(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
配向処理の品質の重要な指標は、言うまでもないことであるが、配向の方向精度である。配向の方向精度が悪いと、膜材の特定の性質が所望の向きに向いていないことになり、予定されていた配向処理の効果が得られないことになる。配向の方向精度の悪化とは、ある面内で全体に配向が所望の方向とは異なった方向にされてしまう場合と、ある面内で配向の方向がばらついてしまう場合とがある。
例えば液晶表示素子用の配向膜を得る際の光配向処理では、配向の方向に液晶の各分子が配列されるため、配向の方向精度の悪化が全体として生じると、画面全体の視認性が悪化する。また、精度悪化が配向のばらつきとして生じると、画面の部分的なちらつきや表示むらが発生することになる。
【0007】
このような配向の方向精度は、製品の高性能化、高機能化を背景として非常に厳しい要求がされている。例えば、スマートフォン等のモバイル機器で多用されているタッチパネル(タッチスクリーンディスプレイ)では、僅かな配向の方向精度の悪化が画面の視認性低下や表示むらにつながるため、光配向の方向精度をより高くすることが求められている。
光配向の方向精度は、膜材に対して照射される偏光光の偏光軸の方向精度によって決まる。要求されている方向精度を満足するには、照射される偏光光の偏光軸の所望の方向からのずれを非常に小さい所定の範囲内に抑え込まなければならない。したがって、光配向用偏光光照射装置は、そのように軸ずれが小さく抑え込まれた状態で偏光光を膜材に照射する必要があるし、そのためには、照射面において偏光光の偏光軸に所望の向きに精度良く向いているか監視する手段が必要になってくる。
【0008】
照射面における偏光光の偏光軸の監視には、偏光光の偏光軸の方向の検出が不可欠となるが、偏光軸の方向の検出を精度良く行う点については、要求を満足できる実用的な提案はこれまでのところ特にされていない。例えば特許文献3では、検光子を回転させることなく偏光軸の向きが検出できる構造が提案されているが、偏光軸の方向の検出精度をより高くする点については多くの教示はされていない。特許文献3では、検光子を回転させないので検光子の回転停止精度の影響は受けないとしているが、検光子の回転原点の姿勢の精度が悪ければ測定精度の悪化につながる。
本願の発明は、上記の点を考慮して為されたものであり、光配向用の偏光光の照射技術において、照射される偏光光の偏光軸の方向を精度良く検出できるようにし、方向精度の点で高品質の光配向処理を可能にすることを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、
照射面に配置されたワークに対して偏光素子を介して
偏光光を照射する光照射器を備えた光配向用偏光光照射装置であって、
ワークには、光配向のために偏光光の偏光軸を指向させるべき方向として設定配向方向が設定されており、
照射面に照射された偏光光の偏光軸の方向を検出する偏光方向検出系を備えており、
偏光方向検出系は、装置において設定された基準方向である装置基準方向に対する角度として前記偏光軸の方向を検出することが可能であ
って、設定配向方向に偏光した偏光光が照射されるようワークは装置基準方向に対して所定の姿勢で照射面に配置されるようになっており、
偏光方向検出系は、照射面に照射される偏光光の偏光軸の方向
である偏光方向を検出する位置に配置されることが可能な偏光方向検出器を備えており、
偏光方向検出器は、照射面に対して平行な姿勢となる検光子と、光照射器から出射された光を検光子を介して受光する受光器と、照射面に対して垂直な回転軸の周りに検光子を回転させる回転駆動源とを備え、受光器で受光される光の強度が検光子の回転に伴って変化する状態に基づいて偏光方向を検出するものであり、
検光子には、検光子アライナーが設けられており、
検光子アライナーは、偏光方向を検出するために検光子を回転させる際の回転原点における検光子の姿勢を装置基準方向に対して所定の方向に向いた姿勢とするものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記検光子にはアライメントマークが設けられており、
前記検光子アライナーは、アライメントマークを検出する検光子センサと、検光子センサからの出力により前記所定の方向に対する検光子の姿勢のずれ量を求める演算処理部とを備え、求められたずれ量をなくすよう前記回転駆動源に制御するものである
という構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項
1又は2の構成において、前記偏光素子の配置角度を調整する偏光素子調整機構が設けられており、
偏光素子調整機構は、偏光方向検出系により検出された
偏光方向と設定配向方向とのずれ量をなくすように前記偏光素子の配置角度を調整することが可能なもので
あるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項
1、2又は3の構成において、前記照射面にワークを搬送するワーク搬送系と、ワークアライナーとを備えており、
前記設定配向方向は、ワークの特定の部位の延びる方向を基準にして設定されており、
ワークアライナーは、ワーク搬送系により前記照射面にワークが搬送された際、前記ワークの特定の部位の延びる方向が前記装置基準方向に対して所定の方向になるようワークの姿勢を調整するものである
という構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、前記請求項4の構成において、前記ワークアライナーとして第一第二の二つのワークアライナーが設けられており、
第一のワークアライナーは第一のワークをアライメントするものであって、第二のワークアライナーは第二のワークをアライメントするものであり、
第一のワークには第一第二の二つのアライメントマークが形成されているとともに、第二のワークには第一のワークと同じ位置に第一第二の二つのアライメントマークが形成されており、
第一のワークアライナーは、第一のワークの二つのアライメントマークの位置を検出し、二つのアライメントマークを結んだ線が延びる方向と前記装置基準方向とが成す角を算出し、この角が所定の角度なるように第一のワークの姿勢を調整することでアライメントを行うものであり、
第二のワークアライナーは、第一第二の二つのセンサと、演算処理部と、記憶部と、ステージ姿勢調整機構と、移送機構とを備えており、
第一第二の二つのセンサは、各ワークにおける二つのアライメントマークを同時に撮像可能な位置関係で配置されており、
移送機構は、第一のワークアライナーにより第一のワークのアライメントが完了した後、当該アライメントが完了した第一のワーク又は前記第一第二の二つのセンサを移送し、当該アライメントが完了した姿勢の状態で第一のワークの第一のアライメントマークを第一のセンサが撮像し得る状態とし、第二のアライメントマークを第二のセンサが撮像し得る状態とするものであり、
演算処理部は、第一のセンサが撮像した第一のワークの第一のアライメントマークの画像データを処理して当該第一のアライメントマークの位置情報を記憶部に記憶するとともに、第一のセンサが撮像した第一のワークの第二のアライメントマークの画像データを処理して当該第二のアライメントマークの位置情報を記憶部に記憶するものであり、
前記ワーク搬送系は、第一のアライメントマークが第一のセンサで撮像され、第二のアライメントマークが第二のセンサで撮像される位置に第二のワークを搬送するものであり、
ステージ姿勢調整機構は、記憶部から読み出された位置情報に従い、第一のワークの第一のアライメントマークが位置していた位置に第二のワークの第一のアライメントマークを位置させ、第一のワークの第二のアライメントマークが位置していた位置に第二のワークの第二のアライメントマークを位置させる機構であるという構成を有する。
【0010】
また、上記課題を解決するため、請求項6記載の発明は、ワークを照射面に配置し、偏光素子を介して照射面に光照射することでワークに対して偏光光を照射する偏光光照射工程と、
照射面に照射されている偏光光の偏光軸の方向
である偏光方向を検出する偏光方向検出工程と
を有しており、
ワークには光配向のために偏光光の偏光軸を指向させるべき方向として設定配向方向が設定されているとともに、装置には装置基準方向が設定されており、
偏光光照射工程は、設定配向方向に偏光した偏光光が照射されるよう装置基準方向に対して所定の姿勢でワークを照射面に配置する工程であり、
偏光方向検出工程は、ワークに代えて照射面に偏光方向検出器を配置することで
偏光方向を検出する工程であり、
偏光方向検出器は、照射面に対して平行な姿勢となる検光子と、光照射器から出射された光を検光子を介して受光する受光器と、照射面に対して垂直な回転軸の周りに検光子を回転させる回転駆動源とを備え、受光器で受光される光の強度が検光子の回転に伴って変化する状態に基づいて偏光方向を検出するものであり、
偏光方向を検出するために検光子を回転させる際の回転原点における検光子の姿勢を装置基準方向に対して所定の方向に向いた姿勢とする検光子アライメント工程が設けられており、
偏光方向検出工程は、検光子アライメント工程の後に偏光方向検出器に偏光方向を検出させる工程であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項7記載の発明は、前記請求項6の構成において、前記検光子にはアライメントマークが設けられており、
