(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5862007
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】基板移送装置、基板移送方法およびそれを用いた塗布装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/68 20060101AFI20160202BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20160202BHJP
B65G 49/07 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
H01L21/68 F
H01L21/68 B
B65G49/07
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-264882(P2010-264882)
(22)【出願日】2010年11月29日
(65)【公開番号】特開2012-119353(P2012-119353A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 英俊
【審査官】
内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−228881(JP,A)
【文献】
特開2009−022822(JP,A)
【文献】
特開2008−080346(JP,A)
【文献】
特開2001−038538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/68
H01L 21/677
B65G 49/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の基板を一定の高さに浮かせるステージと、
前記基板の下面の一部を把持する吸着パッドと、
前記吸着パッドの高さを調整する高さ調整機構を有し前記基板を所定の方向に移送する駆動ユニットと、
基板の高さを測定する測定器と、
を備える基板移送装置であって、
前記測定器の直下を通過する基板より連続的に得た基板高さから、前記吸着パッドが前記測定器直下を通過する際の局部的異常(コブ、凹み)を捉えて、前記各吸着パッドの高さ補正の方向と高さの値を決めるデータ解析ユニットを備えることを特徴とする基板移送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板移送装置のデータ解析ユニットで求めた補正値により、前記高さ調整機構で吸着パッドの高さを調整することにより、前記基板表面の歪みを軽減することを特徴とする基板移送方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法で行われる基板移送に同期して作動するスピンレス方式の塗布ユニットを請求項1に記載の基板移送装置に合体したことを特徴とする塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状の基板を処理工程の中で移送する基板移送装置とそれを用いた塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置等のフラットパネルディスプレイに用いるTFT等の駆動基板やカラーフィルタ(以下CFと略称)等の平板状の基板の製造プロセスにおいて、フォトリソグラフィー法による工程を実施する場合に、処理基板の大型化と大型基板に対する効率的な均一塗布に適したスピンレス塗布方式を用いることが多くなっている。
【0003】
スピンレス塗布方式は、基板に対してレジスト液を長尺のスリット状のノズルから均一に連続して吐出させながら、ノズルの長尺方向と略垂直な方向に基板またはノズルを移動させることにより、基板上の所定の領域に均一な厚さのレジスト塗布層を形成することができる塗布法である。上記の移動させる対象として、基板とノズルのいずれも可能であるが、基板がガラス等の平板状の場合には、基板を平面ステージ上に載置し、ノズルをステージ上方で平行移動させることが主であった。しかし、基板の大型化に伴って、長尺状のノズルの寸法や重量が増すため、そのような重厚長大のレジストノズルをステージ上方で高さ位置を一定に保ったまま一定の速度で安定に基板表面に平行移動させることが難しくなってきている。
【0004】
