(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5862371
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】アーク点付け溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 10/02 20060101AFI20160202BHJP
B21D 51/18 20060101ALI20160202BHJP
B23K 9/007 20060101ALN20160202BHJP
B23K 9/00 20060101ALN20160202BHJP
B23K 9/235 20060101ALN20160202BHJP
【FI】
B23K10/02 A
B21D51/18 A
B21D51/18 B
!B23K9/007
!B23K9/00 101C
!B23K9/235 Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-43754(P2012-43754)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-180303(P2013-180303A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】594111292
【氏名又は名称】日本電産サンキョーシーエムアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096862
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 千春
(72)【発明者】
【氏名】橋本 幹夫
【審査官】
豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−216849(JP,A)
【文献】
特開平10−043487(JP,A)
【文献】
特開2000−251871(JP,A)
【文献】
特開平05−076108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 10/02
B21D 51/18
B23K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の筒状体の端部同士を突き合わせ、少なくとも2箇所の当接部にプラズマアークを照射して接合するアーク点付け溶接方法であって、
板部材を絞り工程において有底円筒状に深絞り加工することにより上記端部にフランジ部が形成された一対の上記筒状体を成形した後に、各々切断工程において上記端部に凸部を形成するための凹状の刃部を備えた切断サイドパンチを上記端部側の側面から径方向内方に移動させて上記端部側の側面を切断することにより、上記端部に、当該端部から軸線方向に突出する凸部を周方向に間隔を置いた少なくとも2箇所に形成するとともに上記フランジ部を切断し、次いで接合工程において一対の上記筒状体の上記端部側を対向配置させて上記凸部の頂端部同士を突き合わせた後に、上記筒状体を各々の底部から軸線方向に押圧するとともに、上記凸部に上記プラズマアークを照射することにより、当該凸部が溶融し、かつ上記端部同士を接近させて接合一体化することを特徴とするアーク点付け溶接方法。
【請求項2】
一対の筒状体の端部同士を突き合わせ、少なくとも2箇所の当接部にプラズマアークを照射して接合するアーク点付け溶接方法であって、
板部材を絞り工程において有底円筒状に深絞り加工することにより上記端部にフランジ部が形成された一対の上記筒状体を成形した後に、各々切断工程において上記筒状体を下パンチ内に収納するとともに上記下パンチとのクリアランスを調整した円柱状の切断パンチを上記筒状体の開口側から挿入して上記端部の縁部に当該縁部から径方向外方に突出するバリを周方向に間隔を置いた少なくとも2箇所に形成するとともに上記フランジ部を切断し、次いで接合工程において一対の上記筒状体の上記端部側を対向配置させて上記バリ同士を当接させた後に、上記筒状体を各々の底部から軸線方向に押圧するとともに、上記バリに上記プラズマアークを照射することにより、当該バリが溶融し、かつ上記端部同士を接近して接合一体化することを特徴とするアーク点付け溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有底円筒状の一対の筒状体の端部を突き合わせて溶接するアーク点付け溶接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、小型モータの外郭をなす有底円筒状の一対のカップは、各々の端部を突き合わせて接合する場合、プラズマアーク溶接が用いられていた。このプラズマアーク溶接は、まず、高周波発生器を使って、タングステン電極と、水冷された拘束ノズルとの間に、低電流のアーク(パイロットアーク)を発生させる。その際に、上記拘束ノズル内にある不活性ガス(動作ガス/通常、アルゴンを用いる)は、このアーク熱によってイオン化し、アーク電流の良導体となるため、上記タングステン電極と母材間で溶接用アークを発生させることができる。
