特許第5862454号(P5862454)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5862454
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】スマートシステム
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20160202BHJP
【FI】
   E05B49/00 J
【請求項の数】10
【全頁数】59
(21)【出願番号】特願2012-119563(P2012-119563)
(22)【出願日】2012年5月25日
(65)【公開番号】特開2013-245468(P2013-245468A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2014年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三治 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 宗範
(72)【発明者】
【氏名】関澤 高俊
【審査官】 川島 陵司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−13644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載システム(10)とユーザが持つ携帯機(20)とを備えたスマートシステムであって、
前記車載システムは、所定のリクエストデータを用いて第1の変調方式で変調を行う第1変調手段(3)と、この変調の結果得られたリクエスト信号(41)を前記携帯機(20)に送信する第1送信アンテナ(2)と、を有し、
前記携帯機は、前記リクエスト信号を受信する第1受信アンテナ(21)と、前記第1受信アンテナが受信した前記リクエスト信号を用いて前記第1の変調方式に対応する第1の復調方式で復調を行う第1復調手段(23)と、前記第1復調手段の復調の結果前記リクエストデータを得られたことに基づいて、所定のアンサーデータを出力するアンサーデータ出力手段(S235、S275、S430)と、出力された前記アンサーデータを送信用に出力する切替手段(27)と、前記切替手段(27)が送信用に出力した前記アンサーデータを用いて第2の変調方式で変調を行う第2変調手段(25)と、この変調の結果得られたアンサー信号(44)を前記車載システム(10)に送信する第2送信アンテナ(24)と、を有し、
前記車載システム(10)は、前記アンサー信号を受信したとき、受信した前記アンサー信号に前記アンサーデータが含まれていることに基づいて、前記車両内のアクチュエータ(9)を作動させるためのスマート駆動を行うスマート駆動手段(S170、S370)を備え、
前記第1変調手段は、所定のRA対抗データを用いて前記第1の変調方式で変調し、前記第1送信アンテナは、この変調の結果得られたRA対抗信号(42)を前記携帯機(20)に送信し、
前記第1受信アンテナ(21)は、送信された前記RA対抗信号(42)を受信し、
前記切替手段(27)は、前記第1受信アンテナが受信した前記RA対抗信号(42)を、前記第1復調手段を迂回させて前記第2変調手段(25)に出力し、前記第2変調手段は、入力された前記RA対抗信号を用いて前記第2の変調方式で変調を行い、前記第2送信アンテナは、この変調の結果得られたRA対抗変調信号(43)を前記車載システムに送信し、
前記車載システムは、前記RA対抗変調信号を受信したとき、前記RA対抗信号の送信タイミングに対する前記RA対抗変調信号の受信タイミングの遅れ時間に基づいて、前記スマート駆動手段による前記スマート駆動を許可するか否かを判定するRA判定手段(S145、S345、S545、S645)を有することを特徴とするスマートシステム。
【請求項2】
前記RA対抗データは、1を表すビットのみが連続するデータであることを特徴とする請求項1に記載のスマートシステム。
【請求項3】
前記RA対抗データは、複数個連続する1のビットと複数個連続する0のビットが交互に現れるようなデータとなっており、1つの前記RA対抗データ内において、1のビットの連続回数は一定であり、0のビットの連続回数も一定であることを特徴とする請求項1に記載のスマートシステム。
【請求項4】
前記RA対抗データは、1個以上の1のビットと複数個連続する0のビットが交互に現れるようなデータとなっており、1つの前記RA対抗データ内において、0のビットの連続回数が一定でないことを特徴とする請求項1に記載のスマートシステム。
【請求項5】
前記RA対抗データは、1個の1のビットと複数個連続する0のビットが交互に現れるようなデータとなっており、1つの前記RA対抗データ内において、0のビットの連続回数が一定でないことを特徴とする請求項4に記載のスマートシステム。
【請求項6】
前記車載システムは、前記リクエスト信号を送信した後に前記RA対抗信号を送信し、前記携帯機は、前記リクエスト信号を受信し終えたことに基づいて前記RA対抗信号に基づく前記RA対抗変調信号の送信を開始し、前記RA対抗変調信号の送信を終了した後、前記アンサー信号を送信することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のスマートシステム。
【請求項7】
前記車載システムは、前記リクエスト信号を送信した後、前記RA対抗信号を送信し、
前記携帯機は、前記リクエスト信号を受信し終えたことに基づいて前記RA対抗信号に基づく前記RA対抗変調信号の送信を開始し、前記RA対抗変調信号の送信を行っている間に、前記リクエスト信号に含まれる前記リクエストデータが正規のデータであるか否かの判定を行い、正規のデータであると判定した場合に、前記アンサー信号を送信し、正規のデータでないと判定した場合に、前記アンサー信号を送信しないことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のスマートシステム。
【請求項8】
前記車載システムは、前記RA対抗信号を送信した後に前記リクエスト信号を送信し、
前記携帯機は、前記RA対抗信号に基づく前記RA対抗変調信号を送信した後、前記リクエスト信号を受信した後で、前記アンサー信号を送信することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のスマートシステム。
【請求項9】
前記車載システムは、前記リクエスト信号を送信した後、前記携帯機において前記リクエスト信号に含まれるリクエストデータが正規のデータであるか否かの判定を行うのに要する時間以上の時間だけ待機した後、前記RA対抗信号を送信し、
前記携帯機は、前記リクエスト信号を受信した後、前記リクエスト信号に含まれる前記リクエストデータが正規のデータであるか否かの判定を行い、正規のデータであると判定した場合に、前記アンサー信号を送信し、正規のデータでないと判定した場合に、前記アンサー信号を送信しないことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のスマートシステム。
【請求項10】
前記車載システムは、前記RA対抗変調信号を受信したとき、前記前記第2の変調方式に対応した復調方式で前記RA対抗信号を復調し、その復調の結果得られた信号を、前記第1変調手段(3)よりも高い入力インピーダンスで、前記第1の復調方式により復調し、その復調の結果得られた信号に基づいて、前記RA対抗信号の送信タイミングに対する前記RA対抗変調信号の受信タイミングの遅れ時間を算出することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載のスマートシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、従来、図39に示すように、車両90のユーザ91が携帯機92を持って車両90に近づくと、車両90から送信されたリクエスト信号Reqが携帯機92で受信され、携帯機92は、このリクエスト信号Reqを受信したことに基づいて、車両90にアンサー信号Ansを送信し、車両90は、このアンサー信号Ansを受信したことに基づいて、スマート駆動(車両90のドアの解錠および車両駆動装置の始動の両方または一方)を行うスマートシステムの技術が知られている。車両90から送信されるリクエスト信号Reqの受信可能範囲は、車両90の近傍93に限定される。これは、携帯機92が車両90から遠く離れているときにスマート駆動が実現してしまうことのないようにするためである。
【0003】
このようなスマートシステムの技術に対して、携帯機92が車両90から遠く離れていた状況においても、中継器を用いて携帯機92と車両90との通信を実現させ、車両90にスマート駆動を行わせるリレーステーションアタック(以下RA)が問題となる可能性がある。
【0004】
リレーステーションアタックにおいては、図40図41に示すように、RA中継器94をリクエスト信号Reqの通信可能範囲93内に配置し、RA中継器95を携帯機95の近傍に配置し、車両90から送信されたリクエスト信号ReqをRA中継器94が受信してRA中継器95に転送し、この転送された信号をRA中継器95が受信して携帯機92に転送するようになっている。なお、携帯機92から送信されたアンサー信号Ansに関しては、図40に示すように、中継器を介さず直接車両90に受信させる方法と、図41に示すように、中継器96、97で中継して車両90に受信させる方法とがある。
【0005】
このような、スマートシステムにRA中継器が介入するリレーアタックへの対抗策として、特許文献1には、RA中継器が転送の際に復調および変調を行うことで通信遅延時間が増加するのを利用して、この増加量がスマートシステムの通常動作で想定される遅延時間の許容時間範囲と異なる場合にRA中継器の介入ありと判定し、スマート駆動を禁止する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−319846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、RA中継器94が、上記のようにリクエスト信号ReqをRA中継器95に転送する場合、RA中継器94、95の介入による遅延は35マイクロ秒程度の短時間になってしまう。これに対し、スマートシステム本来の送受信の遅延時間のばらつきが大きいため(例えば、100マイクロ秒程度)、RA中継器が介入してもスマートシステムの遅延時間のばらつきの誤差範囲内に収まってしまうため、正確にRA中継器介入の有無を判別することが実際には困難である。
【0008】
本発明は上記点に鑑み、スマートシステムの通信の遅延時間に基づいてリレーステーションアタックの介入の有無を判別する技術において、スマートシステム本来の送受信の遅延時間のばらつきを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、車両に搭載される車載システム(10)とユーザが持つ携帯機(20)とを備えたスマートシステムであって、前記車載システムは、所定のリクエストデータを用いて第1の変調方式で変調を行う第1変調手段(3)と、この変調の結果得られたリクエスト信号(41)を前記携帯機(20)に送信する第1送信アンテナ(2)と、を有し、前記携帯機は、前記リクエスト信号を受信する第1受信アンテナ(21)と、前記第1受信アンテナが受信した前記リクエスト信号を用いて前記第1の変調方式に対応する第1の復調方式で復調を行う第1復調手段(23)と、前記第1復調手段の復調の結果前記リクエストデータを得られたことに基づいて、所定のアンサーデータを出力するアンサーデータ出力手段(S235、S275、S430)と、出力された前記アンサーデータを送信用に出力する切替手段(27)と、前記切替手段(27)が送信用に出力した前記アンサーデータを用いて第2の変調方式で変調を行う第2変調手段(25)と、この変調の結果得られたアンサー信号(44)を前記車載システム(10)に送信する第2送信アンテナ(24)と、を有し、前記車載システム(10)は、前記アンサー信号を受信したとき、受信した前記アンサー信号に前記アンサーデータが含まれていることに基づいて、前記車両内のアクチュエータ(9)を作動させるためのスマート駆動を行うスマート駆動手段(S170、S370)を備え、前記第1変調手段は、所定のRA対抗データを用いて前記第1の変調方式で変調し、前記第1送信アンテナは、この変調の結果得られたRA対抗信号(42)を前記携帯機(20)に送信し、前記第1受信アンテナ(21)は、送信された前記RA対抗信号(42)を受信し、前記切替手段(27)は、前記第1受信アンテナが受信した前記RA対抗信号(42)を、前記第1復調手段を迂回させて前記第2変調手段(25)に出力し、前記第2変調手段は、入力された前記RA対抗信号を用いて前記第2の変調方式で変調を行い、前記第2送信アンテナは、この変調の結果得られたRA対抗変調信号(43)を前記車載システムに送信し、前記車載システムは、前記RA対抗変調信号を受信したとき、前記RA対抗信号の送信タイミングに対する前記RA対抗変調信号の受信タイミングの遅れ時間に基づいて、前記スマート駆動手段による前記スマート駆動を許可するか否かを判定するRA判定手段(S145、S345、S545、S645)を有することを特徴とするスマートシステム。
【0010】
このように、本発明では、車載システムから携帯機にRA対抗信号を送信し、携帯機から車載システムにRA対抗変調信号を返信し、車載システムにおいて、RA対抗変調信号を受信したとき、RA対抗信号の送信タイミングに対するRA対抗変調信号の受信タイミングの遅れ時間に基づいて、スマート駆動を許可するか否かを判定する。
【0011】
この際、RA対抗変調信号は、携帯機において受信したRA対抗信号を、第1復調手段を迂回させて第2変調手段(25)に出力することで得られたものである。したがって、RA対抗信号は、リクエスト信号のような復調(第1の復調方式による復調)を受けることなくRA対抗変調信号となって車載システムに戻る。したがって、スマートシステム本来の送受信の遅延時間のばらつきを抑えることができる。
【0012】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係るスマートシステムの作動の模式図である。
図2】リレーステーションアタック介入時のスマートシステムの作動の模式図である。
図3】リレーステーションアタック介入時のスマートシステムの作動の模式図である。
図4】スマートシステムの構成図である。
図5】スマート制御部のメイン処理のフローチャートである。
図6】携帯側制御部が実行する処理のフローチャートである。
図7】LF帯域でやりとりされる信号41、42とRF帯域でやりとりされる信号43、44のタイミングを示す図である。
図8】リレーステーションアタックがない場合の時間差Tを示す図である。
図9】リレーステーションアタックがない場合の時間差Tを示す図である。
図10】遅延時間D1、D2を例示する図である。
図11】遅延時間D1、D2、Rを例示する図である。
図12】遅延時間D1、D2、Rを例示する図である。
図13】従来の遅延時間とLF受信電界強度の関係を示す図である。
図14】本実施形態における遅延時間とLF受信電界強度の関係を例示する図である。
図15】第2実実施形態におけるスマート制御部のメイン処理のフローチャートである。
図16】第2実実施形態において携帯側制御部が実行する処理のフローチャートである。
図17】第2実実施形態においてLF帯域でやりとりされる信号41、42とRF帯域でやりとりされる信号43、44のタイミングを示す図である。
図18】第3実実施形態におけるスマート制御部のメイン処理のフローチャートである。
図19】第3実実施形態において携帯側制御部が実行する処理のフローチャートである。
図20】第3実実施形態においてLF帯域でやりとりされる信号41、42とRF帯域でやりとりされる信号43、44のタイミングを示す図である。
図21】第4実施形態においてリレーステーションアタックがない場合の時間差Tを示す図である。
図22】第4実施形態においてリレーステーションアタックがない場合の時間差Tを示す図である。
図23】第5実施形態においてリレーステーションアタックがない場合の時間差Tを示す図である。
図24】第5実施形態においてリレーステーションアタックがない場合の時間差Tを示す図である。
図25】第6実施形態におけるスマートシステムの構成図である。
【0014】

図26】第6実施形態におけるスマート制御部のメイン処理のフローチャートである。
図27】リレーステーションアタックがない場合の時間幅Lを示す図である。
図28】リレーステーションアタックがない場合の時間幅Lを示す図である。
図29】第7実施形態におけるスマート制御部のメイン処理のフローチャートである。
図30】第8実施形態におけるスマート制御部のメイン処理のフローチャートである。
図31】第9実施形態におけるスマートシステムの構成図である。
図32】第10実施形態におけるスマートシステムの構成図である。
図33】第11実施形態におけるスマートシステムの構成図である。
図34】第12実施形態においてリレーステーションアタックがない場合の時間差Tを示す図である。
図35】第12実施形態においてリレーステーションアタックがない場合の時間差Tを示す図である。
図36】第13実施形態においてリレーステーションアタックがない場合の時間差Tを示す図である。
図37】第13実施形態においてリレーステーションアタックがない場合の時間差Tを示す図である。
図38】第14実施形態におけるスマートシステムの通信手順を示す図である。
図39】スマートシステムの概要を示す図である。
図40】リレーステーションアタック介入時のスマートシステムの概要を示す図である。
図41】リレーステーションアタック介入時のスマートシステムの概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。まず、図1を用いて、本実施形態に係るスマートシステムの概要を説明する。本実施形態のスマートシステムは、車両に搭載される車載システム10と、ユーザ91によって携帯される携帯機20とを備え、互いに双方向の通信を行い、その通信の結果に応じて、スマート駆動として車両のドアの解錠および車両駆動装置(例えばエンジン)始動のうち一方または両方を行う。
【0016】
具体的には、車載システム10からLF帯域(100kHz程度)のリクエスト信号が無線送信され、このとき、ユーザ91が車両に近接しており、携帯機20がリクエスト信号の到達範囲内53に入っていれば、携帯機20はリクエスト信号を受信し、受信したリクエスト信号に含まれるリクエストデータが正規のデータであるか否かを判定し、正規のものであれば、RF帯域(例えば日本、北米、韓国及び中国では300MHz帯、欧州では400MHz帯)のアンサー信号を無線送信し、車載システム10はこのアンサー信号を受信し、受信したアンサー信号に含まれるアンサーデータが正規のデータであるか否かを判定し、正規のものであれば、車両のスマート駆動を実行する。
【0017】
ただし、リクエストデータが正規のものでなかった場合、携帯機20はアンサー信号を送信せず、また、アンサーデータが正規のものでなかった場合、車載システム10はスマート駆動を禁止する。したがって、車載システム10と携帯機20が互いに正規のものでない限り、スマート駆動は実現しない。なお、車両から携帯機20への信号としてLF帯域信号が用いられるのは、LF帯域信号の受信可能範囲53を車両の近傍に限定して、携帯機20が車両から遠く離れているときにスマート駆動が実現してしまうことのないようにするためである。
【0018】
このようなスマートシステムの技術に対して、携帯機20が車両から遠く離れていた状況においても、中継器を用いて携帯機20と車載システム10との通信を実現させ、スマート駆動を行わせるリレーステーションアタックが問題となる可能性がある。
【0019】
リレーステーションアタックにおいては、図2図3に示すように、RA中継器94をリクエスト信号の通信可能範囲53内に配置し、RA中継器95を携帯機20の近傍に配置する。
【0020】
そして、車載システム10から送信されたLF帯域のリクエスト信号をRA中継器94が受信して復調し、更に復調したデータを用いた変調を行うことで、LF帯域のリクエスト信号をRF帯域の信号にしてRA中継器95に送信する。
【0021】
このRF帯域の信号をRA中継器95が受信して復調し、復調後のデータを用いた変調を行うことで、LF帯域のリクエスト信号を復元して携帯機20に送信するようになっている。なお、携帯機20から送信されたアンサー信号に関しては、図2に示すように、中継器を介さず直接車載システム10に受信させる方法と、図3に示すように、中継器96、97で中継して車載システム10に受信させる方法とがある。中継器96、97で中継する場合、中継器96、97のそれぞれで復調および変調が行われる。
【0022】
本実施形態では、この図2図3のようなリレーステーションアタックの有無を判別し、リレーステーションアタックがある場合にはスマート駆動を禁止する技術を提案する。
【0023】
以下、本実施形態のスマートシステムの構成および作動について詳細に説明する。図4は、本実施形態に係る車載システム10および携帯機20の構成図である。車載システム10は、スマート制御部1、LF送信アンテナ2、LF変調部3、RF受信アンテナ4、RF復調部5、LFキャリア発振器6、センサ8、アクチュエータ9等を有している。
【0024】
スマート制御部1は、CPU、RAM、ROM、I/O等を有するマイクロコンピュータとして実現可能であり、CPUがROMに記録されたプログラムを読み出し、RAMを作業領域として当該プログラムを実行することで、携帯機20との通信、リレーステーションアタックの有無の判別、スマート駆動等のためのスマート制御部1各種処理を実現する。
【0025】
