(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
[1.装置構成]
本実施形態に係る車両制御装置について、
図1〜
図5を用いて説明する。以下の説明では、車両の進行方向を前方とし、前方を基準に左右を定める。また、重力の方向を下方とし、その逆を上方として説明する。また、車体の中心に向かう側を内側、その逆を外側として説明する。
【0017】
図1に示すように、本車両制御装置が適用された車両1には、前突センサ(前突検出手段)11及びエアバッグECU20が搭載されている。前突センサ11は、車両1の前部の車幅方向(左右方向)略中央に一つ配置され、車両1の前後方向の加速度αを検出するものである。ここでは、前突センサ11は、車両後方へ向かう方向(つまり、減速方向)を正の値として検出する。前突センサ11である閾値α
TH以上の加速度α(α>α
TH)が検出された場合、車両1の車体に対して前方から何らかの衝撃が加わったことを意味する。この閾値α
THは、通常の車両減速時と衝突とを区別するための閾値である。つまり、前突センサ11は車両前方からの衝撃を検出する検出手段としての機能を有する。前突センサ11で検出された加速度αは、随時エアバッグECU20へ伝達される。
【0018】
エアバッグECU(Electric Control Unit;電子制御装置)20は、加速度センサ21が内蔵され、メモリ(ROM,RAM)やCPU等で構成されるコンピュータである。加速度センサ21を内蔵したエアバッグECU20は、車両1の前側(前突センサ11よりも後方)の車幅方向(左右方向)略中央に配置されている。加速度センサ21は、車両1の前後方向の加速度(前後加速度)Ax及び左右方向の加速度(左右加速度)Ayを検出するものである。ここでは、加速度センサ21は、前後加速度Axについては車両後方へ向かう方向(つまり、減速方向)を正の値として検出し、左右加速度Ayについては右から左へ向かう方向(左方向)を正の値とし、左から右へ向かう方向(右方向)を負の値として検出する。加速度センサ21で検出された前後加速度Ax及び左右加速度Ayは、エアバッグECU20の判定部22へ伝達される。
【0019】
車両1には、フロントエアバッグ31及びカーテンエアバッグ32が搭載されている。これらエアバッグ31,32は、エアバッグECU20の制御部23から展開指令を受けた場合に、インフレータにて火薬が爆発されて瞬時に膨張する。フロントエアバッグ31は、例えば運転席のハンドルや助手席のグローブボックス上部等に内蔵されており、展開時に運転席及び助手席の前方に膨張して乗員(特に頭部周辺)を保護するものである。
【0020】
また、カーテンエアバッグ32は、例えばフロントピラーからルーフライニングのサイド部分に亘って左右それぞれに内蔵されており、展開時に車体の窓部(フロントウィンドウ2及びリヤウィンドウ3)の略全面を覆い、側方から乗員(特に頭部周辺)を保護したり、乗員が車両外方へ移動したりすることを防止するものである。なお、
図1ではフロントエアバッグ31及びカーテンエアバッグ32が展開した状態を示す。
【0021】
また、車両1には、図示しないシートベルトのプリテンショナーが搭載されている。プリテンショナーは、エアバッグECU20の制御部23から指令を受けると、シートベルトのウェビングを引き込むことで、乗員を座席に固定して保護するものである。
エアバッグECU20の入力側には、前突センサ11が接続され、エアバッグECU20の出力側には、フロントエアバッグ31,カーテンエアバッグ32及びプリテンショナーが接続されている。
【0022】
[2.制御構成]
エアバッグECU20は、ここでは車両1の衝突形態を判定し、判定した衝突形態に応じてフロントエアバッグ31,カーテンエアバッグ32及びプリテンショナーを制御する。エアバッグECU20は、上記の判定及び制御を実施するために、判定部22としての機能要素と、制御部23としての機能要素とを有する。これらの各要素は、電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、ソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
