレートは、3個、5個又は7個の孔を有するのが良い。
【0052】
各孔は、事実上、方形導波管と等価である。三方孔(three way aperture)は、孔の長さを最大するのに役立ち得る。代替手段としての四方孔(four way aperture )と六方孔(six way aperture)の両方は、モード安定性の観点からは欠陥があると判明した。幾つかの孔の存在にもかかわらず、電力を主としてTM
0mnモードで空胴中に結合することができる。高次モード、即ちTM
1mn(「1は、0に等しくない」の発生の形態で目に見える孔の対称性に起因した作用効果がある。かくして、3つ全ての孔が同相で励振される三方孔がモードのTM
3mnシリーズに結合し、他方、四方孔及び六方孔は、これよりも極めて高次のTM
8mn及びTM
12mnモードに結合することが予想される。しかしながら、実際には、四方孔及び六方孔は、寄生モードの影響を受けやすい。かくして、四方又は六方孔は、TM
2mnモードに結合するのが良い。全体として、作用効果は、四方及び六方孔がプラズマに非対称性を生じさせることができ、かかる非対称性の結果として、プラズマがオフセンタ状態で動き又は二方に分かれる。三方孔は、他の形態で生じるより深刻な一方又は二方分解モードよりも望ましさの低い安定した三方引き効果(three way pulling effect)を与える。孔に生じる三方モードの作用効果を打ち消すようになった摂動を局所電場に対して生じさせる基本的に金属本体であるモード解除ブロックを用いて非安定性を取り扱うのが良い。これら金属ブロックの位置を実験的に定めることができる。これら金属ブロックを高壁電流の領域(即ち、H場が高いところ)に配置することによって、ブロックを用いて望ましくないモードを途絶させることができる。したがって、一構成では、複数個のモード解除ブロックがプラズマチャンバの内壁上、例えばプラズマチャンバの側壁又は底部上に設けられ、モード解除ブロックは、複数個の孔により生じる電磁摂動を補償するよう構成されている。モード解除ブロックは、孔形態に対称に関連付けられるよう互いに間隔を置いて配置される。例えば、モード解除ブロックの個数は、導波管プレートに設けられた孔の個数に等しいのが良く、モード解除ブロックは、孔形態に対応した対称性を有するよう位置決めされる。例えば、3つの孔が導波管プレートに設けられる場合、3つのモード解除ブロックがプラズマチャンバの下方部分内でプラズマチャンバの周りに取り付けられると共に孔により生じる電場の摂動を打ち消すよう対称に配置されるのが良い。変形例として、モード解除ブロックの個数は、孔の個数の整数倍であるのが良く、他方、依然として孔形態に対称に関連付けられるよう配置される。モード解除ブロックは、プラズマチャンバの内壁にくっつけられるのが良く或いはプラズマチャンバの壁によって一体に形成されても良い。三方孔の別の考えられる代替手段は、五方又は七方孔を用いることである。これらは素数なので、これらは、提示二方モード等とのオーバーモーディングに抵抗する。この場合、モード解除ブロックは不要である場合がある。
【0053】
マイクロ波エネルギーを特定の半径方向幅を備えた孔によりプラズマチャンバに供給することが更に有利である。導波管プレートの孔により提供される環状隙間(半径方向の環状隙間)とプラズマチャンバの直径の比は、1/10〜1/50、1/20〜1/40、1/25〜1/35であり又はほぼ1/30である。この環状隙間は、孔をプラズマチャンバの側壁に隣接して配置することにより提供されるのが良く、同軸導波管の外側導体の直径は、プラズマチャンバの空胴共振器の直径と同等であり、内側導体は、環状隙間について上述した比を達成するために外側導体よりも僅かに小径であるに過ぎない。これら2つの導体の直径の比を変えることによって、チャンバへの適合が達成される最適箇所を見出すことが可能である。別の構成では、孔は、プラズマチャンバの側壁から離れて、例えば、頂部プレートの中央と縁との間の中間位置のところに配置されても良い。有利には、チャンバ及びマイクロ波結合組立体のコンポーネントは、高い精度に合わせて、例えば、コンポーネントの寸法形状及び位置決めが規定の仕様の0.1%の範囲内に収まるよう構成されるべきである。
【0054】
ガス供給システムは、原料ガス容器システム14、1つ又は2つ以上のガス入口16及び1つ又は2つ以上のガス出口18を含む。1つの軸方向に配置されたガス入口が
図1では、上述の導波管プレート13も又形成するプラズマチャンバの頂部プレートの中央に設けられた状態で示されている。オプションとして、ガス入口は、プラズマチャンバの頂部プレートの一領域にわたってガス入口ノズルのアレイを提供するよう改造可能である。
【0055】
ガス入口は、基板ホルダの真上でプラズマチャンバの頂部に設けられると共に供給ガスを基板に向かって高速で直接送るよう構成されている。プロセスガスがプラズマチャンバのベースに又はこの近くに設けられた1つ又は2つ以上の出口のところで取り出される。オプションとして、ポンプを用いてプロセスガスを入口に再循環させることができる。かかるシステムの利点は、基板のほうへ方向付けられた高速ガス流が活性化されたガス種を対流によってプラズマから基板に運ぶことにある。これは、プラズマから基板への活性化ガス種の拡散を利用したシステムと比較して、成長速度の増大を助ける。さらに、上述したように、かかる構成を用いて水素ガス流量を増大させることによって、より多くの水素原子を多結晶ダイヤモンドウェーハの周辺領域に押しやることができ、かくして、非ダイヤモンド炭素をエッチングしてこれを成長面から除去する速度が増大すると共に成長中のウェーハの周辺領域の材料の品質が向上する。
【0056】
別の又は追加の手段は、基板の成長面のほうへ方向付けられると共に成長中、多結晶ダイヤモンドウェーハの周辺領域に十分に高い濃度の水素原子が提供されるようにするのに十分広い領域にわたり配置された複数個のガス入口ノズルを備えたガス入口ノズルアレイを提供することである。この点に関し、比較的多数のノズルを密に間隔を置いて配置して比較的一様なガスの流れを保証するのが良い。比較的高い数密度のノズルをアレイの状態に提供することにより、使用中における基板に向かうガス流の一様性が向上すると共にプラズマを基板に対して一様に平べったくすると共に付形することができ、それにより比較的広い領域にわたって高い速度で一様なダイヤモンド膜形成を達成することができる。また、比較的小さい面積のノズルを提供してノズルアレイの面積がノズル出口自体の面積ではなく、大部分がノズル相互間の空間で構成されるのが有用であることが判明した。したがって、ノズル入口アレイの面積に対して比較的高い数密度のノズルを提供することが有利であることは判明しているが、ノズル入口の面積を全体としてノズルアレイの面積で除算して得られる比が小さいアレイを提供することも又有利であることが判明している。小径ノズルは、高速で方向付けられるガス流を提供する上で有利であることが判明している。しかしながら、比較的広い領域にわたりダイヤモンド膜の一様な被着を得るために比較的広い領域にわたって比較的一様なガス流を提供することも又望 ましい。したがって、比較的小さな入口ノズルサイズとかかるノズルの比較的高い数密度の組み合わせは、高速で方向付けられるガス流と比較的広い領域にわたるガス流の一様性とのバランスを達成する上で有利であることが判明した。
【0057】