LF送信アンテナ2は、LF帯域の信号(LF電波)を無線送信するためのアンテナである。LF変調部3は、スマート制御部1から出力されたデータ信号で、LFキャリア発振器6から出力されたキャリア信号を変調し、変調の結果得られたLF帯域の信号をLF送信アンテナ2に出力する回路である。変調方式としては、ASK、FSK、PSK等使用可能であるが、ここではASK(Amplitude Shift Keying)変調方式を採用して以下説明する。
【0026】
RF受信アンテナ4は、RF帯域の信号(RF電波)を無線受信するためのアンテナである。RF復調部5は、RF受信アンテナ4が受信したRF帯域の信号を復調してスマート制御部1に出力する等の処理を行う回路である。
【0027】
ここで、RF復調部5の詳細について説明する。RF復調部5は、アンプ・フィルタ・D/C部51、復調部52を有している。RF受信アンテナ4が受信したRF帯域の信号は、アンプ・フィルタ・D/C部51において増幅、周波数フィルタリング、IF帯域(中間周波数帯域、本実施形態では300kHz付近の帯域)への周波数ダウンコンバートが為されて、復調部52に入力される。復調部52では、アンプ・フィルタ・D/C部51から入力されたデジタル信号をRF復調(具体的には、上述の中間周波数帯域のキャリア信号を用いたBPSK復調。第2の復調方式の一例に相当する)し、その復調の結果得たデータをスマート制御部1に入力する。このように、RF復調部5では、入力されたRF帯域の信号を復調してスマート制御部1に入力する。
【0028】
LFキャリア発振器6は、LF帯域内の所定の周波数(具体的には134kHz)のキャリア信号をLF変調部3に出力する。LF変調部3は、スマート制御部1から入力されたデータ信号に対して、このキャリア信号を乗算する。すなわち、当該データ信号によってキャリア信号を変調する。
【0029】
センサ8は、車両のドアのドアハンドル部分等に取り付けられ、ユーザがドアに手をかける動作を検出し、検出結果をスマート制御部1に出力するためのセンサであり、例えば、タッチセンサとして実現可能である。
【0030】
アクチュエータ9は、スマート駆動の対象となるアクチュエータであり、車両のエンジンのスタータモータ(またはスタータモータを制御するエンジンECU)、車両のドアの施錠および解錠を行うドアロック機構(ドアロック機構を制御するドアECU)等から成る。
【0031】
携帯機20は、LF受信アンテナ21、アンプ22、LF復調部23、RF送信アンテナ24、RF変調部25、RFキャリア発振器26、切替回路27、携帯側制御部28等を有している。
【0032】
LF受信アンテナ21は、車載システム10から送信されたLF帯域の信号を受信するためのアンテナである。アンプ22は、LF受信アンテナ21が受信したLF帯域の信号を増幅する回路である。LF復調部23は、LF受信アンテナ21が受信してアンプ22が増幅したLF帯域の信号を復調し、復調によって得られたデータを携帯側制御部28に出力する回路である。復調方式としてはASK、FSK、PSK等使用可能であるが、ここでは変調方式と同じASKを復調方式として採用する。
【0033】
RF送信アンテナ24は、RF帯域の信号(RF電波)を無線送信するためのアンテナである。RF変調部25は、切替回路27から出力された信号で、RFキャリア発振器26から出力されたRFキャリア信号を例えばBPSK変調方式(第2の変調方式の一例に相当する)で変調し、変調の結果得られたRF帯域の信号をRF送信アンテナ24に出力する回路である。このようなRF変調部25としては、DBM(Double Balanced Mixer)を用いることができる。
【0034】
RFキャリア発振器26は、RF帯域域内の所定の周波数(具体的には312MHz)のRFキャリア信号(第2のキャリア信号の一例に相当する)を出力する。
【0035】
切替回路27は、携帯側制御部28から出力された信号をRF変調部25に出力するデータ出力状態と、アンプ22から出力された信号(例えば、LF送信アンテナ2から出力されたLFキャリア)をRF変調部25に出力する受信信号出力状態と、を切り替える回路であり、携帯側制御部28の制御に従って作動する。
【0036】
携帯側制御部28は、CPU、RAM、ROM、I/O等を備えたマイクロコンピュータとして実現されており、CPUがROMに記録されたプログラムを読み出し、RAMを作業領域として当該プログラムを実行することで、携帯側制御部28の各種処理が実現する。
【0037】
以下、このような構成のスマートシステムの作動について詳細に説明する。図5に示すように、スマート制御部1は、データ出力処理11、LF復調処理12、およびメイン処理15を並列的に実行するようになっている。
【0038】
データ出力処理11は、メイン処理15の制御に従って、データ信号をLF変調部3に入力する。LF復調処理12は、復調部52から出力された信号に対して所定のLFキャリア信号(LFキャリア発振器6が出力するLFキャリア信号と同じ周波数の信号。LFキャリア発振器6が出力するLFキャリア信号そのものを用いてもよい。)を乗算することで、復調部52から出力された信号を復調する。更にLF復調処理12は復調後の信号に対してHPF(ハイパスフィルタリング)処理を行うことで、不要な低周波成分を除去し、その結果残った信号をメイン処理15に入力する。
【0039】
メイン処理15は、リレーステーションアタックの有無の判定、スマート駆動等を行うための処理である。図5に、このメイン処理15のフローチャートを示す。また、図6に、携帯側制御部28が実行する処理のフローチャートを示す。また、図7に、LF帯域でやりとりされる信号とRF帯域でやりとりされる信号のタイミング図を示す。
【0040】
まず、図1に示すように、携帯機20を有するユーザ91が、車両に近づき、車載システム10の通信可能範囲53に携帯機20が入った場合の事例について説明する。携帯機20の携帯側制御部28は、図6のステップ205で、LF帯域の信号を取得するまで(すなわち携帯機20のLF復調部23が所定の強度以上の信号を受信するまで)待機している。このとき、切替回路27は、アンプ22から入力された信号をRF変調部25に出力せず、携帯側制御部28から入力された信号をRF変調部25に出力するデータ出力状態としている。
【0041】
また、車載システム10のスマート制御部1は、メイン処理15において、ステップ105で、送信タイミングが訪れるまで待機する。送信タイミングとしては、定期的(例えば1秒周期)に訪れるポーリングタイミング、および、センサ6がユーザがドアに手をかける動作を検出したタイミングがある。
【0042】
送信タイミングが訪れると、続いてステップ110に進み、所定のリクエストデータを作成し、このリクエストデータを出力するようデータ出力処理11に指令する。するとデータ出力処理11は、このリクエストデータをLF変調部3に出力する。これにより、LF変調部3が、LFキャリア発振器6からのLFキャリア信号をリクエストデータで変調し、変調した結果の信号であるリクエスト信号41(リクエストデータを含む。図7参照。)を、LF送信アンテナ2を用いて無線送信する。リクエスト信号の送信開始から送信完了までの時間(送信時間)は、数ミリ秒から100ミリ秒の範囲内のいずれかである。
【0043】
このとき携帯機20では、LF受信アンテナ21がリクエスト信号41を受信し、アンプ22でこのリクエスト信号41が増幅される。増幅されたリクエスト信号41は、LF復調部23および切替回路27に入力されるが、切替回路27はデータ出力状態にあるので、リクエスト信号41は切替回路27からRF変調部25には入力されない。LF復調部23は、入力されたリクエスト信号41を復調してリクエストデータを取得し、取得したリクエストデータを携帯側制御部28に入力する。
【0044】
携帯側制御部28は、リクエストデータの入力が始まると、ステップ210に進み、入力されたリクエストデータを取得する。そしてリクエストデータの取得が終了した時点t1(図7参照)で、ステップ215に進み、RF対抗信号の出力を開始するため、切替回路27を切り替えて、携帯側制御部28から入力されたデータをRF変調部25に出力せず、アンプ22から入力された信号をRF変調部25に出力する受信信号出力状態とする。
【0045】
また、メイン処理15においてスマート制御部1は、データ出力処理11がリクエストデータの出力を終了した時点t1において、ステップ115に進み、RA対抗データを含んだ信号の出力を開始するための制御を行う。具体的には、データ出力処理11に対して、RA対抗データを出力するよう指令する。本実施形態では、このRA対抗データは、出力時にレベルが一定(具体的にはHi)の直流信号となるような所定のデータ(例えば、1を表すビットが連続するデータ)である。
【0046】
するとデータ出力処理11は、指令にしたがって当該RA対抗データの出力を開始する。これにより、データ出力処理11からメイン処理15にRA対抗データが入力され始めると共に、スマート制御部1からLF変調部3には、RA対抗データに対応した直流信号が入力され始める。
【0047】
LF変調部3では、この直流信号とLFキャリア発振器6からのLFキャリア信号が乗算されLF送信アンテナ2に出力され始めることで、LF送信アンテナ2から無変調波であるRA対抗信号42(RA対抗データを含む信号であり、LFキャリア信号そのものでもある)が無線送信され始める。
【0048】
なお、データ出力処理11およびLF変調部3によるこのRA対抗信号42の送信は、図5の処理の流れと並列して、時点t1から時点t2までの期間(例えば、数ミリ秒)続ける。このRA対抗信号42の送信時間(時点t1から時点t2までの期間の長さ)は、あらかじめ記憶媒体(例えばスマート制御部1のROM)に記録されている値に従って決まる。
【0049】
ステップ115でRA対抗データを含んだ信号の出力を開始させると、直ちに(すなわち、出力の終了を待たずに)ステップ120に進み、出力に用いられたのと同じRA対抗データをローカルで(すなわち、車載システム10内で)取得開始する。具体的には、データ出力処理から出力され始めたRA対抗データの信号(直流信号)を、取得し始める。
【0050】
メイン処理15では続いて直ちに(RA対抗データの取得完了を待たずに)ステップ125に進み、RF復調部5がRF帯域の信号を受信するまで待機する。なお、後述の通り、実際にはすぐに受信することになる。
【0051】
一方、携帯機20では、切替回路27が受信信号出力状態になっているところに、上記RA対抗信号42をLF受信アンテナ21が受信し、アンプ22が増幅して切替回路27に入力する。
【0052】
したがって、LF受信アンテナ21で受信されたRA対抗信号42が増幅されてRF変調部25に入力される。そして、RF変調部25は、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号(第2のキャリア信号の一例に相当する)を、RA対抗信号42でBPSK変調する。そして、変調された結果の信号であるRA対抗変調信号43(RA対抗データを含む信号)をRF送信アンテナ24に出力することで、RF送信アンテナ24からRF帯域のRA対抗変調信号43が無線送信される。
【0053】
なお、RF送信アンテナ24からRA対抗変調信号43が送信されている間に、携帯側制御部28は、ステップ215に続くステップ220で、取得したリクエストデータが正規なものか否かを判別するために、取得したリクエストデータと、あらかじめ記憶媒体(例えば携帯側制御部28のROM)に記憶されている正規リクエストデータとを照合し、続いてステップ225で、取得したリクエストデータと正規リクエストデータが一致するか否かを、すなわち、取得したリクエストデータが正規のものであるか否かを、判定する。
【0054】
本事例では、リクエストデータは正規の(すなわち、携帯機20に対応する)車載システム10から受信したものなので、ステップ225では、リクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ230に進む。
【0055】
なお、本事例と違い、正規でない車載システム10または他の通信機器から信号を携帯機20が受信した場合は、LF復調部23の復調によって得たリクエストデータは、正規のもので+ないので、ステップ225では、当該リクエストデータと正規リクエストデータとが一致せず、当該リクエストデータが正規のデータでないと判定する。その場合、アンサーデータを出力しないまま処理はステップ205に戻る。したがって、携帯機20から車載システム10にアンサー信号が無線送信されず、車載システム10においてスマート駆動も実行されない。
【0056】
本事例の説明に戻り、ステップ225でリクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ230に進んだ後について説明する。ステップ230では、切替回路27からRF変調部25へのRA対抗信号42の出力が終了するまで待機する。
【0057】
RA対抗信号42の出力が終了したか否かは、ステップ210でリクエストデータの受信を完了した時点から、あらかじめ定められて記憶媒体(例え携帯側制御部28のROM)に記憶されたRA対抗信号42の送信時間が経過したか否かで判定する。なお、このRA対抗信号42の送信時間の情報は、携帯側制御部28でもスマート制御部1でも同じ値が記録されている。
【0058】
あるいは、RA対抗信号42の出力が終了したか否かについては、アンプ22から切替回路27に印加される電圧をAM復調し、電圧、又はその電圧の変化量が事前に設計した閾値以下となった場合に、RA対抗信号42の出力が終了したと判定するようになっていてもよい。
【0059】
一方、車載システム10では、スマート制御部1のメイン処理15において、RA対抗信号42の送信を開始した後、ステップ120を経てステップ125で、RF復調部5による無線受信があるまで待機するが、上述の通り、車載システム10がRA対抗信号42の送信を開始してすぐ、携帯機20からRA対抗変調信号43が送信される。そして、RF復調部5は、RF受信アンテナ4を介してこのRA対抗変調信号43を受信してRFキャリア信号でBPSK復調し、スマート制御部1に出力する。
【0060】
このようにスマート制御部1にBPSK復調された信号が入力さ始めると、メイン処理15において処理はステップ130に進む。ステップ130では、スマート制御部1は、LF復調処理12に対して、LF復調を開始するよう指令する。
【0061】
すると、LF復調処理12においてスマート制御部1は、RF復調部5によってRFキャリアによる復調が為された信号に対してLFキャリアを用いた復調を開始する。復調された信号は逐次メイン処理15に入力される。
【0062】
LF復調処理12がRF復調された信号(RA対抗信号42と同じ信号に相当する)のLF復調を始めると、メイン処理15の処理はステップ135に進み、データ出力処理11からRA対応データを取得し終え、かつ、LF復調処理12がLF復調した信号(RA対抗信号42と同じ信号に相当する)を取得し終えたか否かを判定し、取得し終えたと判定するまで、判定処理を繰り返す。
【0063】
ステップ135に進んだ時点では、これら2つの取得処理は完了していない。なお、データ出力処理11からRA対応データを取得し終えるタイミングがLF復調処理12がLF復調した信号(RF復調されたRA対抗変調信号43)を取得し終えるタイミングより遅くなることはほぼあり得ないので、このステップ135の判定は、LF復調処理12からLF復調した信号を取得し終えたか否かのみを判定する処理であってもよい。
【0064】
LF復調処理12からLF復調した信号を取得し終えたか否かは、例えば、LF復調処理12からメイン処理15に入力される信号をAM復調し、入力信号の電圧、又は電圧の変化量が事前に設計した閾値以下となった場合に、取得が終了したと判定するようになっていてもよい。又は、LF復調処理12からメイン処理15に入力される信号に基づいて、入力信号の電圧、又は電圧の変化量が一定期間(たとえば、134kHzのキャリア信号の1周期分の時間)事前に設計した閾値以下となった場合に、取得が終了したと判定するようになっていてもよい。
【0065】
取得が終了したと判定すると、続いてステップ140に進み、時間差Tの算出を行う。この時間差Tは、図8に示すように、スマート制御部1が携帯機20に送信したRA対抗データ42d(RA対抗信号42に含まれるRA対抗データ)の送信タイミングt11に対する、スマート制御部1が携帯機20から受信した当該RA対抗データ43d(RA対抗変調信号43に含まれるRA対抗データ)の受信タイミングt12の遅れ時間T=t12−t11である。この時間差Tは、リレーステーションアタックの介入が無い本事例では、後述するようにリレーステーションアタックの介入がある場合に比べて非常に小さい。
【0066】
ステップ140では、この時間差Tを以下のような方法で算出する。データ出力処理部11からLF変調部3に出力されてLFキャリアの変調に用いられたRA対抗データが、携帯機20に送信したRA対抗データに相当する。そこで、このデータ出力処理部11から出力されたRA対抗データの信号を分岐させて一方をメイン処理15に入力させ、他方をLF変調部3に入力させる。これにより、メイン処理15がデータ出力処理11から取得したRA対抗データの取得タイミングは、携帯機20に送信したRA対抗データの送信タイミングt11と実質的に同じになる。
【0067】
また、上述の通り、RA対抗変調信号43がRF復調部51でRF復調されてRA対抗信号(LFキャリア信号)が得られ、このRA対抗信号がLF復調処理12でLF復調されてRA対抗データが得られる。したがって、LF復調処理12からメイン処理15に入力されるデータは、携帯機20に送信したRA対抗データである。したがって、メイン処理15がLF復調処理12からRA対抗データを取得するタイミングは、携帯機1から受信したRA対抗データの受信タイミングt12である。
【0068】
このようなことから、メイン処理15がデータ出力処理11から取得したRA対抗データの取得タイミング(すなわち、RA対抗信号42の送信タイミング)に対する、メイン処理15がLF復調処理12からRA対抗データを取得したタイミング(すなわち、RA対抗変調信号43を受信したタイミング)の、遅れ時間を、時間差Tとする。この時間差Tは、図8に示すように、上記2つの取得したRA対抗データ42d、43dの立ち上がりエッジの時間差で特定してもよいし、立ち下がりエッジの時間差で特定してもよい。
【0069】
続いてステップ145では、算出した時間差Tが所定の基準時間T0より小さいか否かを判定する。基準時間T0としては、例えば35マイクロ秒を採用する。
【0070】
本事例では、RA中継器が車載システム10と携帯機20の間の通信に介入していないので、時間差Tは基準時間T0よりも小さくなっている。したがって、処理はステップ150に進む。ステップ145からステップ150に進むことは、スマート駆動を(アンサー信号が正規であるという条件付きで)許可することに相当する。
【0071】
ステップ150では、リレーステーションアタックの介入がないと判定する。具体的には、所定のRAフラグの値をオフにセットする。なお、この所定のRAフラグは、車載システム10の起動時の初期値はオフとなっている。続いてステップ155では、RF復調部5からアンサーデータを取LF復調得するまで待機する。
【0072】
一方、携帯機20では、携帯側制御部28は、RA対抗変調信号の送信が完了するタイミング(ステップ215の開始から所定時間後のタイミング)で、ステップ230においてRA対抗信号42の切替回路27からRF変調部25への出力が終了したと判定し、ステップ235に処理を進める。
【0073】
そしてステップ235では、切替回路27をデータ出力状態に切り替え、所定のアンサーデータを作成し、作成したアンサーデータを切替回路27に出力する。これにより、切替回路27は、当該アンサーデータをRF変調部25に出力し、RF変調部25は、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号を当該アンサーデータでBPSK変調し、変調後の信号(すなわち、アンサーデータを含むアンサー信号44)を、RF送信アンテナ24から無線送信し、処理をステップ205に戻す。アンサー信号44の送信時間は、数ミリ秒から100ミリ秒の範囲内のいずれかである。
【0074】
一方、車載システム10では、上記のように携帯機20から送信されたアンサー信号44が、RF受信アンテナ4を介してRF復調部5によって受信される。そしてRF復調部5では、このアンサー信号44をBPSK復調する。これにより、アンサー信号44に含まれるアンサーデータが、RF復調部5からスマート制御部1に対して入力される。
【0075】
するとスマート制御部1は、メイン処理15において、ステップ155で、当該アンサーデータを取得し、ステップ160で、取得したアンサーデータが正規なものか否かを判別するために、アンサーデータと、あらかじめ記憶媒体(例えばスマート制御部1のROM)に記憶されている正規アンサーデータとを照合し、続いてステップ165で、取得したアンサーデータと正規アンサーデータが一致するか否かを、すなわち、取得したアンサーデータが正規のものであるか否かを、判定する。
【0076】
本事例では、アンサーデータは正規の(すなわち、車載システム10に対応する)携帯機20から受信したものなので、ステップ165では、アンサーデータが正規のものであると判定し、ステップ170に進み、スマート駆動を実行する。これにより、ユーザがドアを開けて車内に入り、エンジンを始動させることができる。ステップ170の後、図5の処理は終了する。
【0077】
なお、本事例と違い、正規でない携帯機または他の通信機器からの信号を車載システム10が受信した場合は、RF復調部5の復調によって得たアンサーデータは、正規のものでないので、ステップ165では、当該アンサーデータと正規アンサーデータとが一致せず、当該アンサーデータが正規のデータでないと判定する。その場合、ステップ170を迂回して、スマート駆動を行わずに禁止し、処理をステップ105に戻す。
