特許第5861966号(P5861966)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5861966PA−4Xを調製するための方法およびこの方法により得られるPA−410
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5861966
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】PA−4Xを調製するための方法およびこの方法により得られるPA−410
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/28 20060101AFI20160202BHJP
【FI】
   C08G69/28
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-508505(P2013-508505)
(86)(22)【出願日】2011年5月5日
(65)【公表番号】特表2013-525585(P2013-525585A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2011057208
(87)【国際公開番号】WO2011138397
(87)【国際公開日】20111110
【審査請求日】2014年4月18日
(31)【優先権主張番号】10162132.4
(32)【優先日】2010年5月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン, ピム, ジェラルド, アントン
(72)【発明者】
【氏名】ライハート, ロナルド
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/098335(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4−ジアミノブタンおよび8〜18個の炭素原子を有する脂肪族直鎖ジカルボン酸Xのモノマー単位を含むポリアミドPA−4Xを調製するための方法であって、以下のステップ:
1)1,4−ジアミノブタンおよび前記脂肪族直鎖ジカルボン酸の塩ならびに水を含む溶液を、前記塩が溶解する温度で作製するステップと;
2)前記塩の前記溶液を、前記塩の結晶化温度を超える温度、最大圧力7barAで、水分含有率が溶液の総量を基準として0〜30重量%となるまで濃縮するステップと、
3)ステップ2で得られた溶液からポリマーを生成させるステップであって、それと同時に、(22−X)barA〜(24−X)barAの間(ここで、Xの値は、前記脂肪族直鎖ジカルボン酸の炭素原子数である)の圧力で前記ポリマーを溶融状態に維持するステップと、
4)ステップ3で得られた前記ポリマーを減圧するステップであって、それと同時に、前記ポリマーをさらに重合させるために前記ポリマーを溶融状態に維持するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記脂肪族直鎖ジカルボン酸が、1,8−オクタン二酸、1,9−ノナン二酸、1,10−デカン二酸、1,11−ウンデカン二酸、1,12−ドデカン二酸、1,13−トリデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、1,15−ペンタデカン二酸、1,16−ヘキサデカン二酸、1,17−ヘプタデカン二酸、および1,18−オクタデカン二酸の群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脂肪族直鎖ジカルボン酸が1,10−デカン二酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ2における前記水分含有率が、前記溶液の総量を基準として15重量%未満であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ2における前記水分含有率が、前記溶液の総量を基準として10重量%未満であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ4における前記温度が少なくとも233℃であり、かつ前記脂肪族直鎖ジカルボン酸が1,10−デカン二酸であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