上述したことに照らして、改造型ガス流システムは、基板ホルダに対向して設けられていて、プロセスガスを基板ホルダのほうへ方向付ける複数個のガス入口ノズルを含むガス入口ノズルアレイを有するのが良く、ガス入口ノズルアレイは、プラズマチャンバの中心軸線に対して実質的に平行又は末広がりの向きで設けられた少なくとも6つのガス入口ノズル(実質的に平行という表現は、完全に平行な構造の少なくとも10°以内、5°以内、2°以内又は1°以内を意味している)、0.1個/cm
2以上(しかしながら、或る特定の用途については極めて高いことが好ましい)のガス入口ノズル数密度(なお、ガス入口ノズル数密度は、垂線がプラズマチャンバの中心軸線に平行に位置する平面上にノズルを投影し、そしてこの平面上のガス入口数密度を測定することによって測定される)及び10以上(しかしながら、或る特定の用途ではこれよりも極めて大きいことが好ましい)のノズル面積比(なお、ノズル面積比は、垂線がプラズマチャンバの中心軸線に平行に位置する平面上にノズルを投影し、この平面上のガス入口ノズル領域の全面積を測定し、これをノズルの総数で除算して各ノズルと関連した面積を出し、そして各ノズルと関連した面積を各ノズルの実際の面積で除算することによって測定される)を含む。
【0058】
本発明の特定の実施形態によれば、1つ又は2つ以上のガス入口ノズルは、空胴共振器の中心回転対称軸線から1.0mmの範囲内、0.5mmの範囲内、0.25mmの範囲内、0.2mmの範囲内、0.15mmの範囲内、0.10mmの範囲内又は0.05mmの範囲内に位置する回転対称軸線を有する。
【0059】
(B)プラズマチャンバ
プラズマチャンバは、使用中、定在マイクロ波を支える空胴共振器を形成するよう構成されている。一形態によれば、プラズマチャンバは、使用中、TM
01n定在マイクロ波、例えばTM
011モードを支えるよう構成されている。動作周波数は、400〜500MHzまでの範囲内又は800〜1000MHzまでの範囲内にあるのが良い。
【0060】
また、空胴共振器高さと空胴共振器直径の比が0.3〜1.0までの範囲内、0.4〜0.9までの範囲内又は0.5〜0.8までの範囲内にあるよう条件を満たす直径を有するよう構成された円筒形空胴共振器を提供するのが有利であることが判明した。かかる比は、先行技術の構成と比較したときに比較的小径の空胴を構成する。直感に反するように思われるが、広い領域上に一様なCVDダイヤモンド成長を達成するための一様で安定性があり且つ大面積のプラズマを形成するよう比較的小さな直径を有するプラズマ反応器チャンバを用いるのが有利であることが判明した。比較的小径の空胴共振器は、次の有益な技術的作用効果をもたらすことができる。
(i)チャンバ内の共振モード純度を向上させると共にCVDダイヤモンド合成に必要な長時間スケールにわたって動作中、多くのモード相互間の複雑な連係を回避することができる。例えば、小径チャンバは、好ましくない高次モードを刺激するCVDダイヤモンド成長面の僅かな温度不安定性の問題を軽減することができる。
(ii)特定の比較的小さな直径範囲内で形成された空胴は、基板の頂部コーナのところに極めて強烈な半径方向電場(E‐フィールド)を形成しないで基板全体にわたる電場を一様にする基板のところの局所高次軸対称モードの生成を可能にすると考えられる。
(iii)比較的低いQファクタを有する小径空胴は、始動及び同調が容易であり、しかもマイクロ波源周波数のばらつきの影響を受けにくい。
【0061】
かかる比較的小径の空胴は又、プラズマの不安定性をもたらすチャンバ内に生じる複雑且つ相互作用するガス対流の問題を軽減するのに役立つ。すなわち、本発明者の考えているところによれば、小径空胴は、プラズマチャンバ内におけるガス流とマイクロ波電力の両面でシステムを制御するのが簡単且つ容易であり、その結果、一様で且つ安定した大面積プラズマを形成すると共に維持し、それにより広い領域にわたって一様なCVDダイヤモンド成長を達成することができるようになる。それと同時に、空胴の直径は、プラズマが圧縮状態になって基板を横切って非一様になるほど小さいものであってはならない。
【0062】
例えば、プラズマチャンバのベースから頂部プレートまで測定した空胴共振器高さは、400MHzから500MHzまでの範囲内のマイクロ波周波数fにおいて300mmから600mmまで、300mmから500mmまで若しくは400mmから500mmまでの範囲内にあり、又は800MHzから1000MHzまでの範囲内のマイクロ波周波数fにおいて150mmから300mmまで、150mmから250mmまで又は200mmから250mmまでの範囲内にあるのが良い。空胴共振器直径は、400MHzから500MHzまでの範囲内のマイクロ波周波数fにおいて400mmから1000mmまで、500mmから900mmまで若しくは600mmから800mmまでの範囲内にあり、又は800MHzから1000MHzまでの範囲内のマイクロ波周波数fにおいて200mmから500mm、250mmから450mm若しくは300mmから400mmまでの範囲内にあるのが良い。空胴共振器の容積は、400MHzから500MHzまでの範囲内のマイクロ波周波数fにおいて0.018m
3から1.530m
3まで、0.062m
3から0.350m
3まで、0.089m
3から0.270m
3まで若しくは0.133m
3から0.221m
3までの範囲内、又は800MHzから1000MHzまでの範囲内のマイクロ波周波数fにおいて0.002m
3から0.06m
3まで、0.007m
3から0.04m
3まで、0.01m
3から0.03m
3まで若しくは0.015m
3から0.025m
3までの範囲内にあるのが良い。
【0063】
上述したような小径空胴構成例を用いた場合の1つの潜在的な問題は、チャンバの壁コンポーネントが過熱するという問題である。しかしながら、空胴共振器の壁が使用中、プラズマにさらされ、即ち、プラズマが珪素汚染を回避するためにベルジャー内に閉じ込められない構成を提供するのが有利であることが判明した。プラズマ反応器の容器は、通常、溶接ステンレス鋼で作られる。というのは、これは、超高真空(UHV)チャンバについて一般に認められている選択材料だからである。しかしながら、これにより、インターフェースのところでのアーク発生、高温表面上のスート(すす)の生成及び全体的な熱伝達不良という問題を生じさせるということが判明した。さらに、これらチャンバは、作るのに多額の費用がかかる。アルミニウムは、熱的に良好な材料であることが判明しており、又、機械加工するのが容易である。かくして、ステンレス鋼は、真空チャンバにとって良好な材料ではあるが、その熱的性能が極めて貧弱なので、ステンレス鋼は、高い電力密度にさらされる領域での使用には好適ではない。例えばアルミニウムのような材料は、伝統的には高真空に適したものとはみなされていないが、実際には、従来のエラストマーシールを使用できるほどに高真空の使用の仕方にとっては極めて良好である。
【0064】
上述したことに照らして、空胴共振器は、使用中、空胴共振器内に生じるプラズマにさらされるよう構成された内壁を有するのが良く、かかる内壁は、空胴共振器内の内壁の全表面積の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%を占める金属製の表面から成る。金属製の表面は、アルミニウムの重量を基準として少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%を占めるアルミニウム又はアルミニウムの合金で作られるのが良い。さらに、環状誘電体窓により形成される内壁の一部分は、好ましくは、空胴共振器内の内壁の全表面積の25%以下、20%以下、15%以下、10%以下又は5%以下である。
