(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5862092
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02B 23/06 20060101AFI20160202BHJP
F02F 3/28 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
F02B23/06 R
F02B23/06 S
F02F3/28 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-164395(P2011-164395)
(22)【出願日】2011年7月27日
(65)【公開番号】特開2013-29043(P2013-29043A)
(43)【公開日】2013年2月7日
【審査請求日】2014年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩高
【審査官】
稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−144766(JP,A)
【文献】
特開2000−027652(JP,A)
【文献】
実開昭53−128402(JP,U)
【文献】
特開2011−026965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 23/00−23/10
F02F 3/00−3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの開口部を備えた燃料噴射ノズルと、冠面に凹状のキャビティを形成したピストンを有する内燃機関において、
前記ピストンが、前記キャビティ内に形成した溝を有し、
前記溝が、前記燃料噴射ノズルから噴射される燃料噴霧の到達部位に設けられるとともに、燃料噴射軸方向に対して前記ピストンの周方向に傾けて形成された斜行溝であり、
前記斜行溝が、前記ピストンの中心に近い円周上に形成された内溝と、前記ピストンの外周に近い円周上に形成された外溝を有しており、
前記内溝の前記燃料噴射軸方向に対する傾斜の方向と、前記外溝の前記燃料噴射軸方向に対する傾斜の方向が、前記ピストンの周方向で逆向きになるように形成したことを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
少なくとも1つの開口部を備えた燃料噴射ノズルと、冠面に凹状のキャビティを形成したピストンを有する内燃機関において、
前記ピストンが、前記キャビティ内に形成した溝を有し、
前記溝が、前記燃料噴射ノズルから噴射される燃料噴霧の到達部位に設けられるとともに、燃料噴射軸方向に対して前記ピストンの周方向に傾けて形成された斜行溝であり、
前記斜行溝は、前記燃料噴射軸上に設けられていることを特徴とする内燃機関。
【請求項3】
前記斜行溝を、前記キャビティの側面に形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室に燃料を直接噴射する内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、燃焼効率の向上及び低燃費化の要求から、燃焼室内に燃料を直接噴射する直接噴射式の内燃機関の開発が進められている。この直接噴射式の内燃機関は、具体的には、ピストンとシリンダヘッドで形成した空間(以下、燃焼室という)に、燃料を噴霧する構成を有している(例えば特許文献1参照)。この内燃機関には、ディーゼルエンジンや、ガソリンエンジン等がある。以下、ディーゼルエンジンを例に説明する。
【0003】
図5に、ディーゼルエンジン1Xのピストン2X周辺の断面を示す。ディーゼルエンジン1Xは、円筒形のピストン2Xと、燃料を霧状に噴射する燃料噴射ノズル4と、シリンダライナ8を有している。ピストン2Xは、ピストン2Xの冠面(上面)6を刳り貫いて形成したキャビティ5X(例えばリエントラント型)と、ピストンリング9を有している。このキャビティ5Xは、側面13Xと底面14Xを有している。
【0004】
なお、一点鎖線Cはピストン2Xの中心軸Cを示し、破線Lは燃料噴射ノズル4から噴射される燃料の中心方向(以下、燃料噴射軸Lという)を示している。また、破線で囲まれた領域7は、ピストン2Xの冠面6の上方のスキッシュエリア7を示している。このスキッシュエリア7とキャビティ5Xをあわせた空間を、燃焼室と呼ぶ。更に、x軸及びz軸は、図面における三次元座標の一部を示している。
【0005】
