(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記作動優先度情報は、車両減速時、且つ前記エンジンが無負荷状態である場合に最も高く、惰性走行時、且つ前記エンジンが無負荷状態である場合がその次に高く設定されることを特徴とする請求項1に記載の車両用補機の作動制御装置。
前記制御手段は、前記駆動輪と前記エンジンとが動力的に接続されていない場合に、前記燃料消費率とは別に作動優先度を設定できることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用補機の作動制御装置。
前記作動必要度情報は前記オルタネータによって発電された電力を蓄えるバッテリの充電率に基づいて段階的に設定されていることを特徴とする請求項5に記載の車両用補機の作動制御装置。
【背景技術】
【0002】
車両には、走行に必要なパワートレインに加えて、様々な補機(例えばオルタネータ、エアコン、エアコンプレッサ、バキュームポンプ等)が搭載されている。このような補機はエンジンのような動力源からの出力の一部を、必要に応じて利用することによって作動する。
【0003】
従来、補機を作動させるタイミングは、エンジンの運転状態に関わらず、補機側の必要性に応じて適宜行われていた。しかしながら補機の作動は、エンジンにとって負荷となる。そのため、本来、走行用として出力されるエンジンパワーの一部が補機の作動用に消費され、燃料消費率の悪化をもたらしてしまう。一方、エンジンの出力は車両の走行状態によって刻々変化しているが、その運転状態によって補機の作動による燃料消費率への影響も様々である。
【0004】
特許文献1では、エンジンが無負荷領域である燃料カット領域(FC領域)にあるときは、燃料噴射が行われるフィードバック領域(FB領域)やアイドル領域(ID領域)などの有負荷領域に比べて燃料消費率に対する補機作動の悪影響が少ないことに着目し、補機の作動を無負荷無負荷運転時に集中させている。これにより、燃料消費率の悪化を抑制しつつ、適切なタイミングで補機を効率的に動作できるとしている。
特許文献2では、補機の作動に伴う燃料消費率の悪化を抑制する技術ではないものの、補機が作動することによって走行用のエンジン出力が不足しないように、補機の作動状態に応じてエンジンの出力を調整して補填する技術が開示されており、特に、出力トルクの変動に遅れが生じないとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、基本的にエンジンが無負荷運転時に補機の動作を集中させており、無負荷運転時だけでは補機の動作が足りない場合には、有負荷運転時にも補機を作動させるとしている。しかしながら、有負荷運転時においてもエンジンの運転状態によって、補機の動作が燃料消費率に与える影響は様々である。すなわち特許文献1では、有負荷運転時に補機を作動させる場合に、補機の作動条件の最適化が十分なされておらず、燃料消費率を更に改善する余地が残っている。
【0007】
特許文献2では、補機の作動がエンジンにとって負荷になることを考慮したエンジンの出力制御に関するものである。そのため、燃料消費率を改善するためにどのように補機を作動させるかについては、上述の問題点は解決されていない。
【0008】
本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、車両、及びエンジンの運転状態に応じて補機の作動制御を行うことにより、良好な燃料消費率を得ると共に効率的なタイミングで補機を作動させることができる車両用補機の作動制御装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車両用補機の作動制御装置は上記課題を解決するために、車両に搭載されたエンジンによって作動される補機を制御する車両用補機の作動制御装置であって、前記エンジンの運転パラメータを検出するエンジンパラメータ検出手段と、前記補機の動作に関する状態パラメータを検出する補機パラメータ検出手段と、前記運転パラメータと燃料消費率との関係を規定するエンジン燃費マップ、前記補機の作動優先度を前記燃料消費率と対応付けて規定する作動優先度情報、及び、前記補機の動作に関する状態パラメータと該補機の作動必要度との関係を規定する作動必要度情報を予め記憶した記憶手段と、前記補機パラメータ検出手段による検出値及び前記作動必要度情報に基づいて、前記補機の作動必要度を算出する作動必要度算出手段と、前記エンジンパラメータ検出手段の検出値及び前記エンジン燃費マップに基づいて燃料消費率を推定し、該推定した燃料消費率及び前記作動優先度情報に基づいて現在の運転状態における作動優先度を特定する作動優先度特定手段と、前記算出した作動必要度が前記特定した補機作動優先度以上である場合に前記補機を作動させる制御手段とを備え、
