特許第5862461号(P5862461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5862461
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】車両用接近通知音制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 5/00 20060101AFI20160202BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   B60Q5/00 660A
   B60Q5/00 660N
   B60Q5/00 660Z
   B60Q5/00 650A
   B60Q5/00 620A
   B60Q5/00 630B
   B60Q5/00 640C
   G08G1/16 C
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-126890(P2012-126890)
(22)【出願日】2012年6月4日
(65)【公開番号】特開2013-249033(P2013-249033A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】阿式 俊和
【審査官】 柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】 実開平6−44640(JP,U)
【文献】 特開2011−84224(JP,A)
【文献】 特開2011−213273(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0199199(US,A1)
【文献】 実開昭62−137146(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 5/00
G08G 1/00−1/16
B60L 3/00−3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の存在を車両外部周辺に報知するための接近通知音を制御する車両用接近通知音制御装置であって、
車両外部周辺の周辺音を集音する集音手段と、
前記集音手段により集音された周辺音から特定対象音を識別する特定対象音識別手段と、
前記特定対象音識別手段により前記周辺音から前記特定対象音が識別されると、前記接近通知音の出力を抑制制御する接近通知音制御手段と、
を備えていることを特徴とする車両用接近通知音制御装置。
【請求項2】
車両の存在を車両外部周辺に報知するための接近通知音を制御する車両用接近通知音制御装置であって、
ナビゲーション装置の地図データに対応して予め設定された特定対象音の発生場所を特定する特定対象音発生場所特定情報と、
前記ナビゲーション装置から取得する前記車両の現在位置情報と、前記特定対象音発生場所特定情報とをもとに、前記車両の現在位置が前記特定対象音発生場所特定情報が示す地点に接近すると接近通知音の出力レベルを抑制制御する接近通知音制御手段と、
を備えていることを特徴とする車両用接近通知音制御装置。
【請求項3】
前記特定対象音識別手段により識別された特定対象音のレベルを検出する特定対象音レベル検出手段を備え、
前記接近通知音制御手段は、前記特定対象音レベル検出手段により検出された前記特定対象音の検出レベルに応じた出力レベルに前記接近通知音を抑制制御することを特徴とする請求項1記載の車両用接近通知音制御装置。
【請求項4】
車両周辺の歩行者を検出する歩行者検出手段をさらに備え、
前記接近通知音制御手段による抑制制御は、前記歩行者検出手段により前記歩行者が検出されない場合は、前記接近通知音の出力をゼロとする、
ことを特徴とする請求項1〜3に何れか1項記載の車両用接近通知音制御装置。
【請求項5】
前記接近通知音制御手段による前記接近通知音の抑制制御の状況を運転席のドライバが認識可能に出力する通知手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4に何れか1項記載の車両用接近通知音制御装置。
【請求項6】
