(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、燃料を消費してエネルギを出力するエネルギ出力手段に対して燃料を供給する燃料供給システムに用いられ、燃料としてのアンモニアを気化させ、気化させた燃料をエネルギ出力手段に供給する燃料気化器においても、アンモニアガスの漏洩を防止するために、上述のアンモニア除害装置を適用することが考えられる。
【0006】
しかし、上述の従来のアンモニア除害装置を適用しようとすると、燃料を気化する気化部をケースの内部に収容し、このケースの内部に散水ノズルを設けることになるため、この散水ノズルの設置スペースが必要となる。また、散水ノズルから広がるように散水するので、散水される広い空間が必要となる。このため、ケースを含めた燃料気化器全体の体格が大きくなってしまう。
【0007】
また、この場合、アンモニアガスを吸収した水(アンモニア水)は、アルカリ性であるため、このアンモニア水の回収処理が新たに必要となってしまう。また、ケースの内部に設けた水槽にアンモニア水を貯めると、何らかの理由により、気化部がアンモニア水によって腐食するのを防止するために、気化部に対して強固な耐腐食処理を行う必要が生じてしまう。
【0008】
したがって、これらの問題を回避すべく、燃料気化器においては、上述のアンモニア除害装置を適用せずに、アンモニアガスを除害できることが望まれる。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、散水せずに、アンモニアガスの漏洩を防止できる燃料気化器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
燃料気化器に設けられ、燃料流路から漏洩したアンモニアガスが流入する空間部(26)と、
空間部に設けられ、アンモニアガスを吸収する吸収材(27)と、
燃料流路と熱媒体流路とを区画する区画部(23)とを備え
、
区画部は、燃料に対面する第1区画壁(24)と、第1区画壁との間に空間部を形成するように第1区画壁から離間しているとともに熱媒体に対面する第2区画壁(25)とを有しており、
第1、第2区画壁の間の空間部に吸収材が充填されており、
吸収材として、アンモニアガスの吸収速度が大きい第1の吸収材(27a)と、アンモニアガスの吸収速度が小さい第2の吸収材(27b)とが用いられ、
空間部内において、燃料流路に近い側の領域では、第1の吸収材の充填割合よりも第2の吸収材の充填割合が大きく、燃料流路に遠い側の領域では、第2の吸収材の充填割合よりも第1の吸収材の充填割合が大きくなるように、第1、第2の吸収材が充填されていることを特徴としている。
【0011】
これによれば、燃料気化器に設けられた空間部に燃料流路から漏洩したアンモニアガスを退避させ、このアンモニアガスを吸収材によって吸収するので、散水せずに、燃料気化器からのアンモニアガスの漏洩を防止できる。
【0012】
したがって、本発明によれば、上述の散水方式のアンモニア除害装置を適用した場合と比較して、散水ノズルの設置スペースや散水される広いスペースを設けなくて済むので、気化器全体の大型化を抑制できる。また、本発明によれば、アンモニア水が生成されないので、アンモニア水の回収処理や、アンモニア水に対しての強固な耐腐食処理を不要にできる。
【0013】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0016】
(第1実施形態)
本実施形態の燃料供給システム1は、車両に適用されており、車両走行用の駆動力を出力するエンジン(内燃機関)EGへ燃料を供給するものである。
【0017】
図1に示すように、燃料供給システム1は、高圧タンク11と、開閉弁12と、燃料気化器20と、エンジンEGと、燃料噴射弁14と、改質器15とを備えている。
【0018】
高圧タンク11は、高圧液体燃料を貯蔵する液体燃料貯蔵手段である。高圧タンク11に貯蔵される燃料は、アンモニアである。アンモニアは、可燃性を有し、高圧化においては常温(15℃〜25℃程度)でも、容易に液化する燃料である。さらに、アンモニアは水素を含有する燃料(水素化合物)であるので、改質することによって可燃性を有する水素ガスを生成することもできる。
【0019】
高圧タンク11の燃料流出口には、開閉弁12を介して、燃料気化器20の燃料入口部211が接続されている。開閉弁12の開弁時間が調整されることによって、燃料気化器20へ流入する燃料流量が調整される。したがって、開閉弁12は、燃料流量調整手段を構成している。
【0020】
燃料気化器20は、高圧タンク11から流出した燃料を気化させる燃料気化手段である。燃料気化器20は、具体的には、燃料と熱媒体としてのエンジン冷却水(温水)とを熱交換させる熱交換器を備えている。このため、燃料供給システム1は、燃料気化器20とエンジンEGとの間をエンジン冷却水が循環する冷却水循環回路40を備えている。