【0023】
判定部(判定手段)22は、前突センサ11により加速度αが検出されたら、加速度センサ21で検出された前後加速度Ax及び左右加速度Ayに基づいて、車両1の衝突形態を判定するものである。つまり、判定部22は、まず前突センサ11で車体に対して前方から衝撃が加わったか否かを判定し、車体が前方から衝撃を受けたと判定した場合に、加速度センサ21の検出結果を用いて衝突形態を判定する。ここで判定される車両1の衝突形態には、以下の二つが含まれる。
【0024】
第一の衝突形態は、
図2(a)に示すように、車両1が車体前面の全幅にわたって物体5に衝突するフルラップ前面衝突である。車両1の衝突形態がフルラップ前面衝突となる場合は、例えば、車両1が建物の壁体に対して略正面から衝突し、車体前面の幅の略全てが壁体に接触する場合や、車両1が他車両と真正面から衝突して、車体前面の幅の略全てが他車両に接触する場合等である。このようなフルラップ前面衝突の場合、車両1は急減速されるため、車両1には後方へ向かう前後加速度Axが発生する。この前後加速度Axの大きさは、車両1の重量と衝突直前の車速とに応じた値になる。なお、フルラップ前面衝突の場合、車両1にはヨーレイトがほとんど発生しないため、左右加速度Ayは前後加速度Axに比べて小さく、わずかに発生する程度である。
【0025】
第二の衝突形態は、
図2(b)及び(c)に示すように、車両1の車体前面の左右いずれかの端部側に片寄った一部幅が物体5に衝突するオフセット前面衝突である。車両1の衝突形態がオフセット前面衝突となる場合は、例えば、車両1が建物の壁体の角部に対して略正面から衝突し、車体前面の幅の一部分(左右いずれかの部分)が壁体に接触する場合や、車両1が他車両と左右どちらかにずれて正面から衝突し、車体前面の幅の一部分が他車両に接触する場合等である。このようなオフセット前面衝突の場合、車両1は急減速されるため、車両1には後方へ向かう前後加速度Axが発生する。
【0026】
さらに、オフセット前面衝突の場合は、衝突位置が車幅方向中心Cから左右どちらかにずれている(片寄っている)ため、車両1にはヨーレイトが発生する。つまり、車両1は、衝突位置付近を中心として、左右いずれかの方向へ上下方向軸回りに回転する。このため、車両1には左右いずれかの方向へ向かう左右加速度Ayが発生する。例えば、
図2(b)及び(c)に示すように、車両1の車体前面の車幅方向中心Cよりも右側が物体5と衝突した場合、車両1には後方へ向かう前後加速度Ax及び左方向の左右加速度Ayが発生する。
【0027】
なお、
図2(c)に示すように、車両1と物体5との衝突範囲が狭く、車体前面の左右いずれかの端部側に片寄った衝突であるオフセット前面衝突の場合は、より大きな左右加速度Ayが発生する。以下、
図2(c)に示すようなオフセット前面衝突を、特にナローオフセット前面衝突とも呼ぶ。オフセット前面衝突時に車両1に発生する前後加速度Ax及び左右加速度Ayの各大きさは、車両1の重量と衝突直前の車速とオフセット量とに応じた値になる。ここでいうオフセット量とは、車体前面の全幅に対して衝突した幅の割合(衝突面の重なり量)を意味し、車体前面の半分が衝突した場合はオフセット量が50%となり、衝突範囲が狭いほどオフセット量は小さくなる。
【0028】
図3は、
図2(a)〜(c)に示す各衝突形態において、車両1に発生する前後加速度Ax及び左右加速度Ayの経時変化を例示したグラフである。例えば、
図2(b)のように車両1がオフセット前面衝突した場合、ある時刻t
1では、車両1には前後加速度Axt
1及び左右加速度Ayt
1が発生し、時刻t
1よりも遅い時刻t
2では前後加速度Axt
2及び左右加速度Ayt
2が発生する。さらに時間が進むと、時刻t
3では、車両1には前後加速度Axt
3及び左右加速度Ayt
3が発生する。このように、前突センサ11により加速度αが検出されてから、時間間隔を微小にして各時刻における前後加速度Ax及び左右加速度Ayをプロットしたものが、
図3に示すグラフである。
【0029】
図3に示すように、
図2(a)のフルラップ前面衝突の場合は、前後加速度Axは増大するものの、左右加速度Ayはほとんど変化しない(増減しない)グラフとなる。また、