【0003】
このイオン化された不活性ガスは、プラズマと呼ばれ、上記拘束ノズルに設けられたオリフィス(数ミリ径の穴)を通過する際に、プラズマジェットとなり噴出される。そして、このプラズマジェットに導かれたアークは、緊縮して高密度になり、溶接部に照射されると、当該溶接部の金属が溶融されて接合される。なお、プラズマジェットに導かれたアークは、通常のアークよりも高温(10000〜20000℃)であり、アーク柱も長くなる。
【0004】
なお、このプラズマアーク溶接では、上記動作ガスの他に、溶接用シールガス(通常、アルゴンが用いられる)も、上記溶接部を大気から保護するために使用される。また、溶加材は必要に応じて使用される。
【0005】
また、上記プラズマアーク溶接は、エネルギー密度が高いため、高速度、低電流溶接が可能である。その結果、溶接歪みが少なく、また、溶け込み量の調整が容易に行える。さらに、上記タングステン電極の先端が、上記拘束ノズルの外方に出ていないため、その先端を誤って溶加棒や溶融池に接触させることがなく、電極の保守におけるコストの低減やタングステン介在物を防止するのに有利である。
【0006】
ところで、小型モータの外郭をなす一対の上記カップは、有底円筒状に成形され、ロータおよびステータなどを内設し、各々の端部同士を突き合わせた後に、上記プラズマアーク溶接により点付け溶接される。このプラズマアーク溶接を行う場合、上記タングステン電極と、上記拘束ノズルとの間に、低電流のパイロットアークを発生させることにより、当該拘束ノズル内にある動作ガスが、当該アーク熱によってイオン化し、上記拘束ノズルのオリフィスからプラズマアークとして噴出し、このプラズマアークを一対の上記カップの少なくとも2箇所の当接部に照射することにより、当該カップの金属面が溶融して溶接されることになる。
【0007】
この際、上記プラズマアークは、被抵抗の小さい場所に照射されることになるため、溶接の位置、溶接量(ナゲット)を安定させるには、一対の上記カップの溶接する少なくとも2箇所の上記当接部を他の部分と比較して、被抵抗を少なくする必要がある。
【0008】
しかしながら、従来は、上記カップの接触面である端部の平面度の精度を100分台で管理しないと、接触端面に微細な隙間ができてしまい、一対の上記カップの溶接する少なくとも2箇所の上記当接部の被抵抗が高抵抗になってしまうため、上記プラズマアークが、溶接箇所である少なくとも2箇所の上記当接部ではなく、上記カップの他の面に照射されてしまい、当該プラズマアークが安定しないとともに、溶接箇所である少なくとも2箇所の上記当接部が個別に溶けて穴があき、溶接自体も安定しないという問題があった。
【0009】
また、上記プラズマアークが溶接する少なくとも2箇所の上記当接部に適切に照射されない場合には、溶接箇所である上記当接部のナゲット(溶接量)に偏在が生じてしまい、一対のカップの各々の溶け込み量に差が生じてしまうとともに、上記溶接部の強度が低下してしまうという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、一対の筒状体の端部を突き合わせて接合する際に、その溶接部に安定したプラズマアークを照射することができるとともに、当該溶接部の強度低下を防ぐことができるアーク点付け溶接方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、一対の筒状体の端部同士を突き合わせ、少なくとも2箇所の当接部にプラズマアークを照射して接合するアーク点付け溶接方法であって、板部材を絞り工程において有底円筒状に深絞り加工することにより
上記端部にフランジ部が形成された一対の上記筒状体を成形した後に、各々切断工程において
上記筒状体を下パンチ内に収納するとともに上記切断パンチとのクリアランスを調整した円柱状の切断パンチを上記筒状体の開口側から挿入して上記端部の縁部に当該縁部から径方向外方に突出するバリを周方向に間隔を置いた少なくとも2箇所に形成
