特許第5862278号(P5862278)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5862278
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】有機溶剤含有ガス処理システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20160202BHJP
   B01D 53/06 20060101ALI20160202BHJP
   B01D 53/02 20060101ALI20160202BHJP
   B01D 53/44 20060101ALI20160202BHJP
   B01D 53/81 20060101ALI20160202BHJP
   B01D 53/82 20060101ALI20160202BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   B01D53/04 230
   B01D53/06 100
   B01D53/02
   B01D53/44 110
   B01D53/81
   B01D53/82
   B01D53/96
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-281747(P2011-281747)
(22)【出願日】2011年12月22日
(65)【公開番号】特開2013-128906(P2013-128906A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 勉
(72)【発明者】
【氏名】川田 和之
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−236514(JP,A)
【文献】 特開平03−224614(JP,A)
【文献】 実公平07−002028(JP,Y2)
【文献】 特開昭50−117680(JP,A)
【文献】 特開昭51−132179(JP,A)
【文献】 特開平07−068127(JP,A)
【文献】 特開2010−172804(JP,A)
【文献】 特開平03−288516(JP,A)
【文献】 特開2007−038071(JP,A)
【文献】 特開2008−100187(JP,A)
【文献】 特開2011−062645(JP,A)
【文献】 実開平04−102623(JP,U)
【文献】 実開平04−137729(JP,U)
【文献】 特開平03−270710(JP,A)
【文献】 特開平06−312117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/04
B01D 53/02
B01D 53/06
B01D 53/44
B01D 53/81
B01D 53/82
B01D 53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤を含有する原ガスから有機溶剤を分離することで原ガスを清浄化して排出するとともに、原ガスから分離した有機溶剤をキャリアガスを用いて回収する有機溶剤含有ガス処理システムであって、
キャリアガスが循環するように通流される循環経路と、
前記循環経路上に設けられ、有機溶剤を吸着および脱着する第1吸脱着素子を含む第1吸脱着処理装置と、
前記循環経路上に設けられ、有機溶剤を吸着および脱着する第2吸脱着素子を含む第2吸脱着処理装置と、
前記循環経路上に設けられ、有機溶剤を凝縮させることで有機溶剤を凝縮液として回収する凝縮回収装置とを備え、
前記第2吸脱着処理装置は、前記第1吸脱着処理装置から見てキャリアガスの通流方向に沿った下流側であってかつ前記凝縮回収装置に至る部分の前記循環経路上に設けられた第1処理部と、前記凝縮回収装置から見てキャリアガスの通流方向に沿った下流側であってかつ前記第1吸脱着処理装置に至る部分の前記循環経路上に設けられた第2処理部とを有し、
前記第2吸脱着素子は、当該第2吸脱着素子が回転することにより、その任意の部分が前記第1処理部と前記第2処理部との間で時間的に交互に移動するように構成され、
前記第1吸脱着処理装置は、前記第2吸脱着処理装置の前記第2処理部から排出された低温の状態にあるキャリアガスを高温の状態に温度調節する第1温度調節手段をさらに含み、原ガスと、前記第1温度調節手段にて温度調節されて高温の状態にあるキャリアガスとを、時間的に交互に前記第1吸脱着素子に接触させることにより、有機溶剤を原ガスから高温の状態にあるキャリアガスに移動させ、
前記第2吸脱着処理装置は、前記第1吸脱着処理装置から排出された高温の状態にあるキャリアガスを前記第1処理部において前記第2吸脱着素子に接触させるとともに、前記凝縮回収装置から排出された未凝縮の有機溶剤を含む低温の状態にあるキャリアガスを前記第2処理部において前記第2吸脱着素子に接触させることにより、有機溶剤を低温の状態にあるキャリアガスから高温の状態にあるキャリアガスに移動させ、
前記凝縮回収装置は、前記第2吸脱着処理装置の前記第1処理部から排出された高温の状態にあるキャリアガスを低温の状態に温度調節することにより、有機溶剤を凝縮させる、有機溶剤含有ガス処理システム。
【請求項2】
有機溶剤を含有する原ガスから有機溶剤を分離することで原ガスを清浄化して排出するとともに、原ガスから分離した有機溶剤をキャリアガスを用いて回収する有機溶剤含有ガス処理システムであって、
キャリアガスが循環するように通流される循環経路と、
前記循環経路上に設けられ、有機溶剤を吸着および脱着する第1吸脱着素子を含む第1吸脱着処理装置と、
前記循環経路上に設けられ、有機溶剤を吸着および脱着する第2吸脱着素子を含む第2吸脱着処理装置と、
前記循環経路上に設けられ、有機溶剤を凝縮させることで有機溶剤を凝縮液として回収する凝縮回収装置とを備え、
前記第2吸脱着処理装置は、前記第1吸脱着処理装置から見てキャリアガスの通流方向に沿った下流側であってかつ前記凝縮回収装置に至る部分の前記循環経路上に設けられた第1処理部と、前記凝縮回収装置から見てキャリアガスの通流方向に沿った下流側であってかつ前記第1吸脱着処理装置に至る部分の前記循環経路上に設けられた第2処理部とを有し、
前記第2吸脱着素子は、当該第2吸脱着素子が回転することにより、その任意の部分が前記第1処理部と前記第2処理部との間で時間的に交互に移動するように構成され、
前記第1吸脱着処理装置は、前記第2吸脱着処理装置の前記第2処理部から排出された低温の状態にあるキャリアガスを高温の状態に温度調節する第1温度調節手段をさらに含み、原ガスと、前記第1温度調節手段にて温度調節されて高温の状態にあるキャリアガスとを、時間的に交互に前記第1吸脱着素子に接触させることにより、有機溶剤を原ガスから高温の状態にあるキャリアガスに移動させ、
前記第2吸脱着処理装置は、前記第1吸脱着処理装置から排出された高温の状態にあるキャリアガスを高温の状態および低温の状態のいずれかに時間的に交互に温度調節する第2温度調節手段をさらに含み、前記第2温度調節手段にて温度調節されて高温の状態にあるキャリアガスまたは前記第2温度調節手段にて温度調節されて低温の状態にあるキャリアガスを前記第1処理部において前記第2吸脱着素子に接触させるとともに、前記凝縮回収装置から排出された未凝縮の有機溶剤を含む低温の状態にあるキャリアガスを前記第2処理部において前記第2吸脱着素子に接触させることにより、有機溶剤を低温の状態にあるキャリアガスから高温の状態にあるキャリアガスに移動させ、
