(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の相において、透過型電子顕微鏡により撮影された電子顕微鏡写真に基づいて測定される、前記第1−1の相の面積(Sa)と前記第1−2の相の面積(Sb)とがなす比(Sa/(Sa+Sb))が、0.05〜0.9である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
前記第1の相において、前記第1−1の相は、前記第1−2の相中に粒子状に分散しており、透過型電子顕微鏡により撮影された電子顕微鏡写真に基づいて測定される、前記第1−1の相からなる粒子の数平均粒子径が10〜200nmである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
全樹脂組成物中の、前記ポリエステル(A)由来の質量(MA)と前記変性水添共役ジエン重合体(B)由来の質量(MB)とがなす比(MA/(MA+MB))が、0.3〜0.7である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0025】
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、第1の相と第2の相とを有する。前記第1の相は、ポリエステル(A)からなる第1−1の相が、変性水添共役ジエン重合体(B)からなる第1−2の相中に分散してなる相である。前記第2の相は、ポリエステル(A)からなる相である。
本発明の樹脂組成物の構成の一例を、模式的に
図1に示す。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、
図1に模式的に示すように、第1の相(10)と第2の相(20)とを有し、かつ、第1の相(10)が第1−1の相(分散相)(30)及び第1−2の相(連続相)(40)から形成され、通常は、第1の相(10)が島相に対応し、第2の相(20)が海相に対応する、“入れ子”構造の相構造を有している。
【0027】
前記第1の相では、ポリエステル(A)からなる分散相(第1−1の相)(30)と、変性水添共役ジエン重合体(B)からなる連続相(第1−2の相)(40)との界面において、ポリエステル(A)と変性水添共役ジエン重合体(B)との反応が起こり、これら分子間で共有結合等が形成された(A)−(B)ポリマーが形成されているものと考えられる。
【0028】
変性水添共役ジエン重合体(B)は、ポリエステルとポリオレフィン等の他の樹脂とのポリマーアロイにおける相容化剤として用いられうる成分である。しかしながら、前記ポリマーアロイにおいては、特に後述する簡便な方法で混練りした場合、各樹脂成分の混練が不充分となることが多い。よって、得られる成形体の耐衝撃性等の物性に劣り、また表層剥離や色むらの発生等の問題が起こることがある。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、ポリエステル(A)と変性水添共役ジエン重合体(B)とを混合してなり、かつ、上記特定の相構造を有し、各相の界面において前記成分(A)と前記成分(B)との反応生成物を含有する。
【0030】
上記特定の相構造を有する本発明の樹脂組成物は、(1)ポリオレフィン等の他の樹脂やポリエステルとの混練性に優れることから、ポリオレフィン等の他の樹脂及びポリエステルから選ばれる少なくとも一種に対するマスターバッチとして好適に用いられる。また(2)ポリエステルとポリオレフィン等の他の樹脂との混合物に対する添加剤のように、二種以上の樹脂と混合して用いられる場合、相容化剤としても良好に働く。
【0031】
したがって、例えば本発明の樹脂組成物を、ポリエステル及びポリオレフィンから選ばれる少なくとも一種に対するマスターバッチ、あるいはポリエステルとポリオレフィンとの相容化剤として用いた場合、簡便な混練方法を採用しても、耐衝撃性等の物性に優れ、また表層剥離や色むらの発生等のない成形体を得ることができる、という効果を奏する。また、上記樹脂組成物からなるマスターバッチにポリエステルのみを加えた場合、本発明の樹脂組成物は、例えば、耐衝撃性改良剤(インパクトモディファイヤ)、透明性改良剤として働く。
【0032】
ここで簡便な混練方法としては、例えば、本発明の樹脂組成物と他の重合体成分(例:ポリオレフィン等の他の樹脂、ポリエステル)との樹脂ペレットの非溶融混合物を、射出成形機に直接投入し、溶融プロセス中で混練りする方法や、同じく前記非溶融混合物を単軸押出機に直接投入し、押出成形を行う方法が挙げられる。簡便な混練方法では、前記非溶融混合物の二軸押出機を用いた溶融プロセス中での混練を省略することができる。
【0033】
また、本発明の樹脂組成物を形成するポリエステル(A)は流動性が高い。したがって、本発明の樹脂組成物を、ポリオレフィン等の他の樹脂、あるいはポリエステルとポリオレフィン等の他の樹脂との混合物に添加することで、本発明の樹脂組成物を形成する変性水添共役ジエン重合体(B)の当該アロイ中での分散性が向上し、得られる成形体の耐衝撃性等の物性が向上すると考えられる。
【0034】
本発明の樹脂組成物の前記第1の相において、前記第1−1の相(分散相)の面積(Sa)と、前記第1−2の相(連続相)の面積(Sb)とがなす比(Sa/(Sa+Sb))は、通常0.05〜0.9、好ましくは0.05〜0.5、より好ましくは0.05〜0.4である。この比が前記範囲にあると、前記第1の相において、ポリエステル(A)からなる分散相が多量に存在するため、得られる成形体の耐衝撃性が向上する。なお、前記面積は透過型電子顕微鏡により撮影された電子顕微鏡写真に基づいて測定され、その測定方法の詳細は実施例に記載したとおりである。
【0035】
本発明の樹脂組成物では、通常は、前記第1の相において、ポリエステル(A)からなる前記第1−1の相が、変性水添共役ジエン重合体(B)からなる前記第1−2の相中に粒子状に分散している。前記第1−1の相からなる粒子の数平均粒子径(Da)は、通常10〜200nm、好ましくは10〜180nm、より好ましくは10〜150nmである。この数平均粒子径が前記範囲にあると、得られる成形体の耐衝撃性が向上する。なお、数平均粒子径は透過型電子顕微鏡により撮影された電子顕微鏡写真に基づいて測定され、その測定方法の詳細は実施例に記載したとおりである。
【0036】
本発明において、全樹脂組成物中の、ポリエステル(A)由来の質量(MA)と変性水添共役ジエン重合体(B)由来の質量(MB)とがなす比(MA/(MA+MB))は、通常0.3〜0.7、好ましくは0.4〜0.7、より好ましくは0.4〜0.6である。この質量比が前記範囲にあると、得られる成形体の耐衝撃性が向上する。前記比の測定方法は、仕込み比である。
【0037】
本発明の樹脂組成物の、JIS K7210に準拠して測定されるメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg;樹脂組成物の含有成分の種類によっては、280℃、10kg)は、通常0.1〜100g/10min、好ましくは0.2〜50g/10min、更に好ましくは0.3〜30g/10minである。なお、MFRの測定条件の詳細は、実施例に記載したとおりである。
【0038】
以下、本発明の樹脂組成物を構成する各成分(原料成分)について説明する。
【0039】
〈ポリエステル(A)〉
ポリエステル(A)としては、例えば、(A1)脂肪族ヒドロキシカルボン酸を縮合成分の主成分とする縮合反応により得られる重合体、(A2)ジカルボン酸とジオールとを縮合成分の主成分とする縮合反応により得られる重合体が挙げられる。ここで「主成分」とは、当該成分割合が全縮合成分100モル%に対して80モル%以上であることを意味する。
【0040】
ポリエステル(A)の重量平均分子量は、通常1,000〜100万、好ましくは5,000〜50万である。ポリエステル(A)の固有粘度[η]は、通常0.1〜2.0dl/g、好ましくは0.3〜1.5dl/g、特に好ましくは0.5〜1.2dl/gである。
【0041】
《重合体(A1)》
重合体(A1)は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を縮合成分の主成分とする縮合反応により得られる重合体である。脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシヘキサン酸等のヒドロキシアルカン酸が挙げられる。また、重合体(A1)としては、例えば、β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトン等の環状ラクトンを開環重合して得られるポリラクトンを挙げることもできる。
【0042】
これらの中でも、生分解性、耐熱性の観点から、重合体(A1)としてはポリ乳酸が好ましい。高い耐熱性を有するポリ乳酸を得るためには、乳酸成分の光学純度が高い方が好ましい。総乳酸成分のうち、L−乳酸(L体)が80モル%以上又はD−乳酸(D体)が80モル%以上含まれることが好ましく、90モル%以上含まれることがより好ましく、95モル%以上含まれることが特に好ましい。
【0043】
ポリ乳酸としては、L体又はD体を縮合成分の主成分として重合して得られる重合体が挙げられる。また、本発明の目的を損わない範囲、例えば縮合成分100モル%に対して、好ましくは20モル%未満で、特に好ましくは10モル%未満で、乳酸以外の他の共重合成分を含有してもよい。また、高い耐熱性を得るために、ポリL−乳酸及びポリD−乳酸の混合物からなるステレオコンプレックスを形成していてもよい。
【0044】
乳酸以外の共重合成分としては、例えば、
シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸等の多価カルボン酸;
エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビスフェノール(例:ビスフェノ−ルA)にエチレンオキシドを付加反応させてなる芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、リテトラメチレングリコール等の多価アルコール;
グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸;
グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−又はγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン;
が挙げられる。
【0045】
他の共重合成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリ乳酸の製造方法としては、従来公知の製造方法が挙げられ、例えば、乳酸を用いた直接重合法、ラクチドを用いた開環重合法(ラクチド法)が挙げられる。
【0046】
ポリ乳酸の平均分子量や分子量分布は、実質的に成形加工が可能であれば、特に限定されるものではない。ポリ乳酸の重量平均分子量は、好ましくは1万〜50万、より好ましくは4万〜45万、特に好ましくは8万〜40万である。なお、ポリ乳酸の重量平均分子量は、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定された、ポリメタクリル酸メチル換算の重量平均分子量である。
【0047】
ポリ乳酸の融点は、特に限定されるものではないが、好ましくは120〜240℃、より好ましくは150〜200℃である。なお、ポリ乳酸の融点は、示差走査熱量測定法(DSC)により測定することができる。
【0048】
《重合体(A2)》
重合体(A2)は、ジカルボン酸とジオールとを縮合成分の主成分とする縮合反応により得られる重合体である。
【0049】
ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸、ダイマー酸等の直鎖状又は分岐鎖状ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸等の環状ジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の直鎖状又は分岐鎖状ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の環状ジオールなどの脂肪族ジオールが挙げられる。ジオールは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエステル(A)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