次に、ディーゼルエンジン1Xにおける燃料噴射について説明する。ディーゼルエンジン1Xは、ピストン2Xが上死点に対して接近又は離間する際に、燃料噴射ノズル4から燃料を筒内(キャビティ5X内)に直接噴射する。噴射された燃料は、キャビティ5X内の空気と混合され、圧縮されて着火に至る。そのため、直噴ディーゼル燃焼においては、火炎の発生位置及び挙動が、燃焼室の形状や燃料の噴射方向に依存する。ディーゼルエンジン1Xにおいて、燃料と空気の混合を促進することは、燃料の燃焼効率を高め、燃費を向上し、排気ガスの清浄化(排ガス性能の向上)にも大きく貢献する。特に、近年では噴射圧力の高圧化(例えば200MPa以上)によって、燃料の蒸発及び空気との混合の促進を図っている。なお、噴射圧力の高圧化により、燃料噴射速度も増加している。
【0006】
しかしながら、上記のディーゼルエンジン1Xはいくつかの問題点を有している。第1に、噴射圧力の高圧化により、未燃燃料が増加するという問題を有している。この問題について、
図6を参照しながら説明する。
図6は、浅皿型のキャビティ5Xの断面を示している。まず、燃料噴射ノズル4から燃料噴射軸Lに沿って高圧噴射された燃料gx(矢印参照)が、十分に蒸発する前に側面13Xに衝突する。この側面13Xに衝突した燃料は、スキッシュエリア7及びシリンダライナ8に到達するが、燃焼に至らない場合がある。この場合には、未燃燃料であるHC(炭化水素)が増加し、燃費性能が低下してしまう。
【0007】
第2に、エンジンオイルの希釈が発生するという問題を有している。これは、未燃燃料が、シリンダライナ8を伝って落下し、エンジンオイルに混ざるために発生する。このエンジンオイルの希釈は、エンジン性能の低下を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−190217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、ディーゼルエンジン及びガソリンエンジン等の内燃機関において、未燃燃料の発生を抑制し、且つエンジンオイルの希釈を抑制できる内燃機関を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明に係る内燃機関は、少なくとも1つの開口部を備えた燃料噴射ノズルと、冠面に凹状のキャビティを形成したピストンを有する内燃機関にお
いて、前記ピストンが、前記キャビティ内に形成した溝を有し、前記溝が、前記燃料噴射ノズルから噴射される燃料噴霧の到達部位に設けられるとともに、燃料噴射軸方向に対して前記ピストンの周方向に傾けて形成された斜行溝で
あり、前記斜行溝が、前記ピストンの中心に近い円周上に形成された内溝と、前記ピストンの外周に近い円周上に形成された外溝を有しており、前記内溝の前記燃料噴射軸方向に対する傾斜の方向と、前記外溝の前記燃料噴射軸方向に対する傾斜の方向が、前記ピストンの周方向で逆向きになるように形成したことを特徴とする。
【0011】
この構成により、噴射された燃料の進行方向が斜行溝で変更させられるため、燃料噴霧と空気の混合が進み、空気の利用効率を高めることができる。このため、熱効率及び燃焼効率を向上することができる。また、未燃燃料の発生を抑制し、排ガス性能を向上することができ、更に、エンジンオイルの希釈を抑制することができる。
また、この構成により、燃料噴霧と空気の混合を促進し、空気の利用効率を更に高めることができる。
【0012】
上記の目的を達成するための本発明に係る内燃機関は、少なくとも1つの開口部を備えた燃料噴射ノズルと、冠面に凹状のキャビティを形成したピストンを有する内燃機関において、前記ピストンが、前記キャビティ内に形成した溝を有し、前記溝が、前記燃料噴射ノズルから噴射される燃料噴霧の到達部位に設けられるとともに、燃料噴射軸方向に対して前記ピストンの周方向に傾けて形成された斜行溝であり、前記斜行溝は、前記燃料噴射軸上に設けられていることを特徴とする。
【0013】
上記の内燃機関において、前記
斜行溝を、前記キャビティの側面に形成したことを特徴とする。この構成により、前述と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る内燃機関によれば、ディーゼルエンジン及びガソリンエンジンをはじめとする内燃機関において、未燃燃料の発生を抑制し、且つエンジンオイルの希釈を抑制できる内燃機関を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る実施の形態の内燃機関のピストンの概略を示した図である。
【
図2】本発明に係る実施の形態の内燃機関において燃料が拡散する様子を示した図である。
【
図3】本発明に係る実施の形態の内燃機関において燃料が拡散する様子を示した図である。
【
図4】本発明に係る実施の形態の内燃機関のピストンの概略を示した図である。
【
図5】従来の内燃機関のピストンの断面を示した図である。
【
図6】従来の他の内燃機関のピストンの断面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態の内燃機関について説明する。
図1に、この内燃機関1のピストン2の平面拡大図を示す。ピストン2は、ピストン2の冠面6を刳り貫いて形成したキャビティ5と、燃料噴射軸L上であり且つピストン2の中心に近い円周上に形成された複数の内溝10aと、燃料噴射軸L上であり且つピストン2の外周に近い円周上に形成された複数の外溝10bを有している。