【0078】
以上のように、車載システム10から携帯機20にRA対抗信号42を送信し、携帯機20がこのRA対抗信号でRFキャリアを変調し、RA対抗変調信号43として車載システム10に返す場合、本事例のようにリレーステーションアタックの介入がない場合は、RA対抗データをスマート制御部1が携帯機20に送信するタイミングt11に対する、当該RA対抗データを(RA対抗変調信号43として)携帯機20が車載システム10に送信するタイミングはt12の遅れ時間Tは、基準時間T0より小さくなるはずである。したがって、スマート制御部1は、スマート駆動を許可することができる。
【0079】
ここで、図2図3のように、リレーステーションアタックが介入した事例について、リレーステーションアタックが介入していない上記事例との違いを中心に説明する。
【0080】
図2図3の両事例ともに、車載システム10から送信されたリクエスト信号41(リクエストデータを含む信号)およびRA対抗信号(RA対抗データを含む信号)42は、RA中継器94、95によって中継され、携帯機20で受信される。
【0081】
また、図2の事例では、携帯機20から送信されたRA対抗変調信号43(RA対抗データを含む信号)およびアンサー信号41(アンサーデータを含む信号)は、リレーステーションアタックが介入していない上記事例と同様に、車載システム10で受信される。
【0082】
また、図3の事例では、携帯機20から送信されたRA対抗変調信号43(RA対抗データを含む信号)およびアンサー信号41(アンサーデータを含む信号)は、RA中継器96、97によって中継され、携帯機20で受信される。
【0083】
したがって、携帯機20の作動内容は、リレーステーションアタックが介入していない上記事例と同じであり、車載システム10の作動内容は、スマート制御部1がメイン処理15のステップ140に進むまでは、リレーステーションアタックが介入していない上記事例と同じである。
【0084】
しかしながら、RA中継器94、95のそれぞれは、復調および変調の処理を行うので、通信遅延時間が増加する。したがって、リレーステーションアタックが介入している場合は、そうでない場合に比べ、メイン処理15における図5のステップ140で算出する時間差T=t12−t11が、図9に示すように、大きくなる。そしてその結果、ステップ145では、時間差Tが基準時間T0よりも大きいと判定され、処理がステップ175に進む。
【0085】
処理をステップ145からステップ175に進めることは、スマート駆動を許可せず禁止することに相当する。
【0086】
ステップ175でスマート制御部1は、リレーステーションアタックの介入があると判定する。具体的には、上述したRAフラグの値をオンにセットする。ステップ175の後、処理はステップ105に戻る。なお、スマート制御部1は、RAフラグの値がオンになったことに基づいて、車両外に警告報知を行うため、車両のホーンを吹鳴させる等の制御を行うようになっていてもよい。
【0087】
このように、本実施形態では、スマート制御部1が携帯機20に送信したRA対抗信号42の送信タイミングt11に対する、スマート制御部1が携帯機20から受信した当該RA対抗変調信号43の受信タイミングt12の遅れ時間Tと、基準時間T0とを比較し、遅れ時間Tが基準時間T0未満であればリレーステーションアタックが介入していないと判定し、遅れ時間Tが基準時間T0以上であればリレーステーションアタックが介入していると判定する。
【0088】
RA中継器の復調および変調による遅延時間の増大を利用し、車載システム10から携帯機20に送信して携帯機20から車載システム10に戻ってくる信号の遅延時間の長さに応じてリレーステーションアタックの有無を判定する技術は、特許文献1にも記載されている。
【0089】
しかしながら、RA中継器の介在による遅延時間の増大量は、35マイクロ秒程度であるのに対し、スマートシステム本来の(すなわち、リレーステーションアタックが介入しない場合の)送受信の遅延時間のばらつきが100マイクロ秒程度と大きかった。したがって、RA中継器が介入してもスマートシステムの遅延時間のばらつきの誤差範囲内に収まってしまうため、正確にRA中継器介入の有無を判別することが実際には困難であった。
【0090】
ここで、従来のスマートシステムの送受信の遅延時間のばらつきの原因について説明する。図10に示すように、リレーステーションアタックの介入がない場合のスマートシステムの送受信の遅延時間(すなわち時間差T)は、不変な遅延時間D1と、LF受信電界強度によって大きく変化する遅延時間D2の和D1+D2となっている。ここでいうLF受信電界強度は、携帯機が車載システムから受信するLF帯域の信号の受信電界強度である。
【0091】
一方、リレーステーションアタックの介入による遅延時間の増加量をRとすると、図11に示すように、リレーステーションアタックの介入がある場合のスマートシステムの送受信の遅延時間(すなわち時間差T)は、D1+D2+Rとなっている。したがって、リレーステーションアタックの介入があるか否かを判定するために時間差Tと比較する基準時間(上記実施形態における基準時間T0に対応する)の値は、図11のHに相当する値にすることが必要である。
【0092】
しかしながら、D2のばらつきがRよりも大きいので、図12に示すように、D2が非常に小さくなった場合には、上記のような値Hを基準時間の値にしてしまっては、適切にリレーステーションアタックの介入の有無を判定できない。
【0093】
図13に、遅延時間D2とLF受信電界強度の関係を表す。図中、実線51が各受信電力における遅延時間D2の最大値を表し、実線52が各受信電力における遅延時間D2の最小値を示す。
【0094】
この図に示すように、遅延時間D2は、LF受信電界強度が高いほど小さくなる。また、同じ受信電力でも、矢印53の範囲に相当する約30マイクロ秒の遅延時間D2のばらつきが存在する。これは、受信電力によらないばらつきである。LF受信電界強度によらないばらつきとLF受信電界強度に応じたばらつきの両方を加味すると、遅延時間D2の最大ばらつきは、矢印54の範囲に相当する80マイクロ秒となる。
【0095】
ここで、携帯機が車載システムの通信可能範囲内の一番外側にいるとき(携帯機が最低受信感度でLF帯域の信号を受信するとき)に、リレーステーションアタックの有無を正しく判定しようとすると、上述の閾値T0から遅延時間の不変分D1を減算した値T0−D1が、D2の最大値55(またはそれより大きい値)となるよう、閾値T0を設定しなければならない。
【0096】
しかしながら、そのようにすると、RA中継器94、95の介入によって発生する遅延時間を35マイクロ秒程度とすると、D2の最大値55よりも35マイクロ秒小さい限界値56を遅延時間D2が超えてしまうような範囲(図13中のA[dBuV/m]以上の範囲。携帯機と車載システムの間の距離が例えば約30cm以下の範囲)では、RA中継器94、95の介入があるにも関わらず、遅延時間D1+D2+Rが基準時間T0を超えずに、リレーステーションアタックの介入がないと判定されてしまう可能性があった。
【0097】
これに対し、本実施形態では、遅延時間D2がLF受信電界強度に依存しない。なぜなら、本実施形態の携帯機20は、受信したRA対抗信号42(RA対抗データを含む)を復調せず、アンプ22から切替回路27を介してRF変調部25に入力することで、LF復調部23を迂回させるからである。
【0098】
このように、RA対抗信号42をLF復調することなく直接RF変調に用いて、変調後の信号を車載システム10に送信する場合の遅延時間D2は、図14に示すように、実線61から実線62までの範囲63内となり、LF受信電界強度に依存することがほとんどなくなる。
【0099】
そして、この範囲63は30マイクロ秒程度なので、RA中継器94、95の介入による遅延時間Rの35マイクロ秒よりも短い。したがって、上述の閾値T0から遅延時間の不変分D1を減算した値T0−D1が、D2の最大値61(またはそれより少し大きい値)となるよう、閾値T0を設定すればよい。
【0100】
このようにすることで、LF受信電界強度によらず、すなわち、車載システムと携帯機20の距離によらず、リレーステーションアタックの介入がある場合は、高確率でリレーステーションアタックの介入があると判定することができ、リレーステーションアタックの介入がない場合は、高確率でリレーステーションアタックの介入がないと判定することができる。
【0101】
ここで、スマート制御部1のLF復調処理12と携帯機23のLF復調部23との違いについて説明する。本実施形態では、RF復調部5がRA対抗変調信号43をRF復調することで得た信号(RA対抗信号42と同じ信号に相当する)が、スマート制御部1に入力され、入力された当該信号が、スマート制御部1内ののLF復調処理12によってLF復調される。
【0102】
したがって、RF復調後の信号(RA対抗信号42と同じ信号に相当する)は、スマート制御部1に入力される際に、スマート制御部1に設けられたA/D変換器(LF周波数で入力インピーダンスが高いもの)でA/Dサンプリングされ、サンプリング後のデジタルデータに対してLF復調処理12でデジタル復調を行う。この際、LF復調処理12に代えてデジタルLF復調器を用いてもよい。
【0103】
このA/D変換器の入力インピーダンスは、携帯機20のLF変調部23の入力インピーダンスよりも高い。したがって、スマート制御部1のA/D変換器およびLF復調処理において発生する遅延時間のばらつき(受信電界強度に応じたばらつき)は、LF変調部23によって発生する遅延時間のばらつき(受信電界強度に応じたばらつき)に比べて小さい。
【0104】
車載システム10側で、受信電界強度に応じた遅延時間のばらつきが携帯機20よりも小さい機器を用いることができる理由について、以下説明する。携帯機20では、LF電波を常時待ち受けする必要があるが、消費電力を極力低減するために、アンプ22から入力された信号の受信電界強度(RSSI回路で検出)がある規定値を超えた場合、携帯機20のLF受信部23が起動する。しかし、外来ノイズ等で誤って起動する頻度が多いと、消費電力が大きくなってしまうため、LF受信部23の入力インピーダンスを小さくして、応答をにぶらせている。
【0105】
一方、車載システム10自体がRA対抗信号42を送信して初めて、携帯機20からRA対抗変調信号43が返信されるため、A/D変換器およびLF復調処理12(またはデジタルLF復調器)は常時起動する必要が無く、RA対抗信号42を送信してからある一定期間のみ起動していればよい。したがって、A/D変換器およびLF復調処理12(またはデジタルLF復調器)を高速応答(高感度すなわち高インピーダンス)に設計しても消費電流の増大の懸念は小さい。
【0106】
なお、A/D変換器およびLF復調処理12(またはデジタルLF復調器)に代えて、高速応答アナログLF復調器を用いてもよい。この高速応答アナログLF復調器は、携帯機20のLF受信部23よりも高感度かつLF周波数で入力インピーダンスがLF受信部23よりも高いが、その他の作動内容はLF受信部23と同じである。
【0107】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、第1実施形態との違いを中心に説明する。本実施形態における車載システム10および携帯機20のハードウェア構成は、第1実施形態と同じである。本実施形態が第1実施形態と異なるのは、RA対抗信号42、RA対抗変調信号43、リクエスト信号41、アンサー信号44の送信タイミング、ならびに、それら送信タイミングを実現するためのスマート制御部1のメイン処理15の内容および携帯側制御部28の処理の内容である。
【0108】
図15に、本実施形態におけるメイン処理15のフローチャートを示し、図16に、本実施形態における携帯側制御部28の処理のフローチャートを示す。また、図17に、LF帯域でやりとりされる信号とRF帯域でやりとりされる信号(RA対抗信号42、リクエスト信号41、RA対抗変調信号43、アンサー信号44)のタイミング図を示す。本実施形態では、図17に示すように、車載システム10が、まず先にRA対抗信号42を送信し、その後に、リクエスト信号41を送信する点が、第1実施形態と異なる。以下、本実施形態のスマートシステムの作動について、第1実施形態との違いを中心に説明する。
【0109】
まず、図1に示すように、携帯機20を有するユーザ91が、車両に近づき、車載システム10の通信可能範囲53に携帯機20が入った場合の事例について説明する。携帯機20の携帯側制御部28は、携帯機20が信号を受信するまで(すなわち携帯機20のLF復調部23が所定の強度以上の信号を受信するまで)は、図16のステップ250で、LF帯域の信号を取得するまで待機している。このとき切替回路27は、第1実施形態と同様、データ出力状態としている。
【0110】
また、車載システム10のスマート制御部1は、メイン処理15において、ステップ305で、第1実施形態のステップ105と同様に、送信タイミングが訪れるまで待機する。
【0111】
送信タイミングが訪れると、続いてステップ315に進み、第1実施形態のステップ115と同じ方法で、RA対抗信号42の出力を開始するための制御をデータ出力処理11に対して行う。これにより、第1実施形態と同様、LFキャリア発振器6から出力されたLFキャリアに、データ出力処理11から出力されたRA対抗データの信号(直流信号)が乗算され、その結果の信号であるRA対抗信号42が、LF送信アンテナ2から無線送信され始める。なお、このRA対抗信号42の送信(データ出力処理11によるRA対抗データの出力)は、時点t3から時点t4までのあらかじめ決められた期間(例えば、数ミリ秒)続ける。
【0112】
そして、LF変調部3がRA対抗信号42を無線送信し始めてすぐに、メイン処理15では、ステップ320に進み、図5のステップ120と同じ方法で、出力に用いられたのと同じRA対抗データをローカルで(すなわち、車載システム10内で)取得開始する。
【0113】
メイン処理15では続いて直ちに(すなわち、RA対抗データの取得完了を待たずに)ステップ325に進み、RF復調部5がRF帯域の信号を受信するまで待機する。なお、後述の通り、実際にはすぐに受信することになる。
【0114】
一方、携帯機20では、LF受信アンテナ21、アンプ22、LF復調部23がこのRA対抗信号42を受信し始めると、携帯側制御部28が、ステップ250からステップ255に処理を進め、RA対抗信号のRF変調部25への入力を開始するため、切替回路27を受信信号出力状態に切り替える。すると、上記RA対抗信号42をLF受信アンテナ21が受信し、アンプ22が増幅して切替回路27に入力し始める。したがって、LF送信アンテナ2で受信されたRA対抗信号42が増幅されてRF変調部25に入力される。そして、RF変調部25は、RA対抗信号42を用いて、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号(第2のキャリア信号の一例に相当する)をBPSK変調する。そして、変調された結果の信号であるRA対抗変調信号43をRF送信アンテナ24に出力することで、RF送信アンテナ24からRF帯域のRA対抗変調信号43が無線送信される。
【0115】
なお、RF送信アンテナ24からRA対抗変調信号43が送信されている間、携帯側制御部28は、ステップ255で、切替回路27からRF変調部25へのRA対抗信号42の出力が終了するまで待機する。RA対抗信号42の出力が終了したか否かの判定方法は、第1実施形態のステップ230と同じである。
【0116】
一方、車載システム10では、スマート制御部1のメイン処理15において、RA対抗信号42の送信を開始した後、ステップ320を経てステップ325で、RF復調部5による無線受信があるまで待機するが、上述の通り、車載システム10がRA対抗信号42の送信を開始してすぐ、携帯機20からRA対抗変調信号43が送信される。そして、RF復調部5は、RF受信アンテナ4を介してこのRA対抗変調信号43を受信してBPSK復調(RF復調)してスマート制御部1およびLF復調処理12に出力する。
【0117】
このようにスマート制御部1に信号が入力されると、メイン処理15において処理はステップ330に進む。ステップ330では、LF復調処理12に対して、LF復調を開始するよう指令する。
【0118】
すると、LF復調処理12においてスマート制御部1は、RF復調部5によってRFキャリアによる復調が為された信号に対してLFキャリアを用いた復調を開始する。復調された信号は逐次メイン処理15に入力される。
【0119】
RF復調された信号(RA対抗信号42と同じ信号に相当する)のLF復調処理12が始まると、メイン処理15の処理はステップ335に進み、図5のステップ135と同じ処理を行う。具体的には、データ出力処理11からRA対応データを取得し終え、かつ、LF復調処理12がLF復調した信号を取得し終えたか否かを判定する。ステップ335に進んだ時点では、これら2つの取得処理は完了していない。
【0120】
取得が終了したと判定すると、続いてステップ340に進み、時間差Tの算出を行う。時間差Tの算出方法は、図5のステップ140と同じである。
【0121】
続いてステップ345では、図5のステップ145と同じ処理で、では、算出した時間差Tが所定の基準時間T0より小さいか否かを判定する。本事例では、RA中継器が車載システム10と携帯機20の間の通信に介入していないので、時間差Tは基準時間T0よりも小さくなっているので、処理はステップ350に進む。ステップ345からステップ350に進むことは、スマート駆動を(アンサー信号が正規であるという条件付きで)許可することに相当する。ステップ350では、図5のステップ150と同じ処理で、リレーステーションアタックの介入がないと判定する。
【0122】
続いてステップ353では、図5のステップ110と同じ処理で、所定のリクエストデータを作成し、このリクエストデータを出力するようデータ出力処理11に指令する。するとデータ出力処理11は、このリクエストデータをLF変調部3に出力する。これにより、LF変調部3が、LFキャリア発振器6からのLFキャリア信号をリクエストデータで変調し、変調した結果の信号であるリクエスト信号41(リクエストデータを含む)を、LF送信アンテナ2を用いて無線送信する。続いてステップ355では、アンサーデータをRF復調部5から取得するまで待つ。
【0123】
このとき携帯機20では、LF受信アンテナ21がリクエスト信号41を受信し、アンプ22でこのリクエスト信号41が増幅される。増幅されたリクエスト信号41は、LF復調部23および切替回路27に入力されるが、切替回路27はデータ出力状態にあるので、リクエスト信号41は切替回路27からRF変調部25には入力されない。LF復調部23は、入力されたリクエスト信号41を復調してリクエストデータを取得し、取得したリクエストデータを携帯側制御部28に入力する。
【0124】
一方、携帯機20では、携帯側制御部28が、ステップ255で、切替回路27からRF変調部25へのRA対抗信号42の出力が終了するまで待機し、出力が終了すると、切替回路27をデータ出力状態に切り替えた上でステップ260に進み、LF復調部23からリクエストデータが入力され始めるまで待ち、入力され始めると、ステップ260に進み、リクエストデータを取得する。
【0125】
リクエストデータの取得が完了すると、続いてステップ265に進み、取得したリクエストデータが正規なものか否かを判別するために、リクエストデータと、あらかじめ記憶媒体に記憶されている正規リクエストデータとを照合し、続いてステップ270で、取得したリクエストデータと正規リクエストデータが一致するか否かを、すなわち、取得したリクエストデータが正規のものであるか否かを、判定する。
【0126】
本事例では、リクエストデータは正規の車載システム10から受信したものなので、ステップ270では、リクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ275に進む。
【0127】
なお、本事例と違い、正規でない車載システム10または他の通信機器から信号を携帯機20が受信した場合は、ステップ270では、当該リクエストデータが正規のデータでないと判定する。その場合、アンサーデータを出力しないまま処理はステップ250に戻る。したがって、携帯機20から車載システム10にアンサー信号が無線送信されず、車載システム10においてスマート駆動も実行されない。
【0128】
本事例の説明に戻り、そしてステップ275では、所定のアンサーデータを切替回路27に出力する。これにより、RF変調部25は、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号を当該アンサーデータでBPSK変調し、変調後の信号(すなわち、アンサー信号44)を、RF送信アンテナ24から無線送信し、処理をステップ250に戻す。
【0129】
一方、車載システム10では、上記のように携帯機20から送信されたアンサー信号44が、RF復調部5によってBPSK復調されて、スマート制御部1に対して入力される。
【0130】
するとスマート制御部1は、メイン処理15のステップ355で、当該アンサーデータを取得してステップ360に進む。ステップ360、365、370の処理内容については、第1実施形態のステップ160、165、170の処理内容と同様である。つまり、取得したアンサーデータが正規なものであればスマート駆動を行って図15の処理を終了し、正規なものでなければスマート駆動を行わずに禁止して処理をステップ305に戻す。
【0131】
以上のように、車載システム10から携帯機20にRA対抗信号42を送信し、携帯機20がこのRA対抗信号42をRFキャリア信号で変調し、RA対抗変調信号43として車載システム10に返す場合、本事例のようにリレーステーションアタックの介入がない場合は、携帯機20から車載システムに戻るRA対抗変調信号43の遅れ時間(時間差T)は、基準時間T0より小さくなる。
