(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施の形態を実施形態に基づいて説明する。
【0027】
A.第1実施形態:
A−1.システムの概略構成:
図1は、本発明の一実施形態としてのネットワークシステムの概略構成の変化を示す説明図である。ネットワークシステム1は、無線接続装置10と、他の無線接続装置20とを含んでいる。
図1では便宜上、説明上必要としないネットワーク中継装置、回線、端末等については図示を省略している。無線接続装置10は、IEEE802.11に準拠したアクセスポイント装置である。以降、無線接続装置10を「AP10」とも呼ぶ。同様に、他の無線接続装置20は、IEEE802.11に準拠したアクセスポイント装置である。以降、他の無線接続装置20を「AP20」とも呼ぶ。無線端末30は、IEEE802.11に準拠した無線通信インタフェースを備える無線端末である。以降、無線端末30を「端末30」とも呼ぶ。
【0028】
本実施形態では、現在運用中である既存のAP20(古いAP20)を、新しいAP10へ置換する場面を想定する。
図1(A)は、既存のAP20から新しいAP10へ置換する前のネットワークシステム1の概略構成を表している。
図1(B)は、既存のAP20から新しいAP10へ置換した後のネットワークシステム1の概略構成を表している。
【0029】
図1(A)において、AP20は、ルータとしても機能し、有線ケーブルを介してインターネットINTに接続されている。AP20には、IEEE802.11規格に準拠した無線通信を可能とするために、無線通信に関する設定情報が記憶されている。「無線通信に関する設定情報」とは、例えば、無線LAN(Local Area Network)の混信を避けるためのSSID(Service Set Identifier)、無線通信における認証/暗号化方式(WEP:Wired Equivalent Privacy、WPA:Wi-Fi Protected Access、WPA2−PSK:Wi-Fi Protected Access 2 Pre-Shared Key等)、前記暗号化に使用される暗号鍵等である。
【0030】
さらに、AP20には、外部(インターネットINT)との通信を正しく行うために、他の設定情報が記憶されている。「他の設定情報」とは、例えば、AP20の外側(インターネットINT側)のグローバルIPアドレスを含むWAN(Wide Area Network)設定、AP20の内側のプライベートIPアドレスを含むLAN設定、グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスを相互に変換するためのNAT(Network Address Translation)設定、通過パケットのフィルタリングを行うためのファイアウォール設定、コンテンツのフィルタリングを行うためのコンテンツフィルタ設定およびペアレンタルコントロール設定、仮想プライベートネットワークを実現するためのVPN(Virtual Private Network)設定等である。
【0031】
本実施形態の複製処理では、
図1(A)に示す構成において、既存のAP20に設定されている「無線通信に関する設定情報」を、自動的に新しいAP10へ複製することができる。複製の完了後、既存のAP20から新しいAP10への置換が行われる。置換完了後は、ネットワークシステム1の構成は
図1(B)に示す構成へと変化し、利用者が使用する端末30と新しいAP10との無線通信が可能となる。なお、無線通信に関する設定情報と他の設定情報との両方を新しいAP10へ複製する例については、後述の第2実施形態で説明する。
【0032】
A−2.APの概略構成:
図2は、AP10とAP20との構成を機能的に示すブロック図である。
図2(A)はAP10の構成を示し、
図2(B)はAP20の構成を示している。
【0033】
A−2−1.AP10の概略構成:
新しいAP10は、CPU110と、設定ボタン120と、RAM130と、無線通信インタフェース(I/F)140と、有線通信インタフェース(I/F)150と、フラッシュROM160と、インジケータ170と、を備え、各構成要素はバスにより相互に接続されている。
【0034】
CPU110は、フラッシュROM160に格納されているコンピュータプログラムをRAM130に展開して実行することにより、AP10を制御する。また、CPU110は、中継処理部111、STA(Station)側AOSS処理部112、STA側WPS処理部113、接続制御部114、検出部115、案内部116の各機能を実現する。
【0035】
中継処理部111は、AP10が受信したパケットを宛先に応じて転送する中継処理を実行する。
【0036】
STA側AOSS処理部112は、AOSS(AirStation One-Touch Secure System、AOSSは登録商標)を利用した複製処理のクライアント(子機)として動作する機能部である。STA側WPS処理部113は、WPS(Wi-Fi Protected Setup)を利用した複製処理のクライアント(子機)として動作する機能部である。ここで、AOSSおよびWPSとは、いずれも、アクセスポイント(親機)が、無線通信に関する設定情報をクライアントへ自動的に設定させる機能であり、従来から知られた機能である。AOSS機能およびWPS機能はいずれも、以下のa1〜a3に示す処理を実現する。
(a1)アクセスポイントが、所定のトリガの発生を契機として、クライアントとしての装置(以降「クライアント装置」とも呼ぶ。)との間で、一時的な通信を確立する。
(a2)アクセスポイントが、確立された一時的な通信を介して、クライアント装置に対して、無線通信に関する設定情報を送信する。
(a3)クライアント装置が、受信した無線通信に関する設定情報を保存する。
ただし、WPS機能では、アクセスポイントが対応している周波数帯が複数存在する場合であっても、上記処理a2において、一の周波数帯に対応した設定情報しか送信することができない場合がある。以降の実施形態では、WPS機能の処理a2において、一の周波数帯に対応した設定情報しか送信することができないことを前提として説明する。
【0037】
本実施形態において、STA側AOSS処理部112およびSTA側WPS処理部113は、AP20に設定されている無線通信に関する設定情報を取得する「取得部」として機能する。
【0038】
接続制御部114は、無線通信インタフェース140を介しての、IEEE802.11に準拠した無線通信の接続を制御する。接続制御部114は、AP側接続制御部114xと、STA側接続制御部114yとを含んでいる。AP側接続制御部114xは、例えば端末30(