【0021】
冷却水循環回路40は、エンジンEGを冷却する冷却水が循環する熱媒体循環回路であり、燃料気化器20内の熱媒体流路と、エンジンEG内の冷却水流路41と、熱媒体循環手段としての冷却水ポンプ42とを配管にて接続したものである。燃料気化器20の熱媒体入口部213がエンジンEGの冷却水出口と接続され、燃料気化器20の熱媒体出口部214が、エンジンEGの冷却水入口と接続されている。
【0022】
燃料気化器20の燃料出口部212には、燃料気化器20にて気化された燃料(気体燃料)を蓄えるバッファタンク13が接続されている。バッファタンク13から流出した気体燃料の流れは燃料配管にて2つの流れに分岐され、分岐された一方の気体燃料は、気体燃料をエンジンEGの燃焼室内へ噴射供給する燃料噴射弁14へ流入し、分岐された他方の気体燃料は、気体燃料を改質して水素ガスを発生させる改質器15へ流入する。
【0023】
エンジンEGは、いわゆるレシプロ型エンジンで構成されており、燃料気化器20から供給される気体燃料を燃焼して消費し、発熱を伴いながら車両走行用の駆動力となる機械的エネルギを出力するエネルギ出力手段である。
【0024】
燃料噴射弁14は、エンジンEGのシリンダヘッドに固定されて、エンジンEGの吸気ポートに向けて気体燃料を噴射するものである。これにより、気体燃料と燃焼用空気(吸気)が混合された混合気が燃焼室内へ供給される。
【0025】
改質器15は、気体燃料を触媒下で改質可能温度まで加熱して改質反応させることによって、水素ガスを発生させるものである。改質器15にて発生した水素ガスは、補助燃料として吸気に混合されてエンジンEGの吸気ポートより燃焼室へ供給される。
【0026】
このような構成の燃料供給システムは、燃料気化器20において、エンジン冷却水の熱を利用して液状燃料を気化させ、燃料噴射弁14から気化させた燃料をエンジンEGに供給するとともに、改質器15から水素ガスをエンジンEGに供給する。
【0027】
次に、
図2〜5を用いて、燃料気化器20の具体的構成について説明する。
【0028】
図2、3に示すように、燃料気化器20は、燃料が流れる燃料流路21と、この燃料流路21と隣り合わせに配置され、熱媒体が流れる熱媒体流路22とを備え、燃料流路21を流れる燃料と熱媒体流路22を流れる熱媒体とを熱交換させ、熱媒体の熱によって燃料を加熱して気化させる熱交換器を備えている。上述の通り、燃料はアンモニアであり、熱媒体はエンジン冷却水(温水)である。
【0029】
この熱交換器は、燃料流路21と熱媒体流路22とを区画する区画部23を備えている。この区画部23はダブルウォール構造である。すなわち、この区画部23は、燃料に対面する第1区画壁24と、第1区画壁24との間に空間部26を形成するように第1区画壁24から離間しているとともに熱媒体に対面する第2区画壁25とを有している。そして、この第1、第2区画壁24、25の間の空間部26が漏洩したアンモニアガスを退避させる退避流路として構成されており、この空間部26にアンモニアを吸収する固体状の吸収材27が充填されている。
【0030】
具体的には、
図4に示すように、ステンレス合金製の2枚の板状部材(プレート)201、202が最中状に重ね合わせられることにより、燃料流路21もしくは熱媒体流路22の1つの流路が形成されている。そして、
図3に示すように、この1つの流路を形成する2枚の板状部材201、202を一組として、隣り合う一組の板状部材201、202と一組の板状部材201、202との間に空間部26が形成された状態として、複数組の板状部材が積層されている。これにより、燃料流路21と熱媒体流路22との間に空間部26が形成された状態で、燃料流路21と熱媒体流路22とが交互に並んで形成されている。
【0031】
したがって、第1区画壁24が、燃料流路21を形成する2枚の板状部材201、202の一方201のとき、それとの間に空間部26を形成している、熱媒体流路22を形成する2枚の板状部材201、202の他方202が第2区画壁25である。同様に、第1区画壁24が、燃料流路21を形成する2枚の板状部材201、202の他方202のとき、それとの間に空間部26を形成している、熱媒体流路22を形成する2枚の板状部材201、202の一方201が第2区画壁25である。
【0032】
また、
