(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5861965
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】サイジング用金型
(51)【国際特許分類】
B22F 3/24 20060101AFI20160202BHJP
B21J 5/02 20060101ALI20160202BHJP
B22F 5/10 20060101ALN20160202BHJP
【FI】
B22F3/24 101Z
B21J5/02 Z
!B22F5/10
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-137887(P2012-137887)
(22)【出願日】2012年6月19日
(65)【公開番号】特開2014-1429(P2014-1429A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】593016411
【氏名又は名称】住友電工焼結合金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 二郎
(72)【発明者】
【氏名】西川 昌宏
【審査官】
田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−153357(JP,A)
【文献】
特開2010−31331(JP,A)
【文献】
特開2005−66657(JP,A)
【文献】
特開2004−306119(JP,A)
【文献】
特開昭62−214844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/24
B22F 5/10
B21J 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結体が挿入されるサイジング孔を有するダイと、
前記焼結体の上面を加圧する上パンチと、
前記焼結体の下面を保持するとともに、周方向に有端の筒状に形成された下パンチと、
前記下パンチの下端部を支持する下パンチプレートとを備え、
前記下パンチは、その下端部の周方向の一部が薄肉に形成された薄肉部と、当該下端部の外周面に外方へ突出して形成されるとともに前記下パンチプレートに取り付けられるフランジ部とを有しているサイジング用金型であって、
前記薄肉部には、前記下パンチの下面に開口するとともに上側に向かって延びるスリットが形成されていることを特徴とするサイジング用金型。
【請求項2】
前記スリットの周方向の幅は、前記焼結体の加圧時に前記スリットの上下方向の途中部が幅方向に閉じない程度に変形する長さ寸法に設定されている請求項1に記載のサイジング用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結体の寸法を矯正するサイジング用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、焼結部品は、原料粉末を成形用金型で加圧成形する成形工程、その成形工程により得られた成形体を焼結炉で焼き固める焼結工程、その焼結工程により得られた焼結体の寸法をサイジング用金型で矯正するサイジング工程を経て製造される(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載されたサイジング用金型は、焼結体が押し込まれるサイジング孔を有するダイと、焼結体の上面を加圧する上パンチと、焼結体の下面を保持する下パンチと、下パンチの下端部を支持している下パンチプレートとを備えている。焼結体は、上パンチにより上方向から加圧されることで、寸法が矯正されるようになっている。
【0003】
このようなサイジング用金型を構成する下パンチとして、
図7に示すものが知られている。この下パンチ100は、周方向に有端の筒状に形成されており、下パンチ100の下端部の外周には、下パンチプレートに取り付けられるフランジ部101が外方へ突出して形成されている。このフランジ部101は、下パンチ100に作用する加圧力を受けるようになっている。また、下パンチ100の外周面の周方向の一部には、平坦面103が形成されており、この平坦面103の幅方向(
図7(a)の上下方向)の略中央部には、下パンチ100の径方向の厚さが最も薄くなる薄肉部104が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−105970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の前記下パンチ100は、その下端部のフランジ部101により加圧力を受けるため、その加圧力によってフランジ部101が径方向外側に広がるように変形する場合がある。この場合、下パンチ100の下端部において最も薄肉に形成された薄肉部104に応力集中が発生し、薄肉部104の下面に亀裂が生じて下パンチ100が破損するという問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、加圧力に起因して下パンチが破損するのを抑制することができるサイジング用金型を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明のサイジング用金型は、焼結体が挿入されるサイジング孔を有するダイと、前記焼結体の上面を加圧する上パンチと、前記焼結体の下面を保持するとともに、周方向に有端の筒状に形成された下パンチと、前記下パンチの下端部を支持する下パンチプレートとを備え、前記下パンチは、その下端部の周方向の一部が薄肉に形成された薄肉部と、当該下端部の外周面に外方へ突出して形成されるとともに前記下パンチプレートに取り付けられるフランジ部とを有しているサイジング用金型であって、前記薄肉部には、前記下パンチの下面に開口するとともに上側に向かって延びるスリットが形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、下パンチの下端部の薄肉部にスリットが形成されているため、フランジ部が加圧力により外方に広がるように変形したときに、その変形に伴ってスリットの下面開口が広がるように変形することで、薄肉部に作用する応力を分散させることができる。これにより、薄肉部に亀裂が生じにくくなるため、下パンチが破損するのを効果的に抑制することができる。
