特許第5862100号(P5862100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5862100-ソレノイド 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5862100
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】ソレノイド
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20160202BHJP
   H01F 7/16 20060101ALI20160202BHJP
   H01F 7/06 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   F16K31/06 305C
   F16K31/06 305D
   H01F7/16 D
   H01F7/16 E
   H01F7/16 R
   H01F7/06 K
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-172713(P2011-172713)
(22)【出願日】2011年8月8日
(65)【公開番号】特開2013-36529(P2013-36529A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2014年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(72)【発明者】
【氏名】市原 哲也
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−343086(JP,A)
【文献】 特開2003−074732(JP,A)
【文献】 米国特許第06198369(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
H01F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一軸方向に軸部と前記軸部の外径より大きな外径を有する本体部とを有するプランジャと、
前記本体部が内周面の摺動面で摺動可能であり、少なくとも前記摺動面に対応して設けられた第1外径部及び当該第1外径部より小さい外径で前記摺動面から離れて前記軸部側に設けられた第2外径部を含む外周面を有する筒形状に構成されたコイルボビンと、
前記外周面に巻回されたコイルと
電磁力による前記プランジャの移動により、前記本体部が前記摺動面を前記一軸方向に摺動できるように、前記プランジャと前記コイルボビンの前記内周面との間に介在する流体と
を具備するソレノイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランジャを吸引する磁気吸引力を増大するソレノイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソレノイドは液体や気体等の流体を制御するバルブ等の被駆動部材を駆動するものとして利用されている。具体的には、コイルボビンに巻回された銅線に電流を流すことにより磁性部材の吸引面に吸引力としての磁力を発生させ、プランジャがその磁力により吸引面に吸引されることで被駆動部材を駆動するものである。
しかし、上述した磁気吸引力が小さいなどの問題が指摘されている。例えば磁束を安定してプランジャに収束させるためのサイドリングが設けられる場合があるが、そのサイドリングとプランジャとの間に容器としてのコイルボビンが形成されるために磁束の漏れが大きくなって吸引力が小さくなるという問題があった。
これに対して、筒状のコイル部材の内筒部に直列に配置される、磁性材料からなるセンタポストと、非磁性材料からなる筒状のスリーブと、及び磁性材料からなる筒状のサイドリングと、前記スリーブ及びサイドリングの内側を軸方向に往復自在に装填されるプランジャとを、備えるソレノイドが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、電磁制御弁のソレノイド装置では、特に、ベローズ式の感圧素子を組み込まれる電磁式容量制御弁では、ソレノイド部を大型化することなく、巻線電流(コイル電流)の変化に対するプランジャー吸引子間の磁気的吸引力の変化率が大きいことが要望されている。