【0065】
基本的な形態としての円筒形チャンバが
図1に示されているが、オプションとして追加の特徴を設けることができる。例えば、チャンバの壁からの突出部を或る特定の場合に設けるのが良い。これら突出部は、基板の近くに形成される電場を変更するために設けられるのが良く、それにより垂直方向非対称がもたらされ、かかる垂直方向非対称は、プラズマ生成が望ましくないプラズマチャンバの反対側の端部のところの電場に対して基板上の電場を強める。加うるに、かかる突出部は、モードフィルタとして機能することができ、それによりプラズマを駆動する電場の安定性及び/又は純度を促進する。かかる突出部は又、プラズマの熱的性質を変えるよう設けられるのが良く、それにより、CVDダイヤモンド成長の一様性を向上させるのを助けることができ、使用中、プラズマを封じ込める物理的バウンダリとして機能することができ、そしてプラズマが基板の上方の軸方向中央存在場所から逸脱するのを阻止すると共に/或いはプラズマチャンバの側壁に沿ってこれを上るガス流を遮り、それによりもしそのように構成されていなければ、入口ガス流及び/又はプラズマを不安定化させる場合のあるチャンバ内のガス同伴及び望ましくない対流を減少させることができる。かかる場合、プラズマチャンバ内に設けられた任意の追加の構造体が高い回転対称度及びプラズマチャンバの回転対称軸線との位置合わせ関係を有し、それにより大きな直径まで良好な光学的特性の材料の実現を達成することが保証されるべきである。
【0066】
(C)基板取り付け構成
基板をモデル化又は実験的測定によって示すことができる空胴共振器内に導入したときに電場プロフィールが著しく混乱状態になることが判明した。この点に関し、
図4(a)〜(c)は、プラズマ反応器の空胴共振器内の基板の種々の高さにより電場がどのように変化するかを示す電場プロフィールプロットを示している。かかるプロットは、Y軸上の電場E
zの大きさと基板上の空胴共振器の直径を横切る横方向位置Xとの関係を示している。
【0067】
図4(a)は、基板Sの成長面が空胴共振器Cの底部Bのすぐ上に配置されている場合の電場プロフィールを示している。電場プロフィールは、TM
01nチャンバに関するJ
0ベッセル関数である空のチャンバの電場プロフィールによって決定される。基板とチャンバ壁との間にセットアップされた同軸モードを形成するような基板の上縁から電場大きさへの寄与はほんの僅かに過ぎない。この構成例では、電場は、基板の中央領域の上方で高く、そして基板の縁に向かって著しく衰える。したがって、この電場プロフィールの結果として、基板成長面の周辺領域ではCVDダイヤモンド成長不良が生じる。
【0068】
図4(b)は、基板Sの成長面が空胴共振器Cの底部Bよりも高いところに位置した場合の電場プロフィールを示している。この場合、電場プロフィールは、基板とチャンバ壁との間にセットアップされていて、チャンバの中央領域中に次第に減衰する同軸モードによって決定される。この構成例では、電場は、基板の周辺領域の上方で高く、そして基板の中央領域に向かって減少する。したがって、この電場プロフィールの結果として、基板成長面の中央領域ではCVDダイヤモンド成長が不良である。
【0069】
図4(c)は、基板Sの成長面が空胴共振器C内の包囲面よりも上方の正確なところに配置された場合の電場プロフィールを示している。空のチャンバの電場プロフィールは、高電場のリングが基板縁の周りに配置された状態で基板の大部分の上方に実質的に一様な電場領域を形成するよう基板とチャンバ壁との間にセットアップされた同軸モードと釣り合いが取られている。電場の中央領域は、実質的に一様であるが、基板縁の周りに配置された高電場リングのちょうど内側に僅かに低い電場領域を有している。この低い電場領域により成長面のこの領域のところにCVDダイヤモンド成長不良が生じると考えられる。しかしながら、実際には、停電場領域のすぐ外側の高電場リングがプラズマを外方に引っ張り、中央領域の僅かな非一様性を補償し、その結果、広い領域にわたって一様なCVDダイヤモンド成長を可能にする大きく且つ平坦で一様なプラズマが基板の大部分の上方に生じるのを助けることが判明した。実際には、広い領域にわたり一様なCVDダイヤモンド成長を可能にする基板の大部分上の大きくしかも平らであり且つ一様なプラズマを基板直径と基板の成長面の高さの比が10から14まで、11から13.5まで又は11.0から12.5までの範囲内にある場合に達成することができるということが判明しており、この場合、基板の成長面の高さは、基板を包囲した表面の平均高さと相対関係にある。
【0070】
本発明の或る特定の実施形態によれば、基板ホルダは、空胴共振器の中心回転対称軸線から1.0mmの範囲内、0.5mmの範囲内、0.25mmの範囲内、0.2mmの範囲内、0.15mmの範囲内、0.10mmの範囲内又は0.05mmの範囲内に位置する回転対称軸線を有する。さらに、使用の際、基板は、基板ホルダ上に配置されて位置合わせされるのが良く、その結果、基板ホルダ上に配置されると、基板の回転対称軸線が空胴共振器の中心回転対称軸線から1.0mmの範囲内、0.5mmの範囲内又は0.2mmの範囲内に位置するようになる。
【0071】
基板ホルダが基板と同一直径である構成例の場合、基板ホルダは、全体が基板の下に配置され、基板を包囲する表面は、プラズマチャンバの底部によって形成されるのが良い。したがって、この場合、基板を包囲した表面の平均高さは、プラズマチャンバCの底部Bの高さに等しく、基板の成長面の高さH
gsは、
図5(a)に示されているように基板S及び基板ホルダSHを包囲したプラズマチャンバの底部から測定されることになる。変形例として、基板ホルダが基板よりも非常に大きく、かくして基板を包囲する広い平坦面が形成されている構成例の場合、基板を包囲した表面の平均高さ位置は、基板ホルダの頂面に等しい。したがって、この場合、基板の成長面の高さH
gsは、
図5(b)に示されているように基板Sを包囲した基板ホルダSHの頂面から測定されることになる。基板ホルダが基板から外方に延び、傾斜し、湾曲し又は段付き頂面が基板を包囲している構成例の場合、局所包囲表面の平均高さH
lssをRsで示された基板の縁と半径方向Xで取った基板縁から基板の厚さの約2倍、即ち、2×Tsの距離のところとの間の断面の高さの平均値H
localによって定めることができる。
【0072】
かかる構成例は、傾斜基板ホルダについて
図5(c)に示されている。例えば、基板から45°の角度をなして半径方向に基板から距離2×Tsまで傾斜した頂面を有する基板ホルダの場合、基板を包囲した表面の平均高さは、基板ホルダSHの高さの半分に等しい。したがって、この場合、基板の成長面の高さH
gsは、基板ホルダの高さSHの半分から測定される。
【0073】
上述のことと関連して、基板成長面と局所包囲表面との間に特定高さの段部を提供することにより、プラズマチャンバの電場プロフィールが乱され、空のチャンバの電場プロフィールが基板とチャンバ壁との間にセットアップされた同軸モードとの釣り合いが取られ、それにより高電場リングが上述したように基板縁の周りに局所化された状態で、実質的に一様な電場領域が基板の大部分上に形成されるということが判明した。
【0074】
