特許第5862037号(P5862037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5862037
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】脆性RFIDラベル
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/00 20060101AFI20160202BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20160202BHJP
   G06K 19/04 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   G09F3/00 M
   G09F3/02 A
   G06K19/04 050
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-81780(P2011-81780)
(22)【出願日】2011年4月1日
(65)【公開番号】特開2012-215763(P2012-215763A)
(43)【公開日】2012年11月8日
【審査請求日】2014年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古市 梢
【審査官】 佐藤 洋允
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−075712(JP,A)
【文献】 特開平10−143075(JP,A)
【文献】 特開2011−028373(JP,A)
【文献】 特開2009−086745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F1/00−5/04
G06K19/00−19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触で外部装置とデータの送受信を行うRFIDラベルであって、
ラベル基材上に設けられたアンテナとして機能する導電層と、
前記アンテナに接合されたICチップと、更にRFIDラベルを被着体に
貼付けるための接着層を配置して成るRFIDラベルにおいて、
前記接着層と反対面のラベル基材上に目視で光学的な効果を呈するOVD機能層が設けられ、
前記ラベル基材の厚みが5μm以上20μm以下で、かつ前記ラベル基材の、
接着層と接するラベル裏面に、深さがラベル基材の厚みの3分の1以上で、
かつ平面方向に300μm以下の間隔でハーフカットが形成され、
前記ハーフカットのアスペクト比(深さ方向の長さ/平面方向の長さで除した値)が300/1.7以上であり、
前記OVD機能層の金属薄膜層格子状に10μm以下のラインで切り込みが形成され、導電性を示さないことを特徴とする脆性RFIDラベル。
【請求項2】
前記RFIDラベルの導電層が導電性インキで設けられたことを特徴とする請求項1に記載の脆性RFIDラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的な効果を呈するOVDの機能を備え、かつ非接触で外部装置との間でデータの受信及び/又は送信を行うことができるRFID機能を有するRFIDラベルに、容易に剥がすことができない機能を付加した脆性RFIDラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
小売店やレンタル店での商品の管理において、RFID用のICチップとアンテナを備えたRFIDタグが利用されている。RFID(Radio Frequency IDentification)は、高周波を用いてRFID用のICチップの固有の情報であるデータの授受を非接触で行うことを可能とする方式の総称である。
【0003】
RFIDタグに組み込まれているICチップには、各々のRFIDタグを区別するための固有の情報であるID情報が書き込まれている。該ICチップは、場合によっては、該ID情報の入ったメモリー領域とは別の汎用メモリー領域をもち、商品に関連した情報などを読み書きすることができるタイプもある。
【0004】
ICチップのID情報の読み込みや、前記汎用メモリー領域の情報の読み込みや書き込みは、電磁界や電波などを用いた近距離の無線通信によって、専用のデータ読み書き装置RW(Reader Writer)により、非接触にて行うことができる。
【0005】
例えば、前記RFIDタグを商品に取付け、RWにより前記ID情報を読み込むことで、該RWをコンピュータシステムと組み合わせて、商品の出入庫管理、在庫管理、貸出し管理等に応用することができる。更に、前記汎用メモリー領域に、商品コードや、入荷日、担当者などの商品に関連する情報をRWで書き込めば、該情報を別のコンピュータシステムに接続されたRWで読み込むことで、商品の情報をコンピュータシステム間で伝達することも可能となる。
