特許第5862057号(P5862057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5862057
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】コンバインの原動部構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20160202BHJP
   A01D 41/12 20060101ALI20160202BHJP
   F01P 11/12 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   B60K11/04 B
   A01D41/12 E
   B60K11/04 D
   F01P11/12 G
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-122323(P2011-122323)
(22)【出願日】2011年5月31日
(65)【公開番号】特開2012-250557(P2012-250557A)
(43)【公開日】2012年12月20日
【審査請求日】2014年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大崎 正美
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−156938(JP,A)
【文献】 特開2011−030533(JP,A)
【文献】 特開2010−188949(JP,A)
【文献】 特開2001−263063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
A01D 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(45)を備えた機体フレーム(46)の前方に刈取装置(40)を設け、機体フレーム(46)の上部一側には脱穀装置(41)を設け、機体フレーム(46)の上部他側には操縦部(42)を設け、該操縦部(42)の後側には貯留装置(43)を設け、該貯留装置(43)の前側下部にエンジン(1)を設けたコンバインの原動部構造であって、前記エンジン(1)の前側に設けられた操縦部(42)の下方にメインラジエータ(6)を配置すると共に、エンジン(1)の機体外側の位置には、前記メインラジエータ(6)よりも容量の小さいサブラジエータ(4)を配置し、前記メインラジエータ(6)の内側に正逆回転に切換可能なメインファン(7)を設け、該メインファン(7)を油圧変速装置(9)の出力軸(8)に固定し、該油圧変速装置(9)を支持フレーム(26)によって機体フレーム(46)に支持すると共に、前記メインファン(7)の外周を覆うシュラウド(24)を支持脚(24b)によって機体フレーム(46)側に固定し、前記出力軸(8)が内部に軸受けされた筒体(8a)を、前記シュラウド(24)から機体内側へ延出する支持杆(24a)によって支持し、前記メインファン(7)の逆転駆動で内気を吹き出してメインラジエータ(6)とその外側に設けるメインフィルタ(12)の除塵を行なう構成とし、前記サブラジエータ(4)とエンジン(1)の間には、前記エンジン(1)の出力軸から電磁クラッチ(2)を介して駆動されると共に駆動・停止切換可能なサブファン(3)を設け、該サブファン(3)の停止によって外気の吸入が停止することで、サブラジエータ(4)の外側に設けるサブフィルタ(5)にされていた塵埃落下る構成としたことを特徴とするコンバインの原動部構造。
【請求項2】
前記メインファン(7)の正転駆動による外気の吸入とサブファン(3)の駆動と同期さると共に、メインファン(7)の逆転による内気の吹き出しとサブファン(3)の停止と所定時間毎に繰り返される構成とした請求項1に記載のコンバインの原動部構造。
【請求項3】
前記メインラジエータ(6)或いはサブラジエータ(4)に冷却水の温度を検出するラジエータ水温センサ(21)を設け、該ラジエータ水温センサ(21)で検出される冷却水の温度が所定温度以上の場合にメインファン(7)の正転駆動速度増速される構成とした請求項1に記載のコンバインの原動部構造。
【請求項4】