するとともに上記フランジ部を切断し、次いで接合工程において一対の上記筒状体の上記端部側を対向配置させて上記バリ同士を当接させた後に、上記筒状体を各々の底部から軸線方向に押圧するとともに、上記バリに上記プラズマアークを照射することにより、当該バリが溶融し、かつ上記端部同士を接近して接合一体化することを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、一対の筒状体の端部同士を突き合わせ、少なくとも2箇所の当接部にプラズマアークを照射して接合するアーク点付け溶接方法であって、板部材を絞り工程において有底円筒状に深絞り加工することにより
上記端部にフランジ部が形成された一対の上記筒状体を成形した後に、各々切断工程において
上記筒状体を下パンチ内に収納するとともに上記下パンチとのクリアランスを調整した円柱状の切断パンチを上記筒状体の開口側から挿入して上記端部の縁部に当該縁部から径方向外方に突出するバリを周方向に間隔を置いた少なくとも2箇所に形成
するとともに上記フランジ部を切断し、次いで接合工程において一対の上記筒状体の上記端部側を対向配置させて上記バリ同士を当接させた後に、上記筒状体を各々の底部から軸線方向に押圧するとともに、上記バリに上記プラズマアークを照射することにより、当該バリが溶融し、かつ上記端部同士を接近して接合一体化することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の本発明によれば、一対の筒状体を深絞り加工により成形した後に、切断工程において、当該筒状体の端部に、当該端部から軸線方向に突出する凸部を周方向に間隔を置いた少なくとも2箇所に形成し、次いで接合工程において、上記端部側を対向配置させ上記凸部の頂端部同士を突き合わせて、上記凸部にプラズマアークを照射するため、当接部である上記凸部の頂端部のみ平面度の精度を管理することにより、当該凸部の被抵抗を他の部分と比較して容易に少なくすることができ、上記プラズマアークを適切に照射させることができる。これにより、溶接の位置、溶接量(ナゲット)を安定させることができるとともに、歩留まりを向上させ、かつ溶接部の強度を向上させることができる。
【0014】
また、一対の上記筒状体の上記端部側を対向配置させて、上記凸部の頂端部同士を突き合わせた後に、当該筒状体を各々の底部から軸線方向に押圧し、上記凸部に上記プラズマアークを照射することにより、当該凸部が溶融し、上記端部同士を接近させて接合一体化させるため、当該端部同士の当接部に隙間を生じさせずに、一対の上記筒状体を接合することができるとともに、一対の上記筒状体同士を強固に固着することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、一対の筒状体を深絞り加工により成形した後に、切断工程において、当該筒状体の端部の縁部に、当該縁部から径方向外方に突出するバリを周方向に間隔を置いた少なくとも2箇所に形成し、次いで接合工程において、上記端部側を対向配置させ上記バリ同士を当接させて、当該バリにプラズマアークを照射するため、上記バリ同士を当接させることにより、当該バリが変形して密着し、平面度の精度を気にすることなく、当該バリの被抵抗を他の部分と比較して少なくすることができ、上記プラズマアークを適切に照射させることができる。これにより、溶接の位置、溶接量(ナゲット)を安定させることができるとともに、歩留まりを向上させ、かつ溶接部の強度を向上させることができる。
【0016】
また、一対の上記筒状体の上記端部側を対向配置させて、上記バリ同士を突き合わせた後に、当該筒状体を各々の底部から軸線方向に押圧し、上記バリに上記プラズマアークを照射することにより、当該バリが溶融し、上記端部同士を接近させて接合一体化させるため、当該端部同士の当接部に隙間を生じさせずに、一対の上記筒状体を接合することができるとともに、一対の上記筒状体同士を強固に固着することができる。
【0017】
そして、上記プラズマアークを照射する溶接部が、平面度の精度を気にすることなく、被抵抗を他の部分と比較して少なくできる上記バリを用いるため、上記切断工程において複雑な設備を用いることなく、当該バリを簡便に形成することができる。この結果、製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態のアーク点付け溶接方法に用いられるアーク溶接装置を模した概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態のアーク点付け溶接方法に用いられる第1形態の一対のカップの成型方法の工程図を示し、(a)は板部材、(b)は絞り工程、(c)は仕上げ工程、(d)は切断工程、(e)は(d)のA−A断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態のアーク点付け溶接方法に用いられる第1形態の一対のカップの接合工程を示し、(a)は一方の筒状体の正面図、(b)は一対の筒状体の各々の凸部を突き合わせた状態、(c)は溶接後の接合状態である。