前記特定対象音は、横断歩道の歩行者用信号機で出力される誘導音、公共交通機関の出入口で出力される誘導音、路面電車の停止および発車を報知するベル音、路線バスのドアが開閉されるときに出力される警告音、大型車両の右左折時あるいは後退時の周辺へ注意を喚起するためのブザー音、音声アナウンス、あるいは救急車両、警察車両のサイレン音の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜5に何れか1項記載の車両用接近通知音制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車、ハイブリッド車両などの走行音の小さい車両に用いて好適な車両用接近通知音制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CO 削減などの目的で化石燃料に代えてバッテリに充電した電気エネルギーを利用する電動機を駆動源とした電気自動車、あるいはバッテリにより駆動される電動機と従来からのエンジンを動力源として走行するハイブリッド車両が普及しつつある。このような電気自動車あるいはハイブリッド車両においては、走行時に発生する騒音が小さいことから、接近通知音を疑似的に発生させ、歩行者に車両が接近していることを知らせ、歩行者と車両との間の安全を確保するようにしている。
このような電気自動車あるいはハイブリッド車両に適用され接近通知音を疑似的に発生させる車両用接近通知音制御装置として、周囲騒音に応じて発生させる疑似音量を調整可能にした電気車両用疑似音発生装置がある。
この電気車両用疑似音発生装置は、電気自動車の始動を検出する始動センサと、モータの回転数を検出する回転数センサと、アクセル開度を検出するアクセル開度センサを備えている。またこれらセンサからの始動情報、回転数情報およびアクセル開度情報に基づいて疑似音モードを選定する疑似音選定手段を備えている。さらにこの疑似音選定手段の出力に基づいて疑似音を発生させる疑似音源手段と、疑似音の音量を切り替える音量切替手段とを備えている。また、周囲騒音を検出する騒音検出手段を備え、この騒音検出手段で検出した騒音情報に基づいて前記音量切替手段を制御する。そして、電気車両の動作状態に対応した疑似音を発生させ、周囲騒音に応じて疑似音量を変化させる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−182587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、従来の車両用接近通知音制御装置では、自車両の動作状態に応じた疑似音を発生させ、周囲騒音に応じて疑似音量を変化させるものであり、周囲騒音が大きいときには疑似音量を増大させ、歩行者と車両との間の安全を確保するものである。このため周囲で騒音として検出される音が、歩行者に注意を喚起させたり歩行者を誘導する目的の歩行者用信号、交通機関の出入口における誘導音、アナウンス、あるいは特定の音色の合成音であったりする場合には、これら誘導音、アナウンス、合成音を歩行者が聞きとることが困難になって、歩行者の注意喚起や誘導に妨げとなる課題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、接近通知音が、歩行者の注意喚起や誘導の妨げになることなく、歩行者と車両との間の安全を確保できる車両用接近通知音制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、車両の存在を車両外部周辺に報知するための接近通知音を制御する車両用接近通知音制御装置であって、車両外部周辺の周辺音を集音する集音手段と、前記集音手段により集音された周辺音から特定対象音を識別する特定対象音識別手段と、前記特定対象音識別手段により前記周辺音から前記特定対象音が識別されると、前記接近通知音の出力を抑制制御する接近通知音制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、車両の存在を車両外部周辺に報知するための接近通知音を制御する車両用接近通知音制御装置であって、ナビゲーション装置の地図データに対応して予め設定された特定対象音の発生場所を特定する特定対象音発生場所特定情報と、前記ナビゲーション装置から取得する前記車両の現在位置情報と、前記特定対象音発生場所特定情報とをもとに、前記車両の現在位置が前記特定対象音発生場所特定情報が示す地点に接近すると接近通知音の出力レベルを抑制制御する接近通知音制御手段とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、集音手段により集音された車両外部周辺の周辺音から特定対象音識別手段により特定対象音が識別されると、接近通知音制御手段が接近通知音の出力を抑制制御するように構成したので、前記接近通知音により前記特定対象音が聞き取り難くなって、前記接近通知音が歩行者の注意喚起や誘導に妨げになることがなくなり、歩行者と車両との間の安全を確保できる車両用接近通知音制御装置を提供できる効果がある。