前記第2温度調節手段は、前記第1吸脱着素子から有機溶剤を脱着させる脱着処理期間の始めの段階においてキャリアガスを高温の状態に温度調節し、前記第1吸脱着素子から有機溶剤を脱着させる脱着処理期間の終わりの段階においてキャリアガスを低温の状態に温度調節し、
前記凝縮回収装置は、前記第2吸脱着処理装置の前記第1処理部から排出された高温の状態にあるキャリアガスを低温の状態に温度調節することにより、有機溶剤を凝縮させる、有機溶剤含有ガス処理システム。
【請求項3】
前記キャリアガスが、不活性ガスである、請求項1または2に記載の有機溶剤含有ガス処理システム。
【請求項4】
前記第2吸脱着素子が、略円柱状の外形を有するように形成されるとともに、その中心軸周りに回転可能に構成され、
前記第2吸脱着素子が前記中心軸周りに回転することにより、前記第2吸脱着素子の前記任意の部分が、前記第1処理部と前記第2処理部との間で時間的に交互に移動するように構成されている、請求項1から3のいずれかに記載の有機溶剤含有ガス処理システム。
【請求項5】
前記第2吸脱着素子が、ハニカム構造を有している、請求項1から4のいずれかに記載の有機溶剤含有ガス処理システム。
【請求項6】
前記第1吸脱着素子が、活性炭素繊維である、請求項1から5のいずれかに記載の有機溶剤含有ガス処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤含有ガス処理システムに関し、より特定的には、有機溶剤を含有する原ガスから有機溶剤を分離することで原ガスを清浄化して排出するとともに、原ガスから分離した有機溶剤をキャリアガスを用いて回収する有機溶剤含有ガス処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸脱着素子としての吸着材を用いて有機溶剤の吸着処理および脱着処理を行なって有機溶剤を原ガスからキャリアガスに移動させることにより、原ガスの清浄化と有機溶剤の回収とを可能にした有機溶剤含有ガス処理システムが知られている。
【0003】
この種の有機溶剤含有ガス処理システムは、一般に、原ガスおよび高温の状態にあるキャリアガスを時間的に交互に吸着材に接触させるための吸脱着処理装置と、当該吸脱着処理装置から排出される高温の状態にあるキャリアガスを冷却することによって有機溶剤を凝縮させて回収する凝縮回収装置とを備えている。
【0004】
たとえば、実公平7−2028号公報(特許文献1)には、キャリアガスとして水蒸気を使用した有機溶剤含有ガス処理システムが開示されている。また、特開平7−68127号公報(特許文献2)には、キャリアガスとして高温に加熱された不活性ガスを使用した有機溶剤含有ガス処理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平7−2028号公報
【特許文献2】特開平7−68127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した有機溶剤含有ガス処理システムにおいて、原ガスに対する浄化能力および有機溶剤の回収効率を向上させるためには、脱着処理における有機溶剤の脱着、すなわち吸着材の再生が、十分に行なわれることが必要になる。
【0007】
また、有機溶剤含有ガス処理システムのランニングコストを抑制するためには、キャリアガスを一度使用したのみで使い捨てるのではなく、可能な限りこれを再利用すべく、有機溶剤含有ガス処理システム内においてキャリアガスを循環させて使用するように構成することが好ましい。
【0008】
しかしながら、凝縮回収装置において有機溶剤をキャリアガスから完全に分離させることは困難であり、そのため、凝縮回収装置から排出されるキャリアガスには、未凝縮の有機溶剤が一定量含まれることになる。したがって、未凝縮の有機溶剤を含有するキャリアガスをそのまま循環させて吸脱着処理装置に戻す構成とした場合には、吸着材の再生が不十分となってしまい、原ガスに対する浄化能力および有機溶剤の回収効率の向上に自ずと限界が生じてしまう問題があった。
【0009】
したがって、本発明は、上述した問題点を解決すべくなされたものであり、ランニングコストが抑制可能であるとともに、原ガスに対する浄化能力および有機溶剤の回収効率の向上が図られた有機溶剤含有ガス処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の局面に基づく有機溶剤含有ガス処理システムは、有機溶剤を含有する原ガスから有機溶剤を分離することで原ガスを清浄化して排出するとともに、原ガスから分離した有機溶剤をキャリアガスを用いて回収するものであって、キャリアガスが循環するように通流される循環経路と、上記循環経路上に設けられた第1吸脱着処理装置、凝縮回収装置および第2吸脱着処理装置とを備えている。上記第1吸脱着処理装置は、有機溶剤を吸着および脱着する第1吸脱着素子を含んでいる。上記第2吸脱着処理装置は、有機溶剤を吸着および脱着する第2吸脱着素子を含んでいる。上記凝縮回収装置は、有機溶剤を凝縮させることで有機溶剤を凝縮液として回収するものである。上記第2吸脱着処理装置は、上記第1吸脱着処理装置から見てキャリアガスの通流方向に沿った下流側であってかつ上記凝縮回収装置に至る部分の上記循環経路上に設けられた第1処理部と、上記凝縮回収装置から見てキャリアガスの通流方向に沿った下流側であってかつ上記第1吸脱着処理装置に至る部分の上記循環経路上に設けられた第2処理部とを有している。上記第2吸脱着素子は、当該第2吸脱着素子が回転することにより、その任意の部分が上記第1処理部と上記第2処理部との間で時間的に交互に移動するように構成されている。上記第1吸脱着処理装置は、上記第2吸脱着処理装置の上記第2処理部から排出された低温の状態にあるキャリアガスを高温の状態に温度調節する第1温度調節手段をさらに含んでおり、原ガスと、上記第1温度調節手段にて温度調節されて高温の状態にあるキャリアガスとを、時間的に交互に上記第1吸脱着素子に接触させることにより、有機溶剤を原ガスから高温の状態にあるキャリアガスに移動させるものである。上記第2吸脱着処理装置は、上記第1吸脱着処理装置から排出された高温の状態にあるキャリアガスを上記第1処理部において上記第2吸脱着素子に接触させるとともに、上記凝縮回収装置から排出された未凝縮の有機溶剤を含む低温の状態にあるキャリアガスを上記第2処理部において上記第2吸脱着素子に接触させることにより、有機溶剤を低温の状態にあるキャリアガスから高温の状態にあるキャリアガスに移動させるものである。上記凝縮回収装置は、上記第2吸脱着処理装置の上記第1処理部から排出された高温の状態にあるキャリアガスを低温の状態に温度調節することにより、有機溶剤を凝縮させるものである。
【0011】
