(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
≪樹脂組成物≫
本発明の樹脂組成物は、下記式(2)で表される構造単位を含み、下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体、および、非アミド系溶媒を主成分とする溶媒を含む。
本発明の樹脂組成物は、前記ポリイミド前駆体および非アミド系溶媒を含むため、高いガラス転移温度を有し、反りの発生および白濁が少なく、機械的強度に優れる膜を容易に、短時間に、生産性よく製造することができ、また、ガラス基板等の基板に樹脂組成物を塗布して膜を形成する際に、該基板との密着性および剥離性に優れる膜を容易に形成することができる。
【0021】
なお、本発明において、「密着性」とは、例えば、基板上で膜を形成している際、または、形成した膜の上に金属などからなる配線等を作製するデバイス作製をしている際などには、塗膜(膜)と基板とが剥離しにくい性質をいい、「剥離性」とは、例えば、基板から膜を剥がしたい時(基板から膜を剥がすための力等をかける時)に、剥離痕が少なく基板上から膜を剥離できる性質をいう。
【0022】
<ポリイミド前駆体>
前記ポリイミド前駆体は、下記式(2)で表される構造単位を含み、下記式(1)で表される構造単位(以下「構造単位(1)」ともいう。)を有する。このため、該前駆体から得られるポリイミドは、剛直な骨格部位と下記式(2)で表される構造単位(以下「構造単位(2)」ともいう。)を含む柔軟な骨格部位とを有し、該剛直な骨格部位が海部となり、柔軟な骨格部位が島部となるミクロ相分離構造を形成すると考えられる。ポリイミドが、このミクロ相分離構造を形成することにより、残留応力が低減された膜が得られると考えられる。
なお、本発明において、ミクロ相分離とは、剛直な骨格部位からなる海部に柔軟な骨格部位からなる島部が1ナノ〜1ミクロン程度のサイズで分散していることをいう。
【0023】
なお、「反り」は、目視により判断される膜の丸まりであり、「残留応力」とは、樹脂組成物をガラス基板等の基板上に塗布して膜を形成した後の膜内部に残っている応力のことをいい、膜に生じ得る「反り」の目安となる。具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0025】
前記式(1)中、Rは独立に水素原子または一価の有機基を示し、好ましくは水素原子であり、R
1は独立に二価の有機基を示し、R
2は独立に四価の有機基を示す。nは正の整数を示し、好ましくは1〜2500の整数である。
【0026】
なお、R
1またはR
2の少なくとも一方は、ハロゲン原子、またはハロゲン化アルキル基を含む。ここで、「R
1がハロゲン原子(フッ素原子)を含む」とは、例えば、R
1が−CH
2−CHF−CH
2−のような基である場合をいい、「R
1がハロゲン化アルキル基(フッ素化アルキル基)を含む」とは、例えば、R
1が−CH
2−CH(CF
3)−CH
2−のような基である場合をいう。
前記構造単位(1)は、ハロゲン原子またはハロゲン化アルキル基を含むため、溶解性に優れるポリイミド前駆体が得られ、かつ、該前駆体から耐熱性に優れるポリイミドが得られる。
【0028】
前記式(2)中、複数あるR
5は各々独立に炭素数1〜20の一価の有機基を示し、mは3〜200の整数を示す。
【0029】
前記式(1)中、Rにおける一価の有機基としては、炭素数1〜20の一価の有機基が好ましい。なお、「炭素数1〜20」は、「炭素数1以上、炭素数20以下」を示す。本発明における同様の記載は同様の意味を示す。
【0030】
前記Rにおける炭素数1〜20の一価の有機基としては、炭素数1〜20の一価の炭化水素基等を挙げることができる。
炭素数1〜20の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基等が挙げられる。
炭素数1〜20のアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0031】
前記式(1)中、R
1における、二価の有機基としては、炭素数1〜40の二価の有機基が好ましい。
炭素数1〜40の二価の有機基としては、炭素数6〜40の二価の芳香族炭化水素基が好ましく、6〜20の二価の芳香族炭化水素基がより好ましい。前記有機基には、環構造を2以上含む場合、環同士が1個以上の結合を共有する多環式構造、スピロ炭化水素構造、およびビフェニルのように環と環とを単結合等の結合基で結合した構造等が含まれる。前記結合基としては、前記単結合の他にエーテル結合、チオエーテル基、ケトン基、エステル結合、スルフォニル基、アルキレン基、アミド基およびシロキサン基等が挙げられる。前記二価の有機基が水素原子を含む場合、任意の水素原子はハロゲン原子で置換されてもよい。
【0032】
前記二価の有機基としては、下記式(3)で表される群より選ばれる基を含むことがより好ましく、下記式(3)で表される群より選ばれる基であることがさらに好ましい。R
1における二価の有機基が、下記式(3)で表される群より選ばれる基であると、前記海部はより剛直な骨格を有する構造となる。よって、残留応力が小さく、反りの発生が抑制された膜を得ることができるため好ましい。
【0034】
式(3)中、R
3は独立にエーテル結合、チオエーテル基、ケトン基、エステル結合、スルフォニル基、アルキレン基、アミド基もしくはシロキサン基を含む基;水素原子;ハロゲン原子;アルキル基;ヒドロキシ基;ニトロ基;シアノ基;またはスルホ基を示し、このアルキレン基を含む基およびアルキル基の任意の水素原子はハロゲン原子で置換されてもよい。ただし、1つの基に含まれる複数あるR
3のうち少なくとも1つはハロゲン原子またはハロゲン化アルキル基を含む。a1は1〜3の整数を示し、a2は1または2を示し、a3は独立に1〜4の整数を示し、eは0〜3の整数を示す。
【0035】
前記エーテル結合、チオエーテル基、ケトン基、エステル結合、スルフォニル基、アルキレン基、アミド基もしくはシロキサン基を含む基としては、エーテル結合、チオエーテル基、ケトン基、エステル結合、スルフォニル基、アルキレン基、アミド基またはシロキサン基を含む炭素数1〜10の有機基が挙げられる。
【0036】
前記式(3)中、R
3は、ハロゲン原子を1〜12個含むことが好ましく、機械的強度に優れた膜を容易に、短時間に、生産性よく製造することができる等の点から3〜8個含むことがより好ましい。
【0037】
なお、本発明において、R
3がハロゲン原子である場合、「ハロゲン原子が1個含まれる」といい、R
3が、例えばトリフルオロメチル基である場合、「ハロゲン原子が3個含まれる」という。
【0038】
前記式(3)中、R
3におけるハロゲン化アルキル基としては、ハロゲン原子で置換されたメチル基または炭素数2〜20のアルキル基等が挙げられる。
前記炭素数2〜20のハロゲン化アルキル基としては、ハロゲン原子で置換された炭素数2〜10のアルキル基であることが好ましく、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基の任意の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0039】
前記式(3)中、R
3におけるハロゲン化アルキル基としては、好ましくはハロゲン原子で置換された炭素数1〜2のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基の任意の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換された基が挙げられる。
【0040】
前記式(3)中、R
3におけるハロゲン原子およびハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子は、機械的強度に優れた膜を容易に、短時間に、生産性よく製造することができる等の点からフッ素原子であることが好ましい。
【0041】
ハロゲン原子を含まないR
3としては、水素原子、アルキル基、フルオレン基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基またはスルホ基が好ましく、水素原子またはアルキル基が好ましい。
【0042】
前記式(3)中、R
3におけるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0043】
前記式(3)中、R
3におけるアルキレン基を含む基としては、メチレン基または炭素数2〜20のアルキレン基等が挙げられ、このアルキレン基の任意の水素原子はハロゲン原子で置換されてもよい。
前記炭素数2〜20のアルキレン基としては、炭素数2〜10のアルキレン基であることが好ましく、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、イソプロピリデン基等が挙げられる。
【0044】
eは、0〜2の整数が好ましく、0または1がより好ましく、0がさらに好ましい。
a1としては、1または3が好ましく、a2としては、2が好ましく、a3としては、1または2が好ましく、1がより好ましい。
【0045】
前記式(1)中、R
1における、二価の有機基としては、下記式(3')で表される群より選ばれる基であることが好ましい。
【0047】
前記式(3')中、R
3は独立に前記式(3)中のR
3と同義である。
【0048】
前記式(3')で表される基としては、例えば、以下(3'−1)および(3'−2)で表される群より選ばれる基が挙げられる。
【0050】
前記式(1)中、R
1における、二価の有機基としては、下記式(3'')で表される群より選ばれる基であることがより好ましい。
【0052】
前記式(1)中、R
2における、四価の有機基としては、炭素数1〜40の四価の有機基が好ましい。
炭素数1〜40の四価の有機基としては、炭素数3〜40の四価の脂環式炭化水素基または炭素数6〜40の四価の芳香族炭化水素基が好ましい。前記有機基には、環構造を2以上含む場合、環同士が1個以上の結合を共有する多環式構造、スピロ炭化水素構造、およびビフェニルのように環と環とを単結合等の結合基で結合した構造等が含まれる。前記結合基としては、前記単結合の他にエーテル結合、チオエーテル基、ケトン基、エステル結合、スルフォニル基、アルキレン基、アミド基およびシロキサン基等が挙げられる。
【0053】
R
2としては、下記式(4)で表される群より選ばれる基であることがより好ましく、下記式(4')で表される群より選ばれる基であることがより好ましい。R
2における四価の有機基が、下記式(4)で表される群より選ばれる基、特に下記式(4')で表される群より選ばれる基であると、前記ポリイミド前駆体から得られるポリイミドは、剛直な骨格を有する構造となり、ミクロ相分離構造を形成しやすくなるため、残留応力が小さく、反りの発生が抑制された膜を得ることができる等の点で好ましい。
【0055】