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、ナビゲーション装置から取得する車両の現在位置情報と特定対象音発生場所特定情報とをもとに、前記車両の現在位置が前記特定対象音発生場所特定情報が示す地点に接近すると接近通知音の出力レベルを抑制制御するように構成したので、前記接近通知音により前記特定対象音が聞き取り難くなって、前記接近通知音が歩行者の注意喚起や誘導に妨げになることがなくなり、歩行者と車両との間の安全を確保できる車両用接近通知音制御装置を提供できる効果がある。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、検出された特定対象音の検出レベルに応じた出力レベルに接近通知音が抑制制御されるように構成したので、前記特定対象音の検出レベルに応じて接近通知音の抑制制御がきめ細かに行われる結果、前記接近通知音により前記特定対象音が聞き取り難くなって、前記接近通知音が歩行者の注意喚起や誘導に妨げになることがなくなり、歩行者と車両との間の安全を確保できる車両用接近通知音制御装置を提供できる効果がある。
【0011】
請求項4記載の発明によれば、歩行者検出手段により歩行者が検出されない場合は、接近通知音の出力をゼロとするように構成したので、車両周囲に歩行者が検出されない場合は接近通知音は出力されることがなく、歩行者が検出されないときには前記接近通知音により前記特定対象音が聞き取り難くなって、前記接近通知音が妨げになることがなくなり、歩行者と車両との間の安全を確保できる車両用接近通知音制御装置を提供できる効果がある。
【0012】
請求項5記載の発明によれば、接近通知音の抑制制御の状況を運転席のドライバが認識できるように構成したので、前記接近通知音が歩行者の注意喚起や誘導に妨げにならないように抑制制御されている状況を運転席のドライバに認識させることが可能になり、接近通知音により特定対象音が聞き取り難くなって、前記接近通知音が歩行者の注意喚起や誘導に妨げになることがなくなり、歩行者と車両との間の安全をより確保できる車両用接近通知音制御装置を提供できる効果がある。
【0013】
請求項6記載の発明によれば、特定対象音が、横断歩道の歩行者用信号機で出力される誘導音、公共交通機関の出入口で出力される誘導音、路面電車の停止および発車を報知するベル音、路線バスのドアが開閉されるときに出力される警告音、大型車両の右左折時あるいは後退時の周辺へ注意を喚起するためのブザー音、音声アナウンス、あるいは救急車両、警察車両のサイレン音を含むように構成したので、これら誘導音、ベル音、警告音、ブザー音や音声アナウンス、あるいはサイレン音を含む特定対象音が車両外部周辺の周辺音から特定対象音識別手段により識別されると、接近通知音制御手段により接近通知音の出力が抑制される結果、前記接近通知音により前記特定対象音が聞き取り難くなって、前記接近通知音が歩行者の注意喚起や誘導に妨げになることがなくなり、歩行者と車両との間の安全を確保できる車両用接近通知音制御装置を提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態である車両用接近通知音制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施の形態である車両用接近通知音制御装置の動作を示すフローチャートである。
図3】本発明の第1の実施の形態である車両用接近通知音制御装置の補正量と特定対象音の検出レベルとの関係の一例を示す説明図である。
図4】本発明の第1の実施の形態である車両用接近通知音制御装置の補正された接近通知音の出力音圧レベルと特定対象音の検出レベルとの関係を示す説明図である。