前記作動優先度情報は、前記エンジンが有負荷状態である場合よりも無負荷状態である場合の方が高く、前記エンジンが有負荷状態である場合には前記燃料消費率が大きくなるに従い優先度が低くなるように設定されていることを特徴とする。
本発明によれば、作動優先度情報によって補機を作動させた際に燃料消費率にとって有利となる運転領域を優先付けすることにより、補機の作動に伴う燃料消費率の悪化を抑制しつつ、適切なタイミングで補機を作動させることができる。特にフットブレーキ、若しくは補助ブレーキを使用し、ドライバーが意図的に車両を減速させている状態(以下車両減速時という)、若しくはドライバーがアクセルペダル、若しくはそれに類する機能(オートクルーズ等)を操作せずに車両が惰性で走行している状態(以下惰性走行時という)、且つ前記エンジンにおいて燃料が無噴射である状態(以下無負荷という)だけでなく、前記エンジンにおいて燃料が噴射されている状態(以下有負荷という)において補機を作動させた場合であっても、補機の作動必要度に応じて適切なタイミングで補機を作動させることができるので、燃料消費率を改善しつつ、効率的な補機の作動を達成できる。
【0010】
前記作動優先度情報は、車両減速時、且つ前記エンジンが無負荷状態である場合に最も高く、惰性走行時、且つ前記エンジンが無負荷状態である場合がその次に高く設定され
ていてもよい。
本願発明者の研究開発によれば、補機の作動による燃料消費率への悪影響は、有負荷運転時に比べて車両減速時、且つ前記エンジンの無負荷運転時が最も少なく、更に惰性走行時、且つ前記エンジンの無負荷運転時がその次に少なくなることを見出した。また、有負荷運転時においてもエンジンの出力が大きくなるに従い、補機の作動による燃料消費率への悪影響が少ないことを見出した。これらの知見に基づき、この態様では、作動優先度を車両減速時、且つ前記エンジンが無負荷の状態において最も高く、惰性走行時、且つ前記エンジンが無負荷の状態をその次に高く設定する一方で、有負荷時には良好な燃料消費率が得られる高負荷側になるに従って優先度が高くなるように設定する。これにより、前記エンジンが無負荷運転時における補機作動だけでは必要とされる補機の作動を賄いきれない場合であっても、有負荷運転時において良好な燃料消費率が得られるタイミングで補機を作動させることができる。
【0011】
前記運転パラメータは、エンジン回転数及び燃料噴射量であってもよい。
補機を作動させた場合にエンジンが所定負荷を受ける場合における燃料消費率は様々な運転パラメータに影響を受ける。本願発明者の研究開発によれば、エンジン回転数及び燃料噴射量を運転パラメータとして選定することで、上記作動制御装置による燃料消費率の改善を良好に達成できることが見出された。
【0012】
前記制御手段は、前記駆動輪と前記エンジンとが動力的に接続されていない場合については、燃料消費率とは別に作動優先度を設定してもよい。
この態様によれば、駆動輪と前記エンジンとが動力的に接続されていない場合、例えば変速機のギア段がニュートラル状態にある場合やクラッチによってエンジンの動力が遮断されている場合においてエンジンを空吹かしした際に、不必要に補機が作動して、無駄に燃料を消費してしまう事態を効果的に回避することができる。
【0013】
前記補機は前記エンジンによって駆動されるオルタネータを含んでいてもよい。
オルタネータは作動時に発電し、その電力をバッテリに蓄える。この態様では、補機であるオルタネータを作動させた際に生じる負荷の燃料消費率への悪影響を抑制しつつ、オルタネータで発電した電力を効率的に利用することができる。その結果、車両の燃料消費率をより一層改善することができる。
【0014】
前記作動必要度情報は前記オルタネータによって発電された電力を蓄えるバッテリの充電率に基づいて段階的に設定されていてもよい。
オルタネータで発電された電力はバッテリに蓄電される。一般的にバッテリは適切な充電率の範囲が予め規定されており、この範囲を外れて充電されると電池寿命が短縮するなどの不具合の原因となる。この態様では、バッテリの充電率を監視することにより、バッテリの充電率が適切な範囲になるように考慮しながら、燃料消費率への悪影響が少なくなるように効率的に補機であるオルタネータを作動させることができる。