前述のように大型のノズルの平行移動が困難となる一方、大型基板を載置した大型ステージ全体を移動する場合の機構上の困難も大きいため、特許文献1に示すように、平板状の基板をステージ上面に多数設けた噴出口から噴出させた気流により浮上させるとともに、基板の移動方向に沿う周縁部を吸着パッドにより把持して水平方向の駆動ユニットにより移送する方式が提案されている。
【0005】
図2は、上述のような従来の基板浮上方式の基板移送装置およびそれを用いた塗布装置の例を説明するための模式図であって、(a)は平面図、(b)は、(a)のA−A’線に沿った断面図である。
ステージ1上面に多数設けた噴出口2から噴出させた噴出エアー21((b)のブロック矢印で表示)により基板3を一定の高さに浮上させることができる。浮上した基板3は、ステージ1との摩擦力が作用しないため、水平方向に僅かな力を加えれば容易に動かせる状態となっている。ステージ1の基板進行方向と平行な辺の少なくとも片側近傍には、ステージ1に沿って移動可能な駆動ユニット4を設け、駆動ユニット4の上方に接続した吸着パッド5が基板3の下面の基板周縁部を吸着することにより、駆動ユニット4を動かせば、基板を把持して太い実線矢印で示す方向に移送することができる。一定速度で移送する基板が前記スリット状のノズルからなる塗布ユニット9の直下を通過する際に、ノズルから均一に連続して吐出するレジスト液を基板上に塗布することができるので、上述の基板移送装置を用いて塗布装置が構成される。
【0006】
上述の基板移送装置およびそれを用いた塗布装置において、ステージ1の表面から均一の高さに基板3を保って移送することにより、ノズルの吐出部と基板表面との距離が幅方向全体にわたって一定であることは、均一な塗布性能を保証するために重要である。然るに、浮上の高さによっては、基板を移送するために吸着パッド5が基板下面の周縁部を吸着する際に、吸着部分の基板が変形することがある。この影響により、基板の表面の高さは、周縁部に近い部分で均一な高さから外れることになり、塗布装置における塗布ムラの原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−19396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記の問題点に鑑みて提案するものであり、本発明が解決しようとする課題は、平板状の基板をステージ上面から浮かせ、基板下面の一部を吸着パッドにより把持して所定の方向に移送する基板移送装置において、吸着パッドによる基板の変形を防ぎ、基板表面の歪みを軽減する基板移送装置を提供し、それによって、処理工程の中で基板移送を伴うスピンレス方式の塗布を均一に行う装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、 平板状の基板を一定の高さに浮かせるステージと、前記基板の下面の一部を把持する吸着パッドと、前記吸着パッドの高さを調整する高さ調整機構を有し前記基板を所定の方向に移送する駆動ユニットと、基板の高さを測定する測定器と、を備える基板移送装置であって、前記測定器の直下を通過する基板より連続的に得た基板高さから、前記吸着パッドが
前記測定器直下を通過する際の局部的異常(コブ、凹み)を捉えて、前記各吸着パッドの高さ補正の方向と高さの値を決めるデータ解析ユニットを備えることを特徴とする基板移送装置である。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の基板移送装置のデータ解析ユニットで求めた補正値により、前記高さ調整機構で吸着パッドの高さを調整することにより、前記基板表面の歪みを軽減することを特徴とす
る基板移送
方法である。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、
請求項2に記載の方法で行われる基板移送に同期して作動するスピンレス方式の塗布ユニットを請求項
1に記載の基板移送装置に合体したことを特徴とする塗布装置である。
【発明の効果】
【0012】
平板状の基板をステージ上面から浮かせ、基板下面の一部を吸着パッドにより把持して所定の方向に移送する基板移送装置において、ステージ上と吸着パッド上とを含む基板上の異なる点の高さを測定できる測定器を有しており、高さの測定結果に基いて、吸着パッドの高さを調整することにより、吸着パッドによる基板の変形を防ぎ、基板表面の歪みを軽減する基板移送装置を提供し、それによって、処理工程の中で基板移送を伴うスピンレス方式の塗布を均一に行う装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一例を説明するための模式断面図である。