【0132】
ここで、図2図3のように、リレーステーションアタックが介入した事例(介入の方法は第1実施形態と同じ)について、リレーステーションアタックが介入していない事例との違いを中心に説明する。
【0133】
図2図3の事例では、携帯機20の作動内容は、リレーステーションアタックが介入していない上記事例と同じであり、車載システム10の作動内容は、スマート制御部1がメイン処理15のステップ340に進むまでは、リレーステーションアタックが介入していない上記事例と同じである。
【0134】
しかしながら、RA中継器94、95のそれぞれは、復調および変調の処理を行うので、通信遅延時間が増加する。したがって、リレーステーションアタックが介入している場合は、そうでない場合に比べ、メイン処理15における図15のステップ340で算出する時間差T=t12−t11が、図9に示すように、大きくなる。そしてその結果、ステップ345では、時間差Tが基準時間T0よりも大きいと判定され、処理がステップ375に進む。処理をステップ345からステップ375に進めることは、スマート駆動を許可せず禁止することに相当する。
【0135】
ステップ375でスマート制御部1は、図5のステップ175と同じ処理で、リレーステーションアタックの介入があると判定する。ステップ375の後、処理はステップ305に戻る。
【0136】
このように、本実施形態では、スマート制御部1が携帯機20に送信したRA対抗信号42の送信タイミングt11に対する、スマート制御部1が携帯機20から受信した当該RA対抗変調信号43の受信タイミングt12の遅れ時間Tと、基準時間T0とを比較し、遅れ時間Tが基準時間T0未満であればリレーステーションアタックが介入していないと判定し、遅れ時間Tが基準時間T0以上であればリレーステーションアタックが介入していると判定する。
【0137】
そして、第1実施形態と同様、本実施形態の携帯機20は、受信したRA対抗信号42(RA対抗データを含む)を復調せず、アンプ22から切替回路27を介してRF変調部25に入力することで、LF復調部23を迂回させる。したがって、遅延時間D2がLF受信電界強度に依存しない。
【0138】
したがって、第1実施形態のように基準時間T0を設定することで、LF受信電界強度によらず、すなわち、車載システムと携帯機20の距離によらず、リレーステーションアタックの介入がある場合は、高確率でリレーステーションアタックの介入があると判定することができ、リレーステーションアタックの介入がない場合は、高確率でリレーステーションアタックの介入がないと判定することができる。
【0139】
また、本実施形態の車載システム10は、まずRA対抗信号42の無線送信を開始し(ステップ315)、RA対抗信号42の無線送信の開始と共に、RA対抗信号42に含まれるRA対抗データと同じRA対抗データをローカルで取得し始め(ステップ320)、携帯機20は、RA対抗信号42の受信と、RA対抗信号42を用いたRF変調と、RA対抗変調信号43の無線送信と、を開始し(ステップ250、255)、車載システム10は、キャリア変調信号43を受信し、ローカルで取得したRA対抗データに対する、キャリア変調信号43に含まれるRA対抗データの遅れ時間(時間差T)を算出し(ステップ340)、算出した時間差Tを基準時間T0と比較し(ステップ345)、時間差Tが基準時間T0未満ならばスマート駆動を許可し(ステップ370)、時間差Tが基準時間T0以上ならばスマート駆動を禁止する(ステップ375)。
【0140】
そして車載システム10は、スマート駆動を許可する場合は、RA対抗信号42の無線送信を終了した後に、リクエスト信号41を無線送信し、携帯機20は、リクエスト信号41を無線受信したことに基づいて、アンサー信号44を無線送信し、車載システム10は、アンサー信号44を無線受信したことに基づいて、スマート駆動を実行する。
【0141】
このように、リクエスト信号41の送信前にRA対抗信号42を送信することで、通信の最初に車載システム10から送信するバースト信号を、RA対抗信号42が兼ねることができる。なお、バースト信号は、携帯機20のLF復調部23が安定して復調を行うために、車載システム10から携帯機20に送信する信号の先頭に付与される無変調信号であり、スマートシステムにおいては、バースト信号を車載システム10から携帯機20に送信することが従来から行われている。
【0142】
本実施形態のように、RA対抗信号42がバースト信号としても機能すれば、例えば、第1実施形態において、リクエスト信号41の前にバースト信号を無線送信する場合と比べれば、全体としての通信時間が短縮し、車載システム10と携帯機20の間の通信のレスポンスが向上する。
【0143】
また、車載システム10は、スマート駆動を許可しない場合は、RA対抗信号42の無線送信を終了した後に、リクエスト信号41を無線送信しない。また、リクエスト信号41が送信されないので、携帯機20からはアンサー信号44も送信されない。したがって、スマート駆動を許可しない場合に、無駄なリクエスト信号41およびアンサー信号44の送信を行う必要がなく、その分電力消費を抑えられる。
【0144】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、第1実施形態との違いを中心に説明する。本実施形態における車載システム10および携帯機20のハードウェア構成は、第1実施形態と同じである。本実施形態が第1実施形態と異なるのは、RA対抗信号42、RA対抗変調信号43、リクエスト信号41、アンサー信号44の送信タイミング、ならびに、それら送信タイミングを実現するためのスマート制御部1のメイン処理15の内容および携帯側制御部28の処理の内容である。
【0145】
図18に、本実施形態におけるメイン処理15のフローチャートを示し、図19に、本実施形態における携帯側制御部28の処理のフローチャートを示す。また、図20に、LF帯域でやりとりされる信号とRF帯域でやりとりされる信号(リクエスト信号41、RA対抗信号42、RA対抗変調信号43、アンサー信号44)のタイミング図を示す。
【0146】
なお、本実施形態における車載システム10の作動は、RA対抗信号42を送信し始めるタイミングが第1実施形態よりも遅いこと以外は、第1実施形態と同じである。したがって、メイン処理15のフローチャートは、図5の処理に対し、ステップ113の処理を追加しただけのものとなる。
【0147】
以下、本実施形態のスマートシステムの作動について、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。まず、図1に示すように、携帯機20を有するユーザ91が、車両に近づき、車載システム10の通信可能範囲53に携帯機20が入った場合の事例について説明する。
【0148】
携帯機20の携帯側制御部28は、携帯機20が信号を受信するまで(すなわち携帯機20のLF復調部23が所定の強度以上の信号を受信するまで)は、図19のステップ405で、LF帯域の信号を取得するまで待機している。このとき切替回路27は、第1実施形態と同様、データ出力状態としている。また、車載システム10のスマート制御部1は、メイン処理15において、ステップ105で、送信タイミングが訪れるまで待機する。
【0149】
送信タイミングが訪れると、続いてステップ110に進み、所定のリクエストデータを作成し、このリクエストデータを出力するようデータ出力処理11に指令する。これにより、LF変調部3が、リクエストデータを用いてLFキャリア発振器6からのLFキャリア信号を変調し、変調した結果の信号であるリクエスト信号41(図20参照)を、LF送信アンテナ2を用いて無線送信する。リクエスト信号41の送信開始から送信完了までの時間(送信時間)は、数ミリ秒から100ミリ秒の範囲内のいずれかである。
【0150】
このとき携帯機20では、リクエスト信号41がLF受信アンテナ21で受信され、アンプ22を経てLF復調部23および切替回路27に入力されるが、切替回路27はデータ出力状態にあるので、リクエスト信号41は切替回路27からRF変調部25には入力されない。
【0151】
LF復調部23は、入力されたリクエスト信号41を復調してリクエストデータを取得し、取得したリクエストデータを携帯側制御部28に入力する。携帯側制御部28は、リクエストデータの入力が始まると、ステップ410に進み、入力されたリクエストデータを取得する。そしてリクエストデータの取得が終了した時点t5(図20参照)で、ステップ415に進み、取得したリクエストデータが正規なものか否かを判別するために、当該リクエストデータと、あらかじめ記憶媒体に記憶されている正規リクエストデータとを照合し、続いてステップ420で、取得したリクエストデータと正規リクエストデータが一致するか否かを、すなわち、取得したリクエストデータが正規のものであるか否かを、判定する。
【0152】
本事例では、リクエストデータは正規の車載システム10から受信したものなので、ステップ420では、リクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ425に進む。
【0153】
ステップ425に処理を進めた時点は、リクエスト信号41を取得し終えた時点t5よりも遅い時点t6である。この時点t5から時点t6までの期間46は、リクエストデータの認証処理時間である。つまり、この期間46は、リクエストデータが正規のデータであるか否かの判定を行うのに要する時間である。ステップ425では、切替回路27を切り替えて受信信号出力状態とする。
【0154】
なお、本事例と違い、正規でない車載システム10または他の通信機器から信号を携帯機20が受信した場合は、LF復調部23の復調によって得たリクエストデータは、正規のものでないので、ステップ420では、当該リクエストデータと正規リクエストデータとが一致せず、当該リクエストデータが正規のデータでないと判定する。その場合、アンサーデータを出力しないまま処理はステップ405に戻る。したがって、携帯機20から車載システム10にアンサー信号が無線送信されず、車載システム10においてスマート駆動も実行されない。
【0155】
本事例の説明に戻る。メイン処理15においてスマート制御部1は、データ出力処理11がリクエストデータの出力を終了した時点t5において、ステップ113に進み、所定時間待機する。この所定時間は、携帯機20でリクエストデータの照合(ステップ415)および正規判定(ステップ420)を実行するのに要するであろうとあらかじめ見積もられた時間46と同じかまたは長い時間45であり、あらかじめスマート制御部1の記憶媒体に記録された固定値である。したがって、このステップ113で待機し終えた時点t7で、携帯側制御部28においてはステップ415、420の処理が既に終了している(時点t6に終了している)。
【0156】
ステップ113に続いてはステップ115に進み、LFキャリアの出力を開始するための制御を、第1実施形態と同様に行う。これにより、LF変調部3は、LF送信アンテナ2を用いて無変調波であるRA対抗信号42(RA対抗データを含む信号)を時点t7から無線送信し始める。
【0157】
なお、データ出力処理11およびLF変調部3によるこのRA対抗信号42の送信は、時点t7から時点t8までの期間(例えば、数ミリ秒)続ける。
【0158】
そして、LF変調部3がRA対抗信号42を無線送信し始めてすぐに、メイン処理15では、ステップ120に進み、ステップ115で出力に用いられたのと同じRA対抗データをローカルで(すなわち、車載システム10内で)取得開始する。具体的には、データ出力処理から出力され始めたRA対抗データの信号(直流信号)を、取得し始める。
【0159】
一方、携帯機20において、携帯側制御部28は、既に説明した通り、ステップ425で切替回路27が受信信号出力状態となっている。
【0160】
したがって、時点t7からLF受信アンテナ21において受信されてアンプ22を介して(LF復調部23を迂回して)切替回路27に入力され始めたRA対抗信号42が、RF変調部25に入力され始める。そして、RF変調部25は、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号(第2のキャリア信号の一例に相当する)をRA対抗信号42でBPSK変調する。そして、変調された結果の信号であるRA対抗変調信号43をRF送信アンテナ24に出力することで、RF送信アンテナ24からRF帯域のRA対抗変調信号43が無線送信される。このRA対抗変調信号43には、第1実施形態で説明した通り、RA対抗データの情報が含まれている。
【0161】
そして、ステップ425では、切替回路27からRF変調部25へのRA対抗信号42の出力が終了するまで待機する。RA対抗信号42の出力が終了したか否かは、アンプ22から切替回路27に印加される電圧をAM復調し、電圧、又はその電圧の変化量が事前に設計した閾値以下となった場合に、RA対抗信号42の出力が終了したと判定するようになっていてもよい。
【0162】
一方、車載システム10では、スマート制御部1のメイン処理15において、RA対抗信号42の送信を開始した後、ステップ120を経てステップ125で、RF復調部5による無線受信があるまで待機しており、上述の通り、時点t7において、携帯機20からRA対抗変調信号43が送信される。そして、RF復調部5は、RF受信アンテナ4を介してこのキャリア変調信号43を受信しBPSK復調を行い、復調の結果得た信号(RA対抗信号42と同じ信号)をスマート制御部1に出力する。
【0163】
このようにスマート制御部1に信号が入力されると、メイン処理15において処理はステップ130に進む。ステップ130では、スマート制御部1は、LF復調処理12に対して、LF復調を開始するよう指令する。
【0164】
すると、LF復調処理12においてスマート制御部1は、RF復調部5によってRFキャリアによる復調が為された信号に対してLFキャリアを用いた復調を開始する。復調された信号は逐次メイン処理15に入力される。
【0165】
ステップ130では、スマート制御部1は、LF復調処理12に対して、LF復調を開始するよう指令する。すると、LF復調処理12においてスマート制御部1は、RF復調部5によってRFキャリアによる復調が為された信号に対してLFキャリアを用いた復調を開始する。復調された信号は逐次メイン処理15に入力される。
【0166】
LF復調処理12がRF復調された信号(RA対抗信号42と同じ信号に相当する)のLF復調を始めると、メイン処理15の処理はステップ135に進み、データ出力処理11からRA対応データを取得し終え、かつ、LF復調処理12がLF復調した信号(RA対抗信号42と同じ信号に相当する)を取得し終えるまで待機する。
【0167】
取得が終了したと判定すると、続いてステップ140に進み、第1実施形態と同様、時間差Tの算出を行う。
【0168】
続いてステップ145では、第1実施形態と同様、算出した時間差Tが所定の基準時間T0より小さいか否かを判定する。本事例では、RA中継器が車載システム10と携帯機20の間の通信に介入していないので、時間差Tは基準時間T0よりも小さくなっている。したがって、処理はステップ150に進む。ステップ145からステップ150に進むことは、スマート駆動を(アンサー信号が正規であるという条件付きで)許可することに相当する。ステップ150では、第1実施形態と同様、リレーステーションアタックの介入がないと判定する。続いてステップ155では、RF復調部5からアンサーデータを取LF復調得するまで待機する。
【0169】
また、LF変調部3でRA対抗信号42の送信が終了した時点t8において、携帯機20では、切替回路27からRF変調部25へのRA対抗信号42の出力が終了するので、携帯側制御部28は、処理をステップ430に進める。
【0170】
そして、ステップ430で、切替回路27をデータ出力状態に切り替え、所定のアンサーデータを作成し、作成したアンサーデータを切替回路27に出力する。これにより、切替回路27は、当該アンサーデータをRF変調部25に出力し、RF変調部25は、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号を当該アンサーデータでBPSK変調し、変調後の信号(すなわち、アンサー信号44)を、RF送信アンテナ24から無線送信し、処理をステップ205に戻す。アンサー信号44の送信時間は、数ミリ秒から100ミリ秒の範囲内のいずれかである。
【0171】
一方、車載システム10においては、アンサー信号44を受信して以降の作動(メイン処理15については、ステップ155以降の処理)は、第1実施形態における説明と同じである。
【0172】
ここで、図2図3のように、リレーステーションアタックが介入した事例(介入の方法は第1実施形態と同じ)について、リレーステーションアタックが介入していない事例との違いを中心に説明する。
【0173】
図2図3の事例では、携帯機20の作動内容は、リレーステーションアタックが介入していない上記事例と同じであり、車載システム10の作動内容は、スマート制御部1がメイン処理15のステップ340に進むまでは、リレーステーションアタックが介入していない上記事例と同じである。
【0174】
しかしながら、RA中継器94、95のそれぞれは、復調および変調の処理を行うので、通信遅延時間が増加する。したがって、リレーステーションアタックが介入している場合は、そうでない場合に比べ、メイン処理15における図18のステップ140で算出する時間差T=t12−t11が、図9に示すように、大きくなる。そしてその結果、ステップ145では、時間差Tが基準時間T0よりも大きいと判定され、処理がステップ175に進む。処理をステップ145からステップ175に進めることは、スマート駆動を許可せず禁止することに相当する。
【0175】
ステップ175でスマート制御部1は、図5のステップ175と同じ処理で、リレーステーションアタックの介入があると判定する。ステップ175の後、処理はステップ105に戻る。
【0176】
このように、本実施形態では、スマート制御部1が携帯機20に送信したRA対抗信号42の送信タイミングt11に対する、スマート制御部1が携帯機20から受信した当該RA対抗信号43の受信タイミングt12の遅れ時間Tと、基準時間T0とを比較し、遅れ時間Tが基準時間T0未満であればリレーステーションアタックが介入していないと判定し、遅れ時間Tが基準時間T0以上であればリレーステーションアタックが介入していると判定する。
【0177】
そして、第1実施形態と同様、本実施形態の携帯機20は、受信したRA対抗信号42(RA対抗データを含む)を復調せず、アンプ22から切替回路27を介してRF変調部25に入力することで、LF復調部23を迂回させる。したがって、遅延時間D2がLF受信電界強度に依存しない。
【0178】
したがって、第1実施形態のように基準時間T0を設定することで、LF受信電界強度によらず、すなわち、車載システムと携帯機20の距離によらず、リレーステーションアタックの介入がある場合は、高確率でリレーステーションアタックの介入があると判定することができ、リレーステーションアタックの介入がない場合は、高確率でリレーステーションアタックの介入がないと判定することができる。
【0179】
このようになっていることで、本実施形態は、第1実施形態と同様の効果を発揮する。ただし、本実施形態では、図20に示すように、RA対抗信号42を含んだRA対抗変調信号43を送信し始めるタイミング(ステップ425、t7)よりも先に、受信したリクエストデータの認証を行い(ステップ410〜420、時点t5〜t6)、認証が終了し、正規のリクエストデータであると判定した場合に限り、初めて、RA対抗変調信号43を送信し始める。
【0180】
つまり、携帯機20は、リクエスト信号41を無線受信し、リクエスト信号41を無線受信し終えた後に、リクエスト信号41に含まれるリクエストデータが正規のデータであるか否かを判定し、正規のデータであると判定したことに基づいて、RA対抗信号42の変調と、RA対抗変調信号43の無線送信とを開始し、正規のデータでないと判定したことに基づいて、キャリア変調信号43の無線送信を行わず、かつ、アンサー信号44の無線送信も行わない。したがって、リクエストデータが正規のものでないと判定した場合は、RA対抗変調信号43を送信しなくて済むので、無駄な電力の節約になる。
【0181】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について、第1〜第3実施形態との違いを中心に説明する。本実施形態は、第1〜第3実施形態のそれぞれに対して、RA対抗データの内容を変更したものである。第1〜第3実施形態では、RA対抗データ42d、43dは、図8図9に示したように、1を表すビットのみが連続するデータであった。
【0182】
しかし、本実施形態のRA対抗データ42dは、図21図22に示すように、1を表すビットが連続するだけではなく、複数個連続する1のビットと複数個連続する0のビットが交互に現れるようなデータとなっている。そして、1つのRA対抗データ内において、1のビットの連続回数は常に一定であり、0のビットの連続回数も常に一定である。
【0183】
このようなRA対抗データを用いる場合、携帯機20の作動内容に変化はない。また、車載システム10の作動においては、スマートシステム1が実行するメイン処理15のうち、時間差Tの算出処理(図5のステップ140、図15のステップ340、図18のステップ140)および時間差Tと基準時間T0との比較処理(図5のステップ145、図15のステップ345、図18のステップ145)の処理内容のみが、第1〜第3実施形態と異なっている。
【0184】
具体的には、時間差Tの算出処理においては、第1〜第3実施形態では、ローカルで取得したRA対抗データ42dと携帯機20から受信したRA対抗データ43dの唯一の立ち上がりエッジの時間差のみに基づいて、または唯一の立ち下がりエッジの時間差のみに基づいて、時間差Tを算出していた。