図1(B))等の他の装置を、無線通信のクライアントとしてAP10へ接続させる。この場合、AP10が無線通信のアクセスポイントとして動作する。STA側接続制御部114yは、例えばAP20等、他の無線接続装置である無線通信のアクセスポイントに対するクライアントとして、AP10を接続させる。この場合、AP10が無線通信のクライアントとして動作する。
【0039】
検出部115は、例えばAP20等の他の無線接続装置から発信されるビーコンに基づいて、他の無線接続装置が対応している電波の周波数帯を検出する。以降、ビーコンのことを「無線標識」とも呼ぶ。
【0040】
案内部116は、インジケータ170を制御して、AP10の利用者に対して複製処理に関する案内を行う。本実施形態において、複製処理に関する案内とは、AP10とAP20との間の接続のための案内と、AP10がAP20から無線通信に関する設定情報を取得するための案内と、を含む。
【0041】
設定ボタン120は、AP10の筐体に設けられたスイッチである。本実施形態では、設定ボタン120の押下が検出された時間が所定の閾値以下である場合、周知のAOSSまたはWPSが開始される。一方、設定ボタン120の押下が検出された時間が所定の閾値以上である場合、AOSSまたはWPSを利用した複製処理が開始される。なお、所定の閾値は任意に定めることができる。また、設定ボタン120は、状態を維持しないスイッチにより実現されることが好ましい。
【0042】
無線通信インタフェース140は、図示しない送受信回路を含み、アンテナを介して受信した電波の復調とデータの生成、および、アンテナを介して送信する電波の生成と変調を行う機能を有する。本実施形態の無線通信インタフェース140は、2.4GHzと、5GHzとの2つの周波数帯を使用した電波の送信が可能である。
【0043】
有線通信インタフェース150は、インターネットINT(
図1)側の回線と接続されるほか、有線ケーブルを通じてLAN内の他の装置(例えばNASやパーソナルコンピュータ等)と接続される。有線通信インタフェース150は、図示しないPHY/MACコントローラを含み、受信した信号の波形を整えるほか、受信した信号からMACフレームを取り出す機能を有する。
【0044】
フラッシュROM160には、プリセット設定情報161と、設定情報記憶領域162とが含まれている。プリセット設定情報161には、AP10の工場出荷時において、予め設定された無線通信に関する設定情報が記憶されている。設定情報記憶領域162は、複製処理においてAP20から取得した無線通信に関する設定情報を記憶させるための領域である。なお、フラッシュROM160は「記憶部」として機能する。
【0045】
インジケータ170はLED(Light Emitting Diode)、LCD(Liquid Crystal Display)、液晶画面などで構成される。LEDによる案内の場合、色、点灯/点滅/消灯の状態や、点滅パターン等により案内情報を表示する。LCDや液晶画面を用いる場合、文字や絵を用いて案内情報を表示する。
【0046】
A−2−2.AP20の概略構成:
既存のAP20は、CPU210と、設定ボタン220と、RAM230と、無線通信インタフェース240と、有線通信インタフェース250と、フラッシュROM260と、を備え、各構成要素はバスにより相互に接続されている。
【0047】
CPU210は、フラッシュROM260に格納されているコンピュータプログラムをRAM230に展開して実行することにより、AP20を制御する。また、CPU210は、中継処理部211、AP側AOSS処理部212、AP側WPS処理部213、AP側接続制御部214の各機能を実現する。
【0048】
中継処理部211は、AP20が受信したパケットを宛先に応じて転送する中継処理を実行する。
【0049】
AP側AOSS処理部212は、AOSSを利用した複製処理のアクセスポイント(親機)として動作する機能部である。AP側WPS処理部213は、WPSを利用した複製処理のアクセスポイント(親機)およびレジストラとして動作する機能部である。なお、AP側AOSS処理部212と、AP側WPS処理部213とは、いずれか一方を省略してもよい。なお、本実施形態におけるWPSはWPS−PBC(Wi-Fi Protected Setup-Push Button Configuration、プッシュボタン方式によるWPS)であり、AP側WPS処理部213は、アクセスポイントとしての動作に加えて、クライアント装置の登録などを行うレジストラとしても機能する。
【0050】
AP側接続制御部214は、無線通信インタフェース240を介しての、IEEE802.11に準拠した無線通信の接続を制御する。AP側接続制御部214は、例えばAP10等の他の装置を、無線通信のクライアントとしてAP20へ接続させる。
【0051】
認証処理部215は、AP20の利用者の正当性および権限を認証する認証処理を実行する。認証処理部215は、認証に成功した利用者による他の設定情報262の閲覧等を許可する。なお、本実施形態では、認証情報として、ユーザIDとパスワードの組み合わせを使用する。
【0052】
設定ボタン220は、AP20の筐体に設けられたスイッチであり、設定ボタン220押下の検出により、AOSSまたはWPSが開始される。なお、設定ボタン220は、状態を維持しないスイッチにより実現されることが好ましい。
【0053】
無線通信インタフェース240は、図示しない送受信回路を含み、アンテナを介して受信した電波の復調とデータの生成、および、アンテナを介して送信する電波の生成と変調を行う。本実施形態の無線通信インタフェース240は、2.4GHzと、5GHzとの2つの周波数帯を使用した電波の送信が可能である。
【0054】
有線通信インタフェース250は、インターネットINT(
図1)側の回線と接続されるほか、有線ケーブルを通じてLAN内の他の装置(例えばNASやパーソナルコンピュータ等)と接続される。有線通信インタフェース250は、図示しないPHY/MACコントローラを含み、受信した信号の波形を整えるほか、受信した信号からMACフレームを取り出す。
【0055】
フラッシュROM260には、設定情報261と、他の設定情報262とが含まれている。設定情報261には、
図1で説明した無線通信に関する設定情報が記憶されている。他の設定情報262には、
図1で説明した他の設定情報が記憶されている。なお、AP20においても、AP10と同様のインジケータを有していてもよい。
【0056】
A−3.複製処理:
以降、本実施形態のAP10を用いた複製処理の手順について説明する。本実施形態のAP10が実行可能な複製処理には、以下の2種類が存在する。
・AOSSを利用した複製処理
・WPSを利用した複製処理