【
図2】従来の基板移送装置およびそれを用いた塗布装置の例を説明するための模式図であって、(a)は平面図、(b)は、(a)のA−A’線に沿った断面図である。
【
図3】本発明において、複数の測定データの変動を比較することにより吸着パッド上の基板高さに生じる異常歪みを検知し、補正する例を示すための説明図であって、(a)は、
図2(a)のB−B’線に沿った測定位置に相当する測定座標xと測定値yとの関係を示す模式断面図、(b)は、異常歪みを検知した測定データ例を模式的に示すグラフ、(c)は、吸着パッドの高さを補正した後の複数の測定データ例を模式的に示すグラフである。
【
図4】本発明の他の一例を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に従って本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の一例を説明するために、
図2(a)のA−A’線に沿った断面図(b)と同様の向きに、本発明の一例の基板移送装置を見た場合の模式断面図である。
【0015】
ステージ1上面から噴出させた噴出エアー21(ブロック矢印で表示)により基板3を一定の高さに浮上させることができる。浮上した基板3は、水平方向に僅かな力を加えれば容易に動かせる状態となっている。ステージ1の少なくとも片側には、ステージ1に沿って紙面と垂直な方向に移動可能な駆動ユニット4を設け、駆動ユニット4の上方に高さ調整機構50を介して接続した吸着パッド5が基板3の下面の基板周縁部を吸着することにより、駆動ユニット4を動かせば、基板を把持して紙面と垂直な方向に基板移送することができる。
【0016】
上記噴出エアー21として乾燥空気または乾燥窒素を使用することができる。基板上への微細パターン形成を目的としたフォトリソグラフィー法による処理に用いる場合は、特に、異物微粒子を除去したクリーンで温度制御された気流を使うことが好ましい。
【0017】
駆動ユニット4の駆動方式は、例えばサーボモータなどの外部から位置情報を取得できる方式を用いる。また、駆動ユニット4の上方に設ける吸着パッド5は、駆動ユニット4上に一列に複数個並べてそれぞれのパッドの位置を明確にしておく。吸着パッド5の材質は可撓性の良好なシリコーンゴム等が使用できるが、吸着解除後の吸着面の跡を残さないことが必要であり、使用条件により、パッド表面への被膜形成処理等を適宜行う。
【0018】
本発明においては、駆動ユニット上への吸着パッドの接続に高さ調整機構を介しているため、吸着パッド5の高さを自在に調整することができる。高さ調整機構50は高さ方向の調整が可能な機構であれば限定されないが、例えば、リニアサーボモータとリニアスケールを有するリニアガイドからなるリニアスライドユニットを用いれば、30〜50μm程度の高さ調整を数μmの精度で行うことが可能である。
【0019】
上記の高さ調整機構50を用いるための前提として、高さ位置の正確な測定値が必要である。本発明では、ステージ上と吸着パッド上とを含む基板上の異なる点の高さを測定できる測定器を有しており、高さの測定結果に基いて、吸着パッドの高さを調整することにより、基板表面の歪みを軽減することができる。
図1に示す例では、ステージ1上の基板上方に設置したレーザ変位計6による点線方向の基板表面との間の距離と、ステージから外れた近傍の吸着パッド5上の基板上方に設置したレーザ変位計7による点線方向の基板表面との間の距離とをそれぞれ測定し、後述のように各測定値の測定結果に基いて、吸着パッドの高さを調整することができる。
【0020】
上記の説明では、2つのレーザ変位計6、7を用いたが、この構成に限定されない。即ち、1つのレーザ変位計を図の左右方向に平行移動させて複数点での測定値を計測することも可能であり、また、多数のレーザ変位計を紙面に垂直な基板移送方向に沿って配置して高速のデータ処理を行うことも可能である。とは言え、平行な複数の走行軸に沿ってそれぞれ1つのレーザ変位計を対応させる
図1の構成が通常は妥当である。
【0021】
次に、上記の構成からなる本発明の基板移送装置を用いて具体的に吸着パッドの高さを調整する方法について説明する。
図3は、本発明において、複数の測定データの変動を比較することにより吸着パッド上の基板高さに生じる異常歪みを検知し、補正する例を示すための説明図であって、(a)は、
図2(a)のB−B’線に沿った測定位置に相当する測定座標xと変位計から基板表面までの距離の測定値yとの関係を示す模式断面図、(b)は、異常歪みを検知した測定データ例を模式的に示すグラフ、(c)は、吸着パッドの高さを補正した後の複数の測定データ例を模式的に示すグラフである。
