(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は,発振器の一例を示す図である。
図1の発振器の例は,リング状に接続された複数すなわち奇数のインバータIV1,IV2,IV3と,いずれかのインバータ,
図1ではインバータIV3の出力ノードN3に設けられた抵抗R0と容量C1,C2とを有する。インバータIV3は,電源電圧VDDとグランドVSSとの間に設けられたPチャネルMOSトランジスタQ1とNチャネルMOSトランジスタQ2とを有する。他のインバータIV1,IV2もインバータIV3と同じ構成である。また,
図1の例では,インバータIV1の出力ノードN1から発振クロックである出力クロックCKfoutが出力される。
【0012】
図2は,
図1のCR発振器の発振動作を示す図である。インバータIV1の出力ノードN1とインバータIV2の出力ノードN2とは,互いに逆相の電源電圧VDDのHレベルとグランドVSSのLレベルを繰り返すクロック信号である。一方,インバータIV3の出力ノードN3は,出力ノードN2がLレベルからHレベルに立ち上がることに応答して,HレベルからLレベルにCR時定数による積分波形で低下する。そして,出力ノードN3がインバータIV1の閾値電圧であるVDD/2より低くなると,インバータIV1の出力ノードN1がLからHレベルに,インバータIV2の出力ノードN2がHからLレベルに反転し,容量C1による容量カップリングにより,出力ノードN3もVDD/2からLレベルに低下する。
【0013】
逆に,インバータIV3の出力ノードN3は,出力ノードN2がHレベルからLレベルに立ち下がることに応答して,LレベルからHレベルにCR時定数の積分波形で上昇する。そして,出力ノードN3がVDD/2より高くなると,インバータIV1,IV2が反転し,容量C1の容量カップリングにより,出力ノードN3もVDD/2からHレベルに上昇する。
【0014】
一般に,CR発振器の発振周波数はCR時定数の逆数に比例する。つまり,出力クロックCKfoutの発振周波数foutは,
fout∝1/CR=1/R0(C1+C2)
である。
【0015】
一方,
図1のCR発振器は,カップリング容量C1を設けたことにより出力ノードN3のCR時定数による上昇と低下がVDD/2までであり,さらに,3つのインバータIV1-IV3の伝播遅延時間Tpdを考慮すると,発振周波数foutは次の通りである。
fout=1/{2*R0*(C1+C2)*LN(2)+Tpd} (1)
LN(2)は,logナチュラルである。
【0016】
上記式(1)の発振周波数foutは,インバータの伝播遅延時間Tpdを無視できるほど低周波の場合は,次の通りである。
fout=1/{2*R0*(C1+C2)*LN(2)}
したがって,電源電圧VDDに依存しない周波数である。
【0017】
しかしながら,高周波の場合はインバータの伝播遅延時間Tpdを無視することができなくなり,発振周波数foutは式(1)のようになる。そして,このインバータの伝播遅延時間Tpdは,インバータを構成するトランジスタQ1,Q2の特性に依存し,トランジスタ特性は電源電圧VDDが高くなるほどオン抵抗が低くなり,インバータの伝播遅延時間が短くなり,発振周波数はより高くなる。また,温度が上昇する場合もインバータの伝播遅延時間が短くなり,発振周波数はより高くなる。
【0018】
図3は,インバータの伝播遅延時間Tpdを無視できなくなるほどの高周波のクロックを生成する発振器の温度特性および電源電圧特性を示す図である。
図3には,温度Tと電源電圧VDDに対するインバータの伝播遅延時間Tpdの特性と,発振周波数foutの特性が示されている。
【0019】
伝播遅延時間Tpdは,温度Tに対して負の傾きで変化し,電源電圧VDDに対しても同様である。その結果,発振器の発振周波数foutは,伝播遅延時間TpdとCR時定数に反比例するので,温度Tに対して正の傾きで変化し,電源電圧VDDに対しても同様である。
【0020】