しかし、プランジャー吸引子間に作用する磁気的吸引力は、閉ループ状磁路において、プランジャを有効に通過する磁力線数が多いほど強くなるが、従来のものでは、磁路構成の構造上、このことについて充分でないため、磁気的吸引力が弱く、巻線電流の変化に対するプランジャ−吸引子間の磁気的吸引力の変化率が小さいという問題があった。
これに対しては、電磁制御弁のソレノイド構造で、巻線−吸引子−磁路構成外函−磁路構成部材−プランジャ−吸引子を経由する閉ループ状の磁路が形成され、コイルボビンは磁路構成部材の筒状部をプランジャケースとの間に受け入れる段付き部をボビン内周側に有していて段付き部を含むボビン内周壁の全体の肉厚がほぼ同一であることにより、巻線の外寸法を大きくすることなく巻線数を多くでき、励磁力が強くなる電磁制御のソレノイド構造が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開10−89522号公報(段落[0014]、図1
【特許文献2】特開2002−250456号公報(段落[0012]、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、現状のコイルの巻数そのものは変わらないため、吸引力を大きくすることには限界があるという問題がある。
一方、特許文献2では、段付き部を含むボビン内周壁の全体の肉厚をほぼ同一とすることで巻線設置有効面積を大きくし、その分コイルの巻数を増やしている。しかし、そもそも当該段付き部を形成しない場合は、元々ボビン内周壁の全体の肉厚はほぼ同一であって巻線設置有効面積を増やすことができず、コイルの巻数を増加できないという問題がある。
そこで、コイルボビン内周壁の肉厚をさらに薄くすることでコイルボビンの外径を小さくし、巻線の外寸法を大きくすることなく導線を巻回できる容積を増やして巻数を増し、磁気による吸引力を増やすことが考えられる。
しかし、コイルボビンの内周面とプランジャとの間に油等の流体が介在している場合に不用意にコイルボビンの外径を小さくするとその流体による圧力に耐えられなくなりコイルボビンを傷めてしまう可能性があるという問題がある。
また、仮に当該段付き部を形成したとしてもソレノイドの外形を大きくしないために段付き部の大きさによっては殆ど巻数の増加が望めない可能性もある。さらにコイルボビン内周壁の全体の肉厚をほぼ同一とするために、コイルを巻回するコイルボビンの全体外径を上記流体の圧力に耐えられる強度の径にせざるを得ず、必ずしも十分な巻数の増加を望めないという問題がある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、ソレノイドの外形を大きくしないでその巻数を増やし、プランジャがその磁力により吸引面に吸引される吸引力を増大させながらコイルボビンに必要とされる強度を確保できるソレノイドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るソレノイドは、プランジャと、コイルボビンと、コイルとを具備する。
プランジャは、一軸方向に軸部と前記軸部の外径より大きな外径を有する本体部とを有する。
コイルボビンは、内周面と外周面とを有する筒形状であり、前記内周面は流体を介して前記本体部を前記一軸方向に摺動させて前記流体の圧力を受ける摺動面を有し、前記外周面は少なくとも前記摺動面に対応して設けられた第1外径部とその第1外径部より小さい外径で前記摺動面から離れて当該軸部側に設けられた第2外径部とを有する。
コイルは、前記第1外径部及び第2外径部に巻回されている。
【0007】
ここで、プランジャの軸部及び本体部はお互いの中心軸が一致するように一軸(中心軸)方向に並んで接続されている。勿論、軸部と本体部とを一体形成してもよい。
【0008】
コイルボビンの内周面は、プランジャの軸部が収まる部分と本体部が収まる部分とが形成されており、軸部が収まる部分は先端が閉じられた凹部の内周面であり、当該凹部には軸部を本体部方向に付勢するバネが備えられている。当該軸部が収まる部分の内径は、本体部が収まる部分の内径より小さく形成されており、その内径の差分がプランジャの本体部を磁力により吸引する磁性部となり、吸引面を形成することになる。
また、本体部が収まる部分の内周面には当該本体部と摺動する摺動面を備えており、少なくともその摺動面と本体との間には油等からなる流体が介在している。したがって、通常コイルボビンは密閉されているので当該油等による圧力をその摺動面に受けることとなる。
【0009】