式(4)中、R
4は独立にエーテル結合、チオエーテル基、ケトン基、エステル結合、スルフォニル基、アルキレン基、アミド基もしくはシロキサン基を含む基;水素原子;ハロゲン原子;アルキル基;ヒドロキシ基;ニトロ基;シアノ基;またはスルホ基を示し、このアルキレン基を含む基およびアルキル基の任意の水素原子はハロゲン原子で置換されてもよい。Dは、エーテル結合、チオエーテル基、ケトン基、エステル結合、スルフォニル基、アルキレン基、アミド基またはシロキサン基を示し、bは独立に1または2を示し、cは独立に1〜3の整数を示し、fは0〜3の整数を示す。
ただし、1つの基に含まれる複数のR
4のうち少なくとも1つはハロゲン原子またはハロゲン化アルキル基を含むことが好ましい。
【0056】
前記エーテル結合、チオエーテル基、ケトン基、エステル結合、スルフォニル基、アルキレン基、アミド基もしくはシロキサン基を含む基としては、エーテル結合、チオエーテル基、ケトン基、エステル結合、スルフォニル基、アルキレン基、アミド基またはシロキサン基を含む炭素数1〜10の有機基が挙げられる。
【0057】
前記式(4)中、R
4は、ハロゲン原子を1〜12個含むことが好ましく、機械的強度に優れた膜を容易に、短時間に、生産性よく製造することができる等の点から3〜8個含むことがより好ましい。
【0058】
前記式(4)中、R
4におけるハロゲン化アルキル基としては、ハロゲン原子で置換されたメチル基または炭素数2〜20のアルキル基等が挙げられる。
前記炭素数2〜20のハロゲン化アルキル基としては、ハロゲン原子で置換された炭素数2〜10のアルキル基であることが好ましく、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基の任意の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0059】
前記式(4)中、R
4におけるハロゲン化アルキル基としては、好ましくはハロゲン原子で置換された炭素数1〜2のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基の任意の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換された基が挙げられる。
【0060】
前記式(4)中、R
4におけるハロゲン原子およびハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子は、機械的強度に優れた膜を容易に、短時間に、生産性よく製造することができる等の点からフッ素原子であることが好ましい。
【0061】
ハロゲン原子を含まないR
4としては、水素原子、アルキル基、フルオレン基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基またはスルホ基が好ましく、水素原子またはアルキル基が好ましい。
【0062】
前記式(4)中、R
4におけるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0063】
前記式(3)中、R
4におけるアルキレン基を含む基としては、メチレン基または炭素数2〜20のアルキレン基等が挙げられ、このアルキレン基の任意の水素原子はハロゲン原子で置換されてもよい。
前記炭素数2〜20のアルキレン基としては、炭素数2〜10のアルキレン基であることが好ましく、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、イソプロピリデン基等が挙げられる。
【0064】
Dとしては、エーテル基、チオエーテル基、スルフォニル基が好ましい。
cとしては、1または2が好ましい。
fは、0〜2の整数が好ましく、0または1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0065】
前記式(4)で表される群より選ばれる基は、下記式(4')で表される群より選ばれる基であることが好ましい。
【0067】
前記構造単位(1)には、構造単位(2)が含まれる。該構造単位(2)は、前記構造単位(1)中の複数あるR
1およびR
2からなる群より選ばれる少なくとも1つの基に含まれてもよく、前記構造単位(1)の末端に含まれてもよいが、複数あるR
1およびR
2からなる群より選ばれる少なくとも1つの基に含まれることが好ましい。なお、「複数あるR
1およびR
2からなる群より選ばれる少なくとも1つの基は、下記式(2)で表される構造単位を含む」とは、nが2以上の場合には、R
1およびR
2はそれぞれ2以上構造単位(1)中に存在するが、これらの複数あるR
1およびR
2のうち、少なくとも1つが下記式(2)で表される構造単位を含むことを意味する。
前記ポリイミド前駆体は、構造単位(2)を含むため、該前駆体を含む樹脂組成物によれば、残留応力が小さく、反りの発生が抑制された膜を得ることができる。
【0069】
前記式(2)中、複数あるR
5は各々独立に炭素数1〜20の一価の有機基を示し、mは3〜200の整数を示す。
【0070】
前記式(2)中、R
5における炭素数1〜20の一価の有機基としては、炭素数1〜20の一価の炭化水素基および炭素数1〜20の一価のアルコキシ基等を挙げることができる。
【0071】
前記R
5における炭素数1〜20の一価の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基等が挙げられる。
前記炭素数1〜20のアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
前記炭素数3〜20のシクロアルキル基としては、炭素数3〜10のシクロアルキル基であることが好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
前記炭素数6〜20のアリール基としては、炭素数6〜12のアリール基であることが好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0072】
前記R
5における炭素数1〜20の一価のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、プロペニルオキシ基およびシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0073】
前記式(2)における複数あるR
5の少なくとも1つは、アリール基を含むことが、前記柔軟な骨格部位からなる島部が前記剛直な骨格部位からなる海部との親和性に優れ、1ナノ〜1ミクロン程度のサイズで(均一)分散(ミクロ相分離)しやすくなるため好ましい。より具体的には、複数あるR
5は、炭素数1〜10のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基であることが好ましい。この場合、構造単位(2)中の全てのR
5のうち、炭素数1〜10のアルキル基のモル数(i)と炭素数6〜12のアリール基のモル数(ii)との比(但し、(i)+(ii)=100)は、好ましくは(i):(ii)=90〜10:10〜90であり、より好ましくは(i):(ii)=85〜15:15〜85であり、さらに好ましくは(i):(ii)=85〜65:15〜35である。構造単位(2)中の全てのR
5のうち、アルキル基のモル数(i)とアリール基のモル数(ii)との比が前記範囲を外れると、得られるポリイミドがミクロ相分離構造を形成することができないおそれがある。アルキル基のモル数(i)とアリール基のモル数(ii)との比が前記範囲にあると、ミクロ相分離(構造単位(2)を含む骨格部位がナノ分散)可能となり、低い線膨張係数および低い残留応力等を有し、透明性に優れ白濁し難い膜を得ることができる。
前記炭素数1〜10のアルキル基は、好ましくはメチル基であり、前記炭素数6〜12のアリール基は、好ましくはフェニル基である。
【0074】
前記ポリイミド前駆体全体を100質量%とした場合、前記構造単位(2)は、5〜40質量%含まれることが好ましく、5〜23質量%含まれることが好ましく、8〜22質量%含まれることがより好ましく、9.5〜21質量%含まれることがさらに好ましい。
ポリイミド前駆体中に含まれる構造単位(2)の割合が前記範囲を超えると、ガラス基板等の基板に本発明の樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成した場合、該基板から、形成した塗膜を剥離することが困難となる傾向がある。また、ポリイミド前駆体中に含まれる構造単位(2)の量が前記範囲を下回ると、ガラス基板等の基板に本発明の樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成した場合、形成した塗膜の残留応力が高くなり、該基板から塗膜を剥離した時に、得られる膜に反りが発生するおそれがある。
【0075】
前記式(2)中のmは3〜200の整数であり、好ましくは10〜200、より好ましくは20〜150、さらに好ましくは30〜100、特に好ましくは35〜80の整数である。mが2以下であると、ポリイミド前駆体から得られるポリイミドがミクロ相分離構造を形成しにくくなる場合があり、mが200を超えると、構造単位(2)を含む骨格部位からなる島の大きさが1μmを超え、塗膜が白濁したり、機械強度が低下するなどの問題が生じる場合がある。
【0076】
前記ポリイミド前駆体は、該ポリイミド前駆体100質量%中、前記構造単位(1)を好ましくは60質量%以上、より好ましくは77質量%以上、さらに好ましくは79質量%以上含む。ポリイミド前駆体中、前記構造単位(1)の割合が前記範囲にあると、残留応力が小さく、反りが生じにくい膜を得ることができる。
【0077】
なお、ポリイミド前駆体100質量%中、前記構造単位(1)を60質量%以上含むとは、構造単位−NH−R
1−NH−、構造単位−NH−R
1−NH
2、構造単位−CO−R
2(COOR)
2−CO−、構造単位−CO−R
2(COOR)
2−COOH、構造単位(2)、および、構造単位−(Si(R
5)
2−O)
m−Si(R
5)
2−R
10−R
11等のR
1、R
2および構造単位(2)を含む構造単位の合計が60質量%以上であることを意味する。
(なお、R
1、R
2およびRは前記式(1)中のR
1、R
2およびRと同義であり、R
5は前記式(2)中のR
5と同義であり、R
10およびR
11は下記式(7')および(8')中のR
10およびR
11と同義である。)
【0078】
また、前記ポリイミド前駆体は、構造単位(1)の一部がイミド化していてもよい。
【0079】
前記構造単位(1)において、R
1が前記式(3)で表される群より選ばれる基、特に前記式(3')で表される群より選ばれる基であり、R
2が、前記式(4)で表される群より選ばれる基、特に前記式(4')で表される群より選ばれる基であり、前記式(2)中のmが3以上であると、該ポリイミド前駆体から得られるポリイミドはよりミクロ相分離構造をとり易くなるため、得られる膜の残留応力の低減の点等から特に好ましい。