前記検光子アライメント工程は、前記検光子のアライメントマークを検光子センサで検出し、当該検光子センサからの出力により前記所定の方向に対する検光子の姿勢のずれ量を演算処理部により求め、求められたずれ量をなくすよう前記回転駆動源を制御する工程である
という構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項8記載の発明は、前記請求項
6又は7の構成において、前記偏光素子の配置角度を調整する偏光素子調整工程を有しており、
偏光素子調整工程は、偏光方向検出系により検出された
偏光方向と設定配向方向とのずれ量をなくすように前記偏光素子の配置角度を偏光素子調整機構により調整する工程
であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項9記載の発明は、前記請求項
6、7又は8の構成において、前記照射面にワークを搬送するワーク搬送工程と、ワークアライメント工程とを有しており、
前記設定配向方向は、ワークの特定の部位の延びる方向を基準にして設定されており、
ワークアライメント工程は、ワーク搬送工程において前記照射面にワークが搬送された際、前記ワークの特定の部位の延びる方向が前記装置基準方向に対して所定の方向になるようワークの姿勢を調整する工程である
という構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項10記載の発明は、前記請求項9の構成において、前記ワークアライメント工程として第一第二の二つのワークアライメント工程を有しており、
第一のワークアライメント工程は第一のワークをアライメントする工程であって、第二のワークアライメント工程は第二のワークをアライメントする工程であり、
第一のワークには第一第二の二つのアライメントマークが形成されているとともに、第二のワークには第一のワークと同じ位置に第一第二の二つのアライメントマークが形成されており、
第一のワークアライメント工程は、第一のワークの二つのアライメントマークの位置を検出し、二つのアライメントマークを結んだ線が延びる方向と前記装置基準方向とが成す角を算出し、この角が所定の角度なるように第一のワークの姿勢を調整することでアライメントを行う工程であり、
第二のワークアライメント工程は、第一の撮像工程と、位置情報記憶工程と、第二の撮像工程と、アライメント工程とを有しており、
第一の撮像工程は、第一のワークのアライメントが完了した後、当該アライメントが完了した第一のワーク又は前記第一第二の二つのセンサを移送機構により移送し、当該アライメントが完了した姿勢の状態で第一のワークの第一のアライメントマークを第一のセンサにより撮像させると同時に、第二のアライメントマークを第二のセンサにより撮像させる工程であり、
位置情報記憶工程は、第一のセンサが撮像した第一のワークの第一のアライメントマークの画像データを処理して当該第一のアライメントマークの位置情報を記憶部に記憶するとともに、第一のセンサが撮像した第一のワークの第二のアライメントマークの画像データを処理して当該第二のアライメントマークの位置情報を記憶部に記憶する工程であり、
第二の撮像工程は、各センサの撮像位置に第二のワークを搬送し、第二のワークの第一のアライメントマークを第一のセンサにより撮像させると同時に第二のアライメントマークを第二のセンサにより撮像させる工程であり、
アライメント工程は、記憶部に記憶された位置情報を読み出し、読み出された位置情報に従い、第一のワークの第一のアライメントマークが位置していた位置に第二のワークの第一のアライメントマークを位置させ、第一のワークの第二のアライメントマークが位置していた位置に第二のワークの第二のアライメントマークを位置させる工程であるという構成を有する。
【発明の効果】
【0011】
以下に説明する通り、本願の請求項1又は請求項6の発明によれば、実際に照射面で照射されている偏光光の偏光軸の方向が偏光方向検出系により検出されるので、装置基準方向に対して所定の方向に向いているかをチェックすることができる。この際、偏光方向を検出するために検光子を回転させる際の回転原点における検光子の姿勢が装置基準方向に対して所定の方向に向いた姿勢とされるので、偏光方向の検出精度がより高くなる。
また、請求項2又は請求項7の発明によれば、上記効果に加え、検光子にアライメントマークが設けられており、検光子センサがこのアライメントマークを検出することで検光子のアライメントが行われるので、検光子の回転原点の精度がより高くなる。この点で、偏光方向の検出精度がより高くなる。
また、請求項3又は請求項8の発明によれば、上記効果に加え、偏光方向検出系により検出された偏光光の方向と設定配向方向とのずれ量をなくすように偏光素子の配置角度が調整されるので、より方向精度の高い光配向処理が実現できる。
また、請求項4又は請求項9の発明によれば、上記効果に加え、ワークがワークアライナーによりアライメントされた状態で偏光光が照射されるので、ロボットによりワークが装置に投入される場合のように装置に投入された際のワークの姿勢精度が低い場合であっても高い方向精度で光配向が行われる。
また、請求項5又は請求項10の発明によれば、上記効果に加え、第二のワークアライナーにおいて、二つのセンサにより二つのアライメントマークを同時に撮像することでワークのアライメントが行われるので、アライメントに要する時間が短くなる。このため、生産性が高くなる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本願発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、本願発明の第一の実施形態に係る光配向用偏光光照射装置の斜視概略図である。
図1に示す偏光光照射装置は、膜材付き液晶基板のような板状のワークWを光配向処理するための装置であり、ワークWに対して偏光光を照射する光照射器1を備えている。
この実施形態では、ワークWは長方形である。前述したように、光配向においては、偏光光は、配向すべき方向に偏光軸が精度良く向いている必要がある。配向の方向は、任意に設定し得るものであり、以下、設定配向方向という。設定配向方向は、ワークWの特定の部位が延びる方向を基準にして設定される。以下の説明では、一例として、ワークWの短辺の方向を設定配向方向とする。
【0014】
光照射器1は、設定配向方向に偏光軸が向いた偏光光を照射面Rに照射するものである。
図1に示すように、照射面Rは、長方形の領域として設定される。
図2は、
図1に示す光照射器1の断面概略図であり、(1)は、照射面Rの短手方向での断面概略図、(2)は照射面Rの長手方向での断面概略図である。
図2に示すように、光照射器1は、光源11と、光源11と照射面Rに間に配置された偏光素子ユニット12とを備えている。
【0015】
光源11としては、この実施形態では、長尺な発光部を成すものが使用されている。光源11は、発光部の長手方向が設定配向方向に垂直な水平方向に向くよう配置される。この実施形態では、光源11には棒状の高圧水銀ランプが使用されているが、メタルハライドランプやLEDが使用されることもある。尚、点光源11を一列に並べて長尺な発光部としたものが使用されることもある。
【0016】
光源11の背後(照射面Rとは反対側)には、ミラー13が配置されている。ミラー13は、光源11の長手方向に延びた長尺なものであり、光源11の背後を覆って光を照射面Rの側に反射させて光の利用効率を高めるものである。ミラー13は、一対のものであり、反射面の断面形状が楕円の円弧又は放物線を成している。尚、光源11やミラー13は、ランプハウス14内に収容されている。
【0017】
偏光素子ユニット12は、複数の偏光素子121と、複数の偏光素子121を保持したフレーム122とより成るものである。各偏光素子121は、方形の板状であり、光源11の長さ方向に沿って並べられている。
図2に示すように、偏光素子ユニット12は、ランプハウス14の下端開口に装着されており、光源11と照射面Rとの間に位置している。
この実施形態では、各偏光素子121は、ワイヤーグリッド偏光素子である。但し、グリッドの材質は金属(ワイヤー)には限られないので、以下、単にグリッド偏光素子という。
【0018】
図3は、実施形態の光配向用偏光光照射装置で用いられている偏光素子121の構造及び作用を示した斜視概略図である。
図3中に示すように、グリッド偏光素子121は、透明な板材123の上に導電性の縞状のグリッド124が形成された構造を有する。グリッド124の離間間隔(
図3にgで示す)は、偏光光の波長程度又はそれより短い間隔とされる。
【0019】
直線偏光光のうち、グリッド124の長さ方向に偏光軸が向いた偏光光(s偏光光と言い、Lsで示す)は、電界成分がグリッド124の長さ方向に沿っているためにグリッド124を通過できない。その一方、透明な板材123の表面に沿った方向であってグリッド124の長さ方向に垂直な方向に偏光軸が向いた偏光光(p偏光光といい、
図3にLpで示す)は、電界がグリッド124の長さ方向に直交しているので、グリッド124を通過できる。このため、グリッド偏光素子121からは、p偏光光が専ら出射する。したがって、板材123の表面に沿った方向であってグリッド124の長さ方向に垂直な方向(以下、グリッド幅方向という)を設定配向方向にしておけば、照射面Rにおいて設定配向方向に偏光軸が向いたp偏光光が専ら照射され、光配向が実現されることになる。