コイルボビンの外周面は第1外径部と第2外径部とを有し、その第1外径部は少なくとも内周面の摺動面に対応して形成されており、コイルボビンの中心軸から径外方向に摺動面に重なるように設けられている。さらに第1外径部は当該摺動面に重なる部分から軸部方向に若干延在されており、その延在部分を含め所定の外径以上の径を有している。
ここで、所定の外径とは、当該摺動面がプランジャとの間にある流体から受ける主に径外方向への力(圧力)に耐えられるだけの厚みを担保できる外径であり、材質やプランジャの径等により当該所定の外径は違ってくる。勿論、当該第1外径部は一定以上の径であればよく全て同じ径である必要は無い。途中で一定の径よりも大きい径の部分があってもよいが、第1外径部の銅線等の導線が巻回される部分は巻数を確保するために所定の径で形成されることが望ましい。
【0010】
第2外径部は、第1外径部に連続してコイルボビンの外周面として設けられており、コイルボビン及びプランジャの中心軸である一軸方向に平行な方向に摺動面から離間して第2外径部が始まっている。
当該摺動面から離れた部分(第2外径部)では、流体による径外方向への圧力は掛からないのでコイルボビンの肉厚も第1外径部と同じである必要はなく、第1外径部の外径より小さい外径、即ち上記所定外径より小さい外径であっても強度的には十分である。
【0011】
コイルは、銅線等の導線がコイルボビンの第1外径部及び第2外径部に複数回巻回され、略円筒形状を有し、その外周面は略面一の円柱外周面となっている。勿論、コイルの外周面は円柱面である必要は無く、多角柱外周面等、プランジャの形状等に基づき多用な外周面であってもよい。
【0012】
ここで、コイルボビンの第1外径部と第2外径部とに接するところまでコイルが巻回されているので、実質上第1外径部及び第2外径部がコイルの内周面とでき、コイルが第1外径部に対応する第1内径部と第2外径部に対応する第2内径部を有するとできる。
すなわち、コイルの第2内径部の内径は第1内径部の内径より小さく、その内径方向の第1内径部との差の間部分(第1内径部より内側(中心軸側)に迫り出した部分)にも導線が巻回可能となるのでコイルの単位長さあたりの巻数を増加させることが可能となる。その結果、磁束密度を増大させて磁気による吸引力を増大できることとなる。
【0013】
例えば、導線をコイルボビンの第1外径部の外径より小さい外径である第2外径部から巻回すると、導線の全長を変えないことでコイル自体の外寸法を小さくし、かつ巻数もコイルの内径部分の方が円周長が小さい分、増やすことが可能である。この場合はコイルの抵抗は変わらないので巻数の増加分がそのまま磁気の吸引力の増加となり得る。
一方、コイルの外寸法を変えないようにコイルボビンの第2外径部から巻回すると、第1内径部より内側に迫り出した部分にも巻回する分、導線の全長は長くなりその分抵抗が増す。しかし、当該コイルはその内径方向の差分が全て巻数の増大となる。しかも、増えた巻数部分の径が第1内径部の内径より小さいので導線の長さの増加分も小さく、長さが増えたことによるコイル全体の抵抗値の増加も小さいので、当該抵抗の増加分を考慮しても巻数の増加により磁気の吸引力を増大できる。
【0014】
以上のコイルに電流を流すと第2内径部で導線の巻数が増加した分、当該コイルで発生する磁束密度が増し、その増えた磁束はコイルボビンの第2外径部側の後述する磁性部の吸引面からの磁気吸引力を増大させることなる。この増大した磁気吸引力によりプランジャの被吸引面はより強力に駆動されることとなり、その駆動力がプランジャに接続された被駆動部材を駆動し、例えば流体制御バルブを駆動することとなる。
しかも、この磁気吸引力の増強のためにコイルの外寸法を大きくする必要が無く、さらに外径が小さくなっている第2外径部は摺動面から充分離れているので流体による圧力によりコイルボビンを傷める事もなく当該磁気吸引力の増強ができる。
また、上記電流を止めると、磁気吸引力は消滅しバネによる付勢力によりプランジャはコイルボビンの吸引面から離れるので、その駆動力により流体制御バルブを元に戻すことができる。
【0015】
前記本体部は、前記摺動面に摺動される摺動部と前記軸部との間に軸部側に向って径が小さくなるようにテーパ部とを設けて、当該軸部と摺動部とを連結してもよい。これにより、コイルで生じた磁束を広い面積で受けることができ、その吸引力をさらに増大できる。
【0016】
前記第2外径部の外径は、前記摺動部の外径より大きいとしてもよい。これにより、プランジャの被吸引面が無駄なくコイルボビンの磁気吸引力を受けることができるので、磁気吸引力の確実な増強を図れる。
【0017】