図5】本発明の第2の実施の形態である車両用接近通知音制御装置の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第2の実施の形態である車両用接近通知音制御装置の動作を示すフローチャートである。
図7】本発明の第3の実施の形態である車両用接近通知音制御装置の構成を示すブロック図である。
図8】本発明の第3の実施の形態である車両用接近通知音制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態である車両用接近通知音制御装置の構成を示すブロック図である。この車両用接近通知音制御装置は、電気自動車あるいはハイブリッド車両に搭載されている。この実施の形態では電気自動車に搭載されており、集音マイクロフォン1、特定対象音検出部4、接近通知音制御部5、ドライバ通知装置6および接近通知音出力用スピーカ7を備えている。
集音マイクロフォン1は、電気自動車である自車両周辺の音を収集し、電気信号に変換して出力する。
車速情報2は、図示していない車速センサにより検出された自車両の車速である。
【0016】
特定対象音検出部4は、集音マイクロフォン1により収集した自車両周辺の音の中から特定対象音を識別して検出する。また、検出した特定対象音の音圧レベルを検出する。
特定対象音は、横断歩道の歩行者用信号機で出力される誘導音、公共交通機関の出入口で出力される誘導音、路面電車の停止および発車を報知するベル音、路線バスのドアが開閉されるときに出力される警告音、大型車両の右左折時あるいは後退時の周辺へ注意を喚起するためのブザー音や音声アナウンス、救急車両や警察車両のサイレン音などを含む。
特定対象音検出部4は、これら誘導音、ベル音、警告音、ブザー音やアナウンス、サイレン音を、集音マイクロフォン1により収集した自車両周辺の音の音信号の中から識別する特定対象音識別手段41を備えている。
【0017】
特定対象音識別手段41は、例えばパルスニューラルネットワークモデルによる音源種類識別手法を用いることが可能である。特定対象音検出部4は、特定対象音の検出の有無を示す特定対象音検出情報、識別した特定対象音情報、検出した特定対象音の音圧レベル情報を出力する。
【0018】
接近通知音制御部5は、特定対象音検出部4から出力された特定対象音検出情報、特定対象音情報、特定対象音の音圧レベル情報と、自車両の車速情報2をもとに接近通知音を制御する。この接近通知音制御部5は、車両用ECUの機能により実現される。
【0019】
ドライバ通知装置6は、接近通知音の制御状況をドライバに通知する。このときのドライバに通知する手段としては運転席の液晶モニタ画面に所定の表示パターンで接近通知音の制御状況を視覚的に表示出力する。あるいは接近通知音の制御状況を音声アナウンスにより出力する。
接近通知音出力用スピーカ7は、接近通知音を出力する。
【0020】
図2は、この実施の形態の車両用接近通知音制御装置の動作を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに従って動作を説明する。
この車両用接近通知音制御装置の動作は、接近通知音制御部5を構成する車両用ECUによる接近通知音制御動作として説明する。図2のフローチャートに示す接近通知音制御を示すプログラムはサブルーチンプログラムとして接近通知音制御部5を構成する車両用ECUのROMに格納されている。
車両用ECUのCPUがこのサブルーチンプログラムを実行すると、先ずステップS1において自車両の車速が接近通知音を出力する車速であるか否かを判定する。つまり車両情報2の車速情報から自車両が停止しているかどうか、車速が0Km/hであるか否かを判定し、車速が0Km/hでなければ接近通知音を出力する車速と判定する。
また、接近通知音が不要な車速(例えば30Km/h以上)でなければ接近通知音を出力する車速と判定する。この30Km/h以上の車速が接近通知音の不要な車速とされる理由としては、車速が30Km/h以上になるとタイヤによる走行音が発生するため歩行者に接近通知音を出力する必要がなく、また無用な接近通知音をオフすると車室内の静粛性を向上できるなどの理由が挙げられる。
自車両が停止している場合、あるいは車速が30Km/h以上であると接近通知音を出力する必要はないことから、ステップS7で接近通知音出力オフ操作を行なった後にこのサブルーチンプログラムをぬける。
【0021】
