特許第5862426号(P5862426)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5862426
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】衝突検知装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/0136 20060101AFI20160202BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   B60R21/0136
   B60R21/00 610Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-84609(P2012-84609)
(22)【出願日】2012年4月3日
(65)【公開番号】特開2013-212786(P2013-212786A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2014年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕之
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
(72)【発明者】
【氏名】西山 明宏
(72)【発明者】
【氏名】二井 孝彰
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−220784(JP,A)
【文献】 特開2000−142311(JP,A)
【文献】 特開2000−255373(JP,A)
【文献】 特開2003−261003(JP,A)
【文献】 特開2004−009830(JP,A)
【文献】 特開2006−044432(JP,A)
【文献】 特開2009−274481(JP,A)
【文献】 特開2008−105634(JP,A)
【文献】 特開2006−290260(JP,A)
【文献】 特開2001−253313(JP,A)
【文献】 特開2003−011773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00 − 21/13
B60R 21/34 − 21/38
B60R 21/16 − 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側面衝突時に当該衝突の形態を検知する衝突検知装置であって、
前記車両の側面における複数の所定の箇所にそれぞれ設けられた複数の側突検知センサと、
複数の前記側突検知センサによってそれぞれ検出された複数の検出値の差分に基づいて、前記衝突の形態を推定する推定手段と、を備え、
前記推定手段は、前記側突検知センサによって前記側突が検知され始めてから所定時間経過後における前記検出値の差分に基づいて前記推定をおこなう、
とを特徴とする衝突検知装置。
【請求項2】
前記推定手段は、前記検出値の差分が所定量以上の場合は、前記車両の側面が柱状の静止物に衝突したと推定し、前記検出値の差分が所定量未満の場合は、前記車両が他の車両に側面から衝突されたと推定することを特徴とする請求項1に記載の衝突検知装置。
【請求項3】
前記側突検知センサは、前記車両の前部座席用ドアと、前記車両の後部座席用ドアと、前記前部座席用ドアおよび前記後部座席用ドアとの間のピラーと、のうち、少なくとも2か所以上に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の衝突検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突を検知する衝突検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の側面衝突を検知する手段として、車両側面に側突検知センサを設ける技術が知られている。側突検知センサでの検知結果は、たとえば衝突時の衝撃から乗員を保護する乗員保護装置の制御に用いられる。たとえば、下記特許文献1では、車両側面のセンターピラー(Bピラー)の下方に側突検知センサを設け、この側突検知センサからの信号に基づいて、カーテンエアバッグの展開が必要か否かを判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−235833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1にかかる技術では、衝突の形態が判別できないという問題点がある。側面衝突時における衝突の形態としては、たとえば、立ち木や電柱などの柱状の静止物に衝突した場合や、他の車両に側面から衝突された場合などがある。衝突の形態によって、乗員が衝撃を受ける部位や車両の損傷状態などが異なるものとなるため、衝突の形態を判別することができれば、より適切に乗員保護装置を作動させたり、車両の緊急時制御をおこなったりすることができる可能性がある。
【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、車両の側面衝突時に当該衝突の形態を検知することができる衝突検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、発明にかかる加速制御装置は、車両の側面衝突時に当該衝突の形態を検知する衝突検知装置であって、前記車両の側面における複数の所定の箇所にそれぞれ設けられた複数の側突検知センサと、複数の前記側突検知センサによってそれぞれ検出された複数の検出値の差分に基づいて、前記衝突の形態を推定する推定手段と、を備え、前記推定手段は、前記側突検知センサによって前記側突が検知され始めてから所定時間経過後における前記検出値の差分に基づいて前記推定をおこなう、ことを特徴とする