本発明の第2の局面に基づく有機溶剤含有ガス処理システムは、有機溶剤を含有する原ガスから有機溶剤を分離することで原ガスを清浄化して排出するとともに、原ガスから分離した有機溶剤をキャリアガスを用いて回収するものであって、キャリアガスが循環するように通流される循環経路と、上記循環経路上に設けられた第1吸脱着処理装置、凝縮回収装置および第2吸脱着処理装置とを備えている。上記第1吸脱着処理装置は、有機溶剤を吸着および脱着する第1吸脱着素子を含んでいる。上記第2吸脱着処理装置は、有機溶剤を吸着および脱着する第2吸脱着素子を含んでいる。上記凝縮回収装置は、有機溶剤を凝縮させることで有機溶剤を凝縮液として回収するものである。上記第2吸脱着処理装置は、上記第1吸脱着処理装置から見てキャリアガスの通流方向に沿った下流側であってかつ上記凝縮回収装置に至る部分の上記循環経路上に設けられた第1処理部と、上記凝縮回収装置から見てキャリアガスの通流方向に沿った下流側であってかつ上記第1吸脱着処理装置に至る部分の上記循環経路上に設けられた第2処理部とを有している。上記第2吸脱着素子は、当該第2吸脱着素子が回転することにより、その任意の部分が上記第1処理部と上記第2処理部との間で時間的に交互に移動するように構成されている。上記第1吸脱着処理装置は、上記第2吸脱着処理装置の上記第2処理部から排出された低温の状態にあるキャリアガスを高温の状態に温度調節する第1温度調節手段をさらに含んでおり、原ガスと、上記第1温度調節手段にて温度調節されて高温の状態にあるキャリアガスとを、時間的に交互に上記第1吸脱着素子に接触させることにより、有機溶剤を原ガスから高温の状態にあるキャリアガスに移動させるものである。上記第2吸脱着処理装置は、上記第1吸脱着処理装置から排出された高温の状態にあるキャリアガスを高温の状態および低温の状態のいずれかに時間的に交互に温度調節する第2温度調節手段をさらに含んでおり、上記第2温度調節手段にて温度調節されて高温の状態にあるキャリアガスまたは上記第2温度調節手段にて温度調節されて低温の状態にあるキャリアガスを上記第1処理部において上記第2吸脱着素子に接触させるとともに、上記凝縮回収装置から排出された未凝縮の有機溶剤を含む低温の状態にあるキャリアガスを上記第2処理部において上記第2吸脱着素子に接触させることにより、有機溶剤を低温の状態にあるキャリアガスから高温の状態にあるキャリアガスに移動させるものである。上記第2温度調節手段は、上記第1吸脱着素子から有機溶剤を脱着させる脱着処理期間の始めの段階においてキャリアガスを高温の状態に温度調節し、上記第1吸脱着素子から有機溶剤を脱着させる脱着処理期間の終わりの段階においてキャリアガスを低温の状態に温度調節する。上記凝縮回収装置は、上記第2吸脱着処理装置の上記第1処理部から排出された高温の状態にあるキャリアガスを低温の状態に温度調節することにより、有機溶剤を凝縮させるものである。
【0012】
上記本発明の第1および第2の局面に基づいた有機溶剤含有ガス処理システムにあっては、上記キャリアガスが、不活性ガスであることが好ましい。
【0013】
上記本発明の第1および第2の局面に基づいた有機溶剤含有ガス処理システムにあっては、上記第2吸脱着素子が、略円柱状の外形を有するように形成されるとともに、その中心軸周りに回転可能に構成されていることが好ましい。その場合には、上記第2吸脱着素子が上記中心軸周りに回転することにより、上記第2吸脱着素子の上記任意の部分が、上記第1処理部と上記第2処理部との間で時間的に交互に移動するように構成されていることが好ましい。
【0014】
上記本発明の第1および第2の局面に基づいた有機溶剤含有ガス処理システムにあっては、上記第2吸脱着素子が、ハニカム構造を有していることが好ましい。
【0015】
上記本発明の第1および第2の局面に基づいた有機溶剤含有ガス処理システムにあっては、上記第1吸脱着素子が、活性炭素繊維であることが好ましい
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ランニングコストが抑制可能であるとともに、原ガスに対する浄化能力および有機溶剤の回収効率の向上が図られた有機溶剤含有ガス処理システムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態1における有機溶剤含有ガス処理システムのシステム構成図である。
図2図1に示す第2吸脱着処理装置の模式外観図である。
図3図1に示す有機溶剤含有ガス処理システムにおいて、一対の第1吸脱着素子および第2吸脱着素子を用いた吸着処理および脱着処理の時間的な切り替えの様子を示すタイムチャートである。
図4】本発明の実施の形態2における有機溶剤含有ガス処理システムのシステム構成図である。
図5図4に示す有機溶剤含有ガス処理システムにおいて、一対の第1吸脱着素子および第2吸脱着素子を用いた吸着処理および脱着処理の時間的な切り替えの様子を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における有機溶剤含有ガス処理システムのシステム構成図である。図2は、図1に示す第2吸脱着処理装置の模式外観図である。まず、これら図1および図2を参照して、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Aの構成について説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Aは、キャリアガスが循環するように通流される循環経路と、当該循環経路上に設けられた第1吸脱着処理装置100、第2吸脱着処理装置200、凝縮回収装置300およびブロワ400とを主として備えている。
【0021】
ここで、循環経路は、図中に示す配管ラインL3〜L8によって主として構成されており、ブロワ400は、当該循環経路中においてキャリアガスを通流させるための送風手段である。なお、キャリアガスとしては、水蒸気、加熱空気、高温に加熱した不活性ガス等、様々な種類のガスを利用することが可能であるが、特に水分を含まないガスである不活性ガスを利用することとすれば、有機溶剤含有ガス処理システムをより簡素に構成することができる。
【0022】
第1吸脱着処理装置100は、第1処理槽120および第2処理槽130を有する吸脱着処理塔110と、第1温度調節手段としてのヒータ140とを含んでいる。第1処理槽120には、有機溶剤を吸着および脱着する第1吸脱着素子121が収容されており、第2処理槽130には、有機溶剤を吸着および脱着する第1吸脱着素子131が収容されている。
【0023】
ヒータ140は、第1吸脱着処理装置100に供給されたキャリアガスを高温の状態に温度調節するためのものであり、より具体的には、第2吸脱着処理装置200から排出されてブロワ400を経由した低温の状態にあるキャリアガスを高温の状態に温度調節して吸脱着処理塔110に供給するためのものである。ここで、ヒータ140は、第1吸脱着素子121,131が所定の脱着温度に維持されることとなるように、第1処理槽120および第2処理槽130に導入されるキャリアガスを加熱する。
【0024】
第1吸脱着素子121,131は、原ガスを接触させることで原ガスに含有される有機溶剤を吸着する。したがって、第1吸脱着処理装置100においては、第1処理槽120および第2処理槽130に原ガスが供給されることで有機溶剤が第1吸脱着素子121,131によって吸着され、これにより原ガスから有機溶剤が分離されることで原ガスが清浄化化されて清浄ガスとして第1処理槽120および第2処理槽130から排出されることになる。