どちらの複製処理が実行されるかは、既存のAP20の構成によって決定される。AP20がAOSSとWPSとの両方に対応している場合、換言すれば、AP20がAP側AOSS処理部212とAP側WPS処理部213との両方を備えている場合は、AOSSを利用した複製処理が優先して実行される。一方、AP20がWPSにしか対応していない場合、換言すれば、AP20がAP側WPS処理部213しか備えていない場合は、WPSを利用した複製処理が実行される。なお、AP20がAP側AOSS処理部212とAP側WPS処理部213との両方を備えている場合であっても、AP20のセキュリティ設定の内容、例えば、無線通信における認証/暗号化方式の有無または種類によっては、AOSSを利用した複製処理に代えて、WPSを利用した複製処理が実行されてもよい。具体的には、例えば、無線通信における認証/暗号化方式が無い場合、換言すれば、認証/暗号化方式がOPEN設定である場合には、WPSを利用した複製処理が実行されてもよい。また、無線通信における認証/暗号化方式がWPA2−EAP(Wi-Fi Protected Access 2 Extensible Authentication Protocol)設定である場合には、AOSSを利用した複製処理が実行されてもよい。
【0057】
A−3−1.AOSSを利用した複製処理:
図3は、AOSSを利用した複製処理の手順を示すシーケンス図である。ステップS102において利用者は、新しいAP10の設定ボタン120を押下する。
【0058】
ステップS104において、所定の閾値を超える時間にわたる設定ボタン120の押下を検出したAP10は、AOSSのクライアントとしての動作を開始する。具体的には、AP10は、STA側接続制御部114yを起動することにより、AP10をSTA(Station)モードで起動させる。また、AP10は、STA側AOSS処理部112を起動することにより、AOSS機能を実現可能とする。その後、AP10のSTA側接続制御部114yは、AP(Access Point)スキャンを実施する。APスキャンとは、電波到達範囲内に存在するアクセスポイントを検出する操作の名称である。なお、本実施形態におけるAPスキャンの実行回数は、1度でもよいし複数回でもよい。
【0059】
ステップS106においてAP10の案内部116は、AP10とAP20との間の接続のための案内として、インジケータ170の点灯または点滅状態をパターン1に変化させる。本実施形態では、インジケータ170のパターン1点灯は、利用者に対して「既存のAP20の設定ボタン220を押下すること」を促す意味を持つ。
【0060】
ステップS108において利用者は、ステップS106の案内に従って、AP20の設定ボタン220を押下する。
【0061】
ステップS110において、設定ボタン220の押下を検出したAP20は、AOSSのアクセスポイントとしての動作を開始する。具体的には、AP20は、AP側接続制御部214を起動することにより、AP20をAPモードで起動させる。また、AP20は、AP側AOSS処理部212を起動することにより、AOSS機能を実現可能とする。
【0062】
ステップS114においてAP10のSTA側接続制御部114yは、APスキャンを繰り返し行い、APモードで起動されたAP20を検出する。その後、STA側接続制御部114yは、検出されたAP20に対して、任意の周波数帯を使用してAOSS接続を行う。この結果、AP10とAP20との間で、上述の処理a1で説明した一時的な通信が確立される。
【0063】
ステップS116においてAP10の案内部116は、無線通信に関する設定情報を取得するための案内として、インジケータ170の点灯または点滅状態をパターン2に変化させる。本実施形態では、インジケータ170のパターン2点灯は、利用者に対して「既存のAP20から新しいAP10への無線通信に関する設定情報の複製中(すなわちAP20からAP10への引っ越し中)であること」を通知する意味を持つ。
【0064】
ステップS118においてAP20のAP側AOSS処理部212は、AP10に対して、AP20が対応している全ての周波数帯の無線通信に関する設定情報を送信する。ステップS118における情報の送信は、上述の処理a2で説明したAOSS機能を利用して行われる。
【0065】
ステップS120においてAP10のSTA側AOSS処理部112は、AP20から無線通信に関する設定情報を取得する。STA側AOSS処理部112は、取得した無線通信に関する設定情報を設定情報記憶領域162に保存する。STA側AOSS処理部112は、STA側接続制御部114yに、AP20との間で確立した一時的な通信を切断させた後、処理を終了する。
【0066】
ステップS122においてAP20のAP側AOSS処理部212は、AP側接続制御部214に、AP10との間で確立した一時的な通信を切断させた後、処理を終了する。
【0067】
ステップS124においてAP10の案内部116は、無線通信に関する設定情報を取得するための案内として、インジケータ170の点灯または点滅状態をパターン3に変化させる。本実施形態では、インジケータ170のパターン3点灯は、利用者に対して「既存のAP20から新しいAP10への無線通信に関する設定情報の複製が終了(すなわちAP20からAP10への引っ越しが終了)したこと」を通知する意味を持つ。
【0068】
ステップS126においてAP10は、STA側接続制御部114yの処理を終了させることで、AP10のSTAモードを終了する。
【0069】
ステップS128においてAP10は、設定情報記憶領域162の設定情報を適用したAPモードで起動する。具体的には、AP10は、AP側接続制御部114xを起動することにより、AP10をAPモードで起動させる。また、AP側接続制御部114xの処理に使用される情報として、設定情報記憶領域162に記憶されている設定情報、すなわち、AP20が対応していた全ての周波数帯の無線通信に関する設定情報を適用する。
【0070】
このように、AOSSを利用した複製処理では、新しいAP10のSTA側AOSS処理部112(取得部)は、既存のAP20(他の無線接続装置)が対応している全ての周波数帯の無線通信に関する設定情報を一時に取得するため、AP20に設定されている設定情報を迅速に取得することができる。なお、上記処理におけるインジケータの点灯パターン1〜3は、相互に識別可能な態様である限り、任意の色および点灯パターンの組み合わせを採用可能である。
【0071】
A−3−2.WPSを利用した複製処理:
図4は、WPSを利用した複製処理の手順を示すシーケンス図である。
図3に示したAOSSを利用した複製処理との違いは、ステップS104、S110、S114、S118、S120、S122に代えて、ステップS202〜S230を備える点である。以降、
図3と同じステップ番号を持つ処理については、内容を省略して記載するが、詳細は
図3と同様である。なお、
