特許第5862446号(P5862446)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5862446-真空冷却機能を有する食品機械 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5862446
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】真空冷却機能を有する食品機械
(51)【国際特許分類】
   F25D 7/00 20060101AFI20160202BHJP
   A23L 3/36 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   F25D7/00 A
   A23L3/36 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-111016(P2012-111016)
(22)【出願日】2012年5月14日
(65)【公開番号】特開2013-236581(P2013-236581A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110685
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 方宜
(72)【発明者】
【氏名】大下 泰史
(72)【発明者】
【氏名】柳原 伸章
(72)【発明者】
【氏名】松矢 久美
(72)【発明者】
【氏名】松林 浩司
【審査官】 北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−249256(JP,A)
【文献】 特開2007−162975(JP,A)
【文献】 特開2001−241817(JP,A)
【文献】 特開平4−126971(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0300278(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00−9/00
A23L 3/36−3/375
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物が収容される処理槽と、この処理槽内の気体を外部へ吸引排出して前記処理槽内を減圧する減圧手段と、減圧された前記処理槽内へ外気を導入して前記処理槽内を復圧する復圧手段とを備え、
前記減圧手段は、蒸気凝縮用の熱交換器と、この熱交換器の下流に設けられる水封式の第一真空ポンプと、この第一真空ポンプよりも排気能力の低い水封式の第二真空ポンプとを備え、
前記熱交換器と前記第一真空ポンプとの間は、排気路およびバイパス路で接続されており、そのバイパス路に前記第二真空ポンプが設けられており、
前記排気路を介して前記第一真空ポンプのみで排気を開始し、前記処理槽内の品温または圧力が設定値まで下がると、前記バイパス路を介して前記第二真空ポンプと前記第一真空ポンプとを直列に接続して両真空ポンプで排気し、
この直列運転中、前記第一真空ポンプの給水口への給水を遮断する一方、前記第二真空ポンプの給水口に被冷却物の冷却目標温度よりも所定温度以上低い温度の水を供給する
ことを特徴とする真空冷却機能を有する食品機械。
【請求項2】
前記各真空ポンプへの封水および前記熱交換器への通水は、前記処理槽内の品温または圧力が所定値まで下がると、常温水から冷水に切り替えられる
ことを特徴とする請求項1に記載の真空冷却機能を有する食品機械。
【請求項3】
前記第一真空ポンプと前記第二真空ポンプとを並列に接続して両真空ポンプで排気するか、前記第二真空ポンプと前記第一真空ポンプとを直列に接続して両真空ポンプで排気するかを切替可能に構成された