【0025】
また、吸脱着素子121,131は、高温の状態にあるキャリアガスを接触させることで吸着済みの有機溶剤を脱着する。したがって、第1吸脱着処理装置100においては、第1処理槽120および第2処理槽130に高温の状態にあるキャリアガスが供給されることで有機溶剤が第1吸脱着素子121,131から脱着され、これにより有機溶剤を含有する高温の状態にあるキャリアガスが第1処理槽120および第2処理槽130から排出されることになる。
【0026】
第1吸脱着素子121,131は、活性炭、活性炭素繊維およびゼオライトのいずれかを含む吸着材にて構成される。好適には、第1吸脱着素子121,131としては、粒状、粉体状、ハニカム状等の活性炭やゼオライトが利用されるが、より好適には、活性炭素繊維が利用される。活性炭素繊維は、表面にミクロ孔を有する繊維状構造を有しているため、ガスとの接触効率が高く、他の吸着材に比べて高い吸着効率を実現する。
【0027】
第1吸脱着処理装置100には、配管ラインL1,L2がそれぞれ接続されている。配管ラインL1は、有機溶剤を含有する原ガスを第1処理槽120および第2処理槽130に供給するための配管ラインであり、バルブV101,V102によって第1処理槽120および第2処理槽130に対する接続/非接続状態が切り替えられる。配管ラインL2は、清浄ガスを第1処理槽120および第2処理槽130から排出するための配管ラインであり、バルブV103,V104によって第1処理槽120および第2処理槽130に対する接続/非接続状態が切り替えられる。
【0028】
また、第1吸脱着処理装置100には、配管ラインL3,L4がそれぞれ接続されている。配管ラインL3は、キャリアガスを上記ヒータ140を介して第1処理槽120および第2処理槽130に供給するための配管ラインであり、バルブV105,V106によって第1処理槽120および第2処理槽130に対する接続/非接続状態が切り替えられる。配管ラインL4は、キャリアガスを第1処理槽120および第2処理槽130から排出するための配管ラインであり、バルブV101,V102によって第1処理槽120および第2処理槽130に対する接続/非接続状態が切り替えられる。
【0029】
第1処理槽120および第2処理槽130のそれぞれには、上述したバルブV101〜V106の開閉を操作することにより、原ガスと、ヒータ140にて温度調節されて高温の状態にあるキャリアガスとが、時間的に交互に供給される。これにより、第1処理槽120および第2処理槽130は、時間的に交互に吸着槽および脱着槽として機能することになり、これに伴って有機溶剤が原ガスから高温の状態にあるキャリアガスに移動されることになる。なお、具体的には、第1処理槽120が吸着槽として機能している場合には、第2処理槽130が脱着槽として機能し、第1処理槽120が脱着槽として機能している場合には、第2処理槽130が吸着槽として機能する。
【0030】
ここで、配管ラインL1は、第1処理槽120および第2処理槽130のうち、吸着槽として機能している処理槽に接続されて当該処理槽に原ガスを供給し、配管ラインL2は、第1処理槽120および第2処理槽130のうち、吸着槽として機能している処理槽に接続されて当該処理槽から清浄ガスを排出する。また、配管ラインL3は、第1処理槽120および第2処理槽130のうち、脱着槽として機能している処理槽に接続されて当該処理槽にキャリアガスを供給し、配管ラインL4は、第1処理槽120および第2処理槽130のうち、脱着槽として機能している処理槽に接続されて当該処理槽からキャリアガスを排出する。
【0031】
図1および図2に示すように、第2吸脱着処理装置200は、有機溶剤を吸着および脱着する第2吸脱着素子210を含んだロータ式の吸脱着処理装置にて構成されており、第1処理部220と、第2処理部230と、パージ部240と、配管ラインL8とを主として有している。
【0032】
第1処理部220は、第1吸脱着処理装置100から見てキャリアガスの通流方向に沿った下流側であってかつ凝縮回収装置300に至る部分の循環経路上に設けられており、配管ラインL4,L5にそれぞれ接続されている。
【0033】
第2処理部230は、凝縮回収装置300から見てキャリアガスの通流方向に沿った下流側であってかつ第1吸脱着処理装置100に至る部分の循環経路上に設けられており、配管ラインL6,L7にそれぞれ接続されている。
【0034】
配管ラインL8は、配管ラインL7から分岐して配管ラインL6に合流するように設けられたバイパスラインにて構成されており、パージ部240は、この配管ラインL8上に設けられている。
【0035】
図2に示すように、第2吸脱着素子210は、略円柱状の外形を有する吸着材からなり、その軸中心に中心軸215が設けられている。第2吸脱着処理装置200には、図示しないアクチュエータが付設されており、当該アクチュエータによって中心軸215が回転駆動される。中心軸215が回転駆動されることにより、第2吸脱着素子210は、図中に示す矢印A方向に回転する。
【0036】
第2吸脱着素子210の回転に伴い、第2吸脱着素子210の任意の部分は、第1処理部220と第2処理部230との間で時間的に交互に移動することになる。より詳細には、第2吸脱着素子210の任意の部分は、第1処理部220、パージ部240、第2処理部230の順に移行し、再び第1処理部220に移行する。
【0037】
第2吸脱着素子210は、有機溶剤を含有する高温の状態にあるキャリアガスを接触させることで吸着済みの有機溶剤を脱着する。したがって、第2吸脱着処理装置200においては、配管ラインL4を介して第1処理部220に高温の状態にあるキャリアガスが供給されることで有機溶剤が第2吸脱着素子210から脱着され、これにより有機溶剤を含有する高温の状態にあるキャリアガスが第1処理部220から配管ラインL5を介して排出されることになる。
【0038】
また、第2吸脱着素子210は、低温の状態にあるキャリアガスを接触させることで有機溶剤を吸着する。したがって、第2吸脱着処理装置200においては、配管ラインL6を介して第2処理部230に未凝縮の有機溶剤を含む低温の状態にあるキャリアガスが供給されることで有機溶剤が第2吸脱着素子210によって吸着され、これによりキャリアガスから有機溶剤が分離されることでキャリアガス中に含まれる有機溶剤の濃度が低下し、この有機溶剤の濃度が低下した低温の状態にあるキャリアガスが第2処理部230から配管ラインL7を介して排出されることになる。
【0039】
なお、パージ部240においては、第2処理部230にて吸着処理が実施された後の低温の状態にあるキャリアガスの一部が配管ラインL7,L8を介して第2吸脱着素子210に接触させられる。これにより、パージ部240においては、第1処理部220において脱着処理に使用された部分の第2吸脱着素子210が冷却されることになり、第2処理部230において速やかに第2吸脱着素子210の吸着性能が発揮されることになる。
【0040】