図3の温度特性と電源電圧特性によれば,温度Tに対して正の傾きで変化する発振周波数foutを,温度Tに対して負の傾きで変化する電源電圧VDDで制御することで発振周波数を温度Tに対して一定値にすることができる。さらに,電源電圧VDDの温度Tに対する傾きを負または正の任意の傾きに制御することができれば,発振周波数の温度Tに対する変化を正の傾きまたは負の傾きのいずれにも,そしていずれの傾きの程度にも設定することができる。
【0021】
そこで,本実施の形態では,温度Tに対する基準電圧を任意の傾きに且つ少ない工数で設定できる基準電圧生成回路を提供し,その基準電圧生成回路を利用した発振器であって,発振周波数を温度Tに対して正または負の傾きそして任意の傾きに設定できる発振器を提供する。
【0022】
[本実施の形態における発振回路]
図4は,本実施の形態における発振回路の構成図である。発振回路は,第1の電源EVDDを供給され所望の温度特性を有する基準電圧Vrefを生成する基準電圧生成回路10と,第1の電源EVDDに接続され基準電圧Vrefに基づいて所定の電圧を有する第2の電源VDDを生成する電源レギュレータ12と,第2の電源VDDが供給される発振器OSCとを有する。
【0023】
基準電圧生成回路10は,例えばバンドキャップレファレンス回路であり,基準電圧Vrefに温度に対する所望の傾きを設定できる補正機能を有する。この基準電圧の所望の温度特性は,レジスタREG1に格納される設定信号S4により設定される。それに伴い,電源レギュレータ12が基準電圧Vrefを基準に生成する第2の電源VDDの電圧も,所望の温度特性を有することになる。
【0024】
発振器OSCは,
図1と同様に,複数すなわち奇数のインバータIV1,IV2,IV3とインバータIV3の出力ノードN3に設けられたRC回路とを有する。3つのインバータには,第2の電源VDDが供給されている。RC回路は,抵抗R0と容量C1,C2とを有し,
図4の例では,抵抗R0と容量C2のいずれか一方または両方が可変設定になっていて,レジスタREG2に設定された設定信号S0,S2により可変設定される。抵抗R0と容量C2とが可変設定可能になっていることを除いて,発振器OSCは
図1の発振器と同じ回路構成である。
【0025】
本実施の形態では,LSI外部のテスタ20が,発振器OSCの出力クロックCKfoutの発振周波数foutと温度Tをモニタしながら,周波数が温度Tに対して所望の傾き特性を有するように,レジスタREG1,REG2内の設定信号S4,S0,S2を設定する。
【0026】
図3で説明したとおり,発振器OSC内のインバータの伝播遅延時間Tpdは,温度Tに対して負の傾きを有する温度特性を持つ。従って,発振器OSCの周波数は温度Tに対して正の傾きを有する温度特性を持つ。一方,インバータの伝播遅延時間は,第2の電源電圧VDDに対しても負の傾きを有する特性を持つ。従って,発振器の周波数は,第2の電源電圧VDDの電圧が上昇すれば上昇し,電圧が低下すれば低下し,第2の電源電圧VDDに対して正の傾きの特性を有する。
【0027】
図5は,
図4の発振回路の温度特性を示す図である。
図5には,温度Tに対する第2の電源電圧VDDと,インバータの伝播遅延時間Tpdと,周波数foutの特性が示されている。
図3に示したように,伝播遅延時間Tpdが温度Tに対して負の傾きを有するので,
図5(1)に示されるように,第2の電源電圧VDDを温度Tに対して負の傾きを有する特性aのようにすれば,
図5(2)のように伝播遅延時間Tpdは温度Tに対して一定の値になる特性aにでき,
図5(3)のように周波数foutも温度Tに対して一定の値の特性aにできる。第2の電源電圧VDDは基準電圧Vrefと同じ温度特性であるので,
図5(1)の第2の電源電圧VDDの特性は,基準電圧生成回路の基準電圧Vrefの温度特性を設定することで実現できる。
【0028】
さらに,第2の電源電圧VDDの温度Tに対する負の傾き特性を,特性aより急峻な負の傾きの特性cにすれば,
図5(2)の伝播遅延時間Tpdは温度Tに対して正の傾きを有する特性cになるので,
図5(3)の周波数foutは温度Tに対して負の傾きを有する特性cになる。