図3、4に示すように、1枚の板状部材201、202の端部には、一組の板状部材同士を接合するための第1接合部201a、202aと、隣り合う二組の板状部材において向かい合う板状部材同士を接合するための第2接合部201b、202bが設けられている。一組の板状部材201、202において、第1接合部201a、202a同士がろう付け接合されることにより、一組の板状部材の内部の空間が閉塞される。隣り合う二組の板状部材201、202において、第2接合部201b、202b同士がろう付け接合されることにより、隣り合う二組の板状部材201、202の間の空間が閉塞される。
【0033】
第1接合部201a、202aは、一組の板状部材201、202の内側に向けて凸状に屈曲した屈曲部として形成されている。一方、第2接合部201b、202bは、一組の板状部材201、202の外側に向けて凸状に屈曲した屈曲部として形成されている。本実施形態では、第2接合部201b、202bを第1接合部201a、202aよりも板状部材201、202の端に配置することで、隣り合う二組の板状部材において第1接合部201aと第1接合部202bとに挟まれる空間を吸収材27の充填スペースとして利用することができる。
【0034】
本実施形態では、吸収材27として金属ハロゲン化物が用いられている。金属ハロゲン化物はアンモニアガスとの反応により、アンモニア錯体化して化学的に安定な状態となるので、アンモニアガス吸収後の回収処理が不要である。金属ハロゲン化物は、粒状もしくは粉末状として用いられる。金属ハロゲン化物としては、NiCl
2、CaCl
2およびMgCl
2等が挙げられ、これらから選ばれる1つ以上のものが用いられる。これらは、いずれもアンモニアガスの吸収性能が高い材料であるが、NiCl
2を用いることが特に好ましい。NiCl
2は、アンモニアガスの吸収量が多く、吸収速度が大きいからである。
【0035】
また、
図5に示すように、板状部材201、202は縦長であり、一組の板状部材201、202の縦方向一端側および他端側には、それぞれ、2つずつタンク形成部203〜206が形成されている。タンク形成部203〜206は、貫通穴を有しており、複数組の板状部材201、202が積層された状態のときに、燃料および熱媒体を分配あるいは集合させるタンク部を形成する。
【0036】
そして、板状部材の上端側の2つのタンク形成部の一方203および下端側の2つのタンク形成部の一方205が燃料流路21に連通し、上端側の2つのタンク形成部の他方204および下端側の2つのタンク形成部の他方206が熱媒体流路22に連通している。
【0037】
本実施形態では、
図5に示す燃料流路21の上端側、下端側のタンク形成部203、205が、それぞれ、
図2に示す燃料出口部212、燃料入口部211に連なっており、燃料入口部211から流入したアンモニアは、各燃料流路21を上昇した後、燃料出口部212から流出する。同様に、
図5に示す熱媒体流路22の上端側、下端側のタンク形成部204、206が、それぞれ、
図2に示す熱媒体入口部213、熱媒体出口部214に連なっており、熱媒体入口部213から流入したエンジン冷却水は、各熱媒体流路22を下降した後、熱媒体出口部214から流出する。
【0038】
上記した構成の熱交換器は、次のようにして製造される。
図3に示すように、2枚の板状部材201、202を一組として、複数組の板状部材201、202を積層する。このとき、吸収材27を包装して1つのパッケージとしたものを、隣り合う二組の板状部材201、202の間に配置する。吸収材27の包装材として、ろう付けの際の加熱によって焼失されるものを用いる。そして、板状部材201、202の第1接合部201a、202a同士および第2接合部201b、202b同士をかしめて仮組みし、熱交換器全体を加熱して一体ろう付けする。これにより、上記した構成の熱交換器を製造することができる。
【0039】
次に、本実施形態の燃料気化器20が奏する効果について説明する。
【0040】
(1)上述の通り、本実施形態の燃料気化器20は、燃料気化器20に設けられ、燃料流路21から漏洩したアンモニアガスが流入する空間部26と、この空間部26に設けられ、アンモニアガスを吸収する固体状の吸収材27とを備えている。
【0041】
これによれば、燃料気化器20に設けられた空間部26に燃料流路21から漏洩したアンモニアガスを退避させ、このアンモニアガスを固体状の吸収材27によって吸収するので、散水せずに、燃料気化器20からのアンモニアガスの漏洩を防止できる。
【0042】
したがって、本実施形態によれば、上述の特許文献1に記載の散水方式のアンモニア除害装置を適用した場合と比較して、散水ノズルの設置スペースや散水される広いスペースを設けなくて済むので、気化器全体の大型化を抑制できる。また、本実施形態によれば、アンモニア水が生成されないので、アンモニア水の回収処理や、アンモニア水に対しての強固な耐腐食処理を不要にできる。
【0043】