SO 307,第5版2007−05−15に準拠して、ギ酸中(c=0.005g/ml)で測定されたポリアミドの粘度数(VN)が、少なくとも100ml/グラムであることを特徴とする、ポリアミド410。
【請求項8】
前記粘度数が、少なくとも105ml/グラムであることを特徴とする、請求項7に記載のポリアミド410。
【請求項9】
前記粘度数が、少なくとも110ml/グラムであることを特徴とする、請求項7または8に記載のポリアミド410。
【請求項10】
([酸末端基]+[アミン末端基])>b−a.VN 式I
(式中、[酸末端基]は、ポリマー中の酸末端基の含有量(meq/kg)であり、[アミン末端基]は、ポリマー中のアミン末端基の含有量(meq/kg)であり、aは、0.77であり、bは、160であり、VNは、粘度数(ml/グラム)である)
である、請求項7〜9のいずれか一項に記載のポリアミド410。
【請求項11】
bが165である、請求項10に記載のポリアミド410。
【請求項12】
式Iが適用可能であり、ただし、[酸末端基]+[アミン末端基]>20meq/kgである、請求項10または11に記載のポリアミド410。
【請求項13】
請求項7〜11のいずれか一項に記載のポリアミド410を含む成形品。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、1,4−ジアミノブタンおよび脂肪族直鎖ジカルボン酸のモノマー単位を含むポリアミドを調製するための方法、ならびにこの方法により得ることができるPA−410およびこれから製造される製造物に関する。1,4−ジアミノブタンおよび脂肪族直鎖ジカルボン酸のモノマー単位を含むポリアミドを、以後、PA−4Xとも称する。
【0002】
PA−410としても知られるPA−4X(Xは、1,10−デカン二酸)の調製方法は周知であり、例えば、国際公開第00/09586号パンフレットに記載されている。この方法は、最終ステップにおいて、ポリマーの融点を約25℃下回る温度で固体状態のプレポリマーを後縮合させることによってポリマーを製造するものである。
【0003】
この方法の欠点は得られるPA−410の分子量が低いことにある。多くの特性、例えば、強度や耐衝撃性等の機械特性や、溶融強度等のレオロジー特性の値は分子量の増加に伴い高くなる。
【0004】
したがって、本発明の目的は、それよりも分子量の高いPA−4Xを製造するための調製方法を提供することにある。
【0005】
驚くべきことに、この目的は、1,4−ジアミノブタンおよび少なくとも8個の炭素原子を有する脂肪族直鎖ジカルボン酸Xのモノマー単位を含むポリアミドPA−4Xを調製するための方法であって、以下のステップ:
1)1,4−ジアミノブタンおよび脂肪族直鎖ジカルボン酸の塩ならびに水を含む溶液を、この塩が溶解する温度で作製するステップと、
2)この塩の溶液を、塩の結晶化温度を超える温度、最大7barAの圧力で、水分含有率が溶液の総量を基準として0〜30重量%となるまで濃縮するステップと、
3)ステップ2で得られた溶液からポリマーを生成させるステップであって、それと同時に、ポリマーを18barA未満の圧力で溶融状態に維持するステップと、
4)ステップ3で得られたポリマーを減圧するステップであって、それと同時に、ポリマーをさらに重合させるためにポリマーを溶融状態に維持するステップと
を含む方法により達成された。
【0006】
驚くべきことに、本発明による方法を用いることにより、以下の実施例に示すように分子量がより高いPA−4Xが得られる。
【0007】
他の利点は、より高い分子量を有するポリマーを得るために後縮合方法にステップを追加する必要がないため、本方法が簡素化および高速化することにある。
【0008】
好ましくは、この方法は、低酸素環境で行われる。本明細書における低酸素環境とは、酸素が1000ppm未満、好ましくは酸素が500ppm未満、より好ましくは酸素が100ppm未満の環境と理解される。
【0009】
好ましくは、少なくとも8個の炭素原子を有する脂肪族直鎖ジカルボン酸は最大18個の炭素原子を有する。より好ましくは、脂肪族直鎖ジカルボン酸は、1,8−オクタン二酸、1,9−ノナン二酸、1,10−デカン二酸、1,11−ウンデカン二酸、1,12−ドデカン二酸、1,13−トリデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、1,15−ペンタデカン二酸、1,16−ヘキサデカン二酸、1,17−ヘプタデカン二酸、および1,18−オクタデカン二酸の群から選択される。よりさらに好ましくは、脂肪族直鎖ジカルボン酸の炭素原子数は偶数である。その理由は、こうすることによってポリアミドの融点が比較的高くなるためである。最も好ましくは、脂肪族直鎖ジカルボン酸は、1,10−デカン二酸である。
