【実施例1】
【0015】
図1は秤装置Aの全体を示す概略図で、秤装置Aは、底板1上に載置固定した基台2上にロードセル3の支点側3aが固定支持され、そのロードセル3の重点側3bには支持部材4が固定され、その支持部材4上に計量皿5が載置されて構成されている。
【0016】
ロードセル3は、アルミ合金製の四角柱体の略中央部に略H形状の孔6aが貫通形成され、その孔6aの四隅部に形成された薄肉部分を起歪部とする起歪体6における前記起歪部の上下面にひずみゲージ7a〜7dが貼付され、且つ配線(図示省略)が取り付けられて構成されている。
また、前記ロードセル3を構成する起歪体6の表面には、前記ひずみゲージ7a〜7dを貼着するエリアを除いて防錆コートが施され、前記ひずみゲージ7a〜7dが貼着されたエリアは防湿コートが施されている。尚、図示実施例では重量検出手段としてひずみゲージ式ロードセルを用いた例を示しているがこれに限らず、例えば、磁歪式ロードセル、静電容量型ロードセル、ジャイロ式ロードセル、等を用いてもよい。
【0017】
そして、前記ロードセル3の長手方向の一方側、即ち、支点側3aに該ロードセル3を基台2に固定するボルト9を通すための挿通孔8が起歪体6の上下面を貫通して形成され、且つ前記挿通孔8の両側開口端には前記ボルト9とロードセル3との間、及びロードセル3と前記基台2との間に介在するカラー10を装着するための凹部11が凹設されている。
前記挿通孔8の内径はボルト9の軸径よりやや大径に形成され、ボルト9の軸部が起歪体6に接触しないようにしてある。また、前記凹部11の内径は、前記ボルト9に装着するカラー10の外径よりやや大径で、該凹部11の深さは前記カラー10の高さより高い(深い)、或いはカラー10の高さより低く(浅く)てもよい。
【0018】
前記カラー10は、ロードセル3を構成する起歪体6と異種の金属材、例えば剛性を備えたステンレス材で構成され、そのカラー10の外表面には絶縁性のコート材12が塗布形成されている。
前記絶縁性のコート材12は、例えば、フッ素樹脂コーティング剤(FEP系塗料、PFA系塗料など)、或いはフッ素樹脂コーティング剤と同等の機能を有するものであればよい。
【0019】
前記絶縁性のコート材12の塗膜の厚さは、0.3mm程度であればよく、フッ素樹脂コーティング剤の種類により適宜厚みを変更する。また、前記絶縁性のコート材12の形成方法は、スプレーコーティングが一般的であるが、他の手法によって形成してもよい。
【0020】
また、前記ロードセル3の長手方向の他方側(反対側)、即ち、重点側3bには計量皿5を載承支持するための支持部材4を固定するボルト13の挿通孔14が、前記支点側3aに形成した挿通孔8と同様に起歪体6の上下面を貫通して形成されている。
そして、前記挿通孔14の前記支持部材4と対向する面の開口端には、ロードセル3と前記支持部材4との間に介在する、絶縁性のコート材12が塗布形成されたカラー16を装着するための凹部15が凹設されている。
前記挿通孔14の内径は、前記挿通孔8と同様、ボルト13の軸径よりやや大径に形成され、ボルト13の軸部が起歪体6に接触しないようにしてある。また、前記凹部15の内径は、前記ボルト13に装着するカラー16の外径よりやや大径で、該凹部15の深さは前記カラー16の高さより高い(深い)、或いはカラー16の高さより低く(浅く)てもよい。
【0021】
前記ロードセル3の支点側3aを固定支持する基台2には前記ボルト9が螺合締着される雌ネジ孔9’が形成され、前記ロードセル3の重点側3bに形成した前記挿通孔14には前記支持部材4を固定するボルト13が螺合締着される雌ネジ孔が形成されている。
また、前記ロードセル3の支点側3aを基台2にボルト9で締着固定する際、前記挿通孔8両側の凹部11に絶縁性のコート材12を塗布形成したカラー10を装着し、更に、前記凹部11の内面と前記カラー10の外周面との間の隙間に防水コーキング材またはゴム・ブッシュ17が充填されている。同様に、前記ロードセル3の重点側3bに支持部材4をボルト13で締着固定する際、前記凹部15に絶縁性のコート材12が塗布形成されたカラー16を装着し、更に、前記凹部15の内面と前記カラー16の外周面との間の隙間に防水コーキング材またはゴム・ブッシュ18が充填されている。
前記防水コーキング材17,18としては、例えばシリコン系ゴム、ブチル系ゴムを使用することができる。
【0022】
また、前記ロードセル3の支点側3aを基台2に固定するボルト9の頭部が位置する側、及び前記ロードセル3の重点側3bに支持部材4を固定するボルト13の頭部が位置する側には、防水を施した薄膜蓋(ゴム蓋)19が被着固定され、これにより前記挿通孔8,14に電解質(海水等)などが浸入しないように構成されている。
さらに、前記ロードセル3の支点側3aと基台2との間、及び前記ロードセル3の重点側3bと支持部材4との間には絶縁シート20が挟み込まれてボルト止めされている。
前記絶縁シート20は、前記ロードセル3に固定される基台2、支持部材4との間を絶縁し、異種金属の接触を防止するものであるから、該絶縁シートは少なくとも基台2、支持部材4の接触面と略同じ大きさに形成されている。尚、前記絶縁シートは、予め基台2におけるロードセル3と対向する面、支持部材4におけるロードセル3と対向する面にそれぞれ貼着形成してあってもよい。