【0020】
尚、「専ら」と説明したが、p偏光光のみを照射面Rに照射することは理想的であるものの、実際には難しい。偏光素子121の性能の一つである消光比(s偏光光の出射量に対するp偏光光の出射量の比)に応じ、p偏光光がs偏光光に比べて多く照射されるということである。
したがって、
図3に示すように、照射面RにワークWを配置する際、ワークWの短辺の方向がp偏光光の偏光軸の方向(グリッド幅方向)に一致していれば、設定配向方向に向いた偏光軸がワークWに照射されることになり、設定配向方向に正しく光配向処理がされることになる。
【0021】
上記のように、偏光光照射装置では、ワークWを照射面Rに配置する際、偏光光の偏光軸が設定配向方向に向いた状態とする必要がある。この実施形態では、設定配向方向はワークWの短辺方向であるので、照射されている偏光光の偏光軸の方向に短辺方向が一致した状態でワークWを照射面Rに配置することになる。この際、照射面R上にワークWを静止させた状態で偏光光を照射しても良いのであるが、実施形態の装置は、光照射量の面内均一化などの観点から、ワークWが照射面Rを通過するようにし、通過の際に偏光光の照射がされる構成を採用している。
【0022】
具体的に説明すると、実施形態の装置は、ワークWを照射面Rの位置まで搬送し、さらに照射面Rを通過するようにワークWを移動させるワーク搬送系2を備えている。
図1には、ワーク搬送系2の概略構成が示されている。
ワーク搬送系2は、ワークWが載置されるステージ21と、ステージ21を移動させるステージ移動機構とを備えている。
【0023】
ステージ21は、複数の不図示の支持ピンを備えたものである。各支持ピンは、ステージ21の上面から少し突出している。各支持ピンは管状であり、真空吸着のための吸気を行うようになっている。ステージ21は、各支持ピン上で真空吸着されながら保持される。尚、この明細書において「ステージ」の語は広い意味で使用されており、ワークWを載せる台状のものには限られず、ワークWを保持し得る部材であれば「ステージ」と呼び得る。
このようなステージ21に対しては、ワークWの搭載と回収を行う不図示のロボットが併設されている。ロボットは、設定された搭載位置において一枚のワークWをステージ21に搭載し、偏光光照射済みのワークWを設定された回収位置において回収するようティーチングされる。
【0024】
ステージ移動機構は、ステージ21を直線移動させるものとなっている。この実施形態では、ワークWの搭載位置と回収位置は同じ位置(以下、搭載回収位置という)となっており、照射面Rの一方の側に設定されている。搭載回収位置から照射面Rを貫くようにして水平な搬送ラインが設定されている。
ワーク搬送系2は、搬送ラインに沿って配設された搬送用駆動軸22及び一対のリニアガイド23を備えている。リニアガイド23は、搬送用駆動軸22の両側で平行に直線性良く延びた状態で配設されている。
【0025】
ステージ21は、下側に設けられたベース板210上に取り付けられている。搬送用駆動軸22はボールねじであり、ベース板210の下面に固定された被駆動ブロック211が螺合している。ベース板210の下面両端には、リニアガイド23に嵌合したスライダ212が固定されている。搬送用駆動軸22にはサーボモータのような搬送用駆動源24が連結されており、搬送用駆動源24が搬送用駆動軸22を回転させることでベース板210と一体にステージ21が直線移動するようになっている。
【0026】
ワーク搬送系2によるステージ21の移動距離は、ステージ21上のワークWが照射面Rに達し、照射面Rを完全に通過する距離となっている。完全に通過とは、ワークWの後端が照射面Rを通過するということである。
この実施形態では、ワークWは搭載回収位置に戻る際にも偏光光の照射を受けるようになっている。即ち、上記のように照射面Rを完全に通過する位置に移動の前進到達位置が設定されており、前進到達位置にステージ21が位置した後、搬送用駆動源24は搬送用駆動軸22を逆向きに回転させ、ステージ21を搭載回収位置まで後退させる。この後退の際、ワークWは照射面Rを再度通過し、偏光光の照射を受ける。
【0027】
尚、装置は、装置全体を制御する主制御部9を備えている。上記のようなステージ21の移動は、主制御部9が搬送用駆動源24に対して適宜制御信号を送ることで行われる。
このような構成により、実施形態の装置においては、ワークWに対して偏光光が照射される。この際、前述したように、照射される偏光光の偏光軸の方向精度を高くすることが要請される。
【0028】
この実施形態では、前述したように設定配向方向はワークWの短辺方向であり、ワークWの短辺方向に偏光軸が向いた状態で偏光光を照射する必要がある。このため、装置において基準となる方向(以下、装置基準方向という)が定められており、装置基準方向に対して偏光光の偏光軸が所定の角度を向くように光照射器1が設置される。この所定の角度は、設定配向方向に応じて任意に設定し得るが、以下の説明では、一例として0度とする。即ち、偏光軸の方向が装置基準方向に一致するよう光照射器1が配置される。そして、装置基準方向にワークWの短辺方向が向くようにワークWはステージ21に搭載され、照射面Rに搬送される。
【0029】
装置基準方向は、装置の設計の際には観念上の方向ということになるが、装置の組み立てや調整、実際の制御の際には、装置において現実の存在する部材に基づいた方向を基準とする。この現実に存在する部材は、直線性良く加工された部材が選定され、この実施形態ではリニアガイド23となっている。即ち、リニアガイド23が延びる方向が、この実施形態では装置基準方向となっている。
光照射器1については、特に偏光素子121の姿勢が重要であり、この例では、前述したグリッド幅方向が装置基準方向に一致するよう精度良く取り付けられる。
【0030】
一方、ワークWについては、上述したようにロボットによりステージ21に搭載されるが、短辺方向が装置基準方向に向いた姿勢でワークWを搭載するようにロボットをティーチングしても、搭載の際のワークWの姿勢は高い精度で同一という訳にはいかず、僅かに異なり得る。このため、実施形態の装置は、ステージ21に搭載されたワークWを装置基準方向に対して所定の姿勢になるようにするワークアライナー3を備えている。所定の姿勢とは、前述したように短辺方向が装置基準方向に一致する姿勢であり、ワークアライナー3は、ワークWの短辺方向が装置基準方向に向くようにアライメントするものとなっている。
【0031】
図4はワークアライナー3の概略構成を示した斜視図であり、
図5及び
図6は
図4のワークアライナー3によるワークWのアライメントの原理について示した図である。
図4に示すように、ワークWには、アライメントマーク(以下、ワークマーク)WM1,WM2が設けられている。ワークアライナー3は、ワークマークWM1,WM2を検出するワークマークセンサ31と、ステージ21の姿勢を調整するステージ姿勢調整機構32と、ワークマークセンサ31からの出力データを処理してステージ姿勢調整機構32を制御するワークアライメント制御部33とから主に構成されている。
【0032】
ワークマークWM1,WM2は、ワークW上の製造プロセスに影響の無い箇所に形成されており、例えばワークWの一方の短辺の縁に沿って設けられている。この実施形態では、各ワークマークWM1,WM2は、十の字状のパターンとなっている。
ワークマークセンサ31はCCDのようなイメージセンサであり、ワークWが搬送される際にワークマークWM1,WM2を撮像するものである。
図1に示すように、ワークマークセンサ31は、搭載回収位置と照射面Rとの間の搬送ライン上を臨む位置に設けられている。ワークWがステージ21に搭載されて搬送される際、ワークマークWM1,WM2がワークマークセンサ31の直下の位置を通りするよう、ワークマークセンサ31が取り付けられている。
【0033】
ステージ21上に搭載されたワークWがワーク搬送系2によって搬送される際、ワークマークセンサ31がワークマークWM1,WM2を撮像する。説明の都合上、搬送方向の前側のワークマークWM1を第一のワークマークとし、後ろ側のワークマークWM2を第二のワークマークと呼ぶ。
ワークWがリニアガイド23に沿って搬送されると、まず第一のワークマークWM1がワークマークセンサ31で撮像され、次に第二のワークマークWM2がワークマークセンサ31で撮像される。
図5(1)に第一のワークマークWM1の画像を示し、(2)に第二のワークマークWM2の画像を示す。
【0034】
ワークマークセンサ31には、撮像面の基準方向として
図5に示すようにXY座標が与えられている。この実施形態では、撮像面のY軸は装置基準方向に一致している。即ち、撮像面のY軸が装置基準方向に一致するようワークマークセンサ31は姿勢精度良く取り付けられている。
ワークマークセンサ31の撮像データは、ワークアライメント制御部33に送られる。ワークアライメント制御部33は、画像処理を行う演算処理部を含んでおり、撮像データとして
図5(1)に示す静止画のデータを取得する。そして、二つのワークマークWM1,WM2の中心間の距離L
1分だけワークステージ21を移動させて
図5(2)に示す静止画のデータを取得する。
【0035】