【0006】
以下では、RFIDタグに接着層などを組み込み、商品等に貼り付け、ラベルとして用いることのできるRFIDタグをRFIDラベルとする。
【0007】
このRFIDタグの普及とともに、RFIDタグにOVD(Optical Variable Device)機能を付加したOVD一体型RFIDタグの実用化が期待されている。
【0008】
OVDとは、見る角度、又は、測定する角度によって色の変化や画像の変化のような光学的な効果を発現させることのできる手段の総称である。この光学的な効果を発現させるために、OVDは、必要な効果に応じて、ホログラムなどの光の干渉を用いて立体画像や特殊な装飾画像を表現できる層や、回折格子から成る層や、光学特性の異なる薄膜層などを適宜選択して組み合わせて成る多層薄膜構造をとることが多い。
【0009】
このOVDは立体画像や色の変化といった独特な効果を与えることができるため、優れた装飾効果を発揮でき、各種包装材や絵本、カタログ等の一般的な印刷物に利用されている。更に、OVDは高度な製造技術を要することから偽造防止手段としてクレジットカード、有価証券、証明書類等に適用されている。
【0010】
また、OVDに光学的読み取り装置で読み取り可能な光学情報としてコード化された商品情報を記録しておくことも可能である。これにより、例えば、OVDを更に高度な偽造
防止媒体として利用することができる。
【0011】
前記のような特徴をもつOVDをRFIDタグと一体化することにより、次に示すような利点が想定される。例えば、これまで、RFIDタグとOVDが別々に商品等に取り付けられていた場合には、RFIDタグとOVDとを一体化して、商品等に一括で取り付けることが可能になり、総合的なコストダウンができる。
【0012】
更に、OVDは、様々なデザインが可能であり、該OVDとRFIDタグとを一体化した場合に、RFIDタグに、該OVDにより、意匠性や高級感、偽造防止機能などをもたせることができる。
【0013】
偽造防止機能の例としては、例えば、OVDとRFIDタグを一体化させることにより、RFIDタグのRWによる情報と目視を含む光学的読み取りからの情報のいずれかを用いたRFIDタグの真偽判定が可能となる。したがって、RFID用のRWがない場合でも、目視などの光学的読み取り手段によりRFIDタグの真偽判定が可能となる。すなわち、なんらかの理由で高周波を使った情報の読み取りが困難な場合に、光学的読み取り手段により読み取ることもできる。したがって、低コストで、RFIDタグの真偽判定の市場適用範囲を広げることができる。
【0014】
また、更に高度な偽造防止媒体として利用する場合は、OVDに光学情報としてコード化された商品情報を記録しておき、該光学情報を光学的読み取り装置で読み取り、RWで読み込んだRFID用のICチップの商品情報と比較することができる。これにより、例えば、OVD若しくは該ICチップのどちらかが偽造された際に真偽判定を行うことも可能となる。
【0015】
このように、様々なメリットを有するため、RFIDタグにOVDを組合せ、一体化したOVD一体型のRFIDラベルが既に考案されている。しかしながら、上記のようなラベルは、正規物品に貼り付けられていたものを綺麗に剥がすことが可能であり、いわゆる“使いまわし”ができるため、たとえば、該商品の偽造品に本物の商品から剥がした該OVD一体型のRFIDラベルが転用できるという偽造防止上の大きな問題があった。
【0016】
また、このラベルからICタグのみを、取り外すことも可能なことから、偽造したラベルにその取り外したICタグを貼り付けることによって、ICタグを使い回すことが容易にできてしまっていた。そのため、上記したような偽造防止機能をもつラベルを使用しても精度の高い真贋の判定が期待できない。
【0017】
そのような偽装を防止するために、被着体から非接触ICラベルを剥離しようとすると、アンテナ回路と電子部品間の電気的接続が破断するように、接続部と回路層との接着強度を弱くすることが提案されている。しかしながら、偽造防止機能をもつものの、接着強度が弱く、非接触ICラベルの信頼性の面で問題となる(特許文献1)。
【0018】
また、同様に剥離しようとするとアンテナが破断するように、アンテナ下に、剥離層を設ける提案がなされているが、非接触ICラベルが貼られた媒体への機械的な負荷により、剥離層部分から剥離し、信頼性の面でやはり問題となる(特許文献2)。
【0019】
そのような使用時の機械的な負荷による剥離を防止するために、基材部分に、ミシン目、切り込み、隙間のいずれかを設けることが提案されている。媒体使用時には機械的な強度をもつが、剥離とう行為がある時には、脆弱性を示す。しかしながら、ミシン目は基材を貫通しているため、ミシン目や切り込みが見えてしまい、デザイン的に問題となる(特許文献3)。