【0010】
特許請求した方法と類似の方法としては、例えば、PA−610およびPA−66を製造するための方法が知られており、例えば、Nylon Plastics Handbook,M.I.Kohan,Hanser Publishers,1995,pages17〜23に記載されている。しかしながら、例えばPA−66を調製する方法(Nylon Plastics Handbook,M.I.Kohan,Hanser Publishers,1995の20,21ページ参照)と類似の方法でPA−4Xを製造しても高分子量のポリマーが得られないという欠点がある。驚くべきことに、特許請求した方法を用いることにより、高分子量のPA−4Xを得ることができる。
【0011】
ステップ1は、塩が溶解する温度で行われ、好ましくは、大気圧での作業が可能になるように上限は100℃である。好ましくは、この温度は60〜80℃である。
【0012】
1,4−ジアミノブタンおよび少なくとも8個の炭素原子を有する脂肪族直鎖ジカルボン酸のモル比は、好ましくは約1:1、より好ましくは、モル比は1:1〜1.07:1である。最も好ましくは、モル比は1:1〜1.04:1である。より好ましくは、1,4−ジアミノブタンおよび1,10−デカン二酸のモル比は約1:1、よりさらに好ましくは、モル比は1:1〜1.07:1であり、最も好ましくは1:1〜1.04:1である。
【0013】
好ましくは、このステップにおける塩の濃度は、30〜70重量%、より好ましくは40〜60重量%である。
【0014】
ステップ2は、好ましくは少なくとも0.1barA、より好ましくは少なくとも1barAの圧力で行われる。好ましくは、この圧力は最大5barAであり、より好ましくは、圧力は最大3barAである。最も好ましくは、ステップ2における圧力は、1.5〜3barAである。圧力は、絶対圧を指す「barA」で与えらる。ステップ2でこのような圧力を用いることの利点は、反応器にとって望ましくない起泡のリスクが低下することに加えて、塩溶液が結晶化するリスクも低下することにある。結晶化も起泡も、反応器を閉塞させ、余計な洗浄が必要となるため望ましくない。ステップ2の温度は塩の結晶化温度を上回ることが必要である。塩の結晶化温度とは、水が依然として存在する場合は溶液中における塩の結晶化温度を意味し、水が存在しない場合は純粋な塩の結晶化温度を意味する。好ましくは、この温度は、最高190℃、より好ましくは最高180℃、よりさらに好ましくは最高170℃、最も好ましくは最高160℃である。
【0015】
好ましくは、ステップ2の終了時点における水分含有率は25重量%未満、より好ましくは20重量%未満、よりさらに好ましくは15重量%未満である。最も好ましくは、水分含有率は10重量%未満である。驚くべきことに、より反応性の高いプレポリマーが得られ、その結果として最終ポリマーの分子量がより高くなることから、第2ステップにおける水分含有率を低くすることが好ましいことが示された。好ましくは、水分含有率は、少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%、よりさらに好ましくは少なくとも1重量%、最も好ましくは少なくとも2重量%である。
【0016】
ステップ3は、圧力を18barA未満、好ましくは17barA未満、より好ましくは16barA未満として行われる。脂肪族直鎖ジカルボン酸が1,10−デカン二酸である場合、好ましい圧力は、好ましくは圧力17barAで、より好ましくは圧力16barA未満、よりさらに好ましくは15barA未満、最も好ましくは14barA未満で行われる。
【0017】
好ましくは、ステップ3の圧力は24−X(Xは、脂肪族直鎖ジカルボン酸の炭素原子数)barA未満である。したがって、脂肪族直鎖ジカルボン酸が1,10−デカン二酸である場合、最も好ましい圧力は24−10=14barA未満である。
【0018】
脂肪族直鎖ジカルボン酸が1,10−デカン二酸である場合、ステップ3における好ましい圧力は少なくとも8barA、より好ましくは、圧力は少なくとも10barA、よりさらに好ましくは、圧力は少なくとも12barAである。好ましくは、ステップ3における圧力は、少なくとも22−X(Xは、脂肪族直鎖ジカルボン酸の炭素原子数)barAである。最も好ましくは、脂肪族直鎖ジカルボン酸が1,10−デカン二酸である場合の圧力は12〜14barAである。圧力は、水分の排出制御および昇温によって調節される。