基板とチャンバとの間にセットアップされた同軸モードの大きさは、空胴共振器直径と基板直径の比によっても影響を受ける場合がある。したがって、或る特定の実施形態では、空胴共振器の直径と基板直径の比が1.5〜5、2.0〜4.5又は2.5〜4.0である形態を提供することが好ましい場合があり、空胴共振器直径は、空胴共振器の高さの50%未満、40%未満、30%未満又は20%未満の高さのところで測定される。特に好ましい一構成例では、上述の比は、空胴共振器直径が基板の成長面の高さのところで測定される場合にも当てはまる。
【0075】
かくして、適当な基板寸法を提供すると共に基板をプラズマチャンバ内に正しく配置することにより、広い領域にわたって一様なプラズマが生じるのを助けることができる。さらに、かかる構造により達成される一様なプラズマは又、基板に向かう比較的一様な熱流を提供し、これは、CVDダイヤモンドが成長後に冷えると、CVDダイヤモンドの亀裂発生の問題を軽減するのを助けるということが判明した。この点に関し、CVDダイヤモンドウェーハ中の応力釣り合いは、主として、ダイヤモンドウェーハ全体にわたる成長温度のばらつきによって決まる。成長中における高温領域は、冷却中に互いに接触し、したがって、引張り状態になり、低温領域は相互接触の度合いが小さく、したがって、圧縮状態のままである。冷却中のCVDダイヤモンドウェーハ内の応力のばらつきの結果として、亀裂発生が生じることがある。したがって、基板温度の大きな変動は、望ましくない。
【0076】
とは言うものの、上述の構成を用いた場合の潜在的な一問題は、基板の縁の周りに設けられた高電場リングにより、基板の縁のところに高い基板温度が生じる場合があり、これにより、潜在的に、CVDダイヤモンド材料が成長後に冷えたときに基板の亀裂発生が生じることである。確かに、直感的に望ましい基板成長面全体にわたって完全に一様な温度を有するのではなく、本発明者は、基板成長面の縁温度が基板成長面の中央領域の温度よりも低いようにすることが実際には望ましいと考えている。かかる構成の理由は、CVDダイヤモンド材料内の圧縮領域が亀裂発生の源となる場合のある場所の近く、即ち、CVDダイヤモンドウェーハの縁の近くに位置するようにすることによって亀裂伝搬を最小限に抑えることができるということにある。したがって、基板成長面の縁を成長中、中央領域よりも僅かに低温状態に保つことは、結果として得られるCVDダイヤモンドウェーハの縁の近くに圧縮領域を形成する上で有利であると考えられる。亀裂発生が冷却中のCVDダイヤモンドウェーハの縁のところで開始される場合、CVDダイヤモンドウェーハの縁の付近の圧縮領域は、亀裂がCVDダイヤモンドウェーハの中心に向かって伝搬するのを阻止する。したがって、発生が開始された亀裂は、短く、しかも次に僅かな縁損傷を取り除くよう処理可能なCVDダイヤモンドウェーハの外縁のところに位置したままである傾向がある。この点に関し、一例が
図1の反応器形態に示されている基板温度制御システムを提供することが有利である。
【0077】
基板5は、基板ホルダ4の支持面と基板5の後面との間にガス隙間22を構成するようスペーサワイヤ又はスペーサパッド20によって基板ホルダ4から間隔を置いて配置されている。さらに、ガス供給システム24が供給管26を経てガス隙間22に結合され、この供給管は、ガス供給システム24から基板ホルダ4を通って延び、この供給管26は、基板ホルダの支持面に設けられた1つ又は2つ以上の出口を通ってガスをガス隙間22中に送り込むよう構成されている。基板ホルダ4を冷却するための液体冷却材供給システム28も又設けられている。
【0078】
液体冷却材供給システム28は、基板ホルダに対して大まかな基本的冷却作用をもたらす。しかしながら、このシステムは、広い面積にわたって高品質の一様なCVDダイヤモンド析出を得るために本発明者によって必要とされると考えられる基板の細かい温度制御又は調整にとって正確さの度合いが不十分であるということが判明した。したがって、基板温度の正確な制御又は調整を可能にするためにガス供給システム24,26が設けられている。ガス供給システムは、互いに異なる熱伝導率を有する少なくとも2種類のガスを基板の下のガス隙間中に注入すると共に、基板ホルダ上の基板の温度を制御するために少なくとも2種類のガスの比を変化させるよう構成されているのが良い。例えば、ガス供給システムは、軽いガス、例えば水素と重いガス、例えばアルゴン(アルゴンは、熱伝導率が低い)の混合物を利用するのが良い。有利には、基板の温度を制御するために用いられるガスは、主要なプロセス化学作用にも利用されるガスであり、従って、追加のガス源は、不要である。基板の縁部温度が基板の中央領域に対して高すぎる場合、軽ガスに対する重ガスの比率を増大させて基板の中央領域下のガスの熱伝導率を減少させるのが良く、かくして基板の中央領域は、基板の縁部に対して昇温する。これとは逆に、基板の縁部温度が基板の中央領域に対して低すぎる場合、重ガスに対する軽ガスの比率を増大させて基板の中央領域化のガスの熱伝導率を増大させるのが良く、かくして基板の中央領域は、基板の縁部に対して冷える。基板の絶対温度並びに基板の互いに異なる領域の相対温度は、基板の下のガス隙間内のガス流量及びガス組成を変化させることによっても制御できる。
【0079】
スペーサワイヤ16は、基板の下に中央ガス隙間空胴を形成するよう構成されるのが良く、その結果、ガスは、中央ガス隙間空胴内に溜まるようになる。例えば、スペーサワイヤ16は各々、形状が弧状であり、これらスペーサワイヤは、リングの状態に形作られており、スペーサワイヤ相互間にはガスを流通させることができる隙間が形成されている。スペーサ要素は、導電性であると共に/或いは導電性接着剤、例えばSilver DAG(商標)により定位置に固定されるのが良く、この導電性接着剤は、スペーサ要素と基板ホルダとの良好な電気的接触を保証するのに有用であることが判明した。これは、温度制御に悪影響を及ぼす場合のある基板の下におけるアーク発生という問題を阻止するのに役立つ。また、スペーサワイヤのリング区分相互間の隙間の位置によりダイヤモンドウェーハの厚さに変化を生じさせることができるということが注目された。所望ならば、隙間の数及び位置を調整すると所与の反応器により生じるダイヤモンドウェーハに固有の他の非一様性を補償することができる。
【0080】
マイクロ波プラズマ反応器は、上述したように基板の成長面の中央領域の1つ又は2つ以上の測定値及び成長面の周辺領域の1つ又は2つ以上の測定値を含む少なくとも2つの温度測定値を取るよう構成された1つ又は2つ以上の温度測定装置を更に含む。温度測定値を互いに同時に又は互いに短い時間間隔内で取ることができ、基板温度制御システムを用いると、温度勾配が上述の範囲をはみ出ないようにすることができる。温度測定装置は、
図1に示されている高温計(パイロメータ)30から成るのが良い。2つの高温計が設けられるのが良く、一方の高温計は、中央温度測定値を取るためのものであり、もう一方は、周辺の温度測定値を取るためのものである。
【0081】
マイクロ波プラズマ反応器は、別の特徴部、例えば、基板の周りに設けられた金属製温度加減リングを有するのが良い。かかる温度加減リングは、2つの役割を果たし、即ち、温度加減リングは、高電場のリングを基板縁部から遠ざけ、又、別個に加熱される(プラズマによって)部品及び別個に冷却される(チャンバベースによって)部品である場合、温度加減リングは、基板の縁部温度を直接加減する。したがって、リングは、基板の縁部を冷却するよう機能することができ、それによりどのような引張り応力をもその大きさを減少させ、CVDダイヤモンドの亀裂発生の恐れを低くする。加うるに、基板の周りに設けられた温度加減リングを調節することによっても、基板の縁部に沿って下方に向かうCVDダイヤモンドの過剰成長を加減することができ、それにより基板からのCVDダイヤモンド材料の取り出しを助けることができる。上述の構造体の場合と同様、かかるリング構造体がプラズマチャンバ内に設けられる場合、保証されるべきこととして、このリングは、回転対称性であり、そしてプラズマチャンバの回転軸線に対して正確に位置合わせされ、それにより大面積で良好な光学的特性の合成ダイヤモンド窓を成長させる場合に有害な非対称の発生を阻止する。