前記コイルボビンは、非磁性部と磁性部とを有し、前記非磁性部は前記外周面の第1及び第2外径部と前記摺動面の少なくとも一部を形成し、前記磁性部は前記テーパ部に合うように形成された吸引面を有するとしてもよい。
これにより、コイルで生じた磁束が無駄なく磁性部の吸引面から本体部に流れ、また磁性部に入り最後にコイルに戻ることで閉じた磁路を形成することができ、より効率的な磁気による吸引力を生じさせることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明では、ソレノイドの外形を大きくしないでコイルの巻数を増やし、プランジャがその磁力により吸引面に吸引される吸引力を増大させながらコイルボビンに必要とされる強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るソレノイドの一部断面を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るソレノイドを示す部分断面図である。
【0021】
ソレノイド1は、プランジャ2と、当該プランジャ2を摺動自在に保持する筒状のコイルボビン3と、そのコイルボビン3に巻回されたコイル4と、外側ケース5と、蓋部6とを備える。
【0022】
プランジャ2は、図1に示すように一軸方向としての中心軸方向に軸部21と当該軸部21の径より大きい径の本体部22と被駆動部材に接続された出力部23とをその順に備えており、軸部21は略円柱形で先端には後述するバネの中に挿入される突起を備えている。
【0023】
また、本体部22は円柱形の摺動部221と径の異なる上述の軸部21との間を結ぶテーパ部222を有し、当該テーパ部222は円錐台形状を有し、当該上面には軸部21が、その底面には摺動部221が設けられている。
【0024】
ここで、テーパ部222は後述するコイルボビン3の磁性部の吸引面に磁力により吸引される被吸引面を構成するものである。
【0025】
コイルボビン3は、図1に示すように磁性部31と非磁性部32とを備えており、磁性部31は軸部側磁性部311と本体部側磁性部312とを有し、非磁性部32によって、一体的に構成されている。磁性部31は、電磁軟鉄(純鉄)等により形成され、非磁性部32はステンレス鋼等により形成される。当該軸部側磁性部311は大径部3111と当該大径部3111よりは径が小さく本体部22の外径に僅かに大きい径の中径部3112とが一体的に形成されている。
【0026】
ここで、中径部3112から大径部3111の一部に掛けて軸部21の径より僅かに大きい内径の凹部である円柱中空3112aが上述の中心軸Oを中心として形成されており、その内部にはバネ3112cが備えられている。そのバネ3112cはプランジャ2の軸部21を介して本体部22及び出力部23を外側へ付勢する。
【0027】
また、中径部3112は大径部3111と反対側端部にテーパ部222に合うように内側に凹んだ吸収面3112bが中心軸Oを中心に形成されている。これにより、軸部側磁性部311が磁性化されたときに、磁性部である吸引面3112bにプランジャ2であるテーパ部222が効率よく吸引されることとなる。
【0028】
さらに本体部側磁性部312は、略円筒形状で中径部3121と大径部3122とが上述の一軸方向に一体的に形成されており、その中径部3121は、図1に示すように非磁性部32の摺動面側にもぐり込んで摺動面Aの一部の摺動面A1を構成している。
【0029】
即ち、本体部側磁性部312の中径部3121ではその外周面を非磁性部32が覆うように重なっている一方、大径部3122の内周面の一部が中径部3121の摺動面A1に連続して摺動面A2を構成し、残りの大径部3122の内周面には蓋部6の後述するシール部が嵌め込まれている。
【0030】
また、非磁性部32は略円筒形であり、その外周面は図1に示すようにコイルボビン3の外周面を形成し、当該外周面は外径の異なる第1外径部321と当該第1外径部321より1mm程度外径の小さい第2外径部322とを有している。当該第2外径部322は、第1外径部321と結ぶテーパ状段部3221を有している。
【0031】
さらに非磁性部32の内周面323は、内径が第2外径部322から第1外径部321の途中までは同じであり、当該第1外径部321の途中から上述の中径部3121が摺動面A1となるように僅かに内径の大きい部分を有している。その摺動面A1からはなれた内周面323との間に本体部側磁性部312の中径部3121が入り込むように形成されている。
【0032】