前記メインラジエータ(6)或いはサブラジエータ(4)に冷却水の温度を検出するラジエータ水温センサ(21)を設け、該ラジエータ水温センサ(21)で検出される冷却水の温度が所定温度以下の場合に前記サブファン(3)が停止され、このサブファン(3)の停止によっても冷却水の温度が所定温度以下にある場合には、前記メインファン(7)の正転回転速度が所定回転速度以下に減速される構成とした請求項1に記載のコンバインの原動部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの原動部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、ラジエータ用の冷却ファンを正転状態と逆転状態とに切換可能にして逆回転で空気を吹き出して、ラジエータ外側のフィルタ(防塵網)に付着する塵埃を取り除く技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−263063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、ラジエータによるエンジン冷却能力が小さいうえに、ラジエータ外側のフィルタに吸着された塵埃を十分に除去することができない。
【0005】
本発明は、メインラジエータとサブラジエータの二個のラジエータを冷却する構成とし、人手によるフィルタの掃除頻度を少なくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、走行装置(45)を備えた機体フレーム(46)の前方に刈取装置(40)を設け、機体フレーム(46)の上部一側には脱穀装置(41)を設け、機体フレーム(46)の上部他側には操縦部(42)を設け、該操縦部(42)の後側には貯留装置(43)を設け、該貯留装置(43)の前側下部にエンジン(1)を設けたコンバインの原動部構造であって、前記エンジン(1)の前側に設けられた操縦部(42)の下方にメインラジエータ(6)を配置すると共に、エンジン(1)の機体外側の位置には、前記メインラジエータ(6)よりも容量の小さいサブラジエータ(4)を配置し、前記メインラジエータ(6)の内側に正逆回転に切換可能なメインファン(7)を設け、該メインファン(7)を油圧変速装置(9)の出力軸(8)に固定し、該油圧変速装置(9)を支持フレーム(26)によって機体フレーム(46)に支持すると共に、前記メインファン(7)の外周を覆うシュラウド(24)を支持脚(24b)によって機体フレーム(46)側に固定し、前記出力軸(8)が内部に軸受けされた筒体(8a)を、前記シュラウド(24)から機体内側へ延出する支持杆(24a)によって支持し、前記メインファン(7)の逆転駆動で内気を吹き出してメインラジエータ(6)とその外側に設けるメインフィルタ(12)の除塵を行なう構成とし、前記サブラジエータ(4)とエンジン(1)の間には、前記エンジン(1)の出力軸から電磁クラッチ(2)を介して駆動されると共に駆動・停止切換可能なサブファン(3)を設け、該サブファン(3)の停止によって外気の吸入が停止することで、サブラジエータ(4)の外側に設けるサブフィルタ(5)にされていた塵埃落下る構成としたことを特徴とするコンバインの原動部構造とする。
【0007】
この構成で、メインファン(7)を逆回転してメインラジエータ(6)とメインフィルタ(12)に付着する塵埃を機外へ吹き飛ばすと共に、サブファン(3)の回転を停止してサブフィルタ(5)に吸着された塵埃を落下させる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記メインファン(7)の正転駆動による外気の吸入とサブファン(3)の駆動と同期さると共に、メインファン(7)の逆転による内気の吹き出しとサブファン(3)の停止と所定時間毎に繰り返される構成とした請求項1に記載のコンバインの原動部構造とする。
【0009】
この構成で、メインファン(7)の正転駆動による外気の吸入によってメインラジエータ(6)を空冷すると共にサブファン(3)の駆動による外気の吸入によってサブラジエータ(4)を冷却する一方、メインファン(7)の逆転駆動による内気の吹き出しによってメインラジエータ(6)及びメインフィルタ(12)に付着する塵埃を吹き飛ばし、サブファン(3)の駆動停止によって外気の吸入を停止してサブラジエータ(4)の塵埃を落下して、メインラジエータ(6)とサブラジエータ(4)の人手による除塵作業の頻度を少なく出来る。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記メインラジエータ(6)或いはサブラジエータ(4)に冷却水の温度を検出するラジエータ水温センサ(21)を設け、該ラジエータ水温センサ(21)で検出される冷却水の温度が所定温度以上の場合にメインファン(7)の正転駆動速度増速される構成とした請求項1に記載のコンバインの原動部構造とする。