【0080】
前記ポリイミド前駆体は、所望の用途および成膜条件等に応じて、前記式(1)に含まれる構造単位の他に、該前駆体の主鎖に、エーテル結合、チオエーテル基、ケトン基、エステル結合、スルフォニル基、アルキレン基、アミド基およびシロキサン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を含む単量体(以下「単量体(I)」ともいう。)に由来する構造単位(以下「構造単位(56)」ともいう。)を含んでもよい。
前記アルキレン基としては、前記式(3)中、R
3におけるアルキレン基と同様の基等が挙げられる。
【0081】
なお、「前記式(1)に含まれる構造単位」とは、構造単位−NH−R
1−NH−、構造単位−NH−R
1−NH
2、構造単位−CO−R
2(COOR)
2−CO−、構造単位−CO−R
2(COOR)
2−COOH、構造単位(2)、および、構造単位−(Si(R
5)
2−O)
m−Si(R
5)
2−R
10−R
11等のR
1、R
2および構造単位(2)を含む構造単位のことをいう(なお、R
1、R
2およびRは前記式(1)中のR
1、R
2およびRと同義であり、R
5は前記式(2)中のR
5と同義であり、R
10およびR
11は下記式(7')および(8')中のR
10およびR
11と同義である。)。
【0082】
構造単位(56)は、前記ポリイミド前駆体の主鎖に含まれる、前記構造単位(1)中のR
1およびR
2で表される基、ならびに構造単位(2)を含まない、テトラカルボン酸二無水物およびこれらの誘導体またはイミノ形成化合物に由来する構造単位のことをいう。
【0083】
前記ポリイミド前駆体の主鎖とは、前記構造単位(1)のR
1やR
2が含まれる鎖を意味し、例えば、構造単位(1)における−COORは、主鎖ではなく側鎖である。
【0084】
前記ポリイミド前駆体に構造単位(56)が含まれると、得られる膜の線膨張係数が上昇し、所望に応じて伸ばすことが可能な膜が得られる。
【0085】
前記ポリイミド前駆体において、構造単位(56)の含有量および/または構造単位(2)の含有量を増加させると、得られる膜の線膨張係数が増加するため、Cuを含む基板やSiを含む基板上などに樹脂組成物を塗布する場合には、これらの基板に応じて構造単位(56)および/または構造単位(2)の配合量を変化させればよい。具体的には、Cuの線膨張係数は16.8ppm/Kであるため、Cuからなる基板上に本発明の樹脂組成物を塗布する場合には、前記ポリイミド前駆体は、構造単位(56)を含むことが好ましく、Siの線膨張係数は3ppm/Kであるため、Siからなる基板上に本発明の樹脂組成物を塗布する場合には、前記ポリイミド前駆体は、構造単位(56)を含まないことが好ましい。その他、クロムの線膨張係数は8.2ppm/K、ガラスの線膨張係数は9ppm/K、ステンレスSUS430の線膨張係数は10.4ppm/K、ニッケルの線膨張係数は12.8ppm/Kであるため、これらからなる基板上に本発明の樹脂組成物を塗布する場合には、前記ポリイミド前駆体は、ポリイミド前駆体100質量%中、構造単位(56)を0〜15質量%含むことが好ましい。
【0086】
前記単量体(I)は、下記式(5)で表される化合物(以下「化合物(5)」ともいう。)または式(6)で表される化合物(以下「化合物(6)」ともいう。)であることが好ましい。
【0088】
前記式(5)および(6)中、Aは各々独立にエーテル結合(−O−)、チオエーテル基(−S−)、ケトン基(−C(=O)−)、エステル結合(−COO−)、スルフォニル基(−SO
2−)、アルキレン基(−R
7−)、アミド基(−C(=O)−NR
8−)、シロキサン基(−Si(R
9)
2−O−Si(R
9)
2−)およびフルオレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を含む基を示し、R
6は独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはニトロ基を示し、このアルキル基の任意の水素原子はハロゲン原子で置換されてもよい。dは独立に1〜4の整数を示す。
【0089】
なお、前記R
8およびR
9は各々独立に水素原子、アルキル基またはハロゲン原子を示し、このアルキル基の水素原子はハロゲン原子で置換されてもよい。前記R
6、R
8およびR
9におけるアルキル基としては、前記式(3)中、R
3におけるアルキル基と同様の基等が挙げられる。前記ハロゲン原子としては、塩素原子またはフッ素原子が好ましい。
【0090】
前記Aとしては、エーテル結合が好ましく、前記R
6としては水素原子が好ましい。
【0091】
前記式(5)および(6)中、Aにおけるアルキレン基(−R
7−)としては、前記式(3)中、R
3におけるアルキレン基と同様の基等が挙げられ、これらの中でも、メチレン基、イソプロピリデン基、およびヘキサフルオロイソプロピリデン基が好ましい。
【0092】
前記化合物(5)および(6)としては、例えば、下記化合物群(5−1)〜(6−9)に記載の化合物が挙げられる。
【0111】
前記ポリイミド前駆体が構造単位(56)を含む場合、ポリイミド前駆体は、ポリイミド前駆体100質量%中、構造単位(56)を好ましくは0〜15質量%含み、より好ましくは0〜10質量%含み、さらに好ましくは0〜9質量%含み、特に好ましくは0〜8質量%含む。
構造単位(56)の含有量が15質量%を超えると、前記剛直な骨格部位の弾性率が低くなり、残留応力を前記柔軟な骨格部位に移行させ難くなるため、得られる膜に反りが生じやすくなる場合がある。
また、構造単位(56)の含有量が前記範囲にあると、反りの発生が抑制されたまま、伸びやすい膜を得ることができる。
【0112】
なお、前記ポリイミド前駆体が、構造単位(56)を含む場合、該構造単位(56)を含むポリイミド前駆体は、(i)前記式(1)におけるR
1やR
2に構造単位(56)が含まれる構造で表される場合、および、(ii)ポリイミド前駆体中の、構造単位(1)以外の部分に構造単位(56)が含まれる構造で表される場合がある。前記(i)の場合、前記ポリイミド前駆体が前記式(1)中のR
1に化合物(5)に由来する構造単位を含むとすると、前記ポリイミド前駆体は、例えば下記式(5A)のように表される。この場合、「ポリイミド前駆体100質量%中、構造単位(56)を好ましくは0〜15質量%含む」とは、ポリイミド前駆体100質量%中、繰り返し単位n2中の2個の−NH−間にはさまれた構造(両端の−NH−を含む)で表される構造単位を0〜15質量%含むことを意味する。
また、前記(i)の場合、構造単位(56)は、前記構造単位(1)中の複数あるR
1およびR
2からなる群より選ばれる少なくとも1つの基に含まれてもよく、前記構造単位(1)の末端に含まれてもよい。
【0114】
前記式(5A)中、R、R
1およびR
2は各々独立に前記式(1)中のR、R
1およびR
2と同義であり、A、R
6およびdは各々独立に前記式(5)中のA、R
6およびdと同義であり、n1+n2は、前記式(1)中のnと同義である。
【0115】
前記ポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)は好ましくは10,000〜1,000,000であり、より好ましくは10000〜200000であり、さらに好ましくは20000〜150000である。数平均分子量(Mn)は5000〜10000000、好ましくは5000〜500000、特に好ましくは15000〜200000である。
【0116】
ポリイミド前駆体の重量平均分子量または数平均分子量が前記下限未満であると、得られる膜の強度が低下してしまうことがある。さらに、得られる膜の線膨張係数が必要以上に上がる場合がある。一方、ポリイミド前駆体の重量平均分子量または数平均分子量が前記上限を超えると、樹脂組成物の粘度が上がるため、該樹脂組成物をガラス基板等の基板に塗布して膜を形成する場合には、樹脂組成物に配合できるポリイミド前駆体の量が少なくなり、得られる塗膜の平坦性等の膜厚精度が悪化する場合がある。
【0117】
前記ポリイミド前駆体の分子量分布(Mw/Mn)は好ましくは1.0〜10.0、より好ましくは1.5〜5.0、特に好ましくは1.5〜4.0である。
【0118】
なお、前記重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布は、TOSOH製HLC−8220型GPC装置(ガードカラム:TSK guard colomn ALPHA カラム:TSKgelALPHA―M、展開溶剤:N−メチルピロリドン(NMP))を用いて測定した値である。
【0119】
<ポリイミド前駆体の合成方法>
前記構造単位(1)を有するポリイミド前駆体は、好ましくは、テトラカルボン酸二無水物およびこの反応性誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のアシル化合物を含む成分(以下「(A)成分」ともいう。)と、イミノ形成化合物を含む成分(以下「(B)成分」ともいう。)とを反応させることで得られる。但し、前記ポリイミドの合成の際には、前記構造単位(2)を含む化合物を用いることが好ましい。
この反応によれば、用いる原料化合物の構造に応じたポリイミド前駆体を得ることができ、また、用いる原料化合物の使用量に応じた量で該化合物に由来する構造単位を有するポリイミド前駆体を得ることができる。
【0120】
この場合、(A)成分として構造単位(2)を含むアシル化合物(以下「化合物(A−2)」ともいう。)を用いること、または(B)成分として構造単位(2)を含むイミノ形成化合物(以下「化合物(B−2)」ともいう。)を用いることが好ましい。また、化合物(A−2)と化合物(B−2)とを両方用いることもできる。
【0121】
[(A)成分]
(A)成分は、テトラカルボン酸二無水物およびこの反応性誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のアシル化合物である。好ましくは、前記化合物(A−2)、および化合物(A−2)以外のアシル化合物(A−1)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。
【0122】
前記アシル化合物(A−1)としては、例えば芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環族テトラカルボン酸、前記化合物(6)およびこれらの反応性誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0123】