ステップS1において接近通知音を出力する車速と判定すると、予め決められている一定の出力音圧レベルの接近通知音を接近通知音出力用スピーカ7から出力する(ステップS2)。続いて集音マイクロフォン1により収集した自車両の周辺音の中に誘導音、ベル音、警告音、ブザー音や音声アナウンス、サイレン音などの特定対象音が特定対象音検出部4により検出されたか否かを判定する(ステップS3)。
集音マイクロフォン1により集音した周辺音としては、自車両が走行している環境に応じた種々の種類の音が集音される。街中を走行中であれば他車両のクラクション、他車両の走行音、歩行者の話し声、交差点での歩行者案内のための音声アナウンスを含む歩行者用の横断歩道で出力される誘導音、公共交通機関の出入口で出力される誘導音、緊急車両のサイレン音、路面電車の停止および発車を報知するベル音、路線バスのドアが開閉されるときに出力される警告音、ダンプカーが右折あるいは左折するときの歩行者に対する注意喚起のための音声アナウンスやブザー音などの警報音などが集音される。
【0022】
集音マイクロフォン1により集音した周辺音は電気信号に変換されて特定対象音検出部4へ出力され、特定対象音検出部4の特定対象音識別手段41により周辺音の中から誘導音、ベル音、警告音、ブザー音や音声アナウンス、サイレン音などの特定対象音を識別する。特定対象音識別手段41により周辺音の中から前記特定対象音が識別されると、特定対象音検出部4では、さらに、前記特定対象音の検出レベル、入力音圧レベルも検出する。
【0023】
続くステップS4では、集音マイクロフォン1により集音した周辺音に含まれる前記特定対象音を検出したか否かを判定する。前記特定対象音は検出されていると、検出された特定対象音の検出レベル、入力音圧レベルに応じて接近通知音の出力音圧レベルを制御する(ステップS5)。この接近通知音の出力音圧レベルの制御は、例えば、前記特定対象音を検出すると、検出した特定対象音の検出レベル、入力音圧レベルに応じた補正量により、前記ステップS2で出力を開始させた接近通知音の一定の出力音圧レベルに対し補正を行い、接近通知音の出力音圧レベルを前記一定の出力音圧レベルから減少させるように制御する。このときの補正量は入力音圧レベルに応じてあらかじめ規定されており、特定対象音の検出レベルと補正量とは逆比例の関係に設定されている。すなわち特定対象音の検出レベルが大きくなればなるほど補正量は小さくなる。
【0024】
図3は、この補正量と特定対象音の検出レベルとの関係の一例を示す説明図である。
この結果、前記特定対象音を検出したときの検出レベル、入力音圧レベルに対し、前記特定対象音を歩行者が聞き取るのに支障が生じない程度に接近通知音の出力音圧レベルが制御される。
【0025】
図4は、図3に示す補正量により補正された接近通知音の出力音圧レベルと前記特定対象音の検出レベルとの関係を示す説明図である。
図4に示すように特定対象音の検出レベルが小さいときには、前記特定対象音を歩行者が聞き取るのに支障が生じないように大きめの補正量で前記ステップS2で出力を開始させた接近通知音の一定の出力音圧レベルに対し補正を行い、接近通知音の出力音圧レベルが充分小さくなるように制御する。また特定対象音の検出レベルが大きいときには、前記特定対象音を歩行者が聞き取るのに支障が生じない程度に小さめの補正量で前記ステップS2で出力を開始させた接近通知音の一定の出力音圧レベルに対し補正を行い、接近通知音の出力音圧レベルを前記一定の出力音圧レベルから前記小さめの補正量で減少させるように制御する。
【0026】
なお、ステップS5の接近通知音の出力音圧レベルの制御は、前記特定対象音が検出されると、前記特定対象音を歩行者が聞き取るのに支障が生じない程度に一定量、接近通知音の出力音圧レベルを低下させ、あるいはゼロに制御するようにしてもよい。
【0027】
続いて、接近通知音の制御状況をドライバ通知装置6から運転席の液晶モニタ画面に視覚的に表示出力し、あるいは音声アナウンスにより出力し、ドライバに通知する(ステップS6)。
【0028】
以上説明したように、この実施の形態によれば、走行している自車両周辺で集音された周辺音に誘導音、ベル音、警告音、ブザー音や音声アナウンス、サイレン音などの特定対象音が検出されると、それまで出力していた接近通知音の出力音圧レベルを、前記特定対象音を歩行者や障害者が聞き取るのに支障が生じない程度に減少させることができる。