以上の重合体(A1)及び(A2)のうち、ポリエステル(A)の具体例としては、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート等のポリヒドロキシアルカン酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペートが挙げられる。これらの中でも、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネートが好ましく、入手性の観点からポリエチレンテレフタレートが特に好ましく、生分解性及び耐熱性の観点からはポリ乳酸が特に好ましい。
【0052】
〈変性水添共役ジエン重合体(B)〉
本発明において、変性水添共役ジエン重合体(B)は、相容化剤の前駆体ということができる。変性水添共役ジエン重合体(B)としては、ポリエステル(A)との反応性の観点から、式(i)〜(iii)で表される少なくとも1種の基を有する共役ジエンブロック共重合体の水素添加体(B1)(以下「変性水添共役ジエンブロック共重合体(B1)」ともいう。)が好ましい。
【0054】
式(i)〜(iii)中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又は炭素数1〜100のオルガノシロキシ基を示し、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基を示し、式(i)及び(ii)においては、−SiR
1R
2R
3が、全体で炭素数3〜18のトリアルキルシリル基を示し;R
4は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基を示し、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基を示し;R
5は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基を示し、好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基を示し、特に好ましくはエチレン基を示す。
【0055】
本明細書において、特に言及しない限り、アルキル基の炭素数は1〜20、好ましくは1〜18、更に好ましくは1〜6であり、アリール基の炭素数は6〜20、好ましくは6〜12、更に好ましくは6〜9であり、アラルキル基の炭素数は7〜20、好ましくは7〜13、更に好ましくは7〜10であり、オルガノシロキシ基の炭素数は1〜100、好ましくは1〜50、更に好ましくは5〜30であり、アルキレン基又はアルキリデン基の炭素数は好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜6であり、トリアルキルシリル基の炭素数は好ましくは3〜18、より好ましくは3〜9、更に好ましくは3〜6である。
【0056】
本発明においてオルガノシロキシ基としては、例えば、下記構造が挙げられる。このオルガノシロキシ基の炭素数の上限値は、100であり、好ましくは50であり、更に好ましくは30である。
【0058】
式中、rは、このオルガノシロキシ基の炭素数の上限値が上記要件を充たす限り特に限定されないが、通常0又は正の整数であり、好ましくは0〜5の整数である。式中、Rは、それぞれ独立に有機基を示す。有機基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ポリエーテル基及びフッ素含有基が挙げられる。アルキル基は、直鎖、分枝鎖又は環状であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が挙げられ、メチル基及びエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。アリール基としては、フェニル基が好ましい。ポリエーテル基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基及びポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン基が挙げられる。フッ素含有基としては、例えば、置換基として1つ以上のフッ素原子を有する、アルキル基及びアルケニル基が挙げられ、ここでアルキル基及びアルケニル基は、直鎖、分枝鎖又は環状であってもよい。
【0059】
オルガノシロキシ基の具体例としては、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキシ基、1,1,1,3,3−ペンタエチルジシロキシ基、1,1,1,3,3−ペンタフェニルジシロキシ基が挙げられる。
【0060】
本明細書において、式(i)〜(iii)で表される基を「特定基」ともいい;特定基中の−SiR
1R
2R
3又は−SiR
1R
2−R
5−SiR
1R
2−で表される基を「保護基」ともいい;特定基中の保護基が一部又は全部外れた基を「脱保護基」ともいう。脱保護基の例としては、式(i)及び(iii)で表される基では−NH
2、式(ii)で表される基では−NHR
4である。特定基と脱保護基とを総称して「N原子含有極性基」ともいう。また、N原子含有極性基を有する重合体を「変性重合体」ともいい、重合体の活性点を「重合末端」ともいい、水素添加を「水添」ともいい、水素添加された重合体を「水添重合体」ともいい、重合体において化合物Xに由来する構成単位を「化合物X単位」ともいう。
【0061】
変性水添共役ジエンブロック共重合体(B1)において、N原子含有極性基の含有量は、重合体1分子鎖あたり、好ましくは0.1〜2個、特に好ましくは0.2〜1個である。N原子含有極性基の含有量を「変性量」ともいう。この含有量が前記範囲にあると、ポリエステル(A)と変性水添共役ジエンブロック共重合体(B1)との反応が適度に起こり、溶融混練中に樹脂組成物の固化が起こることもない。なお、N原子含有極性基の含有量(変性量)の測定条件の詳細は、実施例に記載したとおりである。
【0062】
また、本明細書において、シリル保護とは、N原子含有極性基中でN原子にSi原子又はアルキルシリル基が直接結合した状態を指し、N原子のシリル保護率は、下記式により表される値のことを指す。
【0063】
シリル保護率(%)=N原子含有極性基中のN原子に結合したSi原子(個)/[N原子含有極性基中のN原子に結合したSi原子(個)+N原子含有極性基中のN原子に結合した水素原子(個)]×100
保護基がアルキルシリル基である場合、シリル保護率は、下記式により表される。
【0064】
シリル保護率(%)=N原子含有極性基中のN原子に結合したアルキルシリル基(個)/[N原子含有極性基中のN原子に結合したアルキルシリル基(個)+N原子含有極性基中のN原子に結合した水素原子(個)]×100
シリル保護率は、変性水添共役ジエンブロック共重合体(B1)を精製した後、重クロロホルムを溶媒に使用し、400MHz、
1H−NMRスペクトルから算出することができる。
【0065】
変性水添共役ジエンブロック共重合体(B1)が有するN原子含有極性基において、N原子のシリル保護率は、通常70%以上、好ましくは75%以上、特に好ましくは80%以上である。N原子のシリル保護率の上限値は、特に限定されないが、例えば100%であり、また上限値が99%程度であっても実用上問題ない。シリル保護率を前記範囲とするには、例えば、共重合体の製造過程において、後述する方法により脱溶媒を行うことが挙げられる。
【0066】
変性水添共役ジエン重合体(B)の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法におけるポリスチレン換算による重量平均分子量で、通常3万〜200万、好ましくは4万〜100万、更に好ましくは5万〜50万である。なお、重量平均分子量の測定条件の詳細は、実施例に記載したとおりである。
【0067】
変性水添共役ジエン重合体(B)の、JIS K7210に準拠して測定されるメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg)は、通常0.1〜100g/10min、好ましくは0.2〜50g/10min、更に好ましくは0.3〜30g/10minである。なお、MFRの測定条件の詳細は、実施例に記載したとおりである。
【0068】
変性水添共役ジエンブロック重合体(B)は、例えば、特許第3134504号、特許第3360411号、特許第3988495号に記載の方法に従って製造することができる。
【0069】
具体的には、変性水添共役ジエンブロック共重合体(B1)は、例えば、以下の〔A〕〜〔E〕の方法によって特定基を有する共役ジエンブロック共重合体を合成し、続いて前記共重合体に水素添加を行い、続いて脱溶媒等を行うことによって、得ることができる。
【0070】
[特定基を有する共役ジエンブロック共重合体の合成]
まず、下記方法によって特定基を有する共役ジエンブロック共重合体を合成する。
〔A〕共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物と他の単量体とを、式(i)〜(iii)で表される少なくとも1種の基を有する有機アルカリ金属化合物の存在下で反応させ、共役ジエンブロック共重合体を得る方法。
〔B〕共役ジエン化合物と式(i)〜(iii)で表される少なくとも1種の基を有する不飽和単量体とを、必要に応じて前記不飽和単量体以外の他の単量体とともに反応させ、共役ジエンブロック共重合体を得る方法。
〔C〕共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物と他の単量体とを重合して得られたブロック共重合体の活性点に、式(i)〜(iii)で表される少なくとも1種の基を有する重合停止剤を反応させ、共役ジエンブロック共重合体を得る方法。
〔D〕共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物と他の単量体とを重合して得られたブロック共重合体の活性点に、式(i)〜(iii)で表される少なくとも1種の基を有するカップリング剤を反応させ、共役ジエンブロック共重合体を得る方法。
〔E〕共役ジエン化合物、又は共役ジエン化合物と他の単量体とを重合して得られたブロック共重合体の活性点に、式(i)〜(iii)で表される少なくとも1種の基を有する不飽和単量体を反応させ、共役ジエンブロック共重合体を得る方法。
【0071】
共役ジエンブロック共重合体は、通常、溶媒中で共役ジエン化合物及び必要に応じて他の単量体のアニオン重合を行うことにより得られる。溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素溶媒;ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒が挙げられる。溶媒は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
重合温度は、一般に−10〜150℃、好ましくは0〜120℃である。重合圧力は、前記重合温度で単量体及び溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。重合系内の雰囲気は、窒素ガス等の不活性ガスを用いて置換することが好ましい。
【0073】
特定基を有する共役ジエンブロック共重合体を製造するためには、上記〔A〕〜〔E〕の各種方法を単独で行ってもよく、組み合わせて行ってもよい。例えば、特定基を有する有機アルカリ金属化合物の存在下で、共役ジエン化合物と特定基を有する不飽和単量体との重合を行う方法(〔A〕及び〔B〕);特定基を有する有機アルカリ金属化合物の存在下で重合を行い、その後、得られた重合体の活性点に特定基を有する重合停止剤を反応させる方法(〔A〕及び〔C〕);特定基を有する有機アルカリ金属化合物の存在下で重合を行い、その後、得られた重合体の活性点に特定基を有するカップリング剤を反応させる方法(〔A〕及び〔D〕);特定基を有する有機アルカリ金属化合物の存在下で重合を行い、その後、得られた重合体の活性点に特定基を有する不飽和単量体を反応させる方法(〔A〕及び〔E〕);が挙げられる。
【0074】
以下、上記製法にて好ましく用いられる成分を例示する。
《重合開始剤》
上記重合反応において、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、特定基を有する有機アルカリ金属化合物、特定基を有しない有機アルカリ金属化合物が挙げられる。特定基を有する有機アルカリ金属化合物を用いる場合は、上記〔A〕の方法に該当する。
【0075】
有機アルカリ金属化合物の使用量は、共役ジエン化合物及び他の単量体等の単量体の合計100質量部に対して、通常0.02〜15質量部、好ましくは0.03〜5質量部である。
重合開始剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
特定基を有する有機アルカリ金属化合物
特定基(式(i)〜(iii)で表される基)を有する有機アルカリ金属化合物としては、例えば、式(1)で表される有機アルカリ金属化合物が挙げられる。前記化合物を用いると、工業上、実用的なアニオン重合を効果的に行うことができる。