【0185】
しかしながら、本実施形態では、図21図22に示すように、RA対抗データ42d、43dにおいて複数個存在する立ち上がりエッジ(立ち下がりエッジでもよい)の時間差Tを複数個算出し、比較処理では、これら複数個の時間差Tの平均値Tが、基準時間T0より小さいか否か判定する。
【0186】
このようにすることで、通信時にRF変調データ43に突発的な外来ノイズ(パルスやインパルス)が重畳された場合でも、複数のエッジの時間差の平均値を用いてリレーステーションアタックの介入の有無を判定しているので、判定に誤りが発生する可能性を低減することができる。
【0187】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について、第1〜第3実施形態との違いを中心に説明する。本実施形態は、第1〜第3実施形態のそれぞれに対して、RA対抗データの内容を変更したものである。第1〜第3実施形態では、RA対抗データ42d、43dは、図8図9に示したように、1を表すビットのみが連続するデータであった。
【0188】
しかし、本実施形態のRA対抗データ42dは、図23図24に示すように、1を表すビットが連続するだけではなく、複数個連続する1のビットと複数個連続する0のビットが交互に現れるようなデータとなっている。そして、1つのRA対抗データ内において、1のビットの連続回数は一定でなく、0のビットの連続回数も一定でない。
【0189】
このようなRA対抗データを用いる場合、携帯機20の作動内容に変化はない。また、車載システム10の作動においては、スマートシステム1が実行するメイン処理15のうち、時間差Tの算出処理(図5のステップ140、図15のステップ340、図18のステップ140)および時間差Tと基準時間T0との比較処理(図5のステップ145、図15のステップ345、図18のステップ145)の処理内容のみが、第1〜第3実施形態と異なっている。
【0190】
具体的には、時間差Tの算出処理においては、第1〜第3実施形態では、ローカルで取得したRA対抗データ42dと携帯機20から受信したRA対抗データ43dの唯一の立ち上がりエッジの時間差のみに基づいて、または唯一の立ち下がりエッジの時間差のみに基づいて、時間差Tを算出していた。
【0191】
しかしながら、本実施形態では、図21図22に示すように、RA対抗データ42d、43dにおいて複数個存在する立ち上がりエッジ(立ち下がりエッジでもよい)の時間差Tを複数個算出し、比較処理では、これら複数個の時間差Tの平均値Tが、基準時間T0より小さいか否か判定する。
【0192】
このようにすることで、通信時にRF変調データ43に突発的な外来ノイズ(パルスやインパルス)が重畳された場合でも、複数のエッジの時間差の平均値を用いてリレーステーションアタックの介入の有無を判定しているので、判定に誤りが発生する可能性を低減することができる。
【0193】
さらに、本実施形態では、1つのRA対抗データ内において、1のビットの連続回数は同じでなく、0のビットの連続回数も同じでない。したがって、通信時にRF変調データ43に定期的な外来ノイズ(パルスやインパルス)が重畳された場合でも、長さや間隔が一定しない複数のエッジの時間差の平均値を用いてリレーステーションアタックの介入の有無を判定しているので、判定に誤りが発生する可能性を低減することができる。
【0194】
例えば、複数車両から同時受信時にRA判定エラーを抑制できる。具体的には、自車の車載システム10と自車用の携帯機20とが通信する環境において、他車の車載システムと他車用の携帯機が更に通信している場合、自車の車載システム10で自車用携帯機20からのRA対抗変調信号43(RA対抗信号42を含む)を受信中に、他車用携帯機からRA対抗変調信号(RA対抗信号を含む)を受信すると、それら信号が重なってしまい、時間差Tの算出を誤る可能性がある。
【0195】
これに対し、本実施形態のようなRA対策データを用い、更に、更に車両毎にRA対策データ中の1のビットの連続回数の配置および0のビットの連続回数の配置が異なっている場合、2つの信号が重ならない場合(リレーステーションアタックの有無を正しく判定できる場合)ができやすくなる。
【0196】
また、本実施形態の変形例として、前記RA対抗データは、1個の1のビットと複数個連続する0のビットが交互に現れるようなデータとなっており、1つの前記RA対抗データ内において、0のビットの連続回数が一定でないようになっていてもよい。
【0197】
この変形例では、1のビットの後に必ず0のビットが続くので、1のビットの長さが短くなり、その分、他の車両に与える悪影響を低減さえることができる。なお、この1ビット長の時間的長さは、システム遅延時間(第1実施形態で説明したD1+D2)よりも充分長い。
【0198】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について、第1実施形態との違いを中心に説明する。図25に、本実施形態のスマートシステムにおける、車載システム10および携帯機20の構成図を示す。
【0199】
車載システム10においては、スマート制御部1内で、HPF(ハイパスフィルタリング)処理13および乗算処理14が更に設けられている点が、第1実施形態と異なる。携帯機20については、構成および作動のいずれも、第1実施形態と同じである。
【0200】
本実施形態では、RF復調部5の復調部52からスマート制御部1に入力された信号は、直流分をカットし、LF信号を抽出するHPF処理13およびメイン処理15に入力される。また、HPF処理13およびデータ出力処理11の出力は、乗算処理14に入力され、乗算処理14において乗算され、乗算結果がLF復調部12に入力される。
【0201】
次に、本実施形態の作動について説明する。まず、図1に示すように、携帯機20を有するユーザ91が、車両に近づき、車載システム10の通信可能範囲53に携帯機20が入った場合の事例について説明する。
【0202】
携帯機20の携帯側制御部28は、携帯機20が信号を受信するまで(すなわち携帯機20のLF復調部23が所定の強度以上の信号を受信するまで)は、図6のステップ250で、LF帯域の信号を取得するまで待機している。このとき切替回路27は、第1実施形態と同様、データ出力状態としている。
【0203】
また、車載システム10のスマート制御部1は、メイン処理15において、ステップ505で、第1実施形態と同様に、送信タイミングが訪れるまで待機する。送信タイミングが訪れると、続いてステップ110に進み、所定のリクエストデータを作成し、このリクエストデータを出力するようデータ出力処理11に指令する。するとデータ出力処理11は、このリクエストデータをLF変調部3に出力する。
【0204】
これにより、LF変調部3が、LFキャリア発振器6からのLFキャリア信号をリクエストデータで変調し、変調した結果の信号であるリクエスト信号41(リクエストデータを含む。図7参照。)を、LF送信アンテナ2を用いて無線送信する。
【0205】
このとき携帯機20では、第1実施形態と同様、LF受信アンテナ21およびアンプ22を介してLF復調部23がこのリクエスト信号41を受信およびLF復調してリクエストデータを取得し、取得したリクエストデータを携帯側制御部28に入力する。
【0206】
携帯側制御部28は、リクエストデータの入力が始まると、ステップ210に進み、入力されたリクエストデータを取得する。そしてリクエストデータの取得が終了した時点t1(図7参照)で、ステップ215に進み、RF対抗信号の出力を開始するため、切替回路27を切り替えて受信信号出力状態とする。
【0207】
また、メイン処理15においてスマート制御部1は、データ出力処理11がリクエストデータの出力を終了した時点t1において、ステップ515に進み、RA対抗データを含んだ信号の出力を開始するための制御を行う。具体的には、データ出力処理11に対して、RA対抗データを出力するよう指令する。本実施形態では、このRA対抗データは、出力時にレベルが一定(例えばHi)の直流信号となるような所定のデータ(具体的には、1を表すビットが連続するデータ)である。
【0208】
するとデータ出力処理11は、指令にしたがって当該RA対抗データの出力を開始する。これにより、データ出力処理11から乗算処理14にRA対抗データ42dが入力され始めると共に、スマート制御部1からLF変調部3には、RA対抗データ42dに対応した直流信号が入力され始める。
【0209】
LF変調部3では、この直流信号とLFキャリア発振器6からのLFキャリア信号が乗算されLF送信アンテナ2に出力され始めることで、第1実施形態と同様、LF送信アンテナ2から無変調波であるRA対抗信号42(RA対抗データを含む信号)が無線送信され始める。
【0210】
ステップ515でRA対抗データを含んだ信号の出力を開始させると、直ちに(すなわち、出力の終了を待たずに)ステップ520に進み、LF復調処理12から入力されるデータの取得を開始する。
【0211】
取得を開始した時点t21(図27参照)では、まだ携帯機20からRA対抗変調信号43を受信していない。したがって、乗算処理14では、データ出力処理11からRA対抗データを取得しているが、HPF処理13からは未だゼロを示すデータしか取得してしない。したがって、乗算処理14からLF復調処理12に入力されるデータはゼロを示すビットから成るデータである。それ故、LF復調部12によってLF復調されてメイン処理に入力されるデータもゼロを示すビットから成るデータである。
【0212】
ステップ520に続いては、ステップ525に進み、RF復調部5がRF帯域の信号を受信するまで待機する。なお、後述の通り、実際にはすぐに(数〜数十マイクロ秒後に)受信することになる。
【0213】
一方、携帯機20では、切替回路27が受信信号出力状態になっているところに、上記RA対抗信号42をLF受信アンテナ21が受信し、アンプ22が増幅して切替回路27に入力する。
【0214】
したがって、LF送信アンテナ2で受信されたRA対抗信号42が増幅されてRF変調部25に入力される。そして、RF変調部25は、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号(第2のキャリア信号の一例に相当する)を、RA対抗信号42でBPSK変調する。そして、変調された結果の信号であるRA対抗変調信号43(RA対抗データ43dを含む信号)をRF送信アンテナ24に出力することで、RF送信アンテナ24からRF帯域のRA対抗変調信号43が無線送信される。
【0215】
なお、RF送信アンテナ24からRA対抗変調信号43が送信されている間に、携帯側制御部28は、ステップ215に続くステップ220で、第1実施形態と同様、取得したリクエストデータと正規リクエストデータとを照合し、続いてステップ225で、取得したリクエストデータが正規のものであるか否かを、判定する。
【0216】
本事例では、リクエストデータは正規の(すなわち、携帯機20に対応する)車載システム10から受信したものなので、ステップ225では、リクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ230に進む。
【0217】
なお、本事例と違い、正規でない車載システム10または他の通信機器から信号を携帯機20が受信した場合は、LF復調部23の復調によって得たリクエストデータは、正規のもので+ないので、ステップ225では、当該リクエストデータと正規リクエストデータとが一致せず、当該リクエストデータが正規のデータでないと判定する。その場合、アンサーデータを出力しないまま処理はステップ205に戻る。したがって、携帯機20から車載システム10にアンサー信号が無線送信されず、車載システム10においてスマート駆動も実行されない。
【0218】
本事例の説明に戻り、ステップ225でリクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ230に進んだ後について説明する。ステップ230では、切替回路27からRF変調部25へのRA対抗信号42の出力が終了するまで待機する。
【0219】
一方、車載システム10では、スマート制御部1のメイン処理15において、RA対抗信号42の送信を開始した後、ステップ520を経てステップ525で、RF復調部5による無線受信があるまで待機するが、上述の通り、車載システム10がRA対抗信号42の送信を開始してすぐ、携帯機20からRA対抗変調信号43が送信される。そして、RF復調部5は、RF受信アンテナ4を介してこのRA対抗変調信号43を受信してRFキャリア信号でBPSK復調し、スマート制御部1に出力する。
【0220】
このようにスマート制御部1にBPSK復調された信号が入力さ始めると、メイン処理15において処理はステップ535に進み、RF復調部5からRF復調後の信号を取得し終えたか否かを判定し、取得し終えたと判定するまで、判定処理を繰り返す。
【0221】
RF復調部5からRF復調後の信号を取得し終えたか否かは、例えば、復調部52からメイン処理15に入力される信号に基づいて、入力信号の電圧、又は電圧の変化量が事前に設計した閾値以下となった場合に、取得が終了したと判定するようになっていてもよい。又は、LF復調処理12からメイン処理15に入力される信号に基づいて、入力信号の電圧、又は電圧の変化量が一定期間(たとえば、134kHzのキャリア信号の1周期分の時間)事前に設計した閾値以下となった場合に、取得が終了したと判定するようになっていてもよい。
【0222】
RF復調部5からRF復調後の信号を取得し終えるのを待つ間に、時点t22(図27参照)において、RA対抗変調信号43がRF復調部5で受信およびRF復調されるようになる。すると、RF復調された信号(RA対抗信号42に相当する)はHPF処理13に入力され、HPF処理13によって直流成分(LF帯より低い周波数)が除去され、除去後のRA対抗信号42が乗算処理14に入力されるようになる。
【0223】
すると、乗算処理14においては、データ出力処理11から入力されたRAデータ42dと、HPF処理13から入力されたRA対抗信号42とが乗算される。RAデータ42dの値は1なので、この乗算の結果、RA対抗信号42がLF復調処理12に入力されるようになる。
【0224】
これにより、LF復調処理12は、入力されたRA対抗信号42をLF復調することで、RA対抗データ43d(図27参照)を構成するビット列(1を示すビットの列)を取得することができ、これをメイン処理15に入力するようになる。この状態は、時点t22から時点t23(図27参照)まで続く。
【0225】
また、時点t23になると、データ出力処理11からRA対抗データ42dの出力が終了する。するとそれ以降、データ出力処理11から乗算処理14に入力されるデータの各ビットの値がゼロになる。
【0226】
したがって、HPF処理13から乗算処理14にはRA対抗信号42がまだ入力されているにもかかわらず、乗算処理14からLF復調処理12に入力される乗算結果はゼロとなる。
【0227】
したがって、LF復調処理12からメイン処理15にも、ゼロのビット列が入力されるようになる。この状態は、時点t23から時点t24(図7参照)まで続く。時点t24になると、RF復調部5からRF復調後の信号を取得し終える。するとスマート制御部1は、メイン処理15のステップ535において、取得終了したと判定し、ステップ540に進む。
【0228】
ステップ540では、時間幅Lを算出する。時間幅Lは、図27に示すように、LF復調部12からメイン処理15に1を表すビット列が入力され続けた期間の長さL=t23−t22である。
【0229】
図27に示すように、スマート制御部1が携帯機20に送信したRA対抗データ42d(RA対抗信号42に含まれるRA対抗データ)の送信タイミングt21に対する、スマート制御部1が携帯機20から受信した当該RA対抗データ43d(戻ってきたRA対抗信号42に含まれるRA対抗データ)の受信タイミングt22の遅れ時間Tは、T=t22−t21と表される。
【0230】
この遅れ時間Tと上記の時間幅Lとは1対1の関係にある。具体的には、携帯機20に送信したRA対抗データ42dの長さをXとすると、T+L=Xという関係にある。
【0231】
第1実施形態で説明した通り、遅れ時間Tは、リレーステーションアタックの介入が無い本事例では、リレーステーションアタックの介入がある場合に比べて非常に大きく、遅れ時間Tが基準時間T0以上であるか未満であるかで、リレーステーションアタックの介入があるか否かを判定できた。
【0232】
したがって、時間幅Lを用いても、リレーステーションアタックの介入があるか否かを判定することができる。具体的には、基準幅L0=X−T0をあらかじめ設定しておき、ステップ540に続くステップ545で、時間幅Lが基準幅L0より大きいか否か判定する。
【0233】
本事例では、RA中継器が車載システム10と携帯機20の間の通信に介入していないので、時間幅Lは基準幅L0よりも大きくなっている。したがって、処理はステップ150に進む。ステップ545からステップ150に進むことは、スマート駆動を(アンサー信号が正規であるという条件付きで)許可することに相当する。ステップ150以降の車載システム10の作動およびそれに対応する携帯機20の作動は、第1実施形態と同じである。
【0234】
ここで、図2図3のように、リレーステーションアタックが介入した事例について、リレーステーションアタックが介入していない上記事例との違いを中心に説明する。
【0235】
図2図3の両事例ともに、車載システム10から送信されたリクエスト信号41(リクエストデータを含む信号)およびRA対抗信号(RA対抗データを含む信号)42は、RA中継器94、95によって中継され、携帯機20で受信される。
【0236】
また、図2の事例では、携帯機20から送信されたRA対抗変調信号43(RA対抗データを含む信号)およびアンサー信号41(アンサーデータを含む信号)は、リレーステーションアタックが介入していない上記事例と同様に、車載システム10で受信される。
【0237】
また、図3の事例では、携帯機20から送信されたRA対抗変調信号43(RA対抗データを含む信号)およびアンサー信号41(アンサーデータを含む信号)は、RA中継器96、97によって中継され、携帯機20で受信される。
【0238】
したがって、携帯機20の作動内容は、リレーステーションアタックが介入していない上記事例と同じであり、車載システム10の作動内容は、スマート制御部1がメイン処理15のステップ540に進むまでは、リレーステーションアタックが介入していない上記事例と同じである。
【0239】
しかしながら、RA中継器94、95のそれぞれは、復調および変調の処理を行うので、通信遅延時間が増加する。したがって、リレーステーションアタックが介入している場合は、そうでない場合に比べ、メイン処理15における図5のステップ140で算出する時間差T=t22−t21が、図28に示すように、大きくなる。そしてその結果、ステップ545では、時間幅Lが基準幅L0よりも小さいと判定され、処理がステップ175に進む。
【0240】
処理をステップ545からステップ175に進めることは、スマート駆動を許可せず禁止することに相当する。ステップ175でスマート制御部1は、第1実施形態と同じ処理で、リレーステーションアタックの介入があると判定する。
【0241】
このように、本実施形態では、スマート制御部1が携帯機20に送信したRA対抗データ(RA対抗信号42に含まれるRA対抗データ)の送信タイミングt21に対する、スマート制御部1が携帯機20から受信した当該RA対抗データ(RA対抗変調信号43に含まれるRA対抗データ)の受信タイミングt22の遅れ時間Tに基づき、この遅れ時間Tと1対1の関係にある時間幅Lを、基準幅L0とを比較し、時間幅Lが基準幅L0を超えていればリレーステーションアタックが介入していないと判定し、時間幅Lが基準幅L0以下であればリレーステーションアタックが介入していると判定する。
【0242】
そして、第1実施形態と同様、本実施形態の携帯機20は、受信したRA対抗信号42(RA対抗データを含む)を復調せず、アンプ22から切替回路27を介してRF変調部25に入力することで、LF復調部23を迂回させる。したがって、遅延時間D2がLF受信電界強度に依存しない。
【0243】
したがって、基準幅L0を設定することで、LF受信電界強度によらず、すなわち、車載システムと携帯機20の距離によらず、リレーステーションアタックの介入がある場合は、高確率でリレーステーションアタックの介入があると判定することができ、リレーステーションアタックの介入がない場合は、高確率でリレーステーションアタックの介入がないと判定することができる。
【0244】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について、第6実施形態との違いを中心に説明する。本実施形態における車載システム10および携帯機20のハードウェア構成は、第6実施形態と同じである。本実施形態が第6実施形態と異なるのは、RA対抗信号42、RA対抗変調信号43、リクエスト信号41、アンサー信号44の送信タイミング、ならびに、それら送信タイミングを実現するためのスマート制御部1のメイン処理15の内容および携帯側制御部28の処理の内容である。
【0245】
図29に、本実施形態におけるメイン処理15のフローチャートを示す。本実施形態における携帯側制御部28の処理のフローチャートは、第2実施形態の図16と同じである。また、LF帯域でやりとりされる信号とRF帯域でやりとりされる信号(RA対抗信号42、リクエスト信号41、RA対抗変調信号43、アンサー信号44)のタイミング図は、図17と同じである。
【0246】
本実施形態では、図17に示すように、車載システム10が、まず先にRA対抗信号42を送信し、その後に、リクエスト信号41を送信する点が、第1実施形態と異なる。以下、本実施形態のスマートシステムの作動について、第1実施形態との違いを中心に説明する。