演算処理部は、各静止画のデータを処理し、各ワークマークWM1,WM2の像の中心の座標を特定する。そして、二つのワークマークWM1,WM2の像の中心の離間距離を算出する。
図5(1)に示す第一のワークマークWM1のデータにおいて第一のワークマークWM1の中心の座標をC
1とし、
図5(2)に示す第二のワークマークWM2のデータにおいて、第一のワークマークWM1の中心の座標をC
1’とすると、
図6に示すように、C
1’とC
2の離間距離L
2を算出する。
【0036】
二つのワークマークWM1,WM2の中心C
1,C
2間の距離L
1は、設計値であって既知である。したがって、Y軸に対するワークWのずれ角θ
1は、θ
1=tan
−1(L
2/L
1)で求められる。演算処理部は、このような演算を行ってワークWのずれ角θ
1を求めるよう構成されている。二つのワークマークWM1,WM2の中心を結ぶ方向がワークWの短辺方向に一致しており、ワークマークセンサ31のY軸は装置基準方向に一致しているから、求められたずれ角θ
1は、ワークWの短辺方向の装置基準方向に対するずれ角ということになる。
【0037】
ワークアライメント制御部33は、求められたずれ角θ
1をゼロにする制御信号を生成し、ステージ姿勢調整機構32に送信する。ステージ姿勢調整機構32は、少なくとも鉛直な回転軸の回りにステージ21を回転させることができる機構である。ステージ姿勢調整機構32は、ワークアライメント制御部33からの信号に従い、ステージ21を回転させてずれ角θ
1をゼロにする(即ち、ワークWの短辺方向を装置基準方向に一致させる)。
【0038】
ワークアライメント制御部33は、例えばPLC(Programable Logic Controler)のようなデバイスであり、前述した画像処理や制御信号の生成を行うよう回路が定義づけされる。ステージ姿勢調整機構32としては、市販のXYθ機構が使用できる。θ方向の姿勢制御の他、必要に応じてXY方向にステージ21を移動させ、ワークWをXY方向で最適な位置に位置させるようにする。
【0039】
このようにしてワークWのアライメントが行われると、ワークWは真空吸着された状態で搬送されるので、照射面RにおいてワークWは短辺方向が装置基準方向に向いた姿勢となる。したがって、装置基準方向に偏光軸が精度良く向いている偏光光が照射面Rに照射される限り、ワークWは方向精度良く光配向処理されることになる。
【0040】
ここで問題となるのが、従来の装置では、照射面Rにおいて偏光光の偏光軸が確かに設定配向方向に精度良く向いていることを確認する手段が無いことである。前述したように、照射面Rにおける偏光光の偏光軸の方向は、偏光素子121のグリッド幅方向で決まる。したがって、装置の組み立ての際には、フレームで保持された各偏光素子121のグリッド幅方向が装置基準方向に精度良く一致するように光照射器1を配置する。しかしながら、装置の組み立て後、実際に照射面Rに照射される偏光光の偏光軸が設定配向方向に向いているかを検証する手段を従来の装置は備えていない。そして、要請されている高い測定精度で偏光軸を測定する技術は、いずれの先行文献にも開示されていない。
【0041】
この実施形態の装置は、上記の点を考慮し、
図1に示すように、光照射器1から照射される偏光光の偏光軸の方向を検出する偏光方向検出系4を備えており、偏光方向検出系4は偏光方向検出器40を含んでいる。偏光方向検出器40の構成について、
図1及び
図7を使用して説明する。
図7は、
図1に示す偏光方向検出器40の正面断面概略図である。
偏光方向検出器40は、検光子回転法によって偏光方向を検出するものである。即ち、偏光方向検出器40は、光照射器1から出射される光を受光する検出用受光器41と、検出用受光器41の入射側に配置された検光子42と、照射面Rに対して垂直な回転軸の周りに検光子42を回転させる回転機構43とを備えている。
【0042】
検出用受光器41は、偏光光の波長に感度があるものであれば特に制限なく用いることができ、例えばシリコンフォトダイオードが使用される。
図7に示すように、検出用受光器41は、支柱411によって保持されている。
【0043】
検光子42としては、この実施形態では偏光板が使用されており、光照射器1が備える偏光素子ユニット12と同様に、グリッド偏光素子が検光子42として使用されている。検光子42は、枠板421によって保持されている。枠板421は検光子42の上側に位置し、下側で検光子42を保持している。枠板421には、検光子42に光を入射させるための開口(以下、光入射口)422が形成されている。
【0044】
回転機構43は、上端に枠板421を固定した円筒形の保持体431と、保持体431の下端に固定された回転体432と、回転体432の周面に固定された被駆動ギヤ433と、被駆動ギヤ433に噛み合う駆動ギヤ434と、駆動ギヤ434を出力軸に連結した回転駆動源435から構成されている。回転駆動源435が動作すると、駆動ギヤ434の回転が被駆動ギヤを433及び回転体432を介して保持体431に伝わり、検光子42が枠板421とともに回転する。回転機構43の回転軸は、保持体431や回転体432と同軸の鉛直方向である。
【0045】
図7に示すように、偏光方向検出系4は、検出系制御部45を有している。検出系制御部45は、演算処理部を含んでおり、検出用受光器41の出力は検出系制御部45に送られて演算処理されるようになっている。
回転駆動源435は、検出系制御部45によって制御される。即ち、検出系制御部45は、回転駆動源435を動作させて検光子42を回転原点(回転角度0°)の姿勢とした上で、偏光光を受光させ、その姿勢から検光子42を180度回転させる。検出用受光器41は、この回転の際に受光した偏光光の強度を測定して出力する。検光子42のグリッドの方向が偏光素子212のグリッドの方向と平行になれば、受光器41に入射する偏光光の強度は最大になり、検光子42のグリッドの方向が偏光素子212のグリッドの方向と直交すれば、受光器41に入射する偏光光の強度は最小になる。演算処理部は、出力された偏光光の強度を逐次比較し、偏光光の強度が最大となった際の角度を検出結果とする。回転角度については、回転駆動源435をパルスモータとしてそのパルス数から算出しても良いし、回転駆動源435にロータリーエンコーダーを設けて検出しても良い。
【0046】
実施形態の偏光光照射装置は、上記のような偏光方向検出器40により照射面Rでの偏光光の偏光軸の方向を検出するが、単に偏光方向検出器40を配置して偏光軸の方向を検出するだけでは、方向精度が十分に高い光配向処理は実現できない。というのは、偏光方向検出器40自体の配置精度が問題になるからである。以下、この点を
図8を使用して説明する。
図8は、検光子42のアライメントが必要な理由について示した平面概略図である。
【0047】
検光子回転法による偏光方向の検出においては、
図8に示すように、検出される偏光軸の方向は、回転原点を基準とした相対的な角度である。
図8において、回転原点はθ=0°(X軸)である。例えば、回転原点の検出が可能なロータリーエンコーダーを使用し、検光子400の姿勢を回転原点にしてから偏光角度の測定をする。しかしながら、その場合には、ロータリーエンコーダーが持っている回転原点が装置基準方向に対して既知の角度にアライメントされていなければならない。回転原点が装置基準方向に一致(角度0°)であれば、検出された偏光軸の方向は装置基準方向に対する角度ということになり、許容される精度の範囲内で設定配向方向に一致しているかどうか判断することができる。
しかしながら、回転原点が装置基準方向に一致しておらず、また回転原点が装置基準方向に対して何度の角度であるかわからない場合、装置基準方向に対する角度として偏光軸の方向を検出することができない。例えば、回転原点から回転を始めてθ
mの回転角度の際に受光器の出力が最大になったとしても、装置基準方向に対する回転原点の角度がわからなければ、装置基準方向に対する角度としては偏光方向を求めることはできず。したがって許容精度の範囲内で設定配向方向に一致しているかどうか判断することができない。
【0048】
勿論、装置の組み立ての際、ロータリーエンコーダーを偏光方向検出器40において基準となる部材に対して所定の姿勢で組み込み、その基準となる部材が装置基準方向に対して所定の角度となるよう偏光方向検出器40を取り付ければ、偏光軸の方向を精度良く検出することはできる。しかし、検出する偏光軸の方向は、実際の光配向のための照射面Rでの偏光光の偏光軸の方向であり、偏光軸の方向の検出を行って正しい方向に向いていることが確認できたら、偏光方向検出器40を照射面Rから取り除かなければならない。つまり、生産ラインへの装置の設置時の調整や、生産の合間での偏光光の偏光軸の監視などの状況においては、偏光方向検出器40の配置(セッティング)と取り去りとを行う必要があることを考慮しなければならない。
【0049】
この実施形態の装置は、これらの点に鑑み、偏光方向検出器40を照射面Rへの配置や照射面Rからの取り去りを行う検出器移送系と、検出器移送系による偏光方向検出器40の照射面Rへの配置の際に検光子42のアライメントを行う検光子アライナー6とを備えている。
検出器移送系は、移送機構5と、不図示の横方向移動機構とを備えている。移送機構5は、照射面R上の位置と、退避位置との間で偏光方向検出器40を移送させるものである。横方向移動機構は、照射面R上で検出位置を変更するため、移送系による移送方向と垂直な方向に偏光方向検出器40を移動させるものである。