前記アシル化合物(A−1)の具体例としては、4,4'−オキシジフタル酸二無水物、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3',4,4'−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4'−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4'−ジフェニルメタン二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物、およびこれらの反応性誘導体;
ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物あるいは脂環族テトラカルボン酸二無水物、およびこれらの反応性誘導体を挙げることができる。
これらの化合物は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0124】
前記反応性誘導体としては、テトラカルボン酸、該テトラカルボン酸の酸エステル化物、該テトラカルボン酸の酸クロライドなどが挙げられる。
【0125】
これらのうち、優れた透明性、有機溶媒への良好な溶解性の観点から、脂肪族テトラカルボン酸二無水物または脂環族テトラカルボン酸二無水物が好適に用いられる。また、耐熱性、低線膨張係数(寸法安定性)、低吸水性の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好適に用いられる。
【0126】
また、前記アシル化合物(A−1)としては、前記式(4)または式(4')で表される群より選ばれる基を有する化合物であることが、弾性率の高い前記海部中に前記柔軟な骨格部位を極めて小さな1ナノ〜1ミクロン程度のサイズで(均一)分散可能(ミクロ相分離構造)となり、成膜工程で発生する応力を前記柔軟な骨格部位で効率よく吸収することができるため、残留応力が小さく、反りの発生が抑制された膜を得る点からより好ましい。
このような化合物として、具体的には、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、下記群(4−1)で表される化合物等が挙げられ、これらの化合物は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0128】
前記化合物(A−1)(但し、化合物(6)および(6')を除く)の配合量は特に制限されず、全アシル化合物((A)成分)の全量を100質量%とした場合に、100質量%であってもよいが、(A)成分に前記化合物(A−2)および/または化合物(6)等が含まれる場合には、100質量%からこれらの化合物それぞれの好ましい配合量を引いた量で配合すればよい。
【0129】
前記化合物(A−2)としては、具体的には前記式(2)で表される構造単位を有するテトラカルボン酸二無水物およびこの反応性誘導体より選ばれる少なくとも1種のアシル化合物等が挙げられ、好ましくは下記式(7)で表される化合物(以下「化合物(7)」ともいう。)、下記式(7')で表される化合物(以下「化合物(7')」ともいう。)、下記式(8)で表される化合物(以下「化合物(8)」ともいう。)および下記式(8')で表される化合物(以下「化合物(8')」ともいう。)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物等を挙げることができる。
これらの化合物は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0130】
前記反応性誘導体としては、前記式(2)で表される構造単位を有するテトラカルボン酸、該テトラカルボン酸の酸エステル化物、該テトラカルボン酸の酸クロライドなどが挙げられる。
【0131】
なお、構造単位(2)が、前記構造単位(1)中の複数あるR
2の少なくとも1つの基に含まれるポリイミド前駆体を合成したい場合には、化合物(7)および/または(8)を用いることが好ましく、構造単位(2)が、前記構造単位(1)の末端に含まれるポリイミド前駆体を合成したい場合には、好ましくは化合物(7')および/または(8')を用いることが好ましい。
【0133】
前記式(7)、(7')、(8)および(8')中、R
5およびmは各々独立に、前記式(2)中のR
5およびmと同義である。R
10は独立に単結合または炭素数1〜20の二価の有機基を示す。前記式(7')および(8')中、R
11は独立に水素原子または炭素数1〜20の一価の有機基を示し、この炭素数1〜20の一価の有機基としては、前記式(2)中、R
5における炭素数1〜20の一価の有機基と同様の基等が挙げられる。
【0134】
前記R
10における炭素数1〜20の二価の有機基としては、メチレン基、炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、または炭素数6〜20のアリーレン基等が挙げられる。
前記炭素数2〜20のアルキレン基としては、炭素数2〜10のアルキレン基であることが好ましく、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
前記炭素数3〜20のシクロアルキレン基としては、炭素数3〜10のシクロアルキレン基であることが好ましく、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基等が挙げられる。
前記炭素数6〜20のアリーレン基としては、炭素数6〜12のアリーレン基であることが好ましく、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0135】
前記化合物(A−2)としては、耐熱性(高ガラス転移温度)および耐水性に優れた膜を得る観点から数平均分子量が200〜10,000であることが好ましく、より好ましくは500〜10,000であり、特に好ましくは500〜6000である。アミン価は100〜5000であることが好ましく、より好ましくは250〜5,000、さらに好ましくは1000〜3000である。
【0136】
前記化合物(7)、(7')、(8)および(8')における重合度mは前記式(2)と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0137】
前記式(7)、(7')、(8)および(8')中、R
5はメチル基またはフェニル基が好ましく、複数あるR
5のうち、少なくとも1つはフェニル基が好ましい。複数あるR
5のすべてがメチル基またはフェニル基であり、その少なくとも1つはメチル基であり、その少なくとも1つはフェニル基である場合、メチル基のモル%とフェニル基のモル%との比(メチル基のモル%+フェニル基のモル%=100)は、好ましくはメチル基:フェニル基=5〜95:95〜5であり、より好ましくはメチル基:フェニル基=15〜85:85〜15であり、さらに好ましくはメチル基:フェニル基=85〜65:15〜35である。前記式(7)、(7')、(8)および(8')中の少なくとも1つのR
5がフェニル基でないと、前記海部と島部との相溶性が悪化して、島部の分散サイズが1ミクロンを超え、耐熱性、フィルム強度に劣る膜が得られる場合がある。
【0138】
前記化合物(A−2)としては、具体的には、ゲレスト社製 DMS−Z21(数平均分子量600〜800、アミン価300〜400、m=4〜7)などを挙げることができる。なお、化合物(A−2)は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0139】
前記(A)成分に前記化合物(A−2)が含まれる場合、全原料化合物((A)成分+(B)成分)の全量を100質量%とした場合に、前記化合物(A−2)の配合量は、基板との剥離性に優れ、反りの発生しにくい膜を得る点から、好ましくは5〜40質量%であり、より好ましくは5〜23質量%であり、さらに好ましくは8〜22質量%であり、特に好ましくは9.5〜21質量%である。但し、前記化合物(A−2)の好ましい配合量は、ポリイミド前駆体を合成する際に、前記化合物(B−2)を用いない場合であり、ポリイミド前駆体を合成する際に、その原料として、化合物(A−2)および化合物(B−2)を用いる場合には、使用する化合物(A−2)および化合物(B−2)の合計量が前記化合物(A−2)の好ましい配合量と同程度になるようにすることが好ましい。
【0140】
また、前記(A)成分には、得られる膜の伸びを改良する点から、所望の用途に応じて、化合物(6)および/または下記式(6')で表される化合物(以下「化合物(6')」ともいう。)が含まれてもよい。なお、ポリイミド前駆体の主鎖(末端を除く)に構造単位(56)が含まれるポリイミド前駆体を合成したい場合には、化合物(6)を用いることが好ましく、ポリイミド前駆体の主鎖末端に構造単位(56)が含まれるポリイミド前駆体を合成したい場合には、好ましくは化合物(6')を用いることが好ましい。
これらの化合物は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0142】
前記式(6')中、Aは前記式(5)および(6)中のAと同義であり、R
12は、水素原子または炭素数1〜20の一価の有機基を示す。この炭素数1〜20の一価の有機基としては、前記式(2)中、R
5における炭素数1〜20の一価の有機基と同様の基等が挙げられる。
【0143】
前記(A)成分に前記化合物(6)および/または化合物(6')が含まれる場合、全原料化合物((A)成分+(B)成分)の全量を100質量%とした場合に、前記化合物(6)および化合物(6')の配合量は、反りの発生しにくい膜を得る点から、好ましくは0〜15質量%であり、より好ましくは0〜10質量%であり、さらに好ましくは0〜9質量%であり、特に好ましくは0〜8質量%である。但し、前記化合物(6)および化合物(6')の好ましい配合量は、ポリイミド前駆体を合成する際に、前記化合物(5)および/または下記化合物(5')を用いない場合であり、ポリイミド前駆体を合成する際に、その原料として、化合物(6)および/または化合物(6')ならびに化合物(5)および/または化合物(5')を用いる場合には、使用する化合物(6)、化合物(6')、化合物(5)および化合物(5')の合計量が前記化合物(6)および化合物(6')の好ましい配合量と同程度になるようにすることが好ましい。
【0144】
[(B)成分]
(B)成分は、イミノ形成化合物である。ここで、「イミノ形成化合物」とは、前記(A)成分と反応してイミノ(基)を形成する化合物をいい、具体的には、ジアミン化合物、ジイソシアネート化合物、ビス(トリアルキルシリル)アミノ化合物等を挙げることができる。
【0145】
(B)成分としては、好ましくは、前記化合物(B−2)、および化合物(B−2)以外のイミノ形成化合物(B−1)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。
前記化合物(B−1)としては、芳香族ジアミン群より選ばれる少なくとも1種の化合物および前記化合物(5)等が挙げられる。
【0146】