【0078】
式(1)中、Xは式(i)〜(iii)で表される基のいずれかを示し、R
6は炭素数1〜20のアルキレン基又は炭素数1〜20のアルキリデン基を示し、好ましくは炭素数1〜20のアルキレン基を示す。
【0079】
式(1)で表される有機アルカリ金属化合物としては、例えば、
3−リチオ−1−[N,N−ビス(トリメチルシリル)]アミノプロパン、2−リチオ−1−[N,N−ビス(トリメチルシリル)]アミノエタン、3−リチオ−2,2−ジメチル−1−[N,N−ビス(トリメチルシリル)]アミノプロパン、3−リチオ−1−[N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−トリメチルシリル]アミノプロパン、3−リチオ−1−[N−{ジ(tert−ブチル)−メチルシリル}−N−トリメチルシリル]アミノプロパン、3−リチオ−1−[N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−トリメチルシリル]アミノエタン、3−リチオ−1−[N−{ジ(tert−ブチル)−メチルシリル}−N−トリメチルシリル]アミノエタン、3−リチオ−2,2−ジメチル−1−[N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−トリメチルシリル]アミノプロパン、3−リチオ−2,2−ジメチル−1−[N−{ジ(tert−ブチル)−メチルシリル}−N−トリメチルシリル]アミノプロパン等の式(i)で表される基を有する有機アルカリ金属化合物;
【0080】
3−リチオ−1−(N−メチル−N−トリメチルシリル)アミノプロパン、3−リチオ−1−(N−エチル−N−トリメチルシリル)アミノプロパン、2−リチオ−1−(N−メチル−N−トリメチルシリル)アミノエタン、2−リチオ−1−(N−エチル−N−トリメチルシリル)アミノエタン、3−リチオ−1−[N−メチル−N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)]アミノプロパン、3−リチオ−1−[N−メチル−N−{ジ(tert−ブチル)−メチルシリル}]アミノプロパン、3−リチオ−1−[N−エチル−N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)]アミノプロパン、3−リチオ−1−[N−エチル−N−{ジ(tert−ブチル)−メチルシリル}]アミノプロパン、3−リチオ−1−[N−メチル−N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)]アミノエタン、3−リチオ−1−[N−メチル−N−{ジ(tert−ブチル)−メチルシリル}]アミノエタン、3−リチオ−1−[N−エチル−N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)]アミノエタン、3−リチオ−1−[N−エチル−N−{ジ(tert−ブチル)−メチルシリル}]アミノエタン等の式(ii)で表される基を有する有機アルカリ金属化合物;
【0081】
2,2,5,5−テトラメチル−1−(3−リチオプロピル)−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、2,2,5,5−テトラメチル−1−(3−リチオ−2,2−ジメチル−プロピル)−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、2,2,5,5−テトラメチル−1−(2−リチオエチル)−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン等の式(iii)で表される基を有する有機アルカリ金属化合物;
が挙げられる。
【0082】
これらの中でも、3−リチオ−1−[N,N−ビス(トリメチルシリル)]アミノプロパンが好ましい。
【0083】
特定基を有しない有機アルカリ金属化合物
特定基を有しない有機アルカリ金属化合物としては、例えば、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物が挙げられ、これらの中でも有機リチウム化合物が好ましい。有機リチウム化合物としては、例えば、有機モノリチウム化合物、有機ジリチウム化合物、有機ポリリチウム化合物が挙げられる。
【0084】
有機リチウム化合物としては、例えば、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム、シクロヘキシルリチウム、フェニルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、シクロペンタジエニルリチウム、インデニルリチウム、1,1−ジフェニル−n−ヘキシルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、リチウムナフタレン、ブタジエニルジリチウム、イソプロペニルジリチウム、m−ジイソプレニルジリチウム、1,3−フェニレン−ビス−(3−メチル−1−フェニルペンチリデン)ビスリチウム、1,3−フェニレン−ビス−(3−メチル−1,[4−メチルフェニル]ペンチリデン)ビスリチウム、1,3−フェニレン−ビス−(3−メチル−1,[4−ドデシルフェニル]ペンチリデン)ビスリチウム、1,1,4,4−テトラフェニル−1,4−ジリチオブタン、ポリブタジエニルリチウム、ポリイソプレニルリチウム、ポリスチレン−ブタジエニルリチウム、ポリスチレニルリチウム、ポリエチレニルリチウム、ポリ−1,3−シクロヘキサジエニルリチウム、ポリスチレン−1,3−シクロヘキサジエニルリチウム、ポリブタジエン−1,3−シクロヘキサジエニルリチウムが挙げられる。
【0085】
これらの中でも、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、1,3−フェニレン−ビス−(3−メチル−1−フェニルペンチリデン)ビスリチウムが好ましい。
【0086】
《共役ジエン化合物》
上記重合反応において、共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、ミルセン、クロロプレンが挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタジエン及びイソプレンは、重合反応性が高く、工業的に入手し易いので好ましい。共役ジエン化合物は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
《他の単量体》
上記重合反応において、共役ジエン化合物とともに、芳香族ビニル化合物等の他の単量体を用いることができる。他の単量体としては、例えば、特定基を有する不飽和単量体、特定基を有しない不飽和単量体が挙げられる。上記重合反応において、特定基を有する不飽和単量体を用いる場合は、上記〔B〕の方法に該当する。
【0088】
共役ジエンブロック共重合体における芳香族ビニル化合物単位及び共役ジエン化合物単位の含有量の割合(芳香族ビニル化合物単位/共役ジエン化合物単位)は、質量比で、通常0/100〜80/20、好ましくは3/97〜60/40である。これらの含有量は、赤外吸収スペクトル法(モレロ法)により測定される。
【0089】
上記重合反応により得られるブロック共重合体の活性点に、特定基を有する不飽和単量体を反応させることができる。この場合は、上記〔E〕の方法に該当する。特定基を有する不飽和単量体は、有機アルカリ金属由来の活性点のモル数に対して、通常0.01〜100倍モル、好ましくは0.01〜10倍モル、特に好ましくは1.0〜3.0倍モルの割合で添加すると、副反応が少ない点で望ましい。
他の単量体は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
特定基を有する不飽和単量体
特定基(式(i)〜(iii)で表される基)を有する不飽和単量体としては、例えば、式(2)で表される芳香族ビニル化合物、ビス(トリメチルシリル)アミノメチル(メタ)アクリレート、ビス(トリメチルシリル)アミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0092】
式(2)、Xは式(i)又は(ii)で表される基を示し、R
7は直接結合又は炭素数1〜20のアルキレン基若しくは炭素数1〜20のアルキリデン基を示し、好ましくは炭素数1〜20のアルキレン基を示し;nは1〜3の整数、好ましくは1〜2の整数を示す。
【0093】
式(2)で表される不飽和単量体としては、例えば、
p−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレン、p−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノメチル]スチレン、p−[2−{N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ}エチル]スチレン、m−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレン、m−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノメチル]スチレン、m−[2−{N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ}エチル]スチレン、o−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレン、o−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノメチル]スチレン、o−[2−{N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ}エチル]スチレン、p−[N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−トリメチルシリルアミノ]スチレン、p−[N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−トリメチルシリルアミノメチル]スチレン、p−[2−{N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−トリメチルシリルアミノ}エチル]スチレン、p−[N−{ジ(tert−ブチル)−メチルシリル}−N−トリメチルシリルアミノ]スチレン、p−[N−{ジ(tert−ブチル)−メチルシリル}−N−トリメチルシリルアミノメチル]スチレン、p−2−[N−{ジ(tert−ブチル)−メチルシリル}−N−トリメチルシリルアミノ]エチルスチレン、o−[N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−トリメチルシリルアミノ]スチレン、o−[N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−トリメチルシリルアミノメチル]スチレン、o−[2−{N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−トリメチルシリルアミノ}エチル]スチレン、o−[N−{ジ(tert−ブチル)−メチルシリル}−N−トリメチルシリルアミノ]スチレン、o−[N−{ジ(tert−ブチル)−メチルシリル}−N−トリメチルシリルアミノメチル]スチレン、o−2−[N−{ジ(tert−ブチル)−メチルシリル}−N−トリメチルシリルアミノ]エチルスチレン、m−[N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−トリメチルシリルアミノ]スチレン、m−[N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−トリメチルシリルアミノメチル]スチレン、m−[2−{N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−トリメチルシリルアミノ}エチル]スチレン、m−[N−{ジ(tert−ブチル)−メチルシリル}−N−トリメチルシリルアミノ]スチレン、m−[N−{ジ(tert−ブチル)−メチルシリル}−N−トリメチルシリルアミノメチル]スチレン、m−2−[N−{ジ(tert−ブチル)−メチルシリル}−N−トリメチルシリルアミノ]エチルスチレン等の式(i)で表される基を有する芳香族ビニル化合物;