第2吸脱着素子210は、活性アルミナ、シリカゲル、活性炭、ゼオライトのいずれかを含む吸着材にて構成される。好適には、第2吸脱着素子210は、粒状、粉体状、ハニカム状等の活性炭やゼオライトが利用される。活性炭やゼオライトは、低濃度の有機化合物を吸着および脱着する機能に優れている。
【0041】
図1に示すように、凝縮回収装置300は、コンデンサ310と、回収タンク320とを含んでいる。コンデンサ310は、高温の状態にあるキャリアガスを低温の状態に温度調節することによってキャリアガスに含有される有機溶剤を凝縮させるものであり、具体的には、冷却水等を用いてキャリアガスを冷却することで有機溶剤を液化させるクーラにて構成される。また、回収タンク320は、コンデンサ310にて液化された有機溶剤を凝縮液として貯留するものである。
【0042】
凝縮回収装置300には、配管ラインL5,L6がそれぞれ接続されている。配管ラインL5は、第2吸脱着処理装置200の第1処理部220から排出された高温の状態にあるキャリアガスをコンデンサ310に供給するための配管ラインであり、配管ラインL6は、コンデンサ310内に残留する未凝縮の有機溶剤を含む低温の状態にあるキャリアガスをコンデンサ310から排出して第2吸脱着処理装置200の第2処理部230に供給するための配管ラインである。
【0043】
また、凝縮回収装置300には、配管ラインL9,L10がそれぞれ接続されている。配管ラインL9は、回収タンク320に貯留された有機溶剤の凝縮液を外部に向けて排出するための配管ラインであり、配管ラインL10は、回収タンク320中において揮発した有機溶剤を原ガスが搬送される配管ラインL1に戻すための配管ラインである。
【0044】
なお、上述した配管ラインL3には、キャリアガスを循環経路に外部から導入するための配管ラインL0が設けられている。当該配管ラインL0は、上述した有機溶剤含有ガス処理システム1Aの初期設置時においてキャリアガスを循環経路に導入したり、メンテナンス時等において必要に応じてキャリアガスを循環経路に補充したりするためのものである。
【0045】
図3は、図1に示す有機溶剤含有ガス処理システムにおいて、一対の第1吸脱着素子および第2吸脱着素子を用いた吸着処理および脱着処理の時間的な切り替えの様子を示すタイムチャートである。次に、この図3を参照して、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Aにおいて行なわれる有機溶剤含有ガスの処理の詳細について説明する。
【0046】
図3を参照して、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Aは、図中に示す1サイクルを単位期間として当該サイクルが繰り返し実施さることにより、有機溶剤含有ガスの処理が連続して行なわれるものである。
【0047】
上記1サイクルの前半(図中に示す時刻t0〜t2の間)においては、第1吸脱着素子121が設置された第1吸脱着処理装置100の第1処理槽120において吸着処理が実施され、これと並行して、第1吸脱着素子131が設置された第1吸脱着処理装置100の第2処理槽130において脱着処理が実施される。
【0048】
また、上記1サイクルの後半(図中に示す時刻t2〜t4の間)においては、第1吸脱着素子121が設置された第1吸脱着処理装置100の第1処理槽120において脱着処理が実施され、これと並行して、第1吸脱着素子131が設置された第1吸脱着処理装置100の第2処理槽130において吸着処理が実施される。
【0049】
さらに、当該1サイクル中の全期間(図中に示す時刻t0〜t4の間)にわたって、第2吸脱着処理装置200の第1処理部220に位置する部分の第2吸脱着素子210において脱着処理が継続的に実施され、これと並行して、第2吸脱着処理装置200の第2処理部230に位置する部分の第2吸脱着素子210において吸着処理が継続的に実施される。
【0050】
なお、上述した1サイクル中においては、凝縮回収装置300において常時キャリアガスから有機溶剤が回収されることになる。
【0051】
次に、上述した有機溶剤含有ガスの処理について、図1を参照してより詳細に説明する。なお、以下の説明は、第1吸脱着処理装置100の第1処理槽120が吸着槽として機能し、第2処理槽130が脱着槽として機能している状態に基づいたものであるが、これら吸着槽と脱着槽とが入れ替わった場合にも、同様の操作が行なわれることになる。
【0052】
図1に示すように、第1吸脱着処理装置100の第2処理槽130において実施される脱着処理により当該第2処理槽130から排出されることとなる有機溶剤を含有する高温の状態にあるキャリアガスは、第2吸脱着処理装置200の第1処理部220に供給されることで第2吸脱着素子210に接触させられる。当該第1処理部220においては、脱着処理が実施され、これにより第2吸脱着素子210に吸着済みの有機溶剤が当該高温の状態あるキャリアガスによって第2吸脱着素子210から脱着されることになる。
【0053】
第2吸脱着処理装置200の第1処理部220から排出された有機溶剤を含有する高温の状態にあるキャリアガスは、凝縮回収装置300に供給されることで冷却されて低温の状態に温度調節され、これにより有機溶剤の一部が液化して凝縮液として回収される。
【0054】
凝縮回収装置300から排出される未凝縮の有機溶剤を含む低温の状態にあるキャリアガスは、第2吸脱着処理装置200の第2処理部230に供給されることで第2吸脱着素子210に再び接触させられる。当該第2処理部230においては、吸着処理が実施され、これにより第2吸脱着素子210よって低温の状態にあるキャリアガスに含有された有機溶剤が吸着されることになる。
【0055】
第2吸脱着処理装置200の第2処理部230から排出された低温の状態にあるキャリアガスは、ヒータ140に導入されて高温の状態にまで加熱されて温度調節され、これが第1吸脱着処理装置100の第2処理槽130に供給される。
【0056】
上記処理が所定期間にわたって継続して実施されることにより、第2吸脱着処理装置200の第2処理部230にて吸着された有機溶剤が、その後、第2吸脱着処理装置200の第1処理部220において脱着されることになる。そのため、第2吸脱着処理装置200の第2処理部230から排出されるキャリアガス中の有機溶剤の濃度は、大幅に低下することになる。
【0057】
これに伴い、第1吸脱着処理装置100の第2処理槽130に収容された第1吸脱着素子131に接触させられるキャリアガス中に含まれる有機溶剤の濃度も大幅に低下することになる。したがって、当該第1吸脱着素子131の再生が促進されることになる。以上の処理は、第1吸脱着素子131による有機溶剤の脱着が概ね完了して平衡状態に達するまで行なわれる。
【0058】
以上において説明した本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Aとすることにより、未凝縮の有機溶剤を含有するキャリアガスをそのまま循環させて第1吸脱着処理装置100に戻す構成とした場合に比べ、第1吸脱着素子121,131の再生が促進される結果となり、その後において実施される吸着処理の際により効率的に原ガスから有機溶剤が吸着できるようになる。したがって、原ガスに対する浄化能力および有機溶剤の回収効率の向上が図られることになり、従来に比して高性能の有機溶剤含有ガス処理システムとすることができる。