【0017】
この内溝10a及び外溝10b(以下、総称して溝10又は斜行溝10という)は、キャビティ5の側面13又は底面14を削って形成されている。また、この斜行溝10は、燃料噴射ノズル4から噴射された燃料の到達部位に設けられるとともに、燃料噴射軸Lに対して周方向に傾けて形成された斜行溝として形成される。また、内溝10aと外溝10bは、ピストン2の周方向において、逆方向となるように斜行している。ここで、斜行溝10は、複数の燃料噴射軸Lにそれぞれ対応する位置に形成している。つまり、
図1では、8方向に伸びる燃料噴射軸Lに対して、8組の内溝10a及び8組の外溝10bを配置している。なお、燃料噴射軸L上であっても、斜行溝を形成しない場所があってもよい。ここで、x軸及びy軸は、図面における三次元座標の一部を示している。
【0018】
次に、斜行溝10(内溝10a及び外溝10b)の働きについて説明する。
図2に、燃料噴射ノズル4から高圧噴射された燃料gが、内溝10aに衝突した際の様子を示す。内溝10aに衝突した燃料g1は、進行方向をピストン2の周方向(反時計回り)に曲げられ、キャビティ5内に拡散する。
【0019】
図3に、ピストン2が降下し、燃料噴射ノズル4から高圧噴射された燃料gが、外溝10bに衝突した際の様子を示す。外溝10bに衝突した燃料g2は、進行方向をピストン2の周方向(時計回り)に曲げられ、キャビティ5内に拡散する。
【0020】
図4に、
図2及び
図3に対応する断面図を示す。
図4のピストン位置が上の図が
図2に対応し、
図4のピストン位置が下の図が
図3に対応している。キャビティ5は、側面13に内溝10a及び外溝10bを有している。ピストン2の降下とともに、燃料噴射軸Lに沿って噴射された燃料の到達部位が、内溝10aから外溝10bに変化する。ここで、dはピストン2の移動距離dを示している。
【0021】
なお、
図4において内溝10a及び外溝10bを、キャビティ5の側面13に形成しているが、本発明はこの構成に限定されない。ピストン2の半径方向における斜行溝10の位置は、ピストン2の上下動のタイミング、燃料噴射のタイミング、及び燃料噴射軸Lの鉛直方向における傾き等から決定することができる。例えば、キャビティ5の底面14に内溝10a及び外溝10bを形成する場合や、底面14に内溝10aを形成し、側面13に外溝10bを形成する場合等が考えられる。
【0022】
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、未燃燃料の発生を抑制することができる。また、噴射ノズル4から噴射された燃料の進行方向を斜行溝で変えられるため、燃料噴霧と空気の混合が進み、空気の利用効率を高めることができる。この空気利用率の向上により、熱効率及び燃焼効率の向上を実現することができる。更に、未燃燃料(HC)の発生を抑制することができるため、排ガス性能の向上を実現することができる。
【0023】
第2に、エンジンオイルの希釈を抑制することができる。これは、燃料噴霧がキャビティ5から飛び出し、スキッシュエリア7やシリンダライナ8へ到達することを抑制できるためである(
図5参照)。
【0024】
なお、
図1のピストン2は内溝10a及び外溝10bの2段の斜行溝を有しているが、内溝10a又は外溝10bの1段の斜行溝としてもよい。この場合は、噴射ノズル4から噴射された燃料の進行方向は、直進方向と、周方向への予め定めた角度だけ傾斜した方向の2方向に進む。また、斜行溝10は、3段以上(例えば内溝、中溝、外溝)としてもよい。この場合は、燃料噴射軸L上で隣接する斜行溝は、それぞれ周方向に対して逆方向となるように傾斜して設けられる。この構成により、ピストン2の位置(鉛直方向zの位置
)により、燃料噴霧の進行方向が刻々と変化するため、燃料と空気の混合を更に促進することができる。
【0025】
更に、同一の燃料噴射軸L上に形成した内溝10aと外溝10b等を連結して、連続した屈曲溝としてもよい。この構成により、見かけ上、噴射ノズル4をピストン2の周方向に動かしながら燃料を噴射した状態と同様とすることができる。そのため、更に燃料と空気の混合を効率的に行うことができる。
【0026】
加えて、本発明は、ガソリンエンジンにも適用することができる。また、
図1乃至4に示すキャビティ5は、浅皿型と呼ばれる形状のものを例示しているが、本発明は他の形状であっても同様の作用効果を得ることができる。具体的には、リエントラント型、トロイダル型、皿型、M型が挙げられる。
【符号の説明】
【0027】
1 内燃機関(ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン)
2 ピストン
4 燃料噴射ノズル
5 キャビティ
6 (ピストンの)冠面
10 溝、斜行溝
10a 内溝
10b 外溝
13 (キャビティの)側面
14 (キャビティの)底面
L 燃料噴射軸
g、g1、g2 燃料、燃料噴霧