【0019】
好ましくは、温度および圧力は、PA−4Xの液体凝固点(liquid freezing point)を超えるように維持される。本明細書におけるPA−4Xの液体凝固点とは、「Nylon Plastics Handbook」,MelvinI.Kohan,Hanser Publishers,1995,page18に記載されているように、PA−4Xが固化する特定の圧力および温度と理解される。ステップ3は、PA−4Xの液体凝固点未満で実施することもできるが、その場合、PA−4Xを溶融状態に維持するために、液体凝固点未満で経過する時間は比較的短くなる。好ましくは、ステップ3は、溶液の温度がPA−4Xの溶融温度から15℃を差し引いた温度を超え、より好ましくは、ポリマーの溶融温度を超えるまで継続される。
【0020】
ステップ4においては、ポリマーをさらに重合させるためにポリマーを溶融状態に維持しながら、ポリマーが減圧される。
【0021】
ステップ4の温度は、好ましくは、少なくとも、ポリマーの溶融温度から15℃を差し引いた温度(PA−410の溶融温度は248℃なので、純粋なPA−410の場合は約233℃)を超える。溶融温度は、標準的な示差走査熱量分析測定(DSC)により10℃毎分で測定することができる。
【0022】
好ましくは、圧力は、例えば、毎分0.2barずつ徐々に開放される。こうすることには、温度制御をより容易に行えるという利点がある。ポリマーを減圧した後、好ましくは、ポリマーの溶融温度から15℃を差し引いた温度を超える温度で少なくとも30分間加熱することによってポリマーをさらに重合させる。より好ましくは、この温度はポリマーの溶融温度を超え、よりさらに好ましくは、この温度は260℃を超える。このステップの温度が高くなるほど、より高い粘度数のポリマーを得るために必要な時間が短くなる。
【0023】
ステップ4を実施することができる最高温度は技術的な理由によって制限され、通常は最高350℃であろう。
【0024】
ステップ4の後、得られたポリマーを、先行技術において周知のようにストランド造粒(strand granulated)または水中造粒することができる。本発明による方法には、PA−4Xを形成した直後に造粒ステップを行うことができるという利点がある。一方、国際公開第00/09586号パンフレットにおいては、ポリマー粉末を得た後に他のステップを経てからでないと粒状物が得られない。
【0025】
得られたポリマーは、場合により、一層高い粘度数を得るために後縮合させることができる。その容器として回転式乾燥機を使用することができる。温度は180〜220℃、好ましくは200〜220℃とすることができる。後縮合は、好適には、窒素または窒素/水蒸気(好ましくは、少なくとも水蒸気を10重量%含む)中で行うことができる。
【0026】
後縮合ステップは、所望の重合度に到達したら粒状物を冷却することによって停止することができる。
【0027】
本発明による方法を用いることによって特性が改善されたPA−4Xを得ることができる。好ましくは、国際公開第00/09586号パンフレットに記載されている方法により得られるPA−410と比較しての特性が改善されたPA−410を得ることができる。
【0028】
したがって、本発明はまた、本発明による方法により得られるPA−410にも関連し、このポリアミドの、ISO 307(第5版、2007−05−15)に準拠し、ギ酸(c=0.005g/ml)中のポリマー溶液として25℃で測定された粘度数(VN)は、少なくとも100ml/グラムである。好ましくは、VNは、少なくとも105ml/グラム、より好ましくは少なくとも110ml/グラム、よりさらに好ましくは少なくとも120ml/グラム、最も好ましくは少なくとも130ml/グラムである。少なくとも、VNが260ml/グラムまで、より好ましくは240ml/グラムまでである場合に良好な結果が得られる。
【0029】
本発明による方法により得られるPA−410は、有利には非常に短時間で製造できるだけでなく、所望により重合度を高くすることもできる。また、最終ポリマーは、周知のPA−410よりもはるかに高い反応性を依然として有している。例えば、低重合度、したがって低粘度のポリマーを強化繊維と混合し、この混合ステップの後にポリマーの重合度をさらに高めることが十分に可能である。このようにして、短時間で進行する方法において、非常に優れた機械特性を有する繊維強化されたPA−410組成物を得ることができる。ポリマーを含む成形品、例えばフィルムまたはストック形状を製造し、その後、ポリマーの融点未満でさらなる縮合ステップを行うことによりポリマーの重合度を高めることも十分に可能である。こうすることによって機械特性が非常に優れた成形品を得ることができる。一方、このようなポリマーは粘度が高いので、この種の物品を同じ高重合度のポリマーから直接形成して製造することはできない。