従って、歩行者や障害者が前記接近通知音によって前記特定対象音を聞き取りにくい状況になるのを確実に回避でき、歩行者や障害者の注意喚起や誘導を行うための特定対象音の妨げになることなく、歩行者と車両との間の安全を確保できる車両用接近通知音制御装置を提供できる効果がある。
【0029】
(第2の実施の形態)
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。
図5は、この実施の形態の車両用接近通知音制御装置の構成を示すブロック図である。図5において図1と同一または相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。
この実施の形態の車両用接近通知音制御装置は、前記第1の実施の形態で説明した車両用接近通知音制御装置の構成に加えて歩行者検出部3を備えている。
歩行者検出部3は、自車両周辺の歩行者を検出する。この自車両周辺の歩行者の検出は、例えば画像処理手法あるいはミリ波レーダ装置によりミリ波を照射したときの歩行者と歩行者以外の反射率の違いから歩行者を検出することが可能である。歩行者検出部3は、自車両周辺の歩行者の検出結果を出力する。
接近通知音制御部15は、特定対象音検出部4から出力された特定対象音検出情報、特定対象音情報、特定対象音の音圧レベル情報と、歩行者検出部3から出力された歩行者の検出結果と、自車両の車両情報2の車速をもとに接近通知音を制御する。
【0030】
図6は、この実施の形態の車両用接近通知音制御装置の動作を示すフローチャートである。図6において図2と同一または相当の処理ステップについては同一の符号を付し説明を省略する。
この車両用接近通知音制御装置の動作は、接近通知音制御部15を構成する車両用ECUによる接近通知音制御動作として説明する。図6のフローチャートに示す接近通知音制御を示すプログラムはサブルーチンプログラムとして接近通知音制御部15を構成する車両用ECUのROMに格納されている。
【0031】
この実施の形態の車両用接近通知音制御装置では、ステップS1に続いて歩行者検出部3により自車両周辺に歩行者を検出したか否かを判定する(ステップS11)。そして、歩行者検出部3により自車両周辺に歩行者が検出されているとステップS2へ進み、予め決められている一定の出力音圧レベルの接近通知音を接近通知音出力用スピーカ7から出力する。そして、集音マイクロフォン1により収集した自車両の周辺音の中に誘導音、ベル音、警告音、ブザー音や音声アナウンス、サイレン音などの特定対象音が特定対象音検出部4により検出された否かを判定する(ステップS3)。特定対象音が検出されていると、検出されている特定対象音の検出レベル、入力音圧レベルに応じて接近通知音の出力音圧レベルを制御する(ステップS5)。
ステップS11において自車両周辺に歩行者が検出されていないときには、接近通知音を出力する必要はないことから、ステップS7で接近通知音出力オフ操作を行なった後にこのサブルーチンプログラムをぬける。
なお、この接近通知音出力オフ操作により歩行者なしの場合に無用な報知音をゼロにすることによって、車室内の静粛性が向上できる。
【0032】
以上説明したように、この実施の形態によれば、走行している自車両周辺で歩行者が検出され、かつ収集された周辺音に誘導音、ベル音、警告音、ブザー音や音声アナウンス、サイレン音などの特定対象音が検出されると、それまで出力していた接近通知音の出力音圧レベルを、前記特定対象音を歩行者や障害者が聞き取るのに支障が生じない程度に減少させることができる。従って、歩行者や障害者が前記接近通知音によって前記特定対象音を聞き取りにくい状況になるのを確実に回避でき、歩行者や障害者の注意喚起や誘導を行うための特定対象音の妨げになることなく、歩行者と車両との間の安全を確保できる車両用接近通知音制御装置を提供できる効果がある。
【0033】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図7は、この実施の形態の車両用接近通知音制御装置の構成を示すブロック図である。
図7において図1と同一または相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。
この実施の形態の車両用接近通知音制御装置は、ナビゲーション装置のGPSから取得する自車両の現在位置情報11と、ナビゲーション装置の地図データに対応して予め設定された特定対象音発生場所特定情報12を利用する。