【0011】
この構成で、冷却水温度が所定高温以上になるとメインファン(7)の増速で空冷効果を強くして早く安定した冷却水温度に戻す。
請求項4に記載の発明は、前記メインラジエータ(6)或いはサブラジエータ(4)に冷却水の温度を検出するラジエータ水温センサ(21)を設け、該ラジエータ水温センサ(21)で検出される冷却水の温度が所定温度以下の場合に前記サブファン(3)が停止され、このサブファン(3)の停止によっても冷却水の温度が所定温度以下にある場合には、前記メインファン(7)の正転回転速度が所定回転速度以下に減速される構成とした請求項1に記載のコンバインの原動部構造とする。
【0012】
この構成で、冷却水温度が低い場合にサブラジエータ(4)の空冷を行わないことで、早く安定した冷却水温度に上昇させる。
【0013】
更に、冷却水温度が低い場合にメインラジエータ(6)の空冷効果を弱めて、早く安定した冷却水温度に上昇させる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1ないし請求項2に記載の発明によれば、メインラジエータ(6)とサブラジエータ(4)の人手による除塵作業の頻度を少なく出来る。
請求項3ないし請求項に記載の発明によれば、上記請求項1に記載の発明の効果に加え、メインラジエータ(6)とサブラジエータ(4)の冷却水温度を早く適正な温度にしてエンジン(1)の回転を安定して維持することができる。
特に請求項4に記載の発明によれば、ラジエータ水温センサ(21)で検出される冷却水の温度が所定温度以下の場合に、サブファン(3)を停止し、このサブファン(3)の停止によっても冷却水の温度が所定温度以下にある場合には、メインファン(7)の正転駆動速度を所定回転速度以下に減速することで、騒音の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】要部の平面図である。
図2】要部の側面図である。
図3】制御ブロック図である。
図4】要部の正面図である。
図5】要部の側面図である。
図6】コンバインの平面図である。
図7】コンバインの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
図6及び図7にはコンバインの全体図を示す。機体フレーム46の下側に走行装置45を設け、機体フレーム46の前方には穀稈を刈取る刈取装置40を設けている。そして、機体フレーム46の上部一側には脱穀装置41、他側には前側の操縦部42と後側の貯留装置43を設けている。操縦部42の下方にはメインラジエータ6等を収納し、外則面にはメインラジエータカバー23を備える。また、貯留装置43の前側下部は、エンジン1を収納している。
【0017】
図1に本発明実施例の原動部の平面図を示し、図2に側面図を示す。図1の上側が機体の内部で下側が機体の外側になる。
エンジン1の側部に容量の小さいサブラジエータ4を設け、このサブラジエータ4のエンジン1側にエンジン1の出力軸から電磁クラッチ2を介して設けたサブファン3を駆動し、サブラジエータの外側をサブフィルタ5を設けたサブラジエータカバー22で覆っている。
【0018】
エンジン1の前方に容量の大きなメインラジエータ6を設け、このメインラジエータ6の内部側にメインファン7を設け、メインラジエータ6の外側をメインフィルタ12を設けたメインラジエータカバー23で覆っている。メインファン7は、油圧変速装置9の出力軸8に固着し、エンジン1からの駆動回転を油圧変速装置9により変速することで正転から逆転に亘って回転速度を変更可能に構成している。
【0019】
具体的には、エンジン1からの回転駆動力が入力される中継プーリ25から、ベルト26を介して油圧変速装置9の入力軸10に固着した入力プーリ11に駆動力を伝達し、油圧変速装置9によって変速された回転が出力軸8から出力される。そして、出力軸8は、継手によってファン駆動軸28と連結されており、出力軸8とファン駆動軸28とは一体回転する。そして、油圧変速装置9はトラニオン軸27を回転させることにより、ポンプ斜板(不図示)の傾斜角度が変化し、入力回転に対して出力回転が変速される構成である。
【0020】
次に、トラニオン軸27を回転させるための変速機構について説明する。