【0082】
基板温度制御システムは、次の条件、即ち、5℃<T
c−T
e<120℃、10℃<T
c−T
e<100℃、10℃<T
c−T
e<80℃、20℃<T
c−T
e<80℃又は20℃<T
c−T
e<60℃を満たすよう基板の成長面上におけるCVDダイヤモンド成長中、基板の成長面の温度を制御するよう構成されるのが良く、T
cは、成長面の中央領域の温度であり、T
eは、成長面の周辺領域の温度である。T
c−T
eが大きすぎるようになると、冷却中、CVDダイヤモンドウェーハの中央領域に過度に大きな張力が生じる場合があり、それによりCVDダイヤモンドウェーハの中央領域に亀裂が生じる。T
c−T
eが小さすぎるようになった場合、圧縮領域は、CVDダイヤモンドウェーハの縁の近くでは生じず、ウェーハの縁のところで発生開始する亀裂は、CVDダイヤモンドウェーハを横切って伝搬する可能性が多分にあり、その結果、完全なウェーハ破損を含む極めて長い亀裂が生じる。
【0083】
例えば上述した構成を利用した場合であっても、多くの問題が依然として存在する場合がある。但し、これら問題は、上述の構成により実質的に軽減される場合がある。例えば、場合によっては、具体的に言えば、大面積多結晶ダイヤモンドディスク(例えば、直径80mm以上)を成長させるために大きな基板を用いた場合又は複数の単結晶ダイヤモンドを単一の成長プロセスで比較的広い面積(例えば、直径80mm以上)にわたって高融点金属基板にくっつけられた複数の単結晶ダイヤモンド基板上に成長させる場合、基板の端から端までにおける非一様なCVDダイヤモンド成長、CVDダイヤモンド成長中における基板からのCVDダイヤモンドウェーハの層状剥離並びにCVDダイヤモンドウェーハの成長後の冷却の際の亀裂発生開始及び伝搬という問題が依然として存在する。これは、高品質一様なCVDダイヤモンドを成長させることができる領域を増大させる目下の要望があるので特に問題である。さらに、これら問題は、基板を次の成長プロセスにおいて再使用する場合に悪化する傾向がある。これは、基板が高価でありしかも経済的に競合する工業プロセスにおいて再使用が望ましいので、特に問題である。
【0084】
本発明者が検討した考えられる一手段は、成長面の品質が成長後の冷却時にCVDダイヤモンドウェーハの取り外しに何らかの仕方で影響を及ぼすことであったが、かくして亀裂が生じた。しかしながら、成長面を処理して正確に定められた平坦度及び粗さを有するようにすることは、それ自体問題を解決するものではないということが判明した。これら問題の取り組みに焦点を当てた大規模な研究後、本発明者は、驚くべきこととして、観察された問題が基板の成長面全体にわたって基板の下のガス隙間の高さの極めて僅かなばらつきによって生じる温度の僅かな変化の結果であるということを見出した。具体的に説明すると、本発明者は、自分達のための供給業者により提供された円筒形高融点金属基板は、名目上平坦な前面及び後面を有するが、これら表面は、十分に平坦ではないということを見出した。基板の後面の僅かな平坦度のばらつきの結果として、ガス隙間の高さの僅かなばらつきが生じ、この結果、基板全体にわたって冷却度の差が生じるということが判明した。ガス隙間高さのばらつきにより生じる温度のばらつきの結果として、CVDダイヤモンド成長後の冷却時にCVDダイヤモンドに応力のばらつきが生じ、それにより、ダイヤモンドウェーハが少なくとも成長段階の一部分において亀裂が生じる場合があり、その結果歩留りが減少する。
【0085】
上述の構成例は、円周方向に対称である温度のばらつきを制御することができるが、円周方向に対称ではない温度のばらつき、例えば、ガス隙間高さのばらつきにより生じる温度のばらつきを制御するのは困難である場合がある。例えば、高融点金属基板は、使用中に垂れ下がって座屈する傾向がある(これらの融点から判断して長時間であるにもかかわらず)。一様な垂れ下がりは、主として、上述したように制御可能なT
c−T
eを変更する。しかしながら、座屈により、対称ではないウェーハ縁周りの温度に非一様性が生じる。したがって、縁全体を圧縮状態に維持することは容易ではない。典型的な座屈の大きさは、20ミクロン(山から谷まで)を超える場合がある。約200ミクロンのガス隙間の場合、これは、厚さの10%のばらつき及び対応の温度変化に対応している。この結果、ウェーハ縁周りに最高60℃までの温度変化が生じる場合ある。
【0086】
この問題を解決するため、ガス隙間の高さhが200μm以下、150μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下、40μm以下、20μm、10μm以下又は5μm以下のばらつきを有するようにすることが有利である。これは、例えば、供給業者により提供される基板の後面を更に処理して基板ホルダの支持面のプロフィールと相補する極めて正確に定められたプロフィールを有するようにすることによって達成できる。例えば、基板ホルダの支持面が平坦である場合、基板ホルダの後面は、これは極めて正確に平坦であるように処理されるべきである。
【0087】
したがって、機械的手段(好ましくは、一様な無指向性処理、例えば研削ではなくラップ仕上げによる)基板後面形状の制御が有利であることが判明した。さらに、基板ホルダの支持面は又、基板の後面と相補する正確に定められたプロフィールを有するよう処理されるのが良い。
【0088】
上述したことに加えて、供給業者により提供された幾つかの円筒形高融点金属基板の使用の結果として、前面と後面の両方を上述したように処理した場合であっても、一様且つ高品質のCVDダイヤモンドが得られないことも又判明した。商業的に入手できる高融点金属は、少量の黒鉛生成不純物、例えば鉄やニッケルを含む場合が多い。かかる不純物の比率が非常に僅かであっても、これは、かかる基板の成長面上におけるCVDダイヤモンド成長に悪影響を及ぼすことが判明している。したがって、上述したように基板の前面と後面の両方の正確な処理を行うことに加えて、基板の成長面のところの黒鉛生成不純物の重量を基準として0.5%未満、0.1%未満、0.075%未満、0.05%未満、0.025%未満、0.01%未満、0.005%未満又は0.001%未満の極めて高い化学的純度を備えた炭化物生成高融点金属基板を用いることが有利である。
【0089】
オプションとして、成長面の表面粗さRaは、1nm〜1μmである。成長面の粗さは、この成長面上で成長させられるCVDダイヤモンドの結晶構造と基板へのCVDダイヤモンドの密着強度の両方に影響を及ぼす場合のあることが判明した。1nmから1μmまでの範囲内の表面粗さR