【0029】
そして,第2の電源電圧VDDの温度Tに対する負の傾き特性を,特性aより緩やかな傾きまたは正の傾きの特性bにすれば,
図5(2)の伝播遅延時間Tpdは温度Tに対して負の傾きを有する特性bになるので,
図5(3)の周波数foutは温度Tに対して正の傾きを有する特性bになる。これは,
図3と同じ特性である。
【0030】
このように,基準電圧Vrefの温度特性を調節することで,周波数foutの温度Tに対する特性を正の傾きbまたは負の傾きcまたは一定の値aのいずれにも設定することができる。
【0031】
[第1の実施の形態における基準電圧生成回路]
図6は,第1の実施の形態における基準電圧生成回路の回路図である。さらに,
図7は,基準電圧生成回路の特性を示す図である。
図6の基準電圧生成回路であるバンドギャップレファレンス回路10は,第1,第2のPN接合素子D1,D2と,第1の差動増幅器A1と,第2の差動増幅器A2とを有する。
【0032】
第1,第2のPN接合素子D1,D2は,PNPバイポーラトランジスタのベースとコレクタとを短絡したダイオードであり,バイポーラトランジスタのエミッタ・ベース間のPN接合によるPN接合素子である。第1のPN接合素子D1のエミッタ面積(M=2)は,第2のPN接合素子D2のエミッタ面積(M=1)よりも2倍と大きい。
【0033】
NMOSトランジスタQ10と,PMOSトランジスタQ11,Q12,Q13とで,第1,第2のPN接合素子D1,D2に所定の電流I1,I2を生成する。すなわち,NMOSトランジスタQ10のゲートには所定のバイアス電圧Vbiasが供給され,ソースはグランドVSSに接続されており,NMOSトランジスタQ10はバイアス電圧Vbiasに応じた電流I0を生成する。PMOSトランジスタQ11,Q12,Q13は,それぞれソースが第1の電源電圧EVDDに接続され,ゲートが共通に接続されたカレントミラー回路を構成し,電流I0のトランジスタQ11とQ12,Q13とのゲート幅比倍の電流I1,I2が,トランジスタQ12,Q13に流れる。例えば,トランジスタQ12,Q13のゲート幅を等しくすれば電流I1,I2は等しくなり,トランジスタQ13のゲート幅をトランジスタQ12より広くすればその比に対応して電流I2は電流I1より大きくなる。
【0034】
I1=I2またはI1<I2の場合は,第1,第2のPN接合素子D1,D2の接合面積がD1>D2であるので,第2のPN接合素子D2の電流密度は,第1のPN接合素子D1よりも高くなる。PN接合は,電流密度が大きい程,順方向電圧VBEが大きく,温度Tに対する負の傾きが緩やかになる。したがって,
図7(1)に示したように,第2の順方向電圧VBE2が第1の順方向電圧VBE1より大きく,温度Tに対する負の傾きはVBE2のほうがVBE1より緩やかである。この順方向電圧の違いと傾きの違いは,電流密度の違いに起因する。
【0035】
図6において,第1の差動増幅器A1の正極入力には第1の順方向電圧VBE1が入力され,負極入力には出力電圧V11とグランドVSSとの間に設けた抵抗R1,R2の接続ノードV10が入力される。差動増幅器A1により両入力の電圧は等しく(V10=VBE1)なるので,出力電圧V11は,次の通りとなる。
V11={(R1+R2)/R2}*VBE1 (2)
この出力電圧V11は,
図7(1)の第1の順方向電圧VBE1のレベルを(R1+R2)/R2倍に高くした電圧であり,
図7(2)に示されるように,第2の順方向電圧VBE2と所定の温度T1で交差する温度特性を有する。どの温度T1で交差するかは,抵抗R1,R2の抵抗値に依存する。一例としては,温度T1は室温になるように抵抗R1,R2の抵抗値が選択されることが望ましい。
【0036】
さらに,