図4に示す例は、WPS機能の処理a2において、一の周波数帯に対応した設定情報しか送信することができない場合の処理の流れである。
【0072】
ステップS102において利用者は、新しいAP10の設定ボタン120を押下する。ステップS202において、所定の閾値を超える時間にわたる設定ボタン120の押下を検出したAP10は、WPSのクライアントとしての動作を開始する。具体的には、AP10は、STA側接続制御部114yを起動させることにより、AP10をSTAモードで起動させる。また、AP10は、STA側WPS処理部113を起動することにより、WPS機能を実現可能とする。その後、STA側接続制御部114yはAPスキャンを実施する。
【0073】
ステップS106においてAP10の案内部116は、インジケータ170をパターン1点灯させる。ステップS108において利用者は、ステップS106の案内に従って、AP20の設定ボタン220を押下する。
【0074】
ステップS204において、設定ボタン220の押下を検出したAP20は、WPSのアクセスポイントおよびレジストラとしての動作を開始する。具体的には、AP20は、AP側接続制御部214を起動することにより、AP20をAPモードで起動させる。また、AP20は、AP側WPS処理部213を起動することにより、WPS機能を実現可能とする。
【0075】
ステップS206においてAP10のSTA側接続制御部114yは、APスキャンを繰り返し行い、APモードで起動されたAP20を検出する。その後、AP10の検出部115は、検出されたAP20が対応している周波数帯の検出を開始する。
【0076】
図5は、AP20の対応周波数帯の検出方法について説明するための説明図である。
図5(A)は、AP20の対応周波数帯の検出開始後の時刻t1におけるAP10およびAP20を表している。時刻t1において、AP10の検出部115は、AP10の無線通信インタフェース140が対応している第1の周波数帯(例えば、2.4GHz)を使用して、AP20から発信されているビーコンの受信を試みる(
図5(A))。検出部115は、第1の周波数帯のビーコンを受信できた場合、ビーコンに含まれているUUID(Universally Unique IDentifier)を取得し、取得したUUIDをフラッシュROM160に記憶させる。なお、UUIDは、ビーコンの送信元がAP20であることを特定するために用いられる一意な識別子である。
【0077】
一方、検出部115が第1の周波数帯のビーコンを受信できない場合、
図5の検出処理を終了し、処理を
図4の複製処理のステップS126に遷移させる。
【0078】
図5(B)は、時刻t1より後の時刻t2におけるAP10およびAP20を表している。時刻t2において、AP10の検出部115は、AP10の無線通信インタフェース140が対応している第1の周波数帯とは異なる第2の周波数帯(例えば、5GHz)を使用して、AP20から発信されているビーコンの受信を試みる(
図5(B))。検出部115は、第2の周波数帯のビーコンを受信できた場合、ビーコンに含まれるUUIDを取得する。検出部115は、取得したUUIDと、時刻t1においてフラッシュROM160に記憶させたUUIDとを比較して、UUIDが一致するか否かを判定する。UUIDが一致する場合、検出部115は、AP20の対応周波数帯は、時刻t1で検出した第1の周波数帯(2.4GHz)と、時刻t2で検出した第2の周波数帯(5GHz)であると特定する。
【0079】
一方、検出部115が第2の周波数帯のビーコンを受信できない場合、または、UUIDが一致しない場合、検出部115は、AP20の対応周波数帯は、時刻t1で検出した第1の周波数帯(2.4GHz)であると特定する。
【0080】
AP10の検出部115は、AP10の無線通信インタフェース140が3つ以上の周波数帯に対応している場合は、対応している全ての周波数帯について時刻t2と同様の処理を繰り返し実行することで、AP20の対応周波数帯を検出する。
【0081】
このように、AP10の検出部115は、AP20(他の無線接続装置)から発信されるビーコンに基づいて、AP20が対応している周波数帯を検出することができる。この結果、以降の複製処理において、STA側WPS処理部113は、検出部115により検出された周波数帯に対して、無線通信に関する設定情報の取得を順次試みることができる。
【0082】
図4のステップS208においてSTA側接続制御部114yは、AP20に対して、ステップS206で検出された第1の周波数帯を使用してWPS接続を行う。この結果、AP10とAP20との間で第1の周波数帯を使用して、上述の処理a1と同様の一時的な通信が確立される。ステップS116においてAP10の案内部116は、インジケータ170をパターン2点灯させる。
【0083】
ステップS210においてAP20のAP側WPS処理部213は、AP10に対して、一時的な通信に使用されている周波数帯、すなわち、第1の周波数帯の無線通信に関する設定情報を送信する。ステップS210における情報の送信は、上述の処理a2と同様のWPS機能を利用して行われる。
【0084】
ステップS212においてAP10のSTA側WPS処理部113は、AP20から無線通信に関する設定情報を取得する。STA側WPS処理部113は、取得した無線通信に関する設定情報を設定情報記憶領域162に保存する。STA側WPS処理部113は、STA側接続制御部114yに、AP20との間で確立した一時的な通信を切断させた後、処理を終了する。
【0085】
ステップS214においてAP20のAP側WPS処理部213は、AP側接続制御部214に、AP10との間で確立した一時的な通信を切断させた後、処理を終了する。
【0086】
ステップS215においてAP10の案内部116は、インジケータ170の点灯または点滅状態をパターン4に変化させる。本実施形態では、インジケータ170のパターン4点灯は、利用者に対して「既存のAP20から新しいAP10への無線通信に関する設定情報の複製が部分的に終了したこと」を通知する意味を持つ。
【0087】
なお、WPS機能の処理a2において、AP20が全ての周波数帯に対応した設定情報を送信可能な場合、ステップS212においてSTA側WPS処理部113は、全ての周波数帯に対応した無線通信に関する設定情報を取得することができる。この場合、STA側WPS処理部113は、取得した無線通信に関する設定情報を設定情報記憶領域162に保存した後、処理をステップS124へ遷移させる。その結果、インジケータ170がパターン3点灯された後、AP10のSTAモードが終了し、AP10は、設定情報記憶領域162の設定情報を適用したAPモードで起動する。
【0088】
ステップS216においてAP10のSTA側WPS処理部113は、再びWPS機能を開始する。その後、STA側接続制御部114yは、APスキャンを実施する。ステップS220において利用者は、AP20の設定ボタン220を再び押下する。