【0008】
(2)前記スリットの周方向の幅は、前記焼結体の加圧時に前記スリットの上下方向の途中部が幅方向に閉じない程度に変形する長さ寸法に設定されていることが好ましい。
この場合、加圧力によって、スリットの上下方向の途中部が幅方向に閉じるのを防止することができるため、この途中部が幅方向に閉じることに起因して、スリットの下面開口の変形が阻害されるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加圧力に起因して下パンチが破損するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るサイジング用金型を示す断面図である。
【
図2】焼結体を示しており、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図3】サイジング用金型の使用状態を示す断面図であり、(a)は加圧前の状態、(b)は加圧中の状態、(c)は加圧後の状態である。
【
図4】第2下パンチを示しており、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【
図5】第2下パンチのスリットを示す
図4(b)のB矢視拡大図である。
【
図6】第2下パンチが加圧力により変形した状態を示す斜視図である。
【
図7】従来のサイジング金型の第2下パンチを示しており、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のサイジング用金型の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係るサイジング用金型である。このサイジング用金型1は、例えばマニュアルトランスミッションに使用される部品である焼結部品を製造する際に、成形工程及び焼結工程を経て得られた焼結体W(
図2(a)及び(b)参照)の寸法を矯正するものである。サイジング用金型1は、サイジング孔3を有するダイ2と、上パンチ4と、第1下パンチ5と、第2下パンチ6と、コアロッド7と、ダイプレート11と、上パンチプレート12と、第1下パンチプレート13と、第2下パンチプレート14と、ベースプレート15とを備えている。
図2(a)及び(b)に示すように、焼結体Wは、周方向に有端の円筒状に形成された本体部W1と、この本体部W1の外周の一部に形成された2つの鍔部W2とからなる。
【0012】
図1に示すように、ダイ2の外周部はダイプレート11によって支持されており、ダイプレート11は、図示しないロッドを介してベースプレート15に固定されている。上パンチ4は、上パンチプレート12に支持されている。上パンチプレート12は、ベースプレート15に固定されたロッド(図示省略)に対して上下動可能に取り付けられており、上パンチプレート12を下降させることで、上パンチ4がダイ2のサイジング孔3に挿入されるようになっている。
【0013】
第1下パンチ5は、その下端部が第1下パンチプレート13に支持されている。第1下パンチプレート13は、ベースプレート15に固定されたロッド(図示省略)に対して上下動可能に取り付けられており、図示しないエアシリンダを伸縮駆動することにより、第1下パンチプレート13とともに第1下パンチ5がサイジング孔3内で上下動するようになっている。
第2下パンチ6は、その下端部が第2下パンチプレート14に支持されている。第2下パンチプレート14は、図示しないロッドを介してヨークプレートに連結されており、このヨークプレートが上下動することにより、第2下パンチ6がサイジング孔3内で上下動するようになっている。
【0014】
以上の構成により、サイジング用金型1を使用する場合は、
図3(a)に示すように、ダイ2と第1下パンチ5と第2下パンチ6とコアロッド7とによりサイジング孔3に、焼結体Wの形状に対応したキャビティ8を形成し、このキャビティ8に焼結体Wを挿入する。この状態から、
図3(b)に示すように、上パンチ4により焼結体Wの本体部W1及び鍔部W2の上面を加圧するとともに、第1下パンチ5及び第2下パンチ6により鍔部W2の下面及び本体部W1の下面をそれぞれ保持することで、焼結体Wの寸法を矯正することができる。焼結体Wを加圧した後は、
図3(c)に示すように、上パンチ4をサイジング孔3の上方へ移動させるとともに、第1及び第2下パンチ5,6をサイジング孔3の上端まで移動させることにより、焼結体Wをサイジング孔3から押し出すことができる。
【0015】
図4は、第2下パンチ6を示しており、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
図4(a)及び(b)に示すように、第2下パンチ6は、平面視において焼結体Wの本体部W1の形状に対応して周方向に有端の円筒状に形成されている。したがって、第2下パンチ6の周方向の両端部21,22の間には、軸方向(
図4(b)の上下方向)全長に亘って開口部23が形成されている。本実施の形態における第2下パンチ6は、外径D1が35mm、内径D2が24mm、開口部23の幅d1が約6mm、軸方向の長さL1が205mmにそれぞれ設定されている。
【0016】
第2下パンチ6の外周面の周方向の一部には、平坦面24が軸方向全長に亘って形成されており、この平坦面24の幅方向(