【0059】
また、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Aは、循環経路を構築することでキャリアガスを繰り返し使用できるように構成されたものであるため、経済性にも優れたものとすることができる。したがって、窒素ガス等に代表される不活性ガスをキャリアガスとして使用した場合に、特にランニングコストを抑制できる効果が得られる。
【0060】
以下においては、上述した本発明の実施の形態1における有機溶剤含有ガス処理システム1Aを実際に試作し、これを用いて原ガスの処理を行なった場合を実施例として説明する。
【0061】
実施例においては、原ガスとして酢酸エチルを2000ppmの濃度で含有する30℃のガスを使用し、キャリアガスとして140℃の窒素ガスを使用し、第1吸脱着素子121,131として比表面積が1500mg/m2の活性炭素繊維を使用し、第2吸脱着素子210としてゼオライトからなるハニカム状の吸着材を使用した。
【0062】
まず、初期段階における処理として、上記原ガスを図示しない送風機を用いて第1吸脱着処理装置100の一方の処理槽に風量90m3/minで10分間送風することによって吸着処理を行なった。
【0063】
上記初期段階における処理が終了した後に、以下において説明する10分間にわたる一連の処理を1サイクルとして連続的に繰り返して実施することにより、原ガスの処理を行なった。
【0064】
具体的には、バルブV101〜V106を切り替え操作し、上記一方の処理槽を脱着槽に切り替えるとともに、残る処理槽を吸着槽とした。脱着槽においては、窒素ガスを風量30m3/minで導入することで第1吸脱着素子の脱着処理を行ない、吸着槽においては、上述した条件と同様の条件で吸着処理を行なった。なお、凝縮回収装置300においては、第2吸脱着処理装置200の第1処理部220から排出される酢酸エチルを含有する窒素ガスを10℃にまで冷却することとした。
【0065】
以上において説明した1サイクルを連続的に繰り返して実施した場合において、第1吸脱着処理装置100から排出される清浄ガスに含有される酢酸エチルの濃度が、約20ppmにまで低減されていることが確認された。すなわち、実施例においては、約99%の高い除去率で酢酸エチルを除去できることが確認された。
【0066】
なお、第2吸脱着処理装置200の第1処理部220に導入される部分の配管ラインL4を通流する窒素ガス中に含まれる酢酸エチルの濃度が約31000ppmであることが確認されるとともに、凝縮回収装置300に導入される部分の配管ラインL5を通流する窒素ガス中に含まれる酢酸エチルの濃度が約65000ppmであることが確認された。
【0067】
また、第2吸脱着処理装置200の第2処理部230に導入される部分の配管ラインL6を通流する窒素ガス中に含まれる酢酸エチルの濃度が約59000ppmであることが確認されるとともに、第1吸脱着処理装置100に導入される部分の配管ラインL3を通流する窒素ガス中に含まれる酢酸エチルの濃度が約25000ppmであることが確認された。
【0068】
以上において説明した本実施例により、本発明の適用によって、高い除去率で原ガス中に含まれる有機溶剤としての酢酸エチルを除去することが可能になるとともに、当該酢酸エチルの回収効率の向上が図られることが実験的に確認された。
【0069】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における有機溶剤含有ガス処理システムのシステム構成図である。以下、この図4を参照して、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Bの構成について説明する。
【0070】
図4に示すように、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Bは、上述した実施の形態1における有機溶剤含有ガス処理システム1Aと同様に、キャリアガスが循環するように通流される循環経路と、当該循環経路上に設けられた第1吸脱着処理装置100、第2吸脱着処理装置200、凝縮回収装置300およびブロワ400とを主として備えている。ここで、循環経路は、図中に示す配管ラインL3〜L8,L11によって主として構成されている。
【0071】
本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Bは、第2吸脱着処理装置200が第2温度調節手段としての温度調節機構250を含んでいる点において、上述した実施の形態1の場合と相違している。
【0072】
温度調節機構250は、第2吸脱着処理装置200の第1処理部220に供給されたキャリアガスを高温の状態および低温の状態のいずれかに時間的に交互に温度調節するためのものであり、より具体的には、第1吸脱着処理装置100から排出された高温の状態にあるキャリアガスを高温の状態および低温の状態のいずれかに時間的に交互に温度調節して第1処理部220に供給するためのものである。
【0073】
温度調節機構250は、配管ラインL4から分岐して再び配管ラインL4に合流するように設けられたバイパスラインとしての配管ラインL11と、配管ラインL11上に設けられたクーラ251と、配管ラインL4に設けられたバルブV201と、配管ラインL11に設けられたバルブV202とを含んでいる。なお、バルブV201は、配管ラインL4から分岐して設けられた配管ラインL11に並走する部分の配管ラインL4に設けられている。
【0074】
ここで、配管ラインL4は、有機溶剤を含有する高温の状態にあるキャリアガスを高温の状態に温度調節して第1処理部220に供給する場合に、第1処理部220に位置する部分の第2吸脱着素子210が所定の脱着温度に維持されることとなるように、第1処理部220に導入されるキャリアガスをそのまま搬送するか、あるいは必要に応じて配管ラインL11に並走する部分の配管ラインL4に別途設けられたヒータを用いて加熱して搬送するための配管ラインである。
【0075】
一方、クーラ251は、有機溶剤を含有する高温の状態にあるキャリアガスを低温の状態に温度調節して第1処理部220に供給する場合に、第1処理部220に位置する部分の第2吸脱着素子210が所定の吸着温度に維持されることとなるように、第1処理部220に導入されるキャリアガスを冷却する。
【0076】
図5は、図4に示す有機溶剤含有ガス処理システムにおいて、一対の第1吸脱着素子および第2吸脱着素子を用いた吸着処理および脱着処理の時間的な切り替えの様子を示すタイムチャートである。次に、この図5を参照して、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Bにおいて行なわれる有機溶剤含有ガスの処理の詳細について説明する。
【0077】
図5を参照して、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Bは、図中に示す1サイクルを単位期間として当該サイクルが繰り返し実施さることにより、有機溶剤含有ガスの処理が連続して行なわれるものである。
