【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施するための実施例を、添付図面を用いて説明する。
図1は、例えば
図2に示すように、対象となる工場A〜Cの敷地と公園の敷地の境界に設けた監視ポイントPに設置する本発明の粉塵飛散監視装置の一例を示す概略構成図である。
【0026】
1は監視ポイントPにおける降下粉塵を連続的に採取して粉塵量を測定する粉塵測定装置である。この粉塵測定装置1は、上方に開放した逆円錐状の採取口2と、この採取口2内に降下してきた粉塵を捕集するテープ状の採取フィルタ3と、この採取フィルタ3上に捕集した粉塵量を測定する測定部4と、前記採取フィルタ3の送り装置5とから構成されている。
【0027】
6は前記採取フィルタ3上の粉塵を採取フィルタ3と共に撮影する撮影装置であり、例えばパソコン上で粉塵の種類を目視で確認できるように、光学50倍のレンズ7と200万画素のデジタルカメラ8を組み合わせて使用する。
【0028】
9は監視ポイントPにおける風向及び風速を測定する気象測定器であり、この気象測定器9で測定した風向及び風速は、気象データ処理装置10を介してデータ集約保存装置11に送られる。このデータ集約保存装置11には、前記粉塵測定装置1で測定された粉塵量と、前記撮影装置6で撮影された画像も送られてくる。
【0029】
前記測定部4と前記気象測定器9におけるサンプリングタイムは、短すぎたり長すぎたりすると、風向の変化と粉塵量が関連性の無いデータになるので、例えば10分に1回とする。このサンプリングタイムは、工場と粉塵監視ポイントの距離や高さ等から事前に最適の時間を決めておく。
【0030】
ところで、短時間に粉塵測定装置1の許容値以上の粉塵が降下した場合、送り装置5が作動して採取フィルタ3が自動で移動し、撮影装置6で粉塵を撮影する。従って、撮影装置6の撮影間隔は、平常時は、粉塵が集まったところで撮影するようにして採取フィルタ3の使用数が極力少なくなるように、例えば1時間に1回の間隔で撮影するようにする。
【0031】
上記構成の本発明の粉塵の飛散監視装置を用いて監視ポイントPで粉塵量を測定すると、工場から影響する方向での風向では粉塵量が上昇するので、その粉塵が降下したときの風向きにより、当該粉塵が自工場からのものかどうかを大まかに判断することができる。
【0032】
そして、粉塵が自工場からの可能性がある場合は、当該粉塵を、レンズ7を介してデジタルカメラ8で拡大して撮影することで、自工場が発生源の粉塵であるかどうかをオペレータが目視にて判断することができる。
【0033】
12は前記データ集約保存装置11内のデータをインターネット等のネットワークを介してデータ受信サーバ13に送信するデータ送信装置である。データ送信装置12からデータ受信サーバ13への通信手段は無線でも有線でもよいが、粉塵監視装置からデータ受信サーバ13までの距離によって有線、無線を使い分ければよい。
【0034】
データ受信サーバ13は、前記送られてきたデータをストックする機能と共に、工場方向からの風向での粉塵量のカウントや警報発生判断の機能も備えている。そして、前記粉塵量とこの粉塵を採取した際の風向及び風速から、自工場からの粉塵量を選び出し、この選び出した粉塵量
の移動平均値が予め設定した基準値を超えた場合に警報器14に信号を出す。
【0035】
なお、前記粉塵量は、粉塵監視測定装置で測定されたデータ(μg)を1箇月当たりの降下粉塵量に換算し、これまで粉塵量過多により原因調査を開始する判断となっていた粉塵量警報値の2倍値を100%として%で表示することにした。
【0036】
15はデータ受信サーバ13内のデータを見やすいように編集して表示させるデータ表示サーバであり、例えばWebサーバ機能を持っており、工場オペレータ室に設置したパソコン等の表示装置16にてwebブラウザで粉塵データをビジュアルに確認できる。
【0037】
上記構成の本発明の粉塵の飛散監視装置を使用すれば、以下のようにして粉塵の飛散を抑制することができる。
【0038】
先ず、粉塵測定装置1で降下粉塵を連続的に採取し、その粉塵量を測定する。データ受信サーバ13は、データ送信装置12から送られてきた前記粉塵量と気象測定器9で測定した風向及び風速のうち、前記粉塵量を測定した粉塵を採取した際の風向及び風速と前記粉塵量とから自工場からの粉塵量を選び出して管理する。そして、前記管理する自工場からの粉塵量
の移動平均値が予め設定した基準値を超えた場合に、警報器14に信号をだして警報を発する。
【0039】
一方、オペレータは、前記基準値を超えた粉塵撮影画像と自工場から発生した粉塵の撮影画像を比較し、自工場が粉塵発生源であると判断した場合は、遅滞なく設備の点検や粉塵発生場所への散水等を行って粉塵飛散の抑制措置を施す。これが、本発明の粉塵の飛散防止方法である。
【0040】
その際、警報を出すための基準値を複数段階に設定しておけば、最小限の工場対応で効果的な粉塵飛散の抑制対応が行えるようになる。
【0041】
ちなみに、本発明の効果を確認するために焼結工場において実施した運用例を
図3に示す。
【0042】
発明例では、警報発生の考え方を過去8時間の粉塵量の移動平均値管理とし、警報基準値を3段階に設定し、警報値1を20%、警報値2を40%、警報値3を60%とした。また、
図2に示した工場A側から粉塵監視ポイントPに影響する風向(影響風向)をN、NE、NNE、ENEからの4方向に設定した。なお、方向は、N(北)、E(東)、S(南)、W(西)の符号を用いて、定法に従って16方位に分けて表す。
【0043】
図3中の棒グラフには、影響風向からの粉塵量(以下、「影響風向粉塵量」ともいう。)を白枠で示し、8時間の移動平均値(単純移動平均値)を折れ線グラフで示している。
【0044】
影響風向粉塵量は、影響風向(前記では、N,NNE,NE,ENEの4方向)の風向の場合の粉塵量であって、粉塵測定装置で測定された粉塵量と気象測定器で測定された風向データをデータ受信サーバでデータ処理して算出した指標である。
【0045】
図3より、影響風向になると粉塵量は上昇傾向となり、風速が高くなるほど粉塵飛散量も上昇する傾向があることが分かる。
【0046】
具体的には16時から17時までは風向はESEで影響風向外であり、移動平均の粉塵量は感知されない。しかしながら、18時以降、風向はEからNNE,NE又はENEになって次第に影響風向下となり、22時過ぎに移動平均値が警報値1を超えたので、警報器に信号を出して警報を発した。
【0047】
この際、
図4に示す写真を各工場担当者が確認した。工場Aでは赤色の原料を使用しており、赤色の粉塵が飛散する。
図4の写真には赤色の粉塵の飛散が確認でき、自工場より飛散したものと判断し、警報値1の場合の粉塵飛散の抑制措置、すなわち集塵機等の環境対策設備からの発塵有無を主とした設備点検や散水を行い、発塵防止を図った。
【0048】
この結果、20時とほぼ同風速である23時では粉塵量が下がっており、粉塵飛散の抑制効果が発揮されていると判断できた。なお、警報値2の場合は、工場Aで加熱した原料を冷却する風量の制限を実施し(操業を制約)、大気中に飛散する粉塵を抑制した。警報値3の場合は、工場Aの周囲(道路上等)の飛散を抑えるために、散水車を使用した路上散水等を実施し、工場内の対策だけでなく工場周辺を含む地域全体での粉塵飛散抑制対応を行うように設定した。
【0049】
本発明は上記した例に限らないことは勿論であり、請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。