前記化合物(B−1)としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル(o−トリジン)、2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル(m−トリジン)、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2'−ジエチル−4,4'−ジアミノビフェニル、4,4'−ジアミノ−2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)、4,4'−ジアミノ−2,2'−ビス(トリフルオロエチル)ビフェニル、4,4'−ジアミノ−2,2'−ビス(トリフルオロアセチル)ビフェニル、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノベンズアニリド、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,3−ビス[2−(4−アミノフェノキシエトキシ)]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)フルオレン、5(6)−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3、3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、2,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(P−TPEQ)、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシフェニル)]プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4―(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ベンジジン、3,3−ジメトキシ−4,4−ジアミノビフェニル、2,2'−ジクロロ−4,4'−ジアミノ−5,5'−ジメトキシビフェニル、2,2',5,5'−テトラクロロ−4,4'−ジアミノビフェニル、4,4'−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2'−ジフルオロ−4,4'−ジアミノ−5,5'−ジメトキシビフェニル、2,2',5,5'−テトラフルオロ−4,4'−ジアミノビフェニル、4,4'−メチレン−ビス(2−フルオロアニリン)、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、o−トリジンスルホン等が挙げられる。これら芳香族ジアミンは、1種単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
【0147】
また、前記化合物(B−1)としては、前記式(3)、(3')、(3'−1)〜(3'−2)および(3'')で表される群より選ばれる基を有する化合物であることが、弾性率の高い前記海部中に前記柔軟な骨格部位を極めて小さな1ナノ〜1ミクロン程度のサイズで(均一)分散可能(ミクロ相分離構造)となり、成膜工程で発生する応力を前記柔軟な骨格部位で効率よく吸収することができるため、残留応力が小さく、反りの発生が抑制された膜を得る等の点から好ましい。このような化合物として、具体的には、4,4'−ジアミノ−2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)、4,4'−ジアミノ−2,2'−ビス(トリフルオロエチル)ビフェニル、4,4'−ジアミノ−2,2'−ビス(トリフルオロアセチル)ビフェニル等が挙げられ、これらの中でも4,4'−ジアミノ−2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルが好ましい。
【0148】
前記化合物(B−1)(但し、化合物(5)および(5')を除く)の配合量は特に制限されず、全イミド形成化合物((B)成分)の全量を100質量%とした場合に、100質量%であってもよいが、(B)成分に前記化合物(B−2)および/または化合物(5)等が含まれる場合には、100質量%からこれらの化合物それぞれの好ましい配合量を引いた量で配合すればよい。
【0149】
前記化合物(B−2)としては、構造単位(2)を含むイミノ形成化合物であれば特に制限されないが、好ましくは下記式(9)で表される化合物(以下「化合物(9)」ともいう。)および下記式(9')で表される化合物(以下「化合物(9')」ともいう。)等を挙げることができる。
なお、構造単位(2)が、前記構造単位(1)中の複数あるR
1およびR
2からなる群より選ばれる少なくとも1つの基に含まれるポリイミド前駆体を合成したい場合には、化合物(9)を用いることが好ましく、前記構造単位(1)の末端に含まれるポリイミド前駆体を合成したい場合には、化合物(9')を用いることが好ましい。
これらの化合物は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0151】
前記式(9)および(9')中、R
5およびmは各々独立に、前記式(2)中のR
5およびmと同義であり、R
10は各々独立に前記式(7)、(7')、(8)および(8')中のR
10と同義であり、R
11は各々独立に前記式(7')および(8')中のR
11と同義である。
【0152】
前記化合物(B−2)としては、前記柔軟な骨格部位を前記剛直な骨格部位からなる海部にナノ〜ミクロン程度のサイズで微分散させることができ、耐熱性(高ガラス転移温度)および耐水性が優れた膜を得る観点から、数平均分子量が500〜12,000であることが好ましく、1,000〜8,000であることがより好ましく、3,000〜6,000であることがさらに好ましい。アミン価は250〜6,000であることが好ましく、500〜4,000であることがより好ましく、1,500〜3,000であることがさらに好ましい。
【0153】
前記式(9)および(9')における重合度mは前記式(2)と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0154】
前記式(9)および(9')中、R
5はメチル基またはフェニル基が好ましく、複数あるR
5のうち、少なくとも1つはフェニル基であることが好ましい。複数あるR
5のすべてがメチル基またはフェニル基であり、その少なくとも1つはメチル基であり、その少なくとも1つはフェニル基である場合、メチル基のモル%とフェニル基のモル%との比(メチル基のモル%+フェニル基のモル%=100)は、好ましくはメチル基:フェニル基=5〜95:95〜5であり、より好ましくはメチル基:フェニル基=15〜85:85〜15であり、さらに好ましくはメチル基:フェニル基=85〜65:15〜35である。前記式(9)および(9')中の少なくとも1つのR
5がフェニル基でないと、前記海部と島部との相溶性が悪化して、島部の分散サイズが1ミクロンを超え、耐熱性、フィルム強度に劣る膜が得られる場合がある。
【0155】
前記化合物(B−2)としては、具体的には、両末端アミノ変性メチルフェニルシリコーン(信越化学社製;X22−1660B−3(数平均分子量4,400 重合度m=41、フェニル基:メチル基=25:75mol%)、X22−9409(数平均分子量1,300))、両末端アミノ変性ジメチルシリコーン(信越化学社製;X22−161A(数平均分子量1,600、重合度m=20)、X22−161B(数平均分子量3,000、重合度m=39)、KF−8012(数平均分子量4400、重合度m=58)、東レダウコーニング製;BY16−835U(数平均分子量900、重合度m=11))などが挙げられる。なお、前記イミノ形成化合物(B−2)は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、重合度mは例えば以下の式により算出することができる。(両末端がアミノプロピル基の場合、前記式(2)中のR
5のすべてがメチル基またはフェニル基である化合物の場合)
m=(数平均分子量−両末端基(アミノプロピル基)の分子量116.2)/(74.15×メチル基のmol%×0.01+198.29×フェニル基のmol%×0.01)
【0156】
前記(B)成分に前記化合物(B−2)が含まれる場合、全原料化合物((A)成分+(B)成分)の全量を100質量%とした場合に、前記化合物(B−2)の配合量は、基板との剥離性に優れ、反りの発生しにくい膜を得る点から、好ましくは5〜40質量%であり、より好ましくは5〜23質量%であり、さらに好ましくは8〜22質量%であり、特に好ましくは9.5〜21質量%である。但し、前記化合物(B−2)の好ましい配合量は、ポリイミド前駆体を合成する際に、前記化合物(A−2)を用いない場合の量である。
【0157】
また、前記(B)成分には、得られる膜の伸びを改良する点から、所望の用途に応じて、化合物(5)および/または下記式(5')で表される化合物(以下「化合物(5')」ともいう。)が含まれてもよい。なお、ポリイミド前駆体の主鎖(末端を除く)に構造単位(56)が含まれるポリイミド前駆体を合成したい場合には、化合物(5)を用いることが好ましく、ポリイミド前駆体の主鎖末端に構造単位(56)が含まれるポリイミド前駆体を合成したい場合には、好ましくは化合物(5')を用いることが好ましい。
これらの化合物は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0159】
前記式(5')中、Aは前記式(5)および(6)中のAと同義であり、R
12は、前記式(6')中のR
12と同義である。
【0160】
前記(B)成分に前記化合物(5)および/または化合物(5')が含まれる場合、全原料化合物((A)成分+(B)成分)の全量を100質量%とした場合に、前記化合物(5)および化合物(5')の配合量は、反りの発生しにくい膜を得る点から、好ましくは0〜15質量%であり、より好ましくは0〜10質量%であり、さらに好ましくは0〜9質量%であり、特に好ましくは0〜8質量%である。但し、前記化合物(5)および化合物(5')の好ましい配合量は、ポリイミド前駆体を合成する際に、前記化合物(6)および/または化合物(6')を用いない場合の量である。
【0161】
前記ポリイミド前駆体は、(A)成分と(B)成分とを、使用割合(仕込み量比)として、(A)成分と(B)成分とのモル比((A)成分/(B)成分)が0.8〜1.2となる範囲で反応させることが好ましく、0.90〜1.0となる範囲で反応させることがより好ましい。(A)成分と(B)成分とのモル比が、0.8当量未満、または1.2当量を超えると、分子量が低くなりポリイミド膜を形成することが困難となることがある。
【0162】
前記(A)成分と(B)成分との反応は、通常、有機溶媒中で行う。該有機溶媒は脱水したものが好ましい。