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空冷却機能を有する食品機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空冷却機能を有する食品機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空冷却機能を有する食品機械の代表例として、真空冷却専用機つまり真空冷却機がある。真空冷却機は、処理槽内の気体を外部へ吸引排出して、処理槽内を減圧することで、処理槽内の飽和蒸気温度を低下させ、それにより処理槽内の食品からの水分蒸発を促し、その気化潜熱により食品の冷却を図る装置である。
【0003】
従来、食品を10℃(飽和蒸気圧力12.3hPa abs)以下まで真空冷却するには、下記特許文献1に開示されるように、減圧手段として、蒸気エゼクタ(4)、蒸気凝縮用の熱交換器(5)、および真空ポンプ(6)が必要であった。
【0004】
しかしながら、設置場所によっては、蒸気エゼクタを駆動するための蒸気源がなく、低圧ひいては低温まで真空冷却することができない。一方、水封式の真空ポンプ単体での到達真空度は、供給される封水の温度に相当する飽和蒸気圧力よりも所定圧力(内部漏れ5.3hPa)だけ高い圧力が限界である。そのため、真空ポンプへの封水として0℃の水を供給できたとしても、0℃の飽和蒸気圧力(6.1hPa abs)に前記所定圧力(5.3hPa)を加えた圧力(11.4hPa abs)までが限界となり、さらに配管の圧力損失を考慮すると、一台の真空ポンプでは実際のところ10℃以下まで冷却することはできない。
【0005】
そこで、下記特許文献2に開示されるように、真空ポンプ(1,2)を直列に接続することも考えられるが、これだけでは蒸気エゼクタに代わるほどの性能を出せない。また、特許文献2に記載の発明の場合、真空ポンプ(1,2)を直列に接続した状態で、上流側の真空ポンプ(1)は、下流側の真空ポンプ(2)よりも大容量のものが用いられる。従って、水封式真空ポンプで構成する場合、下流側の真空ポンプ(2)への封水量が増加してしまい、下流側の真空ポンプ(2)内の圧力損失が上昇し、排気能力が低下してしまう。これを防止するには、下記特許文献3に開示されるように、上流側の真空ポンプ(2)において封水の一部を外部へ抽出する処理が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−296975号公報(図1、請求項1)
【特許文献2】特開平10−296034号公報(図1図3、段落0009)
【特許文献3】特開平6−58279号公報(図1図5、段落0003、0011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、真空冷却機能を有する食品機械において、蒸気エゼクタを用いることなく、被冷却物を簡易に低温(特に10℃以下)まで真空冷却することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、被冷却物が収容される処理槽と、この処理槽内の気体を外部へ吸引排出して前記処理槽内を減圧する減圧手段と、減圧された前記処理槽内へ外気を導入して前記処理槽内を復圧する復圧手段とを備え、前記減圧手段は、蒸気凝縮用の熱交換器と、この熱交換器の下流に設けられる水封式の第一真空ポンプと、この第一真空ポンプよりも排気能力の低い水封式の第二真空ポンプとを備え、前記熱交換器と前記第一真空ポンプとの間は、排気路およびバイパス路で接続されており、そのバイパス路に前記第二真空ポンプが設けられており、前記排気路を介して前記第一真空ポンプのみで排気を開始し、前記処理槽内の品温または圧力が設定値まで下がると、前記バイパス路を介して前記第二真空ポンプと前記第一真空ポンプとを直列に接続して両真空ポンプで排気し、この直列運転中、前記第一真空ポンプの給水口への給水を遮断する一方、前記第二真空ポンプの給水口に被冷却物の冷却目標温度よりも所定温度以上低い温度の水を供給することを特徴とする真空冷却機能を有する食品機械である。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、第二真空ポンプよりも排気能力の高い第一真空ポンプのみで排気を開始し、処理槽内の品温または圧力が設定値(もちろん第一真空ポンプ単独で到達できる真空度)まで下がると、第二真空ポンプと第一真空ポンプとを直列に接続して、両真空ポンプでさらに低圧まで排気する。第二真空ポンプと第一真空ポンプとの直列運転時、排気能力が比較的低い第二真空ポンプが上流側に配置され、排気能力が比較的高い第一真空ポンプが下流側に配置される。