【0034】
特定対象音発生場所特定情報12は、誘導音、音声アナウンスなどの特定対象音が発生する場所を特定する地図データ上の地点情報である。例えば横断歩道や公共交通機関の出入口の歩行者用、利用者用の誘導音、音声アナウンスの場合、このような誘導音、音声アナウンスの出力手段が設けられた横断歩道、公共交通機関の出入口は予め明らかになっていることから、その横断歩道、公共交通機関の出入口の位置する地図データ上の地点を特定する地点情報として予めデータベース化されている。
【0035】
歩行者検出部3は、自車両周辺の歩行者を検出する。この自車両周辺の歩行者の検出は、例えば画像処理手法あるいはミリ波レーダ装置によりミリ波を照射したときの歩行者と歩行者以外の反射率の違いから歩行者を検出することが可能である。歩行者検出部3は、自車両周辺の歩行者の検出結果を出力する。
接近通知音制御部25は、ナビゲーション装置のGPSから取得した自車両の現在位置情報11と特定対象音発生場所特定情報12とをもとに、自車両の現在位置が特定対象音発生場所特定情報12が示す地点に対し、一定距離の範囲内、例えば20メートル以内に接近すると、それまで出力していた接近通知音の出力レベルを抑制するように制御する。
【0036】
図8は、この実施の形態の車両用接近通知音制御装置の動作を示すフローチャートである。図8において図2と同一または相当の処理ステップについては同一の符号を付し説明を省略する。
この車両用接近通知音制御装置の動作は、接近通知音制御部25を構成する車両用ECUによる接近通知音制御動作として説明する。図8のフローチャートに示す接近通知音制御を示すプログラムはサブルーチンプログラムとして接近通知音制御部25を構成する車両用ECUのROMに格納されている。
この実施の形態の車両用接近通知音制御装置では、自車両が接近通知音を発生させる車速で走行し、一定の出力音圧レベルの接近通知音が接近通知音出力用スピーカ7から出力されていると、ナビゲーション装置のGPSから自車両の現在の車両位置情報11を取り込む(ステップS21)。そして、前記取り込んだ時の現在位置情報をもとに、特定対象音発生場所特定情報12を検索し、自車両の現在位置から例えば半径20メートル以内の範囲内に含まれる特定対象音発生場所が存在するか否かを判定する(ステップS22)。
この結果、特定対象音発生場所が存在すると判定した場合には、特定対象音を歩行者が聞き取るのに支障が生じない程度に一定量、接近通知音の出力音圧レベルを低下させ、あるいはゼロに制御する(ステップS5)。
【0037】
なお、ステップS1に続いて歩行者検出部3により自車両周辺で歩行者を検出したか否かを判定し、歩行者検出部3により自車両周辺に歩行者が検出されているとステップS2へ進み、予め決められている一定の出力音圧レベルの接近通知音を接近通知音出力用スピーカ7から出力するように構成してもよい。また、自車両周辺に歩行者が検出されていないときには、接近通知音を出力する必要はないことから、ステップS7で接近通知音出力オフ操作を行なった後にこのサブルーチンプログラムをぬけるように構成してもよい。
なお、この接近通知音出力オフ操作により歩行者なしの場合に無用な報知音をゼロにすることによって、車室内の静粛性が向上できる。
【0038】
以上、説明したようにこの実施の形態によれば、走行している自車両の現在位置が誘導音、音声アナウンスの出力手段が設けられた横断歩道、公共交通機関の出入口に対し一定の距離範囲内に接近すると、それまで出力していた接近通知音の出力音圧レベルを、前記特定対象音を歩行者や障害者が聞き取るのに支障が生じない程度に減少させることが出来る。従って、歩行者や障害者が前記接近通知音によって前記特定対象音を聞き取りにくい状況になるのを確実に回避でき、歩行者や障害者の注意喚起や誘導を行うための特定対象音の妨げになることなく、歩行者と車両との間の安全を確保できる車両用接近通知音制御装置を提供できる効果がある。
【符号の説明】
【0039】
1……集音マイクロフォン(集音手段)、3……歩行者検出部(歩行者検出手段)、4……特定対象音検出部(特定対象音レベル検出手段)、5,15……接近通知音制御部(接近通知音制御手段)、41……特定対象音識別手段、6……ドライバ通知装置(通知手段)、7……接近通知音出力用スピーカ。
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