また、上述の外径の大きい第1外径部321は、図1に示すようにプランジャ2が摺動する摺動面Aと軸部側磁性部311の吸引面3112bの先端部Bより離れるように大径部3111側に延在されている。したがって、テーパ状段部3221の位置は吸引面3112bの先端部Bより幾分か大径部3111側に寄ることになる。
【0033】
以上から、上述した摺動部221の外周面が油7を介して摺動する摺動面Aは、図1に示すように、コイルボビン3の内周面である。具体的には、摺動面Aは非磁性部材32の内周面の吸引面3112bの先端部Bに接する部分から内径の大きい部分となる手前までの摺動面A3と中径部3121の摺動面A1及び大径部3122の内周面の摺動面A2により構成される。
【0034】
コイル4は、コイルボビン3の軸部側磁性部311の大径部3111と本体部側磁性部312の大径部3122との間の外周面に導線としての銅線が巻回されたものであり、外周面は当該大径部3111,3122の外周面より若干小さい一定外径に形成されている。
【0035】
即ち、コイル4はコイルボビン3の外周面に接するところまで銅線が巻回されているので、実質上第1外径部321及び第2外径部322がコイル4の内周面とできる。即ち、コイル4は第1外径部321に対応する第1内径部41と第2外径部322に対応する第2内径部42とを有する。テーパ状段部3221にはテーパ状段部421が対応する。
【0036】
ここで、図1に示すように第1外径部321より第2外径部322の方の径が小さいのでコイル4の第1内径部41の内径に比較して第2内径部42の内径は小さくなっている。したがって、その内径方向の第1内径部41との差部分(第1内径部41より内側に迫り出した部分)にも銅線が巻回可能となるのでコイル4の単位長さあたりの巻数を増加させることが可能となる。その結果、磁束密度を増大させて磁気による吸引力を増大できることとなる。
【0037】
また、第2内径部42の内周面は、コイル4で一番内側に迫り出して巻回されているが、図1に示すように磁力により吸引されるテーパ部222の中心軸Oに対する径外方向の最外端部Cよりは径外方向に位置するように形成されている。
【0038】
コイル4は、図示しない電源部に導通するリード線43を備えており、当該電源部でコイル4に印加される電流のON,OFFが制御される。
【0039】
外側ケース5は、コイルボビン3として構成された軸部側磁性部311の大径部3111及び本体側磁性部312の大径部3122が内部に丁度納まる略筒形状である。また、一端側の内周面には当該大径部3122に固定された蓋部6のフランジ部が収まる段差部51が形成されている。当該外側ケース5はコイルボビン3とネジ52によって固定される。
【0040】
蓋部6は、上述のシール部61とフランジ部62と端部63とが上述の一軸方向に一体的に形成されており、シール部61は溝部611に配置されたオーリング612によってプランジャ2とコイルボビン3との間の空間を密閉している。また、フランジ部62を大径部3122にネジ621で固定することで蓋部6はコイルボビン3に固定される。さらに端部63に設けられた貫通孔631によりプランジャ2の出力部23のロッド231の一部が蓋部6の外に突出しており、当該突出したロッド231に図示しない被駆動部材としての油圧制御バルブなどが接続される。
【0041】
本実施形態のソレノイド1を実験したところ、従来のように第1内径部41の内径で全て形成した場合に比較して同じ電流を印加しても、プランジャ2を吸引する力である吸引力は、約14%上昇した。なお、電圧を同じとした場合は、吸引力は同じであるが、ソレノイド1の温度上昇を21℃下げることができた。
【0042】
以上のように、コイルボビン3の外周面が第1外径部321と当該第1外径部321より外径の小さい第2外径部322を有することとしたので、コイル4を第2内径部42で第1内径部41からさらに内側に巻回することができ、その分、銅線の巻数を増大できる。そして、第2内径部42で導線の巻数が増加した分、当該コイル4で発生する磁束密度の量が多くなり、その増えた磁力はコイルボビン3の吸引面3112bからの磁気吸引力を増大させることなる。この増大した磁気吸引力によりプランジャ2のテーパ部222はより強力に駆動されることとなり、その駆動力がプランジャ2に接続された被駆動部材を駆動し、例えば流体制御バルブを駆動することとなる。
【0043】
また、第2内径部42の第1内径部41より内径の小さい部分では、銅線の巻回は半径が小さいため、増えた巻数分の銅線の長さも短くてすみ、抵抗値の増加も少なくできる。したがって、コイル4の外寸法を維持することにより増える抵抗値に比べ、第2内径部42により増加する巻数の方の効果が大きくなり、結果としてコイルボビン3の吸引面3112bからの磁気吸引力を増大させることができる。即ち、ソレノイド1の外形の大きさを大きくすること無く、コイルボビン3の磁気吸引力を増強できることになる。