【
図4】本発明の一実施形態のアーク点付け溶接方法に用いられる第2形態の一対のカップの成型方法の工程図を示し、(a)は板部材、(b)は絞り工程、(c)は仕上げ工程、(d)は切断工程である。
【
図5】本発明の一実施形態のアーク点付け溶接方法に用いられる第2形態の一対のカップの接合工程を示し、(a)は一方の筒状体の側面図、(b)は一方の筒状体の正面図、(c)は一対の筒状体の各々のバリを突き合わせた状態、(d)は溶接後の接合状態である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、本発明の一実施形態のアーク点付け溶接方法に用いるプラズマアーク溶接装置7は、例えば、小型モータのロータおよびステータを内設する一対のカップ(筒状体)1の当接部の2箇所を同時にプラズマアーク2を照射する二つの拘束ノズル8と、主アーク電源10と、パイロットアーク電源11とを備えて概略構成されている。
【0020】
ここで、拘束ノズル8は、冷却水wによってノズルを冷却する水冷ノズルであり、この拘束ノズル8の中心にタングステン電極9が配設されているとともに、拘束ノズル8の端部中央に、イオン化したパイロットガス(動作ガス)pを噴出するオリフィス8aが形成されている。このオリフィスは、数ミリ径寸法の貫通穴である。さらに、拘束ノズル8の先端部の外周には、シールドキャップ12が配設されるとともに、拘束ノズル8とシールドキャップ12との間には、シールドガスsが流通する隙間が設けられている。
【0021】
また、
図2に示すように、本発明の一実施形態のアーク点付け溶接方法に用いられる第1形態の一対のカップ1を成形する場合、例えば、円板状の板部材1aを深絞り加工するための絞り工程3において、押出パンチ13が備えられ、また、仕上げ工程4において、仕上げパンチ14が備えられて概略構成されている。そして、この深絞り加工によって成形された板部材1aのフランジ部1hの切断、および端部1bに凸部1cを形成するための切断工程5において、切断サイドパンチ15が備えられて概略構成されている。
【0022】
そして、
図4に示すように、本発明の一実施形態のアーク点付け溶接方法に用いられる第2形態の一対のカップ1を成形する場合、例えば、円板状の板部材1aを深絞り加工するための絞り工程3において、押出パンチ13が備えられ、また、仕上げ工程4において、仕上げパンチ14が備えられて概略構成されている。そして、この深絞り加工によって成形された板部材1aのフランジ部1hの切断、および端部1bの縁部1eにバリ1fを形成するための切断工程5において、切断パンチ16と下パンチ17とが備えられて概略構成されている。
【0023】
以上の構成によるプラズマアーク溶接装置7と、絞り工程3および仕上げ工程4と、切断工程5と、接合工程6とを用いたアーク点付け溶接方法の一実施形態について、最初に第1形態の一対のカップ1を用いて説明する。
【0024】
まず、
図2(a)に示すように、鉄からなる円板状の板部材1aを準備した後に、
図2(b)に示す絞り工程3において、押出パンチ13を用いて段階的に板部材1aを絞っていく。この際、最終仕上げ工程時の展開長の80%レベルの長さまで絞る。
【0025】
次いで、
図2(c)に示す仕上げ工程4において、仕上げパンチ14を用いて最終形状である有底円筒状のカップ1を成形する。この際に、カップ1の開口側には、フランジ部1hが残った状態により成形される。
【0026】
そして、
図2(d)に示すように、カップ1の端部1bに、切断サイドパンチ15を用いて、サイドカットにより凸部1cを形成する。この際、対向配置されるとともに、各々に凹部状の刃部を備えた切断サイドパンチ15を、カムによってカップ1の端部1b側の側面から径方向内方に向かって移動させることにより、カップ1の端部1b側の側面が切断されて形成される。これにより、フランジ部1hが切断されるとともに、凸部1cがカップ1の端部1bから軸線方向に突出し、かつ端部1bの円周上に対峙して配設される。
【0027】
また、切断工程5によって形成された
図3(a)に示す凸部は、高さ=Hおよびナゲット直径(溶接幅)=Bは、以下の通りである。
H<0.3t t:カップの板厚
B=2t〜3t t:カップの板厚
【0028】
そして、
図1および
図3(b)に示すように、接合工程6によって、一対のカップ1の端部1b同士を、同軸線上で突き合わせて接合する。この際に、
図3(a)に示すように、カップ1の端部1bに形成された凸部1cの頂端部1dを、
図3(b)に示すように、当接させる。この際に、各々のカップ1を底部1gから力Fにより軸線方向に押圧しながら突き合わせる。
【0029】