aは、成長中における早期離層を阻止するのに十分な付着性を成長中のCVDダイヤモンドに提供する一方で、ダイヤモンド材料の亀裂発生を生じさせないでCVD成長後の冷却時、ダイヤモンド材料を基板から取り出すことができるほど十分に低い付着性を提供する上で特に有用であることが判明した。表面粗さの好ましい範囲は、1nmから500nmまで、10nmから500nmまで、10nmから200nmまでであるのが良い。代表的には、まず最初に、ラッピング用流体中に懸濁させたダイヤモンドグリットを用いて高融点金属ディスクを鋳鉄ホイール上でラップ仕上げする。一般に、ラッピングプロセスは、バルク材料除去のために用いられると共に所与のプロセスに必要な平坦度を達成するためにも用いられる。ラップ仕上げされたままの表面が用いられる数少ないプロセスが存在する。ラップ仕上げに関する代表的なR
a値は、100nm〜500nmである。しかしながら、通常、次に低い表面粗さ値を得るために例えば研削機/研磨機を用いると共に細かいグリットを用いてラップ仕上げされた表面を更に加工する。CVDダイヤモンド成長に先立って、高融点金属基板をクリーニングしてラッピングプロセスから生じた汚染を全て除去するようにすると共に/或いは高融点金属基板にシード添加してこれら高融点金属基板上におけるダイヤモンド成長のための核形成を助けるようにするのが良い。
【0090】
プロセス条件
上述の装置を用いて、広い領域にわたって高い光学的特性のCVDダイヤモンド材料を作製する方法を開発した。この方法は、
基板を基板ホルダ上に配置するステップを含み、基板は、回転対称性であり、この基板は、基板ホルダ上に配置されると、空胴共振器の中心回転対称軸線から1.0mmの範囲内に位置する回転対称軸線を有し、
15から40kWまで、20から35kWまで又は25から30kWまでの範囲内の電力で環状誘電体窓を通ってマイクロ波をプラズマチャンバ内に送り込むステップを含み、
1つ又は2つ以上のガス入口ノズルを通ってプロセスガスをプロセスチャンバ中に送り込むステップを含み、プロセスガスは、98から99%までの範囲内の原子濃度の水素、0.3から1.1%までの範囲内の原子濃度の炭素及び30から270ppbまでの範囲内の原子濃度の窒素を含み、プロセスガスの全流量は、2000から15000sccmまでの範囲内にあり、プラズマチャンバ内の圧力は、140から235トルまで、160から215トルまで又は180から205トルまでの範囲内にあり、
775から950℃まで、800から900℃まで又は825から875℃までの範囲内の基板温度状態で基板上に多結晶CVDダイヤモンドウェーハを成長させるステップを含み、
多結晶CVDダイヤモンドウェーハをマイクロ波プラズマ反応器から取り出すステップを含み、
多結晶CVDダイヤモンドウェーハを研磨するステップを含む。
【0091】
高い圧力、高い電力、高いガス流量条件は、広い領域にわたって高い光学的特性の材料を合成する上で有利であることが判明した。しかしながら、かかる条件は、一様な仕方で制御するのが困難である。上述したようなマイクロ波プラズマ反応器及び基板形態は、本発明を達成するために安定し且つ一様な仕方でかかる条件を維持することができる。
【0092】
しかしながら、上述の正確に位置合わせされたマイクロ波プラズマ反応器構成例を利用した場合であっても、多結晶ダイヤモンドウェーハの周辺領域に沿ってぐるりと位置する多結晶ダイヤモンド材料の品質は、極めて高い光学的特性の要件を満たさない場合のあることが判明した。特に、不純物のレベル、例えば非ダイヤモンド炭素のレベルが大面積ウェーハの周辺領域のところで増大することが判明した。この問題は、大きな厚さまで成長した場合にも深刻化する。というのは、合成多結晶ダイヤモンドウェーハが成長すると、結晶粒界のサイズが増大し、これにより、結晶粒界内の不純物取り込み速度が増大するからである。この問題は、水素ガス流量を増大させることによって軽減できることが判明した。非ダイヤモンド炭素を選択的にエッチングしてこれを基板から除去するのに必要な水素原子の濃度は、直径が極めて大きい場合には低く、かくして、非ダイヤモンド炭素のエッチング効率が低下すると考えられる。成長面のほうへ方向付けられる水素ガス流量を増大させると、より多くの水素原子が多結晶ダイヤモンドウェーハの周辺領域に押しやられ、かくして非ダイヤモンド炭素がエッチングにより成長面から除去される速度が増大すると共に成長中のウェーハの周辺領域の材料の品質が向上する。また、電力及び圧力を増大させることは、プラズマから成長面への水素原子フラックスを増大させるのに役立つ。別の又は追加の手段は、基板の成長面のほうへ方向付けられると共に水素原子の十分に大きな濃度が成長中、多結晶ダイヤモンドウェーハの周辺領域にもたらされるようにするのに十分広い領域にわたって配置された複数個のガス入口ノズルを備えたガス入口ノズルアレイを提供することにある。さらに別の代替手段又は追加の手段は、非ダイヤモンド炭素をエッチングして成長面から除去するための時間を多く取ることができるよう多結晶CVDダイヤモンドウェーハの成長速度を減少させることである。例えば、成長速度を多結晶CVDダイヤモンドウェーハの厚さが増大するにつれて減少させるのが良く、その手段として、例えば、基板上における多結晶CVDダイヤモンドウェーハの成長中、炭素の原子濃度及び/又は窒素の原子濃度を減少させる。
【0093】
反応器設計の技術的発展、技術上の公差管理の技術的発展及びプロセス設計の技術的発展を組み合わせることによって、極めて高い光学的特性を備えた大きな合成多結晶ダイヤモンド窓の作製を達成することが可能であった。
【0094】
研磨後、プラズマ又は化学的処理を施して多結晶CVDダイヤモンドウェーハ上に酸素を末端基とする表面を生じさせることによって多結晶CVDダイヤモンドウェーハを更に処理するのが良い。これは、この表面末端基化が光学特性に影響を及ぼすことができるので有用である。
【0095】
生成物
上述した装置及びプロセス条件を用いて、
図6(a)及び
図6(b)に示されているような多結晶CVDダイヤモンドウェーハを作製することが可能である。多結晶CVDダイヤモンドウェーハは、多結晶化学気相成長(CVD)ダイヤモンドウェーハであって、
125mm以上の最も長い直線寸法と、
200μm以上の厚さと、
少なくとも多結晶CVDダイヤモンドウェーハの中央領域について室温(公称298K)で測定された以下の特徴のうちの一方又は両方とを有し、中央領域は、円形であり、多結晶CVDダイヤモンドウェーハの中央箇所上に心出しされ且つ多結晶CVDダイヤモンドウェーハの最も長い直線寸法の少なくとも70%の直径を有し、かかる特徴は、
(1)10.6μmで0.2cm
-1以下、0.1cm
-1以下,又は0.05cm
-1以下の吸収係数、及び
(2)145GHzで2×10
-4以上、10
-4以下、5×10
-4以下、10
-5以下、5×10
-6以下又は10
-6以下の誘電損係数tanδである。
【0096】
好ましくは、多結晶CVDダイヤモンドウェーハは、少なくとも中央領域について以下の特徴のうちの1つ又は2つ以上を更に有し、かかる特徴は、
(3)多結晶CVDダイヤモンドウェーハの核形成フェースが引張り状態にある場合、200〜500μmの厚さについて760MPa×n以上、500〜750μmの厚さについて700MPa×n以上、750〜1000μmの厚さについて650MPa×n以上、1000〜1250μmの厚さについて600MPa×n以上、1250〜1500μmの厚さについて550MPa×n以上、1500〜1750μmの厚さについて500MPa×n以上、1750〜2000μmの厚さについて450MPa×n以上又は2000μm以上の厚さについて400MPa×n以上の引張り破壊強度(乗率nは、1.0、1.1、1.2、1.4、1.6、1.8又は2である)、