【0020】
材料費を低減させるために、基材レスアンテナの提案がなされている。基材がないため、被着体から非接触ICタグラベルを剥がした際に、故障するが、無理やり剥離した場合には表面保護シート及び粘着層のみが剥離され、偽造しようとしたことが分かるが、打抜きで成形されたアンテナの厚みは厚いため、慎重に剥がした際はアンテナを破壊せずに非接触ICタグの機能を保持したまま剥がすことができてしまう(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特許第3854124号公報
【特許文献2】特開2004−227273号公報
【特許文献3】特開2009−217175号公報
【特許文献4】WO2008/053702A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、以上の事情を鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、OVDとRFIDラベルの一体化において、OVDの光学的な効果による装飾性や意匠性の向上の効果と光学情報の記録の機能などを制限することがなく、また、悪意にRFIDラベルを被着体から剥がそうとした際にラベル基材が容易に破壊して再使用することができないRFIDラベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、非接触で外部装置とデータの送受信を行うRFIDラベルであって、ラベル基材上に設けられたアンテナとして機能する導電層と、前記アンテナに接合されたICチップと、更にRFIDラベルを被着体に貼付けるための接着層を配置して成るRFIDラベルにおいて、前記接着層と反対面のラベル基材上に目視で光学的な効果を呈するOVD機能層が設けられ、前記ラベル基材の厚みが5μm以上20μm以下で、かつ前記ラベル基材の、接着層と接するラベル裏面に、深さがラベル基材の厚みの3分の1以上で、かつ平面方向に300μm以下の間隔でハーフカットが形成され、前記ハーフカットのアスペクト比(深さ方向の長さ/平面方向の長さで除した値)が300/1.7以上であり、前記OVD機能層の金属薄膜層格子状に10μm以下のラインで切り込みが形成され、導電性を示さないことを特徴とする脆性RFIDラベルである。
【0025】
また、請求項に記載の発明は、前記RFIDラベルの導電層が導電性インキで設けられたことを特徴とする請求項1に記載の脆性RFIDラベルである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によるRFIDラベルによって、前記RFIDラベルを被着体から剥がす際に、ラベル基材が非常に薄く脆いために、RFIDラベルが容易に破壊される。これにより、アンテナも断線するため、RFIDラベルの情報を取り出すことをできなくすることができる。更に、ラベル基材表面に設けられたOVD機能層も破壊するため、目視でもその痕跡を確認することもでき、RFIDラベルを再利用することは不可能になり、偽造防止となる。
【0027】
また、本発明によるRFIDラベルは、深さ方向にOVD機能層と反対面に、ハーフカットを設けているので、OVD機能を劣化させることなく、脆性度を高めることができ、またラベル基材全面にハーフカットを設けることが可能である。さらに、ラベルを使い回
そうと悪意をもってはがそうとした際、目視できないため、関係者以外はハーフカットが設けられていることに気が付かず、ラベル基材を壊してしまう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明のRFIDラベルの一構成を示す断面概念図である。
図2】本発明のRFIDラベルの一構成を示す平面概念図である。
図3】本発明のRFIDラベルの一構成で、ICチップ上にかからない部分にOVD機能層を転写した状態を示す平面概念図である。
図4】本発明のOVD機能層を転写する前のRFIDラベルの一構成を示す断面概念図である。
図5】本発明のOVD転写箔の一構成を示す断面概念図である。
図6】本発明のラベル基材に施されるハーフカットを示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明のRFIDラベルAの断面概念図であり、厚さ5μm以上20μm以下のラベル基材1の片面に深さ方向にハーフカット5が設けてある。
【0030】
ラベル基材1のハーフカット5を設けた面上にアンテナ3を配置し、該アンテナ3の上にICチップ4を設ける。ここで、該アンテナ3は、該ICチップ4の電極部に接合されている。このような構成の層の上に接着層6を配置する。更に、離型シート層7を配置する。更に、ラベル基材1の反対面上にOVD機能層2を設けた構成となっている。