【0089】
ステップS222において、設定ボタン220の押下を検出したAP20は、WPSのアクセスポイントおよびレジストラとしての動作を開始する。詳細はステップS204と同様である。
【0090】
ステップS224においてAP10のSTA側接続制御部114yは、APスキャンを繰り返し行い、APモードで起動されたAP20を検出する。その後、STA側接続制御部114yは、AP20に対して、ステップS206で検出されたAP20の対応周波数帯のうち、ステップS208でのWPS接続に使用した周波数帯とは異なる周波数帯(すなわち、第2の周波数帯)を使用してWPS接続を行う。この結果、AP10とAP20との間で第2の周波数帯を使用して、上述の処理a1と同様の一時的な通信が確立される。ステップS226においてAP10の案内部116は、インジケータ170をパターン2点灯させる。詳細は
図3のステップS116と同様である。
【0091】
ステップS228においてAP20のAP側WPS処理部213は、AP10に対して、一時的な通信に使用されている周波数帯、すなわち、第2の周波数帯の無線通信に関する設定情報を送信する。ステップS228における情報の送信は、上述の処理a2と同様のWPS機能を利用して行われる。
【0092】
ステップS230においてAP10のSTA側WPS処理部113は、AP20から無線通信に関する設定情報を取得する。STA側WPS処理部113は、取得した無線通信に関する設定情報を、ステップS212で取得した第1の周波数帯の設定情報とは区別して、設定情報記憶領域162に保存する。STA側WPS処理部113は、STA側接続制御部114yに、AP20との間で確立した一時的な通信を切断させた後、処理を終了する。
【0093】
なお、ステップS206で検出されたAP20の対応周波数帯が3つ以上ある場合、AP10が全ての周波数帯の無線通信に関する設定情報を取得するまで、上述のステップS216〜S230を繰り返し実行する。この結果、ステップS206で検出されたAP20の対応周波数帯がN個であれば、ステップS216〜S230の処理が(N−1)回繰り返される。
【0094】
全ての周波数帯の設定情報を取得後、ステップS232においてAP20のAP側WPS処理部213は、AP側接続制御部214に、AP10との間で確立した一時的な通信を切断させた後、処理を終了する。
【0095】
ステップS124においてAP10の案内部116は、インジケータ170をパターン3点灯させる。ステップS126においてAP10は、AP10のSTAモードを終了し、ステップS128においてAP10は、設定情報記憶領域162の設定情報を適用したAPモードで起動する。
【0096】
このように、WPSを利用した複製処理では、新しいAP10のSTA側WPS処理部113(取得部)は、既存のAP20(他の無線接続装置)が対応している複数の周波数帯の無線通信に関する設定情報を、第1の周波数帯の設定情報、第2の周波数帯の設定情報、というように、順次取得する。このため、AP20に設定されている設定情報を、AP20の対応周波数帯ごとに分割して取得することができる。なお、上記処理におけるインジケータの点灯パターン1〜4は、相互に識別可能な態様である限り、任意の色および点灯パターンの組み合わせを採用可能である。
【0097】
さらに、WPSを利用した複製処理のステップS208、S224によれば、STA側接続制御部114y(接続制御部)は、新しいAP10(無線接続装置)が既存のAP20(他の無線接続装置)に対してWPS接続する際に、STA側WPS処理部113(取得部)が無線通信に関する設定情報を取得しようとする周波数帯を使用して接続する。このため、STA側WPS処理部113は、AP20が提供する方式(WPS機能)を利用して、簡便に、無線通信に関する設定情報の取得を行うことができる。
【0098】
さらに、WPSを利用した複製処理のステップS218によれば、新しいAP10の案内部116は、一の周波数帯(
図4の例では第1の周波数帯)の無線通信に関する設定情報の取得が終了した後、既存のAP20(他の無線接続装置)が対応する複数の周波数帯の無線通信に関する設定情報の中で、未だ取得がされていない設定情報がある場合に、その旨を利用者へ案内することができる。この結果、利用者におけるユーザビリティを向上することができる。また、AP20が対応している複数の周波数帯についての無線通信に関する設定情報を順次取得する構成、換言すれば、WPSを利用した複製処理を実現する構成における、設定情報の取得漏れの発生を抑制することができる。
【0099】
以上のようにして、AOSSを利用した複製処理(
図3)、または、WPSを利用した複製処理(
図4)が完了した後は、ネットワークシステム1の構成は
図1(B)に示す構成へと変化し、利用者が使用する端末30と、新しいAP10との無線通信が可能となる。
【0100】
なお、AOSSを利用した複製処理(
図3)、または、WPSを利用した複製処理(
図4)が完了した後において、新しいAP10または既存のAP20の少なくともいずれか一方に対して、以下に説明するb1〜b7のいずれかの処理を実行させてもよい。なお、処理b1〜b6は組み合わせて実行されてもよい。
【0101】
(b1)APの電源を自動的に落とす。
(b2)APの電源が落とされるまでの間、ビーコンの送信を停止する。
(b3)APの電源が落とされるまでの間、他のAPや無線端末からの問い合わせ(プローブ要求等)に基づく処理を停止する。
(b4)APの電源が落とされるまでの間、他のAPや無線端末からの接続要求(アソシエーション要求、認証要求)に基づく処理を停止する。
(b5)APのインジケータや液晶画面等の表示装置を用いて、同一の無線通信に関する設定に基づいて動作しているAPが複数存在する旨の警告を表示する。
(b6)APに対して予め登録されているメールアドレスに対して、同一の無線通信に関する設定に基づいて動作しているAPが複数存在する旨の警告文を送信する。
(b7)APスキャンを実施し、自身と同じSSIDのビーコンを発信している他のAPを検出した場合に、上記処理b1〜b6のいずれかの処理を実行する。
【0102】
このように、処理b1〜b7によれば、ネットワークシステム1内において同一の無線通信に関する設定情報を持つ2つのアクセスポイント(具体的には、AP10と、AP20)が存在することに伴う問題の発生を回避することができる。
【0103】
さらに、AOSSを利用した複製処理(
図3)、または、WPSを利用した複製処理(
図4)が完了した後において、新しいAP10に対して、以下に説明するc1〜c3のいずれかの処理を実行させてもよい。
【0104】