【0247】
まず、図1に示すように、携帯機20を有するユーザ91が、車両に近づき、車載システム10の通信可能範囲53に携帯機20が入った場合の事例について説明する。携帯機20の携帯側制御部28は、携帯機20が信号を受信するまで(すなわち携帯機20のLF復調部23が所定の強度以上の信号を受信するまで)は、図16のステップ250で、LF帯域の信号を取得するまで待機している。このとき切替回路27は、第6実施形態と同様、データ出力状態としている。
【0248】
また、車載システム10のスマート制御部1は、メイン処理15において、ステップ605で、第6実施形態のステップ505と同様に、送信タイミングが訪れるまで待機する。
【0249】
送信タイミングが訪れると、続いてステップ615に進み、第6実施形態のステップ515と同じ方法で、RA対抗信号42の出力を開始するための制御をデータ出力処理11に対して行う。これにより、第6実施形態と同様、LFキャリア発振器6から出力されたLFキャリアに、データ出力処理11から出力されたRA対抗データの信号(直流信号)が乗算され、その結果の信号であるRA対抗信号42が、LF送信アンテナ2から無線送信され始める。
【0250】
なお、このRA対抗信号42の送信(データ出力処理11によるRA対抗データ42dの出力)は、時点t3から時点t4(図17参照)までのあらかじめ決められた期間(例えば、数ミリ秒)続ける。この間、データ出力処理11から乗算処理14にも、同じRA対抗データ42がローカルで入力され始める。
【0251】
そして、LF変調部3がRA対抗信号42を無線送信し始めてすぐに、メイン処理15では、ステップ620に進み、図26のステップ520と同じ方法で、LF復調処理12から入力されるデータの取得を開始する。
【0252】
メイン処理15では続いて直ちに(すなわち、LF復調処理12からのデータの取得完了を待たずに)ステップ625に進み、RF復調部5がRF帯域の信号を受信するまで待機する。なお、後述の通り、実際にはすぐに受信することになる。
【0253】
一方、携帯機20では、LF受信アンテナ21、アンプ22、LF復調部23がこのRA対抗信号42を受信し始めると、携帯側制御部28が、ステップ250からステップ255に処理を進め、RA対抗信号42のRF変換部25への入力を開始するため、切替回路27を受信信号出力状態に切り替える。すると、上記RA対抗信号42をLF受信アンテナ21が受信し、アンプ22が増幅して切替回路27に入力し始める。したがって、LF送信アンテナ2で受信されたRA対抗信号42が増幅されてRF変調部25に入力される。そして、RF変調部25は、RA対抗信号42を用いて、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号(第2のキャリア信号の一例に相当する)をBPSK変調する。そして、変調された結果の信号であるRA対抗変調信号43をRF送信アンテナ24に出力することで、RF送信アンテナ24からRF帯域のRA対抗変調信号43が無線送信される。
【0254】
なお、RF送信アンテナ24からRA対抗変調信号43が送信されている間、携帯側制御部28は、ステップ255で、切替回路27からRF変調部25へのRA対抗信号42の出力が終了するまで待機する。RA対抗信号42の出力が終了したか否かの判定方法は、第1実施形態のステップ230と同じである。
【0255】
一方、車載システム10では、スマート制御部1のメイン処理15において、RA対抗信号42の送信を開始した後、ステップ620を経てステップ625で、RF復調部5による無線受信があるまで待機するが、上述の通り、車載システム10がRA対抗信号42の送信を開始してすぐ、携帯機20からRA対抗変調信号43が送信される。そして、RF復調部5は、RF受信アンテナ4を介してこのRA対抗変調信号43を受信してBPSK復調(RF復調)してスマート制御部1およびLF復調処理12に出力する。
【0256】
このようにスマート制御部1にBPSK復調された信号が入力さ始めると、メイン処理15において処理はステップ635に進み、図26のステップ535と同じ処理で、RF復調部5からRF復調後の信号を取得し終えたか否かを判定し、取得し終えたと判定するまで、判定処理を繰り返す。
【0257】
RF復調部5からRF復調後の信号を取得し終えるのを待つ間に、時点t22(図27参照)において、RA対抗変調信号43がRF復調部5で受信およびRF復調されるようになる。すると、RF復調された信号(RA対抗信号42に相当する)はHPF処理13に入力され、HPF処理13によって直流成分(LFより低い周波数)が除去され、除去後のRA対抗信号42が乗算処理14に入力されるようになる。
【0258】
すると、乗算処理14においては、データ出力処理11から入力されたRAデータ42dと、HPF処理13から入力されたRA対抗信号42とが乗算される。RAデータ42dの値は1なので、この乗算の結果、RA対抗信号42がLF復調処理12に入力されるようになる。
【0259】
これにより、LF復調処理12は、入力されたRA対抗信号42をLF復調することで、RA対抗データ43d(図27参照)を構成するビット列(1を示すビットの列)を取得することができ、これをメイン処理15に入力するようになる。この状態は、時点t22から時点t23(図27参照)まで続く。
【0260】
また、時点t23になると、データ出力処理11からRA対抗データ42dの出力が終了する。するとそれ以降、データ出力処理11から乗算処理14に入力されるデータの各ビットの値がゼロになる。
【0261】
したがって、HPF処理13から乗算処理14にはRA対抗信号42がまだ入力されているにもかかわらず、乗算処理14からLF復調処理12に入力される乗算結果はゼロとなる。
【0262】
したがって、LF復調処理12からメイン処理15にも、ゼロのビット列が入力されるようになる。この状態は、時点t23から時点t24(図7参照)まで続く。時点t24になると、RF復調部5からRF復調後の信号を取得し終える。するとスマート制御部1は、メイン処理15のステップ635において、取得終了したと判定し、ステップ640に進む。
【0263】
ステップ640では、図26のステップ540と同じ処理で、時間幅Lを算出する。続くステップ545では、時間幅Lが基準幅L0(第6実施形態と同じもの)より大きいか否か判定する。
【0264】
本事例では、RA中継器が車載システム10と携帯機20の間の通信に介入していないので、時間幅Lは基準幅L0よりも大きくなっている。したがって、処理はステップ350に進む。ステップ645からステップ350に進むことは、スマート駆動を(アンサー信号が正規であるという条件付きで)許可することに相当する。ステップ350以降の車載システム10の作動およびそれに対応する携帯機20の作動は、第2実施形態と同じである。
【0265】
ここで、図2図3のように、リレーステーションアタックが介入した事例(介入の方法は第6実施形態と同じ)について、リレーステーションアタックが介入していない事例との違いを中心に説明する。
【0266】
図2図3の事例では、携帯機20の作動内容は、リレーステーションアタックが介入していない上記事例と同じであり、車載システム10の作動内容は、スマート制御部1がメイン処理15のステップ640に進むまでは、リレーステーションアタックが介入していない上記事例と同じである。
【0267】
しかしながら、RA中継器94、95のそれぞれは、復調および変調の処理を行うので、通信遅延時間Tが増加する。したがって、リレーステーションアタックが介入している場合は、そうでない場合に比べ、メイン処理15における図29のステップ640で算出する時間幅L=t23−t22が、図28に示すように、大きくなる。そしてその結果、ステップ645では、時間幅Lが基準幅L0よりも大きいと判定され、処理がステップ375に進む。処理をステップ645からステップ375に進めることは、スマート駆動を許可せず禁止することに相当する。
【0268】
ステップ375でスマート制御部1は、図6のステップ175と同じ処理で、リレーステーションアタックの介入があると判定する。ステップ375の後、処理はステップ605に戻る。
【0269】
このように、本実施形態では、スマート制御部1が携帯機20に送信したRA対抗データ(RA対抗信号42に含まれるRA対抗データ)の送信タイミングt21に対する、スマート制御部1が携帯機20から受信した当該RA対抗データ(RA対抗変調信号43に含まれるRA対抗データ)の受信タイミングt22の遅れ時間Tに基づいて、この遅れ時間Tに1対1に対応する時間幅Lと基準幅L0とを比較し、時間幅Lが基準幅L0を超えていればリレーステーションアタックが介入していないと判定し、時間幅Lが基準幅L0以下であればリレーステーションアタックが介入していると判定する。
【0270】
そして、第6実施形態と同様、本実施形態の携帯機20は、受信したRA対抗信号42(RA対抗データを含む)を復調せず、アンプ22から切替回路27を介してRF変調部25に入力することで、LF復調部23を迂回させる。したがって、遅延時間D2がLF受信電界強度に依存しない。
【0271】
したがって、第6実施形態のように基準時間L0を設定することで、LF受信電界強度によらず、すなわち、車載システムと携帯機20の距離によらず、リレーステーションアタックの介入がある場合は、高確率でリレーステーションアタックの介入があると判定することができ、リレーステーションアタックの介入がない場合は、高確率でリレーステーションアタックの介入がないと判定することができる。
【0272】
また、本実施形態の車載システム10は、まずRA対抗信号42の無線送信を開始し(ステップ615)、LF復調処理12からのデータを取得し始め(ステップ620)、携帯機20は、RA対抗信号42の受信と、RA対抗信号42のRF変調と、RA対抗変調信号43の無線送信と、を開始し(ステップ250、255)、車載システム10は、キャリア変調信号43を受信し、ローカルで取得したRA対抗データ42dに対する、キャリア変調信号43に含まれるRA対抗データの遅れ時間すなわち時間差T(車載システム10のRA対抗信号42の送信タイミングに対するRA対抗変調信号43の受信タイミングの遅れと同じである)に対応する時間幅Lを算出し(ステップ640)、算出した時間幅Lを基準幅L0と比較し(ステップ645)、時間幅Lが基準幅L0を超えていればスマート駆動を許可し(ステップ370)、時間幅Lが基準幅L0以下ならばスマート駆動を禁止する(ステップ375)。
【0273】
そして車載システム10は、スマート駆動を許可する場合は、RA対抗信号42の無線送信を終了した後に、リクエスト信号41を無線送信し、携帯機20は、リクエスト信号41を無線受信したことに基づいて、アンサー信号44を無線送信し、車載システム10は、アンサー信号44を無線受信したことに基づいて、スマート駆動を実行する。
【0274】
このように、リクエスト信号41の送信前にRA対抗信号42を送信することで、通信の最初に車載システム10から送信するバースト信号を、RA対抗信号42が兼ねることができる。なお、バースト信号は、携帯機20のLF復調部23が安定して復調を行うために、車載システム10から携帯機20に送信する信号の先頭に付与される無変調信号であり、スマートシステムにおいては、バースト信号を車載システム10から携帯機20に送信することが従来から行われている。
【0275】
本実施形態のように、RA対抗信号42がバースト信号としても機能すれば、例えば、第6実施形態において、リクエスト信号41の前にバースト信号を無線送信する場合と比べれば、全体としての通信時間が短縮し、車載システム10と携帯機20の間の通信のレスポンスが向上する。
【0276】
また、車載システム10は、スマート駆動を許可しない場合は、RA対抗信号42の無線送信を終了した後に、リクエスト信号41を無線送信しない。また、リクエスト信号41が送信されないので、携帯機20からはアンサー信号44も送信されない。したがって、スマート駆動を許可しない場合に、無駄なリクエスト信号41およびアンサー信号44の送信を行う必要がなく、その分電力消費を抑えられる。
【0277】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について、第6実施形態との違いを中心に説明する。本実施形態における車載システム10および携帯機20のハードウェア構成は、第6実施形態と同じである。本実施形態が第6実施形態と異なるのは、RA対抗信号42、RA対抗変調信号43、リクエスト信号41、アンサー信号44の送信タイミング、ならびに、それら送信タイミングを実現するためのスマート制御部1のメイン処理15の内容および携帯側制御部28の処理の内容である。
【0278】
図30に、本実施形態におけるメイン処理15のフローチャートを示す。また、本実施形態における携帯側制御部28の処理のフローチャートは、第3実施形態の図19と同じである。また、LF帯域でやりとりされる信号とRF帯域でやりとりされる信号(RA対抗信号42、リクエスト信号41、RA対抗変調信号43、アンサー信号44)のタイミング図は、図20と同じである。
【0279】
なお、本実施形態における車載システム10の作動は、RA対抗信号42を送信し始めるタイミングが第6実施形態よりも遅いこと以外は、第6実施形態と同じである。したがって、メイン処理15のフローチャートは、図26の処理に対し、ステップ513の処理を追加しただけのものとなる。
【0280】
以下、本実施形態のスマートシステムの作動について、第6実施形態と異なる部分を中心に説明する。まず、図1に示すように、携帯機20を有するユーザ91が、車両に近づき、車載システム10の通信可能範囲53に携帯機20が入った場合の事例について説明する。
【0281】
携帯機20の携帯側制御部28は、携帯機20が信号を受信するまで(すなわち携帯機20のLF復調部23が所定の強度以上の信号を受信するまで)は、図19のステップ405で、LF帯域の信号を取得するまで待機している。このとき切替回路27は、第6実施形態と同様、データ出力状態としている。また、車載システム10のスマート制御部1は、図30のメイン処理15において、ステップ505で、送信タイミングが訪れるまで待機する。
【0282】
送信タイミングが訪れると、続いてステップ510に進み、第6実施形態と同様、所定のリクエストデータを作成し、このリクエストデータを出力するようデータ出力処理11に指令する。これにより、LF変調部3が、リクエストデータを用いてLFキャリア発振器6からのLFキャリア信号を変調し、変調した結果の信号であるリクエスト信号41(図20参照)を、LF送信アンテナ2を用いて無線送信する。
【0283】
このとき携帯機20では、リクエスト信号41がLF受信アンテナ21で受信され、アンプ22を経てLF復調部23および切替回路27に入力されるが、切替回路27はデータ出力状態にあるので、リクエスト信号41は切替回路27からRF変調部25には入力されない。
【0284】
LF復調部23は、入力されたリクエスト信号41を復調してリクエストデータを取得し、取得したリクエストデータを携帯側制御部28に入力する。携帯側制御部28は、リクエストデータの入力が始まると、ステップ410に進み、入力されたリクエストデータを取得する。そしてリクエストデータの取得が終了した時点t5(図20参照)で、ステップ415に進み、取得したリクエストデータが正規なものか否かを判別するために、当該リクエストデータと、あらかじめ記憶媒体に記憶されている正規リクエストデータとを照合し、続いてステップ420で、取得したリクエストデータと正規リクエストデータが一致するか否かを、すなわち、取得したリクエストデータが正規のものであるか否かを、判定する。
【0285】
本事例では、リクエストデータは正規の車載システム10から受信したものなので、ステップ420では、リクエストデータが正規のものであると判定し、ステップ425に進む。
【0286】
ステップ425に処理を進めた時点は、リクエスト信号41を取得し終えた時点t5よりも遅い時点t6である。この時点t5から時点t6までの期間46は、リクエストデータの認証処理時間である。つまり、この期間46は、リクエストデータが正規のデータであるか否かの判定を行うのに要する時間である。ステップ425では、切替回路27を切り替えて受信信号出力状態とする。
【0287】
なお、本事例と違い、正規でない車載システム10または他の通信機器から信号を携帯機20が受信した場合は、LF復調部23の復調によって得たリクエストデータは、正規のものでないので、ステップ420では、当該リクエストデータと正規リクエストデータとが一致せず、当該リクエストデータが正規のデータでないと判定する。その場合、アンサーデータを出力しないまま処理はステップ405に戻る。したがって、携帯機20から車載システム10にアンサー信号が無線送信されず、車載システム10においてスマート駆動も実行されない。
【0288】
本事例の説明に戻る。メイン処理15においてスマート制御部1は、データ出力処理11がリクエストデータの出力を終了した時点t5において、ステップ513に進み、所定時間待機する。この所定時間は、携帯機20でリクエストデータの照合(ステップ415)および正規判定(ステップ420)を実行するのに要するであろうとあらかじめ見積もられた時間46と同じかまたは長い時間45であり、あらかじめスマート制御部1の記憶媒体に記録された固定値である。したがって、このステップ513で待機し終えた時点t7で、携帯側制御部28においてはステップ415、420の処理が既に終了している(時点t6に終了している)。
【0289】
ステップ513に続いてはステップ515に進み、LFキャリアの出力を開始するための制御を、第6実施形態と同様に行う。これにより、LF変調部3は、LF送信アンテナ2を用いて無変調波であるRA対抗信号42(RA対抗データを含む信号)を時点t7から無線送信し始める。
【0290】
なお、データ出力処理11およびLF変調部3によるこのRA対抗信号42の送信は、時点t7から時点t8までの期間(例えば、数ミリ秒)続ける。
【0291】
そして、LF変調部3がRA対抗信号42を無線送信し始めてすぐに、メイン処理15では、ステップ520に進み、LF復調処理12から入力されるデータの取得を開始する。
【0292】
取得を開始した時点t21(図27参照。時点t7をより細かく見た時間。)では、まだ携帯機20からRA対抗変調信号43を受信していない。したがって、乗算処理14では、データ出力処理11からRA対抗データを取得しているが、HPF処理13からは未だゼロを示すデータしか取得してしない。したがって、乗算処理14からLF復調処理12に入力されるデータはゼロを示すビットから成るデータである。それ故、LF復調部12によってLF復調されてメイン処理に入力されるデータもゼロを示すビットから成るデータである。
【0293】
ステップ520に続いては、ステップ525に進み、RF復調部5がRF帯域の信号を受信するまで待機する。なお、後述の通り、実際にはすぐに(数〜数十マイクロ秒後に)受信することになる。
【0294】
一方、携帯機20では、切替回路27が受信信号出力状態になっているところに、上記RA対抗信号42をLF受信アンテナ21が受信し、アンプ22が増幅して切替回路27に入力する。
【0295】
一方、携帯機20では、切替回路27が受信信号出力状態になっているところに、上記RA対抗信号42をLF受信アンテナ21が受信し、アンプ22が増幅して切替回路27に入力する。
【0296】
したがって、LF受信アンテナ21で受信されたRA対抗信号42が増幅されてRF変調部25に入力される。そして、RF変調部25は、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号(第2のキャリア信号の一例に相当する)を、RA対抗信号42でBPSK変調する。そして、変調された結果の信号であるRA対抗変調信号43(RA対抗データ43dを含む信号)をRF送信アンテナ24に出力することで、RF送信アンテナ24からRF帯域のRA対抗変調信号43が無線送信される。
【0297】
このとき、携帯側制御部28では、ステップ425で、切替回路27からRF変調部25へのRA対抗信号42の出力が終了するまで待機する。
【0298】
一方、車載システム10では、スマート制御部1のメイン処理15において、RA対抗信号42の送信を開始した後、ステップ520を経てステップ525で、RF復調部5による無線受信があるまで待機するが、上述の通り、車載システム10がRA対抗信号42の送信を開始してすぐ、携帯機20からRA対抗変調信号43が送信される。そして、RF復調部5は、RF受信アンテナ4を介してこのRA対抗変調信号43を受信してRFキャリア信号でBPSK復調し、スマート制御部1に出力する。
【0299】
このようにスマート制御部1にBPSK復調された信号が入力さ始めると、メイン処理15において処理はステップ535に進み、RF復調部5からRF復調後の信号を取得し終えたか否かを判定し、取得し終えたと判定するまで、判定処理を繰り返す。
【0300】
RF復調部5からRF復調後の信号を取得し終えたか否かは、例えば、復調部52からメイン処理15に入力される信号をAM復調し、入力信号の電圧、又は電圧の変化量が事前に設計した閾値以下となった場合に、取得が終了したと判定するようになっていてもよい。又は、LF復調処理12からメイン処理15に入力される信号に基づいて、入力信号の電圧、又は電圧の変化量が一定期間(たとえば、134kHzのキャリア信号の1周期分の時間)事前に設計した閾値以下となった場合に、取得が終了したと判定するようになっていてもよい。
【0301】