【0015】
本発明に係る車両用補機の作動制御方法は上記課題を解決するために、車両に搭載されたエンジンによって作動される補機を制御する車両用補機の作動制御方法であって、前記運転パラメータと燃料消費率との関係を規定するエンジン燃費マップ、前記補機の作動優先度を車両及び前記エンジンの運転状態、並びに、前記燃料消費率と対応付けて規定する作動優先度情報、及び、前記補機の動作に関する状態パラメータと該補機の作動必要度との関係を規定する作動必要度情報を予め作成する工程と、前記エンジンの運転パラメータを検出する工程と、前記補機の動作に関する状態パラメータを検出する工程と、前記補機パラメータ検出手段による検出値及び前記作動必要度情報に基づいて、前記補機の作動必要度を算出する工程と、前記エンジンパラメータ検出手段の検出値及び前記エンジン燃費マップに基づいて燃料消費率を推定し、該推定した燃料消費率及び前記作動優先度情報に基づいて現在の運転状態における作動優先度を特定する工程と、前記算出した作動必要度が前記特定した補機作動優先度以上である場合に前記補機を作動させる工程とを備え、
前記作動優先度情報は、前記エンジンが有負荷状態である場合よりも無負荷状態である場合の方が高く、前記エンジンが有負荷状態である場合には前記燃料消費率が大きくなるに従い優先度が低くなるように設定されていることを特徴とする。
本方法は上述の車両用補機の作動制御装置(上記各種態様を含む)により好適に実施することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、作動優先度情報によって補機を作動させた際に燃料消費率にとって有利となる運転領域を優先付けすることにより、補機の作動に伴う燃料消費率の悪化を抑制しつつ、適切なタイミングで補機を作動させることができる。特に車両減速時、若しくは惰性走行時におけるエンジンの無負荷運転時だけでなく、有負荷運転時において補機を作動させた場合であっても、補機の作動必要度に応じて適切なタイミングで補機を作動させることができるので、燃料消費率を改善しつつ、効率的な補機の作動を達成できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0019】
図1は本実施形態に係る車両用補機の作動制御装置1の全体構成を示すブロック図である。
作動制御装置1は6気筒レシプロエンジンであるエンジン2の出力軸にベルト(ファンベルト)3を介して接続されたオルタネータ4を備える。オルタネータ4は補機の一種であり、エンジン2の出力の一部を用いて駆動されることにより発電を行う。オルタネータ4で発電された電力はバッテリ5に蓄えられる。
【0020】
エンジン2にはエンジン回転数を検出するための回転数センサ6、及び、バッテリ5には充電率(SOC)を検出するためのSOCセンサ7が設けられている。またドライバーの加速意思を検出するためのアクセル開度センサがドライバーが踏み込むアクセルペダルに、ドライバーの減速意思を検出するためのフットブレーキスイッチ、補助ブレーキスイッチが、それぞれドライバーが踏み込むフットブレーキペダル(不図示)、ドライバーが操作する補助ブレーキレバー(不図示)に設けられており、アクセル開度、フットブレーキが作動しているか否かを示すフットブレーキ信号、補助ブレーキが作動しているか否かを示す補助ブレーキ信号が供給される。
またエンジン2からの出力動力を駆動輪側に伝達するための動力伝達経路上には変速機(不図示)及びクラッチ(不図示)が設けられており、変速機からはニュートラル状態であるか否かを示すニュートラル信号が供給され、クラッチからは連結状態にあるか否かを示すクラッチ信号が供給される。
これらのセンサ類の検出値や各種信号は電気信号として、次に説明するエンジン制御ユニットに供給される。
【0021】