そして、突き合わされた各々の凸部1cの溶接部tに、プラズマアーク2を照射する。この際、プラズマアーク2は、パイロットアーク電源11に付随したスイッチ11aをONにすることにより、タングステン電極9と、水冷された拘束ノズル8との間に、低電流のアーク(パイロットアーク)が発生する。
【0030】
その際に、拘束ノズル8内にあるパイロットガス(動作ガス/通常、アルゴン)pが、このアーク熱によってイオン化され、アーク電流の良導体となるため、タングステン電極9とカップ1間で溶接用アークが発生する。
【0031】
そして、イオン化されたパイロットガスpが、プラズマとして拘束ノズル8の端部に形成されたオリフィス8aを通過する際に、プラズマジェットとなり噴出される。そして、このプラズマジェットに導かれたプラズマアーク2は、緊縮して高密度になっているため、通常のアークよりも高温(10000〜20000℃)で、アーク柱も長くなる。
【0032】
なお、プラズマアーク2がオリフィス8aから噴出されて、溶接部tに照射される際に、この溶接部tを大気から保護するために、拘束ノズル8の先端部と、この先端部に配設されたシールドキャップ12との間からシールドガスsが排出される。
【0033】
そして、プラズマアーク2が照射された溶接部tは、その熱により各々の凸部1cが溶融されるとともに、端部1b同士が接近し、
図3(c)に示すように、端部1b同士が当接されて接合される。
【0034】
次に、アーク点付け溶接方法の一実施形態を第2形態の一対のカップ1を用いて説明する。第1形態のカップ1と同様に、まず、
図4(a)に示すように、鉄からなる円板状の板部材1aを準備した後に、
図4(b)に示す絞り工程3において、押出パンチ13を用いて段階的に板部材1aを絞っていく。この際、最終仕上げ工程時の展開長の80%レベルの長さまで絞る。
【0035】
次いで、
図4(c)に示す仕上げ工程4において、仕上げパンチ14を用いて最終形状である有底円筒状のカップ1が成形される。この際に、カップ1の開口側には、フランジ部1hが残って成形される。
【0036】
そして、
図4(d)に示すように、切断パンチ16と下パンチ17を用いて、当該切断パンチ16をカップ1の開口側の上方から挿入して、フランジ部1hを切断する。この際に、切断パンチ16と下パンチ17とのクリアランスを調整して、バリ1fを形成する。このバリ1fは、通常板厚の5〜7%であるが、2箇所の溶接部tとなるバリ1fは、切断パンチ16と下パンチ17のクリアランスを調整して、板厚の10〜20%となる。
【0037】
また、切断工程5によって形成された
図5(a)に示すバリ1fは、高さ=Hおよびナゲット直径(溶接幅)=Bならびに角度=θは、以下の通りである。
H=0.1t〜0.2t t:カップの板厚
B=2t〜3t t:カップの板厚
θ=15〜30°
なお、バリ1fの角度(θ)=15〜30°は、切断パンチ16と下パンチ17のクリアランスの調整によって形成された際に、素材のと特性であるスプリングバックによって形成される。
【0038】
そして、
図1および
図5(b)に示すように、接合工程6によって、一対のカップ1の端部1b同士を、同軸線上で突き合わせて接合する。この際に、
図5(a)に示すように、カップ1の端部1bの縁部1eに形成されたバリ1f同士を、
図5(b)に示すように当接させる。この際に、各々のカップ1を底部1gから力Fにより軸線方向に押圧しながら突き合わせる。
【0039】
そして、突き合わされた各々のバリ1fの溶接部tに、プラズマアーク2を照射する。この際、プラズマアーク2は、パイロットアーク電源11に付随したスイッチ11aをONにすることにより、タングステン電極9と、水冷された拘束ノズル8との間に、低電流のアーク(パイロットアーク)が発生する。
【0040】
その際に、拘束ノズル8内にあるパイロットガス(動作ガス/通常、アルゴン)pが、このアーク熱によってイオン化され、アーク電流の良導体となるため、タングステン電極9とカップ1間で溶接用アークが発生する。
【0041】
そして、イオン化されたパイロットガスpが、プラズマとして拘束ノズル8の端部に形成されたオリフィス8aを通過する際に、プラズマジェットとなり噴出される。そして、このプラズマジェットに導かれたプラズマアーク2は、緊縮して高密度になっているため、通常のアークよりも高温(10000〜20000℃)で、アーク柱も長くなる。
【0042】
なお、プラズマアーク2がオリフィス8aから噴出されて、溶接部tに照射される際に、この溶接部tを大気から保護するために、拘束ノズル8の先端部と、この先端部に配設されたシールドキャップ12との間からシールドガスsが排出される。
【0043】
そして、プラズマアーク2が照射された溶接部tは、その熱により各々のバリ1fが溶融されるとともに、端部1b同士が接近し、