図6において,第2の差動増幅器A2の正極入力には,第2の順方向電圧VBE2が入力され,負極入力には,出力の基準電圧Vrefと第1の差動増幅器A1の出力電圧V11との間に直列に設けられた抵抗R4,R3の接続ノードV12が入力される。つまり,抵抗R3にはV12とV11との差電圧V12-V11が印加されているので,抵抗R3と直列接続された抵抗R4には差電圧V12-V11の抵抗R4,R3の抵抗比R4/R3倍の電圧が印加される。差動増幅器A2の動作により両入力は等しい電圧になるので,V12=VBE2となっている。したがって,出力の基準電圧Vrefは,次の通りになる。
Vref=VBE2+(R4/R3)*[V12-V11] (3)
そして,V12=VBE2と式(2)の電圧V11とから,基準電圧Vrefは次の通りである。
Vref= VBE2+(R4/R3)*[VBE2-{(R1+R2)/R2}*VBE1] (4)
この式(3)(4)において,V12-V11=VBE2-V11は,
図7(3)に示されるように,温度T1で負から正になる正の傾きの温度特性を有する。そして,(R4/R3)*[V12-V11]は,抵抗R4とR3の抵抗比R4/R3に応じて,その正の傾きが変動する温度特性を有する。
【0037】
したがって,式(3)(4)の基準電圧Vrefは,
図7(1)の第2の順方向電圧VBE2の負の傾き特性と,
図7(3)の(R4/R3)*[V12-V11]の正の傾き特性との和であるので,基準電圧Vrefの温度特性は,
図7(4)に示されるように,温度T1の定電圧を中心として,抵抗比R4/R3に応じて正の傾きから負の傾きに変化する。つまり,
図7(4)に示した基準電圧Vrefは,バンドギャップレファレンス回路10内の抵抗R1,R2の抵抗値を適切設計することで,任意の温度T1での定電圧を中心として,抵抗R4,R3の抵抗比R4/R3に依存した温度に対する傾きを持つ温度特性にすることができる。
【0038】
図8は,本実施の形態における発振回路での周波数の温度特性設定方法を示す図である。
図7(4)で示したとおり,基準電圧Vrefは,所定温度T1での定電圧を中心として,抵抗比R4/R3の依存した傾きの温度特性を有する。一方,基準電圧Vrefが高ければ発振器のインバータの伝播遅延時間Tpdが短くなり周波数foutが高くなる。したがって,発振周波数foutも基準電圧Vrefと同じ温度特性になる。
図8(1)には,温度Tに対して基準電圧Vrefと周波数foutとが同じ温度特性になることが示されている。
【0039】
しかしながら,製造ばらつきに起因して抵抗R3,R4の相対ばらつきが発生すると,抵抗比R4/R3がばらつく。つまり,
図8(2)に示されるとおり,抵抗比R4/R3が製造ばらつきにより期待値より大きくなると,
図8(1)の特性が,反時計方向にばらつく。従って,本実施の形態の
図4の発振回路では次のようにして周波数の温度特性の校正を行う。
【0040】
(1)第1に,温度をT1℃にして,周波数foutをモニタしながら,発振器OSC内の抵抗R0または容量C2を可変制御して,周波数foutが所望の値になる抵抗R0または容量C2の抵抗値または容量値を設定する設定値を探索し,その設定値をレジスタREG2に記憶させる。温度がT1℃のため,基準電圧Vrefは抵抗比R4/R3が如何なる値であっても固定電圧になる。つまり,発振器OSC内の抵抗R0や容量C2を設定することで,
図8(1)(2)の温度T1での固定の周波数を所望の周波数に設定できる。
【0041】
(2)第2に,温度をT1と異なる例えばT2にした状態で,周波数foutをモニタしながら,基準電圧生成回路10内の例えば第4の抵抗R4の抵抗値を可変させて,所望の周波数になる抵抗R4の設定値を探し,その設定値をレジスタREG1に書込む。つまり,
図8(2)に示すとおり抵抗比R4/R3の製造ばらつきにより,周波数foutの温度特性が
図8(2)のような時計回り方向またはそれとは逆の反時計周り方向にばらつくことがある。従って,温度T1と異なる温度T2で抵抗R4の各設定値毎に周波数foutを測定して温度特性を確認し,所望の温度特性になる抵抗R4の設定値をレジスタREG1に設定する。なお,第4の抵抗R4の抵抗値を可変する代わりに,第3の抵抗R3の抵抗値を可変にしたり,抵抗R3,R4の抵抗比R4/R3を可変にしたりしてもよい。
【0042】