RF復調部5からRF復調後の信号を取得し終えるのを待つ間に、時点t22(図27参照)において、RA対抗変調信号43がRF復調部5で受信およびRF復調されるようになる。すると、RF復調された信号(RA対抗信号42に相当する)はHPF処理13に入力され、HPF処理13によって高周波成分(LF帯域よりも高周波の成分)が除去され、除去後のRA対抗信号42が乗算処理14に入力されるようになる。
【0302】
すると、乗算処理14においては、データ出力処理11から入力されたRAデータ42dと、HPF処理13から入力されたRA対抗信号42とが乗算される。RAデータ42dの値は1なので、この乗算の結果、RA対抗信号42がLF復調処理12に入力されるようになる。
【0303】
これにより、LF復調処理12は、入力されたRA対抗信号42をLF復調することで、RA対抗データ43d(図27参照)を構成するビット列(1を示すビットの列)を取得することができ、これをメイン処理15に入力するようになる。この状態は、時点t22から時点t23(図27参照)まで続く。
【0304】
また、時点t23になると、データ出力処理11からRA対抗データ42dの出力が終了する。するとそれ以降、データ出力処理11から乗算処理14に入力されるデータの各ビットの値がゼロになる。
【0305】
したがって、HPF処理13から乗算処理14にはRA対抗信号42がまだ入力されているにもかかわらず、乗算処理14からLF復調処理12に入力される乗算結果はゼロとなる。したがって、LF復調処理12からメイン処理15にも、ゼロのビット列が入力されるようになる。この状態は、時点t23から時点t24(図7参照)まで続く。
【0306】
時点t24(時点t8をより細かく見た時点)になると、LF変調部3でRA対抗信号の送信が終了し、携帯機20では、切替回路27からRF変調部25へのRA対抗信号42の出力が終了するので、携帯側制御部28は、処理をステップ430に進める。
【0307】
そして、ステップ430で、切替回路27をデータ出力状態に切り替え、所定のアンサーデータを作成し、作成したアンサーデータを切替回路27に出力する。これにより、切替回路27は、当該アンサーデータをRF変調部25に出力し、RF変調部25は、RFキャリア発振器26からのRFキャリア信号を当該アンサーデータでBPSK変調し、変調後の信号(すなわち、アンサー信号44)を、RF送信アンテナ24から無線送信し、処理をステップ205に戻す。アンサー信号44の送信時間は、数ミリ秒から100ミリ秒の範囲内のいずれかである。
【0308】
一方、車載器側では、時点t24になると、RF復調部5からRF復調後の信号を取得し終える。するとスマート制御部1は、メイン処理15のステップ535において、取得終了したと判定し、ステップ540に進む。
【0309】
ステップ540では、第6実施形態と同様、時間幅Lを算出する。続くステップ545では、第1実施形態と同様、時間幅Lと基準幅L0(第6実施形態と同じもの)とを比較し、時間幅Lが基準幅L0より大きいか否かを判定する。
【0310】
本事例では、RA中継器が車載システム10と携帯機20の間の通信に介入していないので、時間幅Lは基準幅L0よりも大きくなっている。したがって、処理はステップ150に進む。ステップ545からステップ150に進むことは、スマート駆動を(アンサー信号が正規であるという条件付きで)許可することに相当する。ステップ150以降の車載システム10の作動およびそれに対応する携帯機20の作動は、第3実施形態と同じである。
【0311】
ここで、図2図3のように、リレーステーションアタックが介入した事例(介入の方法は第6実施形態と同じ)について、リレーステーションアタックが介入していない事例との違いを中心に説明する。
【0312】
図2図3の事例では、携帯機20の作動内容は、リレーステーションアタックが介入していない上記事例と同じであり、車載システム10の作動内容は、スマート制御部1がメイン処理15のステップ540に進むまでは、リレーステーションアタックが介入していない上記事例と同じである。
【0313】
しかしながら、RA中継器94、95のそれぞれは、復調および変調の処理を行うので、通信遅延時間Tが増加する。したがって、リレーステーションアタックが介入している場合は、そうでない場合に比べ、メイン処理15における図30のステップ540で算出する時間幅L=t23−t22が、図28に示すように、大きくなる。そしてその結果、ステップ545では、時間幅Lが基準幅L0よりも大きいと判定され、処理がステップ175に進む。処理をステップ545からステップ175に進めることは、スマート駆動を許可せず禁止することに相当する。
【0314】
ステップ175でスマート制御部1は、第6実施形態と同じ処理で、リレーステーションアタックの介入があると判定する。ステップ175の後、処理はステップ505に戻る。
【0315】
このように、本実施形態では、スマート制御部1が携帯機20に送信したRA対抗データ(RA対抗信号42に含まれるRA対抗データ)の送信タイミングt21に対する、スマート制御部1が携帯機20から受信した当該RA対抗データ(RA対抗変調信号43に含まれるRA対抗データ)の受信タイミングt22の遅れ時間Tに基づいて、この遅れ時間Tに1対1に対応する時間幅Lと基準幅L0とを比較し、時間幅Lが基準幅L0を超えていればリレーステーションアタックが介入していないと判定し、時間幅Lが基準幅L0以下であればリレーステーションアタックが介入していると判定する。
【0316】
そして、第6実施形態と同様、本実施形態の携帯機20は、受信したRA対抗信号42(RA対抗データを含む)を復調せず、アンプ22から切替回路27を介してRF変調部25に入力することで、LF復調部23を迂回させる。したがって、遅延時間D2がLF受信電界強度に依存しない。
【0317】
したがって、第6実施形態のように基準時間L0を設定することで、LF受信電界強度によらず、すなわち、車載システムと携帯機20の距離によらず、リレーステーションアタックの介入がある場合は、高確率でリレーステーションアタックの介入があると判定することができ、リレーステーションアタックの介入がない場合は、高確率でリレーステーションアタックの介入がないと判定することができる。
【0318】
このようになっていることで、本実施形態は、第6実施形態と同様の効果を発揮する。ただし、本実施形態では、図20に示すように、RA対抗信号42を含んだRA対抗変調信号43を送信し始めるタイミング(ステップ425、t7)よりも先に、受信したリクエストデータの認証を行い(ステップ410〜420、時点t5〜t6)、認証が終了し、正規のリクエストデータであると判定した場合に限り、初めて、RA対抗変調信号43を送信し始める。
【0319】
つまり、携帯機20は、リクエスト信号41を無線受信し、リクエスト信号41を無線受信し終えた後に、リクエスト信号41に含まれるリクエストデータが正規のデータであるか否かを判定し、正規のデータであると判定したことに基づいて、RA対抗信号42の変調と、RA対抗変調信号43の無線送信とを開始し、正規のデータでないと判定したことに基づいて、キャリア変調信号43の無線送信を行わず、かつ、アンサー信号44の無線送信も行わない。したがって、リクエストデータが正規のものでないと判定した場合は、RA対抗変調信号43を送信しなくて済むので、無駄な電力の節約になる。
【0320】
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態について説明する。本実施形態は、上記第6〜第8実施形態に対して、車載システム10の構成を図31のように変更するものである。以下、本実施形態と第6〜第8実施形態との違いを中心に説明する。
【0321】
本実施形態の車載システム10の構成は、第6〜第8実施形態における車載システム10の構成(図25参照)に対し、HPF部15が設けられ、更に、スマート制御部1内のLF復調処理12およびHPF処理13が廃され、新たにRF復調/LF復調処理16が設けられたものである。なお、携帯機20の構成および作動については、第6〜第8実施形態に対する変更は無い。
【0322】
以下、本実施形態の車載システム10の作動について、第6〜第8実施形態との違いを中心に説明する。本実施形態においては、RF復調部5において、RF受信アンテナ4で受信され、アンプ・フィルタ・D/C51にて増幅、周波数フィルタリング、IF帯域(中間周波数帯域、本実施形態では300kHz付近の帯域)への周波数ダウンコンバートされた信号(例えばRA対抗変調信号43)が、復調部52に入力されると共にHPF部15にも入力される。HPF部15は、入力されたRA対抗変調信号43から不要な低周波成分(RFキャリアの周波数よりも低い周波数成分)を除去した信号を、スマート制御部1に入力する。
【0323】
また、スマート制御部1において、HPF部15から入力された信号は、乗算処理14に入力される。そして乗算処理14においては、データ出力処理11から第6〜第8実施形態と同様に入力されたRA対応データと、このHPF部15から入力された信号とが乗算され、その乗算結果の信号がRF復調/LF復調処理16に入力される。
【0324】
そして、RF復調/LF復調処理16においては、乗算処理14から入力された信号に対して、RF復調(上述の中間周波数帯域のキャリア信号を用いた復調)を行い、RF復調によって得た信号に対してLF復調(LF帯域のキャリア信号を用いた復調)を行い、LF復調によって得たデータをメイン処理15に入力する。
【0325】
乗算処理14、HPF部15、RF復調/LF復調処理16のそれぞれの基本的な作動が上記のようになっているのに対応し、メイン処理15は、第6〜第8実施形態(図26図29図30参照)に対して以下のように変更される。
【0326】
まず、ステップ520(第7実施形態においてはステップ620)では、LF復調処理12からLF復調されたデータを取得開始するのではなく、RF復調/LF復調処理16からLF復調されたデータを取得開始するようになっている。
【0327】
取得を開始した時点t21(図27参照)では、まだ携帯機20からRA対抗変調信号43を受信していない。したがって、乗算処理14では、データ出力処理11からRA対抗データを取得しているが、HPF部15からは未だゼロを示す信号のデータしか取得してしない。したがって、乗算処理14からRF復調/LF復調処理16に入力されるデータはゼロを示すビットから成るデータである。それ故、RF復調/LF復調処理16からメイン処理15に入力されるデータもゼロを示すビットから成るデータである。
【0328】
また、ステップ535(第7実施形態においてはステップ635)においてRF復調部5からRF復調後の信号を取得し終えるのを待つ間に、時点t22(図27参照)において、RA対抗変調信号43がRF復調部5で受信およびRF復調されるようになる。
【0329】
すると、HPF部15でRA対抗変調信号43から不要な低周波成分(RFキャリアの周波数よりも低い周波数成分が除去された中間周波数帯の信号が乗算処理14に入力されるようになる。
【0330】
すると、乗算処理14においては、データ出力処理11から入力されたRAデータ42dと、HPF部15から入力された中間周波数帯の信号とが乗算される。RAデータ42dの値は1なので、この乗算の結果、中間周波数帯の信号がRF復調/LF復調処理16に入力されるようになる。
【0331】
これにより、RF復調/LF復調処理16は、入力された中間周波数帯の信号をRF復調およびLF復調することで、RA対抗データ43d(図27参照)を構成するビット列(1を示すビットの列)を取得することができ、これをメイン処理15に入力するようになる。この状態は、時点t22から時点t23(図27参照)まで続く。
【0332】
また、時点t23になると、データ出力処理11からRA対抗データ42dの出力が終了する。するとそれ以降、データ出力処理11から乗算処理14に入力されるデータの各ビットの値がゼロになる。
【0333】
したがって、HPF部15から乗算処理14には中間周波数帯の信号がまだ入力されているにもかかわらず、乗算処理14からRF復調/LF復調処理16に入力される乗算結果はゼロとなる。
【0334】
このようになっているので、スマート制御部1が携帯機20に送信したRA対抗データ42d(RA対抗信号42に含まれるRA対抗データ)の送信タイミングt21に対する、スマート制御部1が携帯機20から受信した当該RA対抗データ43d(戻ってきたRA対抗信号42に含まれるRA対抗データ)の受信タイミングt22の遅れ時間Tに応じて、ステップ540(第7実施形態においてはステップ640)で算出する時間幅Lも、第6〜第8実施形態と同様、L=X−Tという式によって決まる。
【0335】
ただし、ステップ540(第7実施形態においてはステップ640)で算出する時間幅Lは、LF復調部12からメイン処理15に1を表すビット列が入力され続けた期間の長さではなく、RF復調/LF復調処理16からメイン処理15に1を表すビット列が入力され続けた期間の長さである。
【0336】
なお、RF復調/LF復調処理16に入力される信号のキャリア周波数は、RFをダウンコンバートしたIF周波数となっており、キャリアの有無を判定できればよいので、RF復調/LF復調をせずとも、RFの有無を判定できる検波器(例えばAM復調器)があればよい。
【0337】
このようになっているので、ステップ545(第7実施形態においてはステップ645)で第6〜第8実施形態の同じ判定を行うことで、第6〜第8実施形態と同様に、リレーステーションアタックの介入の有無を高い確度で算出することができる。なお、メイン処理15の作動は、上記で説明した部分以外は、第6〜第8実施形態と同じである。
【0338】
ここで、スマート制御部1のRF復調/LF復調処理16において行われるLF復調と、携帯機23のLF復調部23で行われるLF復調との違いは、第1実施形態で説明したLF復調処理12とLF復調部23との違いと同等である。
【0339】
すなわち、HPF部15からスマート制御部1に入力される際に、スマート制御部1に設けられたA/D変換器(LF周波数で入力インピーダンスが高いもの)でA/Dサンプリングされ、サンプリング後のデジタルデータに対してRF復調/LF復調処理16でデジタル復調を行う。この際、RF復調/LF復調処理16に代えてデジタルRF復調器およびデジタルLF復調器を用いてもよい。
【0340】
このA/D変換器の入力インピーダンスは、携帯機20のLF変調部23の入力インピーダンスよりも高い。したがって、スマート制御部1のA/D変換器およびRF復調/LF復調処理16(またはデジタルRF復調器およびデジタルLF復調器)において発生する遅延時間のばらつき(受信電界強度に応じたばらつき)は、LF変調部23によって発生する遅延時間のばらつき(受信電界強度に応じたばらつき)に比べて小さい。
【0341】
なお、A/D変換器およびRF復調/LF復調処理16(またはデジタルRF復調器およびデジタルLF復調器)に代えて、アナログRF復調器および高速応答アナログLF復調器を用いてもよい。この高速応答アナログLF復調器は、携帯機20のLF受信部23よりも高感度かつLF周波数で入力インピーダンスがLF受信部23よりも高いが、その他の作動内容はLF受信部23と同じである。
【0342】
(第10実施形態)
次に、本発明の第10実施形態について説明する。本実施形態は、上記第6〜第8実施形態に対して、車載システム10の構成を図32のように変更するものである。以下、本実施形態と第6〜第8実施形態との違いを中心に説明する。
【0343】
本実施形態の車載システム10の構成は、第6〜第8実施形態における車載システム10の構成(図25参照)に対し、乗算処理14に対しては、データ出力処理11の出力に代えて、LF変調部3の出力が入力されるように変更され、LF復調処理12に代えてLFP処理17が設けられたものである。なお、携帯機20の構成および作動については、第6〜第8実施形態に対する変更は無い。
【0344】
以下、本実施形態の車載システム10の作動について、第6〜第8実施形態との違いを中心に説明する。本実施形態においては、データ出力処理部11から出力されたデータ(例えばRA対抗データ42d)を用いて、LFキャリアがLF変調部3で変調され、その結果の信号(例えばRA対抗信号42)がスマート制御部1の乗算処理14に入力される。
【0345】
そして、乗算処理14では、このようにLF変調部3から入力された信号と、RF復調部52およびHPF処理13を経て入力された信号とが乗算され、その乗算結果の信号がLPF処理17に入力される。
【0346】
そして、LPF処理17においては、乗算処理14から入力された信号のうち、不要な高周波数帯域(LF帯域より高い帯域)の信号が除去され、不要な高周波数帯域が除去された信号が、メイン処理15に入力される。
【0347】
乗算処理14、LPF処理17のそれぞれの基本的な作動が上記のようになっているのに対応し、メイン処理15は、第6〜第8実施形態(図26図29図30参照)に対して以下のように変更される。
【0348】
まず、ステップ520(第7実施形態においてはステップ620)では、LF復調処理12からLF復調されたデータを取得開始するのではなく、LPF処理17からLF復調されたデータを取得開始するようになっている。
【0349】
取得を開始した時点t21(図27参照)では、まだ携帯機20からRA対抗変調信号43を受信していない。したがって、乗算処理14では、LF変調部3からはRA対抗信号42を取得しているが、HPF処理13からは未だゼロを示すデータしか取得してしない。
【0350】
したがって、乗算処理14からLPF処理17に入力されるデータはゼロを示すビットから成るデータである。それ故、LPF処理17からメイン処理15に入力されるデータもゼロを示すビットから成るデータである。
【0351】
また、ステップ535(第7実施形態においてはステップ635)においてRF復調部5からRF復調後の信号を取得し終えるのを待つ間に、時点t22(図27参照)において、RA対抗変調信号43がRF復調部5で受信およびRF復調されるようになる。
【0352】
すると、RF復調された信号(RA対抗信号42に相当する)はHPF処理13に入力され、HPF処理13によって高周波成分(LF帯域よりも高周波の成分)が除去され、除去後のRA対抗信号42が乗算処理14に入力されるようになる。
【0353】
すると、乗算処理14においては、LF変調部3から入力されたRA対抗信号42と、HPF処理13から入力されたRA対抗信号42とが乗算される。この結果、2つのRA対抗信号42の遅れに相当する位相差に対応する直流成分の信号と、RA対抗信号42の2倍の周波数のキャリア信号(正弦波信号)との和に相当する信号が、LPF処理17に入力されるようになる。
【0354】
これにより、LPF処理17は、入力された信号からRA対抗信号42の2倍の周波数のキャリア信号を除去し、残った位相差に対応する直流成分の信号をメイン処理15に入力するようになる。この直流成分の信号は、2つのRA対抗信号42に位相差があるので、1を表すビットの列のデータとなる。この状態は、時点t22から時点t23(図27参照)まで続く。
【0355】
尚、LPFは、HPFとAM復調器のセットでも代用できる。すなわち、HPFで直流分をカットし、AM復調器でLFの2倍の周波数を検波することで、1を表すビットの列のデータとなる。
【0356】
また、時点t23になると、LF変調部3からRA対抗信号42の出力が終了する。するとそれ以降、LF変調部3から乗算処理14に入力される信号の値(電圧値)がゼロになる。
【0357】
したがって、HPF処理13から乗算処理14にはRA対抗信号42がまだ入力されているにもかかわらず、乗算処理14からLPF処理17に入力される乗算結果はゼロとなる。
【0358】
このようになっているので、スマート制御部1が携帯機20に送信したRA対抗データ42d(RA対抗信号42に含まれるRA対抗データ)の送信タイミングt21に対する、スマート制御部1が携帯機20から受信した当該RA対抗データ43d(戻ってきたRA対抗信号42に含まれるRA対抗データ)の受信タイミングt22の遅れ時間Tに応じて、ステップ540(第7実施形態においてはステップ640)で算出する時間幅Lも、第6〜第8実施形態と同様、L=X−Tという式によって決まる。
【0359】
ただし、ステップ540(第7実施形態においてはステップ640)で算出する時間幅Lは、LF復調部12からメイン処理15に1を表すビット列が入力され続けた期間の長さではなく、LPF処理17からメイン処理15に1を表すビット列が入力され続けた期間の長さである。
【0360】
このようになっているので、ステップ545(第7実施形態においてはステップ645)で第6〜第8実施形態の同じ判定を行うことで、第6〜第8実施形態と同様に、リレーステーションアタックの介入の有無を高い確度で算出することができる。なお、メイン処理15の作動は、上記で説明した部分以外は、第6〜第8実施形態と同じである。
【0361】
また、本実施形態では、携帯機10においてもLF復調の処理を行っていないので、遅延時間Tのばらつきが更に低下する。
【0362】
(第11実施形態)
次に、本発明の第11実施形態について説明する。本実施形態は、上記第6〜第8実施形態に対して、車載システム10の構成を図33のように変更するものである。以下、本実施形態と第6〜第8実施形態との違いを中心に説明する。
【0363】
本実施形態の車載システム10の構成は、第6〜第8実施形態における車載システム10の構成(図25参照)に対し、HPF部15が設けられ、乗算処理14に対しては、データ出力処理11の出力に代えて、LF変調部3の出力が入力されるように変更され、更に、スマート制御部1内のLF復調処理12およびHPF処理13が廃され、新たにRF復調/LF復調処理16が設けられたものである。なお、携帯機20の構成および作動については、第6〜第8実施形態に対する変更は無い。
【0364】
以下、本実施形態の車載システム10の作動について、第6〜第8実施形態との違いを中心に説明する。
【0365】