【0030】
したがって、好ましい実施形態においては、本発明は、
([酸末端基]+[アミン末端基])>b−a.VN 式I
(式中、[酸末端基]は、ポリマー中の酸末端基の含有量(meq/kg)であり、[アミン末端基]は、ポリマー中のアミン末端基の含有量(meq/kg)であり、aは、0.77であり、bは、160であり、VNは、粘度数(ml/グラム)である)であるPA−410に関する。1meqは10−3molである。
【0031】
好ましくは、bは165であり、より好ましくは、bは170である。
【0032】
好ましくは、式Iが適用可能であるが、ただし、([酸末端基]+[アミン末端基])>20meq/kg、より好ましくは>30meq/kg、よりさらに好ましくは>30meq/kgである。こうすることにより、後縮合速度ならびに得られる最終ポリマーの粘度数および反応性が一層増大する。
【0033】
本発明によるPA−410は、ブタン1,4−ジアミンおよび1,10−デカン二酸のモノマー単位以外にさらなるジアミンおよび/または二酸および/またはアミノ酸のコモノマー単位を含むことができる。好ましくは、PA−410は、コモノマー単位を20重量%未満、より好ましくは10重量%未満、より好ましくは2重量%未満、最も好ましくは0.1重量%未満含むことができる。
【0034】
本発明によるPA−410には、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ウィスカー等の強化剤およびさらなる通常の添加剤を配合することができる。
【0035】
本発明はまた、本発明のPA−4Xを含む成形品、好ましくは、PA−410を含む成形品にも関連する。本発明によるPA−410は、押出法、例えば、ブロー成形法やフィルム押出法による成形品の製造に特に適している。これは、本発明によるPA−410の粘度数がより高く、その結果として得られるより高い機械特性が押出成形法により製造される成形品に極めて有利なことにある。
【0036】
ここで以下の実施例を用いて本発明を説明するが、本発明をこれらに限定するものではない。
【0037】
[実施例]
使用した化合物:
1,4−ジアミノブタン(蘭国DSM提供)
1,8−オクタン二酸(スベリン酸)(Alfa Aesarより入手)
1,10−デカン二酸(中国Dong Feng提供)
1,12−ドデカン二酸(Merck Schuchardt OHGより入手)
【0038】
[測定]
[粘度数(VN)]
粘度数は、ISO 307 第5版 2007−05−15により決定した。PA−4X試料をギ酸中に25℃で溶解し(c=0.005g/ml)、ウベローデ粘度計(Scott型530−10/1)を使用して、粘度数および相対粘度の関係式:VN=200×(相対粘度−1)を用いて粘度数を求めた。
【0039】
[末端基]
カルボキシル末端基は、o−クレゾール中で水酸化テトラブチルアンモニウムを用いて滴定を行う電位差測定によって決定した。
【0040】
アミノ末端基は、フェノール中で塩酸を用いて滴定を行う電位差測定によって決定した。
【0041】
[実施例1:PA−48]
[ステップ1:塩溶液の調製]
不活性雰囲気の(inert)2Lのオートクレーブ反応器内で、48塩の総重量を基準として0.5%過剰の1,4−ジアミノブタンを含む48塩の45%溶液を調製した。65℃で、1,4−ジアミノブタンの67.1%溶液254.3mlを水440mlに加えた後、固体スベリン酸332gを加えた。
【0042】
[ステップ2:塩溶液の濃縮]
反応器の最大圧力を2barAに設定した。塩溶液を60分間で153℃まで加熱した。この工程では、塩濃度が92%に達するまで過剰の水分を160℃で留去した。
【0043】
[ステップ3:溶融温度への加熱]
反応器の圧力を14barAに設定した。48塩溶液を圧力が14barAに到達するまで15分間加熱した。15barAを維持しながら、溶融ポリマーの温度が265℃に到達するまでさらに水を留去する。この段階で重合が開始する。
【0044】
[ステップ4:溶融ポリマーの減圧]
265℃になったら反応器を1.02barAに減圧し、そのまま60分間で280℃まで加熱した。
【0045】
[ステップ5:重縮合段階]