(c1)AP10は、既存のAP20のセキュリティ設定の内容(例えば、無線通信における認証/暗号化方式の有無、または、種類)が一定のセキュリティレベルよりも低いと判断した場合、設定情報記憶領域162に保存した無線通信に関する設定情報を、利用者からの指示があるまで有効にしない。利用者からの指示は、例えば、HTTP(HyperText Transfer Protocol)等の手段により提供されるAP10の設定画面を介して与えられてもよい。このようにすれば、AP10の利用者は、既存のAP20から複製した無線通信に関する設定情報のセキュリティレベルを確認した上で、設定情報を有効にすることができる。
(c2)既存のAP20のセキュリティ設定の内容(例えば、無線通信における認証/暗号化方式の有無、または、種類)が一定のセキュリティレベルよりも低いと判断した場合であっても、ネットワークシステム1に属する無線端末(例えば端末30)において対応可能な認証/暗号化方式の種類が、上記「一定のセキュリティレベル」に到達しない場合、AP10は、利用者からの指示に依らずとも、設定情報記憶領域162に保存した無線通信に関する設定情報を、即時有効にしてもよい。
(c3)AP10は、
図3のステップS120、または、
図4のステップS212、S230において、既存のAP20のセキュリティ設定の内容(例えば、無線通信における認証/暗号化方式の有無、または、種類)が一定のセキュリティレベルよりも低いと判断した場合に、当該無線通信に関する設定情報の設定情報記憶領域162への保存を省略してもよい。
【0105】
このように、処理c1〜c3によれば、AP10は、AP20のセキュリティに関する設定内容に応じて、取得された設定情報の記憶と、取得された設定情報を用いた起動と、のうちの少なくともいずれか一方を省略することができる。このため、AP20のセキュリティが低い場合などに、当該AP20の設定情報がAP10にそのまま適用されることを抑制することができる。
【0106】
以上のように、第1実施形態によれば、STA側AOSS処理部112またはSTA側WPS処理部113(取得部)は、既存のAP20(他の無線接続装置)に対する無線通信のクライアントとしての接続(AOSS接続、WPS接続)を介して、AP20が提供する無線通信の設定を実施する方式(AOSS機能、WPS機能)に基づいて、簡便に、AP20に設定されている無線通信に関する設定情報を取得することができる。また、取得された無線通信に関する設定情報は、新しいAP10(無線接続装置)に予め設定されている無線通信に関する設定情報、すなわち、プリセット設定情報161に記憶されている設定情報とは区別して記憶される。このため、上述の処理b1〜b7等の方法によって、既存のAP20から新しいAP10への置換のタイミングを制御することが可能となる。このため、既存のAP20から新しいAP10への置換がなされた後における誤動作のリスクを低減することができる。さらに、STA側AOSS処理部112またはSTA側WPS処理部113(取得部)によって取得された無線通信に関する設定情報は、AP10に予め設定されている設定情報(プリセット設定情報161)とは区別して記憶される。このため、AP20から無線通信に関する設定情報を取得する前後において、一貫して、AP10に予め設定されている設定情報(プリセット設定情報161)を維持することができる。これらの結果、AP20に設定されている無線通信に関する設定情報を、外部装置や特別な装置を必要とせずに複製することが可能なAP10であって、AP20からAP10への置換がなされた後における誤動作のリスクを低減可能なAP10を提供することができる。
【0107】
さらに、第1実施形態によれば、AP10の案内部116は、AP10(無線接続装置)の利用者に対して、接続(AOSS接続、WPS接続)のための案内と、無線通信に関する設定情報の取得のための案内と、のうちの少なくともいずれか一方を実施することができる。この結果、利用者におけるユーザビリティを向上させることができる。さらに、第1実施形態(
図3のステップS104、
図4のステップS202)によれば、利用者は、AP10(無線接続装置)に直接触れる形態を利用して、AP10を既存のAP20(他の無線接続装置)に接続させることができる。さらに、第1実施形態(
図3、
図4のステップS128)によれば、AP10(無線接続装置)は、無線通信に関する設定情報の取得が終了後、自動的に、取得された設定情報を用いてアクセスポイントとして起動することができる。
【0108】
B.第2実施形態:
本発明の第2実施形態では、第1実施形態で説明した複製処理、すなわち、既存のAPに設定されている「無線通信に関する設定情報」を新しいAPへ複製する複製処理において、さらに、既存のAPに設定されている「他の設定情報」を新しいAPへ複製することが可能な構成について説明する。以下では、第1実施形態と異なる構成および動作を有する部分についてのみ説明する。なお、図中において第1実施形態と同様の構成部分については先に説明した第1実施形態と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0109】
B−1.システムの概略構成:
図6は、第2実施形態におけるネットワークシステムの概略構成の変化を示す説明図である。
図1に示した第1実施形態との主たる違いは、AP10に代えてAP10aを備える点である。本実施形態では、現在運用中である既存のAP20を、新しいAP10aへ置換する場面を想定する。
【0110】
図6(A)は、既存のAP20から新しいAP10aへ置換する前のネットワークシステム1aの概略構成を表している。
図6(A)の構成は、
図1で説明した第1実施形態と同様である。本実施形態の複製処理では、
図6(A)に示す構成において、既存のAP20に設定されている「無線通信に関する設定情報」と、「他の設定情報」との両方を、自動的に新しいAP10aへ複製することができる。複製の完了後、既存のAP20から新しいAP10aへの置換が行われる。
図6(B)は、既存のAP20から新しいAP10aへ置換した後のネットワークシステム1aの概略構成を表している。置換完了後は、ネットワークシステム1aの構成は
図6(B)に示す構成へと変化し、利用者の端末30は新しいAP10aとの無線通信、および、新しいAP10aを介したインターネットINTへの通信が可能となる。
【0111】
B−2.APの概略構成:
図7は、AP10aとAP20との構成を機能的に示すブロック図である。
図7(A)はAP10aの構成を示し、
図7(B)はAP20の構成を示している。
図2に示した第1実施形態との違いは、AP10aが、CPU110に代えてCPU110aを備える点と、フラッシュROM160に代えてフラッシュROM160aを備える点である。
【0112】