【0031】
図2に示すようにICチップ4は、例えば、正方形状に形成されており、その辺部の長さ寸法が0.4mm程度、高さ寸法が0.1mm程度のものである。なお、辺部の長さ寸法は、これらに限定されるものではなく、適宜なものに設定可能である。
【0032】
アンテナ3に電波が照射され、このICチップ4に電力が供給されると、ICチップ4は稼動状態となり、情報読取装置からの電波に重畳されて送られてくるタイミング信号やコマンドに合わせて、そこに記憶されている情報を情報読取装置に返送する。そして、情報読取装置はこの再放射の強度を測定することで、ICチップ4に格納されている情報を読み出す。
【0033】
RWとRFIDラベルAとの交信に使用する周波数は2.45GHz帯(2.400〜2.482MHz)および/または900MHz帯(850〜950MHz)が望ましいが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0034】
<ラベル基材1>
本発明のRFIDラベルAにおいては、ラベル基材1は厚み34の薄いフィルムを用いる。厚み34としては、5μm以上20μm以下が好ましい。材質としては、絶縁性材料であれば特に限定されるものではなく、例えばPET、PVC、ABS等を用いることができる。更にこのラベル基材1には、図1図6に示すように、深さ方向にハーフカット5を設ける。ハーフカットの大きさ32は、視認できない300μm以下で、深さ31としては、ラベル基材1厚み34の3分の1以上の深さ31が好ましく、従って、ハーフカットのアスペクト比は300:1.7以上で、深さ31方向に深いことが好ましい。
【0035】
ハーフカットの断面形状は円形に限られない。平面方向に300μm以内の間隔33で設けることが好ましく、任意の2点間の距離が最も離れても300μm以内であれば良い。
【0036】
<OVD機能層2>
OVD機能層2は転写箔としてラベル基材1のアンテナ3の反対面に設けられる。OVD転写箔の作製方法としては、一般的な方法が可能であり、例えば、図5に示すように、支持体11に剥離保護層22を塗布し、その上にエンボス加工を施したホログラム形成層23を設け、更にアルミ薄膜層24、マスク層25、接着層26を設けた構成があげられる。
【0037】
ラベル基材1上に前記OVD転写箔をのせて一定の加熱加圧をかけることでOVD機能層2を形成する。このとき、前記ICチップ4が破壊しないように、ICチップ4を接合する前に転写することが好ましい。若しくは、図3のように、ICチップ4上にかからない部分にOVD機能層2を転写することが好ましい。このようにして形成されたOVD機能層2の厚みは数μmと薄いため、ラベル基材1の破壊と同時にOVD機能層2も破壊する。
【0038】
OVD機能層2は、例えば、ラベル基材1に蒸着法によりアルミや金などの金属薄膜層24を形成し、該金属薄膜層24を加工して形成することができる。すなわち、金属薄膜層24に、ホログラムや回折格子のような光の干渉縞を微細な凹凸パターンとしてホログラム形成層23に記録する、レリーフ型や体積方向に干渉縞を記録する体積型などを用いて加工することによりOVD機能層2となる。
【0039】
<OVD機能層の非導電性>
OVD機能層2は、アンテナ3の電波通信を阻害しないように、導電性を示さないことが必要である。したがって、例えばホログラム形成層23上に金属薄膜層24を設けたOVD機能層2を作製した後に、エッチング法を用いて格子状に蒸着膜を切る方法がとられる。この場合、ホログラムの光学的機能を失わないように、10μm以下のラインで切ることが好ましい。他にも、導電性を示さない方法であれば適宜使用できる。例えば、見る角度により色の変化(カラーシフト)を生じさせる方法として、光学特性の異なるセラミックスの薄膜を多層に積層して多層薄膜構造とさせる方法を用いることもできる。
【0040】
<アンテナ3>
アンテナ3の形成方法としては、導電性ペーストを印刷によってパターン状に塗布して形成する方法などを用いることができる。該導電性ペーストの導電性材料としては、銀系が好ましい。例としては、バインダーとしての樹脂と溶剤と微細な銀粒子を含む銀ペーストなどがあげられる。
【0041】
前記銀ペーストは、例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などの印刷方法で印刷してパターン形成することができる。その後、加熱して、溶剤を蒸発させることで塗膜が形成される。この塗膜に含まれる銀粒子間の接触により、導体としての機能をもつ。これによりアンテナ3を形成することができるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0042】