【0022】
3つの吸着パッド5で周縁部が吸着された基板3は、
図3(a)の左右方向に移動し、静止するレーザ変位計7の直下を通過する基板の駆動方向位置xにおける、変位計7から基板表面までの距離の測定値yを連続的に得ることができる。この結果を(b)のグラフで表示すると、レーザ変位計7による測定データ71が破線で示すように、例えば3つのコブを有する形に表される。また、同グラフに併記した実線で示す測定データ61は、吸着パッド上の走行軸と平行なステージ上の走行軸に沿った静止するレーザ変位計6の直下を通過する基板の駆動方向位置xにおける、変位計6から基板表面までの距離の測定値yを連続的に得たものである。
【0023】
上記2つの測定データ61、71は、レーザ変位計7による測定データ71の3つのコブを除いては、殆ど一致する。この場合の3つのコブは、
図3(a)に示す3つの吸着パッド5が変位計7の直下を通過する際のレーザ変位計からの測定距離10が局部的に
長くなることを示しており、吸着パッド5が基板3に吸着した駆動方向位置xにお
ける基板表面が他の駆動方向位置xにおける
基板表面よりも低い位置にあることを表している。
【0024】
次に、高さの測定結果に基いて、吸着パッドの高さを前記高さ調整機構50により調整する。上記の例の場合には、吸着パッド5を高くする方向に補正を行う。パッド高さ補正後の測定データ例を模式的に示すグラフ(c)によれば、最適な補正を行うことによって、レーザ変位計7による測定データ71の3つのコブが消える。吸着パッド5が変位計7の直下を通過する際のレーザ変位計からの測定距離11を含む測定データ71が、吸着パッド上の走行軸と平行なステージ上の走行軸に沿った静止するレーザ変位計6による測定データ61に略沿ったグラフとなり、基板表面の高さからみた基板3の異常歪みが消失したことが分かる。
【0025】
上記のような吸着パッドの高さ調整は、レーザ変位計7による測定データ71のみをパッド高さ補正前後で較べることによっても、一般的に妥当性を確認することができるが、上記の例のように、吸着パッドの高さの影響が比較的小さいと考えられるステージ上の走行軸に沿った静止するレーザ変位計6による測定データ61と比較することによって、吸着パッドの高さ以外による要因を打ち消して評価できるので、好ましい。
【0026】
なお、吸着パッドが変位計直下を通過する際の測定距離10のような局部的異常は、上例のコブに限らず、凹みの場合もあり、その場合は、吸着パッド5の設定高さが高過ぎてレーザ変位計7と基板表面との距離が他の場所よりも短
くなっていると解釈できるので、吸着パッド5を低くする方向に補正を行う。
【0027】
また、本発明の基板移送装置において、基板表面の高さの測定結果を自動的にフィードバックして、吸着パッドの高さ調整を自動的に行う装置とすれば、使用方法がより容易に短時間でできるようになるとともに確実な補正を期待できる。
図4は、上記の自動化を考慮した本発明の他の一例を説明するための模式断面図である。レーザ変位計6、7からの測定結果yは、データ解析ユニット8に測定点の駆動方向位置xとともに入力される。上述の高さ調整方法の説明に相当する一定の規則を上記データ解析ユニット8に予め設定しておけば、高さの測定結果を基板移送方向の位置に対応する変動データとして捉えて解析することができ、各吸着パッドの高さ補正の方向と妥当な値を決める。その結果をリニアスライドユニット51に出力して、リニアスライドユニットを作動させ、吸着パッドの高さ調整を完了する。
【0028】
さらに、本発明の基板移送装置の基板表面の歪みを軽減する基板移送機能を利用して、基板移送に同期して作動するスピンレス方式の塗布ユニットを前記基板移送装置に合体す
ることにより、スピンレス方式の塗布を均一に行う塗布装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0029】
1・・・ステージ
2・・・噴出口
3・・・基板
4・・・駆動ユニット
5・・・吸着パッド
6・・・レーザ変位計(ステージ上)
7・・・レーザ変位計(吸着パッド上)
8・・・データ解析ユニット
9・・・塗布ユニット
10・・・吸着パッドが変位計直下を通過する際の測定距離(パッド高さ補正前)
11・・・吸着パッドが変位計直下を通過する際の測定距離(パッド高さ補正後)
21・・・噴出エアー
50・・・高さ調整機構
51・・・リニアスライドユニット
61・・・レーザ変位計6による測定データ
71・・・レーザ変位計7による測定データ