(2)本実施形態の燃料気化器20は、燃料流路21と熱媒体流路22とを区画する区画部23を備えている。この区画部23は、燃料に対面する第1区画壁24と、第1区画壁24との間に空間部26を形成するように第1区画壁24から離間しているとともに熱媒体に対面する第2区画壁25とを有している。そして、この第1、第2区画壁24、25の間の空間部26に吸収材27が充填されている。
【0044】
ここで、燃料流路21を流れるアンモニアは腐食性を有するため、本実施形態では、ステンレス合金製の板状部材201、202を用いることで、板状部材201、202に耐腐食性を持たせている。しかし、長い年月を経ると、流路を流れる流体の機械的作用による浸食が発生するため、板状部材201、202の浸食箇所からアンモニアガスが漏洩する恐れがある。そこで、本実施形態では、燃料流路21に最も近い燃料流路21と熱媒体流路22との間に、漏洩したアンモニアガスの退避流路が設けられている。
【0045】
また、区画部23を第1、第2区画壁24、25を備えるダブルウォール構造とした場合、第1、第2区画壁24、25との間に空間部26が存在することで、空間部26が存在しない場合と比較して、燃料流路21と熱媒体流路22との間の熱通過率が低下する。
【0046】
これに対して、本実施形態では、第1、第2区画壁24、25との間の空間部26に吸収材27を充填しているので、吸収材27が伝熱部材となり、この空間部26に何も配置されていない場合と比較して、燃料流路21と熱媒体流路22との間の熱通過率を向上できる。
【0047】
また、一般的に、燃料流路21と熱媒体流路22とを備える燃料気化器では、燃料と熱媒体との間に温度差があるため、燃料流路21および熱媒体流路22を構成する部材201、202に熱歪みが生じる。このため、第1、第2区画壁24、25との間に空間部26が存在する場合では、その熱歪みによって第1、第2区画壁24、25が空間部26側に凹む等の変形が生じる。この変形が生じると、燃料流路21および熱媒体流路22を構成する部材201、202の接合部に応力がかかり、この応力が大きくなると、接合部の破損につながる。このため、接合部の破損を防止するために、接合部を補強する補強部材を追加したり、第1、第2区画壁24、25を厚くしたりすることが必要となる。
【0048】
これに対して、第1、第2区画壁24、25との間の空間部26に吸収材27を充填することで、第1、第2区画壁24、25が補強された状態となるので、第1、第2区画壁24、25の変形が生じ難くなる。このため、この空間部26に何も配置されていない場合と比較して、接合部を補強する補強部材を減らしたり、第1、第2区画壁24、25を薄くしたりでき、熱交換器全体の体格を小さくできる。
【0049】
(第2実施形態)
本実施形態について
図6、7を用いて説明する。
図6は、
図3の区画部23の拡大図に相当する。本実施形態では、第1、第2区画壁24、25の間の空間部26に充填する吸収材27として、2種類の吸収材27a、27bが用いられている。空間部26のうち、燃料流路21に近い側の領域に、アンモニアガスの吸収速度が小さい第2の吸収材27bのみが充填されており、燃料流路21に遠い側の領域に、アンモニアガスの吸収速度が大きい第1の吸収材27aのみが充填されている。
【0050】
ここで、第1実施形態で吸収材27として例示したNiCl
2、CaCl
2およびMgCl
2について、温度が303K、NH
3の分圧が0.084MPaのときのアンモニアガスの吸収量と時間との関係は
図7に示される通りであり、アンモニアガスの吸収速度[(kg)/(kg・s)]は、NiCl
2が4.6×10
−3、CaCl
2が3.0×10
−3、MgCl
2が1.7×10
−3である。このように、NiCl
2、CaCl
2およびMgCl
2のアンモニアガスの吸収速度を比較すると、NiCl
2>CaCl
2>MgCl
2である。
【0051】
したがって、第1、第2の吸収材27a、27bとして用いる化合物の組み合わせとして、第1の吸収材27aがNiCl
2、第2の吸収材27bがCaCl
2である場合や、第1の吸収材27aがNiCl
2、第2の吸収材27bがMgCl
2である場合や、第1の吸収材27aがCaCl
2、第2の吸収材27bがMgCl
2である場合が挙げられる。
【0052】
このような構成の熱交換器は、第1実施形態で説明した熱交換器の製造方法において、第1、第2の吸収材27a、27bをそれぞれ包装した2つのパッケージを用意し、この2つのパッケージを重ねた状態で、熱交換器を加熱して一体ろう付けすることで製造される。
【0053】
ところで、第1区画壁24から空間部26にアンモニアガスが漏洩した場合、空間部26の全域にわたってアンモニアガスが拡散している間は、空間部26に充填された全ての吸収材27がアンモニアガスを吸収する。しかし、燃料流路21に近い側の吸収材27が膨張して隙間が塞がると、燃料流路21に遠い側へのアンモニアガスの拡散が阻害され、燃料流路21に遠い側の吸収材27は、吸収可能な状態であっても、アンモニアガスを吸収できなくなる。