エンジン制御ユニット(以下、適宜「ECU」と称する)10は作動制御装置1の各種制御を実施するコントロールユニットであり、エンジンパラメータ検出手段11と、補機パラメータ検出手段12と、記憶手段13と、作動必要度算出手段14と、作動優先度特定手段15と、制御手段16とを備える。エンジンパラメータ検出手段11はエンジン2の運転パラメータであるエンジン回転数を回転数センサ6の検出信号に基づいて検出する。補機パラメータ検出手段12は補機であるオルタネータ4によって発電された電力が蓄えられるバッテリ5の充電率を、SOCセンサ7の検出信号に基づいて検出する。記憶手段13にはECU10における制御に必要な各種情報であるエンジン燃費マップ、作動優先度情報及び作動必要度情報が予め記憶されており、適宜アクセスすることにより読み出し可能に構成されている。作動必要度算出手段14は補機パラメータ検出手段12による検出値及び作動必要度情報に基づいて、オルタネータ4の作動必要度を算出する。作動優先度特定手段15はエンジンパラメータ検出手段11の検出値及びエンジン燃費マップに基づいて燃料消費率を推定し、該推定した燃料消費率及び作動優先度情報に基づいて現在の運転状態における作動優先度を特定する。制御手段は制御内容に応じてオルタネータ4を作動させるための制御信号を生成し送信することにより、オルタネータ4の作動制御を実施する。
【0022】
尚、本実施形態では補機としてオルタネータを使用した場合を説明するが、エアコン、エアコンプレッサ、バキュームポンプ等の各種補機を使用してもよいことは言うまでも無い。
【0023】
図2はある一定のエンジン回転数におけるエンジン2の出力トルクと燃料噴射量との関係を示すグラフ図であり、
図3はエンジン2の燃料噴射量と燃料消費率との関係を示すグラフ図である。
図2及び
図3では、オルタネータ4を作動させた状態を実線で示し、オルタネータ4を作動させていない状態を破線で示している。
【0024】
図2に示すように、燃料噴射量が増加するに従い、エンジン2の出力トルクも増加する。この傾向はオルタネータ4を作動させるかさせないかによらず共通しているが、オルタネータ4を作動させた場合の方がエンジン2の出力トルクが小さくなる。これは、エンジン2の出力トルクの一部がオルタネータ4の作動により消費されることを反映した結果である。
【0025】
図3では、燃料噴射量(実質的にエンジンの負荷に相当)が増加するに従い、燃料消費率が減少し、高燃料噴射量側では燃料消費率が所定値に漸近するように振る舞っている。ここでオルタネータ4が作動している場合と作動していない場合における燃料消費率を比較すると、低燃料噴射量側ではその差が大きいのに対し、高燃料噴射量側では小さくなっている。これはエンジン2が高負荷側になるに従って、オルタネータ4を作動させることによる燃料消費率への悪影響が相対的に小さくなることを示している。
例えば、車両の走行中にオルタネータ4が3kWの出力を必要としているときに、エンジン2が10kWで運転されている場合と100kWで運転されている場合には、オルタネータ4による損失の割合は100kWの場合の方が小さい。
【0026】
このように本願発明者の研究開発により、エンジン2が有負荷運転時においては高負荷側にあるときにオルタネータ4を作動させることで、燃料消費率の悪化を抑制することができる。本実施形態に係る作動制御装置1では、
図2及び
図3に示した特性に鑑み、エンジン2の燃料消費率の範囲毎にオルタネータ4の作動優先度が規定されている。
【0027】
図4はエンジン2の燃料消費率と作動優先度との関係を規定する作動優先度情報21の一例であり、予め記憶手段13に記憶されている。
図4では燃料消費率が「車両減速時、且つエンジン2が無負荷」「惰性走行時、且つエンジン2が無負荷」「a―b」「b−c」「c−d」、・・・と所定範囲毎に区分されており、順に作動優先度がランク付けられている。このランク付けは
図2及び
図3で示したように、「車両減速時、且つエンジン2が無負荷」を最上位、「惰性走行時、且つエンジン2が無負荷」がその次の順位としつつ、更にエンジン2が有負荷運転における燃料消費率が良好な順に設定されている。このようにオルタネータ4の作動優先度を設けることによって、燃料消費率の良好な状態において優先的にオルタネータ4を作動させることができるので、燃料消費率の悪化を抑制しつつ、効率的なタイミングでオルタネータ4を作動させることができる。
【0028】
また本実施形態に係る作動制御装置1では、オルタネータ4の作動の必要性を考慮するために作動必要度が規定されている。
図5はオルタネータ4の動作に関する補機パラメータの一例であるバッテリ5の充電率と作動必要度との関係を規定する作動必要度情報22の一例であり、予め記憶手段13に記憶されている。
図5では、オルタネータ4で発電された電力が蓄積される対象であるバッテリ5の充電率を基準に、オルタネータ4の作動必要度を規定している。例えばバッテリ5の充電率が少ない場合は、オルタネータ4を作動させて充電率を回復する必要性が高いとして、作動必要度が高くなるように設定されている。一方、バッテリ5の充電率が高い場合は、バッテリ5への過充電によってバッテリ5の寿命が短縮しないように、オルタネータ4の作動の必要性が低いとして、作動必要度が低くなるように設定されている。