p−(N−メチル−N−トリメチルシリルアミノ)スチレン、p−(N−メチル−N−トリメチルシリルアミノメチル)スチレン、p−[2−(N−メチル−N−トリメチルシリルアミノ)エチル]スチレン、m−(N−メチル−N−トリメチルシリルアミノ)スチレン、m−(N−メチル−N−トリメチルシリルアミノメチル)スチレン、m−[2−(N−メチル−N−トリメチルシリルアミノ)エチル]スチレン、o−(N−メチル−N−トリメチルシリルアミノ)スチレン、o−(N−メチル−N−トリメチルシリルアミノメチル)スチレン、o−[2−(N−メチル−N−トリメチルシリルアミノ)エチル]スチレン、p−[N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−メチルアミノ]スチレン、p−[{N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−メチルアミノ}メチル]スチレン、p−[2−{N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−メチルアミノ}エチル]スチレン、p−[{N−ジ(tert−ブチル)−メチルシリル−N−メチル}アミノ]スチレン、p−[{N−ジ(tert−ブチル)−メチルシリル−N−メチル}アミノメチル]スチレン、p−[{N−ジ(tert−ブチル)−メチルシリル−N−メチル}アミノエチル]スチレン、o−[N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−メチルアミノ]スチレン、o−[{N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−メチルアミノ}メチル]スチレン、o−[2−{N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−メチルアミノ}エチル]スチレン、o−[{N−ジ(tert−ブチル)−メチルシリル−N−メチル}アミノ]スチレン、o−[{N−ジ(tert−ブチル)−メチルシリル−N−メチル}アミノメチル]スチレン、o−[{N−ジ(tert−ブチル)−メチルシリル−N−メチル}アミノエチル]スチレン、m−[N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−メチルアミノ]スチレン、m−[{N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−メチルアミノ}メチル]スチレン、m−[2−{N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−メチルアミノ}エチル]スチレン、m−[{N−ジ(tert−ブチル)−メチルシリル−N−メチル}アミノ]スチレン、m−[{N−ジ(tert−ブチル)−メチルシリル−N−メチル}アミノメチル]スチレン、m−[{N−ジ(tert−ブチル)−メチルシリル−N−メチル}アミノエチル]スチレン等の式(ii)で表される基を有する芳香族ビニル化合物;
が挙げられる。
【0094】
これらの中でも、p−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノメチル]スチレンが好ましい。
【0095】
特定基を有しない不飽和単量体
特定基を有しない不飽和単量体としては、例えば、スチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、1−ビニルナフタリン、2−ビニルナフタリン、2−ビニルアントラセン、9−ビニルアントラセン、p−ビニルベンジルプロピルエーテル、p−ビニルベンジルブチルエーテル、p−ビニルベンジルヘキシルエーテル、p−ビニルベンジルペンチルエーテル、m−N,N−ジエチルアミノエチルスチレン、p−N,N−ジエチルアミノエチルスチレン、p−N,N−ジメチルアミノエチルスチレン、o−ビニルベンジルジメチルアミン、p−ビニルベンジルジメチルアミン、p−ビニルベンジルジエチルアミン、p−ビニルベンジルジ(n−プロピル)アミン、p−ビニルベンジルジ(n−ブチル)アミン、ビニルピリジン、2−ビニルビフェニル、4−ビニルビフェニル等の芳香族ビニル化合物が挙げられる。
【0096】
これらの中でも、スチレン及びtert−ブチルスチレンは、重合反応性が高く、工業的に入手し易く、しかも最終的に得られる変性水添共役ジエンブロック共重合体の成形加工性が良好であることから好ましい。
【0097】
《重合停止剤》
上記重合反応において、得られる共役ジエンブロック共重合体が活性点を有する場合、通常、重合停止剤を用いることにより、その活性点を失活させることが好ましい。重合停止剤としては、例えば、特定基を有する重合停止剤、特定基を有しない重合停止剤が挙げられる。
重合停止剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0098】
特定基を有する重合停止剤
特定基(式(i)〜(iii)で表される基)を有する重合停止剤としては、例えば、特定基を有するシラン化合物、特に式(3)で表されるシラン化合物が挙げられる。特定基を有する重合停止剤を用いる場合は、上記〔C〕の方法に該当する。
【0099】
R
8(4−m−n)Si(OR
9)
mX
n (3)
式(3)中、R
8は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又は炭素数1〜100のオルガノシロキシ基であり、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基である。R
8が複数ある場合は、各R
8は同一の基でも異なる基でもよい。R
9は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基であり、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基である。R
9が複数ある場合は、各R
9は同一の基でも異なる基でもよい。
【0100】
Xは式−A−X’(式中、Aは炭素数1〜20のアルキレン基であり、X’は式(i)〜(iii)で表されるいずれかの基である。)で表される基である。Xが複数ある場合は、各Xは同一の基でも異なる基でもよい。
mは1、2又は3であり、nは1、2又は3である。
m及びnの和は2〜4の整数である。
【0101】
共役ジエンブロック共重合体の活性点に反応させる際に用いる特定基を有する重合停止剤の量は、共役ジエンブロック共重合体に対して、通常10モル%以上、好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上である。また、重合停止剤の分子量にもよるが、共役ジエンブロック共重合体に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.02質量%以上である。かかる範囲とすることにより、最終的に得られる変性水添共役ジエンブロック共重合体と、各種重合体や充填剤等との親和性を充分に向上させることができる。
【0102】
一般式(3)で表されるシラン化合物としては、例えば、
N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルジメチルエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルジメチルメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルジメチルエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルジメチルメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン等の式(i)で表される基を有するシラン化合物;
【0103】
N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピルジメチルエトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノエチルトリメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノエチルトリエトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノエチルジメチルエトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノエチルジメチルメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノエチルメチルジエトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノエチルメチルジメトキシシラン等の式(ii)で表される基を有するシラン化合物;
【0104】
1−(3−トリメトキシシリルエチル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−(3−トリエトキシシリルエチル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−(3−トリメチルジメトキシシリルエチル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−(3−トリメチルジエトキシシリルエチル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−(3−トリジメチルメトキシシリルエチル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−(3−トリジメチルエトキシシリルエチル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−(3−トリメチルジメトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−(3−トリメチルジエトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−(3−トリジメチルメトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−(3−トリジメチルエトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン等の式(iii)で表される基を有するシラン化合物;
が挙げられる。
【0105】
これらの中でも、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタンが好ましい。
【0106】
特定基を有しない重合停止剤
特定基を有しない重合停止剤としては、例えば、水素;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等のアルコール類;塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、塩化ブチル、塩化ベンジル、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、臭化ブチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル等のハロゲン化アルキル;が挙げられる。これらの中でも、水素が好ましい。
【0107】
《カップリング剤》
重合が実質的に完了した時点で、重合末端に特定基を有するカップリング剤を反応させることにより、カップリング反応とともに重合体に特定基を導入することができる。カップリング反応において、反応温度は、通常0〜120℃、好ましくは50〜100℃であり、反応時間は、通常1〜30分、好ましくは5〜20分である。
カップリング剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0108】
特定基を有するカップリング剤
特定基を有するカップリング剤としては、例えば、上記式(3)において、m=2又は3であり、式(i)〜(iii)で表される基を有するアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0109】
特定基を有しないカップリング剤
特定基を有しないカップリング剤としては、例えば、ハロゲン化合物、エポキシ化合物、カルボニル化合物、ポリビニル化合物が挙げられる。上記カップリング剤として、具体的には、メチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、ジブロモエタン、エポキシ化大豆油、ジビニルベンゼン、テトラクロロ錫、ブチルトリクロロ錫、テトラクロロゲルマニウム、ビス(トリクロロシリル)エタン、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、ジメチルテレフタル酸、ジエチルテレフタル酸、ポリイソシアネートが挙げられる。
【0110】
《重合体ブロックの構成》
共役ジエンブロック共重合体は、共役ジエン化合物又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物等の他の単量体とをブロック重合して得られたものであればよいが、得られる組成物の物性及び成形加工性の点から、共役ジエンブロック共重合体は、下記(A)〜(D)の重合体ブロックの中から選ばれた2種以上の重合体ブロックを含むブロック共重合体であることが好ましい。