(4)多結晶CVDダイヤモンドウェーハの成長フェースが引張り状態にある場合、200〜500μmの厚さについて330MPa×n以上、500〜750μmの厚さについて300MPa×n以上、750〜1000μmの厚さについて275MPa×n以上、1000〜1250μmの厚さについて250MPa×n以上、1250〜1500μmの厚さについて225MPa×n以上、1500〜1750μmの厚さについて200MPa×n以上、1750〜2000μmの厚さについて175MPa×n以上又は2000μm以上の厚さについて150MPa×n以上の引張り破壊強度(乗率nは、1.0、1.1、1.2、1.4、1.6、1.8又は2である)、及び
(5)5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下、0.5μm以下、0.2μm以下又は0.1μm以下の表面平面度である。
【0097】
好ましくは、多結晶CVDダイヤモンドウェーハは、少なくとも中央領域について以下の特徴のうちの1つ又は2つ以上を更に有し、かかる特徴は、
(6)1
ブラックスポットmm
-2以下、0.5
ブラックスポットmm
-2以下又は0.1
ブラックスポットmm
-2以下の平均ブラックスポット
面密度、
(7)任意の3mm
2領域内の4個以下、3個以下、2個以下又は1個以下のブラックスポットが存在するようなブラックスポット分布状態、
(8)2760cm
-1から3030cm
-1までの範囲内の修正直線バックグラウンドで測定して単位厚さ当たり0.20cm
2以下、0.15cm
2以下、0.10cm
2以下又は0.05cm
2以下の積分吸収係数、
(9)1900Wm
-1K
-1以上、2000Wm
-1K
-1以上、2100Wm
-1K
-1以上又は2200Wm
-1K
-1以上の熱伝導率、
(10)前面及び後面が15nm未満の二乗平均粗さまで研磨されている場合、0.7mmのサンプル厚さについて10.6μmで1%以下、0.5%以下又は0.1%以下の前方半球における全積分散乱率、及び
(11)2次イオン質量分析法によって測定して10
17cm
-3以下、5×10
16cm
-3以下、10
16cm
-3以下、5×10
15cm
-3以下又は10
15cm
-3以下の珪素濃度である。
【0098】
実施形態は、上述の好ましい特性の任意の組み合わせを含むことができる。しかしながら、多結晶CVDダイヤモンドウェーハは、好ましくは、上記において与えられた11個の特性のうちの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個又は11個全てを有する。
【0099】
好ましくは、上述の特徴を満たす中央領域の直径は、最も大きな直線寸法の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%である。すなわち、上述の特性は、好ましくは、多結晶CVDダイヤモンドウェーハの大部分又は実質的に全てに及ぶ。
【0100】
多結晶CVDダイヤモンドウェーハは、少なくとも1つの直線寸法を有するのが良いが、好ましくは、125mm以上、130mm以上、135mm以上、140mm以上、145mm以上又は150mm以上の少なくとも2つの互いに直交した直線寸法を有する。例えば、多結晶CVDダイヤモンドウェーハは、これら寸法に対応した直径を有する実質的に円形のディスクの形態をしているのが良い。多結晶CVDダイヤモンドウェーハの厚さは、250μm以上、350μm以上、450μm以上、500μm以上、750μm以上、1000μm以上、1500μm以上又は2000μm以上であるのが良い。
【0101】
多結晶CVDダイヤモンドウェーハは又、200nm以下、150nm以下、100nm以下、80nm以下、60nm以下又は40nm以下の表面粗さを有するよう処理されるのが良い。さらに、反射防止構造が多結晶CVDダイヤモンドウェーハの表面内又は表面上に形成されるのが良い。
【0102】
多結晶CVDダイヤモンドウェーハを広い領域形態で用いることができ又はこれとは異なり最終用途に応じて小さなアイテムの状態に切断することができる。
【0103】
測定技術
吸収係数
レーザカロリメトリは、低誘電損材料及び光学部品の吸収率を測定するために選択された方法である。この測定の詳細は、「テスト・メソッド・フォア・アブソープタンス・オブ・オプティカル・レーザ・コンポーネンツ(Test method for absorptance of optical laser components)」,ISO/FDIS11551,インターナショナル・オーガニゼーション・フォア・スタンダーダイゼイション(International Organisation for Standardisation),ジュネーブ(Geneva),1995年及びジー・トゥリ他(G. Turri et al.),「オプティカル・アブソープション,ディポラリゼーション,アンド・スキャッタ・オブ・エピタキシアル・シングル‐クリスタル・ケミカル‐ベーパー‐デポジテッド・ダイヤモンド・アット1.064μm(Optical absorption, depolarization, and scatter of epitaxial single-crystal chemical-vapor-deposited diamond at 1.064 μm)」,オプティカル・エンジニアリング(Optical Engineering),2007年,46(6),064002に見受けられる。レーザカロリメトリでは、一定の期間の間、既知の出力のレーザにさらされた試験片の温度の時間依存性上昇及び下降を測定する。試験片の温度応答の分析から、吸収率Aを求めることができ、Aは、試験片によって吸収された入射レーザ出力のフラクションとして定義される。吸収係数αとサンプル厚さdの積が1よりも極めて小さい場合、α≒A/dである。この近似は、高い光学的特性の多結晶ダイヤモンドについて妥当である。加うるに、高光学的特性の多結晶ダイヤモンドは、10.6μmで動作するCO
2レーザ光学系用に一般的に用いられている。したがって、CO
2レーザの10.6μmラインを用いてレーザカロリメトリ測定を実施することは、本発明にとって特に適切である。カロリメトリ用の試験片は、次のように準備される。まず最初に、ウェーハの成長フェース及び核形成フェースを一様な所望の厚さまでラップ仕上げすると共に研磨する。合成の核形成段階中に取り込まれている場合のある汚染を除去するために核形成フェースから最低20μmを研磨除去する。次に、研磨状態のウェーハから一連のカロリメトリ試験片をレーザ加工する。これら試験片の両面を15nm未満の二乗平均粗さまで更に研磨する。
【0104】
誘電損
開放型共振器技術を用いて材料の誘電損係数tanδを測定する。共振器は、典型的には100000を超える極めて高い無負荷Qファクタによって特徴付けられ、この共振器は、非常に偏光されたTEM
00nモードで動作し、この場合、nは、2つのリフレクタ相互間の誘導半波長の数を示している。サンプル厚さは、これが理想的には測定周波数での厚さの半波長の整数のものであるよう制御されなければならない。この技術は、サスマン他(Sussmann et al.),「プロパティーズ・オブ・バルク・ポリクリスタリン・シーブイディー・ダイヤモンド(Properties of bulk polycrystalline CVD diamond)」,ダイヤモンド・アンド・リレイテッド・マテリアルズ(Diamond and related materials),1994年,第3巻,p.303〜312に記載されている。