図5(c)に示すように、端部1b同士が当接されて接合される。
【0044】
上述の一実施形態のアーク点付け溶接方法によれば、第1形態のカップ1を用いた場合、一対のカップ1を深絞り加工により成形した後に、切断工程5において、当該カップ1の端部1bに、当該端部1bから軸線方向に突出する凸部1cを周方向に間隔を置いて2箇所に形成し、次いで接合工程6によって端部1b側を対向配置させ凸部1cの頂端部1d同士を突き合わせて、凸部1cにプラズマアーク2を照射するため、当接部である凸部1cの頂端部1dのみ平面度の精度を管理することにより、当該凸部1cの被抵抗を他の部分と比較して容易に少なくすることができ、プラズマアーク2を適切に照射させることができる。これにより、溶接の位置、溶接量(ナゲット)を安定させることができるとともに、歩留まりを向上させ、かつ溶接部tの強度を向上させることができる。
【0045】
また、一対のカップ1の端部1b側を対向配置させて、凸部1cの頂端部1d同士を突き合わせた後に、当該カップ1を各々の底部1gから軸線方向に押圧し、凸部1cにプラズマアーク2を照射することにより、当該凸部1cが溶融し、端部1b同士を接近させて接合一体化させるため、当該端部1b同士の当接部に隙間を生じさせずに、一対のカップ1を接合することができるとともに、一対のカップ1同士を強固に固着することができる。
【0046】
そして、第2形態のカップ1を用いた場合の上述の一実施形態のアーク点付け溶接方法によれば、一対のカップ1を深絞り加工により成形した後に、切断工程5において、当該カップ1の端部1bの縁部1eに、当該縁部1eから径方向外方に突出するバリ1fを周方向に間隔を置いて2箇所に形成し、次いで接合工程6によって端部1b側を対向配置させバリ1f同士を当接させて、当該バリ1fにプラズマアーク2を照射するため、バリ1f同士を当接させることにより、当該バリ1fが変形して密着し、平面度の精度を気にすることなく、バリ1fの被抵抗を他の部分と比較して少なくすることができ、プラズマアーク2を適切に照射させることができる。これにより、溶接の位置、溶接量(ナゲット)を安定させることができるとともに、歩留まりを向上させ、かつ溶接部の強度を向上させることができる。
【0047】
また、一対のカップ1の端部1b側を対向配置させて、バリ1f同士を突き合わせた後に、当該カップ1を各々の底部1gから軸線方向に押圧し、バリ1fにプラズマアーク2を照射することにより、当該バリ1fが溶融し、端部1b同士を接近させて接合一体化させるため、当該端部1b同士の当接部に隙間を生じさせずに、一対のカップ1を接合することができるとともに、一対のカップ1同士を強固に固着することができる。
【0048】
そして、プラズマアーク2を照射する溶接部tが、平面度の精度を気にすることなく、被抵抗を他の部分と比較して少なくできるバリ1fを用いるため、切断工程5において複雑な設備を用いることなく、当該バリ1fを簡便に形成することができる。この結果、製造コストを抑えることができる。
【0049】
さらに、第1形態および第2形態の一対のカップ1の接合に用いる上記プラズマアーク溶接は、エネルギー密度が高いため、高速度、低電流溶接が可能であるとともに、溶接歪みが少なく、溶け込み量の調整を容易に行うことができる。
【0050】
また、プラズマアーク溶接装置7に用いる拘束ノズル8内に配設されるタングステン電極9の先端が、当該拘束ノズル8の外方に出ていないため、その先端を誤って溶加棒や溶融池に接触させることがなく、電極の保守のコストを抑えることができるとともに、タングステンが介在することを防止することができる。
【0051】
なお、上記実施の形態において、第1実施形態の一対のカップ1の各々に形成する凸部1cを端部1bに2箇所対向配置し、また第2実施形態の一対のカップ1の各々に形成するバリ1fを端部1bの縁部1eに2箇所対向配置する場合のみ説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、凸部1cを端部1bの周方向に等間隔に3箇所または4箇所、バリ1fを端部1bの縁部1eの周方向に等間隔に3箇所または4箇所形成しても対応可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
小型モータのなどの外郭をなす一対の筒状体の端部同士を突き合わせて接合する場合に用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 カップ(筒状体)
1a 板部材
1b 端部
1c 凸部
1d 頂端部
1e 縁部
1f バリ
1g 底部
2 プラズマアーク
3 絞り工程
4 仕上げ工程
5 切断工程
6 接合工程