【0010】
この直列運転中、上流側の第二真空ポンプは、さらに上流側にある熱交換器で凝縮された凝縮水を排水すると共に、熱交換器で凝縮しきれなかった蒸気を真空ポンプ内で封水と接触させて凝縮させ、気体の体積を減少させることでより多くの気体を吸引できる効果を発揮する。つまり、直列運転中、上流側の第二真空ポンプは、蒸気凝縮用熱交換器で凝縮した水の排出と、さらに第二真空ポンプ内に流入する水蒸気の凝縮とを行うことになる。これにより、上流側の第二真空ポンプとして、下流側の第一真空ポンプよりも排気能力の低い真空ポンプを用いても、高い真空度を得ることができる。
【0011】
また、直列運転中、下流側の第一真空ポンプへの封水の供給を停止することで、下流側の第一真空ポンプへの封水量の増加を防止できるので、下流側の第一真空ポンプ内の圧力損失の上昇を抑制して、排気能力の低下を防止することができる。さらに、下流側の第一真空ポンプの方が上流側の第二真空ポンプよりも排気能力が高い、すなわちポンプ容積が大きいので、従来技術のように、上流側の第二真空ポンプにおいて封水の一部を外部に抽出する必要もない。その上、直列運転中、第二真空ポンプへの封水として、被冷却物の冷却目標温度よりも所定温度以上低い温度の水を供給することで、被冷却物を確実に冷却目標温度まで真空冷却することができる。このようにして、蒸気エゼクタを用いなくても、食品をたとえば10℃以下の冷却目標温度まで真空冷却することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記各真空ポンプへの封水および前記熱交換器への通水は、前記処理槽内の品温または圧力が所定値まで下がると、常温水から冷水に切り替えられることを特徴とする請求項1に記載の真空冷却機能を有する食品機械である。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、処理槽内の減圧途中で、各真空ポンプへの封水および熱交換器への通水を、常温水から冷水に切り替えることで、冷水の使用を最小限に抑えつつ、被冷却物の冷却目標温度までの真空冷却を迅速に図ることができる。
【0014】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記第一真空ポンプと前記第二真空ポンプとを並列に接続して両真空ポンプで排気するか、前記第二真空ポンプと前記第一真空ポンプとを直列に接続して両真空ポンプで排気するかを切替可能に構成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空冷却機能を有する食品機械である。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、第一真空ポンプと第二真空ポンプとは、直列だけでなく並列にも接続できるから、たとえば処理槽内からの排気開始時には両真空ポンプを並列に接続して、処理槽内からの排気を両真空ポンプで迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、真空冷却機能を有する食品機械において、蒸気エゼクタを用いることなく、被冷却物を簡易に低温(特に10℃以下)まで真空冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の食品機械の一実施例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の食品機械1の一実施例を示す概略図である。本実施例の食品機械1は、真空冷却機であり、被冷却物としての食品2が収容される処理槽3と、この処理槽3内の気体を外部へ吸引排出して処理槽3内を減圧する減圧手段4と、減圧された処理槽3内へ外気を導入して処理槽3内を復圧する復圧手段5と、処理槽3内の圧力を検出する圧力センサ6と、処理槽3内に収容された食品2の温度(品温)を検出する品温センサ7と、これらセンサ6,7の検出信号などに基づき前記各手段4,5を制御する制御手段8とを備える。