また、導電性のインクをインクジェットプリンタでプリントしてもよい。これにより、アンテナ3の厚みを薄く均一に形成でき、よりアンテナ3を破断しやすい構造とすることができる。更に、RFIDラベルA全体の厚さをより薄く平滑とすることができる。
【0043】
アンテナ3はICチップ4の接続端子と接続される。接合部分は、ACP(Anisotropic Conductive Paste:異方導電性ペースト)やACF(Anisotropic Conductive Film:異方導電性フィルム)などのような異方性導電材料や、NCP(Non−Conductive Paste)やNCF(Non−Conductive Film)などのような接合用の材料などを適宜選
択して用いることができる。また、超音波などにより、直接接合してもよい。
【0044】
なお、ラベル基材1は非常に薄く脆いため、図4に示すOVD機能層2を転写する前のRFIDラベルBのように、仮接着層12を塗布した厚みのある支持体11で仮に補強してアンテナ印刷、ICチップ4の実装加工を行うこともできる。この場合、支持体11を剥がしながら、後述するOVD機能層2を転写する。
【0045】
図4に示すアンテナ3を具備するOVD機能層を転写する前のRFIDラベルBは、図示しない情報読取装置からの電波をこのアンテナによって受け、その長手方向に生じる電位差をICチップに供給するようになっている。
【0046】
アンテナ3の配線パターンは、例えば図5のように、アンテナ3をS字状に連ねたような形に屈曲させ、又は蛇行させるメアンダ状に形成されている。この配線パターンは、前記ICチップ4の端子に対応して、必要に応じてデザインし配置してよいが、後述するように被着体からラベルを剥がそうとした際に、アンテナ3が断線しやすいように、複雑な形状が好ましい。
【0047】
<ハーフカット5>
ハーフカット5の方法としては、一般的な方法が可能であり、例えば、抜き刃や針を用いた加工やレザー光などを用いた加工で形成することができる。また、このハーフカット5は後述するアンテナ3に重ならないように設けることが好ましい。これにより、アンテナ3の表面性を荒らすことないため、通信特性を阻害することなくラベル基材2の脆弱性を高めることができる。
【0048】
ハーフカット5はラベル基材に対して厚みの3分の1以上の深さで、かつ平面方向に300μm以下の間隔で設けることで適度な脆性が得られる。ここで、OVD機能層2はラベル基材1上のハーフカット5とは反対面に設ける。接着層と接するラベル裏面に設けることにより、OVD機能層2の光学的な効果を妨げることなく、かつラベル基材1の脆弱性を高めることができる。
【0049】
<接着層6>
接着層6の材料としては、アクリル系の熱接着剤、ホットメルト樹脂(例えば、ポリアミド、ウレタン、EVA等)、あるいは粘着剤等などを用いることができるが、本発明はこれに限定されるわけではない。また、接着層6の表面には、容易に剥離できるような離型シート7が仮粘着されている。
【0050】
<離型シート7>
離型シート7としては、紙製又はプラスチック製のシートにシリコン樹脂などの離型剤層がコーティングなどによって積層されているセパレータを用いることができる。
【0051】
<隠蔽層8>
なお、ラベル基材1が透明の場合には、前記アンテナ3が表面から見えないように、隠蔽層8を設けることも可能であり、導電性を示さない有機高分子樹脂が適用される。例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂や、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加、架橋したウレタン樹脂や、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等の熱硬化樹脂、エポキシ(メタ)アクリル、ウレタン(メタ)アクリレート等の電離放射線(紫外線あるいは電子線)硬化樹脂を、単独もしくはこれらを複合して使用できる。
【0052】
このようにして、図1に示すように、薄く脆くなるような加工がされたラベル基材1の上にアンテナ3を印刷し、更に逆面にOVD機能層2を転写箔を用いて形成することで、被着体からRFIDラベルAを剥がそうとした際に、ラベル基材1が確実に破壊するので、同時にアンテナ3まで断線させることができ、RFIDラベルAの破壊や剥離を試みようとした履歴を残すことが可能となる。更に、OVD機能層2も破壊するためその痕跡を目視でも確認することができ、RFIDラベルAを使いまわすことはできない。
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
【実施例】
【0053】
