【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、現状のコイルの巻数そのものは変わらないため、吸引力を大きくすることには限界があるという問題がある。
一方、特許文献2では、段付き部を含むボビン内周壁の全体の肉厚をほぼ同一とすることで巻線設置有効面積を大きくし、その分コイルの巻数を増やしている。しかし、そもそも当該段付き部を形成しない場合は、元々ボビン内周壁の全体の肉厚はほぼ同一であって巻線設置有効面積を増やすことができず、コイルの巻数を増加できないという問題がある。
そこで、コイルボビン内周壁の肉厚をさらに薄くすることでコイルボビンの外径を小さくし、巻線の外寸法を大きくすることなく導線を巻回できる容積を増やして巻数を増し、磁気による吸引力を増やすことが考えられる。
しかし、コイルボビンの内周面とプランジャとの間に油等の流体が介在している場合に不用意にコイルボビンの外径を小さくするとその流体による圧力に耐えられなくなりコイルボビンを傷めてしまう可能性があるという問題がある。
また、仮に当該段付き部を形成したとしてもソレノイドの外形を大きくしないために段付き部の大きさによっては殆ど巻数の増加が望めない可能性もある。さらにコイルボビン内周壁の全体の肉厚をほぼ同一とするために、コイルを巻回するコイルボビンの全体外径を上記流体の圧力に耐えられる強度の径にせざるを得ず、必ずしも十分な巻数の増加を望めないという問題がある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、ソレノイドの外形を大きくしないでその巻数を増やし、プランジャがその磁力により吸引面に吸引される吸引力を増大させながらコイルボビンに必要とされる強度を確保できるソレノイドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るソレノイドは、プランジャと、コイルボビンと、コイルとを具備する。
プランジャは、一軸方向に軸部と前記軸部の外径より大きな外径を有する本体部とを有する。
コイルボビンは、内周面と外周面とを有する筒形状であり、前記内周面は流体を介して前記本体部を前記一軸方向に摺動させて前記流体の圧力を受ける摺動面を有し、前記外周面は少なくとも前記摺動面に対応して設けられた第1外径部とその第1外径部より小さい外径で前記摺動面から離れて当該軸部側に設けられた第2外径部とを有する。
コイルは、前記第1外径部及び第2外径部に巻回されている。
【0007】
ここで、プランジャの軸部及び本体部はお互いの中心軸が一致するように一軸(中心軸)方向に並んで接続されている。勿論、軸部と本体部とを一体形成してもよい。
【0008】
コイルボビンの内周面は、プランジャの軸部が収まる部分と本体部が収まる部分とが形成されており、軸部が収まる部分は先端が閉じられた凹部の内周面であり、当該凹部には軸部を本体部方向に付勢するバネが備えられている。当該軸部が収まる部分の内径は、本体部が収まる部分の内径より小さく形成されており、その内径の差分がプランジャの本体部を磁力により吸引する磁性部となり、吸引面を形成することになる。
また、本体部が収まる部分の内周面には当該本体部と摺動する摺動面を備えており、少なくともその摺動面と本体との間には油等からなる流体が介在している。したがって、通常コイルボビンは密閉されているので当該油等による圧力をその摺動面に受けることとなる。
【0009】
コイルボビンの外周面は第1外径部と第2外径部とを有し、その第1外径部は少なくとも内周面の摺動面に対応して形成されており、コイルボビンの中心軸から径外方向に摺動面に重なるように設けられている。さらに第1外径部は当該摺動面に重なる部分から軸部方向に若干延在されており、その延在部分を含め所定の外径以上の径を有している。
ここで、所定の外径とは、当該摺動面がプランジャとの間にある流体から受ける主に径外方向への力(圧力)に耐えられるだけの厚みを担保できる外径であり、材質やプランジャの径等により当該所定の外径は違ってくる。勿論、当該第1外径部は一定以上の径であればよく全て同じ径である必要は無い。途中で一定の径よりも大きい径の部分があってもよいが、第1外径部の銅線等の導線が巻回される部分は巻数を確保するために所定の径で形成されることが望ましい。