前記有機溶媒としては、下記非アミド系溶媒を用いることが、本発明の樹脂組成物の製造容易性、得られる膜の性質(ヘイズ、反り等)の点から好ましい。
(A)成分と(B)成分とを反応させる具体的な方法としては、少なくとも1種の(B)成分を有機溶媒に溶解させた後、得られた溶液に、少なくとも1種の(A)成分を添加し、0〜100℃の温度で、1〜60時間撹拌する方法等が挙げられる。
【0163】
なお、反応液中の(A)成分と(B)成分との合計量は、反応液全量の3〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは10〜40質量%であり、特に好ましくは10〜30質量%である。
反応液中の(A)成分と(B)成分との合計量が前記範囲にあると、得られる樹脂組成物中のポリイミド前駆体の濃度が下記好ましい範囲にある樹脂組成物を得ることができるため好ましい。
【0164】
前記有機溶媒として下記非アミド系溶媒を主成分とする溶媒を用いた場合には、前記反応で得られたポリイミド前駆体と有機溶媒とを含む組成物は、そのまま本発明の樹脂組成物として使用することが好ましいが、本発明の樹脂組成物は、前記反応で得られたポリイミド前駆体を固体分として単離した後、下記非アミド系溶媒を主成分とする溶媒に再溶解させることで得ることもできる。
【0165】
ポリイミド前駆体を単離する方法としては、ポリイミド前駆体および有機溶媒等を含む溶液を、メタノールやイソプロパノール等のポリイミド前駆体に対する貧溶媒に投じてポリイミド前駆体等を沈殿させ、濾過・洗浄・乾燥等によりポリイミド前駆体を固体分として分離する方法等が挙げられる。
【0166】
<非アミド系溶媒を主成分とする溶媒>
本発明の樹脂組成物に用いる非アミド溶媒としては、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒、スルホキシド溶媒、およびケトン系溶媒からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、前記非アミド系溶媒を主成分とする溶媒を含むため、膜形成時の乾燥速度が速くなり、白濁による膜質悪化が少なく、膜の生産性に優れる。また、前記非アミド系溶媒を主成分とする溶媒を用いることで、ポリイミド前駆体の濃度の高い樹脂組成物を得ることができる。この生産性に優れ、良好な膜質を有する膜は、前記ポリイミド前駆体と前記非アミド系溶媒を主成分とする溶媒とを含む組成物を用いることで初めて得ることができる。
【0167】
なお、本発明において、「非アミド系溶媒を主成分とする溶媒」とは、溶媒全体100質量%に対し、非アミド系溶媒を好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上含む溶媒のことをいう。
【0168】
前記ケトン系溶媒としては、炭素数3以上10以下のケトン類であることが好ましく、沸点およびコストの点等から、炭素数3以上6以下のケトン類であることがより好ましい。好ましいケトン系溶媒としては、具体的には、アセトン(沸点=57℃)メチルエチルケトン(沸点=80℃)、メチル−n−プロピルケトン(沸点=105℃)、メチル−iso−プロピルケトン(沸点=116℃)、ジエチルケトン(沸点=101℃)、メチル−n−ブチルケトン(沸点=127℃)、メチル−iso−ブチルケトン(沸点=116℃)、メチル−sec−ブチルケトン(沸点=118℃)、メチル−tert−ブチルケトン(沸点=116℃)などのジアルキルケトン類、シクロペンタノン(沸点=130℃)、シクロヘキサノン(CHN,沸点=155℃)、シクロヘプタノン(沸点=185℃)、γ―ブチロラクトン(沸点=204℃)などの環状ケトン類等を挙げることができる。これらの中でもシクロヘキサノンが、乾燥性、生産性等に優れる樹脂組成物を得ることができること等の点から好ましい。
なお、これらケトン系溶媒は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0169】
前記エーテル系溶媒としては、炭素数3以上10以下のエーテル類であることが好ましく、炭素数3以上7以下のエーテル類であることがより好ましい。好ましいエーテル系溶媒としては、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル(119℃)などのモノもしくはジアルキルエーテル類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類、アニソールなどの芳香族エーテル類等を挙げることができる。これらの中でも、プロピレングリコールモノエチルエーテルを用いると、保存安定性の良好な樹脂組成物および透明で機械強度に優れたフィルムを得ることができること等の点から好ましい。
なお、これらエーテル系溶媒は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0170】
前記ニトリル系溶媒としては、炭素数2以上10以下のニトリル類であることが好ましく、炭素数2以上7以下のニトリル類であることがより好ましい。好ましいニトリル系溶媒としては、アセトニトリル(bp=82℃)、プロパンニトリル(bp=97℃)、ブチロニトリル(bp=116℃)、イソブチロニトリル(bp=107℃)、バレロニトリル(bp=140℃)、イソバレロニトリル(bp=129℃)、ベンズニトリル(bp=191℃)等が挙げられる。これらの中でも、低沸点の点等から、アセトニトリルが好ましい。
なお、これらニトリル系溶媒は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0171】
前記エステル系溶媒としては、炭素数3以上10以下のエステル類であることが好ましく、炭素数3以上6以下のエステル類であることがより好ましい。好ましいエステル系溶媒としては、酢酸エチル(bp=77℃)、酢酸プロピル(bp=97℃)、酢酸−i−プロピル(bp=89℃)、酢酸ブチル(bp=126℃)、プロピレングリコールモノエチルアセテート(bp=146℃)などのアルキルエステル類、β−プロピオラクトン(bp=155℃)などの環状エステル類等を挙げることができる。
なお、これらエステル系溶媒は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0172】
前記スルホキシド系溶媒としては、炭素数3以上10以下のスルホキシド類であることが好ましく、好ましいスルホキシド系溶媒としては、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。
なお、これらスルホキシド系溶媒は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0173】
前記非アミド系溶媒を主成分とする溶媒としては、好ましくはニトリル系溶媒、エーテル系溶媒、およびケトン系溶媒からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒が挙げられ、さらに好ましくはケトン系溶媒およびエーテル系溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、構造単位(1)を有する前駆体の溶解性が高く、これらの溶媒を用いることで保存安定性に優れる樹脂組成物を得ることができる。
【0174】
また、前記非アミド系溶媒を主成分とする溶媒としては、2種以上を組み合わせた混合溶媒を用いることが好ましく、得られる膜の物性を考慮すると沸点が20℃以上異なる溶媒を混合した溶媒が好ましい。
【0175】
本発明の樹脂組成物が、前記混合溶媒を含むと、ポリイミド前駆体の濃度が高い樹脂組成物を得ることができる。
【0176】
前記混合溶媒としては、膜の乾燥性、生産性等、白濁および引張り強度等の膜質特性、樹脂組成物の保存安定性等を考慮し場合、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点=119℃)、酢酸ブチル(沸点=126℃)、メチル−iso−ブチルケトン、プロピレングリコールモノエチルアセテート、シクロヘキサノン(沸点=155℃)、シクロヘプタノン(沸点=185℃)、γ−ブチロラクトン(沸点=204℃)およびジメチルスルホキシド(沸点=189℃)からなる群より選ばれる少なくとも2種の混合溶媒が好ましい。
【0177】
前記混合溶媒は、混合溶媒100質量部に対して、混合溶媒中で沸点が最も高い溶媒を5〜95質量部含むことが好ましく、20〜95質量部含むことがより好ましく、得られる膜の物性を考慮すると20〜65質量部含むことがさらに好ましい。さらに前記混合溶媒は、混合溶媒100質量部に対して、混合溶媒中で沸点が最も高い溶媒を20〜55質量部含むことが特に好ましく、混合溶媒中に沸点が最も高い溶媒がこの量で含まれていると、120℃を超える温度での乾燥でも一定の溶媒が残存し、膜破壊なく固定化が可能となるため、生産性に優れる樹脂組成物が得られるのみならず、さらに、白濁および引張り強度等の膜質特性、保存安定性等に優れ、基板との密着・剥離性に優れ、反りの生じにくい膜を得ることができる。
【0178】
<その他>
なお、本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤などの添加剤を配合してもよい。
【0179】
<樹脂組成物の物性>
本発明の樹脂組成物の粘度は、ポリイミド前駆体の分子量や濃度にもよるが、通常、500〜50,000mPa・s、好ましくは500〜20,000mPa・sである。樹脂組成物の粘度が前記範囲にあると、成膜中の樹脂組成物の滞留性に優れ、膜厚の調整が容易となるため、膜の成形が容易となる。
なお、前記樹脂組成物の粘度は、E型粘度計(東機産業製、粘度計MODEL RE100)を用いて、大気中、25℃で測定した値である。
【0180】
本発明の樹脂組成物中のポリイミド前駆体濃度は、樹脂組成物の粘度が前記範囲となるよう調整することが好ましく、ポリイミド前駆体の分子量にもよるが、好ましくは3〜60質量%、より好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは10〜40質量%、特に好ましくは10〜30質量%である。樹脂組成物中のポリイミド前駆体の濃度が前記範囲にあると、厚膜化可能で、ピンホールが生じにくく、表面平滑性に優れる膜を形成することができる。
【0181】
本発明の樹脂組成物の粘度および該組成物中のポリイミド前駆体濃度が前記範囲にあると、生産性等に優れるスリットコート法を用いて、該樹脂組成物を基板上に塗布することができ、膜厚精度等に優れる膜を生産性良く短時間で形成することができる。
【0182】
≪膜形成方法≫
本発明の膜の形成方法としては、前記本発明の樹脂組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜から前記非アミド系溶媒を主成分とする溶媒を蒸発させる工程と、前記前駆体をイミド化する工程を含む方法等が挙げられる。