【0019】
処理槽3は、扉(図示省略)で開閉可能とされている。扉を開けることで、処理槽3に食品2を出し入れすることができ、扉を閉じることで、処理槽3内を密閉することができる。図示例の場合、食品2は、容器に入れられて、処理槽3内に収容されている。
【0020】
処理槽3には、前述したとおり、圧力センサ6と品温センサ7とが設けられている。圧力センサ6は、処理槽3内の圧力を検出し、品温センサ7は、処理槽3内に収容された食品2の温度を検出する。図示例の品温センサ7は、測温部を食品2に差し込んで、食品2の温度を検出するが、場合により非接触センサを用いてもよい。
【0021】
減圧手段4は、処理槽3内の気体(空気や蒸気)を外部へ吸引排出して、処理槽3内を減圧する。減圧手段4は、蒸気凝縮用の熱交換器9と、この熱交換器9の下流に設けられる水封式の第一真空ポンプ10と、この第一真空ポンプ10よりも排気能力の低い水封式の第二真空ポンプ11とを備える。
【0022】
なお、真空ポンプの排気能力は、排気速度(m/h)と到達真空度(Pa)で表すことができる。但し、一般的には、駆動電動機の出力で表すこともできる。本実施例の場合、たとえば、第一真空ポンプ10が2.2kW、第二真空ポンプ11が0.75kWである。
【0023】
熱交換器9の出口側の逆止弁12とそれより下流の第一真空ポンプ10との間は、排気路13およびバイパス路14で接続されており、そのバイパス路14に第二真空ポンプ11が設けられている。従って、排気路13を介して第一真空ポンプ10のみで排気するか、バイパス路14を介して第二真空ポンプ11と第一真空ポンプ10とを直列に接続して両真空ポンプ11,10で排気するかを切り替えることができる。なお、熱交換器9は、処理槽3内からの気体とその冷却水との間接熱交換器である。つまり、後述するように、熱交換器9は、常温水または冷水が通され、処理槽3内からの排気中に含まれる蒸気を凝縮させる。
【0024】
減圧手段4について、さらに具体的に説明すると、処理槽3からの排気路13には、処理槽3の側から順に、熱交換器9、逆止弁12、主吸気弁15および第一真空ポンプ10が設けられている。また、排気路13には、主吸気弁15の前後を接続するようにバイパス路14が設けられており、このバイパス路14には第二真空ポンプ11が設けられている。さらに、バイパス路14には、第二真空ポンプ11より上流側に従吸気弁16が設けられる一方、第二真空ポンプ11より下流側に従排気弁17が設けられている。
【0025】
従って、主吸気弁15を開く一方、従吸気弁16および従排気弁17を閉じた状態で、二つの真空ポンプ10,11の内、第一真空ポンプ10のみを作動させて、処理槽3内からの排気を行うことができる。あるいは、主吸気弁15を閉じる一方、従吸気弁16および従排気弁17を開いた状態で、第一真空ポンプ10および第二真空ポンプ11の双方を作動させて、処理槽3内からの排気を行うことができる。後者の場合、上流側の第二真空ポンプ11の排気口と下流側の第一真空ポンプ10の吸気口とが連通され、第二真空ポンプ11と第一真空ポンプ10とが直列に接続される。なお、第一真空ポンプ10の排気口はセパレータ(図示省略)に接続されており、第一真空ポンプ10からの流体は、このセパレータにおいて気水分離を図られた後、排気および排水される。
【0026】
第一真空ポンプ10および第二真空ポンプ11は、いずれも水封式の真空ポンプである。そのため、原則として、各真空ポンプ10,11は、給水口から封水と呼ばれる水が供給されつつ運転される。具体的には、第一真空ポンプ10には、第一封水弁19を介して封水が供給可能とされ、第二真空ポンプ11には、第二封水弁20を介して封水が供給可能とされる。原則として、第一封水弁19の開閉は、第一真空ポンプ10の発停と連動し、第二封水弁20の開閉は、第二真空ポンプ11の発停と連動する。但し、後述するように、第二真空ポンプ11と第一真空ポンプ10との直列運転時、第一封水弁19は閉鎖され、第一真空ポンプ10への封水の供給は停止される。
【0027】