OVD転写箔の作製は、図5に示すように、厚み25μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムから成る支持体11に下記の剥離性保護層22、下記のホログラム形成層23をグラビア法にて各々1μm塗布し、次いで、ロールエンボス法によりホログラムレリーフパターンを形成した。その後、細かい格子状にマスクインキを用いて1μm印刷した後に真空蒸着法を用いて膜厚0.05μmのアルミからなる金属薄膜層24を設け、アルカリエッチング法を用いて導電性を示さないOVD転写箔Cを作製した。
【0054】
剥離保護層の実施組成を以下に示す。
【0055】
アクリル 10重量部
ポリエチレンWAX 0.1重量部
MEK(メチルエチルケトン) 59.9重量部
トルエン 30重量部
OVD形成層の実施組成を以下に示す。
【0056】
ウレタン樹脂 25重量部
MEK 50重量部
トルエン 25重量部
接着層の実施組成を以下に示す。
【0057】
塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体 15重量部
アクリル樹脂 5重量部
酢酸エチル 50重量部
酢酸ブチル 30重量部
RFIDタグの形成は50μmの厚さのPETフィルム(支持体)と15μm厚さのPETフィルム(ラベル基材1)を軽粘着で貼り合せたフィルムに、レザー光を用いて、直径200μm、深さ方向7.5μm、平面方向200μmピッチになるようにハーフカットを施した。次に、被着体と同色のエポキシ樹脂ベースのインキをラベル基材のハーフカットを施した面側に、スクリーン印刷にて全面塗布し、乾燥を行って3μm厚みの隠蔽層を設けた。
【0058】
隠蔽層の実施組成を以下に示す。
【0059】
塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体 15重量部
酢酸エチル 55重量部
酢酸ブチル 30重量部
前述のラベル基材の隠蔽層側に、エボキシ樹脂に銀粉を分散させた導電性ペーストをスクリーン印刷(350メッシュ)にて印刷し、70℃3分温風乾燥機にて乾燥を行って5μm厚みのアンテナを得た。このアンテナに、0.4mm角の大きさであるICチップの2つの端子をACP(異方導電性ペースト)により接合した。
【0060】
導電性インキの実施組成を以下に示す。
【0061】
銀ペースト 30重量部
ポリエステル樹脂 5重両部
酢酸エチル 45重量部
酢酸ブチル 20重量部
次に、離型シート7は、クラフト紙の片面にポリエチレンをラミネートし、その上にシリコン処理を施して離型シート7とした。厚みは112μmであり、アクリル系の粘着剤を塗布し、これを上記RFIDを形成したラベル基材1に転写することで接着層6を設け、図4に示すOVD機能層を転写する前のRFIDラベルBを作製した。
【0062】
OVD機能層2の転写は、上記RFIDタグBを形成したラベル基材1の接着層6と反対面に、50μm厚みのPETフィルム(支持体)を剥がしながら、前記OVD転写箔Cを加熱加圧をかけて転写しOVD機能層2を形成することで、図1のような、光学機能付きRFIDラベルAを作製した。なお、転写条件は温度160℃、速度5m/min.である。得られたRFIDラベルAは、ICリーダライタ装置で読み取りが可能であった。
【0063】
以下に、本発明の比較例について説明する。
【0064】
<比較例>
50μm厚みのPETフィルムの上に、アルミニウム薄膜のアンテナをエッチングにて形成し、RFID用のICチップ4を実装してRFIDインレットを得た。その面に接着層を設けてRFIDラベルDを作製した。
【0065】
このようにして作製したRFIDラベルA、Dを商品が内蔵されたボックスに貼り付けた。その後、このラベルを被着体から慎重に剥がした。
【0066】
実施例1のRFIDラベルAでは、被着体から剥がした際にラベル基材1が脆いために簡単に裂けるように壊れて、基材表面のOVD機能層2であるホログラムも破壊した。同時に導電性インキで形成されたアンテナ3も断線して通信機能を不可能にすることができた。
【0067】
それに対し、比較例のRFIDラベルDを被着体から剥がしたところ、ラベル基材1が綺麗に剥がすことができ、RFIDインレットの通信も可能であった。
【符号の説明】
【0068】
A・・・RFIDラベル
B・・・OVD機能層を転写する前のRFIDラベル
C・・・OVD転写箔
1・・・ラベル基材
2・・・OVD機能層
3・・・アンテナ
4・・・ICチップ
5・・・ハーフカット
6・・・接着層
7・・・離型シート
8・・・隠蔽層
11・・・支持体
12・・・仮接着層
22・・・剥離保護層
23・・・ホログラム形成層
24・・・金属薄膜層
25・・・マスク層
26・・・接着層
31・・・深さ
32・・・大きさ
33・・・間隔
34・・・厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6