【0050】
移送機構5は、構造の簡略化のため、ワーク搬送系2の要素を一部兼用している。具体的に説明すると、この実施形態では、偏光方向検出器40の退避位置は、照射面Rを挟んでワークWの搭載回収位置とは反対側に設定されている。退避位置は、照射面Rとほぼ同じ水平面上である。
図1に示すように、ワーク搬送系2の一対のリニアガイド23は、照射面Rを貫き、反対側の退避位置まで延びている。また、退避位置から照射面Rを貫くようにして延びる移送用駆動軸51が設けられている。移送用駆動軸51はボールねじであり、両側のリニアガイド23と平行に延びている。移送用駆動軸51には、移送用駆動源52が連結されている。
【0051】
偏光方向検出器40は、水平な姿勢の架台(以下、検出器架台)401に装着されている。
図1に示すように、一対のリニアガイド23及び移送用駆動軸51にまたがって横方向移動レール53が横架されている。横方向移送レール53は、リニアガイド23及び移送用駆動軸51に対して垂直な水平方向に延びている。検出器架台401は、横方向移動レール53の上に乗っており、不図示の横方向移動機構は、横方向移動レール53上で検出器架台401を直線移動させる機構である。不図示の横方向移動機構は、例えば自走式の機構を検出器架台401の下面に設けたり、横方向移動レール53と平行にボールねじを設けたりすることで実現することができる。
【0052】
また、横方向移動レール53の下面の両端には各々スライダ54が設けられていてリニアガイド23上を滑動するようになっている。横方向移動レール53の下面中央には被駆動ブロック55が設けられており、ボールねじである移送用駆動軸51が螺合している。したがって、移送用駆動源52により移送用駆動軸51が回転すると、リニアガイド23にガイドされながら横方向移動レール53が直線移動し、横方向移動レール53上の検出器架台401やその上の偏光方向検出器40もリニアガイド23に沿って直線移動する。
【0053】
図1に示す主制御部9は、移送用駆動源52に制御信号を送り、退避位置にある偏光方向検出器40を照射面R上の位置まで移送したり、退避位置まで戻したりする制御を行うようになっている。
尚、
図1から解るように、横方向移動レール53は、光源11の長さ方向と平行であり、不図示の横方向移動機構は、光源11の長さ方向においてどの位置を検出位置とするのかを選択する機構である。
【0054】
図9は、検光子アライナー6の概略構成を示した斜視図である。偏光方向検出器40には、検光子42の姿勢を検出するためのアライメントマーク(以下、検光子マーク)461,462が設けられている。検光子アライナー6は、各検光子マーク461,462を検出するセンサ(以下、検光子センサ)61と、検光子センサ61からの出力データに従って検光子42の姿勢を制御する制御部によって構成されている。制御部は、前述した検出系制御部45である。尚、
図9では、理解を容易にするため、検光子42と枠板421とは離して描かれているが、実際には、
図7に示すように両者は接近して配置されている。
【0055】
この実施形態では、検光子マーク461,462は、検光子42自体に設けられている。より具体的に説明すると、検光子42としては、偏光素子ユニット12と同様にグリッド偏光素子が使用されている。検光子42は、
図9中に拡大して示すように透明な板材の表面に微細なグリッド420を形成した構造である。検光子42は、グリッド420を形成した領域であるグリッド部422と、グリッドを形成していない領域であるマージン部423とを有し、グリッド部422が偏光作用を為す。尚、
図9に示すように、検光子42は、全体としては方形の板状の部材であり、枠板421によって保持されている。
【0056】
図9に示すように、検光子マーク461,462はマージン部422に形成されている。この実施形態では、検光子マーク461,462は二つ設けられている。各検光子マーク461,462は、種々のパターンで形成し得るが、この実施形態では、同じ大きさの正方形のパターンとなっている。尚、枠板421は、各検光子マーク461,462を見通すための開口424を有している。
【0057】
この実施形態では、各検光子マーク461,462の中心D
1,D
2を検出することでアライメントを行うようになっており、各検光子マーク461,462の中心D
1,D
2を結ぶ直線DLがグリッド部422におけるグリッド幅方向に一致するように精度良く形成されている。
【0058】
また、検光子42は、前述したように回転駆動源435によって回転するが、二つの検光子マーク461,462は、回転中心Cに対して均等の位置に形成されている。即ち、回転中心Cから各検光子マーク461,462の中心D
1,D
2を結ぶ直線DLに対して引いた垂線が直線DLと交わる点は、二つの検光子マーク461,462の間の中点に位置する。
【0059】
一方、検出系制御部45が有する演算処理部は、検光子センサ61の出力データを処理して検光子42のずれ量を算出し、制御データを生成する画像処理を行うものとなっている。
図10は、
図9の検光子アライナー6による検光子42のアライメントの原理について示した図である。このうち、
図10は、検光子センサ61で撮像された検光子マーク461,462の像の一例を示し、検光子マーク461,462の像のデータから検光子42のアライメントを行う原理について示している。
【0060】
この実施形態では、検光子アライナー6は、移送機構5によって偏光方向検出器40が移送される際に検光子42のアライメントをするようになっている。具体的に説明すると、移送機構5によって偏光方向検出器40が移送される際、検光子マーク461,462が検光子センサ61の真下を通る。この際、検光子センサ61によって各検光子マーク461,462が順次撮像される。
【0061】
説明の都合上、照射面Rに近い側の検光子マーク461を第一の検光子マークと呼び、退避位置に近い側の検光子マーク462を第二の検光子マークと呼ぶ。
図10(1)には、第一の検光子マーク461,462の画像が示され、(2)には第二の検光子マーク461,462の画像が示されている。
検光子センサ61は、ワークマークセンサ31と同様にCCDのようなイメージセンサであり、検出系制御部45の演算処理部は、検光子センサ61から
図10に示すような静止画のデータを取得する。
【0062】
演算処理部は、各画像を処理し、
図5の場合と同様、検光子マーク461,462の中心位置座標D
1(D
1’),D
2を特定し、D
1’とD
2の離間距離M
2を算出する。そして、既知である二つの検光子マーク461,462の中心D
1,D
2間の距離M
1より、Y軸に対する検光子42のずれ角θ
2は、θ
2=tan
−1(M
2/M
1)で求められる。
【0063】
検光子センサ61は、
図10に示す座標系のY軸が装置基準方向に一致するよう姿勢精度良く配置されている。そして、検出線DLの方向は、前述したようにグリッド幅方向であるから、算出された検出線DL(
図10も線分M
1)の傾きθ
2は、装置基準方向に対する検光子42のグリッド幅方向の角度であり、検光子42のずれ量(以下、検光子ずれ角θ
2という)である。
【0064】
演算処理部は、検光子ずれ角θ
2を算出した後、検光子ずれ角θ
2をゼロにするよう(−θ
2だけ姿勢を変更するよう)制御信号を生成するよう構成されている。
検光子ずれ角θ
2をゼロにするように−θ
2だけ検光子42を回転させれば、二つの検光子マーク461,462の中心D
1,D
2を結ぶ直線DLはY軸に一致し、装置基準方向に一致することになる。即ち、検光子42におけるグリッドの長手方向が装置基準方向に一致した状態になり、検光子42がアライメントされたことになる。この場合、演算処理部は、−θ
2を制御データとして生成し、検出系制御部45は、−θ
2だけ回転させる制御信号を回転駆動源435に送るよう構成される。また、直線DLの傾きが負である場合、+θ
2だけ回転させれば基準線はY軸に一致するので、画像処理部は+θ
2を制御データとして出力し、制御信号送信部は+θ
2だけ検光子42を回転させる制御信号を回転駆動源435に送るよう構成される。
【0065】
次に、上記のような構成を有する偏光方向検出系4を使用して偏光光の偏光軸の方向を検出する動作について説明する。
主制御部9は、移送用駆動源52を動作させ、偏光方向検出器40を退避位置から照射面R上の位置まで移送する。この際、検出系制御部45は、検光子アライナー6を動作させ、下方で通過する検光子マーク461,462を検光子センサ61で撮像させる。そして、検光子センサ61からの出力を検出系制御部45内の演算処理部が処理して制御データを生成し、制御信号として回転駆動源435に送る。この結果、検光子42がアライメントされる。したがって、偏光方向検出器40が照射面R上の位置に位置した際には、検光子42のグリッド幅方向は装置基準方向に精度良く一致した状態となる。
【0066】
この位置で偏光方向の検出を行う場合もあるが、不図示の横方向移動機構を必要に応じて動作させ、偏光方向検出器40を光源11の長さ方向に移動させて照射面R上の任意の位置(たとえば中央位置)を位置させる。