溶融ポリマーを280℃、1.02barAで6時間維持した。少量の窒素気流を用いて溶融ポリマー中の水分を除去した。
【0046】
[ステップ6:造粒]
重縮合段階の後、反応器の内容物を水浴に移してポリマーストランドを得、これをオフラインで切断して粒状にした。このPA−48ポリマーは、溶液粘度が108ml/g(90%ギ酸中)であり、55meqCOH/kg、<5meqNH/kgであった。
【0047】
[実施例2:PA−410]
[ステップ1:]
不活性雰囲気の2Lのオートクレーブ反応器内で、410塩の総重量を基準として0.7重量%過剰の1,4−ジアミノブタンを含む410塩の45%溶液を調製した。65℃で、1,4−ジアミノブタンの67.5%溶液(すなわち、1,4−ジアミノブタン溶液1kg当たり1,4−ジアミノブタン0.675kg)230mlを水540mlに加えた後、固体1,10−デカン二酸348.2gを加えた。
【0048】
[ステップ2:]
反応器の最大圧力を2barAに設定した。塩溶液を60分間で153℃まで加熱した。この工程では、水分含有率が10%に達するまで過剰の水分を153℃で留去した。
【0049】
[ステップ3:]
反応器の圧力を12barAに設定した。410塩の溶液を圧力が12barAに到達するまで15分間加熱し、それによって塩溶液を重合させた。12barAを維持しながら、溶融ポリマーが得られるまで水分をさらに留去し、温度を250℃に到達させる。
【0050】
[ステップ4:]
250℃になったら反応器を1.02barAに減圧し、そのまま60分間で265℃まで加熱して溶融ポリマーをさらに重合させた。溶融ポリマーを265℃および1.02barAで3時間維持した。少量の窒素気流を用いて溶融ポリマー中の水分を除去した。
【0051】
[ステップ5:]
重縮合段階の後、反応器の内容物を水浴に移してポリマーストランドを得、これをオフラインで切断して粒状にした。このPA−410ポリマーは、溶液粘度が104ml/g(90%ギ酸中)であり、43meqCOH/kg、45meqNH/kgであった。これらの数値を表1に示す。
【0052】
[ステップ6:]
乾燥窒素を用いて固体状態での後縮合を220℃で96時間行うことによって、VNが225ml/gとなり、10meqCOH/kg、20meqNH/kgとなった。これらの数値を表1に示す。
【0053】
[実施例3:PA−410]
ステップ1:
不活性雰囲気の2Lのオートクレーブ反応器内で、410塩の総重量を基準として0.7重量%過剰の1,4−ジアミノブタンを含む410塩の45%溶液を調製した。65℃で、1,4−ジアミノブタンの67.5%溶液230mlを水540mlに加えた後、固体1,10−デカン二酸348.2gを加えた。
【0054】
[ステップ2:]
反応器の最大圧力を2barAに設定した。塩溶液を60分間で153℃まで加熱した。この工程では、水分含有率が8%に達するまで過剰の水分を157℃で留去した。
【0055】
[ステップ3:]
反応器の圧力を12barAに設定した。410塩の溶液を15分間加熱することにより圧力を12barAに到達させ、それによって塩溶液を重合させた。12barAを維持しながら、溶融ポリマーが得られるまで水分をさらに留去し、温度を250℃に到達させた。
【0056】
[ステップ4:]
250℃になったら反応器を1.02barAに減圧し、そのまま60分間で280℃まで加熱して溶融ポリマーをさらに重合させた。溶融ポリマーを280℃および1.02barAで6時間維持した。少量の窒素気流を用いて溶融ポリマー中の水分を除去した。
【0057】
[ステップ5:]
重縮合段階の後、反応器の内容物を水浴に移してポリマーストランドを得、これをオフラインで切断して粒状にした。このPA−410ポリマーは、溶液粘度が143ml/g(90%ギ酸中)であり、<5meqCOH/kg、78meqNH/kgであった。これらの数値を表1に示す。
【0058】
[実施例4:PA−410]
[ステップ1:]
不活性雰囲気の2Lのオートクレーブ反応器内で、410塩の総重量を基準として0.7重量%過剰の1,4−ジアミノブタンを含む410塩の45%溶液を調製した。65℃で、1,4−ジアミノブタンの67.5%溶液230mlを水540mlに加えた後、固体1,10−デカン二酸348.2gを加えた。
【0059】
[ステップ2:]
反応器の最大圧力を2barAに設定した。塩溶液を60分間で153℃まで加熱した。この工程では、水分含有率が10%に達するまで過剰の水分を153℃で留去した。
【0060】
[ステップ3:]