図9は,一般的なバンドギャップレファレンス回路が生成する基準電圧Vrefの温度特性と,その基準電圧Vrefに対応した発振器の周波数foutの温度特性を示す図である。
図9の温度特性では,基準電圧Vrefは温度T1で定電圧にならないため,校正工程では,全ての温度特性を検出するために,温度T1での全ての設定値に対する基準電圧Vref(または周波数fout)と,温度T1とは異なる温度T2での全ての設定値に対する基準電圧Vref(または周波数fout)を測定する。そして,(1)第1に,温度T1で所望の基準電圧Vref(または周波数fout)となり,(2)第2に,所望の温度特性となることを両方満たす設定をするためには,発振器での設定値を可変設定して(1)の周波数を設定した後,(2)の温度特性を設定し,再度(1)の周波数を設定するという工程を繰り返す必要がある。
【0043】
それに対して,本実施の形態では,
図8において上記した(1)の設定と(2)の設定とをそれぞれ1回ずつ行えばよいので,校正工程の工数を削減することができ,校正コストを少なくすることができる。
【0044】
図6の基準電圧生成回路内の可変抵抗R4は,複数の抵抗素子と,それらの接続ノードに設けられた複数のスイッチとで構成することができる。そして,設定信号により複数のスイッチのオン,オフを制御することで,基準電圧Vrefの温度特性を所望の温度特性に設定することができる。通常,そのようなスイッチは,PMOSとNMOSとを並列に接続したCMOSトランスファゲートで構成される。
【0045】
ただし,LSIのデバイスの微小化に伴い,MOSトランジスタのゲート耐圧が低下して内部電源が低下する一方で,オフ状態でのリーク電流を抑制するために,MOSトランジスタの閾値電圧を高く設計することが行われている。その場合,ゲート電圧が低下する一方で閾値電圧は高くなり,CMOSトランスファゲートを完全にオン動作させることが困難になる。
【0046】
そこで,基準電圧生成回路内の可変抵抗R4の可変設定をCMOSトランスファゲート以外の回路で実現することが望まれる。
【0047】
図10は,本実施の形態における基準電圧生成回路の第2の差動増幅器の回路図である。
図10の第2の差動増幅器は,CMOSトランスファゲートを使用せずに,抵抗R4の抵抗値を可変設定可能になっている。
【0048】
この第2の差動増幅器A2は,入力電圧V12とVBE2とを入力し,それらの電圧差に応じた出力電圧をノードN26に出力する前段増幅器A2-1と,ノードN26の出力電圧をさらに増幅する後段増幅器A2-2とを有する。前段増幅器A2-1は,入力電圧V12,VBE2がゲートに印加されるNMOSトランジスタQ21,Q22と,パワーダウン信号PDがゲートに印加されるNMOSトランジスタQ28とインバータIV10を介してゲートに印加されるPMOSトランジスタQ23,Q24と,カレントミラー回路を構成するPMOSトランジスタQ25,Q26と,バイアス電圧BIASがゲートに印加され電流源となるNMOSトランジスタQ27とを有する。前段増幅器A2-1は,パワーダウン信号PDがHレベルの時に前段増幅器A2-1は活性化され,入力電圧V12,VBE2の差動電圧に応じて出力ノードN26に出力信号を生成する。
【0049】
後段増幅器A2-2は,出力ノードN26がゲートに供給されソース接地増幅器を構成するPMOSトランジスタQ32(Q42,Q52,Q62)と,バイアス電圧BIASがゲートに供給され電流源トランジスタとなるNMOSトランジスタQ33(Q43,Q53,Q63)と,デコーダ30の出力信号S4(0)(S4(1),S4(2),S4(3))がゲートに供給される1対のPMOSトランジスタQ31(Q41,Q51,Q61)とNMOSトランジスタQ33(Q43,Q53,Q63)とを有する回路ユニットを並列に4段有する。そして,それらの4段の回路ユニットの間には,第4の抵抗R4を構成する複数の抵抗素子R4-1,R4-2,R4-3,R4-5が設けられている。
【0050】