図2(b)のオフセット前面衝突の場合は、前後加速度Ax及び左右加速度Ayが共に増大するグラフとなり、特に
図2(c)のナローオフセット前面衝突の場合は、左右加速度Ayの変化がより大きいグラフとなる。なお、
図2(b)及び(c)のように、車両右側が物体5に衝突するオフセット前面衝突(右オフセット前面衝突)の場合は、車両1には左方向の左右加速度Ay(Ay>0)が発生する。反対に、車両左側が物体に衝突するオフセット前面衝突(左オフセット前面衝突)の場合は、車両1には右方向の左右加速度Ay(Ay<0)が発生する。何れにしても、車両1の前面が何らかの物体5に衝突すれば、車両1には後方に向かう(減速方向の)前後加速度Ax(Ax>0)が発生する。
【0030】
判定部22は、このように衝突形態によって異なる前後加速度Ax及び左右加速度Ayが車両1に発生することを利用して、車両1の衝突形態を判定する。ここでは、判定部22は、加速度センサ21で検出された前後加速度Ax及び左右加速度Ayを座標値(Ax,Ay)として取得し、
図4の判定マップのいずれの領域に該当するかを判別して、衝突形態を判定する。
【0031】
図4は、車両1に発生する前後加速度Axと左右加速度Ayとに応じて領域が区分された判定マップであり、エアバッグECU20に予め記憶されている。
図4に示すように、前後加速度Axの閾値である第一閾値(所定の閾値)X
1と左右加速度Ayの閾値である第二閾値Y
1及び第三閾値Y
2とによって衝突形態を判定する領域が区分されている。第一閾値X
1は、フロントエアバッグ31及びカーテンエアバッグ32を展開させる必要があるか否か(すなわち、軽衝突か否か)を判定するための閾値である。前後加速度Axが第一閾値X
1未満の場合は、車両1に対する衝撃は小さく、車両1は軽衝突したものとみなされてフロントエアバッグ31及びカーテンエアバッグ32は展開されない(展開が禁止される)。第二閾値Y
1及び第三閾値Y
2は、前後加速度Axが第一閾値X
1以上の場合に、カーテンエアバッグ32を展開させる必要があるか否かを判定するための閾値である。
【0032】
ここでは、左方向の左右加速度Ayを正、右方向の左右加速度Ayを負とし、第二閾値Y
1は正の値、第三閾値Y
2は負の値に設定している。左右加速度Ayが第三閾値Y
2よりも大きく、第二閾値Y
1未満の範囲にある場合は、カーテンエアバッグ32は展開されない。なお、ここでは、第二閾値Y
1と第三閾値Y
2の絶対値は等しい値(つまり、Y
2=−Y
1)に設定しているが、車両の特性によっては、第二閾値Y
1および第三閾値Y
2をそれぞれ個々に設定してもよい。
【0033】
図4の領域1は、前後加速度Axが第一閾値X
1以上で、左右加速度Ayが第三閾値Y
2より大きく且つ第二閾値Y
1未満の範囲に設定されている。領域2は、前後加速度Axが第一閾値X
1以上で、左右加速度Ayが第二閾値Y
1以上の範囲に設定されており、領域3は、前後加速度Axが第一閾値X
1以上で、左右加速度Ayが第三閾値Y
2以下の範囲に設定されている。なお、
図4の領域4及び領域5は、前後加速度Axが第一閾値X
1未満であり、左右加速度Ayが第二閾値Y
1以上又は第三閾値Y
2以下の範囲である。
【0034】
判定部22は、座標値(Ax,Ay)が領域1に該当すると判別したときは、車両1がフルラップ前面衝突であると判定し、領域2に該当するときは車両1の右側が衝突した右オフセット前面衝突であると判定し、領域3に該当するときは車両1の左側が衝突した左オフセット前面衝突であると判定する。また、判定部22は、座標値(Ax,Ay)が領域4又は5に該当すると判別したときは、車両1がスリップしていると判定する。判定部22での判定結果は、制御部23へ伝達される。
【0035】
制御部(制御手段)23は、判定部22によって判定された衝突形態に応じて、フロントエアバッグ31,カーテンエアバッグ32及びプリテンショナーから適切なものを選択して作動を制御するものである。制御部23は、判定部22によって車両1がフルラップ前面衝突であると判定された場合は、フロントエアバッグ31に展開指令を送り、フロントエアバッグ31を展開させることで前方へ移動しようとする乗員(特に頭部周辺)を保護する。さらに、シートベルトのプリテンショナーに指令を送り、乗員(特に胴体部)を座席に固定して保護する。なお、フルラップ前面衝突の場合は、カーテンエアバッグ32へは展開指令を送信しない。