この状態で、検出系制御部45は、偏光方向検出器40に検出開始の信号を送り、回転駆動源435を回転させる。そして、検出系制御部45は、回転に伴って変化する受光器41からの出力値において最大となった回転角度を特定し、その角度を偏光方向の検出結果とする。光源11の長さ方向のある位置で偏光方向の検出を行った後、不図示の横方向移動機構を動作させ、別の位置で偏光方向の検出を行う場合もある。
【0067】
実施形態の偏光光照射装置は、上記のような構成及び動作に係る偏光方向検出系4、検出器移送系及び検光子アライナー6を備えおり、照射面Rに照射される偏光光の偏光軸の方向を精度良く検出することを可能としている。実施形態の装置は、偏光方向検出系4をさらに活かすため、光照射器1が備える偏光素子121の配置角度を調整する機構(以下、偏光素子調整機構)7を備えている。以下、この点について説明する。
【0068】
図11は、偏光素子調整機構7の概略構成を示した平面図である。
偏光素子調整機構7は、偏光方向検出系4により検出された偏光方向が装置基準方向からずれていた場合、偏光素子121の配置角度を調整し、偏光方向が装置基準方向に精度良く一致するようにするものである。偏光素子121だけ配置角度を調整するようにすれば足りるが、この実施形態では、光照射器1全体の配置角度を調整する機構が採用されている。
【0069】
図2に示すように、偏光素子ユニット12はランプハウス14に対して取り付けられており、光照射器1の一要素となっている。偏光素子調整機構7は、この実施形態では、ランプハウス14の一方の側の端面(平面視で長方形を成す側面のうち短辺に位置する面)に設けられた受けピン71と、ランプハウス14の他方の側においてランプハウス14の端面を押したり引いたりするよう設けられた二つの進退ピン72と、各進退ピン72を駆動するピン駆動源73等から構成されている。ランプハウス14の一方の端面には、受け具74が固定されており、受けピン71は、先端が受け具74に当接して設けられている。二つの進退ピン72は、これとは反対側の端面に当接して設けられている。受けピン71は、一方の端面の中央で当接しており、二つの進退ピン72は他方の端面の中央から互いの等距離の位置で当接している。
【0070】
受けピン71は位置が固定されたもので、先端の当接箇所がランプハウス14の回転の支点(回転中心)である。二つの進退ピン72は、装置基準方向に垂直な水平方向に進退するものであり、一方の進退ピン72が前進するとその距離だけ他方の進退ピン72が後退し、他方の進退ピン72が前進すると一方の進退ピン72がその距離だけ後退するよう設けられている。各進退ピン72は、マイクロメータのような精密なねじ機構により進退を行うものであり、指定された距離だけピン駆動源73によって進退する。この他、二つの進退ピン72は手動動作によっても進退が可能となっている。
【0071】
一方の進退ピン72が前進し他方の進退ピン72が後退すると、光照射器1が全体に受けピン71の先端を中心にして回転する。これにより、光照射器1内の偏光素子ユニット12も回転し、偏光素子121の姿勢が調整される。回転の角度は、偏光素子121の姿勢調整が目的なので僅かな角度であり、例えば±0.5°程度までの範囲で回転可能とされる。
【0072】
このよう偏光素子調整機構7は、装置の生産ラインへの設置の際や装置の点検の際等に使用される。例えば、光照射器1を設置した際、光源11を点灯して照射面Rに偏光光を照射し、偏光方向検出系4により偏光軸の方向を検出する。偏光ずれ角が許容範囲に入っていなければ、偏光ずれ角をゼロにするよう偏光素子調整機構7を動作させるか手動で調整する。
また、装置の稼働中、光配向が方向精度良く行われているか、随時チェックされる。即ち、装置の稼働をいったん停止し、偏光方向検出系4によって偏光軸の方向を検出する。そして偏光ずれ角が許容値以内であるかどうかチェックし、許容値を超えていれば、偏光素子調整機構7により調整を行う。
【0073】
このような調整を随時行うことで、照射面Rには偏光軸の方向が装置基準方向に精度良く向いた偏光光が常時照射されることになる。したがって、前述したようにワークアライナー3によってワークWをアライメントし、設定配向方向が装置基準方向に精度良く向くようにワークWをステージ21に搭載して照射面Rに搬送すれば、ワークWは設定配向方向に精度良く光配向されることになる。
【0074】
次に、実施形態の光配向用偏光光照射装置の全体の動作について説明する。以下の説明は、光配向用偏光光照射方法の発明の実施形態の説明でもある。
ワークWは、AGV(Auto Guided Vehicle)のようなロット搬送機構、又はエアコンベアのような枚葉搬送機構により不図示のロボットの位置まで搬送される。ロボットは一枚のワークWをステージ21に搭載する。
主制御部9は、ワークアライナー3を動作させ、ワークWのアライメントを行わせる。ワークWのアライメントが済んだら、主制御部9はワーク搬送系2に制御信号を送り、搬送用駆動源24を動作させてステージ21を搭載回収位置から照射面Rに移動させ、さらに照射面Rを通過させて前進限界位置に位置させる。この際、光照射器1の光源11は予め点灯しており、照射面Rの通過の際にワークWに偏光光が照射される。
【0075】
ステージ21が前進限界位置に達したのが不図示のセンサで確認されると、主制御部9は、搬送用駆動源24を逆転動作させ、搬送用駆動軸22を逆向きに回転させてステージ21を後退させる。主制御部9は、ステージ21が照射面Rを通過し、搭載回収位置まで戻ると停止させる。この復路搬送の際にも照射面Rを通過する際にワークWには偏光光が照射される。搭載回収位置まで戻ったワークWは、ロボットによりステージ21から取り上げられ、次の未処理のワークWがロボットによりステージ21に搭載される。以後、同様の動作が繰り返される。
【0076】
このような偏光光照射による光配向処理を繰り返す過程で、照射面Rでの偏光光の偏光軸の方向のチェックが随時行われる。即ち、主制御部9は、繰り返し処理をいったん停止させ、ステージ21が搭載回収位置に退避している状態で偏光方向検出系4を動作させる。主制御部9は、検出器移送系を動作させて偏光方向検出器40を退避位置から検出位置まで移送する。これらの移送動作の際、検出系制御部45は、検光子アライナー6を動作させ、検出線DLが装置基準方向に一致した状態とし、回転駆動源435にこの状態を保持させる。尚、移送機構5により光源11の直下の位置に偏光方向検出器40を位置させた後、必要に応じて不図示の横方向移動機構を動作させ、光源11の長さ方向の任意の検出位置に偏光方向検出器40を位置させる。
【0077】
偏光方向検出器40が検出位置に達したら、回転駆動源435が回転を開始する。偏光方向検出器40は、180度の回転の後、検出用受光器41の出力が最も高くなった角度を偏光軸の方向とし、装置基準方向に対するずれ角(偏光ずれ角)を算出する。偏光方向検出系4は、算出された偏光ずれ角を主制御部9に送る。
主制御部9は、検出された偏光ずれ角が許容値以内であるかどうか判断し、許容値を超えていれば、偏光素子調整機構7を動作させ、偏光ずれ角をゼロにするよう光照射器1の姿勢を調整する。主制御部9は、不図示のディスプレイを備えており、送信された偏光ずれ角や許容値内かどうかの情報がディスプレイに表示されるようになっている。尚、主制御部9のディスプレイに偏光ずれ角が表示されるのみで、偏光素子調整機構7の動作は手動で行わせる場合もある。このような偏光軸の方向精度のチェック、必要な偏光素子121の姿勢調整が行われた後、ワークWに対する偏光光照射の枚葉処理が再開される。
【0078】
実施形態の光配向用偏光光照射装置によれば、偏光軸の方向が装置基準方向に対して所定の角度になるように配置された光照射器1により照射面Rに偏光光がされ、装置基準方向に対して設定配向方向が所定の角度を成すようワークWがアライメントされた状態で照射面Rを通過するので、ワークWには偏光軸の方向精度が高い偏光光が照射され、良質な光配向処理が実現される。
【0079】
その上、偏光方向検出系4を使用することで実際に照射面Rで照射されている偏光光の偏光軸を検出でき、装置基準方向に対して所定の方向に向いているかをチェックすることができる。そしてこの際、検光子アライナー6が検光子42の姿勢を調整し、検光子42の偏光軸が装置基準方向に対して所定の角度を成す姿勢を回転原点とするので、偏光方向の検出精度がより高くなる。このため、偏光ずれ角も高い精度で算出されることになり、偏光素子調整機構7による偏光ずれ角の補正も高い精度で行える。このため、より方向精度の高い光配向処理が実現できる。
【0080】
また、検光子42自体にアライメントマークが設けられているので、検光子42のアライメント精度がより高くなる。検光子マーク461,462については、検光子42以外の部材(例えば枠板421)に設けることも可能であり、当該他の部材上のマークを検出して検光子42のアライメントを行うようにしてもよい。但し、この場合、当該他の部材に対して検光子42を姿勢精度よく取り付ける必要があり、取り付け精度が低下すると、検光子42のアライメント精度低下に直結する。この実施形態では、検光子42自体にアライメントマークが設けられているので、このような煩雑さや問題はない。
【0081】
尚、この実施形態では、検光子42はグリッド偏光素子であり、検光子マーク461,462は、透明基板上にグリッド420を形成するフォトリソグラフィ工程において併せて形成することができる。即ち、グリッド形成用のフォトマスクに検光子マーク形成用のパターンも併せて設けておけば、検光子マーク461,462もグリッドと同時に形成でき、且つその位置精度やパターン精度は、グリッド420と同様の高い精度とすることができる。