レジスタREG1に格納される2ビットの設定値S4がデコーダ30に入力され,設定値S4に応じて,4つの設定信号S4(0),S4(1),S4(2),S4(3)のいずれかが選択されてLレベルになり,他の設定信号は全てHレベルになる。設定信号がLレベルになった回路ユニットは活性化状態になり,前段増幅器A2-1の出力ノードN26を増幅する。一方,設定信号がHレベルになった回路ユニットは非活性状態になり,例えばトランジスタQ32,Q33の接続ノードはHインピーダンス状態になる。
【0051】
従って,出力信号S4(0)がLレベルの場合には,第4の抵抗は,抵抗素子R4-1,R4-2,R4-3,R4-4とR4-5の合計抵抗になり,最も抵抗値が大きくなる。一方,出力信号S4(3)がLレベルの場合には,第4の抵抗は,抵抗素子R4-4とR4-5の合計抵抗になり,最も抵抗値が小さくなる。このように,
図10の第2の差動増幅器A2では,第4の抵抗の4つの抵抗素子R4-1乃至R4-4を出力段の複数のソース接地増幅器間に設けて,一つのソース接地増幅器だけを活性化して,第4の抵抗の抵抗値を可変設定可能にしている。
【0052】
図10の第2の差動増幅器の基準電圧Vrefを出力する出力ノードは,活性化状態にされたソース接地回路ユニットのトランジスタQ32,Q33の接続ノード,Q42,Q43の接続ノード,Q52,Q53の接続ノード,Q62,Q63の接続ノードになる。さらに,抵抗R5と容量C5とは,閉アンプ構成の位相補償用の抵抗と容量である。
【0053】
[第2の実施の形態における基準電圧生成回路]
図11は,第2の実施の形態における基準電圧生成回路の図である。
図6の第1の実施の形態の基準電圧生成回路と同様に,
図11の基準電圧生成回路は,NMOSトランジスタQ10,PMOSトランジスタQ11,Q12,Q13,PNダイオードD1,D2,抵抗R3,R4,及び差動増幅器A2とを有する。一方,
図11の基準電圧生成回路は,
図6と異なり,第1の順方向電圧VBE1は,差動増幅器A1を介して電圧V11として抵抗R3を介して差動増幅器A2の負極入力に入力され,第2の順方向電圧VBE2は,差動増幅器A3を介して抵抗R5,R6の抵抗比R6/(R5+R6)倍に低下して,電圧V13(={R6/(R5+R6)}VBE2)として,差動増幅器A2の正極入力に入力される。
【0054】
したがって,
図11の基準電圧生成回路が生成する基準電圧Vrefは,以下の通りである。
【0056】
上記の式に示されるとおり,負の温度特性を有するV13を生成する差動増幅器A3と,正の温度特性を有するV12-V11(VBE1)とにより,基準電圧Vrefは,抵抗比R4/R3に応じて正の温度特性,負の温度特性,温度特性無しのいずれにも設定可能である。
【0057】
図12は,第2の実施の形態における基準電圧生成回路の温度特性を示す図である。
図6の例では,第1の順方向電圧VBE1を上昇させて,第2の順方向電圧VBE2の温度特性と温度T1で交差させている。それに対して,
図11の例では,第2の順方向電圧VBE2を差動増幅器A3と抵抗R5,R6とで低下させて(V13-V12=(V6/(V5+V6))*VBE2),第1の順方向電圧VBE1(=V11)の温度特性と温度T1で交差させている。したがって,抵抗R3に印加される電圧V12-V11は,
図6と同じになる。その結果,
図11においても,抵抗比R4/R3の設定に応じて,
図12(3)の電圧V12-V11の温度特性の正の傾きの程度を可変設定できる。その結果,
図7(4)と同様に,
図12(4)のように,基準電圧Vrefの温度特性を,抵抗比R4/R3の設定により任意の正(R4/R3大)または負(R4/R3小)の傾きの特性にすることができる。
【0058】
[第3の実施の形態における基準電圧生成回路]
図13は,第3の実施の形態における基準電圧生成回路の図である。
図6の第1の実施の形態の基準電圧生成回路と同様に,
図13の基準電圧生成回路は,NMOSトランジスタQ10,PMOSトランジスタQ11,Q12,Q13,PNダイオードD1,D2,抵抗R3,R4,及び差動増幅器A2とを有する。さらに,