熱交換器9や各真空ポンプ10,11への給水系統について説明すると、熱交換器9は、熱交給水路21を介して水が供給され、熱交排水路22を介して水が排出される。また、各真空ポンプ10,11は、封水給水路23を介して水が供給される。封水給水路23は、先端側で二股に分岐されており、その内の一方が、第一封水弁19を介して第一真空ポンプ10の給水口に接続され、他方が、第二封水弁20を介して第二真空ポンプ11の給水口に接続される。
【0028】
熱交給水路21と封水給水路23の基端部(上流部)は、共通管路24とされており、この共通管路24には、常温水か冷水かを切り替えて給水可能とされている。具体的には、共通管路24の基端部には、切替弁25を介して、常温水給水路26と冷水給水路27とが接続されている。
【0029】
なお、冷水とは、後述するように、氷蓄熱装置28などにより冷却された水をいい、常温水とは、そのような冷却がなされない水をいう。そのため、冷水の水温は、常温水の水温よりも低い。冷水の温度は、食品2の冷却目標温度よりも所定温度以上低い温度とされる。具体的には、食品2を10℃以下まで冷却しようとする場合、冷水の温度は6℃以下(より具体的には0.5℃〜6℃の範囲)とされ、好適には0.5℃〜5℃の範囲で設定される。たとえば、本実施例では、冷水の温度は、2〜3℃とされる。
【0030】
常温水給水路26は、たとえば水道水のような常温水を供給する。常温水給水路26には、切替弁25へ向けて給水弁29と逆止弁30とが順に設けられており、給水弁29の開閉により、熱交給水路21や封水給水路23への給水の有無を切り替えることができる。
【0031】
冷水給水路27は、本実施例では氷蓄熱装置28からの冷水を供給する。氷蓄熱装置28は、蓄熱槽内に水を貯留し、その貯留水に水没させた製氷用熱交換器に冷凍機からの冷媒を通して、その製氷用熱交換器の外面に製氷することで冷熱を蓄熱できる。このような製氷による冷熱の蓄熱は、典型的には夜間電力を用いて行われる。蓄熱された冷熱は、蓄熱槽内の氷を溶かしながら冷水として利用することができる。
【0032】
氷蓄熱装置28からの冷水給水路27には、循環ポンプ31が設けられている。また、熱交換器9にて使用後の水は、熱交排水路22を介して氷蓄熱装置28へ戻される。熱交排水路22には、冷水戻し弁32が設けられている。また、熱交排水路22には、冷水戻し弁32よりも上流側(熱交換器9側)において、排水路33が分岐して設けられており、この排水路33には排水弁34が設けられている。
【0033】
従って、切替弁25により冷水給水路27と前記共通管路24(熱交給水路21および封水給水路23)とを連通させると共に、排水弁34を閉じる一方で冷水戻し弁32を開いた状態で、循環ポンプ31を作動させると、氷蓄熱装置28と熱交換器9との間で冷水を循環させることができる。この際、各封水弁19,20を開くことで、各真空ポンプ10,11への封水として冷水を供給することもできる。なお、各真空ポンプ10,11への封水は使い捨てられることを考慮し、氷蓄熱装置28には適宜給水可能とされる。つまり、氷蓄熱装置28には、補給水路41を介して常温水が供給可能とされており、この給水の有無は、補給水路41に設けた補給水弁42の開閉により切り替えられる。
【0034】
一方、切替弁25により常温水給水路26と前記共通管路24(熱交給水路21および封水給水路23)とを連通させると共に、冷水戻し弁32を閉じる一方で排水弁34を開いた状態で、常温水の給水弁29を開くと、常温水を熱交換器9に供給して、熱交換器9で使用後の水を、排水路33を介して排水することができる。この際、各封水弁19,20を開くことで、各真空ポンプ10,11への封水として常温水を供給することもできる。
【0035】
復圧手段5は、減圧された処理槽3内へ外気を導入して、処理槽3内を復圧する。復圧手段5は、処理槽3への給気路35を備え、この給気路35には、処理槽3へ向けて順に、エアフィルタ36と真空解除弁37が設けられている。従って、処理槽3内が減圧された状態で、真空解除弁37を開くと、エアフィルタ36を介して外気を処理槽3内へ導入し、処理槽3内を復圧することができる。なお、本実施例では、真空解除弁37は電動弁(モータバルブ)から構成されており、開度調整可能であるから、処理槽3内を徐々に復圧することもできる。