【0036】
また、制御部23は、判定部22によって車両1が左オフセット前面衝突であると判定された場合は、フロントエアバッグ31及び右側のカーテンエアバッグ32に展開指令を送り、フロントエアバッグ31及び右側のカーテンエアバッグ32を展開させることで前方及び右方向へ移動しようとする乗員(特に頭部周辺)を保護する。さらに、シートベルトのプリテンショナーに指令を送り、乗員(特に胴体部)を座席に固定して保護する。
【0037】
また、制御部23は、判定部22によって車両1が右オフセット前面衝突であると判定された場合は、フロントエアバッグ31及び左側のカーテンエアバッグ32に展開指令を送り、フロントエアバッグ31及び左側のカーテンエアバッグ32を展開させることで前方及び左方向へ移動しようとする乗員(特に頭部周辺)を保護する。さらに、シートベルトのプリテンショナーに指令を送り、乗員(特に胴体部)を座席に固定して保護する。
【0038】
なお、制御部23は、判定部22によって車両1がスリップしていると判定された場合、また車両1が軽衝突したと判定された場合は、フロントエアバッグ31及びカーテンエアバッグ32へは展開指令を送信しない。
【0039】
[3.フローチャート]
本実施形態にかかる車両制御装置は上述のように構成されているため、車両1の衝突形態の判定及び制御は、例えば
図5に示すフローチャートに従って実施される。なお、このフローチャートは所定の制御周期で動作する。また、下記の各ステップは、コンピュータのハードウェアに割り当てられた各機能(手段)が、ソフトウェア(コンピュータプログラム)によって動作することによって実施される。
【0040】
図5に示すように、ステップS10では、前突センサ11により加速度αが検出されたか否かが判定される。つまり、このステップでは車両1に対して前方から衝撃が加わったか否かが判断される。なお、前突センサ11で検出された加速度αが閾値α
TH以上であれば「前突センサON」とし、加速度αが閾値α
TH未満であれば「前突センサOFF」とする。ステップS10において前突センサ11がONであると判定されると、続くステップS20では、加速度センサ21により前後加速度Ax及び左右加速度Ayが検出され、判定部22へ伝達される。
【0041】
ステップS30では、前後加速度Axが第一閾値X
1以上であるか否かが判定され、第一閾値X
1以上であれば、続くステップS40において座標値(Ax,Ay)が決定される。そして、ステップS50では
図4の判定マップに座標値(Ax,Ay)が適用され、座標値(Ax,Ay)が領域1内であるか否かが判定される。座標値(Ax,Ay)が領域1内であれば、ステップS60において衝突形態は領域1のフルラップ前面衝突であると判定され、ステップS70において、制御部23によりフルラップ前面衝突に応じた上記制御が実施される(制御1)。
【0042】
一方、ステップS50において、座標値(Ax,Ay)が領域1内でないと判定されると、ステップS80へ進み、左右加速度Ayがゼロ以上(Ay≧0)であるか否かが判定される。つまり、このステップでは、左オフセット前面衝突か右オフセット前面衝突かが判断される。左右加速度Ayが正の値であれば、ステップS90において衝突形態は領域2の右オフセット前面衝突であると判定され、ステップS100において、制御部23により右オフセット前面衝突に応じた上記制御が実施される(制御2)。また、左右加速度Ayが負の値であれば、ステップS110において衝突形態は領域3の左オフセット前面衝突であると判定され、ステップS120において、制御部23により左オフセット前面衝突に応じた上記制御が実施される(制御3)。
【0043】
ステップS70,ステップS100,ステップS120において各制御が実施されると、制御フローが終了される。また、ステップS10において前突センサONでないと判定された場合、及び、ステップS30で前後加速度Axが第一閾値X