図4(a)の上下方向)の略中央部には、最も薄肉となる薄肉部25が軸方向全長に亘って形成されている。また、第2下パンチ6の下端部には、前記平坦面24を除く外周面において径方向外方へ突出するフランジ部26が形成されている。
【0017】
フランジ部26は、
図4(a)に示すように、第2下パンチ6の周方向の一端部21から平坦面24にかけて円弧状に形成された第1フランジ部26aと、第2下パンチ6の周方向の他端部22から平坦面24にかけて円弧状に形成された第2フランジ部26bとによって構成されている。
図1に示すように、第2下パンチ6は、当該第2下パンチ6の下面27を第2下パンチプレート14の上面に載置した状態で、取付部材16を介して第2下パンチプレート14に取り付け固定されている。これにより、フランジ部26は、焼結体Wの加圧時に第2下パンチ6に作用する加圧力を受けるようになっている。
【0018】
図5は、
図4(b)のB矢視拡大図である。
図4(b)及び
図5に示すように、第2下パンチ6の薄肉部25の下端部には、スリット28が形成されている。スリット28は、第2下パンチ6の下面27に開口28aするとともに、軸方向上側に向かって真っ直ぐ延びて形成されている。スリット25の上端部は半円弧状に形成されている。スリット28の軸方向の長さL2は、第2下パンチ6の金型としての強度を確保することができる程度の長さ寸法に設定されている。具体的には、本実施の形態におけるスリット28の長さL2は、130〜160mm(好ましくは155mm)に設定されている。
【0019】
スリット28の幅d2は、フランジ部26が加圧力を受けたときに、スリット28の軸方向の途中部28b(
図6参照)が幅方向に閉じない程度に変形する最短の長さ寸法以上(本実施の形態では0.5mm以上)に設定されている。また、前記幅d2は、フランジ部26が加圧力を受けたときに、第2下パンチ6を挫屈させる面圧が第2下パンチ6の下面27に作用しない最長の長さ寸法以下(本実施の形態では10mm以下)に設定されている。本実施の形態におけるスリット28の幅d2は、これらの寸法条件(0.5mm以上かつ10mm以下)をいずれも満たすとともに、スリット28を容易に加工することができる程度の長さ寸法となるように、3.0mmに設定されている。
【0020】
図6は、第2下パンチ6が加圧力により変形した状態を示す斜視図である。
図6に示すように、第2下パンチ6の下端部は、フランジ部26が加圧力を受けたときに、その加圧力により第1フランジ部26a及び第2フランジ部26bが径方向外方に広がるように変形する。その際、薄肉部25の下端部では、第1及び第2フランジ部26a,26bの変形に伴って、スリット28の開口28aが広がるように変形する。
【0021】
また、
図6に示すように、スリット28の軸方向の途中部28bが、幅方向に閉じるように変形するが、上述のように、その変形量(本実施の形態では約0.2mm)よりも幅d2(
図5参照)の長さ寸法(0.5mm)が長く設定されているため、スリット28の途中部28bが幅方向に閉じることはない。なお、
図6に示す第2下パンチ6の変形は、説明の便宜上、実際の変形よりも誇張して表示している。
【0022】
以上、本実施の形態に係るサイジング用金型1によれば、第2下パンチ6の下端部の薄肉部25にスリット28が形成されているため、フランジ部26が加圧力により外方に広がるように変形したときに、その変形に伴ってスリット28の開口28aが広がるように変形することで、薄肉部25に作用する応力を分散させることができる。これにより、薄肉部25に亀裂が生じにくくなるため、第2下パンチ6が破損するのを効果的に抑制することができる。
【0023】
下記表1は、スリットが形成されている本実施の形態の第2下パンチ、及びスリットが形成されていない従来の第2下パンチをそれぞれ用いた場合における焼結部品の製造個数と第2下パンチの廃却個数を示している。表1において、本実施の形態の第2下パンチを用いた場合と、従来の第2下パンチを用いた場合とを比較すると、第2下パンチ1個当たりにおける焼結部品の製造個数は、本実施の形態の焼結部品のほうが多いことが分かる。これにより、本実施の形態のスリットが形成されている第2下パンチは、従来のスリットが形成されていない第2下パンチに比べて、破損しにくいことが分かる。
【0025】
また、スリット28の周方向の幅d2は、フランジ部26に加圧力が作用したときに、スリット28の軸方向の途中部28bが幅方向に閉じない程度に変形する長さ寸法に設定されているため、前記加圧力によって、スリット28の途中部28bが幅方向に閉じるのを防止することができる。これにより、途中部28bが幅方向に閉じることに起因して、スリット28の開口28aの変形が阻害されるのを防止することができる。
【0026】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0027】
例えば、本実施の形態におけるサイジング用金型1は、2個の下パンチ(第1下パンチ5及び第2下パンチ6)を備えているが、少なくとも1個の下パンチ(第2下パンチ6)を備えていればよい。また、本実施の形態における第2下パンチ6の薄肉部25は、軸方向全長に亘って形成されているが、少なくとも第2下パンチ6の下端部に形成されていればよい。
【0028】
さらに、第2下パンチ6のスリット28の幅d2は、スリット28の途中部28bが幅方向に閉じない程度に変形する長さ寸法に設定されているが、薄肉部25の応力を十分に分散することができる場合は、途中部28bが幅方向に閉じるように変形する長さ寸法に設定されていてもよい。また、焼結体Wは、マニュアルトランスミッションに使用される部品以外の機械部品に適用することもできる。
【符号の説明】
【0029】
1 サイジング用金型
2 ダイ
3 サイジング孔
4 上パンチ
6 第2下パンチ(下パンチ)
14 第2下パンチプレート(下パンチプレート)
25 薄肉部
26 フランジ部
28 スリット
28b 途中部