【0044】
また、コイルボビン3の第2外径部322は第1外径部321に連続してコイルボビンの外周面として設けられており、コイルボビン3及びプランジャ2の中心軸Oに平行な方向に摺動面Aから離間して第2外径部322が始まっている。したがって、第2外径部322が第1外径部321の外径より小さい外径、例えば1mm程度小さい外径であっても流体としての油7による圧力は掛からず、当該油7による圧力によって、コイルボビン3が損傷することもソレノイド1を大きくすること無く防げる。
【0045】
さらに非磁性部32の内周面323は、図1に示すように磁力により吸引されるテーパ部222の中心軸Oに対する径外方向の最外端部Cよりは油分僅かに径外方向に位置している。したがって、コイル4により発生する磁力線を受けるテーパ部222の表面積を最も有効に利用することができ、磁力による吸引力をソレノイド1の外形を大きくせずに増大できる。
【0046】
また、第2内径部42の内周面は、コイル4で一番内側に迫り出して巻回されているが、図1に示すように磁力により吸引されるテーパ部222の中心軸Oに対する径外方向の最外端部Cよりは径外方向に位置するように形成されている。これにより、コイル4により発生する磁力線を最も効率的にテーパ部222に進ませることができ、磁力による吸引力をソレノイド1の外形を大きくせずに増大できる。
【0047】
次に、上述したソレノイド1の動作について図1を参照して説明する。
【0048】
コイル4にリード線43を介して電源部により電流が印加されていないときは、コイル4による磁束が発生しないので図1に示すように、吸引面3112bはテーパ部222を吸引できず、バネ3112cの付勢力によりプランジャ2は図1で見て右側に移動する。このプランジャ2の移動によりロッド231も移動し図示しない被駆動部材としての流体制御バルブを例えば閉じる。
【0049】
次に、電源部によりコイル4にリード線43を介して電流が印加されると、コイル4による磁束が発生して軸部側磁性部311の吸引面3112bに磁力が発生し、プランジャ2のテーパ部222が吸引される。
【0050】
この磁力による吸引力がバネ3112cによる付勢力に打ち勝つと、油7を介して摺動部221の外周面が非磁性部32、中径部3121及び大径部3122の内周面である摺動面Aに摺動して図1で見て左側に移動する。これによりロッド231も一緒に左に移動するので流体制御バルブは開くことになる。
【0051】
ここで、図1でコイル4の第1内径部41の内径に比較して内側の第2内径部42の部分には、巻回された銅線の断面である円が多数入ることからその分、巻数が増大するために発生する磁束密度も増大する。そして、その増大した磁束密度が軸部側磁性部311に働き、吸引面3112bから増大した磁力が発生しプランジャ2のテーパ部222に働くこととなる。
【0052】
また、非磁性部32がコイルボビン3の大径部3111,3122を除いた外周面の殆どを覆っているので、磁力線が最も効率的に働くことができ、吸引力をより増大できる。
【0053】
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態が考えられる。
【0054】
例えば上記の実施形態に係るプランジャ2の本体部22を円柱形の摺動部221と径の異なる上述の軸部21との間を結ぶテーパ部222を有するとしたが、当該摺動部221と軸部21とを直接に接続してもいいし、テーパ状ではなく階段状であってもよい。さらには曲面を形成しても良い。ソレノイドの利用形態等により種々の本体部の形状が適応可能である。
【0055】
また、上記の実施形態ではコイル4の外寸法を維持することとしたが、用いる銅線の全長を一定として、第1外径部321と当該第1外径部321より外径の小さい第2外径部322に巻回してもよい。これにより、コイル4自体の外寸法を小さくしながらコイル4の内径部分の方が円周長が小さい分、巻数も増やすことが可能である。この場合はコイル4の抵抗は変わらないので巻数の増加分がそのまま磁気の吸引力の増加となり得る。
【符号の説明】
【0056】
2…プランジャ
21…軸部
22…本体部
3…コイルボビン
321…第1外径部
322…第2外径部
4…コイル
7…油(流体に相当)
A…摺動面
O…中心軸(一軸に相当)
図1