【0082】
また、実施形態の装置では、偏光方向検出器40の照射面R上の検出位置へのセッティングと取り去りを行う検出器移送系が設けられているので、装置の生産ラインへの設置時の他に量産の合間に偏光方向の監視を行うのに適している。装置の稼働をいったん停止して作業者が手作業にて検出位置に偏光方向検出器40を配置しても良いが、面倒であるし、クリーンルーム内に作業者が立ち入るため、生産性が低下する問題もある。実施形態によれば、このような問題はない。
【0083】
また、移送機構5がワーク搬送系2の機構を一部兼用しているので、装置の構造が簡略化され、コストが安くなる。特に、この実施形態では、移送機構5は、ワーク搬送系2のリニアガイド23を利用して偏光方向検出器40を照射面R上に検出位置に位置させるので、偏光方向検出器40の位置精度や姿勢精度が高くなる。
【0084】
また、移送機構5に加え、移送機構5による移送方向に垂直な照射面R上の方向に偏光方向検出器40を移動させる横方向移動機構が設けられているので、照射面R上の任意の位置を検出位置とすることができ、例えば光源11の長さ方向において検出位置を選択したり、複数の位置で偏光方向の検出を行ったりすることが可能である。このため、照射面Rにおける偏光軸の状態を詳しく調べるのに適している。
【0085】
上記第一の実施形態の装置において、ワークアライナー3のセンサと検光子アライナー6のセンサとを一つのセンサで兼用することも可能である。例えば、ワークマークセンサ31の位置まで検出器移送系が偏光方向検出器40を移送するようにし、検光子42のアライメントの後、照射面Rまで戻して偏光方向の検出を行わせるようにしてもよい。
【0086】
次に、第二の実施形態の光配向用偏光光照射装置について説明する。
図12は、第二の実施形態の光配向用偏光光照射装置の平面概略図である。第二の実施形態の装置は、第一第二の二つのワークアライナー81,82が設けられている点で第一の実施形態と異なっており、他の点では第一の実施形態とほぼ同様である。第一のワークアライナー81は第一のワークW1のアライメントを行い、第二のワークアライナー82は第二のワークW2のアライメントを行うものである。また、
図12に示すように、二つのワークアライナー81,82を制御してワークW1,W2のアライメントを行わせる制御部(以下、ワークアライメント制御部という)80が設けられている。
【0087】
この実施形態では、第一のワークアライナー81は調整用のものであり、第一のワークW1は調整用として用意されるワークである。また、第二のワークアライナー82は量産用のものであり、第二のワークW2は光配向処理を行う対象物としての通常のワークである。第一第二のワークW1,W2には、二つのアライメントマークが設けられているが、二つのアライメントマークのパターンや形成位置は、第一の実施形態と同様である。尚、第一第二のワークW1,W2において、二つのアライメントマークは同じ位置に形成されている。
【0088】
第二の実施形態の装置も偏光方向検出系4を備えており、偏光方向検出系4は検光子アライナー6を含んでいる。検光子アライナー6が備える検光子センサ61は、同様にCCDのようなイメージセンサであり、第一のワークアライナー81はこの検光子センサ61をワークマークの検出用に兼用している。以下、このセンサを調整用センサと呼ぶ。一方、第二のワークアライナー82は、二つのワークマーク検出用のセンサ821,822を備えている。各センサ821,822も、同様にCCDのようなイメージセンサであり、以下、第一のセンサ821、第二のセンサ822とする。
【0089】
この実施形態においても、ワークアライメント制御部80が設けられている。ワークアライメント制御部80には、調整用センサ61からの信号と、第一第二のセンサ821,822からの信号とが入力されるようになっている。
調整用センサ61を使用した第一のワークW1のアライメントのための構成や動作は、第一の実施形態の場合と同様である。但し、調整用センサ61の配置位置が照射面Rを過ぎた位置にあるので、アライメントの際には、主制御部9はこの位置までステージ21を搬送する。
【0090】
第一第二のセンサ821,822を使用した第二のワークアライナー82の構成について、
図12及び
図13を使用して説明する。
図13は、第二の実施形態の装置における第二のワークアライナー82の構成を示した斜視概略図である。
図13に示すように、第二のワークアライナー82は、第一第二の二つのセンサ821,822と、演算処理部と、記憶部と、ステージ姿勢調整機構83と、調整用搬送機構とを備えている。演算処理部及び記憶部は、ワークアライメント制御部80内に設けられている。ステージ姿勢調整機構83は、第一のワークアライナー81や第一の実施形態におけるワークアライナー3が備えたものと同様であり、XYθ方向にステージ21を移動させてワークW1,W2の姿勢を調整する機構である。
【0091】
調整用搬送機構は、第一のワークW1について、調整用センサ61が撮像している状態に代えて第一第二のセンサ821,822が撮像している状態にするための機構である。センサを入れ替えるようにすることも原理的には可能であるが、精度上の問題を考慮し、この実施形態では、アライメント済みの第一のワークW1を第一第二のセンサ821,822の撮像位置まで移送する調整用搬送機構を採用しており、ワーク搬送系2を兼用している。即ち、ワーク搬送系2は、アライメント済みの第一のワークW1を、調整用センサ61による撮像位置から第一第二のセンサ821,822による撮像位置まで搬送することが可能となっている。
【0092】
より具体的に説明すると、
図12に示すように、調整用センサ61による撮像位置は、照射面Rを挟んで搭載回収位置とは反対側に設定されている。一対のリニアガイド23及び搬送用駆動軸22は、搭載回収位置から照射面Rを貫くようにして延びており、調整用センサ61は、一方のリニアガイド23のほぼ真上に位置している。したがって、ワーク搬送系2は、第一のワークW1が搭載されたステージ21を調整用センサ61による撮像位置まで搬送することが可能である。
【0093】
一方、
図12に示すように、第一第二のセンサ821,822は、搭載回収位置と照射面Rとの間の位置を臨むようにして設けられている。第一第二のセンサ821,822は、大まかには搬送ラインに沿って並んでおり、第一のセンサ821は照射面Rに近い側、第二のセンサ822は搭載回収位置に近い側に配置されている。第一第二のセンサ821、822の離間距離は、第一第二のワークマークWM1、WM2の離間距離にほぼ相当している。したがって、調整用センサ61により第一のワークW1についてアライメントが完了した後、搬送用駆動軸22を逆回転させてステージ21を所定距離後退させれば、第一のワークW1を各ワークマークWM1,WM2を各センサ821,822の直下の位置にすることができる。
【0094】
この後退における所定距離(以下、設定後退距離)は、第一第二のセンサ821,822の搬送方向での配置位置による。調整用センサ61によるアライメントの際には、第一のワークW1は調整用センサ61の撮像エリアを通過し、前進到達位置で停止する。この前進到達位置と、第一第二のセンサ821,822による撮像位置との距離が設定後退距離である。
【0095】
図14及び
図15は、
図13に示す第二のワークアライナー8におけるセンサ821,822の調整について示した図である。このうち、
図14は、上記のようにアライメント済みの第一のワークW1を搭載したステージ21を設定後退距離だけ後退させてセンサ821,822で撮像させたワークマークの像の一例を示した図である。また、
図15は、
図14に示す各ワークマークの像にしたがって行うセンサ821,822の姿勢や位置の調整について示した図である。
【0096】
図14において、
図14(1)が第一のセンサ821により撮像された第一のワークマークWM1の画像、(2)が第二のセンサ822により撮像された第二のワークマークWM2の画像である。第一のワークW1はアライメント済みであるので、第一のワークマークWM1と第二のワークマークWM2は、装置基準方向に精度良く一致している。
図14(1)(2)において、第一第二のワークマークWM1,WM2は、X軸方向にずれているが、これは第一第二のセンサ821,822が並んでいる方向が装置基準方向に一致していないためである。また、この例では、第二のワークマークWM2の画像がXY軸から傾いている。これも、第二のセンサ822が装置基準方向に対して傾いて配置されていることによる。
【0097】
この状態で二つのワークマークWM1,WM2の位置情報を記憶してもよいのであるが、量産時のアライメントをより容易にするため、二つのセンサ821,822の姿勢や位置を調整する。即ち、
図15に示すように、第二のセンサ822の姿勢を調整し、XY軸が第二のワークマークWM2のXY軸と一致するようにする。そして、各センサ821,822のXY方向の位置を調整し、第一第二のワークマークWM1,WM2が各センサ821,822の撮像面においてほぼ原点の位置に位置するようにする。
図15において、調整前のセンサ821,822が破線で示され、調整後のセンサ821,822が実線で示されている。
【0098】