(A)芳香族ビニル化合物単位量が80質量%以上である芳香族ビニル重合体ブロック。
(B)共役ジエン化合物単位量が80質量%以上であって、且つ1,2結合含量及び3,4結合含量の合計が30モル%未満の共役ジエン重合体ブロック。
(C)共役ジエン化合物単位量が80質量%以上であって、且つ1,2結合含量及び3,4結合含量の合計が30〜90モル%の共役ジエン重合体ブロック。
(D)共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのランダム共重合体ブロックであって、上記(A)〜(C)以外の重合体ブロック。
【0111】
重合体ブロックが2種以上の化合物から形成された共重合体ブロックであるときは、樹脂組成物の目的に応じて、ランダム型、又は芳香族ビニル化合物単位若しくは共役ジエン化合物単位の含有量が重合体ブロック中で連続的に変化するいわゆるテーパー型にすることができる。
【0112】
上記「(A)〜(D)の重合体ブロックの中から選ばれた2種以上の重合体ブロックを含むブロック共重合体」としては、例えば、(A)−(B)、(A)−(C)、(A)−(D)、(B)−(C)、(B)−(D)、[(A)−(B)]x―Y、[(A)−(C)]x―Y、[(A)−(D)]x―Y、[(B)−(C)]x―Y、[(B)−(D)]x―Y、[(B)−(A)]x―Y、[(C)−(A)]x―Y、[(D)−(A)]x―Y、(A)−(B)−(D)、(A)−(B)−(A)、(A)−(C)−(A)、(A)−(C)−(B)、(A)−(D)−(A)、(B)−(A)−(B)、[(A)−(B)−(D)]x―Y、[(A)−(B)−(A)]x―Y、[(A)−(C)−(A)]x―Y、[(A)−(C)−(B)]x―Y、[(A)−(D)−(A)]x―Y、[(B)−(A)−(B)]x―Y、(A)−(B)−(A)−(B)、(B)−(A)−(B)−(A)、[(A)−(B)−(A)−(B)]x―Y、(A)−(B)−(A)−(B)−(A)、[(A)−(B)−(A)−(B)−(A)]x―Y、(B)−(A)−(B)−(D)、(B)−(A)−(B)−(A)、(B)−(A)−(C)−(A)、(B)−(A)−(C)−(B)、(B)−(A)−(D)−(A)、[(C)−(A)−(B)−(D)]x―Y、[(C)−(A)−(B)−(A)]x―Y、[(C)−(A)−(C)−(A)]x―Y、[(C)−(A)−(C)−(B)]x―Y、[(C)−(A)−(D)−(A)]x―Y、(C)−(A)−(B)−(A)−(B)、(C)−(B)−(A)−(B)−(A)、(C)−(A)−(B)−(A)−(C)、[(C)−(A)−(B)−(A)−(B)]x―Y、(C)−(A)−(B)−(A)−(B)−(A)、[(C)−(A)−(B)−(A)−(B)−(A)]x―Yが挙げられる(但し、x≧2であり、Yはカップリング剤の残基である。)。ペレット形状にする場合は、共役ジエンブロック共重合体の外側のブロック成分として少なくとも1種の重合体ブロック(A)及び/又は少なくとも1種の重合体ブロック(B)を含むことが好ましい。
【0113】
本明細書において、ビニル結合含量とは、水添前の重合体ブロック中に1,2結合、3,4結合及び1,4結合の結合様式で組み込まれている共役ジエン化合物単位のうち、1,2結合及び3,4結合で組み込まれている単位の合計割合(モル%基準)である。ビニル結合含量(1,2結合含量及び3,4結合含量)は、赤外吸収スペクトル法(モレロ法)によって求めることができる。
【0114】
共役ジエンブロック共重合体のミクロ構造、即ち1,2結合含量及び3,4結合含量は、ルイス塩基を上記炭化水素溶媒と共に用いることにより制御することができる。
【0115】
ルイス塩基としては、例えば、エーテル及びアミン等が挙げられ、具体的には、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル、ブチルエーテル、高級エーテル、テトラヒドロフルフリルメチルエーテル、テトラヒドロフルフリルエチルエーテル、1,4−ジオキサン、ビス(テトラヒドロフルフリル)ホルマール、2,2−(ビステトラヒドロフルフリル)プロパン、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールエチルプロピルエーテル等のポリアルキレングリコールのエーテル誘導体;テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、トリブチルアミン等の第3級アミンが挙げられる。
【0116】
[水素添加]
特定基を有する共役ジエンブロック共重合体の水素添加の方法、反応条件については特に限定はなく、例えば、20〜150℃、0.1〜10MPaの水素加圧下、水添触媒の存在下で行われる。
【0117】
共役ジエンブロック共重合体の水添率は、水添触媒の量、水添反応時の水素圧力又は反応時間等を変えることにより、任意に選定することができる。水添率は、耐候性が向上することから、共役ジエン化合物由来の脂肪族二重結合の通常10%以上、好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上、特に好ましくは95%以上である。なお、水添率の測定条件の詳細は、実施例に記載したとおりである。
【0118】
水添触媒としては、通常、元素周期表Ib、IVb、Vb、VIb、VIIb、VIII族元素のいずれかを含む化合物、例えば、Ti、V、Co、Ni、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Pt元素を含む化合物を用いることができる。
【0119】
水添触媒として具体的には、例えば、Ti、Zr、Hf、Co、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Re等を含むメタロセン化合物、Pd、Ni、Pt、Rh、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一触媒、Ni、Co等の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機アルミニウム等の還元剤とを組み合わせた均一チーグラー型触媒、Ru、Rh等の有機金属化合物又は錯体、及び水素を吸蔵させたフラーレンやカーボンナノチューブが挙げられる。
【0120】
これらの中でも、Ti、Zr、Hf、Co、Niのいずれかを含むメタロセン化合物は、不活性有機溶媒中、均一系で水添反応をできる点で好ましい。更に、Ti,Zr,Hfのいずれかを含むメタロセン化合物が好ましい。特にチタノセン化合物とアルキルリチウムとを反応させた水添触媒は、安価で工業的に特に有用な触媒であるので好ましい。
【0121】
具体的な例として、例えば、特開平1−275605号公報、特開平5−271326号公報、特開平5−271325号公報、特開平5−222115号公報、特開平11−292924号公報、特開2000−37632号公報、特開昭59−133203号公報、特開昭63−5401号公報、特開昭62−218403号公報、特開平7−90017号公報、特公昭43−19960号公報、特公昭47−40473号公報に記載の水添触媒が挙げられる。
水添触媒は1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0122】
[脱溶媒]
脱溶媒の方法は特に限定されず、例えば、スチームストリッピング法、フラッシュ蒸発法、ドラムドライヤ法が挙げられる。水添共役ジエンブロック共重合体中の溶媒残量は、通常3質量%以下、好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。
【0123】
シリル保護率の高い重合体を得るには、例えば、上記水添で得られた水添共役ジエンブロック共重合体を含む反応液(以下、単に「反応液」ともいう。)から、当該反応液とアルカリ水溶液との混合液を,スチームと接触させることにより、溶媒を除去する方法(以下「スチームストリッピング法(a)」ともいう。)によって溶媒を除去することが好ましい。
【0124】
スチームストリッピング法(a)は、上記反応液及びアルカリ水溶液の混合液と、水蒸気等のスチームとを接触させることにより、溶媒を除去する方法である。スチームストリッピング法(a)には、工業的操作性に優れるといった利点がある。
【0125】
上記反応液とアルカリ水溶液との混合比としては、上記反応液100質量部に対して、アルカリ水溶液が通常10〜10000質量部、好ましくは20〜2000質量部である。系内(反応容器内の液相、すなわち上記混合液)の温度は、通常80〜200℃、好ましくは90〜130℃である。
【0126】
上記反応液と混合されるアルカリ水溶液は、以下の条件を充たすことが好ましい:すなわち、アルカリ水溶液の80℃におけるpHは、好ましくは8以上、より好ましくは8〜12、特に好ましくは8〜11である。pHが前記範囲にあるアルカリ水溶液を用いると、シリル保護率が高い重合体を得ることができる。なお、pHはガラス電極法により測定される。上記反応液と混合されるアルカリ水溶液の温度は、好ましくは50〜150℃、より好ましくは60〜140℃、特に好ましくは70〜130℃である。
【0127】
アルカリ水溶液は、アルカリ化合物を添加してpHをアルカリ性に調整した水溶液であり、アルカリ化合物としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、アンモニア、水酸化アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸二ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化銅、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、アルミン酸ナトリウム、硫化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、炭酸カリウム、亜硝酸カルシウム、水酸化マグネシウム、亜硫酸ナトリウム、炭酸カリウム、亜硝酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ピロリン酸ナトリウム、三リン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、水酸化リチウムが挙げられる。これらの中でも、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムが好ましい。
【0128】
アルカリ化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
スチームによる接触処理としては、脱溶媒槽中にて上記反応液とアルカリ水溶液とを混合し、続いて、得られた混合液とスチームとを接触させてもよく、脱溶媒槽中のアルカリ水溶液をスチームと接触させながら、上記反応液を脱溶媒槽に加えてもよく、その態様は特に限定されない。
【0129】
スチーム温度は、通常110〜420℃、好ましくは110〜200℃である。スチームストリッピングによる処理時間は、通常10分〜8時間、好ましくは30分〜6時間である。このような条件で接触処理を行うと、シリル保護率が高い重合体を得ることができるといった観点から好ましい。
【0130】
スチームストリッピング法(a)においては、上記混合液をスチームと接触させた後に、乾燥工程を設けることが好ましい。ここでの乾燥温度は、通常80〜260℃、好ましくは100〜220℃である。乾燥工程には、例えば、熱ロールを用いることができる。
【0131】
〈官能基含有重合体(C)〉
本発明の樹脂組成物は、例えば、官能基Xを有するオレフィン重合体(C−1)、及び官能基Xを有するアクリル重合体(C−2)から選ばれる少なくとも1種(以下「官能基含有重合体(C)」ともいう。)をさらに含有してもよい。官能基Xとは、カルボキシ基、酸無水物基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシ基、イソシアネート基及びオキサゾリン基から選ばれる少なくとも1種である。
【0132】
樹脂組成物の成分として官能基含有重合体(C)を用いることにより、各成分の混練時にポリエステル(A)と官能基含有オレフィン重合体(C)の官能基とが反応して溶融粘度を増大させるとともに、ポリエステルとポリオレフィン等の他の樹脂との相容性を増大させることができる。
【0133】
本発明の樹脂組成物において、官能基含有重合体(C)は、通常は変性水添共役ジエン重合体(B)とともに、第1−2の相を形成する。これらは増粘剤として作用するため、前記樹脂組成物からなるマスターバッチ又は相容化剤の取扱性の観点から好ましい。
【0134】