このトラニオン軸27は、変速用モータ29により回転させる。変速用モータ29の出力回転は、ギアボックス30に内装したウォームギアとピニオンギアによりピニオン軸31に伝達され、このピニオン軸31のフランジ部31aと圧縮スプリング32とに挟まれた伝達ギア33が、圧縮スプリング32の押圧力によりピニオン軸31と一体回転する。そして、前記トラニオン軸と一体の扇形ギア34がトラニオン軸27と一体回転し、油圧変速装置9の出力回転が変速される。
【0021】
油圧変速装置9は、支持フレーム26によって機体フレーム46に支持している。
また、メインラジエータの内側にはファンの外周を覆うシュラウド24を設けており、このシュラウド24は機体フレーム46側に支持脚24bによって固定している。
【0022】
そして、前記出力軸8は、中空の筒体8aの内部に軸受けし、筒体8aは前記シュラウド24から内側へ延出した支持杆24aによって支持されている。
エンジン1を循環する冷却水は、エンジン排水管18からサブ流入管13とメイン流入管14に分岐して、それぞれサブラジエータ4とメインラジエータに流入し、サブラジエータ4とメインラジエータで冷却された冷却水がサブ流出管15とメイン流出管16からエンジン流入管17に合流してエンジン1内に流入する。
【0023】
図3は、電磁クラッチ2と油圧変速装置9の制御ブロック図で、コンバイン機体の外気温度を検出する外気温センサ20から外気温度が制御装置18に入力し、メインラジエータ6の水温がラジエータ水温センサ21からメインラジエータ6の冷却水の温度が制御装置18に入力する。
【0024】
制御装置18からは、電磁クラッチ2にオン・オフ制御信号が出力し、油圧変速装置9を変速するトラニオン駆動モータ19に変速制御信号が出力する。
電磁クラッチ2と油圧変速装置9の制御は、例えば、メインファン7を正転して外気を吸入してメインラジエータ6を冷却する際に電磁クラッチ2をオフにしてサブファン3を駆動してサブラジエータ4を冷却し、メインファン7を所定時間毎に逆回転して内気を吹き出してメインラジエータ6やサブラジエータカバー5に付着する塵埃を吹き落とす際に電磁クラッチ2をオンしてサブファン3を停止する。この制御で、メインファン7を逆回転した際にメインラジエータ6の塵埃が吹き飛ばされて冷却効率を良くし、サブラジエータカバー5に付着する藁屑が落下するので、メインラジエータ6やサブラジエータの掃除頻度を少なく出来る。
【0025】
なお、メインファン7の逆回転とサブファン3の停止のタイミングをずらすか、メインファン7の逆回転で上昇した冷却水の温度が平常温度に戻ったことをラジエータ水温センサ21で検出してサブファン3を停止することで、冷却水温度の急激な上昇を防ぐことが出来る。
【0026】
また、サブファン3は、一定時間ごとに駆動と停止を繰り返すようにしても良い。
さらに、外気温センサ20が検出する外気温度が一定以下の場合及びラジエータ水温センサ21が一定以下の場合には、サブファン3を停止してメインファン7の回転を低下させて、騒音の低減を図る。
【0027】
また、サブファン3を停止しても冷却水の温度が一定以下の場合には、メインファン7の回転速度を一定以下に低下するようにしてエンジン負荷の低下と騒音の低減を図る。
ラジエータ水温センサ21の冷却水温度が一定以上になるとメインファン7の回転を所定の回転数まで上昇させ、それでも冷却水の温度が上昇すればサブファン3を駆動するようにする。
【0028】
また、収穫する作物によってメインファン7の所定回転数を変更する作物モードスイッチを設け、収穫負荷が小さい作物の場合にメインファン7の回転数を低くするようにしても良い。この場合に、外気温の要素も考慮してメインファン7の回転数を変更する。
【0029】
さらに、外気温センサ20の検出する外気温とラジエータ水温センサ21の検出する冷却水温度によってメインファン7の回転数を変更するようにしても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 エンジン
電磁クラッチ
3 サブファン
4 サブラジエータ
5 サブフィルタ
6 メインラジエータ
7 メインファン
出力軸
8a 筒体
油圧変速装置
12 メインフィルタ
21 ラジエータ水温センサ
24 シュラウド
24a 支持杆
24b 支持脚
26 支持フレーム
40 刈取装置
41 脱穀装置
42 操縦部
43 貯留装置
45 走行装置
46 機体フレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7