【0010】
第2外径部は、第1外径部に連続してコイルボビンの外周面として設けられており、コイルボビン及びプランジャの中心軸である一軸方向に平行な方向に摺動面から離間して第2外径部が始まっている。
当該摺動面から離れた部分(第2外径部)では、流体による径外方向への圧力は掛からないのでコイルボビンの肉厚も第1外径部と同じである必要はなく、第1外径部の外径より小さい外径、即ち上記所定外径より小さい外径であっても強度的には十分である。
【0011】
コイルは、銅線等の導線がコイルボビンの第1外径部及び第2外径部に複数回巻回され、略円筒形状を有し、その外周面は略面一の円柱外周面となっている。勿論、コイルの外周面は円柱面である必要は無く、多角柱外周面等、プランジャの形状等に基づき多用な外周面であってもよい。
【0012】
ここで、コイルボビンの第1外径部と第2外径部とに接するところまでコイルが巻回されているので、実質上第1外径部及び第2外径部がコイルの内周面とでき、コイルが第1外径部に対応する第1内径部と第2外径部に対応する第2内径部を有するとできる。
すなわち、コイルの第2内径部の内径は第1内径部の内径より小さく、その内径方向の第1内径部との差の間部分(第1内径部より内側(中心軸側)に迫り出した部分)にも導線が巻回可能となるのでコイルの単位長さあたりの巻数を増加させることが可能となる。その結果、磁束密度を増大させて磁気による吸引力を増大できることとなる。
【0013】
例えば、導線をコイルボビンの第1外径部の外径より小さい外径である第2外径部から巻回すると、導線の全長を変えないことでコイル自体の外寸法を小さくし、かつ巻数もコイルの内径部分の方が円周長が小さい分、増やすことが可能である。この場合はコイルの抵抗は変わらないので巻数の増加分がそのまま磁気の吸引力の増加となり得る。
一方、コイルの外寸法を変えないようにコイルボビンの第2外径部から巻回すると、第1内径部より内側に迫り出した部分にも巻回する分、導線の全長は長くなりその分抵抗が増す。しかし、当該コイルはその内径方向の差分が全て巻数の増大となる。しかも、増えた巻数部分の径が第1内径部の内径より小さいので導線の長さの増加分も小さく、長さが増えたことによるコイル全体の抵抗値の増加も小さいので、当該抵抗の増加分を考慮しても巻数の増加により磁気の吸引力を増大できる。
【0014】
以上のコイルに電流を流すと第2内径部で導線の巻数が増加した分、当該コイルで発生する磁束密度が増し、その増えた磁束はコイルボビンの第2外径部側の後述する磁性部の吸引面からの磁気吸引力を増大させることなる。この増大した磁気吸引力によりプランジャの被吸引面はより強力に駆動されることとなり、その駆動力がプランジャに接続された被駆動部材を駆動し、例えば流体制御バルブを駆動することとなる。
しかも、この磁気吸引力の増強のためにコイルの外寸法を大きくする必要が無く、さらに外径が小さくなっている第2外径部は摺動面から充分離れているので流体による圧力によりコイルボビンを傷める事もなく当該磁気吸引力の増強ができる。
また、上記電流を止めると、磁気吸引力は消滅しバネによる付勢力によりプランジャはコイルボビンの吸引面から離れるので、その駆動力により流体制御バルブを元に戻すことができる。
【0015】
前記本体部は、前記摺動面に摺動される摺動部と前記軸部との間に軸部側に向って径が小さくなるようにテーパ部とを設けて、当該軸部と摺動部とを連結してもよい。これにより、コイルで生じた磁束を広い面積で受けることができ、その吸引力をさらに増大できる。
【0016】
前記第2外径部の外径は、前記摺動部の外径より大きいとしてもよい。これにより、プランジャの被吸引面が無駄なくコイルボビンの磁気吸引力を受けることができるので、磁気吸引力の確実な増強を図れる。
【0017】
前記コイルボビンは、非磁性部と磁性部とを有し、前記非磁性部は前記外周面の第1及び第2外径部と前記摺動面の少なくとも一部を形成し、前記磁性部は前記テーパ部に合うように形成された吸引面を有するとしてもよい。
これにより、コイルで生じた磁束が無駄なく磁性部の吸引面から本体部に流れ、また磁性部に入り最後にコイルに戻ることで閉じた磁路を形成することができ、より効率的な磁気による吸引力を生じさせることができる。