本発明の樹脂組成物において、官能基含有重合体(C)の含有量は、ポリエステル(A)100質量部に対して、好ましくは20〜200質量部、より好ましくは40〜150質量部である。この含有量が前記範囲にあると、相構造の形成の観点から好ましい。
【0135】
官能基Xを有するオレフィン重合体(C−1)、及び官能基Xを有するアクリル重合体(C−2)は、例えば、国際公開第08/023758号パンフレット記載の方法に従って製造することができる。
【0136】
《官能基Xを有するオレフィン重合体(C−1)》
本明細書において「官能基Xを有するオレフィン重合体」とは、オレフィン重合体をベースポリマーとし、このベースポリマーに1種又は2種以上の官能基Xが導入された重合体を意味する。
【0137】
官能基Xを有するオレフィン重合体(C−1)の具体例としては、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体をNa、Zn、Mg等の金属イオンにより一部中和してなるアイオノマー、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体のけん化物、エチレン・(メタ)アクリロイル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル・無水マレイン酸共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、エポキシ変性エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル・グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン・ビニルイソシアネート共重合体、ヒドロキシ変性ポリエチレン、ヒドロキシ変性ポリプロピレン、ヒドロキシ変性エチレン・プロピレン共重合体が挙げられる。
【0138】
官能基Xを有するオレフィン重合体(C−1)の中でも、成形加工性、耐衝撃性、柔軟性改良効果が大きいという理由から、エポキシ基、酸無水物基を含有する重合体が好ましく、エポキシ基含有重合体としてはエチレン・グリシジルメタクリレート共重合体、酸無水物基含有重合体としては無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが更に好ましい。
【0139】
官能基Xを有するオレフィン重合体(C−1)は、具体的には、官能基Xを平均0.01〜1,000(個/1分子)有している重合体であることが好ましく、平均0.1〜500(個/1分子)有している重合体であることが更に好ましい。官能基Xの数が前記数値範囲の下限値以上であると良好な相容化効果が得られ、得られる成形体の耐衝撃性及び柔軟性が向上する傾向にある。官能基Xの数が前記数値範囲の上限値以下であると、樹脂組成物の流動性、ひいては成形性が向上する傾向にある。
【0140】
なお、上記官能基Xがエポキシ基である場合を一例として挙げると、エポキシ基の個数は、例えばJIS K 7236に基づく過塩素酸法によりエポキシ当量として測定することができる。
【0141】
《官能基Xを有するアクリル重合体(C−2)》
本明細書において「官能基Xを有するアクリル重合体」とは、アクリル重合体をベースポリマーとし、このベースポリマーに1種又は2種以上の官能基Xが導入された重合体を意味する。
【0142】
官能基Xを有するアクリル重合体(C−2)は、具体的には、官能基Xを平均0.01〜1,000(個/1分子)有している重合体であることが好ましく、平均0.1〜500(個/1分子)有している重合体であることが更に好ましい。官能基Xの数が前記数値範囲の下限値以上であると良好な相容化効果が得られ、得られる成形体の耐衝撃性及び柔軟性が向上する傾向にある。官能基Xの数が前記数値範囲の上限値以下であると、樹脂組成物の流動性、ひいては成形性が向上する傾向にある。
【0143】
〈その他成分〉
本発明の樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、老化防止剤、有機顔料、無機顔料、安定剤、帯電防止剤、難燃剤、結晶核剤、発泡核剤、可塑剤から選ばれる少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
【0144】
《発泡核剤》
本発明の樹脂組成物には、発泡核剤(造核剤)を含有させてもよい。
発泡核剤としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、シリカ、チタニア等の無機化合物の粉末が挙げられる。これらの発泡核剤を樹脂組成物に含有させることにより、発泡セル径を容易に調整することができ、適度な柔軟性等を有する発泡成形体を得ることができる。
【0145】
発泡核剤の粒径は、好ましくは2〜50μm、より好ましくは5〜20μmである。発泡核剤の粒径が前記範囲の下限値以上であると、発泡核剤としての効果が得られ易く、発泡セル径が小さくなり、発泡セル径が均一になる傾向にある。発泡核剤の粒径が前記範囲の上限値以下であると、発泡セル径及び発泡セル数が適正となり、発泡成形体のクッション性が優れる傾向にある。
【0146】
発泡核剤の含有割合は、樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0〜20質量部、より好ましくは0.01〜15質量部、更に好ましくは0.1〜10質量部である。なお、発泡核剤は、例えば、ポリプロピレン樹脂等のマスターバッチとして成形機に添加することも好ましい。
【0147】
〔樹脂組成物の製造方法〕
本発明の樹脂組成物では、以下のように特定の相構造が形成されると推定される。すなわち、ポリエステル(A)と変性水添共役ジエン重合体(B)との溶融混練時間を増やすほど、これら成分(A)と成分(B)との反応が進み、共有結合が形成され、次第に成分(A)からなる海相と、成分(B)からなる島相が形成されていき、また、成分(B)からなる島相中には、当該島相自体を連続相とみた場合、さらに成分(A)からなる分散相が形成されていく。
【0148】
具体的には、成分(A)及び成分(B)の溶融混練時間を増やすと、成分(A)からなる相と成分(B)からなる相との界面で(A)−(B)ポリマーの生成反応が起こり、続いて、前記(A)−(B)ポリマー及び成分(A)の一部がこの界面近辺から成分(B)中に引き抜かれ、第1−1の相を形成すると考えられる。
【0149】
このような特定の相構造を得るために、本発明の樹脂組成物は、以下のような条件で製造することができる。ただし、本発明の樹脂組成物の製造方法は、以下に限定されるものではない。
【0150】
[混練温度]
混練温度は、ポリエステル(A)と変性水添共役ジエン重合体(B)との反応速度を向上させる観点から、通常150〜350℃、好ましくは160〜330℃、更に好ましくは180〜300℃であることが好ましい。
【0151】
[せん断条件]
せん断速度は、ポリエステル(A)と変性水添共役ジエン重合体(B)との反応機会を増加させる観点から、通常100〜20000s
−1、好ましくは150〜15000s
−1、更に好ましくは200〜10000s
−1である。また、単位時間当たりの混練機の電動機消費電力量を単位時間当たりの混練量で割った比エネルギーは、通常0.1〜10kWh/kg、好ましくは0.1〜8kWh/kg、更に好ましくは0.1〜6kWh/kgである。
【0152】
[混練方法]
先ず、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等の従来公知の混練機及びそれらを組み合わせてなる混練機を用いて、ポリエステル(A)と変性水添共役ジエン重合体(B)と、必要に応じて上記その他成分等のその他の任意成分とを混練りし、混合物を得る。混練にあたり、各成分を一括混練りする方法や、ある成分を混練りした後、残りの成分を添加して混練りする多段分割混練法を採用することができる。
【0153】
本発明の樹脂組成物の製造には二軸押出機が特に好ましく、同方向回転形式、異方向回転形式のどちらでも好適に用いることができる。上記混練機を組み合わせてなる混練機としては、例えば、二軸押出機と二軸押出機とを連結したもの、二軸押出機と単軸押出機とを連結したもの、連続混練機と二軸押出機とを連結したものが挙げられる。
【0154】
なお、混練機として押出機を用いる場合、L/D(押出機のスクリューの有効長(L)とスクリューの直径(D)との比)は、30〜80が好ましい。混練用セグメントとしては、汎用のニーディングディスクセグメント、ロータセグメント、VCMT(VARIOUS Clearance Mixing Technology)ロータセグメント、ツイストニーディングセグメント、BMS(Backward Mixing Single flight screw)セグメント等が使用できる。
【0155】
なお、上記の押出機メーカーとしては、例えば、日本製鋼所(TEX)、神戸製鋼所(KTX)、ウェルナー(ZSK)、池貝(PCM)、東芝機械(TEM)が挙げられる。連続混練機としては、例えば、神戸製鋼所(NCM,LCM)が挙げられる。
【0156】
また、得られた混合物を単軸押出機又は二軸押出機に供給し、上記と同様の混練条件で再度溶融混練を行うことができる。例えば、上記混練機を用いて、ポリエステル(A)と変性水添共役ジエン重合体(B)とその他の任意成分との混合物を上述した混練条件で溶融混練する工程を行い、必要に応じて前記工程を複数回繰り返して行うことが好ましい。
【0157】
なお、溶融混練前には、ヘンシェルミキサー等を用いて原料成分の予備混合を行ってもよい。また、溶融混練の前及び/又は後には、原料成分又は混練混合物を必要に応じて、除湿乾燥機、熱風乾燥機等を用いて、乾燥温度が通常50℃以上、好ましくは60〜150℃で、乾燥時間が通常2時間以上、好ましくは3〜8時間の条件で乾燥することが好ましい。
【0158】
変性水添共役ジエン重合体(B)は、ポリエステル(A)100質量部に対して、通常40〜230質量部、好ましくは60〜150質量部の量で用いられる。成分(A)及び(B)の使用量が前記範囲にあると、相構造の形成の観点から好ましい。また、官能基含有重合体(C)を用いる場合、当該成分(C)は、ポリエステル(A)100質量部に対して、好ましくは20〜200質量部、より好ましくは40〜150質量部の量で用いられる。成分(A)及び(C)の使用量が前記範囲にあると、相構造の形成の観点から好ましい。
【0159】
本発明では、バッチ式方法により上述の特定の相構造を有する樹脂組成物を製造することも可能であるが、押出機等を用いた連続式方法により上述の特定の相構造を有する樹脂組成物を製造する方法は、バッチ式方法に比べると樹脂組成物の空気等による劣化が少ない分好ましい。もっとも、押出機等を用いた連続式方法では、一度に長時間かけて溶融混練することができないため、特定の相構造を形成するには、上述のように比エネルギーの大きい条件での充分な溶融混練又は2度以上の溶融混練を行うことが好ましい。
【0160】
〔マスターバッチ、相容化剤及び成形体〕
以上で説明した、本発明の特定の相構造を有する樹脂組成物は、ポリオレフィン等の他の樹脂及びポリエステルから選ばれる少なくとも一種と混合されるマスターバッチとして、好適に用いることができる。また、ポリエステルとポリオレフィン等の他の樹脂との混合物に対する添加剤のように、二種以上の樹脂と混合して用いられる場合、ポリエステル及び前記他の樹脂に対する相容化剤としての効果もある。本発明の樹脂組成物を用いることにより、上述した簡便な方法でポリエステルとポリオレフィン等の他の樹脂とのポリマーアロイを製造する方法においても、各樹脂成分の混練が充分進行する。したがって、耐衝撃性等の物性に優れ、表層剥離や色むらのない樹脂成形体を得ることができる。
【0161】
本発明の成形体としては、上述の樹脂組成物をマスターバッチとして用いた場合は、上述の樹脂組成物と、ポリオレフィン及びポリエステルから選ばれる少なくとも1種との混合物を成形して得られる成形体が挙げられる。また、上述の樹脂組成物を相容化剤として用いた場合は、上述の樹脂組成物と、ポリエステルと、ポリオレフィンとの混合物を成形して得られる成形体が挙げられる。
【0162】
〈ポリオレフィン〉
ポリオレフィンとしては、例えば、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン樹脂;ランダムタイプ、ブロックタイプ又はホモタイプ等のポリプロピレン樹脂(PP);エチレン・プロピレン共重合体(EPM)、エチレン・1−ブテン共重合体(EBM)、エチレン・ヘキセン共重合体(EHM)、エチレン・オクテン共重合体(EOM)等のエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体;プロピレン・1−ブテン共重合体(PBM)等のプロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体;エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体(EPBM)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・1−ブテン・ジエン共重合体(EBDM)等のエチレン系三元共重合体;ポリ1−ブテン(PB)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリブタジエン(PBD)が挙げられる。