CPU110aは、STA側AOSS処理部112に代えてSTA側AOSS処理部112aを備え、STA側WPS処理部113に代えてSTA側WPS処理部113aを備えている。STA側AOSS処理部112aは、AOSSを利用した複製処理の処理内容が、
図3に示した第1実施形態とは異なる。STA側WPS処理部113aは、WPSを利用した複製処理の処理内容が、
図4に示した第1実施形態とは異なる。
【0113】
フラッシュROM160aは、プリセット設定情報161と、設定情報記憶領域162とに加えてさらに、認証情報163と、他の設定情報記憶領域164と、を備えている。認証情報163には、第2実施形態の複製処理において、AP10がAP20から認証を受ける際に使用される認証情報の候補が予め記憶されている。認証情報の候補とは、一般的によく用いられるユーザIDとパスワードとの組み合わせである。認証情報163には、これらの認証情報の候補が1パターンまたは複数パターン記憶されている。他の設定情報記憶領域164は、複製処理においてAP20から取得した他の設定情報を記憶させるための領域である。
【0114】
B−3.複製処理:
B−3−1.AOSSを利用した複製処理:
第2実施形態におけるAOSSを利用した複製処理において、AP10aは、第1実施形態のAOSSを利用した複製処理(
図3)のステップS120の「一時的な通信の切断」の終了後に、以降に説明する他の設定情報の取得処理を実行する。他の設定情報の取得処理の終了後、AP10aは、
図3のステップS124に戻って処理を継続する。
【0115】
B−3−2.WPSを利用した複製処理:
第2実施形態におけるWPSを利用した複製処理において、AP10aは、第1実施形態のWPSを利用した複製処理(
図4)のステップS230の「一時的な通信の切断」の終了後に、以降に説明する他の設定情報の取得処理を実行する。他の設定情報の取得処理の終了後、AP10aは、
図4のステップS124に戻って処理を継続する。
【0116】
B−3−3.他の設定情報の取得処理:
図8は、他の設定情報の取得処理の手順を示すシーケンス図である。他の設定情報の取得処理の手順は、AOSSを利用した複製処理と、WPSを利用した複製処理との両方に共通である。このため、以降では、AOSSを利用した複製処理に適用された場合を例示して説明する。WPSを利用した複製処理において本処理を適用する場合は、文中の「STA側AOSS処理部112a」との記載を「STA側WPS処理部113a」との記載に読み替える。
【0117】
ステップS302においてAP10aのSTA側接続制御部114yは、複製処理において取得した無線通信に関する設定情報を使用して、AP20へ接続する。AP10aのSTA側AOSS処理部112aは、AP20に対して、他の設定情報の要求を送信する。
【0118】
ステップS304においてAP20の認証処理部215は、AP10aの正当性および権限を認証するために、認証情報を要求する。
【0119】
ステップS306においてAP10aのSTA側AOSS処理部112aは、認証情報163に記憶されている一の認証情報の候補(ユーザID、パスワード)を取得する。ステップS308においてSTA側AOSS処理部112aは、取得した認証情報の候補をAP20へ送信する。
【0120】
ステップS310においてAP20の認証処理部215は、受信した認証情報の候補を用いて、AP10aに対する認証処理を実行する。具体的には、認証処理部215は、受信した認証情報の候補が、予めフラッシュROM260に記憶されている認証情報と一致するか否かを判定することで認証を行う。ステップS311においてAP20の認証処理部215は、認証処理の結果(成功/失敗)をAP10aへ送信する。
【0121】
認証処理の結果が「成功」であった場合、ステップS312においてAP10aのSTA側AOSS処理部112aは、AP20に対して、他の設定情報の要求を送信する。一方、認証処理の結果が「失敗」であった場合、AP10aのSTA側AOSS処理部112aは、処理をステップS308へ遷移させ、認証情報163に記憶されている他の認証情報の候補があれば取得し、ステップS308以降の処理を継続する。
【0122】
ステップS314において認証処理部215は、他の設定情報262の内容をAP10aへ送信する。
【0123】
ステップS316においてAP10aのSTA側AOSS処理部112aは、AP20から他の設定情報を取得する。STA側AOSS処理部112aは、取得した他の設定情報を他の設定情報記憶領域164に保存し、処理を終了する。
【0124】
なお、AP10aは、他の設定情報記憶領域164に保存した設定情報を、AOSSを利用した複製処理(
図3)またはWPSを利用した複製処理(
図4)のステップS128において、即時有効にしてもよい。また、AP10aは、利用者に認証のための認証情報を要求し、他の設定情報記憶領域164に保存した設定情報を、利用者から正しい認証情報の入力を取得した後に有効にしてもよい。そうすれば、AP10aにおけるセキュリティを向上させることができる。
【0125】
以上のように、第2実施形態によれば、上記第1実施形態の効果に加えて、さらに次の効果を奏する。STA側AOSS処理部112aまたはSTA側WPS処理部113a(取得部)は、フラッシュROM160(記憶部)の認証情報163に予め記憶されている認証情報の候補(ユーザIDとパスワードの組)を用いて、AP20(他の無線接続装置)から、無線通信に関する設定情報以外の、他の設定情報を取得することができる。この結果、無線通信に関する設定情報だけでなく、他の設定情報をも複製可能なAP10a(無線接続装置)を提供することが可能となり、使用者におけるユーザビリティをより一層向上させることができる。
【0126】
C.変形例:
上記実施形態において、ハードウェアによって実現されるとした構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されるとした構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。その他、以下のような変形も可能である。
【0127】
・変形例1:
上記実施形態では、ネットワークシステムの一例を挙げた。しかし、上記実施形態におけるネットワークシステムの構成はあくまで一例であり、種々の変更が可能である。例えば、構成要素の一部を省略したり、更なる構成要素を付加したり、構成要素の一部を変更したりする変形が可能である。
【0128】
例えば、ネットワークシステムは、例えば、ルータ、スイッチ、モデム、ハブ等のネットワーク通信機器や、パーソナルコンピュータ、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistants)等のモバイル機器や、デジタルカメラ、プリンタ、ネットワークディスプレイ、スキャナ等の画像入出力機器や、オーディオ、テレビ等のAV機器や、冷蔵庫、空調機、テレビ等の家電製品や、NAS(Network Attached Storage)等の他の装置を備える構成としてもよい。