図中、21は底板1の外周縁に沿って起立取り付けたケース外壁で、該ケース外壁は底板と一体に形成されていてもよい。
【0023】
上記構造により、起歪体6にひずみゲージ7a〜7dが貼着されたロードセル3は、基台2及び支持部材4との異種金属接触部が絶縁部材で離間され、電食の発生が防止される。
具体的には、ロードセル3の支点側3aでは、該ロードセル3の支点側3aが基台2にボルト9で締着固定されるが、そのボルト9が挿通される挿通孔8の内径は該ボルト9の軸径より大径であるため、ボルト9の軸部と起歪体6とは接触しないように離間保持される。そして、前記挿通孔8両側の凹部11には、表面に絶縁性を有するコート材12が塗布形成されたカラー10が装着されるため、前記ボルト9の頭部が起歪体6に接触するのが防止されると共に、カラー10表面の絶縁性を有するコート材12によって絶縁離間される。また、ロードセル3と基台2との接合面は、絶縁性を有するコート材12が塗布形成されたカラー10、防水を施した薄膜蓋(ゴム蓋)19、及び絶縁シート20によって完全に絶縁離間される。従って、ロードセル3の支点側3aが、基台2と異種金属接触による電食を生じるのを防止できる。さらに、前記凹部11の内面と前記カラー10外周面との間の隙間には防水コーキング材またはゴム・ブッシュ17が充填され、ボルト9の頭部表面は防水を施した薄膜蓋(ゴム蓋)19で被覆されるため、該凹部11に電解質(海水等)などが浸入するのを防止できる。よって、電解質を媒体として異種金属が接触するのを完全に封じることができ、電食の発生を確実に防止することができる。
【0024】
また、前記ロードセル3の重点側3bには計量皿5を載承支持する支持部材4がボルト13で固定されるが、その支持部材4の固定部においても前記支点側3aと同様、ボルト13が挿通される挿通孔14の凹部15には、表面に絶縁性を有するコート材12を塗布形成したカラー16が装着され、更にロードセル3と支持部材4との接合面は、絶縁シート20によって完全に絶縁離間される。従って、ロードセル3の重点側3bが、支持部材4と異種金属接触による電食を生じるのを防止できる。さらに、前記凹部15の内面と前記カラー16外周面との間の隙間には防水コーキング材またはゴム・ブッシュ18が充填され、ボルト13の頭部表面は防水を施した薄膜蓋(ゴム蓋)19で被覆されるため、前記挿通孔14及び凹部15に電解質(海水等)などが浸入するのを防止できる。よって、ロードセル3の重点側3bにおいても電解質を媒体として異種金属が接触するのを完全に封じることができ、電食の発生を確実に防止することができる。
【0025】
そして、図示実施例に示したロードセルの取付構造を施した秤装置Aを、魚市場、水産工場などの過酷環境下で市場テスト(秘密実験)を行ってみたが、1年以上の市場テストを行ってもロードセル3の支点側3a、重点側3b部分に電食は発生しなかった。一方、従来の電食防止(ロードセルの表面を絶縁性のコーティング材で覆う)を施したロードセルを取り付けた秤装置を前記と同様の環境下で市場テストをしたところ、数か月(6か月前後)の使用で確実に電食の発生が認められた。
【実施例2】
【0026】
前記実施例1は、ロードセル3の支点側3aを基台2に固定する場合、ボルト9の頭部とロードセル3との間、及びロードセル3と基台2との間の両方に絶縁性のコート材12を塗布したカラー10を介在して固定する例を示したが、片方にのみ前記カラーを介在して固定してもよい。
例えば、
図2に示すように、ロードセル3と基台2との間に前記カラー10を介在して、ロードセル3と基台2との異種金属の接触を無くし、少なくとも当該箇所における電食の発生を防止する。
そして、もう一方のロードセル3の凹部11の底部とボルト9の頭部との接触箇所には絶縁シートを挟み、且つ前記実施例1と同様、ボルト9の頭部が位置する側には、防水を施した薄膜蓋(ゴム蓋)19を被着固定して、前記挿通孔8に電解質(海水等)などが浸入しないようにする。
尚、ロードセル3の重点側3b側は、前記実施例1と同様、ロードセル3と支持部材4との間に前記カラー16を介在した構成としたが、前記実施例1におけるロードセル3の支点側3aの構造のようにロードセル3に形成する挿通孔14の両側開口端に凹部を形成し、その両方の凹部に前記カラー16を装着してボルト止めしてもよいものである。
図2において、前記実施例1で示した部材と同じ部材は同一に符号を付し説明は省略する。
【0027】
本発明に係る秤装置は図示した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲内で適宜変更可能である。
(1)実施の形態では、ロードセルの支点側と基台との固定を、該ロードセルの上下方向に貫通する挿通孔にボルトを通して基台に螺合締着する構造を示したが、これに限定されず、例えば、底板に略L字形、コ字形等の取付金具を取り付け、その取付金具にロードセルの支点側を接合して固定する形態等でもよい。
(2)実施の形態では、ひずみゲージ式ロードセルとしてロバーバル型の起歪体を用いた例を示したが、これに限定されず、秤装置の形態に応じて起歪体の形状はダイヤフラム型、円柱型等、適宜選択し得るものである。
(3)実施の形態では、カラー外周面における絶縁性を有したコート材の被着形態としてコーティング形態を示したが、これに限らず、例えば、絶縁性部材からなるチューブをカラーに被着した形態としてもよい。