【0078】
上記1サイクルの前半(図中に示す時刻t0〜t2の間)においては、第1吸脱着素子121が設置された第1吸脱着処理装置100の第1処理槽120において吸着処理が実施され、これと並行して、第1吸脱着素子131が設置された第1吸脱着処理装置100の第2処理槽130において脱着処理が実施される。
【0079】
また、上記1サイクルの後半(図中に示す時刻t2〜t4の間)においては、第1吸脱着素子121が設置された第1吸脱着処理装置100の第1処理槽120において脱着処理が実施され、これと並行して、第1吸脱着素子131が設置された第1吸脱着処理装置100の第2処理槽130において吸着処理が実施される。
【0080】
さらに、当該1サイクル中の全期間(図中に示す時刻t0〜t4の間)にわたって、第2吸脱着処理装置200の第2処理部230に位置する部分の第2吸脱着素子210において脱着処理が継続的に実施される。
【0081】
一方、当該1サイクルの前半の始めの段階(図中に示す時刻t0〜t1の間)においては、第2吸脱着処理装置200の第1処理部220に位置する部分の第2吸脱着素子210において脱着処理が実施され、当該1サイクルの前半の終わりの段階(図中に示す時刻t1〜t2の間)においては、当該第1処理部220に位置する部分の第2吸脱着素子210において吸着処理が実施される。
【0082】
また、当該1サイクルの後半の始めの段階(図中に示す時刻t2〜t3の間)においては、第2吸脱着処理装置200の第1処理部220に位置する部分の第2吸脱着素子210において脱着処理が実施され、当該1サイクルの後半の終わりの段階(図中に示す時刻t3〜t4の間)においては、当該第1処理部220に位置する部分の第2吸脱着素子210において吸着処理が実施される。
【0083】
すなわち、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Bにあっては、一対の第1吸脱着素子121,131のいずれかにおいて脱着処理が実施される脱着処理期間の始めの段階において第2吸脱着処理装置200の第1処理部220に位置する部分の第2吸脱着素子210において脱着処理が実施され、一対の第1吸脱着素子121,131のいずれかにおいて脱着処理が実施される脱着処理期間の終わりの段階において第2吸脱着処理装置200の第1処理部220に位置する部分の第2吸脱着素子210において吸着処理が実施される。
【0084】
なお、上述した1サイクル中においては、凝縮回収装置300において常時キャリアガスから有機溶剤が回収されることになる。
【0085】
次に、上述した有機溶剤含有ガスの処理を具体的に実現するために、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Bにおいて実施される操作について、図4を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明は、第1吸脱着処理装置100の第1処理槽120が吸着槽として機能し、第2処理槽130が脱着槽として機能している状態に基づいたものであるが、これら吸着槽と脱着槽とが入れ替わった場合にも、同様の操作が行なわれることになる。
【0086】
図4に示すように、第1吸脱着処理装置100の第2処理槽130に収容された第1吸脱着素子131の脱着処理期間の始めの段階(すなわち、図5中に示すt0〜t1の間)においては、温度調節機構250に設けられたバルブV201が開放されるとともにバルブV202が閉塞されることにより、第1吸脱着処理装置100の第2処理槽130から排出された有機溶剤を含有する高温の状態にあるキャリアガスが配管ラインL4を経由してそのまま第2吸脱着処理装置200の第1処理部220に供給されることで当該第1処理部220に位置する部分の第2吸脱着素子210に接触させられる。
【0087】
これにより、第2吸脱着素子210の吸着済みの有機溶剤が当該高温の状態あるキャリアガスによって第2吸脱着素子210から脱着されることになり、第1処理部220から排出されるキャリアガス中の有機溶剤の濃度が徐々に上昇する。これに伴って、第2吸脱着処理装置200の第2処理部230に供給されるキャリアガス中の有機溶剤の濃度も徐々に上昇し、第1吸脱着処理装置100の第2処理槽130に収容された第1吸脱着素子131に接触させられるキャリアガス中に含まれる有機溶剤の濃度も徐々に上昇することになるが、当該第1吸脱着素子131の脱着処理自体には殆ど影響はなく、相当程度にまで当該第1吸脱着素子131の再生が行なわれる。当該操作は、第1吸脱着素子131からの有機溶剤の脱着が概ね完了して平衡状態に達するまで行なわれる。
【0088】
次に、第1吸脱着処理装置100の第2処理槽130に収容された第1吸脱着素子131の脱着処理期間の終わりの段階(すなわち、図2中に示すt1〜t2の間)においては、温度調節機構250に設けられたバルブV201が閉塞されるとともにバルブV202が開放されることにより、第1吸脱着処理装置100の第2処理槽130から排出された有機溶剤を含有する高温の状態にあるキャリアガスがクーラ251に導入されて低温の状態にまで冷却されて温度調節され、これが第2吸脱着処理装置200の第1処理部220に供給されることで当該第1処理部220に位置する部分の第2吸脱着素子210に接触させられる。
【0089】
これにより、第1処理部220に位置する部分の第2吸脱着素子210によってキャリアガスに含有された有機溶剤が吸着されることになり、当該第1処理部220から排出されるキャリアガス中の有機溶剤の濃度が徐々に低下する。これに伴って、第2吸脱着処理装置200の第2処理部230に供給されるキャリアガス中の有機溶剤の濃度も徐々に低下し、さらには第1吸脱着処理装置100の第2処理槽130に収容された第1吸脱着素子131に接触させられるキャリアガス中に含まれる有機溶剤の濃度も徐々に低下することになる。したがって、当該第1吸脱着素子131の再生がさらに促進されることになる。当該操作は、第1吸脱着素子131による有機溶剤の脱着が概ね完了して平衡状態に達するまで行なわれる。
【0090】
なお、その際、クーラ251にて第1吸脱着処理装置100から排出された高温の状態にあるキャリアガスが冷却されることにより、当該キャリアガスに含有された有機溶剤が凝縮する可能性もあるが、上述した第1吸脱着素子131の脱着処理期間の始めの段階において第1吸脱着素子131からの有機溶剤の脱着が概ね完了して平衡状態に達していれば、凝縮回収装置300のコンデンサ310による凝縮処理によって冷却後の温度状態における有機溶剤の気液平衡状態が既に維持されることとなっているため、当該クーラ251による冷却後においてもキャリアガス中に含まれる有機溶剤の気液平衡状態が維持されて有機溶剤が凝縮することはなくなる。
【0091】
ただし、コンデンサ310による冷却後のキャリアガスの温度よりもクーラ251による冷却後のキャリアガスの温度を低く設定した場合には、当該クーラ251において有機溶剤が凝縮する可能性が生じるため、その場合には、当該クーラ251を回収タンク320に接続すれば、凝縮後の有機溶剤を回収タンク320にて回収することが可能になる。
