【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例1に係る過電圧保護回路の構成を示す図である。
図1に示す実施例1に係る過電圧保護回路において、直流電源V1の両端には、トランスT1の一次巻線Pとスイッチング素子Q1との直列回路が接続される。
【0015】
スイッチング素子Q1は、GaN HEMT(High Electron Mobility Transistor)からなる。あるいは、スイッチング素子Q1は、バイポーラトランジスタ、IGBT(絶縁ゲートトランジスタ)であっても良い。スイッチング素子Q1は、制御回路10からの制御信号によりオン/オフされる。
【0016】
トランスT1の二次巻線Sの両端にはダイオードD1とコンデンサC1との直列回路が接続される。ダイオードD1とコンデンサC1とは、整流平滑回路を構成し、トランスT1の二次巻線Sの両端に発生した電圧を整流平滑して直流電圧を図示しない負荷に供給する。
【0017】
電圧検出回路12は、コンデンサC1の両端電圧を検出し、検出された電圧をフィードバック信号FBとして制御回路10に出力する。制御回路10は、電圧検出回路12からのフィードバック信号FBに応じてスイッチング素子Q1のオンオフを制御する。
【0018】
スイッチング素子Q1のドレイン(第1主端子)−ソース(第2主端子)の間には、抵抗R1(第1抵抗)とコンデンサC2(第1コンデンサ)とが直列に接続された微分回路が接続される。微分回路は、スイッチング素子Q1のドレインに印加された電圧のdV/dtを検出する。
【0019】
抵抗R1の両端には、抵抗R2(第2抵抗)とコンデンサC3(第2コンデンサ)とが直列に接続された積分回路が接続される。積分回路は、検出されたdV/dtに比例する抵抗R1の両端電圧を積分することにより、コンデンサC3の両端に、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間の電圧Vdsに比例した電圧を発生させる。
【0020】
コンデンサC3の両端にはダイオードD3のアノードとカソードとが接続される。ダイオードD3はコンパレータA1を保護するために設けられている。
【0021】
コンデンサC3と抵抗R2との接続点とダイオードD3のカソードとにはコンパレータA1の非反転入力端子(+)が接続され、コンパレータA1の反転入力端子(−)には基準電源V2の正極が接続される。基準電源V2の負極は、直流電源V1の負極とダイオードD3のアノードとコンデンサC3の一端と抵抗R1の一端とコンデンサC4の一端とスイッチング素子Q1のソースとが接続される。
【0022】
コンパレータA1は、コンデンサC3の電圧と基準電源V2の基準電圧とを比較し、コンデンサC3の電圧が基準電源V2の基準電圧以上になったときにHレベルをオア回路OR1の一方の入力端子に出力する。
【0023】
オア回路OR1の他方の入力端子には、制御回路10の出力端子とダイオードD2のアノードとが接続され、ダイオードD2のカソードはスイッチング素子Q1のゲートに接続される。ダイオードD2は、制御回路10からの制御信号を直接スイッチング素子Q1のゲートに印加するために設けられる。
【0024】
オア回路OR1は、コンパレータA1からの出力と制御回路10からの出力との論理和とを取る。オア回路OR1の出力端子には、ダイオードD4のカソードと抵抗R3の一端が接続され、ダイオードD4のアノードと抵抗R3の他端とはスイッチング素子Q1のゲートに接続される。スイッチング素子Q1のゲート−ソース間にはコンデンサC4が接続される。抵抗R3とコンデンサC4とは、オア回路OR1からの保護信号に対して抵抗R3とコンデンサC4とによる時定数だけ遅延する遅延回路を構成する。
【0025】
コンパレータA1、オア回路OR1、抵抗R3、コンデンサC4は過電圧保護部を構成する。
【0026】
次にこのように構成された実施例1に係る過電圧保護回路の動作を
図2に示す各部のタイミングチャートを参照しながら詳細に説明する。
図2において、Vds(Q1)はスイッチング素子Q1のドレイン−ソース間の電圧、V(R1)は抵抗R1の両端電圧、V(C3)はコンデンサC3の両端電圧、A1outはコンパレータA1の出力、Vgs(Q1)はスイッチング素子Q1のゲート−ソース間の電圧、Id(Q1)はスイッチング素子Q1のドレイン電流である。
【0027】
まず、時刻t0において、スイッチング素子Q1がターンオフすると、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間の電圧Vds(Q1)が時刻t0〜t2まで上昇する。時刻t0〜t2の時間は、抵抗R1とコンデンサC2との時定数により決定される。
【0028】
また、コンデンサC2と抵抗R1とからなる微分回路は、スイッチング素子Q1のドレインに印加された電圧Vds(Q1)のdV/dtを検出する。このため、電圧Vds(Q1)のdV/dtに比例する抵抗R1の両端電圧V(R1)は、
図2に示すように変化する。
【0029】
次に、抵抗R2とコンデンサC3とからなる積分回路により積分すると、コンデンサC3には、スイッチング素子Q1の電圧Vds(Q1)に比例した電圧V(C3)が発生する。電圧V(C3)は、
図2に示すように、直線的に増加していく。
【0030】
時刻t1において、コンデンサC3の電圧V(C3)が基準電圧V2に達すると、コンパレータA1の出力A1outは、Hレベルとなり、オア回路OR1を介して、抵抗R3に供給される。抵抗R2とコンデンサC4とは、オア回路OR1からのHレベルを抵抗R2とコンデンサC4とによる時定数だけ、即ち、時刻t1〜t2の時間だけ遅延して、スイッチング素子Q1のゲートに印加する。
【0031】
すると、時刻t1〜t2において、スイッチング素子Q1のゲート−ソース間の電圧Vgs(Q1)が直線的に上昇して、時刻t2において、オン開始電圧Vthに達すると、スイッチング素子Q1がオンする。
【0032】
すると、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に電流Id(Q1)が流れる。このため、スイッチング素子Q1の電圧Vds(Q1)の上昇が抑えられて、下降するため、電圧V(R1)は負電圧となる。これに伴って、コンデンサC3の電圧V(C3)も低下して、時刻t3において、電圧V(C3)が基準電圧V2未満となると、コンパレータA1のA1outは、Lレベルとなるので、電流Id(Q1)がゼロとなる。
【0033】
すると、スイッチング素子Q1の電圧Vds(Q1)が上昇して基準電圧V2に達すると、コンパレータA1の出力A1outは、Hレベルとなるので、上述したように、スイッチング素子Q1の間欠オン動作が時刻t4まで繰り返し行われる。時刻t5〜t7では、電圧Vds(Q1)が電圧VPよりも充分に低い電圧に下がっているので、スイッチング素子Q1の間欠オン動作は行われない。
【0034】
このように、コンパレータA1とオア回路OR1と抵抗R3とコンデンサC4とからなる過電圧保護部は、コンデンサC3の電圧が基準電圧V2以上となった場合に電圧Vds(Q1)が所定電圧VP以上になったと判定し、スイッチング素子Q1をオンさせて電圧Vds(Q1)を所定電圧VPにクランプさせるので、過電圧を防止できる。
【0035】
また、時刻t0〜t2の時間、時刻t4〜t8の時間においては、電流Id(Q1)が流れないので、損失が少なくなる。従って、製造し易い高耐圧素子を使用でき、且つ、インピーダンスのバラツキを考慮しなくても良い。