【0029】
尚、本実施形態では補機としてオルタネータ4を用いた場合について詳しく述べているが、一般的には補機の動作に関する補機パラメータの目標値と現在値との差に基づいて作動必要度を設定するとよい。例えば、補機としてエアコンを用いる場合には、目標温度値と実際の温度値との差に基づいて、作動必要度を設定するとよい。
【0030】
図6は予め試験的に求めたエンジン2の運転パラメータと燃料消費率との関係を示すエンジン燃費マップ23の一例である。ここでは、エンジン2の運転パラメータとしてエンジン回転数と燃料噴射量を採用している。オルタネータ4を作動させた場合にエンジン2が所定負荷を受ける場合における燃料消費率は様々な運転パラメータに影響を受ける。本願発明者の研究開発によれば、エンジン回転数及び燃料噴射量を運転パラメータとして選定することで、上記作動制御装置1による燃料消費率の改善を良好に達成できることが見出された。
【0031】
図6ではオルタネータ4を作動させた場合に消費されるエンジン2の出力が一定であるという前提で、エンジン2の燃料消費率の分布を示している。
図6では燃料消費率が等しいラインを等高線状に示している。ここでは特に、
図4で示した作動優先度情報に基づいて燃料消費率の範囲毎に規定された作動優先度が併せて示されている。
【0032】
具体的に説明すると、例えば
図6において燃料消費率への悪影響が最も少ない作動優先度が「1」の領域(すなわち車両減速時、且つエンジン2が無負荷状態)の頻度が少なく、オルタネータ4が十分作動できない場合には、その次に燃料消費率への悪影響が少ない燃料消費率が良好な作動優先度が「2」の領域(すなわち惰性走行時時、且つエンジン2が無負荷状態)を使用する。更に作動優先度が「2」の領域を使用しても補機が十分作動できない場合には、次に燃料消費率が良好な作動優先度が「3」の領域を使用する。このように燃料消費率が良好な運転領域において優先的にオルタネータ4を作動させることにより、燃料消費率の悪化を抑制しつつ、オルタネータ4を効率よく作動できる。
【0033】
尚、補足して説明すると、作動優先度が「1」若しくは「2」である無負荷領域では燃料が噴射されないので厳密には燃料消費率を定義することができない。また、アイドリング状態はエンジンが自律の運転をしている状態であり、燃料を噴射しているので無負荷領域には該当しない。無負荷領域の例としては、例えばフットブレーキや補助ブレーキが作動している場合や惰性走行時のように、エンジン2の動力が発生していないものの回転している場合である。このとき、エンジン2の燃料はカットされ、無負荷状態となる。
【0034】
図7は本実施形態に係る作動制御装置1の動作を示すフローチャートである。
まずECU10は記憶手段13にアクセスすることにより、予め記憶されたエンジン燃費マップ23を読み込む(ステップS1)。このエンジン燃費マップ23は
図6に示すように運転パラメータであるエンジン回転数と燃料噴射量に対する燃料消費率を規定するエンジン特性を示すマップである。尚、エンジン燃費マップ23は予め試験的に作成してもよいし、シミュレーション的に作成してもよいし、論理的に作成されてもよい。
【0035】
続いて、ECU10は再び記憶手段13にアクセスすることにより、作動優先度情報を取得し、作動優先度に対する燃料消費率の閾値を読み込む(ステップS2)。具体的には、
図4に示すように各作動優先度に対応する燃料消費率の範囲を規定する上限閾値及び下限閾値を読み込む。これにより、
図6に示したように、エンジン燃費マップ23において各閾値に対する等高線が特定され、該等高線同士によって区画される領域毎に作動優先度が設定される。
【0036】
続いてECU10はエンジンパラメータ検出手段11において回転数センサ6からエンジンの運転パラメータであるエンジン回転数を検出すると共に、補機パラメータ検出手段12においてSOCセンサ7から補機パラメータであるSOCを検出する(ステップS3)。尚、運転パラメータである燃料噴射量については、アクセル開度、及び回転数センサ6から取得したエンジン回転数に基づいて演算により算出する。また、ECU10はアクセル開度、フットブレーキ信号、補助ブレーキ信号、クラッチ信号、ニュートラル信号も取得する。