図13の基準電圧生成回路は,第1の順方向電圧VBE1を,差動増幅器A1と抵抗R1,R2とにより抵抗比(R1+R2)/R2倍に高くして,抵抗R3を介して差動増幅器A2の負極入力に入力している。
【0059】
一方,
図13の基準電圧生成回路では,
図6と異なり,第2の順方向電圧VBE2を,差動増幅器A3を介して抵抗R5,R6の抵抗比R6/(R5+R6)倍に低下して,電圧V13(={R6/(R5+R6)}VBE2)として,差動増幅器A2の正極入力に入力される。
【0060】
つまり,
図13の基準電圧生成回路では,第1の順方向電圧VBE1を高い電圧にシフトし,第2の順方向電圧VBE2を低い電圧にシフトし,
図7(2)(3)や
図12(2)(3)のように,温度T1で交差する特性を生成し,抵抗R3の電圧V12-V11を正の温度特性にしている。それ以外の動作特性は,
図6,
図11と同じである。
【0061】
したがって,
図13の基準電圧生成回路が生成する基準電圧Vrefは,以下の通りである。
【0063】
上記の式に示されるとおり,負の温度特性を有するV13を生成する差動増幅器A3と,正の温度特性を有するV12-V11(VBE1)とにより,基準電圧Vrefは,抵抗比R4/R3に応じて正の温度特性,負の温度特性,温度特性無しのいずれにも設定可能である。
【0064】
以上の通り,本実施の形態の基準電圧生成回路によれば,所定の温度T1で固定電圧になり,抵抗比R4/R3で正から負の任意の傾きの温度特性を有する基準電圧Vrefを生成することができる。したがって,この基準電圧Vrefに基づいて内部電源VDDを生成する電圧レギュレータを設け,その内部電源VDDを電源とする奇数段のインバータとRC回路からなるRC発振回路を設けることで,発振周波数の温度特性を任意の正または負の傾きに設定することができる。
【0065】
以上の実施の形態をまとめると,次の付記のとおりである。
【0066】
(付記1)
第1の順方向電圧が印加される第1のPN接合素子と,
前記第1のPN接合素子と電流密度が異なり,前記第1の順方向電圧より高い第2の順方向電圧が印加される第2のPN接合素子と,
前記第1のPN接合素子のアノードが第1の入力に接続され,出力と第1の電位との間に直列に設けられた第1および第2の抵抗の第1の接続ノードが第2の入力に接続され,前記出力に第1の出力電圧を生成する第1の差動増幅器と,
前記第2のPN接合素子のアノードが第1の入力に接続され,出力と前記第1の差動増幅器の出力との間に直列に設けられた第4および第3の抵抗の第2の接続ノードが第2の入力に接続され,前記出力に基準電圧を生成する第2の差動増幅器とを有し,
前記第3および第4の抵抗の抵抗比が可変である基準電圧生成回路。
【0067】
(付記2)
付記1において,
前記第1の出力電圧は,前記第2の順方向電圧と温度依存特性が異なり,
前記第1の出力電圧は,前記第1および第2の抵抗の抵抗比に応じて,第1の温度で,前記第2の順方向電圧と同じ電圧になる基準電圧生成回路。
【0068】
(付記3)
第1の順方向電圧を有する第1のPN接合素子と,
前記第1のPN接合素子と電流密度が異なり,前記第1の順方向電圧より高い第2の順方向電圧を有する第2のPN接合素子と,
前記第1の順方向電圧が第1の入力に入力され,出力が第2の入力に入力され,前記出力に前記第1の順方向電圧を生成する第1の差動増幅器と,
前記第2の順方向電圧が第1の入力に入力され,出力が第2の入力に入力され,前記出力と基準電圧との間に第5および第6の抵抗(R5,R6)が設けられ,前記第5および第6の抵抗の第3の接続ノードに第2の出力電圧を生成する第3の差動増幅器と,
前記第2の出力電圧が第1の入力に入力され,出力と前記第1の差動増幅器の出力との間に直列に設けられた第4および第3の抵抗の第2の接続ノードが第2の入力に入力され,前記出力に基準電圧を生成する第2の差動増幅器とを有し,
前記第3および第4の抵抗の抵抗比が可変である基準電圧生成回路。
【0069】
(付記4)
付記3において,
前記第2の出力電圧は,前記第1の順方向電圧と温度依存特性が異なり,