【0129】
・変形例2:
上記実施形態では、無線接続装置と、他の無線接続装置との構成の一例を挙げた。しかし、上記実施形態における構成はあくまで一例であり、種々の変更が可能である。例えば、構成要素の一部を省略したり、更なる構成要素を付加したり、構成要素の一部を変更したりする変形が可能である。
【0130】
例えば、無線接続装置および他の無線接続装置に設けられる設定ボタンは、利用者が直接触れる形態で、あるいは、無線接続装置近傍からの近距離通信の形態で、あるいは、無線接続装置が提供する情報コードをクライアントに内蔵されたカメラで撮影する形態で、無線接続装置に処理の開始指示を与えられる入力手段として構成されている限りにおいて、種々の態様を採用することができる。無線接続装置がディスプレイを備えている場合には、GUI(Graphical User Interface)により実現されてもよい。無線接続装置と無線通信可能なモバイル機器(スマートフォン等)のGUIを利用して実現されてもよい。赤外線通信や、接触型または非接触型のICカードを利用して実現されてもよい。QRコード(登録商標)やバーコード、ホログラム等の情報コードを利用して実現されてもよい。このようにすれば、悪意のある第三者が、利用者の意図に反して無線接続装置に複製処理の開始指示を与えることを抑制することができ、通信情報や暗号化情報が漏洩することを抑制することができる。
【0131】
例えば、無線通信インタフェースが対応している周波数帯は、3つ以上であってもよい。対応している周波数帯として2.4GHzと、5GHzとを例示したが、これらに限られない。例えば、無線通信インタフェースは、60GHzなど、その他の周波数帯に対応していてもよい。
【0132】
例えば、無線接続装置のフラッシュROMに記憶されている認証情報の候補は、工場出荷時において予め設定されたプリセット値でもよいし、複製処理に先立って予め利用者から取得して記憶されている値でもよい。
【0133】
例えば、無線接続装置や他の無線接続装置は、ルータとしての機能を持たなくてもよい。また、例えば、他の無線接続装置において、AP側AOSS処理部と、AP側WPS処理部とは、いずれか一方を省略してもよい。また、例えば、無線接続装置と他の無線接続装置とにおいて、有線通信インタフェースは省略してもよい。
【0134】
例えば、無線接続装置と他の無線接続装置とにおいて、フラッシュROMは異なる記憶媒体で構成されていてもよい。例えば、無線接続装置と他の無線接続装置とは、フラッシュROMに代えて、USBメモリやUSBハードディスク等の着脱可能な記憶媒体を備えていてもよい。また、例えば、上記実施形態においてフラッシュROMに記憶されると説明した情報は、複数の記憶媒体に分散されて記憶されていてもよい。
【0135】
・変形例3:
上記実施形態では、複製処理(AOSSを利用した複製処理、WPSを利用した複製処理)の一例を示した。しかし、上記実施形態における処理の手順はあくまで一例であり、種々の変形が可能である。例えば、一部のステップを省略してもよいし、更なる他のステップを追加してもよい。また、実行されるステップの順序を変更してもよい。
【0136】
例えば、複製処理に関する案内のうち、無線接続装置と他の無線接続装置との間の接続のための案内と、無線接続装置が無線通信に関する設定情報を取得するための案内と、のいずれか一方、または、両方は、省略してもよい。
【0137】
例えば、インジケータに代えて、または、インジケータと共に、音声や、液晶画面等の表示装置を用いて、複製処理に関する案内を実施してもよい。音声や、液晶画面等の表示装置を用いた場合、上述の点灯パターン1〜4に代えて、相互に識別可能な態様とされた音声パターン1〜4、または、相互に識別可能な態様とされた表示パターン1〜4を採用する。
【0138】
例えば、上記実施形態では、色分けと、点灯および点滅の使い分けと、を組み合わせて、複製処理に関する案内を実施した。しかし、色分けまたは点灯および点滅の使い分けのいずれか一方を用いて、複製処理に関する案内を実施してもよい。色分けのみで案内を行う場合は、例えば、3色以上の異なる色合いを表現することで、複製処理に関する案内を実現することができる。点灯および点滅の使い分けのみで案内を行う場合は、例えば、点滅周期を異ならせることで、複製処理に関する案内を実現することができる。
【0139】
例えば、上記実施形態では、他の無線接続装置が提供する方式であって、無線通信のクライアントとして接続されている装置に対して無線通信に関する設定情報を送信することで、クライアントへの無線通信の設定を実施する方式の例として、AOSSとWPSとを例示した。しかし、無線接続装置が実施する複製処理においては、AOSSやWPS以外の方式を利用することも可能である。
【0140】
例えば、複製処理を開始させるために設定ボタンを押下する対象となる装置を、無線接続装置と、他の無線接続装置とのいずれかとしてもよい。この場合、設定ボタンの押下を検出した側の装置(一方の装置)が、他方の装置に対して、複製処理の開始要求を送信することで、無線接続装置と、他の無線接続装置との両装置において複製処理を開始させることができる。複製処理の開始要求は、一方の装置から他方の装置へ送信される接続要求(アソシエーション要求、認証要求)の特定領域に含まれていてもよいし、単独の要求であってもよい。
【0141】
・変形例4:
上記実施形態では、他の設定情報の取得処理の一例を示した。しかし、上記実施形態における処理の手順はあくまで一例であり、種々の変形が可能である。例えば、一部のステップを省略してもよいし、更なる他のステップを追加してもよい。また、実行されるステップの順序を変更してもよい。
【0142】
例えば、認証情報として、ユーザIDとパスワードの組み合わせに代えて、無線接続装置の販売時に添付(製品パッケージに同梱または記載等)されているIDカードに記載のPIN番号の、一部または全部を利用してもよい。なお、PIN番号とは、無線接続装置の正当な利用者であることを判定するために用いられる暗証番号を示す文字列である。また、認証情報として、ユーザIDとパスワードの組み合わせと、PIN番号の一部または全部と、の両方を併用してもよい。さらに、アクセスポイントがクライアント装置に対して無線通信に関する設定情報を送信する際に、アクセスポイントの情報をクライアント装置へ通知する態様で認証情報の受け渡しをしてもよい。この場合、認証情報に対して一時的に有効であるという制限を付してもよい。
【0143】
・変形例5:
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。