【発明の効果】
【0007】
発明によれば、複数の側突検知センサによってそれぞれ検出された複数の所定の箇所における複数の検出値の差分に基づいて衝突の形態を推定するので、簡易な構成で車両の衝突の形態を検知することができる。
発明によれば、車両の側面が柱状の静止物に衝突した場合と車両が他の車両に側面から衝突された場合とを確実に推定して、衝突の形態を検知することができる。
発明によれば、側突検知センサによって側突が検知され始めてから所定時間経過後における検出値の差分に基づいて推定をおこなうので、所定時間を短時間にすることにより、衝突の形態の検知結果を迅速に得ることができる。
発明によれば、側突検知センサが乗員乗車位置をほぼカバーする位置に設けられているので、衝突の形態の推定がしやすくなるとともにより確実となる。また、衝突の乗員への影響も推定しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態にかかる衝突検知装置100の機能的構成を示すブロック図である。
図2】側突検知センサ101の設置位置の一例を示す説明図である。
図3】推定手段102による衝突形態の推定方法を示す説明図である。
図4】衝突検知装置100による衝突検知処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる衝突検知装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかる衝突検知装置100の機能的構成を示すブロック図である。衝突検知装置100は、側突検知センサ101および推定手段102によって構成され、車両の側面衝突時に当該衝突の形態を検知する。
【0011】
側突検知センサ101は、車両に対する衝撃を検知するためのセンサであり、たとえば、車両にかかる加速度や車体の変形量を検知するセンサや、車両内部の圧力変化を検知するセンサなどを用いることができる。本実施の形態では、側突検知センサ101として、加速度センサを用いるものとする。側突検知センサ101は、車両側面の複数の所定の箇所にそれぞれ設けられている。側突検知センサ101が設けられる複数の所定の箇所は、複数の側突検知センサ101が車両前後方向で異なる位置となるように設定されている。側突検知センサ101は、たとえば、車両の前部座席用ドアと、車両の後部座席用ドアと、前部座席用ドアおよび後部座席用ドアとの間のピラー(センターピラー、Bピラー)と、のうち、少なくとも2か所以上に設けられている。
【0012】
図2は、側突検知センサ101の設置位置の一例を示す説明図である。図2は車両200の上面視図である。車両200には、前部座席用ドアFD、後部座席用ドアRDが設けられており、これらのドアの間にはセンターピラーBPが設けられている。本実施の形態では、側突検知センサ101は、車両の前部座席用ドアFDと、車両の後部座席用ドアRDと、センターピラーBPの片側側面あたり3か所に設けられているものとする。以下において、前部座席用ドアFDに設けられた側突検知センサ101を前部ドアセンサFDS、後部座席用ドアRDに設けられた側突検知センサ101を後部ドアセンサRDS、センターピラーBPに設けられた側突検知センサ101をセンターピラーセンサBPSという。
【0013】
図1の説明に戻り、推定手段102は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されるECU(図示なし)が、上記CPUにより上記制御プログラムを実行することによって実現する。
【0014】
推定手段102は、複数の側突検知センサ101によってそれぞれ検出された複数の箇所における複数の検出値の差分に基づいて、衝突の形態を推定する。推定手段102は、たとえば、複数の側突検知センサ101による検出値の差分が所定量以上の場合は、車両の側面が柱状の静止物に衝突したと推定する。また、推定手段102は、検出値の差分が所定量未満の場合は、車両が他の車両に側面から衝突されたと推定する。
【0015】
図3は、推定手段102による衝突形態の推定方法を示す説明図である。図3(a)上段に示すように、車両の側面が柱状の静止物Aに衝突した場合には、車両の一部に対して局所的に衝撃力がかかる(図示の例では、前部座席用ドアFD周辺)。このため、各側突検知センサ101で検出する加速度の大きさが設置箇所によって大きく異なる。すなわち、側突検知センサ101が設置される各箇所で検出される加速度の差分が大きくなる。より詳細には、図3(a)下段のグラフに示すように、静止物Aに最も近い前部ドアセンサFDSによる検出値が最も大きく、次いでセンターピラーセンサBPS、後部ドアセンサRDSの順となっている。なお、図3(a)下段のグラフにおいて、縦軸は側突検知センサ101で検出した加速度、横軸は時間を示している。
【0016】
一方、図3(b)上段に示すように、車両の側面が他の車両CRに衝突された場合には、車両側面の比較的広い範囲に衝撃力がかかる。このため、各設置箇所において側突検知センサ101で検出する加速度の大きさは、比較的近い値となる。すなわち、各設置箇所で検出される加速度の差分が比較的小さくなる。図3(b)下段のグラフでは、センターピラーセンサBPSによる検出値が最も大きく、次いで前部ドアセンサFDS、後部ドアセンサRDSの順となっているが、その差分は図3(a)下段のグラフより小さくなっている。