反応器の圧力を12barAに設定した。410塩の溶液を圧力が12barAに到達するまで15分間加熱し、それによって塩溶液を重合させた。12barAを維持しながら、溶融ポリマーが得られるまで水分をさらに留去し、温度を250℃に到達させた。
【0061】
[ステップ4:]
250℃になったら反応器を1.02barAに減圧し、そのまま60分間で265℃まで加熱して溶融ポリマーをさらに重合させた。溶融ポリマーをさらに290℃まで加熱し、同温度および1.02barAで19時間維持した。少量の窒素気流を用いて溶融ポリマー中の水分を除去した。
【0062】
[ステップ5:]
重縮合段階の後、反応器の内容物を水浴に移してポリマーストランドを得、これをオフラインで切断して粒状にした。このPA−410ポリマーは、溶液粘度が208ml/g(90%ギ酸中)であり、8meqCOH/kg、16meqNH/kgであった。これらの数値を表1に示す。
【0063】
[実施例5:PA−410]
[ステップ1:]
不活性な2Lのオートクレーブ反応器内で、410塩の総重量を基準として0.5重量%過剰の1,4−ジアミノブタンを含む410塩の45%溶液を調製した。65℃で、1,4−ジアミノブタンの67.5%溶液228.5mlを水540mlに加えた後、固体1,10−デカン二酸348.2gを加えた。
【0064】
[ステップ2:]
反応器の最大圧力を2barAに設定した。塩溶液を60分間で157℃まで加熱した。この工程では、水分含有率が8%に達するまで過剰の水分を157℃で留去した。
【0065】
[ステップ3:]
反応器を密閉した。410塩の溶液を13分間で202℃まで加熱し、202℃で29分間維持して16barAに到達させ、それによって塩溶液を重合させて溶融ポリマーを得た。
【0066】
[ステップ4:]
202℃で反応器を1.02barAに減圧し、そのまま25分間で275℃に加熱して溶融ポリマーをさらに重合させた。溶融ポリマーをさらに290℃まで加熱し、1.02barAおよび同温度を5時間維持した。少量の窒素気流を用いて溶融ポリマー中の水分を除去した。
【0067】
[ステップ5:]
重縮合段階の後、反応器の内容物を水浴に移してポリマーストランドを得、これをオフラインで切断して粒状にした。このPA−410ポリマーは、溶液粘度が154ml/g(90%ギ酸中)であり、<5meqCOH/kg、59meqNH/kgであった。これらの数値を表1に示す。
【0068】
ステップ4で2時間経過後に試料を採取したところ、溶液粘度は107ml/g(90%ギ酸)であった。これらの数値を表1に示す。
【0069】
[実施例6:PA−410]
[ステップ1:]
不活性な2Lのオートクレーブ反応器内で、410塩の総重量を基準として0.5重量%過剰の1,4−ジアミノブタンを含む、410塩の45%溶液を調製した。65℃で、1,4−ジアミノブタンの67.5%溶液228.5mlを水540mlに加えた後、固体1,10−デカン二酸348.2gを加えた。
【0070】
[ステップ2:]
反応器の最大圧力を2barに設定した。塩溶液を60分間で157℃まで加熱した。この工程では、水分含有率が8%に達するまで過剰の水分を157℃で留去した。
【0071】
[ステップ3:]
410塩の溶液を25分間で290℃まで加熱し、それによって塩溶液を重合させて溶融ポリマーとした。この加熱段階の間、反応器のバルブを開放して水を50%留去した。到達した最大圧力は7barAであり、終了時に圧力を1.02barAに維持した。
【0072】
[ステップ4:]
溶融ポリマーを290℃および1.02barAに維持し、同温度を4時間維持した。少量の窒素気流を用いて溶融ポリマー中の水分を除去した。
【0073】
[ステップ5:]
重縮合段階の後、反応器の内容物を水浴に移してポリマーストランドを得、これをオフラインで切断して粒状にした。このPA−410ポリマーは、溶液粘度が145ml/g(90%ギ酸中)であり、53meqCOH/kg、8meqNH/kgであった。
【0074】
ステップ4で2時間経過後に試料を採取したところ、溶液粘度は135ml/g(90%ギ酸中)であった。これらの数値を表1に示す。
【0075】
[実施例7:PA−412]
[ステップ1:塩溶液の調製]
不活性な2Lのオートクレーブ反応器内で、412塩の総重量を基準として0.5%過剰の1,4−ジアミノブタンを含む412塩の45%溶液を調製した。80℃で、1,4−ジアミノブタンの67.1%溶液210mlに水470mlを加えた後、固体1,12−ドデカンデ二酸(dodecandedioic acid)361.6gを加えた。
【0076】
[ステップ2:塩溶液の濃縮]