本実施形態においては、RF復調部5において、RF受信アンテナ4で受信され、アンプ・フィルタ・D/C51にて増幅、周波数フィルタリング、IF帯域(中間周波数帯域、本実施形態では300kHz付近の帯域)への周波数ダウンコンバートされた信号(例えばRA対抗変調信号43)が、復調部52に入力されると共にHPF部15にも入力される。HPF部15は、入力されたRA対抗変調信号43から不要な低周波成分(RFキャリアの周波数よりも低い周波数成分)を除去した信号を、スマート制御部1に入力する。
【0366】
また、スマート制御部1において、HPF部15から入力された信号は、乗算処理14に入力される。また、データ出力処理部11から出力されたデータ(例えばRA対抗データ42d)を用いて、LFキャリアがLF変調部3で変調され、その結果の信号(例えばRA対抗信号42)がスマート制御部1の乗算処理14に入力される。
【0367】
そして乗算処理14においては、このようにLF変調部3から入力された信号とHPF部15から入力された信号とが乗算され、その乗算結果の信号がRF復調/LF復調処理16に入力される。
【0368】
そして、RF復調/LF復調処理16においては、乗算処理14から入力された信号に対して、RF復調(上述の中間周波数帯域のキャリア信号を用いた復調)を行い、RF復調によって得た信号に対してLF復調(LF帯域のキャリア信号を用いた復調)を行い、更にLF復調によって得たデータに対してLPF(ローパスフィルタリング)処理を行い、LPF処理後の信号をメイン処理15に入力する。
【0369】
乗算処理14、HPF部15、RF復調/LF復調処理16のそれぞれの基本的な作動が上記のようになっているのに対応し、メイン処理15は、第6〜第8実施形態(図26図29図30参照)に対して以下のように変更される。
【0370】
まず、ステップ520(第7実施形態においてはステップ620)では、LF復調処理12からLF復調されたデータを取得開始するのではなく、RF復調/LF復調処理16からRF復調およびLF復調されたデータを取得開始するようになっている。
【0371】
取得を開始した時点t21(図27参照)では、まだ携帯機20からRA対抗変調信号43を受信していない。したがって、乗算処理14では、LF変調部3からはRA対抗信号42を取得しているが、HPF部15からは未だゼロの値(電圧値)を示す信号しか取得してしない。
【0372】
したがって、乗算処理14からRF復調/LF復調処理16に入力されるデータはゼロを示すビットから成るデータである。それ故、RF復調/LF復調処理16からメイン処理15に入力されるデータもゼロを示すビットから成るデータである。
【0373】
また、ステップ535(第7実施形態においてはステップ635)においてRF復調部5からRF復調後の信号を取得し終えるのを待つ間に、時点t22(図27参照)において、RA対抗変調信号43がRF復調部5で受信およびRF復調されるようになる。
【0374】
すると、HPF部15でRA対抗変調信号43から不要な低周波成分(中間周波数のキャリア信号よりも低い周波数成分)が除去された中間周波数帯の信号が乗算処理14に入力されるようになる。
【0375】
すると、乗算処理14においては、LF変調部3から入力されたRA対抗信号42と、HPF部15から入力された信号とが乗算される。つまり、中間周波数のキャリア信号の周波数をFiとし、RA対抗信号42の周波数をFlとすると、乗算処理においては、LF変調部3から入力された周波数Flの信号と、HPF部15から入力された周波数Fiの信号とが乗算され、その結果、Fi±Flの周波数の信号がRF復調/LF復調処理16に入力されるようになる。
【0376】
これにより、RF復調/LF復調処理16は、フィルタで2周波の一方を取り出し、RF復調、LF復調、およびLPF処理を行うことで、RA対抗データ43dに相当するビット列(直流成分に対応する)をメイン処理15に入力するようになる。この状態は、時点t22から時点t23(図27参照)まで続く。
【0377】
また、時点t23になると、LF変調部3からRA対抗信号42の出力が終了する。するとそれ以降、LF変調部3から乗算処理14に入力される信号の値(電圧値)がゼロになる。
【0378】
したがって、HPF部15から乗算処理14には中間周波数帯の信号がまだ入力されているにもかかわらず、乗算処理14からRF復調/LF復調処理16に入力される乗算結果はゼロとなる。
【0379】
このようになっているので、スマート制御部1が携帯機20に送信したRA対抗データ42d(RA対抗信号42に含まれるRA対抗データ)の送信タイミングt21に対する、スマート制御部1が携帯機20から受信した当該RA対抗データ43d(戻ってきたRA対抗信号42に含まれるRA対抗データ)の受信タイミングt22の遅れ時間Tに応じて、ステップ540(第7実施形態においてはステップ640)で算出する時間幅Lも、第6〜第8実施形態と同様、L=X−Tという式によって決まる。
【0380】
ただし、ステップ540(第7実施形態においてはステップ640)で算出する時間幅Lは、LF復調部12からメイン処理15に1を表すビット列が入力され続けた期間の長さではなく、RF復調/LF復調処理16からメイン処理15にHiの信号(ビット列)が入力され続けた期間の長さである。
【0381】
このようになっているので、ステップ545(第7実施形態においてはステップ645)で第6〜第8実施形態の同じ判定を行うことで、第6〜第8実施形態と同様に、リレーステーションアタックの介入の有無を高い確度で算出することができる。なお、メイン処理15の作動は、上記で説明した部分以外は、第6〜第8実施形態と同じである。
【0382】
(第12実施形態)
次に、本発明の第12実施形態について、第6〜第8実施形態との違いを中心に説明する。本実施形態は、第6〜第8実施形態のそれぞれに対して、RA対抗データの内容を変更したものである。第6〜第8実施形態では、RA対抗データ42d、43dは、図8図9に示したように、1を表すビットのみが連続するデータであった。
【0383】
しかし、本実施形態のRA対抗データ42dは、図34図35に示すように、1を表すビットが連続するだけではなく、複数個連続する1のビットと複数個連続する0のビットが交互に現れるようなデータとなっている。そして、1つのRA対抗データ内において、1のビットの連続回数は常に一定であり、0のビットの連続回数も常に一定である。
【0384】
このようなRA対抗データを用いる場合、携帯機20の作動内容に変化はない。また、車載システム10の作動においては、スマートシステム1が実行するメイン処理15のうち、時間幅Lの算出処理(図26のステップ540、図29のステップ640、図30のステップ540)および時間差Tと基準時間T0との比較処理(図26のステップ545、図29のステップ645、図30のステップ540)の処理内容のみが、第6〜第8実施形態と異なっている。
【0385】
具体的には、時間幅Lの算出処理においては、第6〜第8実施形態では、LF復調処理12から取得した1のビット列の1回の連続時間のみに基づいて時間幅Lを算出していた。
【0386】
しかし、本実施形態では、図34図35に示すように、RA対抗データ42d、43dにおいて複数個存在する1の連続ビット列の時間幅Lを複数個算出し、比較処理では、これら複数個の時間幅Lの平均値Lが、基準幅L0より大きいか否か判定する。
【0387】
このようにすることで、通信時にRF変調データ43に突発的な外来ノイズ(パルスやインパルス)が重畳された場合でも、複数のエッジの時間差の平均値を用いてリレーステーションアタックの介入の有無を判定しているので、判定に誤りが発生する可能性を低減することができる。
【0388】
(第13実施形態)
次に、本発明の第12実施形態について、第6〜第8実施形態との違いを中心に説明する。本実施形態は、第6〜第8実施形態のそれぞれに対して、RA対抗データの内容を変更したものである。第6〜第8実施形態では、RA対抗データ42d、43dは、図8図9に示したように、1を表すビットのみが連続するデータであった。
【0389】
しかし、本実施形態のRA対抗データ42dは、図34図35に示すように、1を表すビットが連続するだけではなく、複数個連続する1のビットと複数個連続する0のビットが交互に現れるようなデータとなっている。そして、1つのRA対抗データ内において、1のビットの連続回数は一定でなく、0のビットの連続回数も一定でない。
【0390】
このようなRA対抗データを用いる場合、携帯機20の作動内容に変化はない。また、車載システム10の作動においては、スマートシステム1が実行するメイン処理15のうち、時間幅Lの算出処理(図26のステップ540、図29のステップ640、図30のステップ540)および時間差Tと基準時間T0との比較処理(図26のステップ545、図29のステップ645、図30のステップ540)の処理内容のみが、第6〜第8実施形態と異なっている。
【0391】
具体的には、時間幅Lの算出処理においては、第6〜第8実施形態では、LF復調処理12から取得した1のビット列の1回の連続時間のみに基づいて時間幅Lを算出していた。
【0392】
しかし、本実施形態では、図34図35に示すように、RA対抗データ42d、43dにおいて複数個存在する1の連続ビット列の時間幅Lを複数個算出し、比較処理では、これら複数個の時間幅Lの平均値Lが、基準幅L0より大きいか否か判定する。
【0393】
このようにすることで、通信時にRF変調データ43に突発的な外来ノイズ(パルスやインパルス)が重畳された場合でも、複数のエッジの時間差の平均値を用いてリレーステーションアタックの介入の有無を判定しているので、判定に誤りが発生する可能性を低減することができる。
【0394】
さらに、本実施形態では、1つのRA対抗データ内において、1のビットの連続回数は同じでなく、0のビットの連続回数も同じでない。したがって、通信時にRF変調データ43に定期的な外来ノイズ(パルスやインパルス)が重畳された場合でも、長さや間隔が一定しない複数のエッジの時間差の平均値を用いてリレーステーションアタックの介入の有無を判定しているので、判定に誤りが発生する可能性を低減することができる。
【0395】
さらに、本実施形態では、1つのRA対抗データ内において、1のビットの連続回数は同じでなく、0のビットの連続回数も同じでない。したがって、通信時にRF変調データ43に定期的な外来ノイズ(パルスやインパルス)が重畳された場合でも、長さや間隔が一定しない複数のエッジの時間差の平均値を用いてリレーステーションアタックの介入の有無を判定しているので、判定に誤りが発生する可能性を低減することができる。
【0396】
例えば、複数車両から同時受信時にRA判定エラーを抑制できる。具体的には、自車の車載システム10と自車用の携帯機20とが通信する環境において、他車の車載システムと他車用の携帯機が更に通信している場合、自車の車載システム10で自車用携帯機20からのRA対抗変調信号43(RA対抗信号42を含む)を受信中に、他車用携帯機からRA対抗変調信号(RA対抗信号を含む)を受信すると、それら信号が重なってしまい、時間差Tの算出を誤る可能性がある。
【0397】
これに対し、本実施形態のようなRA対策データを用い、更に、更に車両毎にRA対策データ中の1のビットの連続回数の配置および0のビットの連続回数の配置が異なっている場合、2つの信号が重ならない場合(リレーステーションアタックの有無を正しく判定できる場合)ができやすくなる。
【0398】
また、本実施形態の変形例として、前記RA対抗データは、1個の1のビットと複数個連続する0のビットが交互に現れるようなデータとなっており、1つの前記RA対抗データ内において、0のビットの連続回数が一定でないようになっていてもよい。
【0399】
この変形例では、1のビットの後に必ず0のビットが続くので、1のビットの長さが短くなり、その分、他の車両に与える悪影響を低減さえることができる。なお、この1ビット長の時間的長さは、システム遅延時間(第1実施形態で説明したD1+D2)よりも充分長い。
【0400】
(第14実施形態)
次に、本発明の第14実施形態について説明する。上記第1〜第3実施形態では、車載システム10からリクエストデータおよびRA対抗データを送信し、それに応じて携帯機20からRA対抗変調信号およびアンサーデータを返信した直後に、スマート駆動を実現している。しかし、必ずしもこのようになっておらずともよく、例えば、図38に示すような通信手順を実行した後、スマート駆動を実現するようになっていてもよい。
【0401】
図3の手順においては、まず、車両の周辺に携帯機20がいるかの確認を行う段階Aにおいて、まずスマート制御部1がLF変調部3にLFデータを出力することで、LF変調部3が、このLFデータを含む第1の車載側信号63(長さ数ミリ秒)を無線送信する。携帯機20では、LF受信アンテナ21、アンプ22、LF復調部23によってこの第1の車載側信号63を無線受信し、携帯側制御部28がこの第1の車載側信号63に含まれるLFデータを取得する。そして携帯側制御部28は、このLFデータを取得したことに基づいて、RF変調部25にRFデータを出力する。これにより、RF変調部25が、このRFデータを含む第1の携帯側信号64(長さ数ミリ秒)を無線送信する。車載システム10では、RF復調部5によってこの第1の携帯側信号64を無線受信し、スマート制御部1がこの第1の携帯側信号64に含まれるRFデータを取得する。
【0402】
次に、車載システム10と携帯機20が相互に正規のものであるか否か、および、リレーステーションアタックがあるか否かを判定するための段階Bにおいて、車載システム10は、上記第1の携帯側信号64を受信したことに基づいて、第1〜第13実施形態に示したように、リクエストデータとRA対抗データとを含む第2の車載側信号65(リクエスト信号41およびRA対抗信号42に相当する)を無線送信し、携帯機20は、その第2の車載側信号65を無線受信したことに基づいて、アンサー信号44(アンサーデータを含む)とRA対抗変調信号43(RA対抗信号42が変調された信号)とを含む第2の携帯側信号66を無線送信する。そして車載システム10は、この第2の携帯側信号66を受信し、受信した第2の携帯側信号66に基づいて、リレーステーションアタックが介入しているか否か、および、携帯機20が正規の携帯であるか否かを、第1〜第13実施形態で説明した通り、判定する。
【0403】
次に、暗号による認証を行う段階Cにおいて、車載システム10のスマート制御部1は、携帯機20が正規の携帯であると判定したことに基づいて、スマート制御部1がLF変調部3に暗号認証用のLFデータを出力することで、LF変調部3が、このLFデータを含む第3の車載側信号67(長さ数十ミリ秒)を無線送信する。このLFデータには、リレーステーションアタックが介入しているか否かを示すRAデータ67aを含めている。
【0404】
携帯機20では、LF受信アンテナ21、アンプ22、LF復調部23によってこの第3の車載側信号67を無線受信し、携帯側制御部28がこの第3の車載側信号67に含まれる暗号認証用のLFデータを取得する。
【0405】
そして携帯側制御部28は、このLFデータを取得すると、RAデータ67aに基づいて、リレーステーションアタックの介入があるか否かを判定し、介入がないと判定した場合(RAデータがリレーステーションアタックの介入がないことを示している場合)は、LFデータを用いて所定の認証処理を行い、認証に成功すると、RF変調部25に認証用のRFデータを出力する。これにより、RF変調部25が、このRFデータを含む第3の携帯側信号68(長さ数ミリ秒)を無線送信する。車載システム10では、RF復調部5によってこの第3の携帯側信号68を無線受信し、スマート制御部1がこの第3の携帯側信号68に含まれるRFデータを用いて認証を行い、認証に成功すると、スマート駆動を実行する。
【0406】
しかし、携帯側制御部28が、RAデータ17aに基づいて、リレーステーションアタックの介入があるか否かを判定し、介入があると判定した場合(RAデータがリレーステーションアタックの介入があることを示している場合)は、携帯機20が有する報知装置(発光装置、音出力装置、振動装置等、図示せず)を作動させることで、リレーステーションアタックの介入があることをユーザに報知し、上述の第3の携帯側信号68を送信しない。これにより、スマート駆動を防止できると共に、携帯機20のユーザにリレーステーションアタックの介入を知らせることができる。また、認証のための段階CにRAデータ67aの送信を組み込むことで、リレーステーションアタックの介入をユーザに知らせるための通信回数を増やさずに済む。
【0407】
なお、本実施形態では、段階Bにおいてやり取りする信号65、66において、第1〜第14実施形態において説明したRA対抗信号42(RA対抗データを含む)およびRA対抗変調信号43(RA対抗信号42)を含めている。
【0408】
しかし、他の例としては、段階Aでやり取りする信号63にRA対抗信号42を含め、信号64にRA対抗変調信号43を含めるようになっていてもよい。その場合は、信号63中のLFデータがリクエストデータに相当し、信号64中のRFデータがアンサーデータに相当する。
【0409】
また、他の例としては、段階Cでやり取りする信号67にRA対抗信号42を含め、信号68にRA対抗変調信号43を含めるようになっていてもよい。その場合は、信号67中のLFデータがリクエストデータに相当し、信号68中のRFデータがアンサーデータに相当する。
【0410】
ただし、段階Aでやり取りする信号63、64にRA対抗信号42、RA対抗変調信号43を含める場合は、携帯機20が信号63を受信した時点では、携帯機20のRF変調部25がスリープ状態になっている。これは、携帯機20が所定時間(上記段階A、B、Cの総和の時間よりも充分長い時間)以上信号を受信していない場合は、RF変調部25は電力消費量が通常状態よりも低く、送信ができないスリープ状態に入っているからである。
【0411】
携帯機20のRF変調部25がスリープ状態になっている場合、携帯機20が信号63を受信したことに基づいてRF変調部25がウエイクアップして通常状態に戻ろうとするが、通常状態に戻るまでに時間がかかるので、その分遅延時間が増大してしまう。
【0412】
これに対し、本実施形態のように段階Bでやり取りする信号65、66にRA対抗信号42、RA対抗変調信号43を含める場合、および、段階Cでやり取りする信号67、68にRA対抗信号42、RA対抗変調信号43を含める場合は、携帯機20がRA対抗信号42を受信する時点で既にRF変調部25が通常状態(すなわち、通信可能な状態)に戻っているので、ウエイクアップのために遅延時間が増大することがない。
【0413】
また、段階Aでやり取りする信号63、64にRA対抗信号42、RA対抗変調信号43を含める場合でも、RF変調部25がウエイクアップして通常状態に戻ってから、車載システム10がRA対抗信号42を送信するようになっていれば、ウエイクアップのために遅延時間が増大することがない。
【0414】
なお、上記実施形態において、携帯側制御部20が、ステップ235、275、430を実行することでアンサーデータ出力手段の一例として機能し、ステップ170、370を実行することでスマート駆動手段の一例として機能し、ステップ145、345、545、645を実行することでRA判定手段の一例として機能する。
【0415】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。例えば、以下のような形態も許容される。
【0416】
(1)上記実施形態では、LF変調部3の変調方式(第1の変調方式の一例に相当する)およびLF復調部23の復調方式(第1の復調方式の一例に相当する)は、ASKとなっていたが、LF変調部3の変調方式およびLF復調部23の復調方式は、ASKに限らず、AM、FM、PM、ASK、FSK、PSKのいずれを用いてもよい。これらのうちどのような方式を採用しても、本願発明における課題が発生し、その課題を解決することが可能である。ただし、図33の構成を採用した場合に限っては、ASKを採用した場合に限り本願発明における課題を解決することができる。
【0417】
(2)また、第6〜第13実施形態において、乗算処理14は、アナログ信号を扱う乗算回路として実現してもよい。そのような乗算回路としては、DBM(Double Balanced Mixer)を用いることができる。
【0418】
また、乗算処理14は、各実施形態において、スマート制御部1内のデータ出力処理11およびメイン処理15以外の処理(すなわち、LF復調処理12、HPF処理13、RF復調/LF復調処理16、LPF処理17)も、アナログ信号を扱うアナログ回路として実現されていてもよい。
【0419】
(3)また、第12、第13実施形態のようなRA対抗データ42dは、第6〜第8実施形態のみならず、第9〜第11実施形態にも適用可能である。
【0420】
(4)また、上記切替回路27の機能は、携帯側制御部28に組み込まれていてもよい。
【0421】
(5)また、上記各実施形態のHPF処理13およびHPF部15は、他の携帯機からの信号(FM変調等の通常データの信号)を除去するという効果も発揮する。RF帯域で送信するためのBB信号は、1kbps程度、LF帯域の周波数は100kHz程度なので、HPFについては1kbpsを除去するカットオフ周波数に設定してもよい。
【符号の説明】
【0422】
2 LF送信アンテナ(第1送信アンテナの一例に相当する)
3 LF変調部(第1変調手段の一例に相当する)
10 車載システム
20 携帯機
21 LF受信アンテナ(第1受信アンテナの一例に相当する)
23 LF復調部(第1復調手段の一例に相当する)
27 切替回路(切替手段の一例に相当する)
25 RF変調部25(第2変調手段の一例に相当する)
41 リクエスト信号
42 RA対抗信号
43 RA対抗変調信号
44 アンサー信号
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