前記第2の出力電圧は,前記第5および第6の抵抗の抵抗比に応じて,第1の温度で,前記第1の順方向電圧と同じ電圧になる基準電圧生成回路。
【0070】
(付記5)
第1の順方向電圧を有する第1のPN接合素子と,
前記第1のPN接合素子と電流密度が異なり,前記第1の順方向電圧より高い第2の順方向電圧を有する第2のPN接合素子と,
前記第1の順方向電圧が第1の入力に入力され,出力と第1の電位との間に直列に設けられた第1および第2の抵抗の第1の接続ノードが第2の入力に入力され,前記出力に第1の出力電圧を生成する第1の差動増幅器と,
前記第2の順方向電圧が第1の入力に入力され,出力が第2の入力に入力され,前記出力と前記第1の電位との間に第5および第6の抵抗が設けられ,前記第5および第6の抵抗の第3の接続ノードに第2の出力電圧を生成する第3の差動増幅器と,
前記第2の出力電圧が第1の入力に入力され,出力と前記第1の差動増幅器の出力との間に直列に設けられた第4および第3の抵抗の第2の接続ノードが第2の入力に入力され,前記出力に基準電圧を生成する第2の差動増幅器とを有し,
前記第3および第4の抵抗の抵抗比が可変である基準電圧生成回路。
【0071】
(付記6)
付記5において,
前記第1の出力電圧は,前記第2の出力電圧と温度依存特性が異なり,
前記第1の出力電圧は,前記第1および第2の抵抗の抵抗比および第5および第6の抵抗の抵抗比に応じて,第1の温度で,前記第2の出力電圧と同じ電圧になる基準電圧生成回路。
【0072】
(付記7)
付記2,4,6のいずれかにおいて,
前記可変調節される前記第3および第4の抵抗の抵抗比に応じて,前記第1の温度のおける前記基準電圧を一定電圧に保ちながら且つ前記基準電圧の温度依存特性の傾きが変化する基準電圧生成回路。
【0073】
(付記8)
付記1乃至7のいずれかにおいて,
前記第4の抵抗は,直列に接続された複数の第4抵抗素子を有し,
前記第2の差動増幅器は,差動増幅回路と,前記差動増幅回路の出力がゲートに供給され並列に設けられた複数の出力トランジスタとを有し,
前記複数の出力トランジスタは,前記複数の第4抵抗素子の各端子にそれぞれ設けられ,
前記複数の出力トランジスタは,前記第4の抵抗の調節信号により選択的に活性化され,
前記第4の抵抗の抵抗値が前記調節信号により可変調節される基準電圧生成回路。
【0074】
(付記9)
付記1乃至7のいずれかにおいて,
前記第4の抵抗は,直列に接続された複数の第4抵抗素子を有し,
前記第4の抵抗の調整信号に応じて,前記複数の第4の抵抗素子の数を可変切り換えするスイッチを有する基準電圧生成回路。
【0075】
(付記10)
付記1乃至9のいずれかに記載の基準電圧生成回路と,
第1の電源電圧が供給され,前記基準電圧に基づいて第2の電源電圧を生成する電源生成部と,
リング状に接続され前記第2の電源電圧が供給される複数のインバータを有する発振器とを有する発振回路。
【0076】
(付記11)
付記10において,
前記発振器は,さらに、いずれかの前記インバータの出力ノードに第7の抵抗と容量とを有し,
前記発振器の調整信号に応じて前記第7の抵抗の抵抗値または前記容量の容量値のいずれか一方または両方が調整可能に構成されている発振回路。
【0077】
(付記12)
付記2,4,6,7のいずれかに記載の基準電圧生成回路と,
第1の電源電圧が供給され,前記基準電圧に基づいて第2の電源電圧を生成する電源生成部と,
リング状に接続され前記第2の電源電圧が供給される複数のインバータを有する発振器と、
いずれかの前記インバータの出力ノードに第7の抵抗と容量とを有し,
前記発振器の調整信号に応じて前記第7の抵抗の抵抗値または前記容量の容量値のいずれか一方または両方が調整可能に構成されている発振回路の発振周波数の校正方法において,
前記第1の温度で,前記発振周波数が第1の所望の周波数になるように前記発振器の調整信号を設定する第1の工程と,
前記第1の温度と異なる第2の温度で,前記発振周波数が第2の所望の周波数になるように前記第3および第4の抵抗の抵抗比の調整信号を設定する第2の工程とを有する発振回路の発振周波数の校正方法。