【0036】
制御手段8は、前記各センサ6,7の検出信号などに基づき前記各手段4,5などを制御する制御器38である。具体的には、第一真空ポンプ10、第二真空ポンプ11、主吸気弁15、従吸気弁16、従排気弁17、第一封水弁19、第二封水弁20、切替弁25、給水弁29、循環ポンプ31、冷水戻し弁32、排水弁34、真空解除弁37、補給水弁42の他、圧力センサ6および品温センサ7は、制御器38に接続されている。そして、制御器38は、以下に述べるように、所定の手順(プログラム)に従い、処理槽3内の食品2の真空冷却を図る。
【0037】
以下、本実施例の食品機械1の運転について具体的に説明する。初期状態において、真空解除弁37は開かれ、その他の弁は閉じられている。また、各真空ポンプ10,11および循環ポンプ31は停止している。さらに、氷蓄熱装置28には、予め製氷されて冷熱が蓄熱されている。この状態で、処理槽3内には、被冷却物としての食品2が収容され、処理槽3の扉は気密に閉じられる。その後、所定の運転開始ボタンを操作することで、真空冷却工程と復圧工程とが順次に実行される。
【0038】
(1)真空冷却工程
真空冷却工程は、時系列に第一段階、第二段階および第三段階に分けることができる。以下、各段階を順に説明する。
【0039】
(1−1)第一段階
真空冷却工程の開始に伴い、まずは、両真空ポンプ10,11の内、第一真空ポンプ10のみを作動させる。この際、熱交換器9および第一真空ポンプ10には、常温水を供給する。
【0040】
具体的には、まず真空解除弁37を閉じて処理槽3内を密閉する。また、従吸気弁16および従排気弁17を閉じたまま、主吸気弁15および第一封水弁19を開いて、第一真空ポンプ10を作動させる。この際、切替弁25および給水弁29の操作により、常温水給水路26からの常温水を熱交換器9および第一真空ポンプ10へ供給する。また、冷水戻し弁32を閉じて排水弁34を開いた状態としておき、熱交換器9にて使用後の水を排水路33から排水する。
【0041】
(1−2)第二段階
処理槽3内の品温または圧力が所定値まで下がると、熱交換器9および各真空ポンプ10,11(実際にはこの時点ではまだ第一真空ポンプ10のみが作動しているので第一真空ポンプ10と言える。)への給水を、常温水から冷水に切り替える。
【0042】
具体的には、本実施例では、品温センサ7の検出温度がたとえば45℃まで下がると、給水弁29および排水弁34を閉じる一方、冷水戻し弁32を開くと共に循環ポンプ31を作動させ、切替弁25を操作して、冷水給水路27からの冷水を熱交換器9および第一真空ポンプ10へ供給する。これにより、氷蓄熱装置28からの冷水を、熱交換器9との間で循環させると共に、第一真空ポンプ10へ供給することができる。
【0043】
熱交換器9では蒸気の凝縮を促進させるために、処理槽3内から吸引する蒸気の温度と冷却水との温度差が大きい方が好ましいが、常温水の場合、夏場には30℃以上にもなり得ることを考慮して、品温が45℃になると冷水に切り替えるようにしている。なお、品温センサ7による検出温度に代えて、圧力センサ6による検出圧力が所定値(たとえば45℃相当の飽和蒸気圧力)になると冷水に切り替えるようにしてもよい。
【0044】
(1−3)第三段階
処理槽3内の品温または圧力が設定値まで下がると、第二真空ポンプ11と第一真空ポンプ10とを直列に接続して両真空ポンプ11,10での排気に切り替える。この直列運転中、第一真空ポンプ10の給水口への給水を遮断する一方、第二真空ポンプ11の給水口には、第二段階に引き続き冷水(冷却目標温度よりも所定温度以上低い温度の水)が供給される。なお、第三段階の設定値は、第二段階の所定値よりも低い値で設定される。
【0045】