1以上でないと判定された場合は、フローはリターンされる。つまり、車両1に対して前方から衝撃を受けていない場合、及び、衝撃を受けた場合であっても軽衝突やスリップ状態である場合は、いずれも座標値(Ax,Ay)の決定や領域判定がなされず、フローがリターンされる。なお、軽衝突やスリップ状態だけでなく、車両1の通常走行時や急ブレーキをかけたような場合にも、Ax<X
1が成立するため、フローがリターンされる。
【0044】
[4.効果]
したがって、本実施形態にかかる車両制御装置によれば、加速度センサ21で検出された車両1の前後加速度Ax及び左右加速度Ayを用い、前後加速度Axに比べて左右加速度Ayが微小であれば車両1がフルラップ前面衝突したと判定することができ、前後加速度Ax及び左右加速度Ayが共に大きく、さらに左右加速度Ayの向きで左右いずれのオフセット前面衝突であるかを判定することができる。これにより、簡素な構成で車両1の衝突形態を的確に判定することができ、衝突形態に応じた適切な制御をすることができる。また、加速度センサ21で衝突形態を判定することができるため、従来の判定で用いていたようなヨーレイトセンサは不要であり、コスト増を抑制することができる。
【0045】
また、衝突形態を判定する際に、まず車両1の前部に設けられた前突センサ11の検出値を用いるので、車体に対して前方から衝撃が加わったことを迅速に検出することができる。さらにここでは、前突センサ11が車幅方向略中央に配置されているため、左右片寄りなく衝撃を検出することができる。また、前突センサ11で衝撃(加速度α)が検出された場合はエアバッグECU20において衝突形態が判定され、前突センサ11で衝撃(加速度α)が検出されなければ衝突形態が判定されないため、不要な判定を抑制することができ、演算負荷を軽減することができる。なお、ここでは加速度センサ21を内蔵するエアバッグECU20が、フロントエアバッグ31の近くである車両1の前側に配置されているため、応答性を高めることができる。
【0046】
また、前後加速度Ax及び左右加速度Ayを座標値(Ax,Ay)として決定し、二次元マップに適用して衝突形態を判定することで、より簡素な構成で精度よく衝突形態を判定することができる。
【0047】
また、判定部22でフルラップ前面衝突であると判定された場合はフロントエアバッグ31が選択されて展開されるので、乗員(特に頭部周辺)をフロントエアバッグ31で保護することができる。また、この場合カーテンエアバッグ32は選択されないので、不要なエアバッグの作動を抑制することができる。一方、判定部22でオフセット前面衝突であると判定された場合は、フロントエアバッグ31に加えて左右のカーテンエアバッグ32が選択されて展開されるため、オフセット前面衝突時に乗員の頭部が前方から側方へずれた場合でも乗員(特に頭部周辺)を保護することができる。つまり、衝突形態に応じて、適切に乗員を保護することができる。
【0048】
また、前後加速度Axが所定の閾値(第一閾値)X
1未満ではエアバッグの展開が禁止されるため、エアバッグの作動が不要な場合(例えば、軽衝突時や、車両1がスリップして左右加速度Ayが大きくなった場合等)は作動を防止することができる。
【0049】
[5.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
例えば、上記実施形態で用いた
図4の判定マップに代えて、例えば
図6に示すような判定マップを用いてもよい。
図6の判定マップは、オフセット前面衝突であると判定する領域(領域2′及び領域3′)が
図4の判定マップと異なる。
図6に示すように、領域2′及び領域3′は、左右加速度Ayが第二閾値Y
1以上又は第三閾値Y
2以下であって、左右加速度Ayの絶対値が大きくなるほど第一閾値X
1よりも小さい前後加速度Axを含むように設定されている。
【0050】
つまり、領域2′と領域4′とを区分けする閾値及び領域3′と領域5′とを区分けする閾値が一定値ではなく、左右加速度Ayの絶対値が大きいほど前後加速度Axが小さく設定されている。これは、オフセット前面衝突の場合は、フルラップ前面衝突に比べて左右加速度Ayの変化が大きいため(
図3参照)、前後加速度Axの値を小さく設定しても衝突形態を判定可能であるからである。
図6の判定マップを用いた場合の制御フローを
図7に示す。なお、
図7のフローチャートは、
図5のフローチャートの変形例であり、