【0105】
引張り強度
種々の技術を用いて材料の強度試験を実施するのが良く、これらの技術の全てには利点と欠点がある。これらは、当業者には周知である。強度に関する一試験方法は、所謂三点曲げ試験である。多結晶ダイヤモンド試験片へのこの技術の利用の仕方が、エー・アール・デイビス(A. R. Davies),ジェイ・イー・フィールド(J. E. Field),シー・エス・ジェイ・ピクルス(C. S. J. Pickles),「ストレングス・オブ・フリー‐スタンディング・ケミカリー・ベーパー‐デポジテッド・ダイヤモンド・メジャード・バイ・ア・レンジ・オブ・テクニックス(Strength of free-standing chemically vapour-deposited diamond measured by a range of techniques)」,フィロソフィカル・マガジン(Philosophical magazine),2003年,第83巻,第36号,p.4059〜4070に詳細に記載されている。成長させたままのCVDウェーハを次のように三点曲げ強度試験向きに前処理する。まず最初に、ウェーハの成長フェース及び核形成フェースを一様な所望の厚さまでラップ仕上げすると共に研磨する。合成の核形成段階中に取り込まれている場合のある汚染を除去するために核形成フェースから最低20μmを研磨除去する。次に、横方向寸法18mm×2mmの一連の40個の長方形強度試験片を研磨状態のウェーハからレーザ加工する。均一のサンプリングを行うためにこれら試験片をウェーハ全体から取り出す。三点曲げ試験を核形成フェースが引張り状態にある最初の20個のサンプルについて実施し、成長フェースが引張り状態にある次の20個のサンプルについて三点曲げ試験を実施する。各サンプルセットの算術平均を計算することによって核形成フェース及び成長フェースの平均強度を求める。
【0106】
ブラックスポット
光学顕微鏡法がブラックスポットの分析に用いられている。一般に、多結晶ダイヤモンドサンプルの光学顕微鏡法により、合成中、個々の結晶粒中に形成される顕微鏡的亀裂状特徴部(「ブラックスポット」と呼ばれる)の存在が明らかになり、かかるブラックスポットは、大抵の場合、結晶粒間応力の結果であることが予想される。これらスポットは、様々な形状を有しているが、代表的には、約50〜100ミクロンの半径を有し、これらスポットは、膜の或る特定の物理的性質にマイナスの影響を及ぼすことが分かっている。ブラックスポットを×50顕微鏡下で検査することができる。
【0107】
積分吸収率
FTIRスペクトロメータを用いてサンプルの単位厚さ当たりの積分吸収率を測定する。膜内のCH
X種のストレッチモードと関連した吸収率は、2760cm
-1〜3030cm
-1である。400cm
-1〜4000cm
-1を走査するFTIRスペクトロメータにおける5mmのアパーチュアサイズを用いて室温でこの吸収率を測定した。ピークから直線ベースラインを減算し、その後積分面積を計算する。この技術は、トゥイッチェン他(Twitchen et al.),「サーマル・コンダクティビティ・メジャーメンツ・オン・シーブイディー・ダイヤモンド(Thermal conductivity measurements on CVD diamond)」,ダイヤモンド・アンド・リレイティッド・マテリアルズ(Diamond and related materials),2001年,第10巻,p.731〜735に記載されている。
【0108】
熱伝導率
熱伝導率は、熱伝導率とFTIR吸収スペクトルのCH
X成分との判明している関係式を用いて厚手のダイヤモンドウェーハで測定される。この関係式は、トゥイッチェン他(Twitchen et al.),「サーマル・コンダクティビティ・メジャーメンツ・オン・シーブイディー・ダイヤモンド(Thermal conductivity measurements on CVD diamond)」,ダイヤモンド・アンド・リレイティッド・マテリアルズ(Diamond and related materials),2001年,第10巻,p.731〜735に記載されている。ダイヤモンド窓のIRスペクトルの2760cm
-1から3030cm
-1までの範囲のCH
X成分の積分面積は、直線ベースラインでいったん補正されると、ダイヤモンドの熱伝導率に定量的に関連付けられることが分かっている。
【0109】
光散乱率
入射光ビームに対し2.5°以上の角度をなして前方に散乱された光を集めることができる所謂コブレンツ(Coblentz)球を用いて順方向における総積分散乱率を測定する。この技術は、ジェイ・シー・ストバー(J. C. Stover),「オプティカル・スキャッタリング:メジャーメント・アンド・アナリシス(Optical Scattering: Measurenent and Analysis)」,エスピーアイイー・プレス・モノグラフ(SPIE Press Monograph),1995年に記載されている。これらの測定についてCO
2レーザの10.6μmラインが用いられる。散乱率測定のための試験片を次のように準備する。まず最初に、ウェーハの成長フェース及び核形成フェースを一様な所望の厚さまでラップ仕上げすると共に研磨する。合成の核形成段階中に取り込まれている場合のある汚染を除去するために核形成フェースから最低20μmを研磨除去する。次に、研磨状態のウェーハから一連のカロリメトリ試験片をレーザ加工する。これら試験片の両面を15nm未満の二乗平均粗さまで更に研磨する。
【0110】
実施例
標準型ラッピング及び研磨プロセスを用いて多結晶CVDウェーハを合成するのに適した140mm直径の高融点金属カーバイド形成基板を前処理して20〜60nmのR
aを備えた表面を作った。
【0111】
この基板をCVD反応器内に導入し、合成プロセスを開始させた。反応ガスを水素/メタン/アルゴンについて3500/43/43sccmの流量で反応器中に流入させた。制御されたレベルの窒素を導入して発光分光法によって定量化された気相中に150ppbの濃度をもたらした。
【0112】
チャンバ内の圧力を185トルに維持し、基板の平均温度をこれが830℃であるように調節し、そして1回の成長プロセス中、この温度に保持した。中心から縁までの基板温度の差を30℃未満に維持した。
【0113】
1.0mmの最小ダイヤモンドウェーハ析出厚さが得られた後、合成プロセスを終了させた。ダイヤモンドウェーハを基板から取り出した。20μm厚さの層をラップ仕上げして核形成フェースから除去した。成長フェースをラップ仕上げして平均厚さ1.84mmの実質的に平べったいウェーハを作った。これから、40個の20mm直径試験片を10.6μmでのレーザカロリメトリ測定を可能にするようレーザ切断し、
図7に従って取り出した。
【0114】
4つの試験片の両面を15nm未満の二乗平均粗さまで更に研磨し、最小限の材料の除去を行った。これら4つの試験片の各々について10.6μmでの平均吸収係数をこれが0.2cm
-1未満であるものとして求めた。上述の測定技術に従って測定値を別途取り、これら測定値は、生成物と題した段落に記載されている数値範囲内に収まっている。
【0115】
本発明を好ましい実施形態に関して具体的に図示すると共に説明したが、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく形態及び細部における種々の変更を実施できることは当業者には理解されよう。