具体的には、本実施例では、品温センサ7の検出温度がたとえば20℃まで下がると、主吸気弁15および第一封水弁19を閉じる一方、従吸気弁16および従排気弁17の他、第二封水弁20を開いて、第二真空ポンプ11を作動させる。これにより、上流側の第二真空ポンプ11の排気口と下流側の第一真空ポンプ10の吸気口とを連通して、第二真空ポンプ11と第一真空ポンプ10とを直列に接続して、両真空ポンプ11,10で処理槽3内のさらなる減圧を図る。この際、熱交換器9および第二真空ポンプ11には、第二段階に引き続き冷水が供給される。なお、品温センサ7による検出温度に代えて、圧力センサ6による検出圧力が設定値(たとえば20℃相当の飽和蒸気圧力)になると、第二真空ポンプ11と第一真空ポンプ10との直列運転に切り替えるようにしてもよい。
【0046】
そして、品温センサ7の検出温度が冷却目標温度(たとえば10℃)になると、従吸気弁16、従排気弁17、第二封水弁20、冷水戻し弁32を閉じると共に、第一真空ポンプ10、第二真空ポンプ11および循環ポンプ31を停止させて、真空冷却工程を終了する。
【0047】
(2)復圧工程
復圧工程では、真空解除弁37を開くことで、処理槽3内を大気圧まで復圧する。真空解除弁37を電動弁(モーターバルブ)から構成すれば、真空解除弁37を徐々に開けて、処理槽3内を徐々に復圧することもできる。このようにして処理槽3内を大気圧まで復圧した後、処理槽3の扉を開けて、処理槽3から食品2を取り出せばよい。
【0048】
本実施例の食品機械1によれば、比較的排気能力の高い第一真空ポンプ10のみで排気を開始する。蒸気凝縮用の熱交換器9との組合せにより、熱交換器9において気体の体積を減少させることができるので、第一真空ポンプ10のみで短時間の初期排気を行うことができ、省電力化を図ることができる。
【0049】
その後、処理槽3内の品温または圧力が設定値まで下がると、第二真空ポンプ11と第一真空ポンプ10とを直列に接続して、両真空ポンプ11,10でさらに低圧まで排気する。この直列運転では、比較的排気能力の低い第二真空ポンプ11が上流側に配置され、比較的排気能力の高い第一真空ポンプ10が下流側に配置される。また、この直列運転中、下流側の第一真空ポンプ10の給水口への給水を遮断する一方、上流側の第二真空ポンプ11の給水口に冷水を供給する。
【0050】
この直列運転中、上流側の第二真空ポンプ11は、この第二真空ポンプ11内に吸引される蒸気を第二真空ポンプ11内で封水と接触させて凝縮させ、気体の体積を減少させることでより多くの気体を吸引できる効果を発揮する。つまり、直列運転中、上流側の第二真空ポンプ11は、蒸気凝縮用の熱交換器9で凝縮した水の排出と、さらに第二真空ポンプ11内に流入する水蒸気の凝縮とを行うことになる。これにより、上流側の第二真空ポンプ11として、下流側の第一真空ポンプ10よりも排気能力の低い真空ポンプを用いても、高い真空度を得ることができる。
【0051】
また、直列運転中、下流側に排気能力の高い第一真空ポンプ10が配置されるだけでなく、下流側の第一真空ポンプ10への封水の供給を停止することで、下流側の第一真空ポンプ10への封水量の増加を防止できるので、下流側の第一真空ポンプ10内の圧力損失の上昇を抑制して、排気能力の低下を防止することができる。さらに、下流側の第一真空ポンプ10の方が上流側の第二真空ポンプ11よりも排気能力が高い、すなわちポンプ容積が大きいので、従来技術のように、上流側の第二真空ポンプ11において封水の一部を外部に抽出する必要もない。その上、直列運転中、第二真空ポンプ11への封水として冷水(食品の冷却目標温度よりも所定温度以上低い温度の水)を供給することで、食品2を確実に冷却目標温度まで真空冷却することができる。このようにして、蒸気エゼクタを用いなくても、食品2をたとえば10℃以下の冷却目標温度まで真空冷却することができる。
【0052】
また、主吸気弁15、従吸気弁16、従排気弁17(および後述する接続弁39)を電動弁(モータバルブ)から構成しているので、電磁弁のように瞬時に開閉される訳ではなく、徐々に開度を変えて開放または閉鎖される。そのため、各真空ポンプ10,11は、その吸気口および排気口の双方が閉鎖された状態で運転されるのが防止される。
【0053】