【0054】
これに対して、本実施形態では、燃料流路21に遠い側の第1の吸収材27aは、燃料流路21に近い側の第2の吸収材27bよりもアンモニアガスの吸収速度が大きいので、燃料流路21に遠い側の第1吸収材27aに優先してアンモニアガスを吸収させることができる。これにより、燃料流路21に近い側の第2の吸収材27bが膨張して、燃料流路21に遠い側へのアンモニアガスの拡散が阻害される前に、燃料流路21に遠い側の吸収材27aにアンモニアガスをできるだけ多く吸収させることができるので、吸収材全体でのアンモニアガスの吸収量を多くできる。
【0055】
なお、本実施形態では、空間部26の燃料流路21に近い側の領域と遠い側の領域のそれぞれに、異なる種類の吸収材27a、27bを単独で充填したが、異なる種類の吸収材27a、27bを混合して充填しても良い。
【0056】
この場合、空間部26において、燃料流路21に近い側の領域では、第1の吸収材27aの充填割合よりも第2の吸収材27bの充填割合が大きく、燃料流路21に遠い側の領域では、第2の吸収材27bの充填割合よりも第1の吸収材27aの充填割合が大きくなるように、第1、第2の吸収材27a、27bが充填されていれば良い。このようにしても、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0057】
また、この場合、第1、第2の吸収材27a、27bの混合物を包装した1つのパッケージを用意し、この1つのパッケージ内で、燃料流路21に近い側の領域と、燃料流路21に遠い側の領域とにおいて、第1、第2の吸収材27a、27bの混合割合を予め異ならせておくことで、このような熱交換器が製造される。
【0058】
(第3実施形態)
本実施形態について
図8を用いて説明する。
図8は、
図3の区画部23の拡大図に相当する。本実施形態では、第1、第2区画壁24、25の間の空間部26に、吸収材27よりも熱伝導率が高い伝熱部材が配置されている。
【0059】
具体的には、
図8に示すように、本実施形態では、空間部26において、第1、第2区画壁24、25を連結するステンレス合金等の金属製の連結部材28を設けることにより、第1、第2区画壁24、25を熱的に連結している。この連結部材28は、吸収材27よりも熱伝導率が高いので、この連結部材28が設けられていない場合と比較して、燃料流路21と熱媒体流路22との間の熱通過率を向上できる。
【0060】
なお、本実施形態では、伝熱部材としての連結部材28が第1、第2区画壁24、25を熱的に連結していたが、伝熱部材は、第1、第2区画壁24、25を熱的に連結していなくても良い。例えば、伝熱部材としての金属繊維や金属粒子を吸収材27に混ぜて空間部26に配置しても良い。この場合であっても、空間部26に伝熱部材が配置されていない場合と比較して、燃料流路21と熱媒体流路22との間の熱通過率を向上できる。
【0061】
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態では、吸収材27を設ける空間部26を、燃料流路21と熱媒体流路22とを区画する区画部23に設けたが、燃料気化器20の他の部位に設けても良い。例えば、
図9に示すように、燃料気化器20を、燃料流路21と熱媒体流路22とを有する熱交換器200と、その熱交換器200を収容するケース220とを備える構成とし、ケース220の内面と熱交換器200の外面との間に形成される空間部230に、吸収材27を配置しても良い。
【0062】
(2)上述の各実施形態では、吸収材27として金属ハロゲン化物を用いたが、例えば、活性炭、金属有機構造体(MOF:Metal Organic Frameworks)、ゼオライト、シリカゲル等の他の固体状のものを用いることができる。また、吸収材27として固体状のものに限らず液状のものを用いても良い。
【0063】
(3)上述の各実施形態では、エネルギ出力手段が車両に搭載されるエンジンEGである場合を説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。例えば、エネルギ出力手段が、定置型発電機に用いられ、発電機を駆動するための機械的エネルギを出力する内燃機関である場合や、燃料を燃焼させて熱エネルギを出力する燃焼炉である場合においても、本発明の適用が可能である。
【0064】
(4)上述の各実施形態を実施可能な範囲で組み合わせても良い。例えば、第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせても良い。