ポリオレフィンは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0163】
〈ポリエステル〉
ポリエステルとしては、上述のポリエステル(A)にて説明したものを用いることができ、具体例としては、例えば、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体、ポリプロピレンテレフタレート/イソフタレート共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体、ポリヘキサメチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体、ポリシクロヘキサン−1,4−ジメチロールテレフタレート/イソフタレート共重合体、ポリネオペンチルテレフタレート/イソフタレート共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンサクシネートが挙げられる。これらの中でも、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンサクシネートが特に好ましい。
ポリエステルは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0164】
〈組成〉
ポリマーアロイの製造において、本発明の樹脂組成物と他の重合体成分との配合比は、特に限定されないが、例えば以下のとおりに設定することができる。本発明の樹脂組成物の配合量は、他の重合体成分の合計100質量部に対して、通常1〜100質量部、好ましくは2〜70質量部である。他の重合体成分としては、例えば、ポリオレフィン等の他の樹脂、ポリエステルが挙げられる。
【0165】
他の重合体成分としてポリエステル及びポリオレフィンを併用する場合、配合比(ポリエステル:ポリオレフィン、質量比)は、通常1:99〜99:1、好ましくは1:99〜50:50である。なお、本発明の樹脂組成物にもポリエステル(A)由来の成分が含まれるが、ポリエステル及びポリオレフィンを併用する場合の前記配合比の設定において、ポリエステルには本発明の樹脂組成物中のポリエステル(A)由来の成分を含めるものとする。
【0166】
本発明の樹脂組成物と他の重合体成分との混合物(ポリマーアロイ)は、射出成形、二色射出成形、押出成形、インフレーション成形、回転成形、プレス成形、中空成形、サンドイッチ成形、圧縮成形、真空成形、パウダースラッシュ成形、積層成形、カレンダー成形、ブロー成形等の公知の方法で成形することが可能である。
【0167】
〈発泡成形〉
本発明の樹脂組成物と他の重合体成分との混合物は、発泡剤を用いて発泡成形してもよい。発泡剤としては、例えば、化学発泡剤、物理発泡剤を用いることができる。発泡剤は製造法に応じて選択することができる。発泡剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0168】
《化学発泡剤》
化学発泡剤としては、例えば熱分解型発泡剤、中空粒子型発泡体が挙げられる。
【0169】
熱分解型発泡剤としては、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミドなどのニトロソ系発泡剤;アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、バリウムアゾジカルボキシレートなどのアゾ系発泡剤;p,p−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、p−トルエンスルホニリルセミカルバジドなどのスルホヒドラジド系発泡剤;トリヒドラジノトリアジンなどのトリアジン系発泡剤;5−フェニルテトラゾール、アゾビステトラゾールジグアニジン、アゾビステトラゾールアミノグアニジンなどのテトラゾール系発泡剤;炭酸水素ナトリウムなどの無機系発泡剤が挙げられる。熱分解型発泡剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0170】
熱分解型発泡剤の添加量は、特に限定されないが、例えば、熱分解型発泡剤を除く樹脂組成物100質量部に対して0.1〜100質量部である。
【0171】
中空粒子型発泡剤とは、膨張剤を内包し、熱可塑性樹脂を外殻成分として有する熱膨張性微小球である。中空粒子型発泡剤を構成する膨張剤としては、例えば、上記熱分解型発泡剤と同様の発泡剤が挙げられる。中空粒子型発泡剤に占める膨張剤の割合は5〜30質量%が好ましい。中空粒子型発泡剤を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリレート、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、スチレン系モノマー、酢酸ビニル、ブタジエン、クロロプレン、ビニルピリジンなどからなるホモポリマー又はコポリマーなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアヌレートなどの架橋剤で架橋又は架橋可能にされてもよい。中空粒子型発泡剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中空粒子型発泡剤(未膨張の微小球状態)の質量平均粒子径は、1〜100μmであることが好ましい。
【0172】
中空粒子型発泡剤の添加量は、特に限定されないが、例えば、中空粒子型発泡剤を除く樹脂組成物100質量部に対して0.1〜100質量部である。
【0173】
《物理発泡剤》
物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン及びペンタンなどの脂肪族炭化水素;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;クロロジフルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、クロロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、トリフルオロエタン、ジクロロテトラフロオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、クロロペンタフルオロエタン、パーフルオロシクロブタンなどのハロゲン化炭化水素;二酸化炭素、窒素、空気などの無機ガス;水が挙げられる。また、超臨界流体を用いて発泡体を成形することもできる。超臨界流体としては、例えば、窒素、二酸化炭素の超臨界流体が挙げられる。物理発泡剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0174】
物理発泡剤の添加量は、特に限定されないが、例えば、物理発泡剤を除く樹脂組成物100質量部に対して0.1〜100質量部である。
【0175】
発泡剤の中でも、比較的低い温度及び圧力で超臨界状態となること、溶融状態の樹脂組成物中への含浸速度が速く、また高濃度の混入が可能なために、発泡成形に適しており、均一な気泡を得ることができることから、超臨界二酸化炭素が好ましい。
【0176】
〈発泡成形体の製造方法〉
発泡方法は特に限定されず、バッチ法又は連続法のいずれの方法であってもよい。具体的には、押出成形、射出成形、プレス成形等の成形方法によって発泡させることができる。
【0177】
本発明の樹脂組成物と他の重合体成分との混合物からなる成形体は、必要に応じて、発泡、延伸、接着、印刷、塗装、メッキ等の加工をしてもよい。これにより、耐衝撃性、強度、成形加工性及び接着性のバランスに優れ、また外観に優れた(表層剥離、色むら等のない)成形体を得ることができる。
成形体としては、例えば、食品包装容器、各種トレー、シート、チューブ、フィルム、繊維、積層物、コーティングやプリント基板の電気・電子部品、コンピュータ等のOA機器、家電の筺体、自動車内外装材、外板部品、精密部品、建材等の各種工業部品が挙げられる。
【実施例】
【0178】
以下、本発明の一実施態様を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限を受けるものではない。なお、実施例及び比較例中の部及び%は、特に断らない限り質量基準である。
【0179】
〈(変性)水添共役ジエンブロック共重合体の物性値〉
(変性)水添共役ジエンブロック共重合体の物性値は、以下の方法で測定した。
【0180】
(1)ビニル結合含量等
ビニル結合含量(1,2結合含量)は、赤外吸収スペクトル法(モレロ法)によって求めた。ただし、ビニル結合含量の単位は、モル%基準である。スチレン単位の含有量は、赤外吸収スペクトル法(モレロ法)により、検量線を作成して求めた。ただし、スチレン単位の含有量の単位は、質量%基準である。
【0181】
(2)水添率
水添率は、四塩化炭素を溶媒として用い、400MHz、
1H−NMRスペクトルから算出した。
【0182】
(3)重量平均分子量(Mw)
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製、HLC−8120)法により測定された、ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
・展開溶媒:THF
・測定温度:40℃
・カラム:TSKgel GMHxl
【0183】
(4)メルトフローレート(MFR)
メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準拠し、温度:230℃、荷重:2.16kgの条件下で測定した。
【0184】
(5)変性量(個/重合体1分子鎖)
変性量は、重合体中のN原子含有極性基の含有量であり、下記式により表される。
【0185】
変性量=N原子含有極性基(個)/重合体1分子鎖
変性量は、Analy.Chem.564(1952)記載のアミン滴定法による定量により求めた。即ち、水添変性重合体を精製後、有機溶剤に溶解し、指示薬としてメチルバイオレットを用い、溶液の色が紫から水色に変化するまでHClO
4/CH
3COOHを滴定することにより、変性量を求めた。
【0186】
(6)シリル保護率(%)
シリル保護率は、下記式により表される。
シリル保護率(%)=N原子含有極性基中のN原子に結合したアルキルシリル基(個)/[N原子含有極性基中のN原子に結合したアルキルシリル基(個)+N原子含有極性基中のN原子に結合した水素原子(個)]×100
シリル保護率は、水添変性重合体を精製した後、重クロロホルムを溶媒に使用し、400MHz、
1H−NMRスペクトルから算出した。
【0187】
(7)シリル保護基数(個/重合体1分子鎖)
シリル保護基数は、下記式により表される。
【0188】
シリル保護基数(個/重合体1分子鎖)=
N原子含有極性基中のN原子に結合したアルキルシリル基(個)/重合体1分子鎖
【0189】
〈水添触媒の製造〉
以下の方法により、水添触媒(触媒A)を製造した。
撹拌機、滴下漏斗を備えた1L容量の三つ口フラスコを乾燥窒素で置換し、無水テトラヒドロフラン200ml及びテトラヒドロフルフリルアルコール0.2モルを加えた。その後、n−ブチルリチウム(以下「n−BuLi」ともいう。)/シクロヘキサン溶液(0.2モル)を三つ口フラスコ中に15℃にて滴下して反応を行い、テトラヒドロフルフリルオキシリチウムのテトラヒドロフラン溶液を得た。
【0190】
次に、撹拌機、滴下漏斗を備えた1L容量の三つ口フラスコを乾燥窒素で置換し、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド49.8g(0.2モル)及び無水テトラヒドロフラン250mlを加えた。そして、上記記載の方法により得られたテトラフルフリルオキシリチウムのテトラヒドロフラン溶液を室温撹拌下にて約1時間で滴下した。約2時間後、赤褐色液を濾過し、不溶部をジクロロメタンで洗浄した。
【0191】
その後、ろ液及び洗浄液を合わせて減圧下にて溶媒を除去することにより、触媒A[ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウム(テトラヒドロフルフリルオキシ)クロライド](「[クロロビス(2,4−シクロペンタジエニル)チタン(IV)テトラヒドロフルフリルアルコキシド]」ともいう。)を得た。なお、収率は95%であった。
【0192】
〔(変性)水添共役ジエンブロック共重合体の合成〕
[合成例1]