なお、各真空ポンプ10,11の軸封部について、第二真空ポンプ11と第一真空ポンプ10との直列運転時、下流側となる第一真空ポンプ10は、吐出側が大気圧になるため、通常どおりポンプの回転で生じる遠心力による動圧で軸をシールできるが、上流側となる第二真空ポンプ11は、その吸気口から排気口へのすべてが大気圧未満となるため、外気の進入を防止できない。そこで、本実施例では、封水にある程度の給水圧をかけて軸のシールを図っている。具体的には、第二真空ポンプ11への封水の圧力を高めるために、封水給水路23との分岐部よりも下流の熱交給水路21、または排水路33との分岐部よりも上流の熱交排水路22に、たとえばオリフィスや仕切弁などの適宜の絞り(図示省略)を設け、第二真空ポンプ11への封水の圧力を上昇させている。
【0054】
ところで、前記実施例において、第一真空ポンプ10と第二真空ポンプ11とを並列に接続して両真空ポンプ10,11で排気するか、第二真空ポンプ11と第一真空ポンプ10とを直列に接続して両真空ポンプ11,10で排気するかを切替可能に構成してもよい。具体的には、図1において二点鎖線で示すように、第二真空ポンプ11から従排気弁17への管路と、第一真空ポンプ10からの排気路とを、接続弁39を有する接続路40で接続しておくのである。
【0055】
この場合、主吸気弁15、従吸気弁16および接続弁39を開く一方、従排気弁17を閉じることで、第一真空ポンプ10と第二真空ポンプ11とを並列に接続して両真空ポンプ10,11で排気することができる。あるいは、従吸気弁16および従排気弁17を開く一方、主吸気弁15および接続弁39を閉じることで、第二真空ポンプ11と第一真空ポンプ10とを直列に接続して両真空ポンプ11,10で排気することができる。
【0056】
このような構成の場合、第一真空ポンプ10と第二真空ポンプ11とは、直列だけでなく並列にも接続できるから、たとえば処理槽3内からの排気開始当初には両真空ポンプ10,11を並列に接続して、処理槽3内からの排気を両真空ポンプ10,11で迅速に行うことができる。その後、第二真空ポンプ11と第一真空ポンプ10との直列運転に切り替えて、処理槽3内の真空度を高めることができる。
【0057】
また、第一真空ポンプ10と第二真空ポンプ11との並列運転から、第二真空ポンプ11と第一真空ポンプ10との直列運転に切り替える際、従排気弁17の開度を徐々に開ける一方、主吸気弁15および接続弁39の開度を徐々に閉めて、直列運転へ移行させることができる。両真空ポンプ10,11の排気量に差があることを考慮して、直列運転によるメリットを最大限に得られるように、従排気弁17の開度を調整してもよい。
【0058】
本発明の真空冷却機能を有する食品機械1は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。特に、前記実施例では、真空冷却機に適用した例を示したが、上述した減圧手段4を備え、上述した真空冷却機能(真空冷却工程の特に第三段階)を達成できるならば、その他の食品機械にも同様に適用可能である。たとえば、本発明の食品機械1は、真空冷却機に限らず、冷風真空複合冷却機でもよい。この場合、前記実施例において、処理槽3内に冷風を生じさせる手段(冷却機およびファン)をさらに設置すればよい。これにより、食品2を収容した処理槽3内を減圧することによる真空冷却と、処理槽3内の食品2へ冷風を吹き付けることによる冷風冷却とを図ることができる。
【0059】
さらに、前記設定値や前記所定値としての圧力または温度は、前記実施例で述べた数値に限らず適宜変更可能なことは言うまでもない。また、前記実施例では、その構成上、熱交換器9への冷却水を常温水から冷水に切り替えるタイミングと、各真空ポンプ10,11への封水を常温水から冷水に切り替えるタイミングとは一致するが、給水系統の構成を変更させて、前記両タイミングを場合により異ならせてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 食品機械
2 食品(被冷却物)
3 処理槽
4 減圧手段
5 復圧手段
6 圧力センサ
7 品温センサ
8 制御手段
9 熱交換器
10 第一真空ポンプ
11 第二真空ポンプ
13 排気路
14 バイパス路
21 熱交給水路
22 熱交排水路
23 封水給水路
26 常温水給水路
27 冷水給水路
28 氷蓄熱装置
33 排水路
39 接続弁
40 接続路
図1