各センサ821,822は、マイクロメータによりXYθ方向に位置や姿勢を調整可能な機構を備えた台座(不図示)の上に取り付けられており、この機構を操作することで
図15に示す状態とする。尚、
図12に示すように、ワークアライメント制御部80は、ディスプレイ801を備えており、各センサ821,822が撮像している各ワークマークWM1,WM2が各センサ821,822のXY軸とともに表示されるようになっている。ディスプレイ801で各ワークマークWM1,WM2の像をみながら、作業者は調整機構を操作し、
図15に示す状態とする。
【0099】
各センサ821,823の位置の調整により
図15に実線で示す状態となったら、作業者は、画像処理部に動作指令を送り、各センサ821,822による第一のワークW1の各ワークマークWM1,WM2の画像データを処理させ、その中心の位置を記憶部に記憶させる。尚、ディスプレイ801はタッチパネルとなっており、ディスプレイ801を介して指令を入力する。以下、このようにして位置が記憶されたアライメント済みの第一のワークW1の各ワークマークWM1,WM2の中心を第一の基準マーク中心C
s1、第二の基準マーク中心C
s2という。尚、この調整は、調整機構を使用した手動の調整であり、各基準マーク中心C
s1,C
s2は、XY座標の原点付近には位置するものの、原点の座標に完全に一致している訳ではない。
【0100】
また、このようにして各基準マーク中心C
s1,C
s2の位置を記憶した際のステージ21の位置は、量産時のアライメントを行う際にステージ21を位置させるべき位置である。以下、ステージ21についてのこの位置を量産時アライメント位置という。量産時アライメント位置の情報は、搭載回収位置を起点とした搬送距離の情報であり、主制御部9内に記憶部に記憶される。
ワークアライメント制御部80内の記憶部には、量産時のアライメント用のシーケンス制御プログラム(以下、量産用アライメントプログラム)が実装されている。主制御部9は、量産時のワークW2のアライメントの際にはステージ21を量産時アライメント位置に位置させるようになっている。量産用アライメントプログラムは、第二のワークW2が搭載されたステージ21が量産時アライメント位置に位置した状態で実行される。
図16は、量産時のアライメント動作について示した平面概略図であり、第二のワークW2の各ワークマークWM1、WM2を第二のワークアライナー82の各センサ821,822が撮像した状態が示されている。
【0101】
前述したように、ステージ21にはロボットによりワークWが搭載されるから、ワークWの姿勢は装置基準方向に向いておらず、ずれている。このずれは、一例として、
図16に示すような各ワークマークWM1,WMの画像として認識される。
図16には、参考のため、記憶部に中心位置が記憶された第一のワークW1の各ワークマークWM1,WM2の像が波線で示されている。
【0102】
演算処理部は、第二のワークW2の第一のワークマークWM1の像の中心(以下、第一の検出像中心)C
d1が、第一の基準マーク中心C
s1に一致し、第二のワークW2の第二のワークマークWM2の像の中心(以下、第二の検出像中心)C
d2が第二の基準マーク中心C
s2に一致するのに必要なステージ21のXYθの移動距離を算出する。このアルゴリズムはいくつかあり得るが、例えば、第一の検出像中心C
d1と第二の検出像中心C
d2とを結ぶ線分(以下、検出線分)の傾きを求め、この線分が、第一第二の基準マーク中心C
s1,C
s2とを結ぶ線分(以下、基準線分)に対してが成す角θを求める。そして、−θだけ回転させた検出線分について、基準線分に一致させるために必要なXY方向の移動距離を求め、このXY方向の距離と−θを制御信号として出力する。
【0103】
ワークアライメント制御部80は、演算処理部が出力した制御信号をステージ姿勢調整機構32に送り、算出されたXYθの距離だけステージ21を移動させワークWのアライメントを行う。これにより、第二のワークW2について第一のワークW1の姿勢及び位置が再現されたことになる。
尚、二つのセンサ821,822は、アライメント済みの第一のワークW1により位置や姿勢が調整されているので、ステージ21が量産時アライメント位置に位置した際、ロボットによる配置精度が限度以上に悪化しない限り、ワークマークWM1,WM2が撮像エリアを外れてしまってアライメント不能になることはない。もしワークマークWM1,WM2が撮像エリアを外れてしまってアライメント不能になった場合には、ステージ21を適宜移動させてワークマークWM1,WM2が捕捉される位置を探すようにすれば良い。
【0104】
量産時の装置全体の制御や動作は、第二のワークアライナー82を使用してワークW2のアライメントをする点を除き、第一の実施形態と同様である。主制御部9は、ロボットによりステージ21への第二のワークW2の搭載完了を確認した後、ワーク搬送系2に制御信号を送ってステージ21を量産時アライメント位置まで前進させる。そして、上記のように第二のワークアライナー8を使用してアライメントをする。アライメントが完了すると、主制御部9は、ワーク搬送系2に制御信号を送ってさらにステージ21を前進させ、照射面Rを通過させる。ステージ21が前進到達位置に達したら、主制御部9はステージ21を反転、後端させる。ステージ21は、後退しながら照射面Rを通過し、搭載回収位置まで戻ると停止する。その後、ロボットは露光済みのワークW2を回収する。次のワークW2に対しても同様の動作を繰り返し、枚葉処理が行われる。
【0105】
この実施形態では、量産時のワークW2のアライメントを、二つのセンサ821,822を備えた第二のワークアライナー82により行うので、アライメントに要する時間が短くなり、生産性が高くなる。第一の実施形態では、一つのセンサ31でワークマークWM1,WM2を撮像し、ワークずれ角を算出するので、ワークWをセンサ31に対して所定の方向に移動(スキャン)させる動作が必要で、且つワークずれ角の算出のための演算も複雑になり易い。このため、アライメントに要する時間が長くなる傾向がある。第二の実施形態では、量産時には二つのセンサ821,822を使用して二つのワークマークWM1,WM2を同時に撮像してワークずれ角を求めるので、ワークW2のスキャン動作は不要であり、演算処理も比較的簡単である。このため、アライメントに要する時間は短くて済む。したがって、第二の実施形態の装置によれば、光配向処理を高い方向精度で且つ高い生産性で行うことができる。
【0106】
また、この際、第二の実施形態では、アライメントされた状態の調整用のワークW1を利用して各センサ821,822の位置や姿勢を調整するので、量産時に第二のワークW2のワークマークWM1,WM2がセンサの撮像エリアを外れてしまうことがなく、アライメント不能になることはない。アライメント不能になったら、前述したようにステージ21を適宜移動させて撮像できるようにするが、第二の実施形態の装置は、この動作が必要になることはなく、この点でも生産性が高くなる。
【0107】
上記各実施形態において、設定配向方向は長方形のワークの短辺方向であったが、これは一例であり、長辺方向や対角線の方向など、ワークの特定の部位の延びる方向を基準にして他の任意の方向を設定配向方向とし得る。
装置基準方向も同様であり、リニアガイド23の長さ方向(ワークの搬送方向)以外にも、リニアガイド23の長さ方向に垂直な水平方向など、任意の方向を装置基準方向とし得る。
【0108】
装置基準方向に対する設定配向方向の角度は、上記各実施形態では0度(両者は一致)であったが、これも任意に設定できる。装置基準方向に対して設定配向方向を斜めにする場合には、特許文献2に記載したような、光照射器1の姿勢を大きく変更する機構が採用されることもある。
尚、偏光方向検出器40は、検光子42が照射面Rに一致した状態(照射面Rと同じ他高さ)とされることが望ましいが、これはとりわけ必須の条件ではない。照射面Rと検光子42が平行である限り、照射面Rに対して多少上又は下の位置であっても良い。多少上下しても、偏光光の偏光方向は照射面R上と大差ないからである。
【0109】
また、各センサ31,61,821,822はCCDセンサであったが、CCDセンサ以外のイメージセンサを使用しても良く、イメージセンサ以外のセンサを使用しても良い。例えば、一対のフォトセンサを使用し、ワークWや検光子42に設けられた各アライメントマークによる反射光の変化を捉えて各アライメントマークの位置を検出する構成を採用しても良く、アライメントマークの形状、フォトセンサの数や配置位置を工夫すれば、アライメントマークの中心を検出したり、アライメントマークの特定の線分(検出線分)を検出したりすることも可能であり、イメージセンサによる撮像と等価な構成とすることができる。
【0110】
ワークについては、板状のものを想定して説明したが、偏光方向の検出や検光子のアライメントに関する限り、特許文献1や特許文献2に開示されているような長尺なワークをロールツーロールで搬送するものについても同様に実施できる。
また、第二の実施形態において、アライメント済みの第一のワークW1の二つのワークマークの像を二つのセンサ821,822で撮像させる構成については、第一のワークW1を搬送する場合の他、二つのセンサ821,822を移送するようにしても良い。但し、第一のワークW1を搬送する構成の方が、ワーク搬送系2を兼用できるので、構造が簡略化できる。