窒素置換された内容積50リットルの反応容器に、シクロヘキサン(25kg)、テトラヒドロフラン(750g)、スチレン(450g)、及びn−ブチルリチウム(4.7g)を加え、50℃からの断熱重合を行った。反応完結後、温度を20℃として、1,3−ブタジエン(4,250g)を加え、断熱重合を行った。30分後、スチレン(300g)を加え、さらに重合を行った。次いで、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン17gを加え、30分間反応させた。次いで、上記触媒A6g、トリエチルアルミニウム7g、及びn−BuLi1.9gを加え、水素圧1.0MPaを保つようにして1時間反応させた。反応後、反応液を70℃、常圧に戻して反応容器より抜き出し、重合体溶液を得た。
【0193】
次いで、pH調整剤であるNaOHによりpH8.5(ガラス電極法による、80℃におけるpH、以下同じ。)に調整した水溶液(温度:80℃)を脱溶媒槽に入れ、さらに上記重合体溶液を加え(重合体溶液100質量部に対して、前記水溶液200質量部の割合)、脱溶媒槽の液相の温度:95℃で、2時間スチームストリッピング(スチーム温度:190℃)により脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥を行うことで変性水添共役ジエンブロック共重合体(B―1)を得た。
【0194】
[合成例2]
窒素置換された内容積50リットルの反応容器に、シクロヘキサン(25kg)、テトラヒドロフラン(2.2g)、2,2−(ビステトラヒドロフルフリル)プロパン(12g)、スチレン(750g)、及びn−ブチルリチウム(6.0g)を加え、50℃からの断熱重合を行った。反応完結後、温度を20℃として、1,3−ブタジエン(3,750g)を加え、断熱重合を行った。30分後、スチレン(500g)を加え、さらに重合を行った。次いで、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン22.7gを加え、30分間反応させた。次いで、上記触媒A5.3g、トリエチルアルミニウム9.4g、及びn−BuLi1.6gを加え、水素圧1.0MPaを保つようにして1時間反応させた。反応後、反応液を70℃、常圧に戻して反応容器より抜き出し、重合体溶液を得た。次いで、合成例1と同様にして脱溶媒及び乾燥を行うことで変性水添共役ジエンブロック共重合体(B―2)を得た。
【0195】
[合成例3]
窒素置換された内容積50リットルの反応容器に、シクロヘキサン(25kg)、テトラヒドロフラン(1.25g)、1,3−ブタジエン(1500g)、及びn−ブチルリチウム(4.5g)を加え、70℃からの断熱重合を行った。反応完結後、温度を30℃として、テトラヒドロフラン(90g)及び1,3−ブタジエン(2500g)を加え、断熱重合を行った。30分後、スチレン(1000g)を加え、30分間反応させた。次いで、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン(20.6g)を加え、30分間反応させた。次いで、上記触媒A(4.8g)、トリエチルアルミニウム(4.4g)、及びn−BuLi(2.0g)を加え、水素圧1.0MPaを保つようにして1時間反応させた。反応後、反応液を70℃、常圧に戻して反応容器より抜き出し、重合体溶液を得た。次いで、合成例1と同様にして脱溶媒及び乾燥を行うことで変性水添共役ジエンブロック共重合体(B―3)を得た。
【0196】
[合成例4]
窒素置換された内容積50リットルの反応容器に、シクロヘキサン(25kg)、テトラヒドロフラン(750g)、スチレン(450g)、及びn−ブチルリチウム(4.2g)を加え、50℃からの断熱重合を行った。反応完結後、温度を20℃として、1,3−ブタジエン(4,250g)を加え、断熱重合を行った。30分後、スチレン(300g)を加え、さらに重合を行った。次いで、上記触媒A6g、トリエチルアルミニウム7g、及びn−BuLi1.9gを加え、水素圧1.0MPaを保つようにして1時間反応させた。反応後、反応液を70℃、常圧に戻して反応容器より抜き出し、重合体溶液を得た。次いで、合成例1と同様にして脱溶媒及び乾燥を行うことで水添共役ジエンブロック共重合体(B―4)を得た。
【0197】
【表1】
【0198】
〔樹脂組成物の製造〕
[実施例1A]
ポリエステル(A)としてポリ乳酸50部、変性水添共役ジエン重合体(B)として合成例1で得られた(B−1)50部、老化防止剤(商品名「イルガノックス1010」、BASF社製)0.1部をヘンシェルミキサーにて室温で30秒間混合した。その後、得られた混合物を二軸押出機(同方向非噛み合い型スクリュー、L/D=33.5、(株)池貝製、品名「PCM−45」、以下同じ。)に吐出量20kg/時間で供給し、温度200℃、スクリュー回転数200rpm(せん断速度:470s
−1)で押出を行い、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。このときの比エネルギーは0.4kWh/kgであった。得られたペレットを除湿乾燥機を用いて80℃で5時間乾燥を行った。得られた乾燥ペレットを二軸押出機に吐出量20kg/時間で供給し、温度200℃、スクリュー回転数200rpm(せん断速度:470s
−1)で押出を行った。得られたペレットを除湿乾燥機を用いて80℃で5時間乾燥を行い、熱可塑性樹脂組成物(I)を得た。
【0199】
[実施例2A〜6A、8A、比較例1A〜2A]
実施例1Aにおいて、老化防止剤以外は表2に示す配合処方とすること以外は実施例1Aと同様にして、熱可塑性樹脂組成物(II)〜(VI)、(VIII)〜(X)を得た。
【0200】
[実施例7A]
実施例1Aにおいて、老化防止剤以外は表2に示す配合処方とし、かつ二軸押出機の温度を280℃としたこと以外は実施例1Aと同様にして、熱可塑性樹脂組成物(VII)を得た。
【0201】
[比較例3A]
ポリエステル(A)としてポリ乳酸40部、変性水添共役ジエン重合体(B)として合成例1で得られた(B−1)25部、官能基含有重合体(C)としてEGMA35部、老化防止剤(商品名「イルガノックス1010」、BASF社製)0.1部をヘンシェルミキサーにて30秒間混合した。その後、二軸押出機に吐出量30kg/時間で供給し、温度200℃、スクリュー回転数50rpmで押出を行い、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。このときの比エネルギーは0.07kWh/kgであった。得られたペレットを除湿乾燥機を用いて80℃で5時間乾燥を行い、熱可塑性樹脂組成物(XI)を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物について、下記評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0202】
[流動性]
JIS K7210に準拠して、熱可塑性樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)を、温度230℃、荷重2.16kgの条件にて測定した。ただし、実施例7Aでは、MFRの測定条件を280℃、10kg荷重とした。得られた測定値を流動性の評価値とした。
【0203】
[相構造]
熱可塑性樹脂組成物のペレットからミクロトームを用いて薄膜片を作製した。このとき、超薄片の面は樹脂流動方向に対して平行で、超薄片の切削位置は樹脂流動方向と垂直となる厚み方向の中心部分とした。次いでRuO
4により染色した後、透過型電子顕微鏡((株)日立製作所製、商品名「H−7500」)により2000倍の写真を撮影した。この写真から相構造を確認した。このとき、ポリエステル(A)が明部、変性水添共役ジエン重合体(B)及び官能基含有重合体(C)が暗部となる。このとき、以下の指標で相構造を評価した。
【0204】
AA:ポリエステル(A)からなる分散相が、変性水添共役ジエン重合体(B)及び官能基含有重合体(C)からなる連続相中に分散してなる第1の相と、ポリエステル(A)からなる第2の相とが観察され、相構造が良好である。
【0205】
BB:上記2つの相が観察されず、相構造が良好ではない。
【0206】
実施例2Aの電子顕微鏡写真を
図2に、比較例3Aの電子顕微鏡写真を
図3に示す。
図2(b)は、
図2(a)の中心付近の島相(第1の相)の拡大図である。
図2(b)において、島相中の明部が分散相であり、島相中の暗部が連続相である。
【0207】
[相構造の比率、サイズ]
上記で得られた写真を、画像解析ソフト(MediaCybernetics社製、商品名「Image−Pro Plus 6.2」を用いて、ポリエステル(A)からなる分散相が、変性水添共役ジエン重合体(B)からなる連続相中に分散してなる第1の相について、ポリエステル(A)からなる分散相の面積(Sa)及び数平均粒子径(Da)、並びに変性水添共役ジエン重合体(B)からなる連続相の面積(Sb)とポリエステル(A)からなる分散相の面積(Sa)との合計(Sa+Sb)を測定した。数平均粒子径(Da)については、J.MACROMOL.SCI.−PHYS.,B38(5&6),527(1999)に記載されている計算方法を用いた。
【0208】
【表2】
【0209】
表1中の各成分の詳細は、以下のとおりである。
(A)ポリエステル
(A−1):ポリ乳酸:商品名「Ingeo 3001D」ネイチャーワークス社製
(A−2):ポリエチレンテレフタレート:商品名「RT523C」日本ユニペット社製
(A−3):ポリブチレンサクシネート:商品名「AZ91T」三菱化学製
(C)官能基含有重合体
(C−1):EGMA:商品名「ボンドファーストE」住友化学製、
特殊エチレン系コポリマー(コモノマー:グリシジルメタクリレート)
(C−2):エポキシ変性アクリル:商品名「パラロイドEXL-2314」、
ローム・アンド・ハース社製
【0210】
〔成形体の製造〕
[実施例1B]
熱可塑性樹脂組成物(I)10部、ポリ乳酸20部、ポリプロピレン70部をヘンシェルミキサーにて室温で30秒間混合し、ペレット混合物を得た。得られたペレット混合物を、型締力110トンの射出成形機(日本製鋼所製、商品名「J−110AD」)を用いて、温度200℃、背圧5MPaの条件で、80mm×55mm×2.4mm厚みの平板状成形体を作製した。
【0211】
[実施例2B〜6B,8B〜10B、12B〜14B、
比較例1B〜3B、5B〜6B]
実施例1Bにおいて、表3に示す配合処方とすること以外は実施例1Bと同様にした。
【0212】
[実施例7B]
実施例1Bにおいて、表3に示す配合処方とし、成形体作製時の射出成形機の温度を280℃とすること以外は実施例1Bと同様にした。
【0213】
[実施例11B]
熱可塑性樹脂組成物(II)10部、ポリ乳酸20部、ポリプロピレン70部をヘンシェルミキサーにて室温で30秒間混合し、得られた混合物を二軸押出機に吐出量20kg/時間で供給し、温度200℃、スクリュー回転数200rpm(せん断速度:470s
−1)で押出を行い、ペレットを得た。得られたペレットを除湿乾燥機を用いて80℃で5時間乾燥を行った。得られた乾燥ペレットを用いて、実施例1Bと同様にして平板状成形体を作製した。
【0214】
[比較例4B]
ポリ乳酸(商品名「Ingeo 3001D」ネイチャーワークス社製)24部、合成例2で得られた(B−2)2.5部、EGMA(商品名「ボンドファーストE」住友化学製)3.5部、ポリプロピレン(商品名「BC06C」日本ポリプロ製)70部を室温でヘンシェルミキサーにて30秒間混合し、ペレットを得た。得られたペレットを用いて、実施例1Bと同様にして平板状成形体を作製した。なお、比較例4Bの成形体中の各成分の配合組成は、実施例4Bと同一となるよう調整している。
【0215】
[成形体の耐衝撃性]
得られた成形体について、衝撃試験機((株)島津製作所製、商品名「ハイドロショットHITS−P10」)を用いて衝撃試験を行い、衝撃破壊エネルギーを測定した。得られた測定値を耐衝撃性の評価値とした。
【0216】
[成形体の外観]
得られた成形体の外観について、下記の指標で評価した。
AA:表層剥離及び色むらがなく、射出成形性が優れる。
BB:表層剥離又は色むらのいずれかの現象が発生しており、射出成形性が劣る。
【0217】
【表3】
【0218】
表3中の各成分の詳細は、以下のとおりである。
(A)ポリエステル
(A−1):ポリ乳酸:商品名「Ingeo 3001D」ネイチャーワークス社製
(A−2):ポリエチレンテレフタレート:商品名「RT523C」日本ユニペット社製
(A−3):ポリブチレンサクシネート:商品名「AZ91T」三菱化学製
(D)ポリオレフィン
(D−1−1):ポリプロピレン:商品名「BC06C」日本ポリプロ製(MFR=60g/10分)
(D−1−2):ポリプロピレン:商品名「BC6C」日本ポリプロ製(MFR=2.5g/10分)
(D−2):ポリエチレン:商品名「モアテック0168」、プライムポリマー社製