【0017】
このため、推定手段102では、前記したように、複数の側突検知センサ101によってそれぞれ検出された複数の検出値の差分が所定量以上の場合は車両の側面が柱状の静止物に衝突したと推定し、検出値の差分が所定量未満の場合は車両が他の車両に側面から衝突されたと推定する。
【0018】
なお、複数の検出値の差分とは、たとえば複数の側突検知センサ101のうち2つの側突検知センサ101の検出値の差分である。本実施の形態の例では、推定手段102は、たとえばセンターピラーセンサBPSと前部ドアセンサFDSとの差分、センターピラーセンサBPSと後部ドアセンサRDSとの差分、前部ドアセンサFDSと後部ドアセンサRDSとの差分をそれぞれ取り、そのうち最も大きい(または最も小さい)差分値が所定値以上か否かを判断する。
【0019】
また、複数の検出値の差分は、たとえば、それぞれの側突検知センサ101による検出値のピーク値の差分、それぞれの検出値の時間積分値の差分、側突検知センサ101によって側突が検知(本実施の形態では、側突に伴う加速度が検知)され始めてから所定時間経過後における検出値の差分、のいずれかとすることができる。側突検知センサ101の検出値のピーク値の差分に基づいて推定をおこなう場合、衝突による衝撃の大きさを容易に比較することができる。また、比較対象となる検出値を容易に抽出することができる。また、側突検知センサ101の検出値の時間積分値の差分に基づいて推定をおこなう場合、車両に対して加わる力の総量に基づいて衝突の形態を推定することができる。また、側突検知センサ101によって側突が検知され始めてから所定時間経過後における検出値の差分に基づいて推定をおこなう場合、所定時間を短時間にすることにより、衝突の形態の検知結果を迅速に得ることができる。
【0020】
図4は、衝突検知装置100による衝突検知処理の手順を示すフローチャートである。図4のフローチャートにおいて、衝突検知装置100は、まず、側突検知センサ101で加速度を検知する(ステップS401)。いずれかの側突検知センサ101において側突に伴う加速度が検知されるまでは(ステップS402:Noのループ)、衝突検知装置100は、ステップS401に戻り、加速度の検知を継続する。
【0021】
いずれかの側突検知センサ101において側突に伴う加速度が検知されると(ステップS402:Yes)、衝突検知装置100は、推定手段102によって、それぞれの側突検知センサ101による検出値の差分を算出し(ステップS403)、差分が所定値以上であるか否かを判断する(ステップS404)。差分が所定値以上である場合(ステップS404:Yes)、推定手段102は、側突の形態が柱状の静止物との衝突と推定して(ステップS405)、本フローチャートによる処理を終了する。一方、差分が所定値未満である場合(ステップS404:No)、推定手段102は、側突の形態が他の車両による側面からの衝突であると推定して(ステップS406)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0022】
推定手段102による推定結果は、たとえば、エアバッグなどの乗員保護装置の展開制御に用いることができる。エアバッグには、正面からの衝撃から乗員を保護するフロントエアバッグの他、側面からの衝撃から乗員を保護するサイドエアバッグやカーテンエアバッグがある。たとえば、衝突の形態が他の車両による側面からの衝突である場合、乗員の腹部や腰部などの胴体下部に衝撃を受ける可能性が高いため、サイドエアバッグを優先的に展開させることが、乗員保護のため有効であると考えられる。一方、衝突の形態が柱状の静止物との衝突である場合、乗員の頭部や肩部などの胴体上部に衝撃を受ける可能性が高いため、カーテンエアバッグを早期に展開させることが、乗員保護のため有効であると考えられる。このように、衝突の形態に応じて、サイドエアバッグとカーテンエアバッグを適切に使い分けることで、乗員の受傷のリスクをより適切に低減させることができる。
【0023】
また、推定手段102による推定結果を、たとえば救急車(緊急車両)などに送信するようにしてもよい。これにより、救急車側では事前に乗員の受傷状態を予測することができ、適切な処置を迅速におこなうことができる。
【0024】
以上説明したように、実施の形態にかかる衝突検知装置100では、複数の側突検知センサ101によってそれぞれ検出された複数の検出値の差分に基づいて衝突の形態を推定するので、簡易な構成で車両の衝突の形態を検知することができる。また、衝突検知装置100では、側突検知センサ101が乗員乗車位置をほぼカバーする位置に設けられているので、衝突の形態が推定しやすくすることができるとともに、衝突の乗員への影響も推定しやすくすることができる。
【0025】
なお、本実施の形態では、衝突の形態として、他の車両による側面からの衝突、車両側面の立ち木や電柱等の柱状の静止物への衝突を挙げたが、これ以外の形態においても、側突検知センサ101の検出値の特性を用いて判別することが可能である。
【符号の説明】
【0026】
100……衝突検知装置、101……側突検知センサ、102……推定手段、200……車両、BP……センターピラー、BPS……センターピラーセンサ、FD……前部座席用ドア、FDS……前部ドアセンサ、RD……後部座席用ドア、RDS……後部ドアセンサ。
図1
図2
図3
図4