反応器の最大圧力を2barAに設定した。塩溶液を60分間で153℃まで加熱した。この工程では、塩濃度が92%に達するまで過剰の水分を156℃で留去した。
【0077】
[ステップ3:溶融温度への加熱]
反応器の圧力を10barAに設定した。412塩の溶液を15分間加熱して圧力を10barAに到達させた。10barAを維持しながら、溶融ポリマーの温度が250℃に到達するまで水をさらに留去する。この段階で重合が開始する。
【0078】
[ステップ4:溶融ポリマーの減圧]
250℃になったら反応器を1.02barAに減圧し、そのまま60分間で280℃まで加熱した。
【0079】
[ステップ5:重縮合段階]
溶融ポリマーを280℃および1.02barAで6時間維持した。少量の窒素気流を用いて溶融ポリマー中の水分を除去した。
【0080】
[ステップ6:造粒]
重縮合段階の後、反応器の内容物を水浴に移してポリマーストランドを得、これをオフラインで切断して粒状にした。このPA−412ポリマーは、溶液粘度が102ml/g(90%ギ酸中)であり、<12meqCOH/kg、96meqNH/kgであった。
【0081】
[比較実験A]
[ステップ1:]
不活性な2Lオートクレーブ反応器内で、410塩の総重量を基準として0.7重量%過剰の1,4−ジアミノブタンを含む410塩の45%溶液を調製した。65℃で、1,4−ジアミノブタンの70%溶液230mlを水540mlに加えた後、固体1,10−デカン二酸348.2gを加えた。
【0082】
[ステップ2:]
反応器の最大圧力を4.5barAに設定した。塩溶液を60分間で157℃まで加熱した。この工程では、水分含有率が30%に達するまで過剰の水分を157℃で留去した。
【0083】
[ステップ3:]
反応器の圧力を18barAに設定した。410塩の溶液を30分間加熱することにより圧力を18barAに到達させ、それによって塩溶液を重合させた。18barAを維持しながら、溶融ポリマーが得られるまでさらに水分を留去し、温度を250℃に到達させた。
【0084】
[ステップ4:]
250℃で、反応器を1.02barAに減圧し、そのまま60分間で270℃まで加熱して溶融ポリマーをさらに重合させた。溶融ポリマーを265℃および1.02barAで2時間維持した。少量の窒素気流を用いてポリマー中の水分を除去した。
【0085】
[ステップ5:]
重縮合段階の後、反応器の内容物を水浴に移してポリマーストランドを得、これをオフラインで切断して粒状にした。このPA−410ポリマーは、溶液粘度が40ml/g(90%ギ酸)であり、205meqCOH/kg、12meqNH/kgであった。これらの数値を表1に示す。
【0086】
[比較実験B]
[国際公開第00/09586号パンフレットの実施例1に従うPA−410の調製]
オートクレーブ内で、1.10−デカンドイイック酸(decanedoiic acid)350グラム、ブタン−1,4−ジアミン157グラム、および水420グラムを90℃で30分間撹拌することによりジアミンおよび酸の塩の濃度55重量%の水溶液を得る。次いで水分を除去する。まず10分間で180℃まで昇温することによって水の約半量を留去し、次いで200℃まで昇温することによってさらに水を留去し、水10重量%を含む濃縮溶液を得る。次いでオートクレーブを密閉し、オートクレーブの温度を227℃まで昇温する。同温度で30分間予備重合を行い、その後、オートクレーブの内容物を窒素雰囲気中に排出し、このプレポリマーを造粒して冷却する。
【0087】
プレポリマーの粒状物を回転乾燥機で乾燥させ、窒素/水蒸気雰囲気中(75/25重量%)、220℃の温度で24時間後縮合させた。この後縮合の前後に試料を採取した。粘度数の測定値を表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
表1から、本発明による方法を用いることによって比較例よりも粘度数の高いPA−4Xが得られることが明らかである。実施例2〜6から、比較例よりも粘度数の高いポリアミド4,10が得られることがわかる。ステップ4の重合において比較的短時間(実施例5および6においてはわずか2時間)が経過した後でも既により高い粘度数に到達していたこともわかる。
【0090】
比較例Aは、ステップ3において、PA66の製造に典型的な圧力である高圧(18barA)を用いた製造方法を示すものである。この比較例を用いると粘度が低くなる。比較例Bは、国際公開第00/09586号パンフレットに開示された製造方法を示しており、低粘度しか得られなかったことが明らかである。