【0183】
前記樹脂組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する方法としては、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、スリットコート法、ディッピング法およびドクターブレード、ダイス、コーター、スプレー、ハケ、ロールなどを用いて塗布する方法等が挙げられる。なお、塗布の繰り返しにより膜の厚みや表面平滑性などを制御してもよい。これらの中でも、スリットコート法が好ましい。
【0184】
前記塗膜の厚さは、所望の用途に応じて適宜選択され、特に限定されないが、例えば1〜500μmであり、好ましくは1〜450μmであり、より好ましくは2〜250μmであり、さらに好ましくは2〜150μmであり、特に好ましくは5〜125μmである。
【0185】
前記基板としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ナイロン6フィルム、ナイロン6,6フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレン製ベルト、シリコンウエハ、ガラスウエハ、オキサイドウエハ、ガラス基板(無アルカリガラス基板を含む)、Cu基板およびSUS板などが挙げられる。特に、本発明の樹脂組成物は、基板との密着性および剥離性に優れるため、シリコンウエハ、ガラスウエハ、ガラス基板、Cu基板およびSUS板等への薄膜形成が可能となる。
【0186】
塗膜から前記非アミド系溶媒を主成分とする溶媒を蒸発させる工程は、具体的には塗膜を真空乾燥や加熱すればよいが、イミド化後の膜の透明性を考慮すると、白濁なく前記非アミド系溶媒を主成分とする溶媒を蒸発させることが好ましい。また、生産性を考慮すれば、真空乾燥を経ない加熱のみで行うことが好ましい。
【0187】
前記加熱条件は、溶媒が一定量蒸発すればよく、用いる基板やポリイミド前駆体および溶媒に応じて適宜決めればよいが、例えば加熱温度が60℃〜200℃であることが好ましく、より好ましくは90〜180℃である。また、加熱時間としては、10分〜1時間であることが好ましい。加熱温度が60℃より低いと、一定量の溶媒の蒸発に時間がかかり生産性が悪く、200℃を超えると溶媒の蒸発以前にイミド化が進行し、得られる膜の膜質が悪化することがある。
【0188】
前記非アミド系溶媒として高沸点の溶媒(好ましくは、沸点が、塗膜から前記非アミド系溶媒を主成分とする溶媒を蒸発させる工程における加熱温度以上の溶媒、より好ましくは、沸点が120℃以上の溶媒、さらに好ましくは、沸点が150〜250℃の溶媒)を含む混合溶媒を用いると、前記溶媒を蒸発させる工程で必要以上の蒸発が進まないため、イミド化工程の際に多少の溶媒(高沸点溶媒)が前記塗膜に含まれると考えられる。前記塗膜がイミド化工程の際に高沸点の溶媒を含むことで、イミド化工程後の膜の強度が向上すると考えられる。このため、本発明の膜形成方法では、機械的強度に優れる膜を得るために、高沸点の溶媒を含む混合溶媒を含む樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0189】
塗前駆体をイミド化する工程は、加熱することにより行うことができる。
前記加熱の条件は、溶媒が蒸発し、前記ポリイミド前駆体がイミド化すればよく、基板やポリイミド前駆体に応じて適宜決めればよいが、例えば、200〜450℃の温度で30分〜2時間加熱することが好ましく。より好ましくは300〜450℃の温度で30分〜2時間加熱すること、さらに好ましくは350〜450℃の温度で30分〜1時間加熱することである。また、必要に応じて、減圧下にて加熱してもよい。
【0190】
加熱雰囲気は、特に制限されないが、大気下または不活性ガス雰囲気下等であることが好ましく、不活性ガス雰囲気下であることが特に好ましい。不活性ガスとしては、着色性の観点から窒素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられるが、窒素であることが好ましい。
【0191】
また、前記加熱は、前記基板上に形成された塗膜を基板ごと乾燥させてもよいが、基板の性質に影響されない点から、ある程度乾燥させた後(例えば、前記溶媒を蒸発させる工程後)、前記基板上に形成された塗膜を基板から剥離し、その後加熱してもよい。
【0192】
以上の膜形成工程を経て得られた膜は、基板から剥離して用いることができるし、あるいは剥離せずにそのまま用いることもできる。
【0193】
得られる膜の厚みは、所望の用途に応じて適宜選択されるが、好ましくは1〜200μm、より好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは、10〜50μmであり、特に好ましくは20〜40μmである。
【0194】
本発明の樹脂組成物から得られる膜の引っ張り強度は100MPa以上、特に好ましくは200MPa以上である。膜の弾性率が100MPa未満だとフィルムを基板から剥離する際に破断する問題が起きることがある。
【0195】
前記膜のガラス転移温度は250℃以上、好ましくは350℃以上、特に好ましくは450℃以上である。半田リフロー工程やデバイス作製時には250℃以上に加熱されるため、ガラス転移温度が250℃未満であると、このような用途に前記膜を用いる場合には、該膜が変形してしまうことがある。
【0196】
前記膜の好適な用途しては、フレキシブルプリント基板、フレキシブルディスプレイ基板等のフレキシブル基板、半導体素子、薄膜トランジスタ型液晶表示素子や磁気ヘッド素子、集積回路素子、固体撮像素子、実装基板などの電子部品に用いられる絶縁膜、および各種コンデンサー用の膜等が挙げられる。これらの電子部品には、一般に層状に配置される配線の間を絶縁するために層間絶縁膜や平坦化絶縁膜、表面保護用絶縁膜(オーバーコート膜、パッシベーション膜等)が設けられており、これらの絶縁膜として好適に用いることができる。
また、前記膜は、導光板、偏光板、ディスプレイ用フィルム、光ディスク用フィルム、透明導電性フィルム、導波路板などのフィルムとして好適に使用できる。
特に、前記膜は、ガラス基板との密着性および剥離性に優れるため、該膜と基板との間に粘着層等を設ける必要がなく、フレキシブル基板を作製する際の工程数を低減化できる可能性がある。
【実施例】
【0197】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0198】
[実施例1]
温度計、窒素導入管および攪拌羽根付三口フラスコに、25℃にて窒素気流下、4,4'−ジアミノ−2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)15.3050g(0.0478mol)、両末端アミノ変性側鎖フェニル・メチル型シリコーンX−22−1660B−3(信越化学工業(株)製)[4.2925g(0.000976mol)]、および樹脂組成物中のポリイミド前駆体の濃度が14%となるように脱水シクロヘキサノン(CHN)184.527gを加え、完全に均一な溶液を得るまで10分間攪拌した。そこに、ピロメリット酸二無水物(PMDA)10.3997g(0.047679mol)を加え、60分攪拌することで反応を終了させ、次いで、ポリテトラフルオロエチレン製フィルター(ポアサイズ1μm)を用いて精密濾過行うことで、樹脂組成物1を作製した。
(PMDAのモル数/(TFMBのモル数+X−22−1660B−3のモル数)=0.977当量)
【0199】
[乾燥後フィルムの形成方法]
重力に対し垂直となるように設置したコントロールコーター台にガラス基板(横:300mm×縦:350mm×厚:0.7mm)を固定し、乾燥後フィルムの膜厚が30μmとなるようにギャップ間隔を405μmに設定し、樹脂組成物1(12g)を、ガラス基板中央部に横:200mm×縦:220mmの塗膜となるようキャストした。この塗膜付ガラス基板を3枚作製した。
【0200】
次いで、得られた塗膜付ガラス基板を下記(1)〜(3)のそれぞれの方法で乾燥させ、乾燥後フィルムを得た。
(1)真空乾燥機にて25℃で10分後に0.1mmHgになるように減圧にした後、常圧(760mmHg)に戻し、その後、140℃で10分間加熱乾燥
(2)ホットプレート上で、155℃で10分間加熱乾燥
(3)ホットプレート上で、170℃で10分間加熱乾燥
【0201】
[ポリイミド膜の形成方法]
重力に対し垂直となるように設置したコントロールコーター台にガラス基板(横:300mm×縦:350mm×厚:0.7mm)を固定し、2次乾燥後に膜厚が30μmとなるようにギャップ間隔を405μmに設定し、樹脂組成物1(12g)を、ガラス基板中央部に横:200mm×縦:220mmの塗膜となるようキャストした。
次いで、得られた塗膜付ガラス基板を真空乾燥機に入れ、25℃で10分後に0.1mmHgになるように減圧にした後、常圧(760mmHg)に戻し真空乾燥を終了した。その後、真空乾燥後の塗膜付ガラス基板を140℃で10分間加熱乾燥し(1次乾燥)、次いで、雰囲気可変乾燥機中で窒素雰囲気下、400℃で30分加熱乾燥(2次乾燥)させることで、基板付のポリイミド膜を得た。
【0202】
[実施例2]
TFMB(15.3050g)の代わりに、TFMB(12.6570g)および4,4'−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)2.0370gを用い、X−22−1660B−3、PMDAおよびCHNの使用量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様に行い樹脂組成物2を得た。
また、樹脂組成物1の代わりに樹脂組成物2を用いた以外は実施例1と同様の方法で、乾燥後フィルムを形成した。
さらに、樹脂組成物1の代わりに樹脂組成物2を用い、2次乾燥温度を300℃に変更した以外は実施例1と同様の方法で、ポリイミド膜を形成した。
【0203】
[実施例3]
CHN184.527gの代わりにCHN147.622gおよびγ−ブチロラクトン36.905gを用い、TFMB、X−22−1660B−3およびPMDAの使用量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様に行い樹脂組成物3を得た。
また、樹脂組成物2の代わりに樹脂組成物3を用いた以外は実施例2と同様の方法で、乾燥後フィルムおよびポリイミド膜を形成した。
【0204】
[実施例4]
CHN184.527gの代わりにCHN92.920gおよびγ−ブチロラクトン92.264gを用い、TFMB、X−22−1660B−3およびPMDAの使用量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様に行い樹脂組成物4を得た。