【0037】
続いてECU10は記憶手段13にアクセスすることによって、作動必要度情報を取得すると共に、補機パラメータ検出手段12によってSOCセンサ7から取得した充電率に基づいて、オルタネータ4の作動必要度を算出する(ステップS4)。充電率とオルタネータ4の作動必要度との関係は
図5に示したように規定されており、取得した充電率に基づいて、対応する作動必要度が特定される。
【0038】
続いてステップS4で算出した作動必要度がゼロであるか否かを判断することによって、補機の作動が必要か否かを判定する(ステップS5)。作動必要度がゼロである場合(ステップS5:YES)、すなわちバッテリ5の充電率が十分に高く充電する必要が無い場合は、ECU10はオルタネータ4の作動が不要と判定し(ステップS9)、処理を終了する(エンド)。一方、作動必要度がゼロでない場合(ステップS5:NO)、すなわちバッテリ5の充電率が少なからず不足しており充電する必要がある場合は、ECU10はオルタネータ4の作動が必要と判定し、以下の処理に進める。
【0039】
ECU10はステップS3で取得した各種パラメータ及び信号に基づいて、現在の作動優先度を特定する(ステップS6)。ECU10はステップS4で算出した作動必要度がステップS6で特定した作動優先度以上であるか否かを判定する(ステップS7)。そして、作動必要度が作動優先度以上の場合には(ステップS7:YES)オルタネータ4を作動し(ステップS8)、作動必要度が作動優先度未満の場合には(ステップS7:NO)オルタネータ4を作動しない(ステップS9)。
【0040】
尚、ステップS6における作動優先度の特定では、エンジン2のエンジン回転数、燃料噴射量だけではなく、フットブレーキ信号、補助ブレーキ信号も考慮される。これにより、車両減速時、且つエンジン2が無負荷状態にあるか否か、若しくは惰性走行時、且つエンジン2が無負荷状態にあるか否かを判定する。車両減速時、且つエンジン2が無負荷状態にある場合は、上述したように作動優先度が最も高い「1」に設定されており、惰性走行時、且つエンジン2が無負荷状態にある場合は作動優先度がその次に高い「2」に設定される。またエンジン2が有負荷運転時における最も高い作動優先度は「3」であり、以降エンジン2の燃料消費率に応じてステップS1、及びS2にて取得した情報を元に優先度が特定される。そのため、オルタネータ4を作動させたとしても燃料消費率への悪影響を最小限に抑えることができる。
【0041】
更に、ステップS6ではクラッチ信号、及びニュートラル信号も考慮される。これにより、駆動輪とエンジン2とが動力的に接続されていない場合、例えば変速機のギア段がニュートラル状態にある場合やクラッチによってエンジンの動力が遮断されている場合においてエンジンを空吹かしした際に、不必要にオルタネータ4が作動することを効果的に回避することができる。
このように作動必要度が車両やエンジン2の運転状態を考慮して特定される作動優先度以上の場合にオルタネータ4を作動させることにより、燃料消費率にとって有利となる車両やエンジン2の運転状態を考慮したタイミングで、オルタネータ4を作動させることができる。これにより、車両減速時、若しくは惰性走行時にあってエンジン2が無負荷運転時だけでなく、エンジン2が有負荷運転時においてオルタネータ4を作動させた場合であっても、オルタネータ4の作動必要度に応じて適切なタイミングでオルタネータ4を作動させることができるので、良好な燃料消費率を達成することができる。
【0042】
特に、作動優先度は車両減速時、且つエンジン2が無負荷状態である場合に最も高く、惰性走行時、且つエンジン2が無負荷状態である場合がその次に高く設定されると共に、エンジン2が有負荷状態である場合には該負荷が大きくなるに従い優先度が高くなるように設定されている。
図2及び
図3を参照して説明したように、有負荷運転時ではエンジンの負荷が大きくなるに従い、補機の作動による相対的な燃料消費率への悪影響が少ない。そのため、有負荷状態である場合には負荷が大きくなるに従って優先度が高くなるように設定することによって、エンジン2が無負荷運転時における補機作動だけでは必要とされる補機の作動を賄いきれない場合であっても、有負荷運転時において良好な燃料消費率が得られるタイミングで補機を作動させることができる。
【0043】
尚、本実施形態では補機がオルタネータのみである場合を例に説明したが、複数の補機が存在する場合には、それぞれの補機について上述の制御を個別に実施するとよい。