図5と同様のステップについては詳細は省略する。
【0051】
図7に示すように、ステップT10では、前突センサ11により加速度αが検出されたか否かが判定され、前突センサ11がONであると判定されると、続くステップT20では加速度センサ21により前後加速度Ax及び左右加速度Ayが検出され、判定部22へ伝達される。ステップT30では、これら前後加速度Ax及び左右加速度Ayから座標値(Ax,Ay)が決定される。そして、ステップT40では、
図6の判定マップに座標値(Ax,Ay)が適用され、座標値(Ax,Ay)が領域1内であるか否かが判定される。座標値(Ax,Ay)が領域1内であれば、ステップT50において衝突形態は領域1のフルラップ前面衝突であると判定され、ステップT60において、制御部23によりフルラップ前面衝突に応じた上記制御が実施される(制御1)。
【0052】
一方、ステップT40において、座標値(Ax,Ay)が領域1内でないと判定されると、ステップT70へ進み、座標値(Ax,Ay)が領域2′内であるか否かが判定される。座標値(Ax,Ay)が領域2′内であれば、ステップT80において衝突形態は領域2′の右オフセット前面衝突であると判定され、ステップT90において、制御部23により右オフセット前面衝突に応じた上記制御が実施される(制御2)。また、ステップT70において、座標値(Ax,Ay)が領域2′内でないと判定されると、ステップT100へ進み、座標値(Ax,Ay)が領域3′内であるか否かが判定される。座標値(Ax,Ay)が領域3′内であれば、ステップT110において衝突形態は領域3′の左オフセット前面衝突であると判定され、ステップT120において、制御部23により左オフセット前面衝突に応じた上記制御が実施される(制御3)。
【0053】
ステップT60,ステップT90,ステップT120において各制御が実施されると、制御フローが終了される。また、ステップT10において前突センサONでないと判定された場合は、フローはリターンされる。つまり、車両1に対して前方から衝撃を受けていない場合は、座標値(Ax,Ay)の決定や領域判定がされず、フローがリターンされる。また、ステップT100で座標値(Ax,Ay)が領域3′内でないと判定された場合も、軽衝突やスリップ状態であると判断され、フローがリターンされる。このように、
図6に示すようなマップを用いても、衝突形態を判定することができる。
【0054】
また、上記実施形態等では、車両1に発生する前後加速度Ax及び左右加速度Ayを加速度センサ21で検出し、これらを座標値(Ax,Ay)として決定して二次元マップに適用しているが、二次元マップを用いない構成であってもよい。また、加速度の代わりに、速度や変位を用いる構成でもよい。なお、上記実施形態では、フルラップ前面衝突と左右のオフセット前面衝突とを判定する制御を例示したが、これに加えて左右のナローオフセット前面衝突を判定する制御構成としてもよい。
【0055】
また、車体に対して前方から衝撃が加わったことを検出する手段(前突検出手段)として、加速度を検出する前突センサ11以外のセンサ(例えば圧力センサ等)が設けられていてもよい。また、車体に対して前方から衝撃が加わったか否かを判断するために、加速度センサ21を用いてもよい。この場合、前突センサ11は不要であるため、構成をより簡素化することができ、コストを削減することができる。
また、上記実施形態では、車両1の前後加速度Ax及び左右加速度Ayを検出する加速度センサ21がエアバッグECU20に内蔵されている構成を説明したが、加速度センサ21はエアバッグECU20と別体で設けられていてもよい。
【0056】
また、前突センサ11及び加速度センサ21(又はこれを内蔵するエアバッグECU20)の位置は上記したものに限られない。例えば、前突センサ11が車両1の前端部に配置されていてもよく、車両前後方向の中間部に配置されていてもよい。また、加速度センサ21(又はこれを内蔵するエアバッグECU20)が車両1の車両前後方向の中間部や後部に搭載されていてもよい。また、これらのセンサ11,21が車幅方向の左右どちらかにずれて搭載されていてもよい。
また、本車両制御装置は、自動車やトラック等の様々な車両に適用可能である。