また、樹脂組成物2の代わりに樹脂組成物4を用いた以外は実施例2と同様の方法で、乾燥後フィルムおよびポリイミド膜を形成した。
【0205】
[実施例5]
CHN183.607gの代わりにCHN91.804gおよびγ−ブチロラクトン91.804gを用い、TFMB、ODA、X−22−1660B−3およびPMDAの使用量を表1に示すように変更した以外は実施例2と同様に行い樹脂組成物5を得た。
また、樹脂組成物2の代わりに樹脂組成物5を用いた以外は実施例2と同様の方法で、乾燥後フィルムおよびポリイミド膜を形成した。
【0206】
[実施例6]
CHN184.527gの代わりにCHN92.000gおよびジメチルスルホキシド92.000gを用い、TFMB、X−22−1660B−3およびPMDAの使用量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様に行い樹脂組成物6を得た。
また、樹脂組成物2の代わりに樹脂組成物6を用いた以外は実施例2と同様の方法で、乾燥後フィルムおよびポリイミド膜を形成した。
【0207】
[実施例7]
CHN184.527gの代わりにプロピレングリコールモノエチルエーテル184.527gを用い、TFMB、X−22−1660B−3およびPMDAを表1に示す使用量で用いて、実施例1と同様に行い樹脂組成物7を得た。
また、樹脂組成物1の代わりに樹脂組成物7を用いた以外は実施例1と同様の方法で、乾燥後フィルムおよびポリイミド膜を形成した。
【0208】
[実施例8]
CHN184.527gの代わりにプロピレングリコールモノエチルエーテル92.2635gおよびプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート92.2635gを用い、TFMB、X−22−1660B−3およびPMDAを表1に示す使用量で用いて、実施例1と同様に行い樹脂組成物8を得た。
また、樹脂組成物1の代わりに樹脂組成物8を用いた以外は実施例1と同様の方法で、乾燥後フィルムおよびポリイミド膜を形成した。
【0209】
[実施例9]
CHN184.527gの代わりにプロピレングリコールモノエチルエーテル147.6216gおよびγ−ブチロラクトン36.905gを用い、TFMB、X−22−1660B−3およびPMDAを表1に示す使用量で用いて、実施例1と同様に行い樹脂組成物9を得た。
また、樹脂組成物1の代わりに樹脂組成物9を用いた以外は実施例1と同様の方法で、乾燥後フィルムおよびポリイミド膜を形成した。
【0210】
[実施例10]
CHN184.527gの代わりにプロピレングリコールモノエチルエーテル73.8108g、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート73.8108gおよびγ―ブチロラクトン36.905gを用い、TFMB、X−22−1660B−3およびPMDAを表1に示す使用量で用いて、実施例1と同様に行い樹脂組成物10を得た。
また、樹脂組成物1の代わりに樹脂組成物10を用いた以外は実施例1と同様の方法で、乾燥後フィルムおよびポリイミド膜を形成した。
【0211】
[実施例11]
CHN184.527gの代わりにプロピレングリコールモノエチルエーテル138.3953gおよび酢酸ブチル46.1318gを用い、TFMB、X−22−1660B−3およびPMDAを表2に示す使用量で用いて、実施例1と同様に行い樹脂組成物11を得た。
また、樹脂組成物1の代わりに樹脂組成物11を用いた以外は実施例1と同様の方法で、乾燥後フィルムおよびポリイミド膜を形成した。
【0212】
[実施例12]
CHN184.527gの代わりにプロピレングリコールモノエチルエーテル110.7162g、酢酸ブチル36.905gおよびγ―ブチロラクトン36.905gを用い、TFMB、X−22−1660B−3およびPMDAを表2に示す使用量で用いて、実施例1と同様に行い樹脂組成物12を得た。
また、樹脂組成物1の代わりに樹脂組成物12を用いた以外は実施例1と同様の方法で、乾燥後フィルムおよびポリイミド膜を形成した。
【0213】
[実施例13]
CHN184.527gの代わりにメチルイソブチルケトン92.2635g、CHN46.132gおよびγ−ブチロラクトン46.132gを用い、TFMB、X−22−1660B−3およびPMDAを表2に示す使用量で用いて、実施例1と同様に行い樹脂組成物13を得た。
また、樹脂組成物1の代わりに樹脂組成物13を用いた以外は実施例1と同様の方法で、乾燥後フィルムおよびポリイミド膜を形成した。
【0214】
[実施例14]
CHN184.527gの代わりにプロピレングリコールモノエチルエーテル110.7162g、酢酸ブチル36.905gおよびγ−ブチロラクトン36.905gを用い、TFMB、両末端アミノ変性ジメチルシリコーンKF−8012(信越化学工業(株)製)およびPMDAを表2に示す使用量で用いて、実施例1と同様に行い樹脂組成物14を得た。
また、樹脂組成物1の代わりに樹脂組成物14を用いた以外は実施例1と同様の方法で、乾燥後フィルムおよびポリイミド膜を形成した。
【0215】
[実施例15]
CHN184.527gの代わりにメチルイソブチルケトン92.2635g、CHN46.132gおよびγ−ブチロラクトン46.132gを用い、TFMB、KF−8012およびPMDAを表2に示す使用量で用いて、実施例1と同様に行い樹脂組成物15を得た。
また、樹脂組成物1の代わりに樹脂組成物15を用いた以外は実施例1と同様の方法で、乾燥後フィルムおよびポリイミド膜を形成した。
【0216】
[比較例1]
TFMB(15.3050g)の代わりに、m−トリジン(mTB)12.2531gを用い、X−22−1660B−3、PMDAおよびCHNの使用量を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様に行い樹脂組成物16を得た。
得られた樹脂組成物16を用いて実施例1と同様の方法で、乾燥後フィルムおよびポリイミド膜を形成しようとしたが、該フィルムおよび膜は形成できなかった。
【0217】
[比較例2]
CHN184.527gの代わりに、N−メチルピロリドン184.527gを用い、TFMB、X−22−1660B−3およびPMDAの使用量を表2に示すように変更した以外は実施例1と同様に行い樹脂組成物17を得た。
また、樹脂組成物1の代わりに樹脂組成物17を用いた以外は実施例1と同様の方法で、乾燥後フィルムおよびポリイミド膜を形成した。
【0218】
[樹脂組成物の特性評価]
(1)樹脂組成物粘度
実施例および比較例で得られた樹脂組成物1.5gを用い、25℃での樹脂組成物粘度を測定した。具体的には東機産業製 粘度計 MODEL RE100を用い測定した。その結果を表1または2に記す。
【0219】
(2)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)
実施例および比較例で得られた樹脂組成物中のポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、TOSOH製HLC−8220型GPC装置(ガードカラム:TSK guard colomn ALPHA カラム:TSKgelALPHA―M、展開溶剤:NMP)を用いて測定した。その結果を表1または2に記す。
【0220】
(3)−15℃での貯蔵安定性
実施例および比較例で得られた樹脂組成物を−15℃で48時間保存した。目視により、透明で沈殿物のないものを「○」とし、不透明で沈殿物が析出したものを「×」として評価した。その結果を表1または2に記す。
【0221】
[乾燥後フィルムの評価]
(4)固定化
前記(1)〜(3)の方法で乾燥した後のフィルムを金属製スパチュラーで強くこすり、フィルムが移動しないものを「固定化」、フィルムが移動したものを「固定化なし」、と評価した。その結果を表1または2に記す。
【0222】
(5)白濁の有無
前記(1)〜(3)の方法で乾燥した後のフィルムの白濁の有無を目視で確認した。その結果を表1または2に記す。
【0223】
[ポリイミド膜の評価]
(6)ガラス転移温度(Tg)
実施例および比較例で得られたポリイミド膜をガラス基板から剥離し、剥離後の膜をRigaku製 Thermo Plus DSC8230を用い、窒素下で、昇温速度を20℃/minとし、40〜450℃の範囲で測定した。その結果を表1または2に記す。
【0224】
(7)線膨張係数
実施例および比較例で得られたポリイミド膜をガラス基板から剥離し、剥離後の膜をSeiko Instrument SSC/5200を用い、昇温速度を6℃/minとし、25〜350℃の範囲で測定した。測定結果から100〜200℃の線膨張係数を算出した。その結果を表1または2に記す。
【0225】
(8)膜強度
JISK6251の7号ダンベルを用い、実施例および比較例で得られたポリイミド膜をガラス基板から剥離し、剥離後の30μmフィルムを23℃下、50mm/minの速度で引張り試験を実施し、引張り強度を測定した。その結果を表1または2に記す。
【0226】
(9)ガラス基板との剥離性
2次乾燥後のガラス基板付30μmポリイミド膜を幅10mm×長さ50mmになるよう余分な部分をカッターで切り取り、ガラス基板上に残った膜を長さ20mmまで引き剥がした後、引き剥がした部分を180度の方向に速度50mm/minで力を加え、ピール強度を測定した。その結果を表1または2に記す。
【0227】
(10)透明性
実施例および比較例で得られたポリイミド膜をガラス基板から剥離し、剥離後の膜のHaze(ヘイズ)をJIS K7105透明度試験法に準じて測定した。具体的には、スガ試験機社製SC−3H型ヘイズメーターを用い測定した。その結果を表1または2に記す。
【0228】
(11)フィルムの反り
実施例および比較例で得られたガラス基板付30μmポリイミド膜を60mm×60mmの大きさにカッターで切削後、4つの端部の浮き上がりを測定し、平均値を算出した。その結果を表1または2に記す。
【0229】
【表1】
【0230】
【表2】
【0231】
[評価結果]
樹脂組成物1〜15から得られた乾燥後フィルムは、乾燥速度が速く、ガラス基板との密着性に優れていた。また、反りが無く、Tgが450℃以上と耐熱性に優れ、透明性、ガラス基板からの剥離性に優れ、線膨張係数の低い強靭なポリイミド膜を得ることができた。
【0232】
樹脂組成物16に含まれるポリイミド前駆体は、構造単位(1)を有していないため、得られる樹脂組成物の粘度が50,000以上、かつ白濁が認められ、基板への塗膜ができなかった。以上の結果より、ポリイミド前駆体が前記構造単位(1)を有していないと、生産性に優れた樹脂組成物を得ることができないことがわかった。
【0233】
樹脂組成物17には、非アミド系溶媒が含まれていないため、組成物作製直後に白濁が認められ、貯蔵安定性が著しく悪化した。以上の結果より、非アミド系溶媒を用いないと、貯蔵安定性に優れる樹脂組成物を得ることができないことがわかった。