【0092】
以上において説明した本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Bとした場合にも、上述した実施の形態1における有機溶剤含有ガス処理システム1Aとした場合と同様の効果を得ることができる。
【0093】
すなわち、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Bとすることにより、未凝縮の有機溶剤を含有するキャリアガスをそのまま循環させて第1吸脱着処理装置100に戻す構成とした場合に比べ、第1吸脱着素子121,131の再生が促進される結果となり、その後において実施される吸着処理の際により効率的に原ガスから有機溶剤が吸着できるようになる。したがって、原ガスに対する浄化能力および有機溶剤の回収効率の向上が図られることになり、従来に比して高性能の有機溶剤含有ガス処理システムとすることができる。
【0094】
また、本実施の形態における有機溶剤含有ガス処理システム1Bは、循環経路を構築することでキャリアガスを繰り返し使用できるように構成されたものであるため、経済性にも優れたものとすることができる。したがって、窒素ガス等に代表される不活性ガスをキャリアガスとして使用した場合に、特にランニングコストを抑制できる効果が得られる。
【0095】
以下においては、上述した本発明の実施の形態2における有機溶剤含有ガス処理システム1Bを実際に試作し、これを用いて原ガスの処理を行なった場合を実施例として説明する。
【0096】
実施例においては、原ガスとして酢酸エチルを2000ppmの濃度で含有する30℃のガスを使用し、キャリアガスとして130℃の窒素ガスを使用し、第1吸脱着素子121,131として比表面積が1500mg/m2の活性炭素繊維を使用し、第2吸脱着素子210としてゼオライトからなるハニカム状の吸着材を使用した。
【0097】
まず、初期段階における処理として、上記原ガスを図示しない送風機を用いて第1吸脱着処理装置100の一方の処理槽に風量100m3/minで10分間送風することによって吸着処理を行なった。
【0098】
上記初期段階における処理が終了した後に、以下において説明する一連の処理を1サイクルとして連続的に繰り返して実施することにより、原ガスの処理を行なった。
【0099】
具体的には、バルブV101〜V106を切り替え操作し、上記一方の処理槽を脱着槽に切り替えるとともに、残る処理槽を吸着槽とした。脱着槽においては、窒素ガスを風量20m3/minで導入することで第1吸脱着素子の脱着処理を行ない、吸着槽においては、上述した条件と同様の条件で吸着処理を行なった。なお、凝縮回収装置300においては、第2吸脱着処理装置200の第1処理部220から排出される酢酸エチルを含有する窒素ガスを10℃にまで冷却することとした。
【0100】
ここで、脱着槽における脱着を開始した時点を始期とする始めの5分間については、脱着槽から排出される酢酸エチルを含有する140℃の窒素ガスをそのまま第2吸脱着処理装置200の第1処理部220に導入することとした。
【0101】
また、脱着槽における脱着を開始した時点から5分経過した後を始期とする終わりの5分間については、バルブV201,V202を切り替え操作することで脱着槽から排出される酢酸エチルを含有する140℃の窒素ガスをクーラ251を用いて10℃にまで冷却して第2吸脱着処理装置200の第1処理部220に導入することとした
以上において説明した1サイクルを連続的に繰り返して実施した場合において、第1吸脱着処理装置100から排出される清浄ガスに含有される酢酸エチルの濃度が、約20ppmにまで低減されていることが確認された。すなわち、実施例においては、約99%の高い除去率で酢酸エチルを除去できることが確認された。
【0102】
また、上述した脱着槽における脱着を開始した時点を始期とする始めの5分間が終了した時点においては、第2吸脱着処理装置200の第1処理部220に導入される部分の配管ラインL4を通流する窒素ガス中に含まれる酢酸エチルの濃度が約45000ppmであることが確認されるとともに、凝縮回収装置300に導入される部分の配管ラインL5を通流する窒素ガス中に含まれる酢酸エチルの濃度が約65000ppmであることが確認された。
【0103】
さらに、その際、第2吸脱着処理装置200の第2処理部230に導入される部分の配管ラインL6を通流する窒素ガス中に含まれる酢酸エチルの濃度が約59000ppmであることが確認されるとともに、第1吸脱着処理装置100に導入される部分の配管ラインL3を通流する窒素ガス中に含まれる酢酸エチルの濃度が約35000ppmであることが確認された。
【0104】
一方、上述した脱着槽における脱着を開始した時点から5分経過した後を始期とする終わりの5分間が終了した時点においては、第1吸脱着処理装置100に導入される部分の配管ラインL3を通流する窒素ガス中に含まれる酢酸エチルの濃度が約2000ppmであることが確認されるとともに、第2吸脱着処理装置200の第1処理部220に導入される部分の配管ラインL4を通流する窒素ガス中に含まれる酢酸エチルの濃度が約2000ppmであることが確認された。
【0105】
以上において説明した本実施例により、本発明の適用によって、高い除去率で原ガス中に含まれる有機溶剤としての酢酸エチルを除去することが可能になるとともに、当該酢酸エチルの回収効率の向上が図られることが実験的に確認された。
【0106】
なお、上述した本発明の実施の形態1および2における有機溶剤含有ガス処理システム1A,1Bにおいては、ブロワやポンプ等の流体搬送手段やストレージタンク等の流体貯留手段などの構成要素を必要最低限のみ図示して説明を行なったが、これら構成要素は必要に応じて適宜の位置に配置すればよい。
【0107】
また、上述した本発明の実施の形態1および2における有機溶剤含有ガス処理システム1A,1Bにおいては、第1吸脱着処理装置として、第1吸脱着素子が収容された処理槽を2つ具備し、これらが時間的に交互に吸着槽および脱着槽に切り替えられることで連続的に被処理ガスの処理が可能に構成されたものを例示して説明を行なったが、必ずしも連続的に被処理ガスを処理する必要がない場合には、吸脱着処理装置を単一の処理槽を具備したもので構成してもよい。また、被処理ガスを連続的に処理する必要がある場合にも、上述の切り替え式の第1吸脱着処理装置に代えて、ロータ式の吸脱着処理装置としてもよい。
【0108】
このように、今回開示した上記各実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0109】
1A,1B 有機溶剤含有ガス処理システム、100 第1吸脱着処理装置、110 吸脱着処理塔、120 第1処理槽、121 第1吸脱着素子、130 第2処理槽、131 第1吸脱着素子、140 ヒータ、200 第2吸脱着処理装置、210 第2吸脱着素子、215 中心軸、220 第1処理部、230 第2処理部、240 パージ部、250 温度調節機構、251 クーラ、300 凝縮回収装置、310 コンデンサ、320 回収タンク、400 ブロワ、L0〜L11 配管ライン、V101〜V106,V201,V202 バルブ。
図1
図2
図3
図4
図5